説明

フィルム注出栓

【課題】容器内の密封状態を維持しつつ、内溶液の注出が可能なフィルム注出栓を提供する。
【解決手段】本発明のフィルム注出栓1は、容器に通じる開口部が形成されたアダプタ2を有し、2枚のフィルム6,7を合わせて形成されたフランジ8をアダプタ2に固定することで、当該アダプタ2との間に空間を形成すると共に、2枚のフィルム6,7それぞれに、2つのサイドシール部11,12の間を横断する折り曲げ線Lを設けることで、当該空間を注出口A0に通じさせる通路を、空間の圧力によって開放される、フィルム密着部分13とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の密封状態を維持しつつ、内溶液の注出が可能なフィルム注出栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2枚のフィルムを貼り合せることで、注出口を形成するものとしては、スタンディングパウチの注口部がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−29520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の注口部は、フィルムに張りがないことから、フィルムに補強用のビード部を形成することで、注出口の膨らみ形状を安定させるようにしている。このため、こうした注口部構造では、容器に外気が進入することで、内容物の鮮度(品質)を長期に保証できないことが考慮される。
【0005】
本発明の目的とするところは、容器内の密封状態を維持しつつ、内溶液の注出が可能なフィルム注出栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフィルム注出栓は、容器に通じる開口部が形成されたアダプタを有し、2枚のフィルムを合わせて形成されたフランジをアダプタに固定することで、当該アダプタとの間に空間を形成すると共に、2枚のフィルムそれぞれに、2つのサイドシール部の間を横断する折り曲げ線を設けることで、当該空間を注出口に通じさせる通路を、空間の圧力によって開放される、フィルム密着部分としたことを特徴とするものである。
【0007】
折り曲げ線は、2つのサイドシール部の間を注出口に向かって凸となるように湾曲して横断するものであることが好ましい。
【0008】
本発明では、前記注出口に、切断予定部を介して封止部を一体に連結することが好ましい。
【0009】
また、本発明に従えば、アダプタは、変形及び復元の可能なフランジ部を有し、その上端面に、2つのフィルムによるフランジを固定するものとすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、2枚のフィルムを合わせて形成されたフランジをアダプタに固定することで、当該アダプタとの間に空間を形成すると共に、当該フィルムそれぞれに、2つのサイドシール部の間を横断する折り曲げ線を設けることで、2つのサイドシール部の間を当該シール部に沿って延在する通路として、2つのサイドシール部と、その間を横断する折り曲げ線とで区画された部分が、前記空間を注出口に通じさせる、フィルム密着部分として構成される。このため、フィルムとアダプタとの間に形成された空間の内部圧力が所定の圧力まで上昇しないと、容器内の密封状態は維持される。
【0011】
これに対し、容器の内部圧力が上昇する等して、フィルムとアダプタとの間に形成された空間の内部圧力が上昇すると、フィルム密着部分は、フィルムが離間することで、注出口を開放するため、充填空間からの内溶液を取り出すことができる。即ち、フィルム密着部分は、逆止弁として機能する。
【0012】
従って、本発明によれば、容器内の密封状態を維持しつつ、内溶液の注出が可能なフィルム注出栓を提供することができる。また、本発明によれば、アダプタを備えることで、様々な容器に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のフィルム注出栓の第1の形態を示す斜視図である。
【図2】同形態のフィルム注出栓に適用可能な剥離容器の一例を一部断面で示す正面図である。
【図3】(a)は、同形態のフィルム注出栓を、剥離容器の口部に装着した状態で、サイドシール面を断面として示す縦断面図であり、(b)は、同形態のフィルム注出栓を、同容器の口部に装着した状態で、フィルムの合わせ面に対して直交する面を断面として示す縦断面図である。
【図4】(a)は、同形態のフィルム注出栓から封止部を取り外して、注出口から内溶液を取り出す前の状態を示す要部斜視図であり、(b)は、封止部を取り外して、注出口から内溶液を取り出すときの状態を示す要部斜視図である。
【図5】(a)は、同形態のフィルム注出栓を、他の剥離容器の口部に装着した状態で、サイドシール面を断面として示す縦断面図であり、(b)は、同形態のフィルム注出栓を、同容器の口部に装着した状態で、フィルムの合わせ面に対して直交する面を断面として示す縦断面図である。
【図6】本発明のフィルム注出栓の第2の形態を示す斜視図である。
【図7】同形態のフィルム注出栓を、パウチ容器のスパウトに装着した状態で、一部フィルムの合わせ面を断面として示す縦断面図である。
【図8】同形態のフィルム注出栓を、同スパウトに装着した状態で、一部フィルムの合わせ面に対して直交する面を断面として示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の様々な形態を詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明の第1の形態である、フィルム注出栓1を示す。図2は、フィルム注出栓1を装着可能な剥離容器(デラミネーション容器)100を示す。
【0016】
剥離容器100は、図2に示すように、内層体101と外層体102とからなる。内層体101は、口部101aと共に薄肉の胴部101b及び底部101cが一体に成形された変形可能な薄肉(例えば、袋状)のボトル形容器である。内層体101は、その内側に、口部101aを通して外界に通じる内容液の充填空間S1が形成されている。
【0017】
一方、外層体102も、口部102a、胴部102bおよび底部102cが一体に成形されたボトル形の容器である。外層体102の内側には、図1の実線で示すように、内層体101が密着した状態で配置されている。外層体102の口部102aには、内層体101の口部101aが一体に連結されている。これにより、内層体101は、外層体102の内側に剥離可能に連結されている。
【0018】
更に、内層体101の底部101cは、外層体102の底部102cで挟持されている。これにより、外層体102の底部102cが内層体101の底部101cから予め離間させることで、当該底部101cとの間に開口部が形成されると、この開口部を通して、内層体101と外層体102との間に外気が導入される。この結果、内層体101は、図2の二点鎖線で示すように、外層体102から剥離させることができる。
【0019】
これに対し、フィルム注出栓1は、図3に示すように、内層体口部101aと外層体口部102aに装着されるアダプタ2を有する。アダプタ2は、同図に示すように、内層体101の充填空間S1に通じる開口部A1を形作る環状壁部3を有する。この環状壁部3の外縁からは、外筒部4が一体に垂下する。外筒部4の内周面には、外層体口部102aに設けられた外周突条102pに引っ掛かって係止される内周突条4pが設けられている。加えて、外筒部4の内側には、内筒部5が一体に垂下する。内筒部5の外周面は、内層体口部101aをシールする。これにより、アダプタ2は、内筒部5と外筒部4との間で内層体口部101a及び外層体口部102aを挟持することで、充填空間S1を密封した状態に嵌合保持されている。
【0020】
アダプタ2の環状壁部3は、開口部A1を取り囲む環状の上端面3fを有する。上端面3fには、図3(b)に示すように、2枚のフィルム6,7を合わせて形成されたフランジ8を接着等により固定する。フランジ8は、図1に示すように、フィルム6に形成された半周のフランジ6aと、フィルム7に形成された半周のフランジ7aとからなる。
【0021】
図3(a)は、フィルム6を合わせ面側から示す。フィルム6には、例えば、図3(a)に示すように、ホットシール等によって接着される、2つのサイドシール部11,12を形作るサイドシール面6s1,6s2の間に、これらを横断するように、折り曲げ線Lが設けられている。これにより、フィルム6には、図3(b)に示すように、フランジ6aの内縁6eから折り曲げ線Lに至るまでの間が膨隆部6dとして形作られる。なお、フィルム7もフィルム6と同様の形状を有し、互いに対称な形状としてなる。このため、フィルム7のみの形状については図示を省略するが、フィルム7にも、フィルム6と同様、図3(b)に示すような、フランジ7aの内縁7eから折り曲げ線Lに至るまでの間が膨隆部7dとして形作られる。
【0022】
また、フィルム6,7の折り曲げ線Lはそれぞれ、図3(b)に示すように、互いに向かい合うように設けられている。従って、同図に示すように、フィルム6,7を合わせて形成されたフランジ8をアダプタ1の上端面3fに固定することで、アダプタ1との間には、開口部A1を通して充填空間S1に通じる、空間S2が形成される。
【0023】
更に、フィルム6,7には、折り曲げ線Lが設けられていることで、折り曲げ線Lよりも後述の切断予定部C側は、図3(b)に示すように、平坦部6L,7Lを構成する。これにより、例えば、図3(a)に示すように、フィルム6の平坦部6Lは、2つのサイドシール面6s1,6s2の間が、当該サイドシール面6s1,6s2と同一面をなす密着面6fに形作られる。これは、フィルム7についても同様で、折り曲げ線Lが設けられていることで、2つのサイドシール面7s1,7s2(図示省略)の間は、サイドシール面7s1,7s2と同一面をなす密着面7fが形作られる。
【0024】
従って、平坦部6L,7Lは、図3(b)に示すように、サイドシール部11,12を除く部分では、2枚のフィルム6,7が、接着することなく密着するフィルム密着部分としてなる。即ち、サイドシール部11,12の間は、平坦部6L,7Lが密着することで密封されると共に、空間S2の内部圧力の上昇によって開放される空間S2を外界に通じさせる通路13を形成する。
【0025】
平坦部6Lは更に、図3(a)に示すように、サイドシール面6s1,6s2を繋ぐサイドシール面6s3を有し、このサイドシール面6s3が、例えば、薄肉に構成された切断予定部Cを介して一体に連結される、把持部付きの封止部14の外観形状を形作る。これは、フィルム7についても同様で、サイドシール面7s1,7s2を繋ぐサイドシール面7s3(図示省略)を有し、このサイドシール面7s3が、把持部付きの封止部14の外観形状を形作る。
【0026】
このため、サイドシール面6s3,7s3を結合させると、把持部付きの封止部14が形成される。従って、2枚のフィルム6,7をヒートシール等で接着後、封止部14を切断予定部Cに沿って切断すれば、この切断面がサイドシール部11,12の間に形作られた通路13の注出口A0となる。
【0027】
上述のとおり、本発明では、2枚のフィルム6,7を合わせて形成されたフランジ8をアダプタ2に固定することで、当該アダプタ2との間に空間S2を形成すると共に、当該フィルム6,7それぞれに、2つのサイドシール部11,12の間を横断する折り曲げ線Lを設けることで、2つのサイドシール部11,12の間を当該シール部11,12に沿って延在する通路として、2つのサイドシール部11,12と、その間を横断する折り曲げ線Lとで区画された部分13が、空間S2を注出口A0に通じさせる、フィルム密着部分として構成される。このため、封止部14を取り除いた後も、図4(a)に示すように、フィルム6,7とアダプタ2との間に形成された空間S2の内部圧力が所定の圧力まで上昇しないと、充填空間S1内の密封状態は維持される。
【0028】
これに対し、充填空間S1の内部圧力が上昇する等して、フィルム6,7とアダプタ2との間に形成された空間S2の内部圧力が上昇すると、図4(b)に示すように、フィルム密着部分13は、フィルム6,7が離間することで、注出口A0を開放するため、充填空間S1からの内溶液を取り出すことができる。即ち、フィルム密着部分13は、逆止弁として機能する。また、こうしたフィルム密着部分13によれば、内容液の注出後、密着面6f,7f間に付着した内容液の表面張力によっても、密着面6f,7f間の密封を確実なものにできる。
【0029】
従って、本発明によれば、充填空間S1内の密封状態を維持しつつ、内溶液の注出が可能なフィルム注出栓を提供することができる。
【0030】
また、本形態では、折り曲げ線Lは、図3等に示すように、2つのサイドシール部11,12の間を、注出口(切断予定部C)A0に向かって凸となるように湾曲して横断する。これは、フィルム7についても同様である。かかる構成によれば、空間S2の内部圧力の上昇伴う通路13の開放をスムーズに行うことができる。
【0031】
更に、本発明に従えば、本形態の如く、注出口A0に、切断予定部Cを介して封止部14を一体に連結することができる。
【0032】
また、本発明に係る、フィルム注出栓1は、アダプタ2を備えることで、様々な容器に適用可能である。
【0033】
図5は、フィルム注出栓1を、他の剥離容器100に採用したものである。
【0034】
本形態では、内層体101の剥離を促進させるための、外気導入孔A3が、外層体底部102cに替えて外層体口部102aに形成されている。また、外層体口部102aにはねじ部102aが形成されている。このため、本形態では、コネクタ16を介して、フィルム注出栓1を装着している。コネクタ16は、外層体口部102aのねじ部102aに螺合するねじ部16sが形成されている。また、アダプタ2の外周部4と内周部5との嵌合する16pを有し、その内側に開口部A1が形成されている。なお、図1〜4と同一の部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
【0035】
図6には、本発明の第2の形態である、フィルム注出栓20を示す。また、図7,8はそれぞれ、フィルム注出栓21を、パウチ容器30のスパウト200に装着した状態を示す。
【0036】
フィルム注出栓20では、アダプタ2の環状壁部3の外縁が外筒部4よりも外側に突出することにより、フランジとして構成されている。この場合、環状壁部3を、例えば、樹脂原料の選択によって、変形及び復元の可能なフランジとして機能させれば、注出口A0(通路13)の開放動作及び密封動作と同期させることで、スムーズな密封・開放動作が可能となる。
【0037】
なお、スパウト200は、パウチ容器30のシール部31に一体にシール固定されている。スパウト200は、開口部A5を通してパウチ容器30の充填空間S1を外界に通じさせる。本形態では、内周突条4pがスパウト200の口部201に設けた外周突条201pに引っ掛かることで係止されるとともに、内筒部5の外周面が外筒部4と共に、口部201を挟持することで、充填空間S1を密封した状態に保持する。
【0038】
上述したところは、本発明の様々な形態を例示したにすぎず、本発明に従えば、種々の変更を加えることができる。例えば、フィルム6,7の材質及び厚さについては、フィルム6,7を変形させることができるものであれば、様々なものを採用できる。また、アダプタ2は、剥離容器等に嵌合保持されるものに限定されることはなく、例えば、螺合によって保持される構成等、様々な構成を採用することができる。更に、各形態に記載の構成はそれぞれ、適宜、組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のフィルム注出栓は、剥離容器やパウチ容器に限定されることなく、単層の容器等、アダプタを装着させることができる構成のものであれば、様々な容器に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 フィルム注出栓(第1の形態)
2 アダプタ
6 フィルム
7 フィルム
8 フランジ
11 サイドシール部
12 サイドシール部
13 注出通路
14 封止部
L 折り曲げ線
2 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に通じる開口部が形成されたアダプタを有し、2枚のフィルムを合わせて形成されたフランジをアダプタに固定することで、当該アダプタとの間に空間を形成すると共に、2枚のフィルムそれぞれに、2つのサイドシール部の間を横断する折り曲げ線を設けることで、当該空間を注出口に通じさせる通路を、空間の圧力によって開放される、フィルム密着部分としたことを特徴とする、フィルム注出栓。
【請求項2】
請求項1において、折り曲げ線は、2つのサイドシール部の間を注出口に向かって凸となるように湾曲して横断するものであることを特徴とする、フィルム注出栓。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記通路の先端に、切断予定部を介して封止部を一体に連結したことを特徴とする、フィルム注出栓。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、アダプタは、変形及び復元の可能なフランジ部を有し、その上端面に、2つのフィルムによるフランジを固定するものであることを特徴とする、フィルム注出栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−96813(P2012−96813A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244041(P2010−244041)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】