説明

フィンコイル装置

【課題】フィンコイル下部に水がたまった状態とならないようにし、フィンの隙間にスケールが析出するのを抑え、湿り空気や水滴との接触が避けられない箇所でもフィンコイルの腐食を防止できるフィンコイル装置を提供する。
【解決手段】枠状のケーシング13に囲まれたフィンコイル下部におけるケーシング下枠部13aとフィン12及びチューブ11との間に、熱交換のために通風される空気が通過する空間部15を設け、フィン12下端部とケーシング下枠部13aに囲まれた水の流れにくい領域を無くすと共に、フィン12下端部を塞がず、チューブ11やフィン12から水を空間部15側に流下させられることから、チューブ11及びフィン12が湿り空気及び/又は水滴と接触する状況で、水を確実に流下させて滞留させないようにし、水の滞留に伴うスケール発生を抑えられ、スケールが原因のフィン12等の腐食を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔における乾式熱交換部等として用いられるフィンコイル装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場や空気調和設備などで循環使用する水の冷却を目的として屋外に設置される冷却塔には、冷却塔内部の熱交換部分で空気と水を直接接触させ、水と空気の温度差を利用する熱伝達すなわち顕熱による冷却作用、及び、水自体の蒸発すなわち潜熱(蒸発熱)による冷却作用を合せ持つ開放式冷却塔と、熱交換器を有して空気と循環水が直接接触しない密閉式冷却塔とがある。
【0003】
こうした冷却塔では、開放式冷却塔の場合は循環水、密閉式冷却塔の場合は熱交換部に散布されて潜熱による冷却効果を付加する散布水が、それぞれ直接大気と接触して一部蒸発するため、冷却塔からの排出空気は、熱交換により昇温し、且つ水蒸気を多く含んだ湿り状態となる。これにより、冬期など周囲の外気温度が低く、排出空気の温度が相対的に高くなる場合や、梅雨期など外気の湿度が高い場合などは、湿気を適切に周囲に放散できずに、排出直後から排出空気中の水分が過飽和となって凝結した水滴となり、目に見える状態となってあたかも冷却塔から白煙が吹出しているように見える現象が生じていた。こうしたいわゆる白煙の発生する現象は、火災、大気汚染等の誤認につながり、周囲に冷却塔の使用に対する不安感を与える他、視界の妨げとなり、冷却塔を使用する上での大きな問題となっていた。
【0004】
このような白煙の発生を防止するために、従来から、外気温度が低い場合等には排出空気の湿り度を抑えて、排出空気中の水分の過飽和による凝結を防ぐ白煙防止型の冷却塔が種々用いられており、例えば、熱交換部を通過した空気を別途設けた乾式の熱交換器で加熱して排出空気の温度を十分高め、排出空気が飽和温度以下となる前に排出空気を外気中に拡散させる冷却塔などが実用化されている。用いられる乾式熱交換器には、冷却塔導入直後の温度の高い循環水を導入してこれと空気を熱交換させて温めるものが一般的であった。このような乾式熱交換器を用いた白煙防止型の冷却塔の一例としては、特開平6−221793号公報や実開平2−109167号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−221793号公報
【特許文献2】実開平2−109167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の白煙防止型の冷却塔は前記各特許文献に示される構成とされ、こうした冷却塔で用いられる乾式熱交換器としては、フィンコイル型(フィンチューブ型)が多く用いられていた。このフィンコイル型の熱交換器100は、通常、チューブ101とフィン102からなるフィンコイル本体部分の上下左右を枠状のケーシング103が取囲んで一ユニットを形成する構成となっており、フィンコイル下部ではケーシング下枠部104とフィン102下端が接触する状態にあった(図6、7参照)。
【0007】
一方、冷却塔の湿式熱交換部を通過して温度上昇した空気は湿り空気となっていることに加え、若干の循環水の水滴も含む場合があり、この湿り空気等が進入するフィンコイルの表面では、水分の凝結や水滴の付着が生じ、これらは水滴となってコイルをなすチューブやフィンの表面を流下する。流下した水滴は最終的にケーシング下枠部上に達するが、水はフィン下部とケーシング下枠部上面に囲まれた水の外部に流れ出にくい領域に入った状態となるため、水がこの下枠部上側に滞留することとなる。こうして滞留した水から水分が蒸発すると、循環水中に溶け込んでいたカルシウム等のスケール成分が析出してスケールとなる。このスケールはケーシング下枠部上面とフィンに囲まれた領域にたまっていくこととなり、こうしたスケールがチューブやフィン等の部材をなす金属部と共に酸素濃淡電池を形成した状態となることで、フィン等の金属部材の腐食が進行してしまうという課題を有していた。
【0008】
さらに、冷却塔循環水の水質は、近年の節水志向により水交換頻度が減り、溶存成分の濃縮倍率が大幅に上昇しているのに伴って悪化しており、こうした水がフィンコイル下部にたまるとスケールが生じやすく、アルミニウムなど比較的腐食しやすい金属材を標準的な構成部材として使用するフィンコイルは、このスケールにより短期間に腐食が進行する危険性が高く、対策を強く求められていた。
【0009】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、フィンコイル下部に水がたまった状態とならないようにし、フィンの隙間にスケールが析出するのを抑え、湿り空気や水滴との接触が避けられない箇所でもフィンコイルの腐食を防止できるフィンコイル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフィンコイル装置は、周囲に板状のフィンを設けたチューブで組立てられる熱交換用のコイルと、当該コイルと一体化した枠状のケーシングを備え、コイル内を流通する所定の熱交換媒体とコイル周囲を通過する空気とを熱交換させるフィンコイル装置において、少なくとも前記フィンの下端部と前記ケーシングの下枠部との間をチューブ管径より大きい所定寸法だけ空け、フィンの下側に空気の通過する空間部を設定するものである。
【0011】
このように本発明によれば、枠状のケーシングに囲まれたフィンコイル下部におけるケーシング下枠部とフィンとの間に、熱交換のために通風される空気が通過する空間部を設け、フィン下端部とケーシング下枠部に囲まれた水の流れにくい領域を無くすと共に、フィン下端部を塞がず、チューブやフィンから水を空間部側に流下させられることにより、チューブ及びフィンが湿り空気及び/又は水滴と接触する状況で、チューブやフィン表面に生じた水を確実に流下させてフィン間に滞留させないようにすることができ、水の滞留に伴ってスケールが発生するのを抑えられ、スケールが原因となって進行するチューブやフィンの腐食を防止でき、腐食に対するメンテナンスの手間やコストを抑えられる。
【0012】
また、本発明に係るフィンコイル装置は必要に応じて、前記空間部の設定されるフィンの下端部とケーシング下枠部との間の領域に、前記チューブを設けないものである。
このように本発明によれば、ケーシング下枠部とフィン下端部との間からチューブも排除して、空間部を広く確保することにより、チューブやフィンから水を下方へより一層流下させやすくなり、チューブやフィン表面に生じた水を確実にケーシング下枠部まで到達させて排除でき、スケールの発生とスケールが原因となって進行するチューブやフィンの腐食をより確実に防止できる。
【0013】
また、本発明に係るフィンコイル装置は必要に応じて、通気構造を有して前記空間部を覆う抵抗体を備えるものである。
このように本発明によれば、ケーシング下枠部とフィン及びチューブとの間の空間部を覆う抵抗体を配設し、空間部を通過しようとする空気に対し抵抗体を通過するのに伴う所定の通風抵抗を与えることにより、空間部における空気の流入量を調整して、ケーシング内側の領域における空気の通過する量を上下方向各部で均等化することができ、空間部に空気が過度に流入するのを防止し、空気を熱交換部分としてのフィンコイル部分に均等に通過させて熱交換効率を高められる。
【0014】
また、本発明に係るフィンコイル装置は必要に応じて、前記空間部に、良熱伝導性を有する難腐食性材料製の第2フィンが前記フィン及び/又はチューブに対し熱伝導可能として一又は複数配設されるものである。
このように本発明によれば、フィンコイルとは別の腐食しにくく良好な熱伝導性を有する第2フィンを、チューブやフィンからの伝熱が可能な状態で空間部に配設し、コイル内の熱交換媒体と空気との熱交換が空間部でも第2フィンを介して行えるようにすることにより、チューブやフィンの腐食を避けつつ熱交換器としての空気との接触面積を最大限確保して、熱交換性能をより一層向上させられる。
【0015】
また、本発明に係るフィンコイル装置は必要に応じて、前記ケーシングの下枠部の上面を空気通過方向について傾けた形状とするものである。
このように本発明によれば、ケーシング下枠部上面を傾斜させ、下枠部上面で水を流れやすくすることにより、フィンコイルから流下した水を下枠部上に溜りにくくすることができ、下枠部上へのスケール発生とそれに伴う腐食の進行を抑えられる。
【0016】
また、本発明に係るフィンコイル装置は必要に応じて、前記ケーシングの下枠部の上面に水抜き孔を穿設するものである。
このように本発明によれば、ケーシング下枠部の上面に水抜き孔を穿設し、下枠部上に達した水を下方に排出しやすくすることにより、フィンコイルから流下した水を下枠部上に溜りにくくすることができ、下枠部上へのスケール発生とそれに伴う腐食の進行を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るフィンコイル装置を用いた冷却塔の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るフィンコイル装置の正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るフィンコイル装置の要部拡大正面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るフィンコイル装置の要部拡大正面図である。
【図6】従来のファンコイル装置の正面図である。
【図7】従来のフィンコイル装置の要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を前記図1ないし図4に基づいて説明する。
【0019】
前記各図に示すように、本実施形態に係るフィンコイル装置10は、熱交換媒体としての循環水の流路をなすチューブ11と、このチューブ11周囲に一体化されて多数並列配置される板状のフィン12と、これらチューブ11とフィン12からなるコイルと一体化した枠状のケーシング13と、このケーシング13の下枠部13a上側の空間部15を覆う前記抵抗体としての抵抗板14とを備える構成であり、冷却塔20の乾式熱交換部として、チューブ11内を流通する循環水と冷却塔20内に通風された空気とを熱交換させるものである。
【0020】
前記チューブ11及びフィン12は、所定間隔で平行に複数列並んだ状態として配置される金属管のチューブ11に対し、これに直交する金属薄板のフィン12がチューブ11長手方向に多数並べて配設され、一枚のフィン12の複数箇所でチューブ11の各列が所定間隔を空けてそれぞれ貫通する状態として各チューブ11とフィン12とが一体に組合わされた公知のフィンコイルであり、詳細な説明を省略する。
【0021】
前記ケーシング13は、一体化されたチューブ11とフィン12を取囲む大きさの金属製の矩形枠状体で形成され、側枠部分にチューブ11の長手方向各端部を貫通させてこれと一体化される構成である。このケーシング13における下枠部13aと、一体化されたチューブ11とフィン12の下端部との間には、空間部15として、チューブ11管径より大きい所定寸法、好ましくはチューブ11の一又は複数列分の配置間隔に相当する所定寸法だけ空けた隙間が設けられており、この空間部15を空気がチューブ11及びフィン12と接触せずに通過することとなる。なお、空間部15は大きすぎても、フィンコイル部分の有効領域が狭くなって熱交換効率がかえって低下することから、チューブ3列分以下もしくは150mm以下とするのが好ましい。
【0022】
前記抵抗板14は、空間部15を覆う大きさとされるパンチング板等の空気を通過させられる多孔性材からなる板状体であり、ケーシング13の下枠部13aに取付けられて配設される構成である。空間部15では、チューブ11やフィン12が存在しない分、そのままでは通風抵抗が小さくなって、フィンコイル装置1を通過しようとする空気がこの空間部15に集中して流入する状態となるのを、空間部15を覆う抵抗板14を設けることで、空間部15の通過空気にフィンコイル部分と同様の通風抵抗を与えて、ケーシング13内側のフィンコイル部分での通風状態を一様にする仕組みである。この抵抗板14の通風抵抗は、フィンコイル部分の通風抵抗と略一致させるのが好ましい。
【0023】
抵抗板14の下部は、折り曲げられてケーシング下枠部13a表面に沿う形状とされ、下枠部13a表面と所定間隔の隙間を介在させて配設されており、この隙間部分を通じて下枠部13a上面に達した水が外部に流れ出ることができるようにしている(図4参照)。
【0024】
本実施形態のフィンコイル装置10は、冷却塔20の乾式熱交換部として、湿り空気や水滴と接触する状況で、冷却塔外部の循環経路からの循環水をチューブ11内に流通させ、この循環水とチューブ11周囲を通過する空気とをチューブ11及びフィン12を介して熱交換させることとなる。
【0025】
前記冷却塔20は、起立状態で多数並列配置される薄板状の充填材21aを有する熱交換部21と、この熱交換部21の上側に配設されて循環水を供給され、この循環水を熱交換部21各部へ分配滴下させる上部水槽22と、熱交換部21下側に配設されて熱交換部21を通過した循環水を回収する下部水槽23と、この下部水槽23から循環水を取出して所定の循環経路を通じて繰返し前記上部水槽22に送込む配水管路24と、下部水槽23中央上方に配設されて熱交換部21の各充填材21a間に誘引通風で外気を通すファン25とを備える、公知の開放式冷却塔の構成である。
【0026】
前記熱交換部21は、多数の略板状の充填材21aを並列させて形成され、前記ファン25下方の空間を挟んで下部水槽23上側に一対配設され、充填材21a間の隙間に循環水を滴下されると共に横方向へ外気を通過させて、充填材21a表面で熱交換を行わせる公知の構成であり、詳細な説明を省略する。この熱交換部21の冷却塔内側の外気出口部分に沿って、熱交換部21を通過した外気をファン25側へ通す一方、熱交換部21内から飛散した水滴を受止め、熱交換部21から外気流出方向下流側へ水滴を飛散しにくくするエリミネータ26が配設される。そして、このエリミネータ26のさらに下流側の冷却塔20内空間に、フィンコイル装置10が配設されることとなる。
【0027】
前記上部水槽22は、底部に多数の小孔を有する浅い箱状体で形成され、熱交換部21の上側において前記下部水槽23を出て所定の循環経路を経由してきた循環水の供給を受け、この循環水を底部の多数の孔から熱交換部21各部へ向けて一様に所定の水量で分配滴下させる公知の構成であり、詳細な説明を省略する。
【0028】
前記下部水槽23は、固定設置される支持枠23a上に配設され、流下した循環水を受けて一時貯溜しつつ回収するものであり、循環水減少時に補給される補給水の給水部(図示を省略)や、循環水の導入及び送出し用の管路(図示を省略)等をそれぞれ接続され、循環水を所定量貯溜可能とされる公知の構成であり、詳細な説明を省略する。また、前記ファン25は、その下方で一対の熱交換部21に挟まれた中央の空間を介して誘引通風で各熱交換部21に横方向から外気を通し、熱交換部21を横に通過した排気を上方へ吹出して排出する公知のものであり、詳細な説明を省略する。
【0029】
次に、前記構成に基づくフィンコイル装置を用いた冷却塔の使用状態について説明する。通常の冷却塔運転状態では、熱交換媒体として冷凍機や空気調和機器等で熱を吸収し、温まった冷却対象の循環水が所定の循環経路から取出されて冷却塔20に戻ると、循環水はまず冷却塔20内の配水管路24に入り、循環水がこれを経由して乾式熱交換部としてのフィンコイル装置10に達する。循環水はフィンコイル装置10で空気と熱交換された後、上部水槽22へ向うこととなる。なお、冷却塔20内の配水管路24に直接上部水槽22側へ向う管路とフィンコイル装置10を通って上部水槽22に達する管路との切換部を設け、白煙の発生が予想される時期のみ、循環水をフィンコイル装置10に通すようにすることもできる。
【0030】
フィンコイル装置60から上部水槽22に達した循環水は、所定時間で底部の各孔を通過し、下方の熱交換部21へ向けて滴下される。この上部水槽22から滴下され、熱交換部21に達した循環水は、充填材21a間の各隙間に進み、充填材21aに沿って流下しつつ、この熱交換部21に対して横方向に導入、通風される外部の空気と接触する。循環水は、主に空気と循環水の温度差に伴う熱伝達(顕熱)による冷却作用、及び、循環水の蒸発熱(潜熱)による冷却作用により冷却される一方、熱交換により逆に空気温度を上昇させることとなる。こうして循環水は熱交換部21で冷却された後、下部水槽23に達して回収される。下部水槽23に溜った循環水は、水槽出口から再び循環経路に入り、熱交換媒体として冷凍機や空気調和機器等で熱を吸収した後、配水管路24に入って前記過程が繰返される。
【0031】
一方、ファン25の誘引により熱交換部21を通過する空気は、熱交換部21で、蒸発した循環水を取込むことで湿り空気となってフィンコイル装置10に達する。また、熱交換部21の充填材21a表面を流下する循環水の一部が、水滴として熱交換部21を通過する空気と共にエリミネータ26を通り抜けてフィンコイル装置10に達することとなる。
【0032】
フィンコイル装置10に通風される空気は、チューブ11内の循環水とチューブ11及びフィン12を介した非接触の乾式熱交換(顕熱交換)を行い、空気中の水分量をそのままにして温度上昇することで、排出空気の相対湿度は十分低下した状態となる。
【0033】
こうして、外気温の低い冬期や、外気湿度の高い梅雨期など、熱交換部を通った排出空気中の水分がほぼ飽和状態となって、そのままファン25で排出すると排出直後から過飽和状態に移行して白煙発生が予想される状況でも、フィンコイル装置10を通すことで、温度上昇した排出空気内の水分がファン25からの排出直後に温度の低い外気と接触しても飽和状態となりにくく、白煙を発生させずに排出空気を外気に拡散させられる。
【0034】
また、フィンコイル装置10においては、ケーシング13内のフィンコイル部分で凝結して生じた水滴や、空気と共に運ばれてフィンコイル部分に付着した水滴は、チューブ11やフィン12表面を流下してケーシング13の下枠部13aに達するが、この下枠部13a上面とチューブ11やフィン12の下端部が接触していないため、水は下枠部13a上に溜りにくく、下枠部13a上から下方の下部水槽23へ流れ落ちることとなる。こうして水が下枠部13a上に溜る状態を阻止することで、スケールの析出を抑えられ、チューブ11やフィン12の腐食を防止できることとなる。
【0035】
下枠部13a上側の空間部15にはチューブ11やフィン12が存在しないものの、抵抗板14が配設されて適度な通風抵抗が与えられていることで、空気がこの空間部15により多く流れ込もうとして偏流状態になることはなく、通風状態がケーシング13内のフィンコイル部分全体で均一化して、スムーズに空気を通過させて効率よく熱交換を行わせることができる。
【0036】
このように、本実施形態に係るフィンコイル装置では、枠状のケーシング13に囲まれたフィンコイル下部におけるケーシング下枠部13aとフィン12及びチューブ11との間に、熱交換のために通風される空気が通過する空間部15を設け、フィン12下端部とケーシング下枠部13aに囲まれた水の流れにくい領域を無くすと共に、フィン12下端部を塞がず、チューブ11やフィン12から水を空間部側に流下させられることから、チューブ11及びフィン12が湿り空気及び/又は水滴と接触する状況で、チューブ11やフィン12表面に生じた水を確実に流下させてチューブ11やフィン12間に滞留させないようにすることができ、水の滞留に伴ってスケールが発生するのを抑えられ、スケールが原因となって進行するチューブやフィンの腐食を防止でき、腐食に対するメンテナンスの手間やコストを抑えられる。また、空間部15を覆う抵抗板14を配設し、空間部15を通過しようとする空気に対し抵抗板14を通過するのに伴う所定の通風抵抗を与えることから、空間部15における空気の流入量を調整して、ケーシング13内側の領域における空気の通過する量を上下方向各部で均等化することができ、空間部15に空気が過度に流入するのを防止し、空気を熱交換部分としてのフィンコイル部分に均等に通過させて熱交換効率を高められる。
【0037】
なお、前記実施形態に係るフィンコイル装置では、冷却塔20における白煙防止のための乾式熱交換部として冷却塔20内に設置する例を示しているが、これに限られるものではなく、所定の熱交換媒体と気体とを直接接触させずに熱交換させる場合で、湿り空気等の気相の水分を含む気体や気体中の水滴と接触しうる状況における熱交換器として幅広く使用でき、フィンコイルに水が付着してもその水がケーシング下枠部に溜るのを抑えられ、チューブやフィンの腐食を防止できる。
【0038】
また、前記実施形態に係るフィンコイル装置において、ケーシング下枠部13a上側の空間部15にはチューブ11とフィン12のいずれも設けない構成としているが、これに限らず、チューブについては上方のフィンコイル部分同様に設け、フィンのみ設けない構成とすることもでき、チューブからなるコイルを従来同様に製造できる他、空間部におけるチューブによる熱交換も期待できる。
【0039】
また、前記実施形態に係るフィンコイル装置において、ケーシング下枠部13a上側部分に抵抗板14を設けて空間部15を覆う構成としているが、これに限らず、図5に示すように、空間部15にフィンコイルとは別の腐食しにくく且つ良好な熱伝導性を備える材質製の、例えばステンレス鋼、チタン、銅などからなる第2フィン16を設け、通風抵抗を付与する構成とすることもでき、チューブ11内の循環水と空気との熱交換が第2フィン16を介して空間部15でも行えることとなり、チューブ11やフィン12の腐食を避けつつ熱交換器として空気との接触面積を最大限確保して、熱交換性能をより一層向上させられる。この第2フィン16の配設ピッチについては、図5に示すような上側のフィン12の二倍のピッチとする他、フィン12と等ピッチとしたり、他の整数倍のピッチとするなど、適度な通風抵抗が得られるように適宜設定してかまわない。さらに、開放状態では通風抵抗の小さい空間部15への空気流入量が、フィンコイル装置の上流側や下流側の空気流路状態によりそれほど大きくならず、フィンコイル全体における空気流入の面で過度の不均一状態をもたらさないことが見込めるのであれば、抵抗板等を配設せずに空間部15を開放状態のままとする構成としてもかまわない。
【0040】
また、前記実施形態に係るフィンコイル装置において、チューブ11及びフィン12とケーシング13の配置関係は、下枠部13a上側とチューブ11及びフィン12の間に当初から空間部15を存在させる構成としているが、これに限らず、チューブ及びフィンの下端部がケーシングの下枠部上側に達している従来構造のフィンコイルにおける、最下部のチューブ及びフィンを切除して空間部を生じさせ、必要に応じ抵抗板等を取付ける構成とすることもでき、特に、既にフィンコイルの最下部のチューブ及びフィンに腐食が生じている場合の対策構造として適用すれば、さらなる腐食の進行を確実に防止できる。
【0041】
また、前記実施形態に係るフィンコイル装置において、ケーシング13の下枠部13a上面は単純な平面板状に形成する構成としているが、これに限らず、ケーシングの下枠部の上面を空気通過方向について傾斜する形状としたり、下枠部の上面に水抜き孔を穿設したりする構成とすることもでき、ケーシング下枠部上面から水が下方に流れやすくすることで、フィンコイルから流下した水が下枠部上にたまりにくくなり、下枠部上へのスケール発生とそれに伴う腐食の進行を阻止できる。
【符号の説明】
【0042】
10 フィンコイル装置
11 チューブ
12 フィン
13 ケーシング
13a 下枠部
14 抵抗板
15 空間部
16 第2フィン
20 エリミネータ
21 熱交換部
21a 充填材
22 上部水槽
23 下部水槽
24 配水管路
25 ファン
26 エリミネータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲に板状のフィンを設けたチューブで組立てられる熱交換用のコイルと、当該コイルと一体化した枠状のケーシングを備え、コイル内を流通する所定の熱交換媒体とコイル周囲を通過する空気とを熱交換させるフィンコイル装置において、
少なくとも前記フィンの下端部と前記ケーシングの下枠部との間をチューブ管径より大きい所定寸法だけ空け、フィンの下側に空気の通過する空間部を設定することを
特徴とするフィンコイル装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のフィンコイル装置において、
前記空間部の設定されるフィンの下端部とケーシング下枠部との間の領域に、前記チューブを設けないことを
特徴とするフィンコイル装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のフィンコイル装置において、
通気構造を有して前記空間部を覆う抵抗体を備えることを
特徴とするフィンコイル装置。
【請求項4】
前記請求項1又は2に記載のフィンコイル装置において、
前記空間部に、良熱伝導性を有する難腐食性材料製の第2フィンが前記フィン及び/又はチューブに対し熱伝導可能として一又は複数配設されることを
特徴とするフィンコイル装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載のフィンコイル装置において、
前記ケーシングの下枠部の上面を空気通過方向について傾けた形状とすることを
特徴とするフィンコイル装置。
【請求項6】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載のフィンコイル装置において、
前記ケーシングの下枠部の上面に水抜き孔を穿設することを
特徴とするフィンコイル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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