説明

フィルム剥離装置

【課題】薄い板状部材であっても板状部材を変形させずに、板状部材の片面又は両面に貼着された保護フィルムを好適に剥離させることができるフィルム剥離装置の提供。
【解決手段】本剥離機構4は、板状部材を移送する板状部材移送手段40と、気体噴射ユニット46を有する剥離手段41と、保護フィルムBを移送するフィルム除去手段42,43とを備え、板状部材移送手段40により板状部材Aを移送させつつ、剥離させた保護フィルムBと板状部材Aとの間に気体噴射ユニット46より気体を噴射させることにより保護フィルムB全体を順次剥離させるようにし、剥離手段41は、板状部材Aの上面及び/又は下面側に気体噴射ユニット46,70を配置するとともに、板状部材Aの気体噴射ユニット46,70とは反対面側に板状部材支持部47,71を備え、板状部材支持部47,71に反力をとって噴射された気体による圧力に対抗するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板、液晶パネル、半導体ウエハー等の板状部材の製造過程において基板等の板状部材の片面又は両面に貼着された保護フィルムを板状部材より剥離させるためのフィルム剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板の製造では、絶縁性の基板本体の片面又は両面に積層させた銅箔等からなる導電層の上面に感光性を有するフォトレジスト層を形成した後、フォトレジスト層の表面に保護フィルムを貼着し、露光前のフォトレジスト層を保護するようにしている。
【0003】
そして、この保護フィルムは、露光されたフォトレジスト層を現像してエッチング処理用のマスクパターンを形成する際に不要であるため、配線パターン像をフォトレジスト層に所定時間露光した後に剥離されるようになっている。
【0004】
この保護フィルムを基板より剥離させる作業には、フィルム剥離装置が使用され、このフィルム剥離装置としては、例えば図9に示すように、基板の片面又は両面に貼着された保護フィルムの端縁部を基板より剥離させる端部剥離機構を備え、この端部剥離機構により剥離された保護フィルムの端縁部を切掛けとして本剥離機構で順次保護フィルム全体を基板より剥離させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
従来の本剥離機構206には、端部剥離機構200により保護フィルムの端縁部を剥離させた基板を板状部材移送機構207により順次移送させつつ、基板の上下面側に配置された気体噴射ユニット208,208より剥離させた保護フィルム端縁部と基板表面との間に向けて圧縮空気を噴射し、そのエアナイフ効果により保護フィルムを剥離させ、保護フィルムの剥離させた部分を互いに対向配置の一対の無端ベルト209,209間に巻き込み持ち上げることにより保護フィルム全体を基板表面より剥離させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−83974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、基板表面部に向けて圧縮空気を噴射するため薄い基板では噴射された圧縮空気に押圧されて基板ごと捲れ上がってしまう等して上下方向に歪みが生じ、このような基板の変形が装置の停止や故障の原因となる虞があった。
【0008】
そこで本発明は、このような従来の問題に鑑み、基板等の板状部材が薄いものであっても板状部材を変形させずに、板状部材の片面又は両面に貼着された保護フィルムを好適に剥離させることができるフィルム剥離装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、上下片面又は上下両面に保護フィルムが貼着された板状部材より前記保護フィルム端縁部の一部又は全部を剥離させた切掛け部を形成する端部剥離機構と、該端部剥離機構の板状部材移送方向下流側に配置され、前記切掛け部を基点に前記保護フィルム全体を順次剥離させる本剥離機構とを備え、該本剥離機構は、前記板状部材を移送する板状部材移送手段と、前記切掛け部を基点に剥離させた保護フィルムと板状部材表面との間に向けて気体を噴射する気体噴射ユニットを有する剥離手段と、剥離させた保護フィルムを移送するフィルム除去手段とを備え、前記板状部材移送手段により前記板状部材を移送させつつ、前記切掛け部を基点に剥離させた保護フィルムと前記板状部材との間に前記気体噴射ユニットより気体を噴射させることにより前記保護フィルム全体を順次剥離させるようにしてなるフィルム剥離装置において、前記剥離手段は、前記移送される板状部材の上面側及び/又は下面側に前記気体噴射ユニットを配置するとともに、前記板状部材の前記気体噴射ユニットとは反対面側に該反対面を支持する板状部材支持部を備え、該板状部材支持部に反力をとって前記板状部材が前記噴射された気体による圧力に対抗するようにしたことにある。
【0010】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記剥離手段は、前記気体噴射ユニットを板状部材上面側に配置するとともに前記板状部材支持部を板状部材下面側に配置した上面側用剥離手段と、前記気体噴射ユニットを板状部材下面側に配置するとともに前記板状部材支持部を板状部材上面側に配置した下面側用剥離手段とをもって構成され、前記上面側用剥離手段と前記下面側用剥離手段とが板状部材移送方向で互いに間隔を置いて配置されたことにある。
【0011】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記板状部材支持部は、回転軸を板状部材幅方向に向けた複数の受けローラーを板状部材移送方向で互いに平行配置に備えてなることにある。
【0012】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項3の構成に加え、隣り合う前記各受けローラーは、互いに同期して回転するようにしてなることにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るフィルム剥離装置は、上述したように、上下片面又は上下両面に保護フィルムが貼着された板状部材より前記保護フィルム端縁部の一部又は全部を剥離させた切掛け部を形成する端部剥離機構と、該端部剥離機構の板状部材移送方向下流側に配置され、前記切掛け部を基点に前記保護フィルム全体を順次剥離させる本剥離機構とを備え、該本剥離機構は、前記板状部材を移送する板状部材移送手段と、前記切掛け部を基点に剥離させた保護フィルムと板状部材表面との間に向けて気体を噴射する気体噴射ユニットを有する剥離手段と、剥離させた保護フィルムを移送するフィルム除去手段とを備え、前記板状部材移送手段により前記板状部材を移送させつつ、前記切掛け部を基点に剥離させた保護フィルムと前記板状部材との間に前記気体噴射ユニットより気体を噴射させることにより前記保護フィルム全体を順次剥離させるようにしてなるフィルム剥離装置において、前記剥離手段は、前記移送される板状部材の上面側及び/又は下面側に前記気体噴射ユニットを配置するとともに、前記板状部材の前記気体噴射ユニットとは反対面側に該反対面を支持する板状部材支持部を備え、該板状部材支持部に反力をとって前記板状部材が前記噴射された気体による圧力に対抗するようにしたことにより、基板等の薄い板状部材であっても気体噴射による板状部材の変形を抑え、好適に保護フィルムを板状部材より剥離させることができる。
【0014】
また、本発明において、前記剥離手段は、前記気体噴射ユニットを板状部材上面側に配置するとともに前記板状部材支持部を板状部材下面側に配置した上面側用剥離手段と、前記気体噴射ユニットを板状部材下面側に配置するとともに前記板状部材支持部を板状部材上面側に配置した下面側用剥離手段とをもって構成され、前記上面側用剥離手段と前記下面側用剥離手段とが板状部材移送方向で互いに間隔を置いて配置されたことにより、板状部材の変形を抑制しつつ板状部材の上下両面に貼着された保護フィルムを剥離させることができる。
【0015】
更に本発明において、前記板状部材支持部は、回転軸を板状部材幅方向に向けた複数の受けローラーを板状部材移送方向で互いに平行配置に備えてなることにより、基板等の板状部材の変形を抑えつつ、板状部材を好適に移送させることができる。
【0016】
更にまた本発明において、隣り合う前記各受けローラーは、互いに同期して回転するようにしてなることにより、基板等の板状部材を好適に支持することができ、板状部材の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るフィルム剥離装置の一例の概略示す側面図である。
【図2】図1中の端部剥離機構の一例の概略を示す部分拡大側面図である。
【図3】同上のフィルム端部剥離手段の概略を示す正面図である。
【図4】図1中の本剥離機構における上面側保護フィルムの本剥離動作の状態を示す部分拡大側面図である。
【図5】同上の下面側保護フィルムの本剥離動作の状態を示す部分拡大側面図である。
【図6】本発明に係るフィルム剥離装置の他の一例の概略を示す側面図である。
【図7】図5中の本剥離機構における上面側保護フィルムの本剥離動作の状態を示す部分拡大側面図である。
【図8】同上の下面側保護フィルムの本剥離動作の状態を示す部分拡大側面図である。
【図9】従来のフィルム剥離装置の一例の概略を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係るフィルム剥離装置の実施の態様を図1〜図5に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号Aは板状部材である基板、符号1はフィルム剥離装置である。
【0019】
また、ここで板状部材移送方向とは、図1中の右側より左側に向けた板状部材である基板Aを移送させる方向を言い、板状部材幅方向とは、板状部材移送方向と水平方向で交差する方向を言うものとする。
【0020】
基板Aは、絶縁性の基板本体の両面に積層させた銅箔等からなる導電層の表面に感光性を有するフォトレジスト層が形成され、さらにフォトレジスト層の表面に保護フィルムBが貼着されている。
【0021】
フィルム剥離装置1は、基板Aを移送する板状部材移送機構2を備えるとともに、その板状部材移送方向の上流側に端部剥離機構3を、下流側に本剥離機構4をそれぞれ備え、板状部材移送機構2、端部剥離機構3及び本剥離機構4が図示しない制御ユニットによる命令に基づきシーケンス制御され、同期して動作するようになっている。
【0022】
板状部材移送機構2は、回転軸を板状部材幅方向に向けた複数の案内ローラー5,5...を板状部材移送方向に間隔を置いた配置に備え、この案内ローラー5を図示しないモーター等からなる駆動手段により回転させるようになっている。
【0023】
また、板状部材移送機構2は、装置フレーム6にエアシリンダ7を介して上下動可能に支持された支持枠8と、支持枠8に回転自在に支持されたピンチローラー9とを備え、エアシリンダ7を動作させてピンチローラー9を基板A表面に圧接させ、案内ローラー5とピンチローラー9との間に基板Aを挟むことにより案内ローラー5による動力が基板Aに伝達され、基板Aが板状部材移送方向に向けて移送されるようになっている。
【0024】
このフィルム剥離装置1では、板状部材移送機構2により基板Aの移送方向前端部を端部剥離機構3に送られ、この端部剥離機構3により基板Aの片面又は両面に貼着された保護フィルムBの端縁部Baの一部又は全部を剥離させて切掛け部を形成し、その切掛け部を基点に本剥離機構4で保護フィルムB全体を順次剥離させるようになっている。
【0025】
端部剥離機構3は、図2、図3に示すように、基板Aを所定の位置に固定するための板状部材固定手段10と、保護フィルムBの端縁部Baを基板Aより剥離させるフィルム端部剥離手段11とを備え、板状部材移送機構2により送り込まれた基板Aの端部を板状部材固定手段10により固定し、その状態で保護フィルムB端縁部Baをフィルム端部剥離手段11により剥離させるようになっている。
【0026】
フィルム端部剥離手段11は、例えば、回転軸を板状部材移送方向に向けた標準圧接ローラー15及び回転軸を板状部材幅方向に傾けた傾斜圧接ローラー16を板状部材幅方向に並べて支持させた上下一対の支持部材20,21を有し、上下両支持部材20,21が両圧接ローラー15,16を基板A表面に圧接させる位置と離反させた位置との間で相対移動するようにしてなるローラーユニット17を備え、両圧接ローラー15,16を基板A表面に圧接させた状態でローラーユニット17を板状部材幅方向で移動させることにより、保護フィルム端縁部Baに方向の異なる力が作用して基板Aより剥離させるようになっている。
【0027】
そして、端部剥離機構3で保護フィルム端縁部Baの一部又は全部を剥離させて切掛け部が形成された基板Aは、板状部材移送機構2により下流側の本剥離機構4に移送される。
【0028】
本剥離機構4は、基板Aを移送する板状部材移送手段40と、切掛け部、即ち保護フィルム端縁部Baを基点にして保護フィルムB全体を順次剥離させる剥離手段41と、剥離手段41により剥離させた保護フィルムBを移送して装置より除去するフィルム除去手段42,43とを備え、板状部材移送手段40により基板Aを移送させつつ剥離手段41により保護フィルムB全体を順次剥離させるようになっている。
【0029】
板状部材移送手段40は、板状部材移送機構2の一部を担い、回転軸を板状部材幅方向に向けた複数の案内ローラー5,5...が板状部材移送方向に間隔を置いた平行配置に備えられ、案内ローラー5,5...を図示しないモーター等からなる駆動手段により回転させることにより板状部材移送方向に向けて基板Aを順次移送させるようになっている。
【0030】
剥離手段41は、板状部材上面側の保護フィルムBを剥離させる上面側用剥離手段44と、板状部材下面側の保護フィルムを剥離させる下面側用剥離手段45とをもって構成され、この上面側用剥離手段44と下面側用剥離手段45とは互いに板状部材移送方向に間隔をおいて配置され、本実施例においては上面側用剥離手段44が板状部材移送方向上流側に下面側用剥離手段45が下流側にそれぞれ配置されている。
【0031】
上面側用剥離手段44は、図1、図4、図5に示すように、板状部材上面側、即ち、基板Aの上面側に配置された上面剥離用気体噴射ユニット46と、板状部材下面側(基板Aの下面側)、且つ上面剥離用気体噴射ユニット46の噴射方向側に配置された上面剥離用板状部材支持部47とを備え、この上面側用剥離手段44に基板Aを板状部材移送方向に向けて通すことにより、板状部材上面側の保護フィルムBを板状部材移送方向先端側より順次剥離させるようになっている。
【0032】
上面剥離用気体噴射ユニット46は、長手方向を板状部材幅方向に向けた円筒状の筒状部材48を備え、筒状部材48の板状部材幅方向に間隔をおいて複数の噴射口49が配置されている。
【0033】
各エア噴射口49,49...は、板状部材移送方向上流側且つ斜め下側に向けて配置され、基板Aと切掛け部を基点にして基板Aより剥離された保護フィルム端縁部Baとの間であって、基板A表面より剥離された部分と貼着された部分との境界部分に向けて圧縮空気が噴射されるようになっている。
【0034】
尚、筒状部材48には、図示しないエアコンプレッサー等の気体供給ユニットより供給ホース48aを通して圧縮空気が供給されるようになっている。
【0035】
また、筒状部材48には、板状部材幅方向に間隔を置いて複数のローラー50が回転自在に備えられている。
【0036】
上面剥離用板状部材支持部47は、回転軸を板状部材幅方向に向けた複数の受けローラー51,51...を備え、各受けローラー51,51...が板状部材移送方向で互いに平行配置且つ上端部が板状部材移送方向で水平面上に並べて配置され、隣り合う各受けローラー51,51...は、互いに当接した配置に備えられ、互いに同期して回転するようになっている。
【0037】
この上面剥離用板状部材支持部47は、上面剥離用気体噴射ユニット46からの気体噴射圧力が影響する範囲に亘って板状部材である基板の下面を支持し、この上面剥離用板状部材支持部47に反力をとって基板Aが気体噴射による圧力に対抗するようになっている。それによって、基板Aが上面側用剥離手段44を通過する際に、薄い基板Aであっても噴射された気体の圧力による変形、即ち基板Aが捲り上がるのを防止することができる。
【0038】
一方、この上面側用剥離手段44の板状部材移送方向上流側には、上面側フィルム除去手段42が配置され、上面側用剥離手段44により剥離させた保護フィルムBを除去するようになっている。
【0039】
この上面側フィルム除去手段42は、図1に示すように、上面剥離用気体噴射ユニット46の上流側部に基板上面と近接するように配置された導入上流側プーリー52と、導入上流側プーリー52の板状部材移送方向下流側上方に導入上流側プーリー52と互いに近接するように配置された導入下流側プーリー53と、導入上流側プーリー52の板状部材移送方向上流側上方に配置された排出上流側プーリー54と、排出上流側プーリー54と上下方向で互いに近接し、且つ導入下流側プーリー53の板状部材移送方向後端側上方に配置された排出下流側プーリー55とを備え、この導入上流プーリー52と排出上流側プーリー54との間に上流側無端ベルト56が、導入下流側プーリー53と排出下流側プーリー55との間に下流側無端ベルト57がそれぞれ斜め方向に向けて掛け回されている。
【0040】
導入下流側プーリー53は、タイミングベルト58を介してモーター59の回転力が伝達され、図中反時計回りに回転し、上部無端ベルト57を図1中矢印の方向に動作させるようになっている。
【0041】
一方、上流側無端ベルト56は、上流側プーリー52,54が下流側プーリー53,55と互いに近接して配置されたことにより、下流側無端ベルト57と互いに対向且つ密接し、下流側無端ベルト57の動作に同調して動作するようになっている。
【0042】
そして、このように構成された上面側フィルム除去手段42では、導入上流側プーリー52と導入下流側プーリー53との間より剥離させた保護フィルムBを両無端ベルト56,57間に導入し、その導入された保護フィルムBを無端ベルト56,57間に挟持した状態で順次搬送し、上面側用剥離手段41により板状部材移送方向先端側より順次剥離させた保護フィルムBを導入側より排出側に向けて除去するようになっている。
【0043】
尚、図中符号60は、剥離させた保護フィルム端部を導入上流側プーリー52と導入下流側プーリー53との間に導く為のエアノズルであって、このエアノズル60より圧縮空気を剥離された保護フィルムBの下面側に吹き付けることにより保護フィルムBの端部を導入上流側プーリー52と導入下流側プーリー53との間に導くようになっている。
【0044】
一方、下面側用剥離手段45は、板状部材下面側に配置される下面側気体噴射ユニット70と、板状部材上面側に配置された下面剥離用板状部材支持部71とを備え、この下面側用剥離手段45に基板Aを板状部材移送方向に向けて通すことにより板状部材下面側の保護フィルムB全体を板状部材移送方向先端側より順次剥離させるようになっている。
【0045】
下面側気体噴射ユニット70は、長手方向を板状部材幅方向に向けた円筒状の筒状部材72を備え、筒状部材72の板状部材幅方向に間隔をおいて複数のエア噴射口73が配置されている。
【0046】
各エア噴射口73,73...は、板状部材移送方向上流側且つ斜め上側に向けて形成され、基板A下面表面と剥離された保護フィルム端縁部Baとの間であって、保護フィルムの剥離された部分と貼着されている部分との境界部分に圧縮空気が噴射されるようになっている。
【0047】
尚、筒状部材72には、図示しないエアコンプレッサー等の気体供給ユニットより供給ホース72aを通して圧縮空気が供給されるようになっている。
【0048】
また、筒状部材72には、板状部材幅方向に間隔を置いて複数のローラー74が回転自在に備えられている。
【0049】
下面剥離用板状部材支持部71は、回転軸を板状部材幅方向に向けた一対の受けローラー75,75を備え、両受けローラー75,75が板状部材移送方向で互いに平行配置に備えられている。
【0050】
隣り合う両受けローラー75,75は、互いに当接した配置に備えられ、互いに同期して回転するようになっている。
【0051】
この下面剥離用板状部材支持部71は、下面剥離用気体噴射ユニット70からの気体噴射圧力が影響する範囲に亘って板状部材である基板の上面を支持し、基板Aがこの下面剥離用板状部材支持部71に反力をとって気体噴射による圧力に対抗するようになっている。それによって、基板Aが下面側用剥離手段45を通過した際に、薄い基板Aであっても噴射された気体から受ける圧力による変形、即ち基板が捲り上がるのを防止することができる。
【0052】
また、この下面側用剥離手段45の板状部材移送方向上流側には、下面側フィルム除去手段43が配置され、下面側用剥離手段45により剥離させた保護フィルムBを除去するようになっている。
【0053】
この下面側フィルム除去手段43は、図1に示すように、下面剥離用噴射ユニット70の板状部材移送方向上流側部に基板下面と近接するように配置された導入上流側プーリー76と、導入上流側プーリー76の板状部材移送方向下流側斜め下方に導入上流側プーリー76と互いに近接するように配置された導入下流側プーリー77と、導入上流側プーリー76の下方に配置された排出上流側プーリー78と、排出上流側プーリー78と板状部材移送方向下流側斜め下方に互いに近接して配置された排出下流側プーリー79とを備え、この導入上流側プーリー76と排出上流側プーリー78との間に上流側無端ベルト80が、導入下流側プーリー77と排出下流側プーリー79との間に下流側無端ベルト81がそれぞれ上下方向に向けて掛け回されている。
【0054】
導入下流側プーリー77は、タイミングベルト58を介してモーター59の回転力が伝達され、図中反時計回りに回転し、下流側無端ベルト81を図中矢印の方向に動作させるようになっている。
【0055】
一方、上流側無端ベルト80は、上流側プーリー76,78が下流側プーリー77,79と互いに近接して配置されたことにより、下流側無端ベルト81と互いに対向且つ密接し、下流側無端ベルト81の動作に同調して動作するようになっている。
【0056】
そして、このように構成された下面側フィルム除去手段43では、導入上流側プーリー76と導入下流側プーリー77との間より剥離させた保護フィルムBを両無端ベルト80,81間に導入し、その導入された保護フィルムBを無端ベルト80,81間に挟持した状態で順次搬送し、下面側用剥離手段45により板状部材移送方向先端側より順次剥離させた保護フィルムBを導入側より排出側に向けて除去するようになっている。
【0057】
尚、図中符号82は、剥離させた保護フィルムB端部を導入上流側プーリー76と導入下流側プーリー77との間に導く為のエアノズルであって、このエアノズル82より圧縮空気を剥離された保護フィルムの下面側に吹き付けることにより保護フィルムの端部を導入上流側プーリー76と導入下流側プーリー77との間に導くようになっている。
【0058】
尚、本発明に係るフィルム剥離装置の形態は上述の実施例の如き構成に限定されるものではなく、例えば、図6〜図8に示す如き構造であってもよい。尚、上述の実施例と同様の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
このフィルム剥離装置90では、上述の上面側用剥離手段44及び下面側用剥離手段45に代えて上面側用剥離手段91及び下側剥離手段92を備え、下側剥離手段92を板状部材移送方向上流側に、上面側用剥離手段91を下流側にそれぞれ配置した構成になっている。
【0060】
この下面側用剥離手段92は、板状部材下面側に配置される下面剥離用気体噴射ユニット70と、板状部材上面側に配置された下面剥離用板状部材支持部93とを備え、下面剥離用板状部材支持部93は、図7に示すように、上面側フィルム除去手段42を構成する導入上流側プーリー52を受けローラーとして使用し、基板Aがこの導入上流側プーリー52に反力を取って下面剥離用気体噴射ユニット70から噴射される圧縮空気の圧力に対抗するようになっている。
【0061】
一方、上面側用剥離手段91は、板状部材上面側に配置される上面剥離用気体噴射ユニット46と、板状部材下面側に配置された上面剥離用板状部材支持部94とを備え、この上面側用剥離手段91に基板Aを板状部材移送方向に向けて通すことにより板状部材上面側の保護フィルム全体を板状部材移送方向先端側より順次剥離させるようになっている。
【0062】
上面剥離用板状部材支持部94は、図8に示すように、板状部材移送機構2を構成する複数の案内ローラー5,5...を受けローラーとして使用し、基板Aがこの案内ローラー5,5...に反力を取って気体噴射ユニット46から噴射される圧縮空気の圧力に対抗するようになっている。
【0063】
尚、上述の各実施例では、剥離手段を上面側用剥離手段及び下面側用剥離手段をもって構成し、両剥離手段を板状部材移送方向で間隔を置いて配置した例について説明したが、上面側用剥離手段又は下面側用剥離手段の何れか一方のみを備えたものであってもよい。
【0064】
また、板状部材支持部の形態は、上述の実施例に示したものに限定されず、例えば、平板状の部材等をもって構成したものであってもよい。
【0065】
更に、板状部材は、上述した基板に限定されるものではなく、本願装置は、液晶パネルや半導体ウエハー等の板状部材の片面又は両面に保護フィルムを貼着させたものにも対応させることができる。
【符号の説明】
【0066】
A 基板
B 保護フィルム
1 フィルム剥離装置
2 板状部材移送機構
3 端部剥離機構
4 本剥離機構4
5 案内ローラー
6 フレーム
7 エアシリンダ
8 支持枠
9 ピンチローラー
10 板状部材固定手段
11 フィルム端部剥離手段
15 標準圧接ローラー
16 傾斜圧接ローラー
17 ローラーユニット
20 上側支持部材
21 下側支持部材
40 板状部材移送手段
41 剥離手段
42 上面側フィルム除去手段
43 下面側フィルム除去手段
44 上面側用剥離手段
45 下面側用剥離手段
46 上面剥離用気体噴射ユニット
47 上面剥離用板状部材支持部
48 筒状部材
49 噴射口
50 ローラー
51 支持ローラー
52 導入上流側プーリー
53 導入下流側プーリー
54 排出上流側プーリー
55 排出下流側プーリー
56 上流側無端ベルト
57 下流側無端ベルト
58 タイミングベルト
59 モーター
60 エアノズル
70 下面側気体噴射ユニット
71 下面剥離用板状部材支持部
72 筒状部材
73 噴射口
74 ローラー
75 支持ローラー
76 導入上流側プーリー
77 導入下流側プーリー
78 排出上流側プーリー
79 排出下流側プーリー
80 上流側無端ベルト
81 下流側無端ベルト
82 エアノズル
90 フィルム剥離装置
91 上面側用剥離手段
92 下面側用剥離手段
93 下面剥離用板状部材支持部
94 上面剥離用板状部材支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下片面又は上下両面に保護フィルムが貼着された板状部材より前記保護フィルム端縁部の一部又は全部を剥離させた切掛け部を形成する端部剥離機構と、該端部剥離機構の板状部材移送方向下流側に配置され、前記切掛け部を基点に前記保護フィルム全体を順次剥離させる本剥離機構とを備え、
該本剥離機構は、前記板状部材を移送する板状部材移送手段と、前記切掛け部を基点に剥離させた保護フィルムと板状部材表面との間に向けて気体を噴射する気体噴射ユニットを有する剥離手段と、剥離させた保護フィルムを移送するフィルム除去手段とを備え、前記板状部材移送手段により前記板状部材を移送させつつ、前記切掛け部を基点に剥離させた保護フィルムと前記板状部材との間に前記気体噴射ユニットより気体を噴射させることにより前記保護フィルム全体を順次剥離させるようにしてなるフィルム剥離装置において、
前記剥離手段は、前記移送される板状部材の上面側及び/又は下面側に前記気体噴射ユニットを配置するとともに、前記板状部材の前記気体噴射ユニットとは反対面側に該反対面を支持する板状部材支持部を備え、該板状部材支持部に反力をとって前記板状部材が前記噴射された気体による圧力に対抗するようにしたことを特徴としてなるフィルム剥離装置。
【請求項2】
前記剥離手段は、前記気体噴射ユニットを板状部材上面側に配置するとともに前記板状部材支持部を板状部材下面側に配置した上面側用剥離手段と、前記気体噴射ユニットを板状部材下面側に配置するとともに前記板状部材支持部を板状部材上面側に配置した下面側用剥離手段とをもって構成され、前記上面側用剥離手段と前記下面側用剥離手段とが板状部材移送方向で互いに間隔を置いて配置された請求項1に記載のフィルム剥離装置。
【請求項3】
前記板状部材支持部は、回転軸を板状部材幅方向に向けた複数の受けローラーを板状部材移送方向で互いに平行配置に備えてなる請求項1又は2に記載のフィルム剥離装置。
【請求項4】
隣り合う前記各受けローラーは、互いに同期して回転するようにしてなる請求項3に記載のフィルム剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−86941(P2013−86941A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230334(P2011−230334)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(598091088)株式会社エムイーイー (3)
【Fターム(参考)】