説明

フィルタ装置

【課題】 給油ポンプの吐出側に接続されたフィルタ装置のケーシング内に溜まった空気を運転中に自動的に排出させることで、プラントの効率的な運用を可能とする。
【解決手段】 本発明に係るフィルタ装置は、ケーシングと、ケーシングに設けられ給油ポンプの吐出側と接続される圧油入口部と、ケーシング内に配置されて圧油入口部から供給された圧油を外周側から内周側に通過させてろ過する円筒形状のフィルタエレメントと、フィルタエレメントの内周側に導かれた圧油をケーシング内から排出させる出口部と、ケーシングの上部と出口部とを接続する空気抜き配管と、この出口部の空気抜き配管の接続部よりも上流側に設けられた流量調整手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントなどの潤滑油系統に用いられるフィルタ装置に係り、特に上流側から潤滑油が圧入される形式のフィルタ装置において内部に空気が溜まりにくくしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な発電プラントとして、ボイラや原子炉で発生させた蒸気を蒸気タービンに供給して動力を発生させ、その動力で発電機を回転駆動させる、いわゆる蒸気タービン発電プラントのほか、ガスタービンを動力源として発電機を回転駆動させて発電を行う、いわゆるシンプルサイクルガスタービン発電プラント、また、ガスタービンで膨張仕事を終えた高温の排ガスを熱源として排熱回収ボイラに供給して蒸気を発生させ、この蒸気を蒸気タービンに供給して発生させた動力とガスタービンの発生させた動力で発電機を回転駆動させる、いわゆるコンバインドサイクル発電プラントなどが知られている。
【0003】
このうち、コンバインドサイクル発電プラントを例にとって以下に説明する。コンバインドサイクル発電プラントは、例えば、ガスタービン軸と蒸気タービン軸とを軸結合させて一つの回転軸に形成し、この回転軸を複数の軸受で軸支させている。
【0004】
このような、回転軸を軸支する軸受には潤滑油装置が設けられている(例えば特許文献1,2参照)。このような潤滑油装置を備えたコンバインドサイクル発電プラントを図5に示す。
【0005】
図5において、コンバインドサイクル発電プラントは、ガスタービン部1に蒸気タービン部2と排熱回収ボイラ3とを組み合わせて構成されている。
【0006】
ガスタービン部1は、空気圧縮機4、ガスタービン燃焼器5、ガスタービン6を備える。空気圧縮機4は、空気を吸い込んで圧縮して高圧化し高圧空気とする。この高圧空気は、燃料系統14の燃料弁15から供給される燃料とともにガスタービン燃焼器5に供給される。ガスタービン燃焼器5では、供給された燃料が高圧空気により燃焼して燃焼ガスが生成する。生成した燃焼ガスはガスタービン6に供給され、ガスタービン6内をこの燃焼ガスが膨張しながら流れて仕事(動力)を発生させる。発電機7はガスタービン6が発生させた動力により回転駆動されるようになっている。
【0007】
ガスタービン6から流出したタービン排気ガスは、排熱回収ボイラ3に導かれる。排熱回収ボイラ3は、ガスタービン6からのタービン排気ガスを熱源として蒸気タービン部2からの給水を加熱して蒸気とし、この蒸気を蒸気タービン部2に供給している。
【0008】
蒸気タービン部2は、蒸気タービン8、復水器9、給水ポンプ10を備える。排熱回収ボイラ3にて発生させた蒸気は、蒸気タービン8に供給される。蒸気タービン8において、排熱回収ボイラ3から供給された蒸気は膨張仕事を行ない、その際に発生する動力で発電機7を回転駆動させるようになっている。蒸気タービン8にて膨張仕事を行ない流出したタービン排気蒸気は復水器9に供給され、ここで凝縮して復水となる。復水器9にて凝縮した復水は給水ポンプ10へ供給され、ここで昇圧されて給水となり再び排熱回収ボイラ3に供給される。
【0009】
ガスタービン部1のガスタービン軸11と蒸気タービン部2の蒸気タービン軸12とを軸結合させて一つに形成する回転軸13には、複数の軸受16a,16b,16c,…,16fが設けられている。
【0010】
複数の軸受16a,16b,16c,…,16fには、給油タンク17に設置する主給油ポンプ18、補助給油ポンプ19、非常給油ポンプ20から逆止弁21a,21b,21cに油冷却器22、フィルタ装置23、油圧調整弁24を介して潤滑油が供給されている。
【0011】
複数の軸受16a,16b,16c,…,16fに対して、通常、主給油ポンプ18からの潤滑油が供給されるが、油圧や油量が充分に確保できないとき、ガスタービン16および蒸気タービン18の起動、停止のとき、主給油ポンプ18の故障等のとき、主給油ポンプ18に代わってAC電動機駆動の補助給油ポンプ19が使用されている。
【0012】
また、補助給油ポンプ19の運転中、AC電源がOFFしたとき、補助給油ポンプ19に異常が生じたとき、必要な軸受油量、油圧を確保し、安全にガスタービン16や蒸気タービン8を停止させるため、DC電源駆動の非常給油ポンプ20が使用されている。
【0013】
このような構成を備える潤滑油装置において、主給油ポンプ18から吐出される潤滑油は、逆止弁21a,21b,21cを介して油冷却器22で冷却し、ここからフィルタ23、油圧調整弁24を介して軸受16a,16b,16c,…,16fに供給される。
【0014】
軸受16a,16b,16c,…,16fに供給された潤滑油は、戻り管(図示せず)を介して給油タンク14に還流される。
【0015】
このような潤滑油装置のうち、フィルタ装置23は、給油ポンプ18,19,20の下流側に設けられており、給油ポンプ18,19,20のいずれかにて昇圧された潤滑油(圧油)が圧入される形式となっている。
【0016】
図6に、図5のフィルタ装置23の詳細構成をを示す。このようなフィルタ装置23は、インレットポート51,フィルタエレメント52,エア抜きバルブ53,センターポスト54,アウトレットポート55,およびフィルタケーシング56などにより主に構成されている。
【0017】
インレットポート51はフィルタケーシング56に設けられた潤滑油(圧油)入口部であり、給油ポンプ(図5における主給油ポンプ18、補助給油ポンプ19、非常給油ポンプ20)の吐出側に接続される。これにより、給油ポンプにて昇圧された潤滑油(圧油)が(図5の例では逆止弁21a,21b,21c,および油冷却器22を介して)フィルタケーシング56の内部に供給される。また、フィルタケーシング56には、フィルタ装置23から潤滑油(圧油)を流出させる潤滑油(圧油)出口部の一部を構成するアウトレットポート55が設けられている。
【0018】
さらに、フィルタケーシング56内には、内部をインレットポート51側とアウトレットポート55側の2つに分割する隔壁50が設けられている。図6に示した例では、隔壁50よりも上方にインレットポート51が配置されており、隔壁50の下部にアウトレットポート55が設けられている。この例では隔壁50の下部全体が潤滑油(圧油)出口部を構成している。
【0019】
フィルタケーシング56の内部にはフィルタエレメント52が設けられている。このフィルタエレメント52は略円筒形状となっており、隔壁50の上に配置されている。フィルタエレメント52の上部は閉止されており、図6に示したように係止部材とボルトによりフィルタケーシング56の上部に固定されている。
【0020】
このような構成により、インレットポート51からフィルタケーシング56内に供給された潤滑油はフィルタエレメント52の外周側に導かれ、この潤滑油(圧油)がフィルタエレメント52の外周側から内周側に通過する際に潤滑油(圧油)内に含まれる不純物などがろ過される。
【0021】
フィルタエレメント52の内周側には、フィルタエレメント52とほぼ同軸にセンターポスト(内筒)54が設けられている。センターポスト54もフィルタエレメント52と同様に略円筒形状となっており、その下端は隔壁50の下部、すなわち潤滑油(圧油)出口部に開口している。隔壁50より上方部分の側面には複数の孔が設けられている。またセンターポスト54の上端部は閉止され、フィルタエレメント52とともに係止部材とボルトを介してフィルタケーシング56の上部に固定されている。
【0022】
このような構成により、ろ過されてフィルタエレメント52の内周側に流れ出た潤滑油(圧油)は、センターポスト(内筒)54の側面に設けられた開口部である孔からセンターポスト(内筒)54内に流れ、ここから隔壁50の下部である潤滑油(圧油)出口部へ導かれる。潤滑油(圧油)出口部へ導かれた潤滑油(圧油)は、アウトレットポート55からフィルタケーシング56の外へと排出される。
【0023】
このほかフィルタ装置23には、フィルタケーシング56の最上部に、運転中にフィルタケーシング56内に溜まった空気を抜くための手動空気抜き配管53が設けられている。この手動空気抜き配管53にはバルブが設けられており、フィルタケーシング56内の潤滑油(圧油)を排出させてメンテナンスを行なった後や、あるいは運転中にフィルタケーシング56内に空気が溜まりフィルタ装置23の圧損が大きくなった場合などに、手動でこのバルブを操作することによりフィルタケーシング56内の空気抜きを行なうことができる。
【0024】
なお、通常運転時であってもフィルタ装置23のフィルタケーシング56の上部には空気が溜まることはある。上記の手動空気抜き配管53を用いた空気抜きは、フィルタケーシング56上部の空気が溜まっている部分、すなわち潤滑油(圧油)とフィルタケーシング56上部の空気との界面(潤滑油油面)の位置がフィルタエレメント52の上端部よりも下方になった場合に行なう。また、フィルタケーシング56内の圧力は運転中には大気圧よりも高くなるため、空気抜きが必要な場合以外の通常運転時などは手動空気抜き配管53のバルブは閉めておく必要がある。
【0025】
【特許文献1】特開2003−251116
【0026】
【特許文献2】特開2004−52718
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上述の通り、フィルタケーシング56の上部に空気が溜まったとしても、潤滑油油面位置がフィルタエレメント52の上端部よりも上方であれば大きな問題は生じない。しかしながら、潤滑油油面位置がフィルタエレメント52の上端部よりも下方となり、さらに油面位置が低くなると、潤滑油がフィルタエレメント52に接する部分、すなわち、フィルタエレメント52にてろ過に使用される部分の表面積が減少するためフィルタエレメント52を潤滑油が通過する際の圧損が増加する。また、フィルタエレメント52の下方側のみ集中的に使用されることによってフィルタエレメント52の寿命が短くなってしまう。つまり、フィルタケーシング56内の上部に残留する気体が多くなると、フィルタ装置23におけるろ過性能の低下、また、フィルタエレメント52の交換時期が早まってしまい、また、頻繁にフィルタエレメント52の交換作業が必要になることでプラントの運用コストを増大させる原因ともなる。
【0028】
ところが、従来のフィルタ装置23では上述の通り、フィルタケーシング56内に残留した気体の量の確認や空気抜き作業を実施するためには、フィルタ装置23にアクセスして手動空気抜き配管53のバルブの開閉作業を行なう必要があり、これらの煩雑な作業によりプラントの効率的な運用ができない、という課題があった。
【0029】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、給油ポンプの吐出側に接続されたフィルタ装置のケーシング内に溜まった空気を運転中に自動的に排出させることで、プラントの効率的な運用を可能とすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上述の課題を解決するために、本願請求項1に記載した発明に係るフィルタ装置は、ケーシングと、前記ケーシングに設けられ、圧油ポンプの吐出側配管と接続される圧油入口部と、前記ケーシング内に配置され、前記圧油入口部から供給された圧油を外周側から内周側に通過させて当該圧油をろ過する円筒形状のフィルタエレメントと、前記ケーシングに設けられ、前記フィルタエレメントの内周側の圧油を前記ケーシング内から排出させる出口部と、前記ケーシングの上部と前記出口部とを接続する空気抜き配管と、前記出口部の、前記空気抜き配管の接続部よりも上流側に設けられた流量調整手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、給油ポンプの吐出側に接続されたフィルタ装置のケーシング内に溜まった空気を運転中に自動的に排出させることで、プラントの効率的な運用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0033】
図1は、本発明に係るフィルタ装置の第1の実施の形態を示す詳細構成図である。図1において、従来のフィルタ装置として示した図6と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を一部省略する。
【0034】
本実施の形態においても、フィルタ装置23は、インレットポート51,フィルタエレメント52,手動空気抜き配管53,センターポスト54,アウトレットポート55,およびフィルタケーシング56などにより主に構成されている。
【0035】
インレットポート51はフィルタケーシング56に設けられた潤滑油(圧油)入口部であり、給油ポンプ(図5における主給油ポンプ18、補助給油ポンプ19、非常給油ポンプ20)の吐出側と接続されている。したがって、給油ポンプにて昇圧された潤滑油(圧油)はインレットポート51からフィルタケーシング56の内部に流入する。フィルタケーシング56には、フィルタ装置23にてろ過された潤滑油(圧油)を流出させるアウトレットポート55が設けられている。アウトレットポート55は、後述する潤滑油(圧油)出口部の一部を構成している。
【0036】
フィルタケーシング56内には隔壁50が設けられ、この隔壁50により、フィルタケーシング56の内部はインレットポート51側とアウトレットポート55側の2つに分割れている。本実施の形態においては、隔壁50よりも上方にインレットポート51が配置されており、隔壁50の下部にアウトレットポート55が設けられている。そして、上述のアウトレットポートを55含む、隔壁50の下部全体が潤滑油(圧油)出口部を構成している。
【0037】
フィルタケーシング56の内部にはフィルタエレメント52が設けられている。このフィルタエレメント52は略円筒形状となっており、隔壁50の上に配置されている。フィルタエレメント52の上部は閉止されており、図6に示したように係止部材とボルトによりフィルタケーシング56の上部に固定されている。
【0038】
このような構成により、インレットポート51からフィルタケーシング56内に供給された潤滑油はフィルタエレメント52の外周側に導かれ、この潤滑油(圧油)がフィルタエレメント52の外周側から内周側に通過する際に潤滑油(圧油)内に含まれる不純物などがろ過される。
【0039】
フィルタエレメント52の内周側には、フィルタエレメント52とほぼ同軸にセンターポスト(内筒)54が設けられている。センターポスト54もフィルタエレメント52同様略円筒形状となっており、その下端は隔壁50の下部、すなわち潤滑油(圧油)出口部に開口している。隔壁50より上方部分の側面には複数の孔が設けられている。またセンターポスト54の上端部は閉止され、フィルタエレメント52とともに係止部材とボルトを介してフィルタケーシング56の上部に固定されている。
【0040】
このような構成により、ろ過されてフィルタエレメント52の内周側に流れ出た潤滑油(圧油)は、センターポスト(内筒)54の側面に設けられた開口部である孔からセンターポスト(内筒)54内に流れ、ここから隔壁50の下部である潤滑油(圧油)出口部へ導かれる。潤滑油(圧油)出口部へ導かれた潤滑油(圧油)は、アウトレットポート55からフィルタケーシング56の外へと排出される。
【0041】
そして、本実施の形態においてはこのほかに、フィルタケーシング56の上部、すなわちフィルタケーシング56のうちフィルタエレメント52の上端とフィルタケーシング上端との間と、フィルタケーシング56の下部に設けられた潤滑油(圧油)出口部のアウトレットポート55とを接続する空気抜き配管57が設けられている。空気抜き配管57のフィルタケーシング56側端の接続位置はできるだけ高いほうが好ましく、上部に接続される形としても構わない。さらに、本実施の形態においては、この空気抜き配管57の接続部よりも上流側のアウトレットポート55に、流量制御手段としてオリフィス58が設けられている。
【0042】
このような構成からなる本実施の形態においては、オリフィス58により圧損を生じさせたことにより、アウトレットポート55のオリフィス58下流側における潤滑油(圧油)の圧力が低くなる。そして、空気抜き配管57は、比較的圧力の高いフィルタケーシング56内と低圧となっているアウトレットポート55のオリフィス58の下流側とを接続しているので、この圧力差によりフィルタケーシング56内の上部に溜まった空気が自動的にフィルタ装置23の下流側に排出される。すなわち、本実施の形態においては、給油ポンプにて昇圧された潤滑油(圧油)がインレットポート51側から圧入される構成となっているため、下流側の圧力をオリフィス58により十分に低くすることにより、ケーシング56の上部に残留した空気を空気抜き配管57を介して圧力差により下流側に排出させることができる。
【0043】
ここで、本実施の形態においては、オリフィス58の穴径を、以下のように、オリフィス58が発生させる圧損に基づいて決定することができる。すなわち、オリフィス58は、エア抜きライン57のアウトレットポート55側の接続位置における圧力を低くし、エア抜きライン57に流体を流す目的で設けられる。このため、オリフィス8より生じさせる圧損は、エア抜きライン57のヘッド差から、フィルタエレメント52やセンターポスト54より生じる、フィルタエレメント52外周側(入口)からアウトレットポート55のオリフィス58下流位置まで流れることによって発生する圧損を除いた値より大きい必要がある。
【0044】
また、空気抜き配管57の直径については、フィルタケーシング内部の空気がアウトレットポート55側に通過させるのに十分な直径に設定されている。しかしながら直径が大きすぎる場合、フィルタケーシング56内の潤滑油油面位置が空気抜き配管57の接続部よりも高い位置となった際に潤滑油がフィルタエレメント52側を通過せずに空気抜き配管57側にバイパスしてしまうこととなる。
【0045】
このため、空気抜き配管57の直径については、空気抜き配管57を潤滑油が通過するときの圧損が、フィルタ装置23の正常な運転状態において潤滑油(圧油)がフィルタエレメント52外周側(入口)からアウトレットポート55のオリフィス58下流位置まで流れることによって発生する圧損よりも大きくなるような直径よりも小さくするとよい。これらの各圧損の値については、実験によってはもちろん、潤滑油の物性値に基づき数値解析を行なうことでも推定することが可能である。
【0046】
なお、このようにして直径を設定することによっても、フィルタエレメント52の外周側(入口)の潤滑油が一部空気と混じる形で空気抜き配管57を介して下流側にバイパスすることは考えられるが、全体的には潤滑油はフィルタエレメント52を内周側に流れる。したがって、上述のように空気抜き配管57の直径を適切に設定れば、フィルタ装置23のろ過のための機能を損なうような量の潤滑油が下流側にバイパスすることを防ぐことができる。
【0047】
このように、本実施の形態によれば、簡単な構成によってフィルタケーシング56内に滞留する空気を確実にフィルタ装置23の下流側に導くことが可能となる。
【0048】
また、図1に示した本実施の形態においては、流量制御手段としてオリフィス58を設けているが、オリフィス58の代わりに、圧損を発生させる計器類、すなわち流量計や圧力計、あるいは温度計などを設けた構成としても本願と同様な作用効果を得ることができ、その場合にはこのアウトレットポート55における空気抜き配管57の上流側部分における各種の流体情報(流量・圧力あるいは温度)をさらに得ることが可能となる。
【0049】
さらに、図1の流量制御手段として、オリフィス58の代わりに電磁弁を設けた構成とし、必要なときのみこの電磁弁を励磁させて絞りを生じさせるようにすることも可能である。
【0050】
次に本発明に係るフィルタ装置の第2の実施の形態を図2を参照して示す。なお、図2において、図1と同一な構成については同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0051】
図2に示した第2の実施の形態は、図1の第1の実施の形態に対して、エア抜きライン57に圧力発信機60を取り付けるとともに、流量制御手段をオリフィスではなく電磁弁59とし、さらに、圧力発信機60からの圧力信号値を検出するとともに電磁弁の励磁を制御する制御装置100を設けたものである。
【0052】
このような構成からなる本実施の形態は、エア抜きライン57に取付けられた圧力発信機60にて計測した圧力信号値により、フィルタケーシング56内に除去すべき気体(空気)が残留しているかを制御装置100にて検出し、この検出結果に基づいて電磁弁9の励磁を制御させるものである。以下に、この制御装置100を用いた、圧力発信機60からの圧力信号値に基づくフィルタケーシング56内の気体の有無の検出方法についてさらに図3を用いて説明する。
【0053】
図3は、制御装置100におけるフィルタケーシング56内の気体の有無の検出手順を示したフローチャートである。図2に示した電磁弁59は、通常運転時は励磁されず、開状態とされている。この状態では、アウトレットポート55のに十分な圧損が生じないため、空気抜き配管57を通じたフィルタケーシング56内から下流側への流体(潤滑油あるいは空気)の移動は生じない。図3に示したとおり、制御装置100は、図示しないタイマーにより一定時間ごと、あるいは手動操作によってフィルタケーシング56内の気体の有無判定を行なう。
【0054】
有無判定が始まると、制御装置100はまず電磁弁59を励磁させて弁を閉操作する。この際、電磁弁59の開度については全閉でも構わないが、第1の実施の形態のオリフィスのように、予め定められた圧損を発生させる開度であってもよい。
【0055】
本実施の形態においては、フィルタケーシング56内の気体の有無を、電磁弁59の閉操作に伴い圧力発信機11が示す圧力信号値の上昇率により検出する。すなわち、本実施の形態では、気体の圧力計測を開始した際の圧力発信機60が示す圧力値の上昇率と、液体の圧力計測を開始した際の圧力発信機60が示す圧力値の上昇率との違いを利用して気体の有無を検出している。ここで、気体の有無の判定基準については、以下のように設定している。
【0056】
すなわち、フィルタケーシング56内に気体が残留していない場合の、電磁弁59の閉操作時から圧力発信機11の計測値がフィルタケーシング6内の圧力pfに達するまでの時間tlを予め実験または計算により求めておく。図3に示したとおり、フィルタケーシングにかなり多くの気体が残留しており空気抜きライン57を空気のみが流れるような場合では、電磁弁59の閉操作時から圧力発信機11の計測値がフィルタケーシング6内の圧力pfに達するまでの時間tgは時間tlよりも長くなる。
【0057】
したがって、制御装置100は実際に電磁弁59を閉操作した時点からの圧力発信機11の計測値がフィルタケーシング6内の圧力”pf”に達するまでの時間tmと前述の時間tlとを比較し、tmがtlに予め定めたマージン値αを加えた時間よりも長い場合、すなわちtl+α<tmである場合にはフィルタケーシング56内に気体が残留しているものと判定する。ここで、マージン値αは計測結果の誤差を補正するために適宜設定される。
【0058】
そして、制御装置100は、フィルタケーシング56内に気体が残留していると判断した場合にはタイマを作動させ、予め定められた、空気抜きに十分と考えられる時間だけ電磁弁59の励磁を継続し、この時間が経過した後に空気抜きが完了したものとして電磁弁59の励磁を解除し電磁弁59を通常運転時と同様の開状態とする。
【0059】
制御装置100がフィルタケーシング56内に気体が残留していると判定しない場合は、上述のタイマーによる電磁弁59の励磁継続は行なわず、直ちに電磁弁59の励磁を解除し電磁弁59を通常運転時と同様の開状態とする。
【0060】
本実施の形態によれば、フィルタケーシング56内の残留気体の有無が確認でき、残留気体が確認できた場合のみ効率的に残留気体を除去できるため、フィルタケーシング6内の潤滑油(圧油)が空気抜き配管57を通じてバイパスする量を減らすことが可能となり、よりろ過効率の良いフィルタ装置23の運用が可能となる。
【0061】
次に本発明に係るフィルタ装置の第3の実施の形態について、図4を用いて説明する。なお、図4において、図1あるいは2と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0062】
本実施の形態も、第2の実施の形態と同様、フィルタケーシング56内の残留気体の有無を確認して残留気体が確認できた場合のみ効率的に残留気体を除去可能な構成となっている。すなわち、本実施の形態においては、図2に示した圧力発信機60の代わりに、電磁弁62、圧力発信機61およびオリフィス63をこの順序で備えたエア検出ライン64をフィルタケーシング56の上部に設けたことを特徴としている。
【0063】
ここで、エア検出ライン64の取り付け高さは、空気抜きライン57がフィルタケーシング56に接続される位置付近とすることが望ましい。これは、空気抜きライン57とフィルタケーシング56との接続位置より高い位置に残留するフィルタケーシング56内の残留気体は、空気抜きライン57によりフィルタ装置23の外へ排出できないためである。
【0064】
そして、本実施の形態においては制御装置100は、電磁弁62を励磁して開操作させるとともに、圧力発信機61からの圧力信号値に基づいてフィルタケーシング56内の残留気体の有無を判定し、この結果に基づき電磁弁59を励磁して閉操作させる。そして、制御装置100がフィルタケーシング56内に残留気体があると判定した際には電磁弁59が閉操作されることで、空気抜きライン57を介してフィルタケーシング56内の残留気体が排出される。
【0065】
エア検出ライン64を用いたフィルタケーシング56内の残留気体の有無の判定は、図2に示した第2の実施の形態同様に、電磁弁62を操作した際の圧力発信機61による圧力検出値の上昇率の違いによって行なう。ただし、本実施の形態においては、エア検出ライン64に設けられた電磁弁62は通常運転時は閉状態であり、制御装置100からの信号により電磁弁62を励磁して開操作したときの圧力の上昇率により、図3に示した判定基準と同様に判定を行なう。制御装置100におけるフィルタケーシング56内の残留気体の有無の判定が終わると、制御装置100は電磁弁62の励磁を解除し電磁弁62を閉止する。
【0066】
そして、フィルタケーシング56内に気体が残留していると判定された場合には、本実施の形態では制御装置100が予め定められた時間だけ電磁弁59を励磁して閉じることで圧損を発生させてフィルタケーシング56内の残留気体を空気抜きライン57を介してフィルタ装置23の下流へと排出する。制御装置100がフィルタケーシング56内の残留気体はないと判定した場合には、上述の電磁弁59の励磁による閉操作は行なわれない。
【0067】
本実施の形態によっても、第2の実施の形態同様に残留気体が確認できた場合のみ効率的に残留気体を除去できる。特に本実施の形態によれば、フィルタケーシング56内の残留気体の検出のために電磁弁59を閉操作させる必要がないので、より効率的なプラント運用を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係るフィルタ装置の第1の実施の形態を示す詳細構成図。
【図2】本発明に係るフィルタ装置の第2の実施の形態を示す詳細構成図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るフィルタ装置の制御装置におけるケーシング内の気体の有無の検出手順を示したフローチャート
【図4】本発明に係るフィルタ装置の第3の実施の形態を示す詳細構成図。
【図5】本発明のフィルタ装置が適用される潤滑油装置をコンバインドサイクル発電プラントを例として示した構成図。
【図6】従来のフィルタ装置を示す詳細構成図。
【符号の説明】
【0069】
1 ガスタービン部
2 蒸気タービン部
3 排熱回収ボイラ
4 空気圧縮機
5 ガスタービン燃焼器
6 ガスタービン
7 発電機
8 蒸気タービン
9 復水器
10 給水ポンプ
11 ガスタービン軸
12 蒸気タービン軸
13 回転軸
14 燃料系統
15 燃料弁
16a,16b,16c,…,16f 軸受
17 給油タンク
18 主給油ポンプ
19 補助給油ポンプ
20 非常給油ポンプ
21a,21b,21c 逆止弁
22 油冷却器
23 フィルタ
24 油圧調整弁
51 インレットポート
52 フィルタエレメント
53 手動空気抜き配管
54 センターポスト(内筒)
55 アウトレットポート
56 フィルタケーシング
57 空気抜き配管
58 オリフィス
59,62 電磁弁
60,61 圧力発信機
64 エア検出ライン
100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングに設けられ、給油ポンプの吐出側と接続される圧油入口部と、
前記ケーシング内に配置され、前記圧油入口部から供給された圧油を外周側から内周側に通過させて当該圧油をろ過する円筒形状のフィルタエレメントと、
前記ケーシングに設けられ、前記フィルタエレメントの内周側の圧油を前記ケーシング内から排出させる出口部と、
前記ケーシングの上部と前記出口部とを接続する空気抜き配管と、
前記出口部の、前記空気抜き配管の接続部よりも上流側に設けられた流量調整手段と、
を備えることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
流量調整手段は、オリフィスからなることを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
流量調整手段は電磁弁であり、かつ、
空気抜き配管内の圧力を検出する圧力検出手段と、
当該圧力検出手段による圧力検出値に基づいて前記電磁弁の開度を制御する制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項4】
ケーシングの上部に設けられた空気抜き配管をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフィルタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate