説明

フィルム巻き包装装置における拡張機の改良

【課題】二軸延伸後のフィルムの拡張中に起こることがあるフィルムの縁部における紐状部の形成を防止するようにしたフィルム巻き包装装置における拡張機の改良を提供する。
【解決手段】延伸ローラにより幅方向と長さ方向の二軸に延伸されたプラスチックフィルムを幅方向に拡張するための拡張機15を含み、該拡張機が、円弧状固定軸18に回転自在に装着された多数のローラ20を有し、該ローラの各々は、中央のローラ及び両端のローラを除いて、幅方向に末広がりの円錐形状を有し、端のローラ20Aを、他のローラ20Bの円錐形状とは逆の、幅方向に先細りの円錐形状としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム巻き包装装置に関し、特に該装置において二軸に延伸されたプラスチックフィルムを、荷物に巻く前に拡張させるための拡張機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムを二軸に延伸させ、これを拡張させてから荷物に巻き付けて包装する装置は、フィルムの使用量を減少させる観点から、開発されたものであって、当該技術分野でよく知られている。その代表的な公知技術は特許文献1に開示されている。添付図面の図1乃至3に示すように、特許文献1に開示されたフィルム巻き包装装置は、ベース1に回転駆動されるように設置され、フィルム巻き包装されるべき荷物、例えば積み重ねられた多数のダンボール箱2がパレット3に載せて置かれるようになったターンテーブル4と、ベースに垂直に設置された支持ポスト5に昇降可能に設けられ、上下に往復駆動されるようになったキャリッジ6と、を含む。キャリッジ6には、プラスチックフィルムFのロール7と、フィルムロールの下流に配置された一対の延伸ローラ8とが設けられている。延伸ローラ8の各々は、多数の外周突条部9と外周溝10とを交互に有し、一方の延伸ローラの外周突条部が他方の延伸ローラの外周溝に噛み合っていて、一対の延伸ローラのうち下流側のロールが上流側のロールよりも高い周速度を有するように、かつ互いに反対方向に回転駆動されるようになっている。これは、モータ11で回転される下流側の延伸ローラの軸に小径のスプロケット12を、上流側の延伸ローラの軸に大径スプロケット13を設け、両者をチエーン14で連結することによって達成される。かくして、外周突条部と外周溝との噛み合いにより、一対の延伸ローラは、その間に通されるプラスチックフィルムを幅方向と長さ方向に二軸延伸するように機能する。
【0003】
延伸ローラの下流側には、幅方向に延伸されたプラスチックフィルムを幅方向に広げるための、全体的に円弧状に構成された拡張機15が、立て向きに配置されている。拡張機15は、キャリッジ6に枢着された一対の支持アーム16、16に位置調節可能に固定されたブラケット17、17と、両端がブラケット17、17に固定された円弧状支持軸18と、図4に断面で示すように、支持軸18上に各々一対の軸受け19を介して回転自在に装着された多数のローラ20と、からなる。多数のローラ20は、そのうちの中央のローラ20aを除いて、外形が全て同じで、それぞれ幅方向に末広がりの円錐形状を有している。図4の断面から分かるように、中央のローラ20aは、直円筒形であり、両端に、隣接したローラの小径側の端が入り込む座ぐり21、21を有している。他のロールもその大径側の端に、隣接したローラの小径側の端が入り込む座ぐり21を有している。ローラは、合成樹脂、ゴム、金属等任意適当な材料で成形されるが、フィルムの滑り易さを確保する観点から特に硬質の合成樹脂材料を用いて成形される。
【0004】
一対のガイドローラ22が、広げられたプラスチックフィルムを荷物に向かって案内するために拡張機15の下流に配置され、支持アーム16、16間に回転自在に装着されている。支持アーム16、16間の連結ロッド23とキャリッジ6との間には、ガスシリンダからなるばね手段24が連結されていて、荷物へのフィルムの巻き付け中、ガイドローラを通して引かれるプラスチックフィルムの引っ張り力に抗して支持アームを押すように働いている。なお、25は、フィルムの縁に係合してフィルム幅を規制するための、拡張機の上流側と下流側で、ブラケット17に設けられた幅制限手段である。26は、両端のローラに隣接して支持軸18に固定されたローラ抜け止めストッパーである。
【0005】
上記フィルム巻き包装装置の作動について説明すると、プラスチックフィルムがそのロール7から引き出されて順次、延伸ローラ8の間、拡張機15のローラ20上、ガイドローラ22に通され、ターンテーブル4の回転により、その上に載せたパレット3上の多数の積み重ねダンボール箱2である荷物の周りに巻き付けられ、キャリッジ6の上下往復動によりフィルムが荷物の高さ全体にわたって重ね巻きされる。フィルムの巻き付け中、延伸ローラ8間を通るフィルムは、延伸ローラ8の外周突条部9と溝10の噛み合い作用と回転速度差により強制的に幅方向と長さ方向に同時に延伸され、かくして延伸されたプラスチックフィルムは、拡張機15の円弧状に配置されたローラ上を引かれることにより、幅方向に広げられ。プラスチックフィルムは、広げられた状態で荷物に巻かれる。ローラによるフィルムの幅方向の拡張作用は、各ローラが幅方向に末広がりの円錐形状をなしていることによりローラには直径の小さい方から大きい方にわたって周速度に差ができ、そのため周速度の大きい方に引っ張られることによる。
【0006】
フィルム巻き中、キャリッジの上下往復駆動により、拡張機15も上下に移動するが、拡張機の上方移動によりフィルムがローラに沿って下方にずれ、また下方移動によりフィルムが上方にずれる傾向があり、そのため、時として、制限手段25の幅規制の作用とも関連してフィルムの縁部にしわ寄せによる紐状部が形成される現象が起こることがあった。
【0007】
本発明者は、このような現象がどうして起こるのかについて研究を重ねた結果、拡張機15の両端のローラの形状にあることを突き止めた。即ち、両端のローラも他のローラの形状と同じように幅方向に末広がりの円錐形状を有していることから、先に述べたような、ローラのフィルムに対する拡張作用と同様の作用がフィルムの縁部に対しても生じ、それによりフィルムの縁部に紐状部が形成される現象が起こることが分かった。
【0008】
【特許文献1】特開平3−226414
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記のような拡張機によるフィルムの拡張中に起こることがあるフイルムの縁部における紐状部の形成を防止するようにしたフィルム巻き包装装置における拡張機の改良を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、延伸ローラにより幅方向と長さ方向の二軸に延伸されたプラスチックフィルムを幅方向に拡張するための拡張機を含み、該拡張機が、円弧状固定軸に回転自在に装着された多数のローラを有し、該ローラの各々は、中央のローラを除いて幅方向に末広がりの円錐形状を有している、フィルム巻き包装装置における拡張機において、前記多数のローラのうち両端のローラを、他のローラの円錐形状と逆の、幅方向に先細りの円錐形状としたことを特徴とするフィルム巻き包装装置における拡張機を提供することによって達成される。両端のローラは、前記他のローラ1個分を省き、略その分だけ長さを長く形成したものであってもよい。
【0011】
本発明の好ましい形態では、拡張機の中央のローラはその両端に隣接したローラの小径側の端が入り込む座ぐりを有し、他のローラもその大径側の端に、隣接したローラの小径側の端が入り込む座ぐりを有し、両端のローラは、その大径側の端が隣接したローラの前記座ぐり入り込むような形状寸法を有しているのがよい。
【0012】
本発明によれば、延伸ローラによって延伸されたプラスチックフィルムが、拡張機の円弧状に配置されたローラ上を引かれるとき、フィルムは、各ローラが幅方向に末広がりの円錐形状をなしていることによりローラには直径の小さい方から大きい方にわたって周速度に差ができているため、周速度の大きい方に引っ張られることで幅方向に広げられが、フィルムが拡張機上でずれようとすると、両端のローラが幅方向に先細りの円錐形状をなしていることにより、ローラには他のローラと逆に、直径の大きい方から小さい方にわたって周速度に差ができているため周速度の大きい方にフィルムが遭遇することで幅方向のずれを食い止める。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来周知のフィルム巻き包装装置の全体の概略側面図である。
【図2】図1に示す装置の拡張機を含むキャリッジ部分の平面図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】拡張機のローラの一部の断面図である。
【図5】本発明による拡張機の半裁詳細側面図である。
【図6】本発明による拡張機のローラを示す側面図である。
【図7】本発明の他の実施形態による拡張機の図5と同様な図であって、端のローラを断面で示す。
【図8】図7に示す拡張機の端のローラの側面図である。
【0014】
図面の図1ないし3に示すフィルム巻き包装装置は、従来公知のものであって先に詳細に説明しているので、以下の説明は拡張機との関連においてのみとする。
【0015】
延伸ローラ8の下流側に配置される拡張機15は、延伸ローラ8によって幅方向に延伸されたプラスチックフィルムを幅方向に広げるためのであること、全体的に円弧状に構成されること、立て向きに配置されること、先に説明したとおりである。拡張機15は、図5に示すようにキャリッジ6に枢着された一対の支持アーム16、16に位置調節可能に固定されたブラケット17、17と、両端がブラケット17、17に固定された円弧状支持軸18と、図4に断面で示すように、支持軸18上に各々一対の軸受け19を介して回転自在に装着された多数のローラ20と、からなる。多数のローラ20は、そのうちの中央のローラ20a及び両端のローラ20A(図6も参照)を除いて、外形が全て同じで、それぞれ幅方向に末広がりの円錐形状を有している。図4の断面から分かるように、中央のローラ20aは、直円筒形であり、両端に、隣接したローラの小径側の端が入り込む座ぐり21、21を有している。他のロール20B(図6参照)もその大径側の端に、隣接したローラの小径側の端が入り込む座ぐり21を有している。ローラは、合成樹脂、ゴム、金属等任意適当な材料で成形されるが、フィルムの滑り易さを確保する観点から特に硬質の合成樹脂材料を用いて成形されるのがよい。
【0016】
両端のローラ20Aは、図5及び6からはっきり分かるように、他のローラ20Bの円錐形状とは逆の、幅方向に先細りの円錐形状を有している。両端のローラ20Aは、またその大径側の端が隣接したローラの前記座ぐりに入り込むような形状寸法を有しているのがよい。
【0017】
延伸ローラによって延伸されたプラスチックフィルムが、拡張機15の円弧状に配置されたローラ上を引かれるとき、フィルムは、各ローラが幅方向に末広がりの円錐形状をなしていることによりローラ20Bには直径の小さい方から大きい方にわたって周速度に差ができているため、周速度の大きい方に引っ張られることで幅方向に広げられる。フィルムが拡張機上でずれようとすると、両端のローラ20Aが幅方向に先細りの円錐形状をなしていることにより、ローラには他のローラとは逆に、直径の大きい方から小さい方にわたって周速度に差ができているため周速度の大きい方にフィルムの縁部が遭遇することでフィルムの幅方向のずれを食い止めることができる。
【0018】
包装されるべき荷物に巻かれる延伸フィルムが、拡張機の円弧状配置の多数のローラ上を引かれるとき、フィルムの性状や荷物の種類によってはフィルムの幅が変動する。フィルムの幅が狭くなると、フィルムの縁部がフィルムの幅方向に先細り形状の端ローラとその隣のローラとの間に食い込む減少が稀ではあるが起こることがある。
【0019】
図7は、このような不都合を防止するために設計された、本発明の変形態様による拡張機を示す。かかる拡張機は、図5に示す拡張機と端のローラの大きさにおいてのみ異なっている。図7及び図8に示す拡張機の端ローラ20Cは、図5及び図6に示すローラ20B1個分を省き、略その分だけ端ローラ20Aの長さを長く形成したものである。端ローラ20Cは、端ロール20Aと同様、フィルムの幅方向に先細りの円錐形状を有する。
この構成では、延伸フィルムが拡張機の円弧状配置の多数のローラ20上を引かれることき、端ローラ20Cは、図5及び図6の端ローラ20Aにおけると同様の作用をフィルムに付与し、フィルムの幅方向のずれを食い止めるとともに、フィルムの幅が狭くなっても、フィルムの縁部は端ローラ20C上に留まるから、縁部がローラ間に食い込むといった不都合は生じない。
【0020】
このように、本発明の構成により、拡張機によるフィルムの拡張中プラスチックフィルムの縁部における紐状部の形成を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0021】
6 キャリッジ
8 延伸ローラ
15 拡張機
16 支持アーム
17 ブラケット
18 固定支持軸
20 ローラ
20a 中央ローラ
20A 両端のローラ
20B 他のローラ
20C 両端のローラ
21 座ぐり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸ローラにより幅方向と長さ方向の二軸に延伸されたプラスチックフィルムを幅方向に拡張するための拡張機を含み、該拡張機が、円弧状固定軸に回転自在に装着された多数のローラを有し、該ローラの各々は、中央のローラを除いて幅方向に末広がりの円錐形状を有している、フィルム巻き包装装置における拡張機において、前記多数のローラのうち両端のローラを、他のローラの円錐形状と逆の、幅方向に先細りの円錐形状としたことを特徴とするフィルム巻き包装装置における拡張機。
【請求項2】
拡張機の中央のローラはその両端に隣接したローラの小径側の端が入り込む座ぐりを有し、他のロールもその大径側の端に、隣接したローラの小径側の端が入り込む座ぐりを有し、両端のローラは、その大径側の端が隣接したローラの前記座ぐり入り込むような形状寸法を有している、請求項1に記載のフィルム巻き包装装置における拡張機。
【請求項3】
延伸ローラにより幅方向と長さ方向の二軸に延伸されたプラスチックフィルムを幅方向に拡張するための拡張機を含み、該拡張機が、円弧状固定軸に回転自在に装着された多数のローラを有し、該ローラの各々は、中央のローラを除いて幅方向に末広がりの円錐形状を有している、フィルム巻き包装装置における拡張機において、前記多数のローラのうち両端のローラを、他のローラの円錐形状と逆の、幅方向に先細りの円錐形状とし、前記他のローラ1個分を省き、略その分だけ端ローラの長さを長く形成したことを特徴とするフィルム巻き包装装置における拡張機。
【請求項4】
拡張機の中央のローラはその両端に隣接したローラの小径側の端が入り込む座ぐりを有し、他のローラもその大径側の端に、隣接したローラの小径側の端が入り込む座ぐりを有し、両端のローラは、その大径側の端が隣接したローラの前記座ぐり入り込むような形状寸法を有している、請求項3に記載のフィルム巻き包装装置における拡張機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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