説明

フィルム搬送装置

【課題】一定の張力を保った状態でフィルムを繰り出すことのできるフィルム搬送装置を提供する。
【解決手段】フィルム搬送装置が、繰出リール100Aと、駆動ローラと、繰出リール100Aと駆動ローラとの間に配置され、フィルムFの張力を制御する張力制御装置100Bと、を備え、張力制御装置100Bは、繰出リール100Aと駆動ローラとの間における最も上流側に配置され、繰出リール10AからのフィルムFの繰出方向D1と交わる方向に移動可能な張力制御ローラ1と、張力制御ローラ1をフィルムFへ付勢するトルクモータ3と、を備え、トルクモータ3が、張力制御ローラ1を介して、繰出リール100AからフィルムFを引き出す方向へ、フィルムFに一定の付勢力を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルムを搬送するフィルム搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフィルム搬送装置として、ロール状に巻かれたフィルムを繰り出す繰出リールと、回転駆動することによって、繰出リールからフィルムを引き出す駆動ローラとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。このようなフィルム搬送装置では、フィルムの搬送に伴って、繰出リールの巻径が変化することによってフィルムの送り量や張力が変化する。従来のフィルム搬送装置は、繰出リール及び駆動ローラの回転速度を制御することによって、フィルムの送り量や張力を一定にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−270711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、フィルム巻付け状態にはばらつきがある。従って、フィルムは繰出リールに対して完全に真円状に巻かれているわけではない。更に、繰出リール自体も軸ぶれを伴って回転する場合がある。従って、フィルムロールは、僅かに偏心した状態で回転する。このような偏心状態によるフィルムロールの回転は、繰り出されるフィルムの張力変動を発生させる原因となっていた。従来のフィルム搬送装置は、フィルム繰出しに伴うフィルムロールの外径の減少を考慮して、繰出リール及び駆動ローラの回転速度を制御することでフィルムの張力を一定にしていた。しかし、このようなフィルム搬送装置は、フィルムロールの偏心による張力変動まで考慮して制御を行うことはできなかった。仮に張力変動を考慮したとしても、制御演算の負荷が非常に大きくなる。特に、フィルムが低張力で搬送される場合、フィルムロールの偏心による張力変動は、フィルム搬送に大きな影響を及ぼしていた。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、一定の張力を保った状態でフィルムを繰り出すことのできるフィルム搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフィルム搬送装置は、ロール状に巻かれたフィルムを繰り出す繰出リールと、回転駆動することによって、繰出リールからフィルムを引き出す駆動ローラと、繰出リールと駆動ローラとの間に配置され、フィルムの張力を制御する張力制御手段と、を備え、張力制御手段は、繰出リールと駆動ローラとの間における最も上流側に配置され、繰出リールからのフィルムの繰出方向と交わる方向に移動可能な張力制御ローラと、張力制御ローラをフィルムへ付勢する駆動手段と、を備え、駆動手段は、張力制御ローラを介して、繰出リールからフィルムを引き出す方向へ、フィルムに一定の付勢力を付与することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフィルム搬送装置によれば、フィルムの張力を制御する張力制御手段が、張力制御ローラ及び駆動手段を備えている。張力制御ローラは、繰出リールからのフィルムの繰出方向と交わる方向に移動可能である。張力制御ローラは、繰出リールと隣接位置において、繰り出されるフィルムと接触することでフィルムの搬送方向を変えることができる。張力制御ローラは、フィルムの繰出方向と交わる方向に移動可能であるため、位置を変えることによってフィルムに作用する張力を変更することができる。従って、張力制御ローラは、適切な位置へ移動することによって、フィルムの張力の調整をすることができる。一方、駆動手段は、張力制御ローラを介して、繰出リールからフィルムを引き出す方向へフィルムに付勢力を付与することができる。すなわち、駆動手段は、搬送されるフィルムを張力制御ローラで支持しながら当該張力制御ローラを適切な位置に維持することができ、更に張力制御ローラを適切な位置に移動させることができる。本発明に係るフィルム搬送装置においては、駆動手段は、張力制御ローラを介してフィルムに一定の付勢力を付与することができる。これによって、駆動手段は、張力制御ローラがフィルムから受ける力を一定に保つように、張力制御ローラの位置を調節することができる。すなわち、駆動手段は、フィルムの張力を一定に保つように、張力制御ローラの位置を調節することができる。繰出リールに巻かれているフィルムロールの径が小さくなることによって、フィルムの張力が大きくなる場合、駆動手段は、張力制御ローラを移動させてフィルムの張力を一定にすることができる。また、フィルムロールの偏心の影響で局所的に張力変動が生じても、駆動手段は、張力制御ローラを局所的に移動させることで、フィルムの張力変動を打ち消すことができる。更に、張力制御手段がシンプルな構成・動作によってフィルムの張力制御を行うことができる。フィルムの張力変動を考慮する必要がなくなるため、繰出リール及び駆動ローラを制御するための演算負荷を大幅に低減することができる。以上によって、一定の張力を保った状態でフィルムを繰り出すことができる。
【0008】
また、本発明に係るフィルム搬送装置において、張力制御ローラよりも下流側へ搬送されるフィルムは、張力制御ローラの移動方向と平行に搬送されることが好ましい。これによって、下流側のフィルムと張力制御ローラとの境界位置は、張力制御ローラの移動によらず一定となる。これによって、フィルムの張力が一定に保たれる。
【0009】
また、本発明に係るフィルム搬送装置において、駆動手段は、トルクモータとその回転軸に取り付けられた巻取ローラによって構成され、張力制御ローラと駆動手段とはワイヤを介して接続され、駆動手段は、巻取ローラでワイヤを巻き取り、あるいは巻戻すことで張力制御ローラを移動させ、巻取ローラには、ワイヤを収容する螺旋状の溝が形成されていることが好ましい。これによって、張力制御ローラの移動に用いられるワイヤは、巻き取り時に螺旋状の溝に収容される。従って、巻き取り時にワイヤ同士が重なることを防止できるため、ワイヤに巻き取り痕が残ることを防止することができる。更に、ワイヤは螺旋状の溝に沿って巻き取り及び巻き戻しされるため、張力制御ローラは、スムーズに移動することができる。また、ワイヤは螺旋状の溝に収容されるため、ワイヤの巻き取り径及び巻き戻し径を一定に保つことができる。従って、フィルムに対する張力制御ローラの付勢力が一定に保たれる。
【0010】
また、本発明に係るフィルム搬送装置において、具体的に、張力制御手段は、張力制御ローラの移動方向に延在し、張力制御ローラをガイドするガイド手段と、駆動手段を構成し、張力制御ローラに接続されたワイヤを巻き取ることによって、張力制御ローラを移動させるトルクモータと、張力制御ローラの位置を検出する位置検出手段と、を備えている。このように、シンプルな構成の張力制御手段によって、フィルムの張力を一定に保つことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一定の張力を保った状態でフィルムを繰り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るフィルム搬送装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフィルム搬送装置の張力制御装置の上面図である。
【図3】図2に示すIII−III線に沿った断面図である。
【図4】ワイヤの巻取ローラを示す図である。
【図5】従来の張力制御装置を示す概略構成図である。
【図6】本発明の実施形態に係る張力制御装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係るフィルム搬送装置について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るフィルム搬送装置100の概略構成図である。図2は、本発明の実施形態に係るフィルム搬送装置100の張力制御装置100Bの上面図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿った断面図である。図4は、ワイヤの巻取ローラを示す図である。
【0015】
フィルム搬送装置100は、積層型セラミック部品などで用いるセラミックグリーンシートをフィルム上に形成し、当該フィルムを巻き取ることのできる装置である。図1に示すように、ロール状のフィルムFは、回転する繰出リール100Aから繰り出される。繰出リール100Aから繰り出されたフィルムFは、張力制御装置100Bで進行方向における張力調整が行われると共に、張力分布補正装置100Cで幅方向における張力の調整が行われる。その後、フィルムFは、ガイドローラ100Eでガイドされながら、塗工装置100Fで表面にセラミックペーストが塗布される。塗布された後、フィルムFは、サクションローラ100Gで搬送されて乾燥装置100Hで乾燥される。乾燥装置でセラミックペーストが乾燥すると、フィルムFは、ガイドローラ100Iでガイドされながらグリップローラ100Jで蛇行補正が行われる。蛇行補正が行われた後、フィルムFは、ガイドローラ100Kでガイドされながら巻取リール100Lで巻き取られる。搬送されるフィルムFの厚さは、30〜50μmである。本発明によれば、特に、薄いフィルムを低張力で搬送することができる。
【0016】
フィルムが巻かれた繰出リール100Aと、回転駆動することによって繰出リール100AからフィルムFを引き出すサクションローラ(駆動ローラ)100Gとの間には、張力制御装置(張力制御手段)100B、張力分布補正装置100C、ガイドローラE、塗工装置100Fが配置されている。これらの装置の中で、張力制御装置100Bが、最も上流側、すなわち繰出リール100Aと最も近い位置に配置されている。このような配置によって、張力制御装置100Bは、繰出リール100AからフィルムFが繰り出された直後に張力調整することができる。これによって、フィルムFは、張力が調整された状態で各装置を通過することができる。本実施形態では、張力制御装置100Bは、繰出リール100Aの下方に配置されている。
【0017】
図2及び図3に示すように、張力制御装置100Bは、フィルムFの張力を制御する張力制御ローラ1、張力制御ローラ1をガイドするガイド装置(ガイド手段)2、張力制御ローラ1を移動させるトルクモータ(駆動手段)3、張力制御ローラ1に接続されたワイヤ4を巻き取る巻取ローラ6、張力制御ローラ1の位置を検出するポテンションメータ7を備えて構成されている。
【0018】
張力制御ローラ1は、繰出リール100Aの回転軸と平行な回転軸8を有している。張力制御ローラ1は、回転軸8を中心として回転することができる。張力制御ローラ1は、繰出リール100Aから繰り出されたフィルムFを外周面1aに接触させながら回り込ませ、フィルムFを下流側の装置へガイドする。従って、繰出リール100Aから繰り出されたフィルムFは、図3中のD1で示すように、上方から下方へ向かって搬送される。また、張力制御ローラ1の下流側に配置される装置である張力分布補正装置100Cのローラの下端部の高さと、張力制御ローラ1の下端部の高さは一致している(図1参照)。従って、張力制御ローラ1の外周面1aを回り込んだフィルムFは、図3中のD2で示すように、水平方向に搬送される。なお、以下の説明においては、繰出リール100Aと張力制御ローラ1との間におけるフィルムFの進行方向は、「繰出方向D1」と称される。また、張力制御ローラ1よりも下流側におけるフィルムFの進行方向は、「搬送方向D2」と称される。
【0019】
張力制御ローラ1は、繰出方向D1と交わる方向に移動することができる。本実施形態では、張力制御ローラ1は、ガイド装置2にガイドされることによって、水平方向に移動することができる。また、張力制御ローラ1の移動方向とフィルムFの搬送方向D2とは、平行になる。
【0020】
張力制御ローラ1をガイドするガイド装置2は、張力制御ローラ1の移動方向に沿って延びる一対のスライドシャフト11,12と、スライドシャフト11,12を支持する支持部材13,14と、張力制御ローラ1と共に移動するボールスライド16,17を備えている。支持部材13,14は、張力制御ローラ1の軸線方向に沿って延びるように配置されている。支持部材13と支持部材14は、張力制御ローラ1の移動方向に向かい合うように、互いに離間して配置されている。支持部材13及び支持部材14は、張力制御ローラ1の移動端部をそれぞれ規定している。支持部材13、14の一端は、張力制御装置100B全体を支持する支持壁Wに固定されている。スライドシャフト11,12は、張力制御ローラ1の両端側において、支持部材13と支持部材14との間で水平方向に延びている。スライドシャフト11,12は、一端が支持部材13に固定され、他端が支持部材14に固定されている。スライドシャフト11は、支持壁Wから離間した位置に配置されている。スライドシャフト12は、支持部材13,14の自由端部側に配置されている。ボールスライド16は、スライドシャフト11に沿って移動し、ボールスライド17は、スライドシャフト12に沿って移動する。ボールスライド16,17は、張力制御ローラ1の回転軸8のそれぞれの端部に接続されている。具体的には、ボールスライド16の上面にはフランジ16aが形成されており、回転軸8の一端は、フランジ16aに固定されている。また、ボールスライド17の上面にはフランジ17aが形成されており、回転軸8の他端は、フランジ17aに固定されている。これによって、張力制御ローラ1は、ボールスライド16,17の移動に従ってスライドシャフト11,12に沿って移動することができる。
【0021】
トルクモータ3は、モータシャフトの端部に取り付けられた巻取ローラ6を回転させて、ワイヤ4を巻き取り、あるいは巻き戻すことによって、張力制御ローラ1を移動させることができる。トルクモータ3は、支持壁Wの裏面側に取り付けられており、軸部3aのみが表面側に突出している。トルクモータ3は、ワイヤ4を巻き戻すことによって、張力制御ローラ1を搬送方向D2へ移動させることができる。また、トルクモータ3は、ワイヤ4を巻き取ることによって、張力制御ローラ1を搬送方向D2と反対方向であるD3へ移動させることができる。張力制御ローラ1は、繰出方向D1から搬送方向D2へ向かって搬送されるフィルムFをガイドしながら回転しているため、フィルムFから搬送方向D2側へ向かう力を受けている。トルクモータ3は、この力に対して張力制御ローラ1を支持している。すなわち、トルクモータ3は、張力制御ローラ1を介して、方向D3へ向かってフィルムFに付勢力を付与することができる。トルクモータ3が張力制御ローラ1を引っ張ることによって、フィルムFに方向D3へ付勢力を付与すると、フィルムFには繰出リール100Aから引き出される方向に力が作用する。従って、方向D3は、請求項における「繰出リールからフィルムを引き出す方向」に該当する。
【0022】
また、トルクモータ3は、フィルムFに一定の付勢力を付与することができる。すなわち、トルクモータ3は、張力制御ローラ1がフィルムFから受ける力(ワイヤ4のテンションに等しい)を一定に保つように制御される。具体的には、トルクモータ3は、ワイヤ4のテンションが一定の場合は、張力制御ローラ1の位置を維持する。トルクモータ3は、ワイヤ4のテンションが増加した場合、ワイヤ4を巻き戻して張力制御ローラ1を搬送方向D2へ移動させる。本実施形態では、繰出リール100Aに巻かれたフィルムロールの径が小さくなり、フィルムFから受ける力が増加する場合(例えば、図5,6参照)、トルクモータ3は、ワイヤ4を巻き戻すことができる。あるいは、フィルムロールの偏心に影響により局所的にテンションが増加した場合、トルクモータ3は、ワイヤ4を局所的に巻き戻すことができる。一方、トルクモータ3は、ワイヤ4のテンションが減少した場合、ワイヤ4を巻き取って張力制御ローラ1を方向D3へ移動させる。本実施形態では、フィルムロールの偏心に影響により局所的にテンションが減少した場合、トルクモータ3は、ワイヤ4を局所的に巻き取ることができる。
【0023】
巻取ローラ6は、トルクモータ3の軸部3aの先端に取り付けられた円筒状の部材である。巻取ローラ6には回転軸線に沿って挿入孔が形成されている。この挿入孔にはキー溝が形成されており、当該キー溝には、トルクモータ3の軸部3aに形成されたキーが挿入される。図4に示すように、巻取ローラ6は、外周面でワイヤ4を巻き取るための円筒状の巻取部6aと、ワイヤ4の端部を固定するためのフック6bとを備えている。巻取部6aの外周面には、ワイヤ収容用の螺旋状の溝6cが形成されている。溝6cは、ワイヤ4一本が収容される大きさに形成されている。従って、ワイヤ4は、巻き取り時に重なり合うことなく、溝6cに沿って巻き取り及び巻き戻しが行われる。フック6bは、巻取部6aの外周面におけるトルクモータ3側の縁部で突出している。フック6bには、ワイヤ4の端部が引掛けられている。
【0024】
ポテンションメータ7は、ストローク用の位置検出センサである。ポテンションメータ7は、支持壁Wに固定されるシリンダ7aと、張力制御ローラ1の移動に応じて進退するロッド7bとを備えている。ロッド7bの端部は、張力制御ローラ1を支持するボールスライド16に固定されている。ポテンションメータ7は、検出した情報をフィルム搬送装置100の制御部(不図示)へ出力する。
【0025】
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態に係るフィルム搬送装置100の作用・効果について説明する。
【0026】
まず、比較のために従来のフィルム搬送装置100について説明する。従来のフィルム搬送装置FDは、繰出リールFD100と図示されない駆動ローラとの回転速度を制御することによって、フィルムの送り量や張力を調整していた。繰出リールFD100の下流側には、移動することのできないガイドロールFD200が配置されている。繰出リールFD100に巻かれているフィルムロールの径は、繰り出し量が増加するに従って小さくなる。従って、繰出リールFD100によって繰り出されるフィルムは、搬送初期状態における位置を図5に実線で示すF1とするのに対し、時間の経過と共に図5に一点差線で示すF2の位置になる。フィルムの位置がF2となると、フィルムに作用する張力がF1の場合に比して大きくなる。繰出リールFD100及び駆動ローラの回転速度のみで、フィルムの張力の調整がなされる場合、装置の制御演算の負荷が大きくなる。更に、繰出リールFD100に巻かれているフィルムロールの偏心の影響により、図5中、F3で示すように、フィルムの位置が局所的に変動する場合がある。これによって、フィルムの張力が変動する。従来のフィルム搬送装置FDは、フィルムロールの偏心による張力変動まで考慮して制御を行うことはできない。仮に張力変動を考慮したとしても、制御演算の負荷が非常に大きくなる。フィルムを低張力で搬送する場合、フィルムロールの偏心による張力変動は、フィルム搬送に大きな影響を及ぼしていた。
【0027】
一方、本発明の実施形態に係るフィルム搬送装置100においては、フィルムFの張力を制御する張力制御装置100Bが、張力制御ローラ1及びトルクモータ3を備えている。張力制御ローラ1は、繰り出されるフィルムFと接触することでフィルムFの方向を繰出方向D1から搬送方向D2へ変えることができる。また、張力制御ローラ1は、フィルムFの繰出方向と交わる方向に移動可能であるため、位置を変えることによってフィルムFに作用する張力を変更することができる。従って、張力制御ローラ1は、適切な位置へ移動することによって、フィルムFの張力の調整をすることができる。一方、トルクモータ3は、張力制御ローラ1を介して、繰出リール100AからフィルムFを引き出す方向D3へフィルムFに付勢力を付与することができる。すなわち、トルクモータ3は、搬送されるフィルムFを張力制御ローラ1で支持しながら当該張力制御ローラ1を適切な位置に移動させ、あるいは適切な位置を維持することができる。本実施形態に係るフィルム搬送装置100においては、トルクモータ3は、張力制御ローラ1を介してフィルムFに一定の付勢力を付与することができる。これによって、トルクモータ3は、張力制御ローラ1がフィルムFから受ける力、すなわちフィルムFの張力を一定に保つように、張力制御ローラ1の位置を調節することができる。繰出リール100Aに巻かれているフィルムロールの径が小さくなることによって、フィルムの張力が大きくなる場合、トルクモータ3は、ワイヤ4を巻き戻して張力制御ローラ1を搬送方向D2へ移動させる。繰出リール100Aによって繰り出されるフィルムは、搬送初期状態における位置を図6に実線で示すF1とするのに対し、時間の経過と共に図6に一点差線で示すF2の位置になる。このとき、F1とF2とが平行になっていることから分かるように、フィルムロールの径の減少に伴って張力制御ローラ1が移動するため、フィルムFと張力制御ローラ1との間の角度は一定になる。従って、フィルムFの張力が一定に保たれる。更に、繰出リール100Aに巻かれているフィルムロールの偏心の影響により、図6中、F3で示すように、フィルムの位置が局所的に変動する場合がある。このような場合も、トルクモータ3は、張力制御ローラ1を局所的に移動させることで、フィルムFの張力変動を打ち消すことができる。更に、張力制御装置100Bがシンプルな構成・動作によってフィルムFの張力制御を行うことができるため、繰出リール100A及びサクションローラ100Gを制御するための演算負荷を大幅に低減することができる。以上によって、一定の張力を保った状態でフィルムFを繰り出すことができる。
【0028】
また、本実施形態に係るフィルム搬送装置100において、張力制御ローラ1よりも下流側へ搬送されるフィルムFは、張力制御ローラ1の移動方向と平行に移動することができる。これによって、下流側のフィルムFと張力制御ローラ1との境界位置は、張力制御ローラ1の移動によらず一定(本実施形態では、張力制御ローラ1の下端位置)となる。これによって、フィルムFの張力が一定に保たれる。
【0029】
また、本実施形態に係るフィルム搬送装置100において、巻取ローラ6には、ワイヤ4を収容する螺旋状の溝6cが形成されている。これによって、張力制御ローラ1の移動に用いられるワイヤ4は、巻き取り時に螺旋状の溝6cに収容される。従って、巻き取り時にワイヤ4同士が重なることを防止できるため、ワイヤ4に巻き取り痕が残ることを防止することができる。更に、ワイヤ4は螺旋状の溝6cに沿って巻き取り及び巻き戻しされるため、張力制御ローラ1は、スムーズに移動することができる。また、ワイヤ4は螺旋状の溝6cに収容されるため、ワイヤ4の巻き取り径及び巻き戻し径を一定に保つことができる。従って、フィルムFに対する張力制御ローラ1の付勢力が一定に保たれる。
【0030】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0031】
例えば、上述の実施形態では、張力制御ローラ1は、水平方向に移動可能とされていた。しかし、張力制御ローラ1の移動方向は、フィルムFの繰出方向D1と交わる方向であれば、どのような方向であってもよい。また、張力制御ローラ1の移動方向とフィルムFの搬送方向D2は平行であった。しかし、平行でなくともよい。
【符号の説明】
【0032】
1…張力制御ローラ、2…ガイド装置(ガイド手段)、3…トルクモータ(駆動手段)、4…ワイヤ、6…巻取ローラ、6c…溝、7…ポテンションメータ(位置検出手段)、100…フィルム搬送装置、100A…繰出リール、100B…張力制御装置(張力制御手段)、100G…サクションローラ(駆動ローラ)、F…フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれたフィルムを繰り出す繰出リールと、
回転駆動することによって、前記繰出リールから前記フィルムを引き出す駆動ローラと、
前記繰出リールと前記駆動ローラとの間に配置され、前記フィルムの張力を制御する張力制御手段と、を備え、
前記張力制御手段は、
前記繰出リールと前記駆動ローラとの間における最も上流側に配置され、前記繰出リールからの前記フィルムの繰出方向と交わる方向に移動可能な張力制御ローラと、
前記張力制御ローラを前記フィルムへ付勢する駆動手段と、を備え、
前記駆動手段は、前記張力制御ローラを介して、前記繰出リールから前記フィルムを引き出す方向へ、前記フィルムに一定の付勢力を付与することを特徴とするフィルム搬送装置。
【請求項2】
前記張力制御ローラよりも下流側へ搬送されるフィルムは、
前記張力制御ローラの移動方向と平行に搬送されることを特徴とする請求項1記載のフィルム搬送装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、トルクモータとその回転軸に取り付けられた巻取ローラによって構成され、
前記張力制御ローラと前記駆動手段とはワイヤを介して接続され、
前記駆動手段は、前記巻取ローラで前記ワイヤを巻き取り、あるいは巻戻すことで前記張力制御ローラを移動させ、
前記巻取ローラには、前記ワイヤを収容する螺旋状の溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のフィルム搬送装置。
【請求項4】
前記張力制御手段は、
前記張力制御ローラの移動方向に延在し、前記張力制御ローラをガイドするガイド手段と、
前記駆動手段を構成し、前記張力制御ローラに接続されたワイヤを巻き取り、あるいは巻き戻すことによって、前記張力制御ローラを移動させるトルクモータと、
前記張力制御ローラの位置を検出する位置検出手段と、を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のフィルム搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−173686(P2011−173686A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38955(P2010−38955)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】