フィンチューブ式熱交換器
【課題】 高い熱伝達率が得られるとともに、着霜時の通風抵抗の増加を抑制できるフィンチューブ式熱交換器を実現すること。
【解決手段】 設定間隔で互いに平行に配列された複数の板状のフィンを貫通する伝熱管と、フィンを切り起して形成された平面状の複数のスリット面1とを備えたフィンチューブ式熱交換器であり、スリット面1は、空気流と交差する方向を長手方向として、スリット面1の高さをフィンの上流側から下流側にかけて階段状に配列し、フィンの上流側の端部は、隣り合うフィンのスリット面1の間に形成される流路に流入空気を案内するように折り曲げて形成される整流面9を備える。
【解決手段】 設定間隔で互いに平行に配列された複数の板状のフィンを貫通する伝熱管と、フィンを切り起して形成された平面状の複数のスリット面1とを備えたフィンチューブ式熱交換器であり、スリット面1は、空気流と交差する方向を長手方向として、スリット面1の高さをフィンの上流側から下流側にかけて階段状に配列し、フィンの上流側の端部は、隣り合うフィンのスリット面1の間に形成される流路に流入空気を案内するように折り曲げて形成される整流面9を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンチューブ式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒートポンプ等の室外機で使用されるフィンチューブ式熱交換器は、所定の間隔で平行に配列された複数の板状のフィンと、これらのフィンへ直角に挿入された伝熱管とを備えて構成される。このフィンには、例えば、空気の流入方向と直交する方向を長手方向として、所定の角度で切り起されたスリット面が空気流の方向に沿って複数設けられている。このようにすることで、伝熱効率が促進され、熱交換能力を増大させることができる。
【0003】
しかし、フィン表面に一度着霜が生じると、隣り合うフィンのスリット間などで目詰まりが生じやすく、通風抵抗が増大するとともに、熱交換能力が低下する。このため、伝熱管の冷媒温度を低くして、着霜時の熱交換能力の低下を抑制する方法が知られているが、冷媒温度を低下させると、冷媒側の動力源、つまり圧縮機の消費電力が増加して運転効率が低下する。
【0004】
これに対し、スリットなどの切り起しの少ない、プレートフィンに近い形状のフィンを採用する方法が考えられるが、このようなフィンは、例えば、スリットの多いフィンと比べて熱伝達率が低いため、スリットの多いフィンと同等の性能を維持するには、伝熱面積を増やさなければならず、筐体の省スペース化やフィン材を低減する上で不利になる。
【0005】
そこで、高い熱伝達率を維持しつつ着霜時の通風抵抗の増加を抑制するため、例えば、フィンに対し上下方向で交互にスリット面を切り起し、空気の通流方向に沿ってスリットの切り起しの数を順次増大させて配列することで、フィン全体に均一な着霜を生じせしめるフィンチューブ式熱交換器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平10−332162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フィンの着霜状態は空気の流入条件等によって異なるため、特許文献1に示すように、着霜状態を予測して、どのような条件下においても、フィン全面に均一に着霜させるスリット配列及び形状等を選定することは、極めて困難となる。
【0008】
また、特許文献1のように、スリットをフィンに対し非対称で配列することは、フィンの製造上好ましくない。すなわち、一般に、フィンは薄いアルミ条を金型で数十列分まとめてプレスした後、これらを切り離して積層し、伝熱管を貫通させている。このため、フィン形状が非対称となると、成形過程でフィンが歪むため、伝熱管の組み込みが困難になるという問題がある。また、フィン形状の非対称性に伴い、空気流入方向が一義的に決定されるため、熱交換器を空調機等の筐体へ組み込む際に、方向が制限されるという問題がある。
【0009】
本発明は、高い熱伝達率が得られるとともに、着霜時の通風抵抗の増加を抑制できるフィンチューブ式熱交換器を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、設定間隔で互いに平行に配列された複数の板状のフィンと、これらのフィンを貫通する伝熱管と、フィンを切り起して形成された平面状の複数のスリット面とを備え、フィンの間に流入する空気と伝熱管内を流れる冷媒との間で熱交換を行うフィンチューブ式熱交換器において、スリット面は、空気流と交差する方向を長手方向として、スリット面の高さをフィンの上流側から下流側にかけて階段状に配列してなり、フィンの上流側の端部は、隣り合うフィンのスリット面の間に形成される流路に流入空気を案内するように折り曲げて形成される整流面を有することを特徴とする。
【0011】
これによれば、整流面を通過した空気は、流れ方向が曲げられて、フィン間に形成される流路内に導かれる。この流路は、フィンの上流側から下流側にかけて、スリット面の高さが段階的に変化、つまりフィンの平面方向に対し傾斜させて設けられている。このため、空気が流れる距離が長くなるとともに、その一部が隣り合うスリット面の段差の隙間から分岐する。すなわち、非着霜時においては、伝達面積が増加されるため、高い熱伝達率を得ることができ、着霜時においては、隣り合うスリット間で段差部分に目詰まりが生じても、空気の主流が流れる流路は確保されるため、通風抵抗の増加を抑制することができる。
【0012】
この場合において、隣り合うフィンのスリット面は、フィンの上流側から下流側にかけて、互いに一定の間隔で配置されることが好ましい。これによれば、空気流の方向と直交する方向で、スリットの分布を密にできるため、スリットに当たって分岐する空気流を増加させ、熱伝達率を向上させることができる。
【0013】
また、スリット面は、フィンの上流側から下流側にかけて、一定の段差で形成されることが好ましい。これによれば、例えば、着霜時においても、流路を流れる空気の通風抵抗をできるだけ小さくすることができる。
【0014】
また、スリット面の高さは、フィンの上流側と下流側とで対称に形成されることが好ましい。すなわち、空気流がスリットの短手方向で、例えば、M字状又はW字状で流れることにより、階段状に形成される流路が上流側と下流側とで対称となり、熱交換器として表裏の制限なく筐体へ組み込むことができる。また、フィン成形時にフィン自体の歪みを抑制できるため、生産性を向上できる。更に、スリット面及び整流面は、フィンに対し同一方向に持ち上げて形成することが好ましい。これによれば、生産性を一層向上できる。
【0015】
また、スリット面は空気の流入方向で断面山型に形成することが好ましい。これによれば、通風抵抗が多少増加しても、山型の凹部には渦流が生じ、かつ凸部は空気流に対し所定の角度を有するため、温度境界層が薄くなり熱伝達率を促進することができる。ここで、山型の頂点を軸としてスリット面を回転傾斜させて配置することにより通風抵抗を一層低減できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い熱伝達率が得られるとともに、着霜時の通風抵抗の増加を抑制できるフィンチューブ式熱交換器を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、図面に基づいて本発明にかかるフィンチューブ式熱交換器について詳細に説明する。図1は本発明に係るフィンチューブ式熱交換器の要部を拡大して示す平面図であり、図2は図1のA−A断面図である。図3は本発明に係るフィンチューブ式熱交換器の外観を示す斜視図である。図4は、図2において空気の流れ方向を説明する図である。
【0018】
本実施形態のフィンチューブ式熱交換器2は、図3に示すように、設定間隔で平行に配置された複数の平板状のフィン3と、これらのフィン3に直交して挿入される伝熱管5とから構成され、フィン3同士の隙間に空気を流して伝熱管5内を流れる冷媒と熱交換を行うようになっている。フィン3は、空気の流れ方向に例えば2列で配列され、各列において伝熱管5が繰り返し折り曲げられてフィン3を貫通している。ここで、フィン3は、薄く細長いアルミ材からなり、複数のスリット状の切起部(以下、スリット1又はスリット面1という)を備えることで、熱交換効率が向上するように構成されている。
【0019】
フィン3には、図1に示すように、スリット1が空気流の方向と交差する方向を長手方向として複数形成され、フィン3の中央部にはスリット群7が形成されている。このスリット群7の外側、つまりフィン3の上流端及び下流端には、フィン3の長手方向(図1の縦方向)にリブ面9が延在して形成されている。このリブ面9は、空気流の方向でスリット面1よりも幅広に形成され、後述するように断面を折り曲げて形成されている。カラー11は、伝熱管11の周縁部に沿って立ち上げて形成され、伝熱管11と密着し、隣り合うフィン3同士の距離を確保する支持部材の機能を備えている。なお、リブ面9は、カラー11によって寸断されることなく、空気流と直交する方向に連続的に形成されている。
【0020】
次に、フィン3に形成されるスリット1の構成を詳細に説明する。スリット1は、フィン3を一方向に切り起すことで、フィン3と平行なスリット面1を形成し、空気流の方向に沿って連続的に配設される。スリット面1の高さは、図2に示すように、空気流の方向に沿って階段状となり、隣接するスリット面1が同じ高さにならないように配列されている。スリット面1は、フィン3の上流側から下流側にかけて一定の段差を保持して形成され、隣り合うフィン3のスリット面とは一定の間隔を有している。
【0021】
隣り合うフィン3のスリット面1の間には、空気が流れる流路空間13が形成されている。流路空間13の上流側には、流入空気を流路空間13内に案内するように、リブ面9が所定角度で折り曲げて形成されている。また、流路空間13の下流側においても所定角度で折り曲げられたリブ面9が同様に形成されている。ここで、スリット面1及びリブ面9の高さは、フィン3の上流側と下流側とで対称に配列されていることが好ましい。本実施形態では、スリット面1の高さは、フィン3の上流側から中央部にかけて一方向に階段状に傾斜し、中央部から下流側にかけて他方向に階段状に傾斜して配列されているが、この配列に限定されるものではない。
【0022】
次に、本実施形態の作用を説明する。図4は、図2の流路空間13を流れる空気の流れを説明する図である。リブ面9の間を通過する空気は、リブ面9の整流作用により、流れ方向が大きく曲げられて、フィン3間に形成される流路空間13に導かれる。この流路空間13は、フィン3の上流側から下流側にかけて、スリット面1の高さの変化に伴い、フィン3の積層する方向に変化する。すなわち、空気流は、図の矢印で示すように、全体としてM字状の流れを形成する。このため、空気流の主流15の一部がスリット面1の段差の隙間から分岐して分岐流17を形成し、温度境界層を寸断する前縁効果が増大される。
【0023】
また、空気流の方向の変化に伴い、空気の通流距離が長くなるため、主流15からの空気の分岐回数が増加する。これにより、非着霜時においては、高い熱伝達率が得られる一方、着霜時においても熱交換能力の低下を抑制できる。更に、着霜時において、隣り合うスリット1間で着霜による目詰まりが生じても、空気の主流15が通過する流路を確保できるため、通風抵抗の増加を抑制できる。或いは、フィン3間が閉塞するまでの時間を長くできるため、除霜周期を延長することができ、快適性、エネルギ効率の面で有利となる。
【0024】
図6は、本実施形態と比較例との空気流路の相違を説明する図であり、(a)は比較例、(b)は本実施形態のフィンチューブ式熱交換器をそれぞれ表している。本実施形態では、フィンの両端に幅広のリブ面9を備えているため、空気の整流作用が働いて流路空間13を通じてM字状の流路が発生し、主流となる矢印の空気流から図示しない分岐流が形成される。これにより、高い熱交換効率に加えて着霜時の通風抵抗を抑制できる。
【0025】
一方、比較例の場合、リブ面の高さが階段状に配列されている点で本実施形態と類似するが、フィン両端に幅広のリブ面を備えておらず、すべてのスリット面が同じ幅になっている。つまり、流路空間に導かれた空気は、整流されずにそのまま矢印の方向に直進し、延長上の同じ高さに設けられたスリットを通過する。このため、スリットと接触して熱交換された空気は、後流側の別のフィンと繰り返し接触することになり、熱交換効率が低下する要因となる。また、隣接するスリットの間で着霜が生じると空気の流れが妨げられるため、通風抵抗が急増する。これに対し、本実施形態では、一旦冷却又は加熱された空気がその後流側のスリット1に接触することを避けられるため、スリット1と接触する空気との温度差を確保することができ、熱交換量を大きくできる。
【0026】
図7は、本実施形態において着霜時の空気の流れを説明する図である。図に示すように、隣り合うスリット1の隙間には霜層19が形成されている。このように、フィン3間の隙間に着霜が生じると、まず、隣り合うスリット1間の狭い隙間に目詰まりが生じるが、本実施形態によれば、着霜時においても流路空間13を残すことができるため、加速度的な着霜を防止し、伝熱管5内を流れる冷媒の温度低下を抑制できる。更に、着霜時の流路空間13は、M字型であるため、直線型の場合と比べて熱伝達率が高くなり着霜時の能力を維持する上で有利となる。
【0027】
図5は、図4のB部の拡大図である。隣り合うスリット1の段差hsは、小さい方がスリット面1の重なりを防止する上で有利であるが、小さすぎるとスリット1間へ空気が分岐しにくくなるため、前縁効果が半減する。そのため、スリットの段差hsはフィン3の板厚に対して約3〜5倍が好適である。なお、スリットの段差hsは、全てのスリット1間において同じ間隔で設定することが好ましい。これによれば、例えば、着霜時においても、流路空間13を流れる空気の通風抵抗を小さくすることができる。
【0028】
また、一般に空調機等で使用されるフィンチューブ式熱交換器用のフィンは、板厚が0.1mm程度と非常に薄いため、フィン単体では強度的に弱く、フィン3を整然と積層させて伝熱管5を通す作業が困難となる場合がある。このため、フィン3の両端にリブ面9を途切れなく配置することで、フィン3自体の剛性を高めることができ、組み立て性が向上し、熱交換器として纏めやすくなる。しかし、リブ面9の高さ(リブ面9と隣接するスリット面との段差、つまりhs)は、高い方が剛性を高める上で良いが、高すぎると空気の流れ方向を大きく曲げることになるため、通風抵抗が増幅されてしまう。このため、図5に示すように、スリットの段差hsは、例えば、フィンピッチPf(隣り合うフィン3間の距離)の20〜30%であることが好ましい。
【0029】
また、リブ面9は、空気流の方向にできるだけ幅広に形成されていることが好ましい。リブ面9は、フィン3の両端に形成されているため、外気の空気質等の影響を受けて腐食しやすい。このため、両端部分にスリットやルーパ等を形成する場合、腐食割れや脱落等を生じるおそれがあり、外観上も好ましくない。このため、リブ面9に所定の幅をもたせることで、腐食割れ等を抑制できる。なお、フィン3の両端部は伝熱管5から最も遠いため、一般に温度変化が生じやすいが、本実施形態のリブ面9を形成することにより、温度差を緩和することができる。
【0030】
また、フィン3間を通過する空気流のM字型(又はW字型)の高さ、つまり空気流と直交する方向のフィン3の高さHは、コルゲート高さとも呼ばれ、図4に示すように、例えば、フィンピッチPfの約1.2倍が好適である。この高さHは、非着霜時の熱交換性能は勿論、着霜時の性能にも大きく影響する。
【0031】
図8は、図1においてフィン3の中央付近の空気の流れを説明する図である。ここで、伝熱管5の隙間を流れる空気流の方向を矢印で示す。伝熱管5同士に挟まれた空間では、図に示すように、空気の縮流が発生し、流速が増加することから、熱伝達が促進される。したがって、このようなフィン3の中央部にスリット1を多く配列することにより前縁効果を有効に活用することができる。また、伝熱管5とスリット1との距離が近いためスリット1の温度が変化しにくく、高い熱伝達率を実現できる。
【0032】
また、本実施形態では、スリット面1は、フィン3の上流側と下流側とで対称に配列されている。したがって、一方を入口として空気が流入する場合に限らず、他方を入口として空気を流入させても同等の効果を発揮することができる。このため、例えば、熱交換器は、表裏の制限なく空調機等の筐体内へ組み込むことができる。
【0033】
更に、フィン3を金型で打ち出して成形する工程において、スリット面1が非対称のフィン3の場合、部分的なフィン材の伸び率の違いによって残留応力が発生する。これに対し、本実施形態のフィン3は、左右対称となるため、残留応力が相殺されてフィン3の湾曲を抑制され、組み立て性を向上できる。
【0034】
図9(a),(b)は、図6(a),(b)のフィンチューブ式熱交換器にそれぞれ対応し、同一条件下で空気を流した場合の温度分布及び通風抵抗についてシュミレーションした結果を示している。図において、色の濃淡は温度分布を表し、色の濃い方が低温になっている。ここで、温度2℃,風速1.5m/sの空気を一端(図の左側)の入口側から供給し、他端の出口側の空気温度及び通風抵抗を計算する。なお、フィンは−5℃に冷却されている。
【0035】
これによれば、出口側の空気温度及び通風抵抗は、(a)の従来構成において、−4.17℃,13.35Paであるのに対し、(b)の本実施形態では−4.36℃,9.69Paとなり、従来構成と比べて出口温度が低く、通風抵抗が小さくなっている。また、空気の流れを示す矢印からも明らかなように、従来構成は空気が水平方向に流れるため、空気が繰り返しフィンに接触して熱交換効率を低下させるのに対し、本実施形態では、リブ面で曲げられた空気がM字状の空気流を形成し、同時に分岐流が形成するため、高い熱交換効率を得ることができる。
【0036】
以上述べたように、本実施形態によれば、リブ面9とスリット面1とを組み合せることにより、例えば、空気の流れがM字状に変化するため、熱伝達率を向上でき、着霜時においても、霜層分布にかかわらず、通風抵抗の増加を抑制することができる。加えて、優れたフィンの成形加工性を兼ね備えたフィンチューブ式熱交換器を提供できる。
【0037】
なお、本実施形態において、リブ面9は、少なくともフィン3の上流端に形成されていればよいが、空気の流れをスムーズにするため、両端面に形成されていることが好ましい。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係るフィンチューブ式熱交換器の他の実施形態について説明する。図10は、本実施形態において流路空間を通過する空気の流れを説明する図である。本実施形態では、第1の実施形態と同様、フィン3の両端面に幅広のリブ面21が形成されている。リブ面21の内側には、フィン3の上流側から下流側にかけて階段状にスリット面1が配列されている。第1の実施形態では、空気流がM字状になるようにスリット面1の高さがフィン3の上流側と下流側とで対称に配列されているのに対し、本実施形態では、上流側から下流側にかけてスリット面1が一方にのみ傾斜する非対称の配列になっている。
【0039】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様、リブ面21で整流された空気が流路空間23内に導かれ、矢印に示すように直線状の主流22から分岐流24が発生する。この場合、M字状の空気流と比べて多少熱伝達率は低下するが、着霜時において流路空間23が確保されるため、通風抵抗の増加を抑制することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
次に、図3で説明したように、空気の流れ方向に、積層されたフィン群を複数配列した場合の一例について説明する。図11は、本実施形態におけるフィンチューブ式熱交換器の要部を拡大して示す平面図、図12は、図11のC−C断面図である。
【0041】
本実施形態では、図に示すように、空気の流れ方向にフィンが2列に配置され、伝熱管5は千鳥格子状に交互に配列されている。図12は、2列のフィンが連結されてなるフィンの断面形状を示しており、M字型のスリット配列を有していないが、他のフィンと積層させることによりM字状の流路空間13が形成される。
【0042】
カラー11の上流側及び下流側にはリブ面9が形成され、下流側はリブ面9を介して一連のスリット群7が階段状に連続して形成されている。また、スリット群7の下流端にはリブ面9が形成されている。ここで、スリット1及びリブの立ち上げ方向は全てカラーの立ち上げ方向と同じになっている。このため、以下の点で生産性に優れている。すなわち、スリット成形時は、通常金型内をフィンが順次移動して数段階の工程を経て図のようなフィンが形成されるが、スリット1の立ち上げ方向をカラー11と同じ方向に揃えることにより、スリット1が引っ掛かることなくスムーズに金型内を移動することができる。また、フィン3を傷付けたり、金型に特別な工夫を行う必要がない。
【0043】
(第4の実施形態)
次に、本発明に係るフィンチューブ式熱交換器の第4の実施形態について説明する。図13は、本実施形態において流路空間28を通過する空気の流れを説明する図である。本実施形態のスリット26は、短手方向の断面が山型に形成され、その他の構成は基本的に第1の実施形態と同様である。
【0044】
このように断面が山型のスリット26を配列することにより、通風抵抗は多少増加するが、空気の主流30から分岐流32が形成される際に、各スリット26の凸部は空気流に対し所定の角度を備える一方、凹部には渦流が生じるため、温度境界層が薄くなり熱伝達率を向上できる。これにより、風量が充分確保される場合には、スリット面1を山型に形成することが好ましい。
【0045】
更に、図14に示すように、各スリット26は山型の頂点を軸としてスリット面を回転傾斜させて配置するようにしてもよい。ここで、山型のスリット26の回転角度と空気流との関係について説明する。図15は、山型のスリット23の周辺を流れる空気流、つまり分岐流34の流れを説明する図であり、(a)は図13のスリット、(b)は図14のスリットをそれぞれ表している。図15の(a)に示すように、山型のスリット26の周囲では、空気流の剥離が生じ、これが通風抵抗の要因となっている。これに対し、図15の(b)に示すように、山型のスリット26を回転傾斜させた場合、空気流の剥離が抑制されるため、通風抵抗が低減され、熱伝達率を確保することができる。
【0046】
よって、図14に示すように、例えば、山型のスリット26を上流側と下流側とで対称になるように、山型の頂点を軸として所定量回転させることにより、高い熱伝達率に加えて、着霜時においても通風抵抗の少ない熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフィンチューブ式熱交換器の要部を拡大して示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るフィンチューブ式熱交換器の外観を示す斜視図である。
【図4】図2で示した断面の流路空間における空気の流れを説明する図である。
【図5】図4のB部の拡大図である。
【図6】本発明の第1の実施形態と比較例との空気流路の違いについて説明する図であり、(a)は比較例、(b)は本実施形態のフィンチューブ式熱交換器をそれぞれ表している。
【図7】図2で示した断面の着霜時における空気の流れを説明する図である。
【図8】図1で示したフィンの中央付近の空気の流れを説明する図である。
【図9】図6(a),(b)にそれぞれ対応し、同一条件下で空気を流した場合の温度分布及び通風抵抗についてシュミレーションした結果を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る流路空間を通過する空気の流れを説明する図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るフィンチューブ式熱交換器の要部を拡大して示す平面図である。
【図12】図11のC−C断面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る流路空間を通過する空気の流れを説明する図である。
【図14】図13においてスリット面を回転傾斜させて配置した図である。
【図15】図13,14のスリットの短手方向を流れる空気流を説明する図であり、(a)は図13、(b)は図14のスリットをそれぞれ表している。
【符号の説明】
【0048】
1,26 スリット(スリット面)
3 フィン
5 伝熱管
7 スリット群
9,21 リブ面
13,23,28 流路空間
15,22,30 主流
17,24,32,34 分岐流
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンチューブ式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒートポンプ等の室外機で使用されるフィンチューブ式熱交換器は、所定の間隔で平行に配列された複数の板状のフィンと、これらのフィンへ直角に挿入された伝熱管とを備えて構成される。このフィンには、例えば、空気の流入方向と直交する方向を長手方向として、所定の角度で切り起されたスリット面が空気流の方向に沿って複数設けられている。このようにすることで、伝熱効率が促進され、熱交換能力を増大させることができる。
【0003】
しかし、フィン表面に一度着霜が生じると、隣り合うフィンのスリット間などで目詰まりが生じやすく、通風抵抗が増大するとともに、熱交換能力が低下する。このため、伝熱管の冷媒温度を低くして、着霜時の熱交換能力の低下を抑制する方法が知られているが、冷媒温度を低下させると、冷媒側の動力源、つまり圧縮機の消費電力が増加して運転効率が低下する。
【0004】
これに対し、スリットなどの切り起しの少ない、プレートフィンに近い形状のフィンを採用する方法が考えられるが、このようなフィンは、例えば、スリットの多いフィンと比べて熱伝達率が低いため、スリットの多いフィンと同等の性能を維持するには、伝熱面積を増やさなければならず、筐体の省スペース化やフィン材を低減する上で不利になる。
【0005】
そこで、高い熱伝達率を維持しつつ着霜時の通風抵抗の増加を抑制するため、例えば、フィンに対し上下方向で交互にスリット面を切り起し、空気の通流方向に沿ってスリットの切り起しの数を順次増大させて配列することで、フィン全体に均一な着霜を生じせしめるフィンチューブ式熱交換器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平10−332162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フィンの着霜状態は空気の流入条件等によって異なるため、特許文献1に示すように、着霜状態を予測して、どのような条件下においても、フィン全面に均一に着霜させるスリット配列及び形状等を選定することは、極めて困難となる。
【0008】
また、特許文献1のように、スリットをフィンに対し非対称で配列することは、フィンの製造上好ましくない。すなわち、一般に、フィンは薄いアルミ条を金型で数十列分まとめてプレスした後、これらを切り離して積層し、伝熱管を貫通させている。このため、フィン形状が非対称となると、成形過程でフィンが歪むため、伝熱管の組み込みが困難になるという問題がある。また、フィン形状の非対称性に伴い、空気流入方向が一義的に決定されるため、熱交換器を空調機等の筐体へ組み込む際に、方向が制限されるという問題がある。
【0009】
本発明は、高い熱伝達率が得られるとともに、着霜時の通風抵抗の増加を抑制できるフィンチューブ式熱交換器を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、設定間隔で互いに平行に配列された複数の板状のフィンと、これらのフィンを貫通する伝熱管と、フィンを切り起して形成された平面状の複数のスリット面とを備え、フィンの間に流入する空気と伝熱管内を流れる冷媒との間で熱交換を行うフィンチューブ式熱交換器において、スリット面は、空気流と交差する方向を長手方向として、スリット面の高さをフィンの上流側から下流側にかけて階段状に配列してなり、フィンの上流側の端部は、隣り合うフィンのスリット面の間に形成される流路に流入空気を案内するように折り曲げて形成される整流面を有することを特徴とする。
【0011】
これによれば、整流面を通過した空気は、流れ方向が曲げられて、フィン間に形成される流路内に導かれる。この流路は、フィンの上流側から下流側にかけて、スリット面の高さが段階的に変化、つまりフィンの平面方向に対し傾斜させて設けられている。このため、空気が流れる距離が長くなるとともに、その一部が隣り合うスリット面の段差の隙間から分岐する。すなわち、非着霜時においては、伝達面積が増加されるため、高い熱伝達率を得ることができ、着霜時においては、隣り合うスリット間で段差部分に目詰まりが生じても、空気の主流が流れる流路は確保されるため、通風抵抗の増加を抑制することができる。
【0012】
この場合において、隣り合うフィンのスリット面は、フィンの上流側から下流側にかけて、互いに一定の間隔で配置されることが好ましい。これによれば、空気流の方向と直交する方向で、スリットの分布を密にできるため、スリットに当たって分岐する空気流を増加させ、熱伝達率を向上させることができる。
【0013】
また、スリット面は、フィンの上流側から下流側にかけて、一定の段差で形成されることが好ましい。これによれば、例えば、着霜時においても、流路を流れる空気の通風抵抗をできるだけ小さくすることができる。
【0014】
また、スリット面の高さは、フィンの上流側と下流側とで対称に形成されることが好ましい。すなわち、空気流がスリットの短手方向で、例えば、M字状又はW字状で流れることにより、階段状に形成される流路が上流側と下流側とで対称となり、熱交換器として表裏の制限なく筐体へ組み込むことができる。また、フィン成形時にフィン自体の歪みを抑制できるため、生産性を向上できる。更に、スリット面及び整流面は、フィンに対し同一方向に持ち上げて形成することが好ましい。これによれば、生産性を一層向上できる。
【0015】
また、スリット面は空気の流入方向で断面山型に形成することが好ましい。これによれば、通風抵抗が多少増加しても、山型の凹部には渦流が生じ、かつ凸部は空気流に対し所定の角度を有するため、温度境界層が薄くなり熱伝達率を促進することができる。ここで、山型の頂点を軸としてスリット面を回転傾斜させて配置することにより通風抵抗を一層低減できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い熱伝達率が得られるとともに、着霜時の通風抵抗の増加を抑制できるフィンチューブ式熱交換器を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、図面に基づいて本発明にかかるフィンチューブ式熱交換器について詳細に説明する。図1は本発明に係るフィンチューブ式熱交換器の要部を拡大して示す平面図であり、図2は図1のA−A断面図である。図3は本発明に係るフィンチューブ式熱交換器の外観を示す斜視図である。図4は、図2において空気の流れ方向を説明する図である。
【0018】
本実施形態のフィンチューブ式熱交換器2は、図3に示すように、設定間隔で平行に配置された複数の平板状のフィン3と、これらのフィン3に直交して挿入される伝熱管5とから構成され、フィン3同士の隙間に空気を流して伝熱管5内を流れる冷媒と熱交換を行うようになっている。フィン3は、空気の流れ方向に例えば2列で配列され、各列において伝熱管5が繰り返し折り曲げられてフィン3を貫通している。ここで、フィン3は、薄く細長いアルミ材からなり、複数のスリット状の切起部(以下、スリット1又はスリット面1という)を備えることで、熱交換効率が向上するように構成されている。
【0019】
フィン3には、図1に示すように、スリット1が空気流の方向と交差する方向を長手方向として複数形成され、フィン3の中央部にはスリット群7が形成されている。このスリット群7の外側、つまりフィン3の上流端及び下流端には、フィン3の長手方向(図1の縦方向)にリブ面9が延在して形成されている。このリブ面9は、空気流の方向でスリット面1よりも幅広に形成され、後述するように断面を折り曲げて形成されている。カラー11は、伝熱管11の周縁部に沿って立ち上げて形成され、伝熱管11と密着し、隣り合うフィン3同士の距離を確保する支持部材の機能を備えている。なお、リブ面9は、カラー11によって寸断されることなく、空気流と直交する方向に連続的に形成されている。
【0020】
次に、フィン3に形成されるスリット1の構成を詳細に説明する。スリット1は、フィン3を一方向に切り起すことで、フィン3と平行なスリット面1を形成し、空気流の方向に沿って連続的に配設される。スリット面1の高さは、図2に示すように、空気流の方向に沿って階段状となり、隣接するスリット面1が同じ高さにならないように配列されている。スリット面1は、フィン3の上流側から下流側にかけて一定の段差を保持して形成され、隣り合うフィン3のスリット面とは一定の間隔を有している。
【0021】
隣り合うフィン3のスリット面1の間には、空気が流れる流路空間13が形成されている。流路空間13の上流側には、流入空気を流路空間13内に案内するように、リブ面9が所定角度で折り曲げて形成されている。また、流路空間13の下流側においても所定角度で折り曲げられたリブ面9が同様に形成されている。ここで、スリット面1及びリブ面9の高さは、フィン3の上流側と下流側とで対称に配列されていることが好ましい。本実施形態では、スリット面1の高さは、フィン3の上流側から中央部にかけて一方向に階段状に傾斜し、中央部から下流側にかけて他方向に階段状に傾斜して配列されているが、この配列に限定されるものではない。
【0022】
次に、本実施形態の作用を説明する。図4は、図2の流路空間13を流れる空気の流れを説明する図である。リブ面9の間を通過する空気は、リブ面9の整流作用により、流れ方向が大きく曲げられて、フィン3間に形成される流路空間13に導かれる。この流路空間13は、フィン3の上流側から下流側にかけて、スリット面1の高さの変化に伴い、フィン3の積層する方向に変化する。すなわち、空気流は、図の矢印で示すように、全体としてM字状の流れを形成する。このため、空気流の主流15の一部がスリット面1の段差の隙間から分岐して分岐流17を形成し、温度境界層を寸断する前縁効果が増大される。
【0023】
また、空気流の方向の変化に伴い、空気の通流距離が長くなるため、主流15からの空気の分岐回数が増加する。これにより、非着霜時においては、高い熱伝達率が得られる一方、着霜時においても熱交換能力の低下を抑制できる。更に、着霜時において、隣り合うスリット1間で着霜による目詰まりが生じても、空気の主流15が通過する流路を確保できるため、通風抵抗の増加を抑制できる。或いは、フィン3間が閉塞するまでの時間を長くできるため、除霜周期を延長することができ、快適性、エネルギ効率の面で有利となる。
【0024】
図6は、本実施形態と比較例との空気流路の相違を説明する図であり、(a)は比較例、(b)は本実施形態のフィンチューブ式熱交換器をそれぞれ表している。本実施形態では、フィンの両端に幅広のリブ面9を備えているため、空気の整流作用が働いて流路空間13を通じてM字状の流路が発生し、主流となる矢印の空気流から図示しない分岐流が形成される。これにより、高い熱交換効率に加えて着霜時の通風抵抗を抑制できる。
【0025】
一方、比較例の場合、リブ面の高さが階段状に配列されている点で本実施形態と類似するが、フィン両端に幅広のリブ面を備えておらず、すべてのスリット面が同じ幅になっている。つまり、流路空間に導かれた空気は、整流されずにそのまま矢印の方向に直進し、延長上の同じ高さに設けられたスリットを通過する。このため、スリットと接触して熱交換された空気は、後流側の別のフィンと繰り返し接触することになり、熱交換効率が低下する要因となる。また、隣接するスリットの間で着霜が生じると空気の流れが妨げられるため、通風抵抗が急増する。これに対し、本実施形態では、一旦冷却又は加熱された空気がその後流側のスリット1に接触することを避けられるため、スリット1と接触する空気との温度差を確保することができ、熱交換量を大きくできる。
【0026】
図7は、本実施形態において着霜時の空気の流れを説明する図である。図に示すように、隣り合うスリット1の隙間には霜層19が形成されている。このように、フィン3間の隙間に着霜が生じると、まず、隣り合うスリット1間の狭い隙間に目詰まりが生じるが、本実施形態によれば、着霜時においても流路空間13を残すことができるため、加速度的な着霜を防止し、伝熱管5内を流れる冷媒の温度低下を抑制できる。更に、着霜時の流路空間13は、M字型であるため、直線型の場合と比べて熱伝達率が高くなり着霜時の能力を維持する上で有利となる。
【0027】
図5は、図4のB部の拡大図である。隣り合うスリット1の段差hsは、小さい方がスリット面1の重なりを防止する上で有利であるが、小さすぎるとスリット1間へ空気が分岐しにくくなるため、前縁効果が半減する。そのため、スリットの段差hsはフィン3の板厚に対して約3〜5倍が好適である。なお、スリットの段差hsは、全てのスリット1間において同じ間隔で設定することが好ましい。これによれば、例えば、着霜時においても、流路空間13を流れる空気の通風抵抗を小さくすることができる。
【0028】
また、一般に空調機等で使用されるフィンチューブ式熱交換器用のフィンは、板厚が0.1mm程度と非常に薄いため、フィン単体では強度的に弱く、フィン3を整然と積層させて伝熱管5を通す作業が困難となる場合がある。このため、フィン3の両端にリブ面9を途切れなく配置することで、フィン3自体の剛性を高めることができ、組み立て性が向上し、熱交換器として纏めやすくなる。しかし、リブ面9の高さ(リブ面9と隣接するスリット面との段差、つまりhs)は、高い方が剛性を高める上で良いが、高すぎると空気の流れ方向を大きく曲げることになるため、通風抵抗が増幅されてしまう。このため、図5に示すように、スリットの段差hsは、例えば、フィンピッチPf(隣り合うフィン3間の距離)の20〜30%であることが好ましい。
【0029】
また、リブ面9は、空気流の方向にできるだけ幅広に形成されていることが好ましい。リブ面9は、フィン3の両端に形成されているため、外気の空気質等の影響を受けて腐食しやすい。このため、両端部分にスリットやルーパ等を形成する場合、腐食割れや脱落等を生じるおそれがあり、外観上も好ましくない。このため、リブ面9に所定の幅をもたせることで、腐食割れ等を抑制できる。なお、フィン3の両端部は伝熱管5から最も遠いため、一般に温度変化が生じやすいが、本実施形態のリブ面9を形成することにより、温度差を緩和することができる。
【0030】
また、フィン3間を通過する空気流のM字型(又はW字型)の高さ、つまり空気流と直交する方向のフィン3の高さHは、コルゲート高さとも呼ばれ、図4に示すように、例えば、フィンピッチPfの約1.2倍が好適である。この高さHは、非着霜時の熱交換性能は勿論、着霜時の性能にも大きく影響する。
【0031】
図8は、図1においてフィン3の中央付近の空気の流れを説明する図である。ここで、伝熱管5の隙間を流れる空気流の方向を矢印で示す。伝熱管5同士に挟まれた空間では、図に示すように、空気の縮流が発生し、流速が増加することから、熱伝達が促進される。したがって、このようなフィン3の中央部にスリット1を多く配列することにより前縁効果を有効に活用することができる。また、伝熱管5とスリット1との距離が近いためスリット1の温度が変化しにくく、高い熱伝達率を実現できる。
【0032】
また、本実施形態では、スリット面1は、フィン3の上流側と下流側とで対称に配列されている。したがって、一方を入口として空気が流入する場合に限らず、他方を入口として空気を流入させても同等の効果を発揮することができる。このため、例えば、熱交換器は、表裏の制限なく空調機等の筐体内へ組み込むことができる。
【0033】
更に、フィン3を金型で打ち出して成形する工程において、スリット面1が非対称のフィン3の場合、部分的なフィン材の伸び率の違いによって残留応力が発生する。これに対し、本実施形態のフィン3は、左右対称となるため、残留応力が相殺されてフィン3の湾曲を抑制され、組み立て性を向上できる。
【0034】
図9(a),(b)は、図6(a),(b)のフィンチューブ式熱交換器にそれぞれ対応し、同一条件下で空気を流した場合の温度分布及び通風抵抗についてシュミレーションした結果を示している。図において、色の濃淡は温度分布を表し、色の濃い方が低温になっている。ここで、温度2℃,風速1.5m/sの空気を一端(図の左側)の入口側から供給し、他端の出口側の空気温度及び通風抵抗を計算する。なお、フィンは−5℃に冷却されている。
【0035】
これによれば、出口側の空気温度及び通風抵抗は、(a)の従来構成において、−4.17℃,13.35Paであるのに対し、(b)の本実施形態では−4.36℃,9.69Paとなり、従来構成と比べて出口温度が低く、通風抵抗が小さくなっている。また、空気の流れを示す矢印からも明らかなように、従来構成は空気が水平方向に流れるため、空気が繰り返しフィンに接触して熱交換効率を低下させるのに対し、本実施形態では、リブ面で曲げられた空気がM字状の空気流を形成し、同時に分岐流が形成するため、高い熱交換効率を得ることができる。
【0036】
以上述べたように、本実施形態によれば、リブ面9とスリット面1とを組み合せることにより、例えば、空気の流れがM字状に変化するため、熱伝達率を向上でき、着霜時においても、霜層分布にかかわらず、通風抵抗の増加を抑制することができる。加えて、優れたフィンの成形加工性を兼ね備えたフィンチューブ式熱交換器を提供できる。
【0037】
なお、本実施形態において、リブ面9は、少なくともフィン3の上流端に形成されていればよいが、空気の流れをスムーズにするため、両端面に形成されていることが好ましい。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係るフィンチューブ式熱交換器の他の実施形態について説明する。図10は、本実施形態において流路空間を通過する空気の流れを説明する図である。本実施形態では、第1の実施形態と同様、フィン3の両端面に幅広のリブ面21が形成されている。リブ面21の内側には、フィン3の上流側から下流側にかけて階段状にスリット面1が配列されている。第1の実施形態では、空気流がM字状になるようにスリット面1の高さがフィン3の上流側と下流側とで対称に配列されているのに対し、本実施形態では、上流側から下流側にかけてスリット面1が一方にのみ傾斜する非対称の配列になっている。
【0039】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様、リブ面21で整流された空気が流路空間23内に導かれ、矢印に示すように直線状の主流22から分岐流24が発生する。この場合、M字状の空気流と比べて多少熱伝達率は低下するが、着霜時において流路空間23が確保されるため、通風抵抗の増加を抑制することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
次に、図3で説明したように、空気の流れ方向に、積層されたフィン群を複数配列した場合の一例について説明する。図11は、本実施形態におけるフィンチューブ式熱交換器の要部を拡大して示す平面図、図12は、図11のC−C断面図である。
【0041】
本実施形態では、図に示すように、空気の流れ方向にフィンが2列に配置され、伝熱管5は千鳥格子状に交互に配列されている。図12は、2列のフィンが連結されてなるフィンの断面形状を示しており、M字型のスリット配列を有していないが、他のフィンと積層させることによりM字状の流路空間13が形成される。
【0042】
カラー11の上流側及び下流側にはリブ面9が形成され、下流側はリブ面9を介して一連のスリット群7が階段状に連続して形成されている。また、スリット群7の下流端にはリブ面9が形成されている。ここで、スリット1及びリブの立ち上げ方向は全てカラーの立ち上げ方向と同じになっている。このため、以下の点で生産性に優れている。すなわち、スリット成形時は、通常金型内をフィンが順次移動して数段階の工程を経て図のようなフィンが形成されるが、スリット1の立ち上げ方向をカラー11と同じ方向に揃えることにより、スリット1が引っ掛かることなくスムーズに金型内を移動することができる。また、フィン3を傷付けたり、金型に特別な工夫を行う必要がない。
【0043】
(第4の実施形態)
次に、本発明に係るフィンチューブ式熱交換器の第4の実施形態について説明する。図13は、本実施形態において流路空間28を通過する空気の流れを説明する図である。本実施形態のスリット26は、短手方向の断面が山型に形成され、その他の構成は基本的に第1の実施形態と同様である。
【0044】
このように断面が山型のスリット26を配列することにより、通風抵抗は多少増加するが、空気の主流30から分岐流32が形成される際に、各スリット26の凸部は空気流に対し所定の角度を備える一方、凹部には渦流が生じるため、温度境界層が薄くなり熱伝達率を向上できる。これにより、風量が充分確保される場合には、スリット面1を山型に形成することが好ましい。
【0045】
更に、図14に示すように、各スリット26は山型の頂点を軸としてスリット面を回転傾斜させて配置するようにしてもよい。ここで、山型のスリット26の回転角度と空気流との関係について説明する。図15は、山型のスリット23の周辺を流れる空気流、つまり分岐流34の流れを説明する図であり、(a)は図13のスリット、(b)は図14のスリットをそれぞれ表している。図15の(a)に示すように、山型のスリット26の周囲では、空気流の剥離が生じ、これが通風抵抗の要因となっている。これに対し、図15の(b)に示すように、山型のスリット26を回転傾斜させた場合、空気流の剥離が抑制されるため、通風抵抗が低減され、熱伝達率を確保することができる。
【0046】
よって、図14に示すように、例えば、山型のスリット26を上流側と下流側とで対称になるように、山型の頂点を軸として所定量回転させることにより、高い熱伝達率に加えて、着霜時においても通風抵抗の少ない熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフィンチューブ式熱交換器の要部を拡大して示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るフィンチューブ式熱交換器の外観を示す斜視図である。
【図4】図2で示した断面の流路空間における空気の流れを説明する図である。
【図5】図4のB部の拡大図である。
【図6】本発明の第1の実施形態と比較例との空気流路の違いについて説明する図であり、(a)は比較例、(b)は本実施形態のフィンチューブ式熱交換器をそれぞれ表している。
【図7】図2で示した断面の着霜時における空気の流れを説明する図である。
【図8】図1で示したフィンの中央付近の空気の流れを説明する図である。
【図9】図6(a),(b)にそれぞれ対応し、同一条件下で空気を流した場合の温度分布及び通風抵抗についてシュミレーションした結果を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る流路空間を通過する空気の流れを説明する図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るフィンチューブ式熱交換器の要部を拡大して示す平面図である。
【図12】図11のC−C断面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る流路空間を通過する空気の流れを説明する図である。
【図14】図13においてスリット面を回転傾斜させて配置した図である。
【図15】図13,14のスリットの短手方向を流れる空気流を説明する図であり、(a)は図13、(b)は図14のスリットをそれぞれ表している。
【符号の説明】
【0048】
1,26 スリット(スリット面)
3 フィン
5 伝熱管
7 スリット群
9,21 リブ面
13,23,28 流路空間
15,22,30 主流
17,24,32,34 分岐流
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定間隔で互いに平行に配列された複数の板状のフィンと、これらのフィンを貫通する伝熱管と、前記フィンを切り起して形成された平面状の複数のスリット面とを備え、前記フィンの間に流入する空気と前記伝熱管内を流れる冷媒との間で熱交換を行うフィンチューブ式熱交換器において、前記スリット面は、空気流と交差する方向を長手方向として、該スリット面の高さを前記フィンの上流側から下流側にかけて階段状に配列してなり、前記フィンの上流側の端部は、隣り合う前記フィンの前記スリット面の間に形成される流路に前記流入空気を案内するように折り曲げて形成される整流面を有することを特徴とするフィンチューブ式熱交換器。
【請求項2】
前記隣り合うフィンのスリット面は、前記フィンの上流側から下流側にかけて、互いに一定の間隔で配置されてなることを特徴とする請求項1に記載のフィンチューブ式熱交換器。
【請求項3】
前記スリット面は、前記フィンの上流側から下流側にかけて、一定の段差で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィンチューブ式熱交換器。
【請求項4】
前記スリット面の高さは、前記フィンの上流側と下流側とで対称に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィンチューブ式熱交換器。
【請求項5】
前記スリット面及び前記整流面は、前記フィンに対し同一方向に持ち上げて形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のフィンチューブ式熱交換器。
【請求項6】
前記スリット面は、該スリットの短手方向で断面山型に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィンチューブ式熱交換器。
【請求項7】
前記スリット面は、前記山型の頂点を軸として回転傾斜させて配置されてなることを特徴とする請求項6に記載のフィンチューブ式熱交換器。
【請求項1】
設定間隔で互いに平行に配列された複数の板状のフィンと、これらのフィンを貫通する伝熱管と、前記フィンを切り起して形成された平面状の複数のスリット面とを備え、前記フィンの間に流入する空気と前記伝熱管内を流れる冷媒との間で熱交換を行うフィンチューブ式熱交換器において、前記スリット面は、空気流と交差する方向を長手方向として、該スリット面の高さを前記フィンの上流側から下流側にかけて階段状に配列してなり、前記フィンの上流側の端部は、隣り合う前記フィンの前記スリット面の間に形成される流路に前記流入空気を案内するように折り曲げて形成される整流面を有することを特徴とするフィンチューブ式熱交換器。
【請求項2】
前記隣り合うフィンのスリット面は、前記フィンの上流側から下流側にかけて、互いに一定の間隔で配置されてなることを特徴とする請求項1に記載のフィンチューブ式熱交換器。
【請求項3】
前記スリット面は、前記フィンの上流側から下流側にかけて、一定の段差で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィンチューブ式熱交換器。
【請求項4】
前記スリット面の高さは、前記フィンの上流側と下流側とで対称に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィンチューブ式熱交換器。
【請求項5】
前記スリット面及び前記整流面は、前記フィンに対し同一方向に持ち上げて形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のフィンチューブ式熱交換器。
【請求項6】
前記スリット面は、該スリットの短手方向で断面山型に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィンチューブ式熱交換器。
【請求項7】
前記スリット面は、前記山型の頂点を軸として回転傾斜させて配置されてなることを特徴とする請求項6に記載のフィンチューブ式熱交換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−258383(P2006−258383A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77275(P2005−77275)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
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