説明

フィルムコンデンサ

【課題】巻芯にフィルムを巻回してなるフィルムコンデンサにおいて、熱のこもりが少なく、放熱特性の良い構成を得る。
【解決手段】巻芯(13)に巻回されたフィルム(19)の外周面を覆うように金属板(20)を配設する。この金属板(20)は、上記フィルム(19)の軸方向両端部に形成されたメタリコン電極(14,15)に対して非接触となるように設けられる。そして、上記金属板(20)の軸方向両端部、上記フィルム(19)の軸方向両端部、上記メタリコン電極(14,15)、及び該メタリコン電極(14,15)に接続された外部端子(16,17)を封止樹脂(18)によって封止する。これにより、上記金属板(20)の中央部分が外部に露出した状態となる。この金属板(20)を介して上記フィルム(19)内で発生した熱を放熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻芯にフィルムが巻回されてなるフィルムコンデンサに関し、特に放熱対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルムを巻芯に巻回してなるフィルムコンデンサが知られている。このようなフィルムコンデンサは、電子機器や電気機器等において、特に安定した電気特性を要する回路に多く用いられている。また、近年のフィルムコンデンサは、電解コンデンサと比較して低損失であり、信頼性にも優れているため、空調機やハイブリッド自動車等のインバータ回路の平滑コンデンサとしても利用されている。
【0003】
ところで、近年、上述のようなフィルムコンデンサを搭載する機器内の高密度化が進んでおり、フィルムコンデンサとして小型で機器内への収納性の良いものが求められている。上記フィルムコンデンサの小型化を図るためには、例えば特許文献1に開示されるように、フィルムを薄くして、厚み当たりの電圧を高くして使用することが考えられるが、フィルムを薄くするために蒸着金属の厚みを薄くすると、該蒸着金属を流れる電流によって発生する発熱量が多くなるとともに、該蒸着金属からメタリコン電極への熱伝導性も悪化するため、コンデンサ素子内に熱がこもりやくなり、コンデンサ自体の温度が上昇してしまう。
【0004】
これに対し、上記フィルムコンデンサの放熱性を向上させるための構造として、例えば特許文献2に開示されるように、コンデンサ素子を内包するように2つの外部引出用電極を設け、該外部引出用電極から放熱することで、放熱面積を増大させて放熱性を向上させる構造が考えられている。
【0005】
また、特許文献3に開示されるように、ケース内に収納されたコンデンサ素子の外周面の約半分の領域と接するような金属製の受熱部を形成し、該受熱部の一部をケース外に引き出して、外気へ放熱することで、放熱特性の向上を図る構成も考えられている。
【0006】
なお、上記特許文献2、3の構成では、いずれもコンデンサ素子がケース内に収納された状態で該コンデンサ素子全体が樹脂によって封止されている。
【特許文献1】特開平10−326720号公報
【特許文献2】特開2003−59752号公報
【特許文献3】特開2006−80134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献2、3に開示されるようにコンデンサ素子全体を樹脂で封止する従来の構成では、熱伝導性の悪い樹脂がコンデンサ素子自体からの放熱を阻害するため、該コンデンサ素子内に熱がこもりやすく、該コンデンサ素子を効率良く冷却できないという問題が発生していた。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、巻芯にフィルムを巻回してなるフィルムコンデンサにおいて、熱のこもりが少なく、放熱特性の良い構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るフィルムコンデンサ(11)では、巻芯(13)に巻回されたフィルム(19)の両端部に形成されるメタリコン電極(14,15)に非接続で且つ該フィルム(19)の外周面の少なくとも一部を覆うように放熱部材を配設し、該放熱部材の少なくとも一部が露出するように上記フィルム(19)の両端部を樹脂部材(18)で封止することで、該放熱部材(20)から外部への放熱を可能にした。
【0010】
具体的に、第1の発明は、巻芯(13)に巻回されたフィルム(19)の両端にメタリコン電極(14,15)が形成されたフィルムコンデンサを対象とする。そして、上記メタリコン電極(14,15)に対して非接続の状態で且つ上記フィルム(19)の外周面の少なくとも一部を覆うように配設される放熱部材(20)と、上記放熱部材(20)の少なくとも一部分が露出するように、上記フィルム(19)の両端部及び上記メタリコン電極(14,15)を封止する樹脂部材(18)とを備えているものとする。
【0011】
この構成により、巻芯(13)に巻回されたフィルム(19)の外周側に該フィルム(19)の外周面の少なくとも一部を覆うように配設される放熱部材(20)によって、該フィルム(19)内で発生した熱は、外部に放熱される。すなわち、上記放熱部材(20)は、上記フィルム(19)の両端部が樹脂部材(18)によって封止されても、少なくとも一部が露出しているため、この露出部分から放熱することができる。
【0012】
しかも、上記放熱部材(20)は、フィルム(19)の両端部に形成されるメタリコン電極(14,15)には非接続となるように設けられているため、樹脂部材(18)によって封止されるメタリコン電極(14,15)を介して伝熱するのではなくて、フィルム(19)全体から放熱部材(20)に伝わる熱を放熱することが可能になる。これにより、上記メタリコン電極(14,15)の周辺で熱がこもるのを防止でき、上記放熱部材(20)から効率良く放熱することができる。
【0013】
上述の構成において、上記放熱部材(20)は、上記フィルム(19)の外周面を全周に亘って覆うように設けられているのが好ましい(第2の発明)。こうすることで、上記フィルム(19)で発生した熱を該フィルム(19)の全周に亘って放熱部材(20)へ伝えて、該放熱部材(20)から放熱することができる。したがって、上記フィルム(19)内部の熱を効率良く外部に逃がすことができ、フィルムコンデンサ(11)の冷却性能を向上することができる。
【0014】
また、上述のように、上記フィルム(19)の外周面を全周に亘って覆うように放熱部材(20)が設けられている構成において、上記樹脂部材(18)は、該放熱部材(20)の外周面を全周に亘って露出させるように設けられているのが好ましい(第3の発明)。
【0015】
これにより、上記フィルム(19)の外周面の全周に亘って上記放熱部材(20)へ効率良く伝えられた熱は、該放熱部材(20)の外周面の全周に亘って外部へ放熱されるため、該放熱部材(20)からより効率良く外部に放熱することができる。したがって、上記フィルムコンデンサ(11)の冷却性能をさらに向上することができる。
【0016】
また、上記放熱部材(20)の内部及び外表面上の少なくとも一方には、液体又は冷媒から成る冷却用熱媒体の流れる流通路(23)が設けられているのが好ましい(第4の発明)。これにより、フィルム(19)内部から放熱部材(20)に伝わる熱を、冷却用熱媒体によって効率良く放熱させることができるため、フィルムコンデンサ(11)をより効率良く冷却することができる。
【0017】
また、上記冷却用熱媒体は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷凍装置(1)の低圧冷媒であるのが好ましい(第5の発明)。こうすることで、上記放熱部材(20)が低圧冷媒によって効率良く冷却されるため、フィルム(19)内で発生した熱が上記放熱部材(20)を介して効率良く放熱される。
【0018】
また、上記冷却用熱媒体は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷凍装置(1)の高圧冷媒であってもよい(第6の発明)。これにより、上記放熱部材(20)が高圧冷媒によって冷却される一方、フィルム(19)で発生した熱が冷凍装置(1)の高圧冷媒に回収されるので、例えば冷凍装置(1)における暖房能力を向上できる。
【0019】
また、上記冷却用熱媒体は、車両(30)のエンジン(31,32)の冷却水であってもよい(第7の発明)。これにより、上記放熱部材(20)が車両(30)のエンジン(31,32)の冷却水によって効率良く冷却され、フィルム(19)内で発生した熱が上記放熱部材(20)を介して効率良く放熱される。
【0020】
さらに、以上の構成において、上記放熱部材(20)は、金属板であるのが好ましい(第8の発明)。このように、放熱部材(20)として、一般的に、熱伝導率の高い金属の板を用いることで、フィルム(19)内で発生した熱を効率良く且つ確実に外部へ放熱することができる。しかも、金属板を用いることで、放熱部材(20)を水分が通過するのを確実に防止することができ、上記フィルム(19)に水分が付着するのを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るフィルムコンデンサ(11)によれば、メタリコン電極(14,15)に非接触状態で且つフィルム(19)の外周面の少なくとも一部を覆うように放熱部材(20)を設け、該放熱部材(20)の少なくとも一部が露出するように上記フィルム(19)の両端部を樹脂部材(18)で封止するようにしたため、上記放熱部材(20)からフィルム(19)内の熱を放熱することができ、フィルム(19)全体を樹脂で封止する従来の構成に比べて、フィルムコンデンサ(11)全体として放熱特性の向上を図れる。
【0022】
また、第2の発明では、上記放熱部材(20)は、上記フィルム(19)の外周面を全周に亘って覆うように配設されているため、該フィルム(19)で発生した熱を放熱部材(20)に効率良く伝えて該放熱部材(20)から外部へ効率良く放熱することができる。これにより、フィルムコンデンサ(11)の冷却性能の向上を図れる。
【0023】
また、第3の発明では、上記樹脂部材(18)は、上記放熱部材(20)の外周面が全周に亘って露出するように設けられているため、フィルム(19)で発生した熱を放熱部材(20)からより効率良く外部へ放熱することができる。これにより、フィルムコンデンサ(11)の冷却性能のさらなる向上を図れる。
【0024】
また、第4の発明では、上記放熱部材(20)の内部及び外表面上の少なくとも一方に、冷却用熱媒体の流れる流通路(23)が形成されているため、該冷却用熱媒体によって該放熱部材(20)を効率良く冷却することができ、これにより、フィルム(19)内の熱を効率良く放熱させることができる。したがって、フィルムコンデンサ(11)の冷却性能をより向上させることができる。
【0025】
また、第5の発明では、上記冷却用熱媒体は、冷凍装置(1)の低圧冷媒であるため、該低圧冷媒によって上記放熱部材(20)を効率良く冷却することができ、フィルムコンデンサ(11)の冷却性能の向上を図れる。一方、第6の発明のように、上記冷却用熱媒体を冷凍装置(1)の高圧冷媒にすることで、該高圧冷媒によって上記放熱部材(20)を冷却できるとともに、フィルム(19)内の熱が冷凍装置(1)の高圧冷媒に回収されるため、例えば冷凍装置(1)における暖房能力の向上も図れる。
【0026】
また、第7の発明では、上記冷却用熱媒体は、車両(30)のエンジン(31,32)の冷却水であるため、該冷却水によって上記放熱部材(20)を効率良く冷却することができ、フィルムコンデンサ(11)の冷却性能の向上を図れる。
【0027】
さらに、第8の発明では、上記放熱部材(20)は金属板であるため、熱伝導率の高い金属板によってフィルム(19)内で発生した熱を効率良く放熱することができるとともに、露出している部分で水分が透過して、該フィルム(19)に付着するのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
《実施形態1》
本発明の実施形態1に係るフィルムコンデンサ(11)は、図1に示すように、巻芯(13)に巻回されたコンデンサ素子(12)の両端部にメタリコン電極(14,15)が設けられたもので、例えばインバータ回路とコンバータ回路との間の平滑コンデンサ等に用いられる。
【0030】
詳しくは、上記フィルムコンデンサ(11)は、コンデンサ素子(12)と、該コンデンサ素子(12)が巻回される巻芯(13)と、該コンデンサ素子(12)に設けられた2つのメタリコン電極(14,15)と、それらのメタリコン電極(14,15)にそれぞれ電気的に接続された外部端子(16,17)と、上記コンデンサ素子(12)の外周面を覆うように配設される金属板(20)(放熱部材)と、上記コンデンサ素子(12)、巻芯(13)、メタリコン電極(14,15)及び外部端子(16,17)を封止するための封止樹脂(18)とを備えている。
【0031】
上記コンデンサ素子(12)は、帯状の絶縁フィルム(PVDF系の誘電体フィルム)の片面にアルミニウム等の金属箔を蒸着させて形成した金属化フィルム(19,19)を2枚重ね合わせてなるもので、上記巻芯(13)の外周に巻回されるように構成されている。このとき、2枚の金属化フィルム(19,19)は巻芯(13)の軸方向にずれるように互いに重ね合わされた状態で、上記巻芯(13)に巻回されている。こうすることで、巻回されたコンデンサ素子(12)における巻芯(13)の軸方向の一端部には、金属化フィルム(19,19)のうちの一方が、該軸方向の他端部には金属化フィルム(19,19)のうちの他方がはみ出した状態となっている(図示省略)。
【0032】
上記巻芯(13)は、金属製の芯部(13a)と、その外周を覆うように配設される樹脂製の円筒部(13b)とを有している。この芯部(13a)及び円筒部(13b)は、軸線方向長さが上記金属化フィルム(19)の幅とほぼ同じ寸法になるように形成されている。そして、上記円筒部(13b)は、上記芯部(13a)の外周面上に外嵌された状態で樹脂接着剤(図示省略)によって該芯部(13a)と接合されている。なお、この樹脂接着剤は、熱伝導性の良い樹脂であることが好ましい。これにより、円筒部(13b)と芯部(13a)との熱伝導性を向上させることができる。
【0033】
この実施形態では、上記芯部(13a)と円筒部(13b)とを樹脂接着剤によって接合しているが、この限りではなく、樹脂接着剤を用いずに、芯部(13a)と円筒部(13b)とを嵌め合いにより接合する構成であってもよい。この構成であっても、上記芯部(13a)と円筒部(13b)とを確実に接触させることで、該円周部(13b)と芯部(13a)との間で熱を確実に伝導させることができる。
【0034】
上記メタリコン電極(14,15)は、巻芯(13)に巻回されて概略円柱状に形成されたコンデンサ素子(12)の軸方向両端部にそれぞれ設けられている。このメタリコン電極(14,15)は、それぞれ、コンデンサ素子(12)の軸方向端部に金属を溶射することによって形成されていて、該コンデンサ素子(12)の軸方向端部においてはみ出している金属化フィルム(19)とそれぞれ電気的に導通している。
【0035】
上記外部端子(16,17)は、その基端部が巻芯(13)の芯部(13a)に対応する位置で、メタリコン電極(14,15)と電気的に接続されている。これらの外部端子(16,17)は、メタリコン電極(14,15)の径方向外方に向かって延びて、その先端部が上記封止樹脂(18)から外方に突出して基板(21)に接続されている。
【0036】
上記金属板(20)は、例えばアルミニウムからなる板状の部材を、円筒状の上記コンデンサ素子(12)の外周面に沿うように丸めて円筒状にしたものである。上記金属板(20)は、上記コンデンサ素子(12)の軸方向両端部に設けられたメタリコン電極(14,15)と電気的に接続しないように、円筒状の該コンデンサ素子(12)よりも軸方向長さが短くなっている。すなわち、上記コンデンサ素子(12)の軸方向両端部の外周面は上記金属板(20)で覆われることなく、上記封止樹脂(18)によって覆われている。また、上記金属板(20)は、上記コンデンサ素子(12)の金属化フィルム(19)に密着するように該コンデンサ素子(12)の外周面上に取り付けられている。
【0037】
なお、本実施形態では、上記金属板(20)をアルミニウム製としたが、この限りではなく、熱伝導性が良くて加工性に優れた金属であればどのような金属材料であってもよい。
【0038】
上記封止樹脂(18)は、図2にも示すように、上記コンデンサ素子(12)の軸方向両端部、メタリコン電極(14,15)及び外部端子(16,17)の基端部を封止するように設けられている。また、この封止樹脂(18)は、上記円筒状の金属板(20)の軸方向両端部も合わせて封止している。すなわち、上記封止樹脂(18)は、フィルムコンデンサ(11)の両端部のみを封止していて、該フィルムコンデンサ(11)の中央部分では上記金属板(20)を露出させるように設けられている。ここで、上記金属板(20)の露出範囲をできるだけ大きくするため、該金属板(20)を覆う封止樹脂(18)の範囲は、できるだけ狭いのが好ましい。
【0039】
なお、上記封止樹脂(18)は、図3に示すように、上記金属板(20)の端部同士の合わせ目にも設けられている。これにより、上記金属板(20)の合わせ目から上記コンデンサ素子(12)が露出するのを防止できる。
【0040】
以上の構成により、上記フィルムコンデンサ(11)に通電した場合に、コンデンサ素子(12)で発生した熱は上記金属板(20)に伝わり、該金属板(20)の外表面から直接、外部へ放熱される。しかも、上記金属板(20)は、上記円筒状のコンデンサ素子(12)の外周面に全周に亘って設けられているため、該コンデンサ素子(12)の内部の熱を該コンデンサ素子(12)の全周に亘って上記金属板(20)に伝えることができ、該金属板(20)の全周から放熱することができる。
【0041】
−実施形態1の効果−
以上より、本実施形態によれば、巻芯(13)に巻回されてなるコンデンサ素子(12)の外周面を覆うように金属板(20)を配設し、該金属板(20)の中央部分が露出するように上記コンデンサ素子(12)の両端部のみを封止樹脂(18)によって封止したため、該金属板(20)の露出部分から上記コンデンサ素子(12)内で発生した熱を外部に放熱することが可能になり、フィルムコンデンサ(11)の放熱特性を向上することができる。
【0042】
しかも、上記金属板(20)は、上記コンデンサ素子(12)の両端部に形成されたメタリコン電極(14,15)とは非接続状態なので、該メタリコン電極(14,15)間の短絡を防止できるとともに、該メタリコン電極(14,15)を介して金属板(20)に熱が伝わることはなく、上記コンデンサ素子(12)から直接、上記金属板(20)に熱が伝わって、該金属板(20)から放熱される。よって、封止樹脂(18)によって覆われた上記メタリコン電極(14,15)の周辺に上記コンデンサ素子(12)内の熱がこもることなく、上記金属板(20)から効率良く放熱することができる。
【0043】
また、上記金属板(20)は、上記コンデンサ素子(12)の外周面を全周に亘って覆うように設けられるため、該コンデンサ素子(12)内で発生した熱を上記外周面全周に亘って金属板(20)に伝えて、該金属板(20)の広い範囲から外部へ放熱することができる。したがって、上記フィルムコンデンサ(11)を効果的に冷却することができる。
【0044】
《実施形態2》
次に、本発明の実施形態2について図4〜図6に基づいて説明する。本実施形態では、フィルムコンデンサ(11)の金属板(20)を圧縮機(3)の低圧部分で冷却するようにしている。なお、上記実施形態1と同一の部分には同一の符号を付し、異なる部分についてのみ以下で説明する。
【0045】
具体的には、図4及び図5に示すように、上記フィルムコンデンサ(11)のコンデンサ素子(12)を覆う金属板(20)の外表面上には、冷却管(22)が設けられている。この冷却管(22)は、上記金属板(22)の外表面に沿って螺旋状に設けられていて、その内部を冷媒が流れるように、空気調和装置(1)(冷凍装置)の冷媒回路(2)に接続されている。すなわち、上記冷却管(22)内に冷媒の流通路(23)が構成されている。
【0046】
詳しくは、上記冷却管(22)は、図6に示す冷媒回路(2)において、圧縮機(3)の低圧部分に接続されていて、該冷却管(22)内の流通路(23)を低圧冷媒が流れるようになっている。
【0047】
ここで、上記冷媒回路(2)について以下で簡単に説明する。
【0048】
上記冷媒回路(2)には、圧縮機(3)と室内熱交換器(4)と膨張弁(5)と室外熱交換器(6)と四路切換弁(7)とが接続されてなる。この実施形態2の圧縮機(3)は、例えばロータリー型の圧縮機であり、吸入管(3a)から吸入した冷媒を内部で圧縮して高圧にし、吐出管(3b)から吐出するように構成されている。なお、上記圧縮機(3)は、スクロール型の圧縮機や揺動スイング型の圧縮機など、他の型式の圧縮機であってもよい。
【0049】
上記室内熱交換器(4)は、室内に設置されている。この室内熱交換器(4)では、冷媒と室内空気との間で熱交換が行われる。一方、上記室外熱交換器(6)は、室外に設置されている。この室外熱交換器(6)では、冷媒と室外空気との間で熱交換が行われる。上記膨張弁(5)は、冷媒を減圧する減圧手段であり、例えば電子膨張弁によって構成されている。
【0050】
上記四路切換弁(7)は、第1から第4までの4つのポートを備えている。この四路切換弁(7)は、第1ポートが圧縮機(3)の吐出管(3b)に、第2ポートが室外熱交換器(6)に、第3ポートが圧縮機(3)の吸入管(3a)に、第4ポートが室内熱交換器(4)に、それぞれ繋がっている。上記四路切換弁(7)は、第1ポートと第4ポートとが繋がると同時に第2ポートと第3ポートとが繋がる状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポートと第2ポートとが繋がると同時に第3ポートと第4ポートとが繋がる状態(図1に破線で示す状態)とに設定が切り換わるように構成されている。
【0051】
そして、上記フィルムコンデンサ(11)の金属板(20)の外周面上に設けられた冷却管(22)は、上記吸入管(3a)に対して、該冷却管(22)の内部を冷媒が並列に流れるように接続されている。これにより、上記冷却管(22)内を上記圧縮機(3)の吸入側の低圧冷媒が流れる。
【0052】
−運転動作−
次に、この空気調和装置(1)の運転動作について説明する。この空気調和装置(1)は、冷房運転と暖房運転とが可能となっている。これらの運転では、圧縮機(3)で冷媒の圧縮動作が行われ、該圧縮機(3)から高圧の冷媒が吐出される。
【0053】
<暖房運転>
暖房運転では、四路切換弁(7)が図6に実線で示す状態となる。また、膨張弁(5)の開度が適宜調節される。
【0054】
上記圧縮機(3)で圧縮された冷媒は、高圧冷媒となって圧縮機(3)外へ流出する。その後、室内熱交換器(4)を流れ、該室内熱交換器(4)で室内空気に対して放熱する。その結果、室内の暖房が行われる。
【0055】
上記室内熱交換器(4)で放熱した後の冷媒は、膨張弁(5)を通過する際に減圧されて、室外熱交換器(6)を流れる。この室外熱交換器(6)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。上記室外熱交換器(6)で蒸発した冷媒は、圧縮機(3)内へ吸入される。このとき、上記圧縮機(3)の吸入管(3a)には、上述のとおり、上記フィルムコンデンサ(11)の金属板(20)の外表面上に配設された冷却管(22)が接続されているため、金属板(20)は、該冷却管(22)内を流れる低圧冷媒によって冷却される。その結果、フィルムコンデンサ(11)のコンデンサ素子(12)内で発生した熱は、上記金属板(20)で効率良く放熱され、該フィルムコンデンサ(11)が冷却される。
【0056】
<冷房運転>
冷房運転では、四路切換弁(7)が図6に破線で示す状態となる。また、膨張弁(5)の開度が適宜調節される。
【0057】
圧縮機(3)で圧縮された冷媒は、高圧冷媒となって圧縮機(3)外へ流出する。この高圧冷媒は、室外熱交換器(6)を流れて、該室外熱交換器(6)で室外空気へ放熱する。
【0058】
上記室外熱交換器(6)で放熱した後の冷媒は、膨張弁(5)を通過する際に減圧されて、室内熱交換器(4)を流れる。この室内熱交換器(4)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。その結果、室内の冷房が行われる。上記室内熱交換器(4)で蒸発した冷媒は、圧縮機(3)内へ吸入される。このとき、冷媒回路(2)の圧縮機(3)の吸入側では、低圧冷媒によってフィルムコンデンサ(11)の金属板(20)が冷却される。その結果、該フィルムコンデンサ(11)内のコンデンサ素子(12)で発生した熱が上記金属板(20)を介して効率良く放熱される。
【0059】
−実施形態2の効果−
以上より、この実施形態によれば、上記フィルムコンデンサ(11)の金属板(20)の外表面上に螺旋状の冷却管(22)を設けて、該冷却管(22)内に冷媒回路(2)の低圧冷媒を流すようにしたため、該低圧冷媒によって上記金属板(20)を効率良く冷却することができ、コンデンサ素子(12)内で発生した熱を該金属板(20)から効率良く放熱することができる。したがって、上記フィルムコンデンサ(11)の冷却性能の向上を図れる。
【0060】
−実施形態2の変形例−
この変形例では、上記フィルムコンデンサ(11)の金属板(20)の外表面上に配設される冷却管(22)が、冷媒回路(2)内の高圧部分に接続される点で上記実施形態2と異なる。
【0061】
具体的には、図7に示すように、上記冷却管(22)は圧縮機(3)の吐出管(3b)に対して並列に接続されている。これにより、該圧縮機(3)から吐出された高圧冷媒が上記冷却管(22)内を流れて、上記フィルムコンデンサ(11)の金属板(20)を冷却することができる。
【0062】
このとき、上記フィルムコンデンサ(11)の金属板(20)の熱は、上記高圧冷媒によって回収されるため、例えば、暖房運転の場合、室内熱交換器(4)では、上述のようにしてフィルムコンデンサ(11)から奪った熱も室内へ放出される。つまり、暖房運転の場合には、フィルムコンデンサ(11)から回収した熱を室内の暖房に利用することができる。
【0063】
よって、上述の構成により、フィルムコンデンサ(11)を効率良く冷却できるとともに、暖房運転時の暖房能力の向上を図ることができる。
【0064】
《実施形態3》
この実施形態3では、フィルムコンデンサ(11)を自動車等の車両(30)に搭載している点が上記実施形態2と異なる。なお、上記フィルムコンデンサ(11)の構成は、上記実施形態2と同じなので、該フィルムコンデンサ(11)の構成についての説明は省略する。
【0065】
図8に示すように、車両(30)は、そのエンジン(発動機)として、内燃機関(31)及び電気モータ(32)とを備えている。つまり、車両(30)は、内燃機関(31)で発生する動力と、電気モータ(32)の動力とを駆動源とする、いわゆるハイブリッド車両である。
【0066】
図9に示すように、上記車両(30)には、車両前側のエンジンルーム内に、上記内燃機関(31)及び電気モータ(32)と、これらを冷却するためのエンジン冷却水と外気との熱交換を行うためのラジエータ(33)とが設けられている。そして、上記エンジンルーム内には、図9に示すように、内燃機関(31)を冷却するための第1冷却回路(31a)と、電気モータ(32)を冷却するための第2冷却回路(32a)とが設けられている。第1冷却回路(31a)及び第2冷却回路(32a)には、冷却用熱媒体としての冷却水が充填されている。
【0067】
上記第1冷却回路(31a)には、ラジエータ(33)の第1放熱部(33a)と内燃機関(31)と第1ウォータポンプ(34)とが接続されている。この第1冷却回路(31a)では、第1ウォータポンプ(34)によって冷却水が循環され、内燃機関(31)の冷却が行われる。具体的に、第1ウォータポンプ(34)によって搬送される冷却水は、内燃機関(31)のシリンダブロックやシリンダヘッドの冷却に利用される。この内熱機関(31)から熱を奪った冷却水は、ラジエータ(33)によって空冷された後、第1ウォータポンプ(34)の流入側へ送られる。
【0068】
上記第2冷却回路(32a)には、ラジエータ(33)の第2放熱部(33b)と電気モータ(32)と第2ウォータポンプ(35)とが接続されている。また、第2冷却回路(32a)には、冷却管(22)及びフィルムコンデンサ(11)が設けられている。ここで、この実施形態のフィルムコンデンサ(11)は、電気モータ(32)のインバータ回路の回路基板に搭載されているものである。
【0069】
上記第2冷却回路(32a)では、第2ウォータポンプ(35)によって搬送される冷却水が、電気モータ(32)の冷却に利用される。電気モータ(32)から熱を奪った冷却水は、ラジエータ(33)によって空冷された後、一部が冷却管(22)へ分流する。ここで、フィルムコンデンサ(11)では、コンデンサ素子(12)が通電状態となっている。このため、コンデンサ素子(12)の熱は、その外周側を覆う金属板(20)に伝わり、該金属板(20)の外表面上に配設された上記冷却管(22)の内部を流れる冷却水へ放出される。その結果、コンデンサ素子(12)が外周側から冷却される。以上のようにしてコンデンサ素子(12)の冷却に利用された水は、冷却管(22)を流出して第2ウォータポンプ(35)の流入側へ送られる。
【0070】
−実施形態3の効果−
以上より、この実施形態によれば、フィルムコンデンサ(11)のコンデンサ素子(12)の外周側を覆う金属板(20)の外表面上に配設される冷却管(22)を、エンジンの冷却水が循環する冷却回路(32a)に接続し、該冷却管(22)内にエンジン冷却水を流すようにしたため、該エンジン冷却水によって上記コンデンサ素子(12)を効果的に且つ確実に冷却することができる。
【0071】
《その他の実施形態》
上記各実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0072】
上記各実施形態では、フィルムコンデンサとして、PVDF系の誘電体フィルムを用いるようにしているが、これに限らず、フィルムコンデンサとして機能する材料であれば、どのようなフィルム材料であってもよい。
【0073】
また、上記各実施形態では、コンデンサ素子(12)の外周側を覆うように金属板(20)を配設しているが、この限りではなく、該コンデンサ素子(12)で発生した熱を放熱できるような熱伝導率の高い材料であればどのような材料であってもよい。このような材料としては、例えば、炭素繊維シートなどが考えられる。なお、金属以外の熱伝導率の高い材料を用いる場合、水分が通過して上記コンデンサ素子(12)に付着しないように、例えば該コンデンサ素子(12)を防水シート等で覆うなどの防水対策を施すのが好ましい。
【0074】
また、上記各実施形態では、コンデンサ素子(12)の外周面を全周に亘って金属板(20)で覆うようにしているが、この限りではなく、該コンデンサ素子(12)の外周面の少なくとも一部を覆うようにしてもよい。さらに、上記金属板(20)が露出する部分も、外周面の全周でなくてもよく、該外周面の少なくとも一部が露出していればよい。
【0075】
また、上記各実施形態では、コンデンサ素子(12)の外周面を金属板(20)によって覆い、その合わせ目を封止樹脂(18)によって封止するようにしているが、この限りではなく、上記コンデンサ素子(12)の外周面を円筒状の部材によって覆うようにしてもよい。こうすれば、封止樹脂(18)によって合わせ目を封止する必要がなくなるため、製造作業の軽減を図れるとともに、上記円筒状の部材の外周面を全周に亘って確実に露出させることができる。
【0076】
また、上記実施形態2、3では、コンデンサ素子(12)の外周側を覆う金属板(20)の外表面上に冷却管(22)を設けるようにしているが、この限りではなく、該金属板(20)内に冷媒や冷却水の流通路(23)を形成してもよい。
【0077】
また、上記実施形態2では、室内の冷房と暖房とを切り換えて行う空気調和装置において、本発明を適用するようにしている。しかしながら、冷媒回路(10)で冷凍サイクルを行いながら、水を加熱する給湯器や、他のヒートポンプ装置に本発明を適用するようにしても良い。
【0078】
また、上記実施形態3では、フィルムコンデンサ(11)を冷却するための冷却管(22)を第2冷却回路(32a)に接続しているが、この限りではなく、第1冷却回路(31a)に接続するようにしても良い。さらに、上記冷却管(22)を接続する位置も、上記第2冷却回路(32a)において、第2ウォータポンプ(35)と電気モータ(32)の流入側との間や、電気モータ(32)の流出側とラジエータ(33)の流入側との間であっても良い。また、上記第1冷却回路(31a)の任意の箇所に上記冷却管(22)を接続するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明は、巻芯にフィルムが巻回されてなるフィルムコンデンサに特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施形態1に係るフィルムコンデンサの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】フィルムコンデンサの外観を示す図である。
【図3】図2におけるIII-III線断面図である。
【図4】実施形態2に係るフィルムコンデンサの外観を示す図である。
【図5】図4におけるV-V線断面図である。
【図6】フィルムコンデンサの冷却管が圧縮機の吸入側に接続された空気調和装置の冷媒回路の配管系統図である。
【図7】フィルムコンデンサの冷却管が圧縮機の吐出側に接続された空気調和装置の冷媒回路の配管系統図である。
【図8】実施形態3に係る車両の概略構成図である。
【図9】車両のエンジンの冷却回路の概略構成図である。
【符号の説明】
【0081】
1 空気調和装置(冷凍装置)
2 冷媒回路
3 圧縮機
3a 吸入管
3b 吐出管
11 フィルムコンデンサ
12 コンデンサ素子
13 巻芯
13a 芯部
13b 円筒部
14,15 メタリコン電極
16,17 外部端子
18 封止樹脂(樹脂部材)
19 金属化フィルム(フィルム)
20 金属板(放熱部材)
21 基板
22 冷却管
23 流通路
30 車両
31 内燃機関(エンジン)
31a 第1冷却回路
32 電気モータ(エンジン)
32a 第2冷却回路
33 ラジエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯(13)に巻回されたフィルム(19)の両端にメタリコン電極(14,15)が形成されたフィルムコンデンサであって、
上記メタリコン電極(14,15)に対して非接続の状態で且つ上記フィルム(19)の外周面の少なくとも一部を覆うように配設される放熱部材(20)と、
上記放熱部材(20)の少なくとも一部分が露出するように、上記フィルム(19)の両端部及び上記メタリコン電極(14,15)を封止する樹脂部材(18)とを備えていることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
請求項1において、
上記放熱部材(20)は、上記フィルム(19)の外周面を全周に亘って覆うように配設されていることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項3】
請求項2において、
上記樹脂部材(18)は、上記放熱部材(20)の外周面を全周に亘って露出させるように設けられていることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項4】
請求項1において、
上記放熱部材(20)の内部及び外表面上の少なくとも一方には、液体又は冷媒から成る冷却用熱媒体の流れる流通路(23)が設けられていることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項5】
請求項4において、
上記冷却用熱媒体は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷凍装置(1)の低圧冷媒であることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項6】
請求項4において、
上記冷却用熱媒体は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷凍装置(1)の高圧冷媒であることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項7】
請求項4において、
上記冷却用熱媒体は、車両(30)のエンジン(31,32)の冷却水であることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つにおいて、
上記放熱部材(20)は、金属板であることを特徴とするフィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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