説明

フィーダー細胞を用いることによる細胞集団のinvitro産生

本発明は、細胞集団Pからの細胞集団P’のin vitro産生方法であって、前記産生はフィーダー細胞によって発現される少なくとも1つの因子の存在を必要とし、a)フィーダー細胞は温度T1で増殖し、b)増殖したフィーダー細胞を前記細胞集団Pと接触させ、c)工程(b)で得られた細胞混合物を、前記細胞集団Pが増幅し、且つ前記フィーダー細胞が増殖せず、前記少なくとも1つの因子が前記フィーダー細胞によって発現されるような温度T2で培養し、並びにd)そのようにして産生された前記細胞集団P’を回収する方法に関する。有利には、前記産生は増大を含み、前記フィーダー細胞は昆虫フィーダー細胞であり、増大されるべき前記細胞集団PはTリンパ細胞集団、好ましくはTr1リンパ細胞集団である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞集団Pからの細胞集団P’のin vitro産生方法であって、前記産生はフィーダー細胞によって発現される少なくとも1つの因子の存在を必要とし、a)フィーダー細胞は温度T1で増殖し、b)増殖したフィーダー細胞を前記細胞集団Pと接触させ、c)工程(b)で得られた細胞混合物を、前記細胞集団Pが増幅し、且つ前記フィーダー細胞が増殖せず、前記少なくとも1つの因子が前記フィーダー細胞によって発現されるような温度T2で培養し、並びにd)そのようにして産生された前記細胞集団P’を回収する方法に関する。有利には、前記産生は増大を含み、前記フィーダー細胞は昆虫フィーダー細胞であり、増大されるべき前記細胞集団PはTリンパ細胞集団、好ましくはTr1リンパ細胞集団である。
【背景技術】
【0002】
細胞療法は、特に罹患したまたは機能不全の細胞を、健常な機能するものに置換することに依存する新しい技術のグループである。さらに、細胞療法は、リンパ細胞に関わる免疫療法における適用を見出している。これらの新しい技術は、多くのタイプのガン、神経性疾患、例えばパーキンソン病及びルー・ゲーリック病等、脊髄損傷、並びに糖尿病、自己免疫疾患または炎症性疾患を含む、広範囲のヒトの疾患に適用されつつある。
【0003】
細胞は人体の基本的構成単位であり、身体がどのように機能するかについて多くの手掛りを有する。細胞は、身体における構造的且つ機能的役割の両方を担い、身体の組織及び器官を維持するためにほとんど無数の多様な機能を果たしている。成人の身体には、数百、おそらく数千の様々な特殊化した細胞がある。これらの細胞のすべては、それらが構成する組織または器官に対して非常に特異的な機能を果たしている。これらの成熟細胞は、それらの特別な任務を果たすために、分化し、または専門化している。
【0004】
骨髄移植は細胞療法の一例であり、ドナーの骨髄中の幹細胞を用いて白血病及び他のガンの罹患者の血液細胞を置換する。細胞療法はさらに、重度の火傷の犠牲者を治療するための新しい皮膚細胞を移植するための、及び視野の障害に対する新しい角膜を生育させるための実験に使用されつつある。これらの使用のすべてにおいて、目標は健常な細胞が身体に一体化するようになり、且つ当該患者自身の細胞のように機能し始めることである。さらに、Tリンパ細胞を他の中でもガン及び感染性疾患に対する免疫療法的治療として用いるために、それらを刺激し増大させるための多くの研究が現在進行中である。
【特許文献1】米国特許第6,352,694号
【特許文献2】米国特許第2003/0147869号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、細胞療法の分野において克服しなければならないいくつかの科学的課題がある。前記課題の一つは、細胞集団を長期間及び十分な量、迅速に増殖するように誘導するための増大/分化システムを提供することである。例えば、T細胞免疫療法治験では、数十億の細胞を使用する必要がある。この量の細胞を産生するために、通常、1000-4000倍の細胞の増大が必要とされる。さらに、最適な移植能及び可能な治療的有益性のために、in vitroにおける増大後の前記細胞が機能的であり、老化せずに、且つ患者における投与の時点で汚染されていないことを確実にすることが重要である。
【0006】
関心のある細胞集団を獲得するための一つの可能性は、関心のある前記細胞集団に特異的なマーカーの存在の測定に基づいた生体サンプルからのその同定、次いで前記特異的マーカーを発現しない細胞を除去することによってその濃縮を促進することである。しかし、そのような方法は、治療または研究目的に対して十分な量の細胞を提供しない。従って、細胞が分化及び/または増大し得る細胞産生システム、例えば、in vitroにおいて少なくとも2または3ヶ月間細胞集団の指数関数的増加を維持し得、且つ必要とされる細胞に富んでいるが悪影響を有し得る細胞で汚染されている混合細胞集団とは対照的な、注入目的のための非常によく特徴づけされた細胞集団を有し得る細胞増大システム等が必要とされる。
【0007】
免疫療法の分野において、T細胞をクローン化及び増大する方法は、アポトーシス及び単一クローンからの十分な細胞数を得るための長期培養(数ヶ月必要とされる)を含むいくつかの欠点を有する。抗CD3及び抗CD28抗体で被覆された磁気ビーズを、CD4+T細胞の長期増殖を支持するための人工的抗原提示細胞(aAPC)として使用することができることが以前に示されている(2002年3月5日に発行された米国特許第6,352,694号を参照)。しかし、抗CD3及び抗CD28抗体で被覆されたビーズまたはプレートは、精製されたCD8+T細胞の長期増殖を支持することができず、且つ他の制限、例えば、ビーズの高い費用、注入前の当該培養培地から当該ビーズを除去することに伴う労力集中的な工程、及び当該ビーズシステムが、それぞれの適用開始前のGM(Good Manufacturing:良質な製造)品質管理認可の必要によって制限されているという事実等を含む。
【0008】
2003年8月7日に発行された米国特許第2003/0147869号は、迅速なCTL増殖を刺激する能力に関して樹状細胞を模倣するように当該発明者によって設計されたaAPCの使用を開示している。この特許出願によれば、K562赤骨髄性(erythromyeloid)細胞株が使用されているが、この理由は、それが、(1)ヒト由来である、(2)同種異系間反応を回避するためにMHCクラスI及びII分子を欠失している、(3)無血清培地を用いて十分に増殖する、(4)文献において広範囲に使用されている(5700文献以上)、(5)細胞遺伝学的に特徴づけされている、並びに(6)第I相治験に承認されているためである。
【0009】
実際、真核細胞における真核性タンパク質の発現は、組換えタンパク質の部分的または完全なグリコシル化、並びに/あるいは関連する鎖間または鎖内ジスルフィド結合の形成をもたらし得るため、通常、原核細胞よりも真核細胞が好ましい。
【0010】
そのようなaAPCの使用に関連する主要な欠点は、増大させるべき細胞集団にそれらを接触させる前に、それらの放射線照射を続け、それらの増殖を停止させる必要があるという点である。この放射線照射は、増大させるべき細胞集団を繰返し刺激しなければならず、且つ臨床環境へ照射されたaAPCを最終的に導入させることになる。さらに、aAPCの放射線照射は、遺伝子変異を引き起こす可能性があり、非所望の要因を生じさせる可能性がある。そのような変異は制御し得えず、当該増殖がすべてのaAPCの増殖を停止させることを完全に保証することはできない。
【0011】
真核性aAPCの使用に関連する別の欠点は、これらの細胞により、増大させるべき細胞集団中に存在する真核性ウイルスの増殖が可能になるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、驚くべきことに、従来のaAPCシステムとは異なるフィーダー細胞システムを用いることによって、細胞集団Pから細胞集団P’を産生することが可能であることを見出した。そのようなフィーダー細胞システムは、前記細胞集団P’の産生を可能にする因子を発現しているフィーダー細胞を含み、前記フィーダー細胞の培養温度(T1)は、前記細胞集団P’が産生されるべき細胞集団Pのもの(T2)とは異なる。まず、フィーダー細胞を培養培地Mf中で温度T1で培養し、次いで、それらを培養培地Mp中に含まれる細胞集団Pと接触させる。前記フィーダー細胞を前記細胞集団Pと接触させる際、それらをそれらの培養培地Mfから取り除かなくてもよい。前記培養培地Mpは最初、前記少なくとも1つの因子を含まない。得られたフィーダー細胞、細胞集団P、及び培養培地Mpの混合物を、次いで温度T2で培養する。前記少なくとも1つの因子は、当該フィーダー細胞から発現され、従って当該培養培地Mp中に含まれる。前記細胞集団Pは増殖するが、前記フィーダー細胞は増殖しない。最後に、それによって産生された細胞集団P’を回収する。
【0013】
この新しい方法は、温度の変更のおかげで、当該フィーダー細胞の放射線照射を回避することができる。
【0014】
そのようなフィーダー細胞システムにより、増大した及び/または分化した細胞集団P’を産生するために、細胞集団Pの増大及び/または分化が可能となる。
【0015】
従って、本発明の第一の特徴点は、培養培地Mp中の細胞集団Pから細胞集団P’をin vitroにおいて産生するための方法を提供し、前記産生は前記培養培地中の少なくとも1つの因子の存在を必要とし、前記方法は:
a)前記少なくとも1つの因子を発現し得るフィーダー細胞を、培養培地Mf中で温度T1で培養する工程であって、そのようなT1により前記フィーダー細胞の増殖が可能になる工程;
b)それらの培養培地Mfから取り除かれたまたは取り除かれていない、工程(a)で得られたフィーダー細胞を、初めに前記少なくとも1つの因子を含まない培養培地Mp中に含まれる細胞集団Pと接触させ、前記細胞集団P、フィーダー細胞、及び前記培養培地Mpを含む混合物を獲得する工程;
c)前記培養培地Mp中の前記フィーダー細胞によって発現された前記少なくとも1つの因子を含む、工程(b)で得られた混合物を培養する工程であって、:
−前記細胞集団Pが増殖し;且つ
−前記フィーダー細胞が増殖しない;
ように選択される温度T2で実施され、且つ前記細胞集団P’が産生される工程;並びに
d)そのようにして産生された細胞集団P’を回収する工程;
を含む。
【0016】
好ましくは、培養培地Mp中の哺乳類T細胞集団Pから哺乳類T細胞集団P’をin vitroにおいて産生するための方法を提供し、前記産生は前記培養培地中の少なくとも1つの因子の存在を必要とし、前記方法は:
a)前記少なくとも1つの因子を発現し得るフィーダー細胞を、培養培地Mf中で温度T1で培養する工程であって、そのようなT1により前記フィーダー細胞の増殖が可能になる工程;
b)それらの培養培地Mfから取り除かれたまたは取り除かれていない、工程(a)で得られたフィーダー細胞を、初めに前記少なくとも1つの因子を含まない培養培地Mp中に含まれるT細胞集団Pと接触させ、前記T細胞集団P、フィーダー細胞、及び前記培養培地Mpを含む混合物を獲得する工程;
c)前記培養培地Mp中の前記フィーダー細胞によって発現された前記少なくとも1つの因子を含む、工程(b)で得られた混合物を培養する工程であって、:
−前記T細胞集団Pが増殖し;且つ
−前記フィーダー細胞が増殖しない;
ように選択される温度T2で実施され、且つ前記T細胞集団P’が産生される工程;並びに
d)そのようにして産生されたT細胞集団P’を回収する工程;
を含む。
【0017】
前記フィーダー細胞を前記細胞集団Pに加える際(工程(b))、当該比率[フィーダー細胞:細胞集団P]は重要でない。有利には、この比率は[1:3]〜[3:1]、より有利には[1:1]であってよい。
【0018】
前記細胞集団Pは、任意の生物由来のもの、例えば魚類等、あるいは好ましくは哺乳類由来のもの、例えばヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、及びそれらのトランスジェニック種等であってよい。例えば、本発明の範囲内の哺乳類は、農業上関心のある動物、例えば、家畜及び家禽等を含む。
【0019】
フィーダー細胞は、前記細胞集団Pの培養温度(T2)で増殖しないという条件で、任意のタイプであってよい。
【0020】
細胞培養についての広い経験を有する当業者であれば、使用されるべき特定の条件、特に、フィーダー細胞集団、及び当該細胞集団P’を産生する細胞集団Pのそれぞれの培養温度T1とT2を知っている。前記培養培地Mf及びMpは、それらが前記フィーダー細胞及び前記細胞集団に適しているという条件で、任意の種類であってよく、当業者によって容易に選択されるであろう(Schneider培地等)。
【0021】
用語「産生」は、当該細胞集団Pの増大及び/または分化及び/または刺激を含む。特定の実施態様において、当該細胞集団Pからの当該細胞集団P’の産生は増大を含む。本出願において、用語「増大」、「増殖」、及び「増加」は、互換的に使用されてよく、細胞集団における細胞数が増えることを表す。表現「増大細胞システム」、「増大フィーダー細胞システム」、及び「セルファクトリー」は、本発明のフィーダー細胞を含む仕組みを区別なく表す。好ましくは、当該細胞集団Pは指数関数的に増大する。
【0022】
細胞集団の増大をモニターする方法、例えば、顕微鏡を用いた検査、電子粒子計数器の使用による、または間接的に放射性前駆体の取込みを測定することによる等が、当業者に公知である。細胞増殖の最も一般的なアッセイは、細胞DNA内への3H-チミジンの取込みである。黄色の水溶性色素3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル) 2,5-ジフェニル)テトラゾリウムブロマイド(MTT)の、紫色の不溶性生成物(細胞ミトコンドリア中に存在するコハク酸デヒドロゲナーゼによるMTT-ホルマザン)への変化(Amersham Biosciences社, US等)、またはCFSE(カルボキシフルオレセイン・ジアセテート・スクシンイミジル・エステル)法を用いることができる。
【0023】
前記フィーダー細胞を前記細胞集団Pと接触させる前記工程(b)及び温度T2で前記混合物を培養する前記工程(c)は、通常、同時に起こる工程であり、接触させる工程の前に前記フィーダー細胞と前記細胞集団Pを、それぞれ、一方を培養培地Mf中で温度T1で、もう一方を培養培地Mp中で温度T2で、別々に培養する。次いで、前記フィーダー細胞「のみ」または前記フィーダー細胞を含む培養培地Mfを、培養培地Mp中に存在し且つ温度T2で培養されている細胞集団Pと接触させる。その結果、前記フィーダー細胞は温度T1から温度T2へ直ちに移行し、前記細胞集団Pとは異なり増殖を停止させ、前記フィーダー細胞によって発現された少なくとも1つの因子により、そこから細胞集団P’が産生される。
【0024】
細胞集団P’を産生する前記細胞集団のin vitroにおける指数関数的増加を、フィーダー細胞を定期的に、例えば1週間おきに、前記細胞集団Pと再接触させることによって、長期間、例えば、少なくとも2または3ヶ月間維持することが可能である。
【0025】
より有利には、フィーダー細胞培養にもはや適切でない温度T2が理由で、工程(c)の間に前記フィーダー細胞は死滅する。非常に有利には、前記フィーダー細胞の死滅により生じる前記細胞の細胞膜及びDNA断片が、工程(d)で除去される。
【0026】
工程(c)で前記細胞集団Pを十分な時間、例えば、好ましくは数時間培養した後、得られた培養培地Mpは、前記得られた細胞集団P’、生存可能なフィーダー細胞、及び任意的に前記フィーダー細胞の細胞膜断片からなり、前記細胞集団P’は工程(d)で回収される必要がある。そのような回収は、前記生存可能なフィーダー細胞及び前記細胞膜断片から前記細胞集団P’を、当業者に公知の任意の適切な分離方法、例えば、前記フィーダー細胞の表面で結合し得る特異的標識リガンドまたは前記細胞集団P’の細胞表面タンパク質を用いたフローサイトメトリー等を用いることにより分離することによって実施され得る。他の方法、例えば、洗浄方法及び/または遠心分離、フィコール(登録商標)等の分離担体を用いた濃度勾配遠心分離等を使用することができ、そのような遠心分離が細胞膜断片を除去するための適切な方法である。
【0027】
特に有利な実施態様において、本発明に係る哺乳類T細胞集団のin vitro産生のための方法は、工程(d)を含み、この工程において、当該細胞膜断片及び当該フィーダー細胞のDNAまたはDNA断片は、以下の工程を含む及び/または以下の工程にある方法において除去される。
−任意的に、アルブミン溶液における洗浄工程;
−濃度勾配溶液における分離工程であって、当該濃度指標は約1.120と約1.146の間、好ましくは1.120と約1.146の間に含まれる工程。
【0028】
当業者であれば、当該指標は、最小の変化であり且つ得られる結果を弱めることのない10-4から10-3に変化し得ることを解する。
【0029】
前記アルブミン溶液における洗浄工程により、当該細胞(例えば、T細胞集団−T細胞集団またはT細胞集団フィーダー細胞)を十分に分離し、且つ互いに切り離し合うことが可能となり、それによって、前記濃度勾配溶液における分離工程後に、より望ましい精製収量の当該T細胞集団を得ることが可能となる。
【0030】
前記アルブミンは、LFB(Laboratoire Francais du Fractionnement et des Biotechnologies, 3 av des Tropiques - BP305 - Les ULIS - 91958 Courtaboeuf Cedex France)から得ることができる。
【0031】
アルブミン溶液における洗浄工程は、以下のとおりであってよい。
−当該T細胞集団と当該フィーダー細胞を、培養培地中に回収した後にカウントする。
−例えば、5分間300gで遠心分離工程を実施し、次いで当該上清を除去する。
−当該細胞を、4%アルブミン溶液中に、1mLあたり約100万個から約500万個の間に含まれる濃度で再懸濁する。
−前記アルブミン溶液中にある細胞を、少なくとも約30分間、室温で攪拌下に置く。
【0032】
当業者であれば、アルブミン溶液における洗浄工程の実施方法を知っており、細胞溶液を得るために、当該細胞が互いに十分に分離される方法を採用するであろう。
【0033】
濃度勾配溶液における分離工程:現在、免疫学において用いられている、赤血球及び顆粒球からT細胞を単離するための、当該Tリンパ細胞の分離技術が存在する。これが前記フィコールであり、異なる細胞タイプの濃度差に応じて機能する。前記フィコールは1,077の濃度を有する。この方法は、本分離工程において機能するが、フィーダー細胞からのT細胞の期待はずれの精製収量を提供する。
【0034】
本発明の分離工程に用いられる分離方法はすでに存在し、当該濃度にも基づくが、異なる細胞小器官または細胞質構成成分、並びにウイルス及び細菌を分離するために用いられる。
【0035】
本発明は、別の濃度勾配を使用する。例えば、パウダー形態をとるNicodenz(登録商標)を用いることができる。溶解する際(例えば、Trisバッファー中に)、当該濃度を修正することが可能であり、これは、1,077の濃度であるフィコールを用いる場合には可能でない。
【0036】
濃度勾配溶液における分離工程は、以下のとおりであってよい。
−30分間の攪拌後、50mLチューブに4℃でNycodenz(1,120-1,146間の濃度)20mLを注ぐ。
−P1000(1mLあたり1mL)ピペットを用いて、できる限り慎重に、前記Nycodenz 溶液の上面で、TR1-アルブミン溶液を注ぐ。
−次いで、このチューブを4℃で530gで25分間、且つブレーキをかけずに遠心分離し(遠心分離の間、前記TR-1は、その濃度のために、Nycodenzと前記TR-1を含む培地との間の境界面(我々が「リング」と呼ぶ)に濃縮する)、より高濃度のS2細胞が当該チューブの底部に下がる。
−P1000ピペットをゆっくり用いて、慎重に「リング」を回収する。
−次いで、前記リングを50mLチューブ中で4%アルブミンを用いて洗浄する。
−次いで、前記チューブを4℃で530gで10分間遠心分離する(ブレーキをかけて)(細胞を洗浄し、残存しているNycodenzを取り除くために)。
−TR1細胞をその培養培地中にすぐに懸濁する。
【0037】
前記フィーダー細胞の細胞膜断片の除去は、前記細胞集団P’を細胞療法目的のために得る場合にはなおさら、必須ではないが推奨される。さもなければ、前記細胞集団P’は汚染されている危険がある。
【0038】
有利には、前記少なくとも1つの因子は、前記フィーダー細胞の細胞膜に埋め込まれた因子または前記フィーダー細胞によって分泌された因子を含む群から選択される。より有利には、前記少なくとも1つの因子は、前記細胞集団Pの細胞表面タンパク質と相互作用する。当然、前記少なくとも1つの因子は、工程(c)の間に得られる細胞集団P’の細胞表面タンパク質とも相互作用し得る。
【0039】
前記フィーダー細胞を工程(a)で培養する場合、それらは、それらの細胞膜表面においてまたは当該培養培地Mf中で、前記少なくとも1つの因子を発現する。接触させる工程(b)において、「膜因子」はすでに当該フィーダー細胞に埋め込まれているが、「分泌因子」は、当該フィーダー細胞があらかじめ当該培養培地Mfから取り除かれる場合に除去される可能性がある。とにかく、前記フィーダー細胞がもはや増殖しない場合でさえ、及び前記フィーダー細胞の死滅まで、前記「膜因子」及び「分泌因子」は、工程(c)において、前記フィーダー細胞によって発現される。死滅したフィーダー細胞の細胞膜断片に埋め込まれた「膜因子」は、当該細胞集団P’の産生においてさらに役割を担うことさえ可能である。
【0040】
当該細胞集団P’を産生する細胞集団Pは、前記細胞集団P’の産生を可能にする細胞シグナルに関わる細胞表面タンパク質を有する。そのような細胞表面タンパク質が、特異的リガンド、または本発明において当該フィーダー細胞によって提供される因子により活性化されて、前記細胞集団P’が得られ、フィーダー細胞は前記細胞集団P’の産生を可能にする少なくとも1つの因子を発現する。当業者であれば、特異的因子は前記フィーダー細胞によって発現される必要があり、それによってこの因子は当該細胞集団Pの細胞表面タンパク質と相互作用することを知っている。
【0041】
そのような少なくとも1つの因子は、当該フィーダー細胞によって発現され、且つ前記細胞集団P’の産生に必要であり、任意の制限なく、任意のタイプ、例えば、成長因子、特に当該細胞集団Pが分化する必要がある場合には分化因子、共刺激分子、またはインターロイキン等であってよい。
【0042】
本出願において使用される用語及び表現「タンパク質」、「ポリペプチド」、「ペプチド」は、より小さな構成分子のアミノ酸の長い鎖の単位によって形成される分子を区別なく表す。「タンパク質複合体」は、本明細書において、少なくとも2つのアミノ酸長鎖の単位を表す。
【0043】
好ましくは、前記フィーダー細胞は組換え細胞であり、且つ前記少なくとも1つの因子をコードする異種核酸を含む。
【0044】
表現「組換え細胞」または「組換えフィーダー細胞」は、前記少なくとも1つの因子をコードする異種核酸の前記細胞内への導入を表す。そのような導入は、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAEデキストラン処理、リポフェクチン、マイクロインジェクション、及びウイルスベクターを用いた感染を含む、フィーダー細胞内への核酸の導入に有用な種々の技術を含む。そのような適切な方法は当業者によって公知であり、例えば、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)中に見つけることができる。導入されるべき核酸は、例えば、産生されるべき細胞株の細胞表面タンパク質と相互作用しやすい因子をコードする遺伝子を含むDNA、ゲノムDNA断片、センス鎖RNA、またはそのような遺伝子をコードするcDNAを含む組換え発現ベクターであってよい。前記異種核酸は、前記フィーダー細胞内に導入された場合に、全長因子をコードし得、あるいは、それは本発明に係る細胞集団の産生を可能にするのに十分なそのペプチド断片をコードし得る。前記核酸は、産生されるべき細胞株の細胞表面タンパク質の天然リガンド(共刺激タンパク質)またはその断片、あるいはそのリガンドまたは断片の改変型をコードし得る。本発明は、前記細胞株の産生を促進する能力を維持する因子の断片、変異体、またはバリアント(例えば、改変型)の使用を含むことを意図する。前記因子の「バリアント」は、当該天然リガンドとかなりの相同性を共有するタンパク質を意味し、細胞株の産生に影響を及ぼし得る。生物学的に活性のあるまたは生物学的に活性のあるタンパク質の形態という用語は、細胞株の産生に影響を及ぼし得る因子の形態を含む。当業者であれば、前記因子をコードする核酸のフィーダー細胞内への導入の際の細胞産生を促進する能力に基づいて、因子のそのようなバリアントを選択できる。T細胞増殖を促進する因子の特異的バリアントの能力を、例えば、任意の既知のアッセイまたは方法によって、当該組換えフィーダー細胞を非組換えフィーダー細胞と比較することによって、容易に測定することができる。さらに、当業者であれば、当該因子の一次アミノ酸配列の変化は、当該細胞株の産生を可能にする当該タンパク質の能力を重大に損なうことなく許容される可能性があるということを解するであろう。従って、比較天然因子の天然に生じるアミノ酸配列と比較して、アミノ酸置換、欠失、及び/または付加を有し、本明細書に記載される当該因子の天然型の機能的活性を依然として維持する当該因子のバリアントもまた、本発明に含まれる。そのようなバリアントは、例えば、アミノ酸残基を類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換する保存的アミノ酸置換を含んでよい。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝鎖側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。
【0045】
前記核酸は、遺伝子の転写及び翻訳に必要なコード配列及び制御配列のすべてを含む因子の発現に適した形態をとり、プロモーター、エンハンサー、及びポリアデニル化シグナル、並びに任意的にN末シグナル配列を含む当該フィーダー細胞の表面への当該因子の輸送に必要な配列を含んでよい。制御配列はさらに、恒常的または誘導的転写を提供するように選択され得る。当該フィーダー細胞の表面における当該因子の発現は、前記細胞の免疫蛍光染色によって確認することができる。例えば、細胞を、共刺激分子に対して反応性の蛍光標識されたモノクローナル抗体または当該因子に結合する蛍光標識された可溶性レセプターで染色することができる。フィーダー細胞によって発現されるべき因子を非常によく知っている当業者であれば、当該フィーダー細胞によって発現される因子を認識する適切なモノクローナル抗体も知っている。あるいは、当該因子に結合する標識された可溶性リガンドタンパク質を用いて、当該フィーダー細胞表面上におけるそれらの発現を検出することができる。免疫蛍光染色された細胞を検出するために使用される技術及び装置は、当業者によって公知であり、好ましくは、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)を検出のために用いる。
【0046】
因子をコードする核酸を制御因子に操作可能に連結させる場合、それは、典型的に、例えば、プラスミド及びウイルスを含むベクター中で実施される。従って、調整制御因子に操作可能に連結された本発明の因子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、本明細書において「発現ベクター」とも表される。発現ベクターは、形質転換されるべきフィーダー細胞のタイプに対して選択されるであろう。例えば、当該フィーダー細胞がショウジョウバエ昆虫フィーダー細胞である場合、培養される昆虫細胞においてタンパク質の発現のために使用可能なショウジョウバエ恒常的ベクターは、pAcシリーズ(Smithら, 1983, Mol. Cell Biol. 3: 2156-2165)及びpVLシリーズ(Lucklow, V. A.とSummers, M. D., 1989, Virology 170: 31-39)を含む。
【0047】
好ましい実施態様において、前記フィーダー細胞は昆虫フィーダー細胞である。
【0048】
前述の条件を満たすことを前提に、任意の適切な昆虫フィーダー細胞を本発明において使用することができる。それは、例えば、Sf9(特に、ATCCにCRL 1711の番号でまたはDSMZにACC 125の番号で寄託されている、及びBD Biosciences Pharmingen, USによって市販もされている)、Sf21(特に、DSMZにACC 119の番号で寄託されている、及びBD Biosciences Pharmingen, USによって市販もされている)、またはS2細胞株の昆虫フィーダー細胞であってよい。好ましくは、前記昆虫フィーダー細胞はS2ショウジョウバエ細胞株由来である。前記S2ショウジョウバエ細胞株は当業者によって公知であり、先行技術において広く開示されている。前記S2ショウジョウバエは商業的に入手可能であり(Invitrogen社, France等)、特に微生物及び培養細胞のドイツコレクションDSMZ(「Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen」)にACC130の番号で寄託されており、Schneider, J Embryol Exp Morphol, 27: 1972, 353中に開示され、さらに米国菌株保存機関(American type culture collection:ATCC)にCRL 1963の番号で寄託されている。好ましくは、前記昆虫フィーダー細胞は国立微生物培養物コレクション(National Collection of Micro-organisms Cultures)(CNCM, Pasteur Institute, Paris)にI-3407の番号で2005年3月25日に寄託されたS2ショウジョウバエ細胞株由来である。
【0049】
より好ましくは、当該細胞集団Pは哺乳類細胞集団である。有利には、前記細胞集団Pが哺乳類細胞集団である場合に使用され得るフィーダー細胞は、昆虫フィーダー細胞または植物フィーダー細胞であってよい。
【0050】
より好ましくは、前記哺乳類細胞集団PがT細胞集団である場合、前記フィーダー細胞は昆虫フィーダー細胞であり、T1はT2よりも低く、且つT2は少なくとも約35℃である。
【0051】
表現「少なくとも約35℃」は、35℃より下に0.1℃変化し得る温度(34.9℃から35℃まで)を意味する。当業者であれば、温度のそのような最低限の変化について知っている。
【0052】
哺乳類細胞集団P’が産生されるべき場合に昆虫フィーダー細胞の使用によって提供される大きな利点は、(1)フィーダー細胞と哺乳類細胞は同じ温度では増殖しない(T1はT2より低く、且つT2は少なくとも約35℃である)、及び(2)哺乳類ウイルスは昆虫フィーダー細胞中では増殖せず、従って、前記フィーダー細胞由来の前記哺乳類細胞集団P/P’の起こり得るウイルス汚染を回避するという点である。
【0053】
さらに好ましくは、前記培養培地Mpは無血清培養培地である。任意の生物学的汚染のない培地、例えば、商業的に入手可能な無血清培養培地(BioWhittaker社, Walkersville, MDのXVIVO-15;Invitrogen社のAIM V培地等)が好ましい。
【0054】
さらに好ましくは、前記培養培地Mfは無血清培養培地である。任意の生物学的汚染のない培地、例えば、公知であり商業的に入手可能な無血清培養培地(BioWhittaker社, Walkersville, MDによって市販されている血清なしのSchneider培地、Invitrogen社によって市販されているSFM等のGIBCO(登録商標)無血清昆虫細胞培養培地、またはKrackeker Scientific社, USによって市販されているInsectagro(登録商標)無血清培地等)が、当該細胞集団Pのその後の汚染を回避するために好ましい。
【0055】
本発明は、任意のタイプの細胞集団P、例えば、免疫系細胞、皮膚細胞、肝細胞、骨髄細胞、幹細胞、膵島細胞、線維芽細胞等を含む。前記免疫系細胞としては、当該技術分野において認識され、胸腺細胞、未成熟Tリンパ細胞、成熟Tリンパ細胞、休止期リンパ細胞、または活性化Tリンパ細胞を含むことを意図される「T細胞」である。T細胞は、Tヘルパー(Th)細胞、例えばTヘルパー1(Th1)またはTヘルパー2(Th2)細胞であってよい。前記T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD4+CD8+T細胞、CD4−CD8−T細胞、あるいは任意の他のT細胞の部分集合、例えば、制御性CD4+CD25+細胞または制御性T(Tr1)細胞等であってよい。
【0056】
T細胞を単離するための方法及び特異的サブタイプが、当業者によって公知である。T細胞を、末梢血白血球、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、及び腫瘍を含む多数の供給源から得ることができる。
【0057】
好ましくは、末梢血白血球を、白血球交換療法(leukopheresis)によって個体から得られる。末梢血白血球からT細胞を単離するために、赤血球を溶解し、例えば、PERCOLL(登録商標)勾配による遠心分離によって単球から末梢血白血球を分離する必要があるかもしれない。
【0058】
細胞毒性Tリンパ細胞(CTL)を、ガン及び感染症疾患のための免疫療法的治療に使用することができる。同様に、樹状細胞は、ガンの治療において大きな可能性を提供することを示している。肝細胞療法は、疾患及び障害を治療するための強力な革命的新しい方法として台頭しつつある。それは、ダメージを受けた及び罹患した身体部分を、幹細胞移植によって提供された健常な新しい細胞で修復することを目的とする。白血病患者を治療するために用いられる骨髄移植は、幹細胞療法の最新の形態である。
【0059】
即時のin vitro産生方法により、研究または細胞療法の適用に十分な量のそのような細胞を得ることが可能となる。
【0060】
有利には、前記哺乳類細胞集団Pは、T細胞集団、樹状細胞集団、未分化の幹細胞集団、プレ分化した(predifferenciated)幹細胞集団、分化した幹細胞集団、皮膚細胞集団、及び膵島細胞集団を含む群から選択される。好ましい実施態様において、前記哺乳類細胞集団PはT細胞集団である。
【0061】
好ましくは、前記T細胞集団は、CD4+、CD8+、CD4+CD8+、またはCD4−CD8−T細胞集団である。より好ましくは、前記CD4+T細胞集団は、TH1、TH2、CD4+CD25+制御性、または制御性Tr1細胞集団である。別の好ましい実施態様において、前記CD8+T細胞集団は、TIL(腫瘍浸潤リンパ細胞)集団である。
【0062】
より好ましくは、当該哺乳類細胞集団PがT細胞集団である場合、当該フィーダー細胞は、それらの表面に任意の内在性クラスI及びII主要組織適合複合体(MHC)分子を有さない。これは、それらの細胞は、それらが遺伝的に形質転換されない場合、天然にはMHC分子を発現しないことを意味する。当該フィーダー細胞の表面における、これらの内在性クラスI及び/またはII MHC分子が存在しないことは、前記フィーダー細胞と前記哺乳類T細胞集団Pとの間の同種異系間反応を回避するために重要である。結果として、本発明のフィーダー細胞を用いて、短期間で任意のドナーから細胞集団Pを増大することができる。
【0063】
本発明に係るT細胞集団のin vitroにおける増大は、以下の利点:
−前記フィーダー細胞増大システムは、in vitroにおいて、少なくとも2または3ヶ月間、前記T細胞集団の指数関数的増加を維持し得る;
−前記フィーダー細胞は、MHCクラスI及びII分子を欠失し、同種異系間反応を回避する;
−前記フィーダー細胞は、マイコプラズマが存在しない;
−前記フィーダー細胞は、無血清培地を用いて十分に増加し得る;
−前記フィーダー細胞は、放射線照射される必要がない;
−前記フィーダー細胞は、真核性ウイルスを増大させない;及び
−前記増大したT細胞集団は、注入目的のために十分に特徴づけされている;
を提供する。
【0064】
好ましくは、前記フィーダー細胞は、工程(b)でそれらの培養培地Mfから取り除かれる。
【0065】
さらに好ましくは、前記フィーダー細胞は、少なくとも2つの因子、好ましくは3から10の因子を発現する。前述のように、前記少なくとも2つの因子の選択は、前記因子が相互作用すべき細胞集団Pの細胞表面タンパク質に依存する。当業者であれば、細胞集団Pからの細胞集団P’の産生のために、どのような因子が当該フィーダー細胞によって発現されるべきか知っている。
【0066】
例えば、本発明のin vitro産生方法を用いてT細胞集団を増大させる場合、TCR/CD3複合体の刺激(T細胞に対するTCR、及び細胞分化抗原に対するCD)が、T細胞における一次的活性化シグナルの伝達に必要とされる(US 2003/0147869及びUS 6,352,694を参照)。抗CD3モノクローナル抗体を用いて、前記TCR/CD3複合体、有利には改変抗CD3抗体を介したT細胞集団を活性化することができ、前記抗CD3抗体の改変は、細胞質内ドメインの膜貫通ドメインでの置換を含み、それによって、前記改変抗CD3抗体は当該フィーダー細胞の細胞膜に埋め込まれ、前記T細胞のCD3/TCRタンパク質複合体と相互作用する。
【0067】
さらに、T細胞の表面の多くのタンパク質は、互換的に「共刺激分子」または「共刺激因子」と称され、休止期T細胞のブラスト化(blast transformation)への移行、並びにその後の増殖及び分化を制御することに関わる。従って、前記TCR/CD3複合体を介して提供される一次的活性化シグナルに加えて、T細胞応答の誘導は二次的共刺激シグナルを必要とする。1つの共刺激または補助分子、CD28が、当該TCR複合体によって刺激されるものとは異なるシグナル伝達経路を誘導するまたは制御すると考えられている。
【0068】
当該T細胞の表面に存在するCD28タンパク質と相互作用し、且つ当該フィーダー細胞によって発現される因子は、前記CD28分子と交差結合し得る抗CD28モノクローナル抗体またはその断片であってよく、そのような場合、前記抗CD28モノクローナル抗体の改変は、それが前記フィーダー細胞の細胞表面に埋め込まれるように膜貫通ドメインを付加することによって考慮され得る。好ましくは、前記抗CD28モノクローナル抗体の代わりにCD28の天然リガンド、すなわち、例えば、B7-1(CD80)及びB7-2(CD86)タンパク質等のタンパク質のB7ファミリーのメンバーを使用する。
【0069】
当該T細胞の細胞表面タンパク質と相互作用し、且つそれによって前記T細胞の増大を可能にする別の因子は、当該フィーダー細胞によって分泌されたインターロイキン-2(IL-2)タンパク質である。
【0070】
従って、より好ましくは、当該T細胞集団を増大すべき場合、当該フィーダー細胞は、前記T細胞集団の以下の細胞表面タンパク質:
−CD3/TCRタンパク質複合体;
−CD28タンパク質;及び
−任意的に、インターロイキン-2(IL-2)レセプター;
と相互作用する組換え因子を発現する組換えフィーダー細胞である。
【0071】
有利には、前記因子は以下:
−改変抗CD3抗体またはそのバリアントであって、当該抗CD3抗体の改変が、抗CD3重鎖の抗CD3細胞質内ドメインの膜貫通ドメインでの置換を含み、当該改変抗CD3抗体が当該フィーダーの細胞膜に埋め込まれており、且つ当該T細胞のCD3/TCRタンパク質複合体と相互作用しやすい、改変抗CD3抗体またはそのバリアント;
−当該フィーダー細胞の細胞膜に埋め込まれ、当該T細胞のCD28タンパク質と相互作用しやすい、CD80またはCD86タンパク質、好ましくはCD80タンパク質、あるいはそのバリアント;並びに
−任意的に、当該T細胞のIL-2レセプターと相互作用しやすい、当該フィーダー細胞によって分泌された、IL-2またはそのバリアント;
を含む及び/またはそれらにある。
【0072】
有利には、当該抗CD3抗体重鎖の細胞質内ドメインを置換する膜貫通ドメインは、血小板由来増殖因子(PDGF)の膜貫通ドメインである。
【0073】
当業者によって公知のT細胞集団として、種々の免疫炎症性疾患、例えば、クローン病(H. Grouxら, 1997, Nature 389, 737-742)、皮膚炎症(Foussatら, 2003, J. Immunol. 171, 5018-5026)、アテローム硬化症(Mallatら, 2003, Circulation 108, 1232-1237)、または多発性硬化症(Barratら, 2002, 195, 603-616)等において重要な制御作用を及ぼすTr1制御細胞またはTr1細胞と称される、T細胞の新規の機能的に異なる亜集団に対して、現在蓄積しつつある証拠がある。国際特許出願WO 2005/000344(2005年1月6日)は、分子グループCD4、CD18、及び/またはCD11a、CD49bの同時存在の判定に基づく、並びに適切な場合には、タンパク質CD4、PSGL-1、PECAM-1、及びαV/β3をコードする遺伝子の過剰発現の証明による、生体サンプル中のTr1リンパ細胞の同定のための方法を開示している。現在、前記マーカーによりそのようなTr1細胞を同定することが可能である。
【0074】
例えば、Tr1細胞を、前記マーカーに対する抗体、例えば:
APC接合抗CD4(RPA-T4)−Becton Dickinson
PC5接合抗CD3(UCHT-1)−Caltag
PE接合抗CD18(6.7)−Becton Dickinson
FITC接合抗CD49b(AK-7)−Becton Dickinson
を用いたELISA、フローサイトメトリー、免疫アフィニティークロマトグラフィーによって同定及び/または精製することができる。
【0075】
リンパ細胞からのCD3+CD4+CD18brightCD49b+細胞の濃縮は、2つの工程:
−抗ヒトIg−磁気ビーズを用いた、ヒト抗CD8、抗CD14、抗CD56、及び抗CD19と結合する細胞の全集団の除去;
−抗ヒトIg−磁気ビーズを用いた、抗CD49bヒト抗体に結合するCD49b+細胞の選択;
において磁気ビーズを用いて実施され得る。
【0076】
さらなる精製は、CD3、CD18、及びCD49b抗体を備えたフローサイトメトリーまたはビーズを用いて可能である。
【0077】
ELISA試験を、IL-4、IL-10、及びIFN-α発現を測定するために用いることもできる。
【0078】
従って、好ましい実施態様において、前記T細胞集団はTr1細胞集団である。
【0079】
本発明者は、当該Tr1制御性リンパ細胞集団を増大するために、Tリンパ細胞集団の増大に必要とされるCD3/TCR複合体及びCD28タンパク質の刺激に加えて、Tr1細胞の表面に存在するCD2タンパク質、並びにIL-2及びIL-4レセプターを活性化することが必要であることを見出した。
【0080】
好ましくは、当該因子は、前述のT細胞集団の細胞表面タンパク質(CD3/TCR複合体、CD28タンパク質、及び任意的にIL-2レセプター)、並びにTr1細胞株が増大されるべきTr1細胞集団の以下のさらなる細胞表面タンパク質:
−CD2タンパク質;
−インターロイキン-2(IL-2)レセプター;及び
−インターロイキン-4(IL-4)レセプター;
と相互作用する。
【0081】
より好ましくは、当該因子は、前述のようなもの(改変抗CD3抗体、及びCD80またはCD86タンパク質、好ましくはCD80タンパク質)、並びに以下のさらなる因子:
−当該Tr1細胞のCD2タンパク質と相互作用しやすい、当該フィーダー細胞の細胞膜に埋め込まれた、CD58タンパク質またはそのバリアント;
−当該Tr1細胞のIL-2レセプターと相互作用しやすい、当該フィーダー細胞によって分泌された、IL-2またはそのバリアント;
−IL-4及びインターロイキン13(IL-13)、好ましくはIL-4を含む群から選択されるインターロイキンであって、前記インターロイキンは当該フィーダー細胞から分泌され、且つ当該Tr1細胞のIL-4レセプターと相互作用しやすい、インターロイキンまたはそのバリアント;
を含む及び/またはにある。
【0082】
同様に、CD4+Tリンパ細胞集団は、当該フィーダー細胞によって分泌された因子の、前記CD4+Tリンパ細胞の表面に存在する通常のCD3/TCR複合体、CD28タンパク質、及びIL-2レセプターとの相互作用によって増大され得る。そのような因子は、上記に記載されている(抗CD3抗体、CD80またはCD86タンパク質、及びIL-2)。
【0083】
CD4+CD25+制御性T細胞は、通常のCD3/TCR複合体、CD28タンパク質、及びIL-2レセプターとの相互作用によって増大され得、これらすべての分子は、前記CD4+CD25+制御性Tリンパ細胞の表面に存在する。前記因子、抗CD3抗体、CD80またはCD86タンパク質、及びIL-2を用いることができる(下記参照)。
【0084】
CD4+Th1リンパ細胞集団は、当該フィーダー細胞によって発現される因子の、通常のCD3/TCR複合体、CD28タンパク質、及びIL-2レセプター、さらにインターロイキン-12(IL-12)レセプターまたはインターフェロン(IFN)レセプター、及びリンパ細胞機能関連抗原-1(LFA-1)との相互作用によって増大され得、これらすべての分子は、前記CD4+Th1リンパ細胞の表面に存在する。前記因子、抗CD3抗体、CD80またはCD86タンパク質、及びIL-2を用いることができ(下記参照)、さらに前記IL-12レセプターと相互作用する因子IL-12、または前記IFNレセプター、及びLFA-1と相互作用する細胞間接着分子-1(ICAM-1)と相互作用するIFN-γを用いることができる。
【0085】
CD8+Tリンパ細胞集団は、当該フィーダー細胞によって発現される因子の、通常のCD3/TCR複合体、CD28タンパク質、及びIL-2レセプター、さらにCD40L(CD40リガンド)との相互作用によって増大され得、これらすべての分子は、前記CD8+Tリンパ細胞の表面に存在する。前記因子、抗CD3抗体、CD80またはCD86タンパク質、及びIL-2を用いることができ(下記参照)、さらに前記CD40Lと相互作用する因子CD40、または前記CD40Lと相互作用する抗CD40Lを用いることができる。
【0086】
好ましくは、前記T細胞集団は、CD4+、CD8+、CD4+CD8+、またはCD4−CD8−T細胞集団である。より好ましくは、前記CD4+T細胞集団は、TH1、TH2、CD4+CD25+制御性、または制御性Tr1細胞集団である。別の好ましい実施態様において、前記CD8+T細胞集団は、TIL(腫瘍浸潤リンパ細胞)集団である。
【0087】
別の有利な実施態様において、当該T細胞集団がTIL(腫瘍浸潤リンパ細胞)集団である場合、当該因子は、前述のような、前記T細胞集団の細胞表面タンパク質(CD3/TCR複合体、CD28タンパク質、及び任意的にIL-2レセプター)、及び当該CD8細胞集団の以下のさらなる細胞表面タンパク質:
−CD40タンパク質;
と相互作用する。
好ましくは、前記因子は前述のようなもの(改変抗CD3抗体、及びCD80またはCD86タンパク質、好ましくはCD80タンパク質)、及び以下の因子:
−CD8 T細胞の分子CD40と相互作用するCD40Lタンパク質または抗CD40抗体、あるいはそれらのバリアント;
を含む。
【0088】
別の有利な実施態様において、当該T細胞集団がTH1細胞集団である場合、当該因子は、前述のような、前記T細胞集団の細胞表面タンパク質(CD3/TCR複合体、CD28タンパク質、及び任意的にIL-2レセプター)、及び当該TH1細胞集団の以下のさらなる細胞表面タンパク質:
−IL-12レセプタータンパク質;
−インターフェロン-γレセプタータンパク質;
−LFA-1タンパク質;
と相互作用する。
【0089】
好ましくは、前記因子は前述のようなもの(改変抗CD3抗体、及びCD80またはCD86タンパク質、好ましくはCD80タンパク質)、及び以下の因子:
−TH1細胞のIL-12レセプターと相互作用する、当該フィーダー細胞によって分泌された、IL-12またはそのバリアント;
−TH1細胞のインターフェロン-γレセプターと相互作用する、当該フィーダー細胞によって分泌された、インターフェロン-γまたはそのバリアント;
−TH1細胞のLFA-1分子と相互作用する、当該フィーダー細胞の細胞膜に埋め込まれた、ICAM-1分子またはそのバリアント;
を含む。
【0090】
本発明の別の実施態様において、幹細胞集団は、当該フィーダー細胞によって発現される幹細胞因子(SCF)及び/または胎児肝臓チロシンキナーゼ-3リガンド(Flt3L)の、ぞれぞれのc-kit及び/またはFlt3レセプターとの相互作用によって増大され得る。
【0091】
本発明の別の実施態様において、線維芽細胞集団は、当該フィーダー細胞によって発現される上皮成長因子(EGF)の、EGFレセプターとの相互作用によって増大され得る。
【0092】
本発明の別の実施態様において、樹状細胞集団は、当該フィーダー細胞によって発現される顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IL-4またはIL13、及び任意的に腫瘍壊死因子(TNF)の、前記樹状細胞の表面に存在する相当する相互作用分子との相互作用によって増大され得る。
【0093】
さらなる特定の実施態様において、前記T細胞集団は抗原特異的T細胞集団である。
【0094】
表現「抗原特異的T細胞集団」中の用語「抗原」は、免疫原性ペプチドを表す。免疫原性ペプチドは、個体のMHC II分子と結合し得、且つ前記個体のT細胞レセプターによって認識される非病原性ペプチドまたはタンパク質である。例えば、前記抗原は、非アレルギー性食物抗原(卵白アルブミン等)または非病原性細菌性抗原である。
【0095】
抗原特異的Tリンパ細胞の集団を産生するために、Tリンパ細胞を、前記Tリンパ細胞における一次的活性化シグナルを誘発するのに適した形態の抗原と接触させ、すなわち、シグナルが前記T細胞においてCD3/TCR複合体を介して誘導されるように、前記抗原がTリンパ細胞に提供される。例えば、前記抗原は、可溶性の形態で、またはMHC分子と伝導した抗原提示細胞によって、前記T細胞に提供され得る(抗原は可溶性MHC分子に結合する)。T細胞に抗原を提供し得る抗原提示細胞、例えば、B細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、または他の細胞を、前記抗原(例えば、可溶性抗原)の存在下でT細胞とインキュベーションすることができ、それによって、前記抗原提示細胞は前記T細胞に抗原を提供する。あるいは、関心のある抗原を発現する細胞を、前記T細胞とインキュベーションすることができる。例えば、腫瘍関連抗原を発現する腫瘍細胞を、腫瘍特異的反応を誘発するためにT細胞とともにインキュベーションすることができる。同様に、病原菌、例えば、ウイルスに感染した、前記病原菌の抗原を提供する細胞を、T細胞とインキュベーションすることができる。T細胞集団の抗原特異的活性化の後、前記抗原特異的Tリンパ細胞集団は、本発明の方法に従って増大され得る。同じことを、Tリンパ細胞集団の任意のサブタイプ、特にTr1リンパ細胞集団に適用する。
【0096】
従って、別のさらなる特定の実施態様において、前記抗原特異的T細胞集団は抗原特異的Tr1細胞集団である。
【0097】
当該フィーダー細胞によって発現される因子は、任意の由来のものであってよい。好ましくは、それらは、増大されるべき哺乳類細胞集団Pのものと同じ由来のものである。より有利には、前記哺乳類細胞集団Pの細胞はヒト細胞である。さらに好ましくは、前記少なくとも1つの因子は、ヒト由来のものである。
【0098】
より有利な実施態様において、当該改変抗CD3抗体の軽鎖は、配列番号1の異種核酸または配列番号1と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされ、且つ当該改変抗CD3抗体の重鎖は、配列番号2の異種核酸または配列番号2と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0099】
より有利な実施態様において、当該CD80タンパク質は、配列番号3の異種核酸または配列番号3と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0100】
別の実施態様において、当該CD86タンパク質は、配列番号4の異種核酸または配列番号4と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0101】
より好ましくは、当該IL-2は、配列番号5の異種核酸または配列番号5と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0102】
さらに好ましくは、当該CD58タンパク質は、配列番号6の異種核酸または配列番号6と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0103】
非常に好ましくは、当該IL-4は、配列番号7の異種核酸または配列番号7と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0104】
別の実施態様において、当該IL-13は、配列番号8の異種核酸または配列番号8と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0105】
表現「配列番号Xと少なくとも70%の同一性を有する核酸分子」は、前記配列Xと少なくとも70、75、80、85、90、95、または99%の同一性を有する任意の配列を表す。
【0106】
本発明における2つの核酸(または核酸配列)間の同一性のパーセンテージによって、最良の整列後に得られる比較すべき2つの配列間の同一ヌクレオチドのパーセンテージを意味し、このパーセンテージは完全に統計的なものであり、前記2つの配列間の差はランダム且つそれらの全長にわたって配分される。最良の整列または最適な整列は、比較すべき2つの配列間の同一性の最高のパーセンテージに相当する整列であり、後述されるように算出される。2つの核酸間の配列比較は、通常、それらの最適な配列後にそれらの配列を比較することによって実施され、前記比較は、配列相同性の局所的領域を同定及び比較するために、一区画または一「比較ウインドウ」に対して実施される。当該比較のための配列の最適な整列は、手動式に、またはSmithとWaterman(1981)(Ad. App. Math. 2: 482)の局所的相同性のアルゴリズムによって、NeddlemanとWunsch(1970)(J. Mol. Biol. 48: 443)の局所的相同性のアルゴリズムによって、PearsonとLipman(1988)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムを用いたコンピューターソフトウェア(Wisconsin GeneticsソフトウェアパッケージにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)によって実施され得る。
【0107】
2つの核酸配列間の同一性のパーセンテージは、最適な方法でこれら2つの整列された配列を比較することによって決定され、当該比較されるべき核酸配列の領域は、これら2つの配列間の最適な整列に対する基準の配列に関して付加部分または欠失部分を含み得る。同一性のパーセンテージは、ヌクレオチドが当該2つの配列間で同一である位置の数を判定することによって、同一の位置のこの数を「比較ウインドウ」中の位置の総数で割ることによって、且つ得られた結果を100で掛けることによって算出され、これら2つの配列間の同一性のパーセンテージが得られる。
【0108】
一般に、増大されるべき細胞集団Pの培養の数時間後、例えば12時間後、好ましくは培養の24時間後、さらに好ましくは48時間後、当該培養培地Mp中にもはや生存可能なフィーダー細胞は全くない。有利には、当該フィーダー細胞すべてが死滅した際に、当該増大された細胞集団P’は回収され、それによってまず、より大きく増大した細胞集団P’を獲得し、次に、当該フィーダー細胞の細胞膜断片を、例えば、前述のような洗浄方法及び/または濃度勾配遠心分離により除去することによって、前記増大した細胞集団P’を迅速且つ容易に回収することが可能となる。
【0109】
従って、好ましい実施態様において、当該T細胞株は、当該T細胞集団を工程(c)で少なくとも12時間、有利には24時間培養した後に、工程(d)で回収される。
【0110】
本発明はさらに、固有の培養培地を使用し、且つ当該方法が以下の:
a)前記少なくとも1つの因子を発現し得るフィーダー細胞を、培養培地Mf中で温度T1で培養する工程であって、そのようなT1により前記フィーダー細胞の増殖が可能になる工程;
b)前記培養培地中に含まれる工程(a)で得られたフィーダー細胞を、細胞集団Pと接触させる工程;
c)前記培養培地中の前記フィーダー細胞によって発現された前記少なくとも1つの因子を含む、工程(b)で得られた混合物を培養する工程であって、:
−前記細胞集団Pが増殖し;且つ
−前記フィーダー細胞が増殖しない;
ように選択される温度T2で実施され、且つ前記細胞集団P’が産生される工程;並びに
d)そのようにして産生された細胞集団P’を回収する工程;
とおりである特定の実施態様を含む(上記に開示した好ましい実施態様をこれに適用する)。
【0111】
本発明はさらに、以下の実施例においてさらに記載される。これらの実施例は、例証のみの目的のために提供されるものであり、添付の請求項の範囲を制限することを意図するものではない。種々のシナリオが多くの実際的状況に関連し、当業者に対する単に例示的なものであることを意図する。従って、本発明は、本明細書中で提供される示唆の結果として明らかとなる任意の及びすべての変形型を含むと解釈されるべきである。
【実施例】
【0112】
1.実験プロトコール
[標識抗体]
<ビーズ選別用>
・使用したビーズ:
−《MagCellect Ferrofluid, ストレプトアビジン》(R&D社)
−《ヒツジ抗ラットビーズ》(Dako社)
・CD80用:ビオチン化マウス抗ヒトCD80(B7-1)、クローンL307.4(BD Biosciences Pharmingen社)
・OKT3用:精製ラット抗マウスIgκ軽鎖、クローン187.1(BD Biosciences Pharmingen社)
【0113】
<FACS選別及び通常のコントロールマーカー用>
・CD80用:マウス抗ヒトCD80-PE(フィコエリトリン)またはFITC(蛍光イソチオシアネート)、クローンL307.4(BD Biosciences Pharmingen社)
・CD58用:マウス抗ヒトCD58-PEまたはPECy5(フィコエリトリン−シアニン5)(LFA-3)、クローン1C3(BD Biosciences Pharmingen社)
・OKT3用:
−重鎖:ビオチン化抗マウスIgG2a、クローンR19-15+ストレプトアビジン-FITCまたはストレプトアビジン-PEまたはストレプトアビジン-PECy5(BD Biosciences Pharmingen社);
−軽鎖:精製ラット抗マウスIgκ軽鎖、クローン187.1(BD Biosciences Pharmingen社)+ウサギ抗ラットFITC(Dako社)
【0114】
[増幅プライマー]
・OKT3-L FWD:5’- ATG CGG ATC CAT GGA TTT TCA AGT GCA G -3’(配列番号9)
・OKT3-L REV:5’- ATG CGA ATT CCT AAC ACT CAT TCC TGT TG -3’(配列番号10)
【0115】
プライマーOKT3H1可変重鎖(571pb)
・HSPAT1 FWD:5’- ATG CCC GCG GGG TAC CCA CTG AAA ACT CTG ACT CAA C -3’(配列番号11)
・OKT3 H2/3 REV:5’- ACT GGA CAG GGA TCC AGA GTT C -3’(配列番号12)
【0116】
プライマーOKT3H2重鎖(850pb)
・OKT3 H3/5 FWD:5’- GAA CTC TGG ATC CCT GTC CAG TG -3’(配列番号13)
・OKT3 H3/3 REV:5’- ATG CGA ATT CTT TAC CCG GAG TCC GGG AGA AGC TC -3’(配列番号14)
【0117】
プライマーpdgf血小板由来増殖因子レセプター、β(151pb)
・PDGFR 5 FWD:5’- ATG CGA ATT CGC TGT GGG CCA GGA CAC GCA G -3’(配列番号15)
・PDGFR 3 REV:5’- ATG CGG GCC CAA GCT TCT AAC GTG GCT TCT TCT GCC AAA G -3’(配列番号16)
【0118】
・IL-2 FWD:5’- ATG CGG ATC CAT GTA CAG GAT GCA ACT CCT -3’(配列番号17)
・IL-2 REV:5’- ATG CGA ATT CTC AAG TCA GTG TTG AGA TGA -3’(配列番号18)
【0119】
・LFA3 FWD:5’- ATG CTG GAT CCA TGG TTG CTG GGA GCG ACG C -3’(配列番号19)
・LFA3 REV:5’- ATG CTA AGC TTT CAA TTG GAG TTG GTT CTG T -3’(配列番号20)
【0120】
・IL-4 FWD:5’- ATG CGG ATC CAT GGG TCT CAC CTC CCA ACT -3’(配列番号21)
・IL-4 REV:5’- ATG CAA GCT TTC AGC TCG AAC ACT TTG AAT -3’(配列番号22)
【0121】
[セルファクトリーのクローニング及び構築]
ヒトCD80、IL-2、IL-4、及びCD58を、健常ドナーから得た末梢血Tリンパ細胞(PBL)から、昆虫アクチンプロモータを用いたpACベクター(Invitrogen社)中にクローニングし(ChungとKeller, Mol Cell Biol. 1990 Dec; 10 (12): 6172-80;ChungとKeller, Mol Cell Biol. 1990 Jan; 10 (1): 206-16)、CNCMに2005年3月25日に番号I-3407で寄託されたS2細胞株由来のS2細胞中にエレクトロポレーションによって(エレクトロポレーター, Biorad社, US)トランスフェクションした。CF’細胞、すなわち、hCD80、hCD58、及び抗CD3モノクローナル抗体(mAb)を発現している細胞を、前述の抗体を用いることによって、蛍光活性化細胞選別FACSによって単離した。同様に、OKT3の重鎖及び軽鎖(Kungら, Science 1979 Oct 19; 206 (4416): 347)を、OKT3ハイブリドーマ細胞(ATCC CRL 8001; Manassas, Virginia, USA)から、pACベクター中にクローニングし、FACS前にS2細胞中にトランスフェクションした。膜結合抗CD3 mAbを獲得するために、前記重鎖の3’末端を除去し、血小板由来増殖因子(PDGF)遺伝子の膜貫通部分によって置換した。選択マーカーを用いずに、安定的にトランスフェクションされた細胞をFACS染色によって選択した。当該選別された細胞をクローン化し、トランスフェクション及び選択の各ラウンドに対して、Tr1細胞の刺激に対して最も効率のよいクローンを選択した。
【0122】
[CD4Tリンパ細胞の調製及びS2細胞培養]
新鮮な末梢血リンパ細胞をフィコール・ハイパーク遠心分離によって獲得し、CD4+T細胞を、抗CD8抗体(Becton Dickson社)を用いたネガティブ選択によって精製した。すべての培養物を、血清の添加なしにX-vivo中で維持した(BioWhittaker社, Walkersville, MD)。指示されたところで、ヒトIL-2(Chiron Therapeutics社, Emeryville, CA)を20 IU/mLで添加し、hIL-4を1μg/mLで使用した(フィーダー細胞がインターロイキンを発現する場合に得られる生物学的利点と、組換えインターロイキンを当該培養培地中に添加した場合に得られた結果を比較するために)。S2細胞を血清なしでSchneider培地(BioWhittaker社, Walkersville, MD)中で維持した。
【0123】
[フローサイトメトリー及びFACS選別]
細胞を、4℃において抗体で染色し、FACSCalibur(BD Biosciences社, Mountain View, CA)で分析またはFACStarシステムで選別した。
【0124】
2.結果
[aAPCの構築]
Tr1細胞は長期増殖のために異なる共刺激の必要性を有するという仮説を検討するために、本発明者は、CD3/CD28の古典的刺激に加えて、異なる共刺激分子及びサイトカインを発現するように遺伝子的に操作され得る細胞ベースシステムを設計した。S2細胞は同系異種間反応を促進し得るヒトHLAタンパク質を発現せず、且つそれらはヒトウイルスに汚染され得ないため、それらはS2細胞を選択した(図1)。さらに、27℃で増殖するこれらの細胞は、37℃で容易に死滅し、無血清培地中で成長するため、放射線照射されたフィーダー細胞の臨床環境への最終的な導入を回避することができる。本発明者は、ヒトCD80、ヒトCD58、及び抗hCD3 mAbの2つの鎖を発現するS2細胞をトランスフェクションし、次いでクローン化し、ヒトTr1細胞(CF’)の刺激を可能にした(図1)。同様に、彼らはCF’細胞にヒトIL-4及びIL-2 cDNAをトランスフェクションすることによって、CF株を作製した(図1、2)。ネガティブ選択によって調製された新鮮なヒトCD4+T細胞に、CF細胞を添加することによって、培養を開始した(実験プロトコールを参照)。
【0125】
[CF細胞株はヒトポリクローナルCD4+T細胞及びTr1細胞を効率的に活性化する]
当該セルファクトリーを、主要なCD4+T細胞、及びTr1細胞株またはTr1細胞クローンの初期活性化及び増殖を刺激するその能力について検討した。異なる精製T細胞を、1/1の比率で当該セルファクトリーを用いて刺激した。本発明者は、当該セルファクトリーで刺激されたT細胞の増殖の初期速度が、[3H]チミジンの取込みによって判定されたものと同等であり、他のCD4T細胞よりもTr1細胞の増殖性反応がわずかに増強することを見出した(図3)。本発明者は、この観察結果を、新鮮なT細胞をカルボキシフルオレセイン・ジアセテート・スクシンイミジル・エステル(CFSE)で標識し、培養の最初の5日間、細胞分裂を追跡することによって確認した(データは示さず)。彼らはさらに、CD4+T細胞の増殖及び細胞分裂の誘導に対し、当該細胞ベースシステムがCD3/28ビーズよりもより効率的であることを見出した。当該セルファクトリーまたはCD4+T細胞を別々にインキュベーションした場合、増殖は観察されなかった(図3、及びデータは示さず)。従って、CD4+T細胞の増殖の初期ラウンドに必要な条件は、ポリスチレンビーズの状況において提供されるCD3/CD28刺激と比較して、当該セルファクトリーに関してさらに十分であった。
【0126】
[CF細胞株はヒトTr1細胞の長期増殖を可能にする]
次に、本発明者は、当該セルファクトリーがTr1細胞の長期増殖を維持するのに十分かどうかを検討した(図4)。Tr1細胞を、hIL-2及びIL-4を分泌するCFで、外来性サイトカインの添加とともにサイトカインを分泌しないCF’で、並びに外来性サイトカインとともにCD3/28ビーズで刺激した。CD3/28ビーズで刺激した細胞は、以前の研究と一致して第二の刺激後に増殖しなかった。同様に、外来的にIL-2及びIL-4を添加された条件においてCF’で刺激されたTr1細胞は、培養の2週間以内に増殖曲線のプラトー段階に入り、再刺激後の細胞のさらなる実増加は起こらなかった。対照的に、Tr1を当該細胞ファクトリーで刺激した場合、それらは第三の刺激後でさえ、依然として指数関数的増殖の状態であった。T細胞の総数の平均的増加は、6回の独立した実験において、当該セルファクトリーで刺激された培養物中で、CD3/28ビーズで刺激された培養物中よりも810倍高かったように、この長期増殖の増強は再現可能であった。
【0127】
培養物の表現型分析は、当該セルファクトリーを用いた刺激後のCD3+CD4+T細胞に対する進行性の濃縮を示した(図5)。当該S2細胞は、7日後にフローサイトメトリーによって抗CD3 mAbを発現している細胞を検出できないことによって明らかなように、当該細胞培養から急速に消滅し(図6)、この発見は、ラージスケールの実験において、及びさらにショウジョウバエ遺伝子に対するRT-PCRによって立証された(データは示さず)。従って、混合したT細胞とセルファクトリーの培養物は、1週間以内に不純物のないT細胞集団を産生する。
【0128】
[当該細胞ファクトリーによる、抗原特異的Tr1細胞の効率的増殖]
Tr1細胞を用いた免疫療法は、抗原特異的制御作用を備える細胞を必要とする可能性がある。当該セルファクトリーを用いて抗原特異的Tr1を増大し得るかどうかを検討するために、本発明者は、それらを用いてOVA特異的Tr1クローンを10週間培養した(図7)。2つの異なるクローンの例を、数百の異なるクローンに関して実施された実験によって示す。健常な個体由来のPBLを細胞分裂に続いてCFSEで標識し、当該細胞を卵白アルブミン(20μg/mL)で7日間刺激した。次いで、細胞をCD4、CD18、CD49bで染色してこれらのマーカーを過剰発現しているTr1細胞を選択し、且つ抗原特異的細胞分裂によるCFSE標識の減少に従ってOVA特異的細胞を選別した(図8)。それらの表現型を制御するために、バルクで選別された集団をOVAで刺激し、典型的Tr1集団を示す細胞質内染色によってサイトカイン産生を分析した(図8)。クローン化後、当該細胞を当該セルファクトリーで刺激した(図9)。すべての細胞を当該セルファクトリーで10日間隔で再刺激した。培養の間、特異的OVA刺激は提供されなかった。両クローンの指数関数的増殖曲線を、数ヶ月間得た。培養の1ヵ月半後、当該1つの抗原特異的Tr1細胞は、免疫療法に十分な細胞数である1.5×109個の細胞を産生した。培養の30日後に残存する、Tr1細胞の実質的増殖能は、これらのTr1が、養子移入後に実質的な長期移植可能性を有し得ることを示唆している。
【0129】
増大された集団の抗原特異性が培養の間維持されるかどうかを検討するために、細胞をOVAで刺激した(図10)。培養の1ヵ月半後、当該細胞をOVA及び自己由来APCで刺激し、サイトカイン分泌を分析した。典型的Tr1プロファイルを、分析された2つの異なるクローンに対して観察した。
【0130】
当該培養されたTr1細胞のエフェクター作用を検討するために、抗原特異的抑制作用を典型的トランスウェルアッセイで調べた(図10、及びデータは示さず)。両クローンは、バイスタンダー細胞への典型的Tr1抑制作用を示した。ブロッキング抗体の使用によって示されるように、抑制はIL-10及びTGF-β分泌に起因した(示さず)。OVA刺激の非存在において、抑制は全く得られなかった(データは示さず)。異なるドナー及び異なるTr1クローンに関して、同様の結果が得られた(データは示さず)。
【0131】
3.考察
微小球aAPCまたは他の非細胞ベースの刺激アッセイと比較して、当該セルファクトリーは、当該APC膜の流動性の結果としての免疫シナプスのより望ましい形成を可能にする。さらに、足場としてS2細胞を使用する本システムは、臨床における使用に対していくつかの他の利点を有し、それらは、MHC発現を欠き、マイコプラズマがなく、放射線照射を必要とせず、哺乳類ウイルスの増大をもたらさず、且つ無血清培地中の増殖に適応される。さらに、この細胞ファクトリーを「在庫がありすぐ入手できる」ように使用して、任意のドナー由来のTr1細胞集団を増大することができる。
【0132】
当該セルファクトリーシステムは、in vitroにおいて少なくとも2から3ヵ月間、Tr1細胞の指数関数的増殖を維持することができる。1つの抗原特異的Tr1細胞の開始細胞数に基づき、本発明者は、培養のほんの30から45日後に、治療に十分な数のTr1細胞を獲得した。この効率性により、細胞療法のために十分に特徴づけされたT細胞クローンを使用することが初めて可能となる。これによって、必要な細胞を豊富に含むが、いずれにせよ効果のないまたは悪影響を有するであろう細胞で汚染された混合細胞集団と対照的に、非常によく特徴づけされた細胞のみが注入される。あるいは、この細胞ファクトリーシステムをMHCクラスII四量体に関して使用して、抗原特異的集団を濃縮し、それによって、109個の細胞数に到達する時間を早める。
【0133】
この培養システムが一つの暗示することは、当該Tr1細胞が、当該セルファクトリーとの培養後、臨床的注入のための治療的数に到達後でさえ、実質的な複製能を維持することである。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1:S2細胞株上のヒトタンパク質発現の分析。親細胞(S2)またはセルファクトリー(CF)細胞における、OKT3重鎖及び軽鎖、並びにCD80及びCD58発現の2色フローサイトメトリー分析。
【図2】図2:CD4+Tr1細胞と相互作用する改変CFの略図。S2細胞に膜結合抗CD3 mAbをトランスフェクションして、当該TCR/CD3複合体、CD80、及びCD58を引きつけ(engage)、CD28及びCD2分子のそれぞれIL-2及びIL-4との相互作用を介したいくつかの共刺激シグナルを加え、細胞増殖を誘導する。
【図3】図3:CF細胞株によって誘導されるT細胞の増殖。当該セルファクトリーで刺激されたポリクローナルPBL、CD4+T細胞Tr1細胞株(L1及びL2)、またはTr1クローン(C1及びC2)の増殖を、培養3日目と4日目の間の[3H]チミジンの取込みによって測定した。T細胞は、明示されるように、外来性のサイトカインの非存在下においてCF細胞で刺激された。72時間の時点で、当該細胞を[3H]チミジンでパルス標識し、回収前にさらに18時間インキュベーションした。1分あたりのカウント値を、3つの培養物からの平均s.e.m.として示す。
【図4】図4:セルファクトリーで刺激された主要なポリクローナルヒトTr1細胞の長期増殖。Tr1細胞を、CD3/28ビーズ+外来性IL-2及びIL-4で、外来性IL-2及びIL-4の存在下においてOKT3、CD80、及びCD58を発現するがIL-2及びIL-4を発現しないCF’細胞で、または任意の外来性添加物なしの完全細胞ファクトリーシステムで刺激した。T細胞を、培養の0、10、及び20日目にCF細胞で刺激した。
【図5】図5:CF細胞株との共培養後のT細胞の精製。CF細胞株を用いた刺激後のT細胞の精製を、培養の最初の7日間、CD3、CD4の発現を染色することによって評価した。この実験において、当該培養物中のすべての細胞を表すために、細胞サイズ/破片にゲートをかける工程を用いなかった。死細胞を排除するために、生細胞をヨウ化プロピジウムでゲートをかけることによって示す。結果は、それぞれ異なるドナーに関する>10の異なる実験を表す。
【図6】図6:T細胞との共培養後のCF細胞株の結末。CF刺激細胞の結末を、培養の最初の7日間、CD3及びOKT3Hの発現を染色することによって評価した。この実験において、当該培養物中のすべての細胞を表すために、細胞サイズ/破片にゲートをかける工程を用いなかった。死細胞を排除するために、生細胞をヨウ化プロピジウムでゲートをかけることによって示す。結果は、それぞれ異なるドナーに関する>10の異なる実験を表す。
【図7】図7:使用された実験プロトコールの概念図。
【図8】図8:OVA特異的Tr1クローンの単離。CFSEで染色したPBLをOVAで刺激し、CD4、CD49b、及びCD18で染色した。CD4CD49bCD18bright細胞にゲートをかけ、CFSE細胞を選別した。選別された細胞をクローン化し、クローン1及び2を作製し、バルク集団をOVAで刺激し、Tr1表現型を示すIL-10及びIFN-γで染色した。
【図9】図9:Tr1クローンの長期増殖の分析。次いで、2つのクローンを放射線照射されたセルファクトリーで刺激した。総細胞数を、培養物中の細胞数vs日数の片対数グラフ中に示す。
【図10】図10:前記セルファクトリーによる増大後の、OVA特異的Tクローン1及び2の70日間のサイトカインプロファイル。OVA及び自己由来の放射線照射された単球で刺激された当該クローンの上清において、サイトカインを測定した。さらに、抗原特異的抑制をトランスウェルアッセイで検討した。ボトムウェル中で自己由来PBLを抗CD3 mAbで刺激し、トップバスケット中に細胞なし、コントロールCD4 T細胞、及び前記2つのクローンを添加し、抗CD3、及びCD4細胞またはOVAに対する自己由来の放射線照射された単球、及び前記2つのTr1クローンに対する自己由来の放射線照射された単球で刺激した。全プロトコールは、それぞれ異なるドナーからの10の実験を表す。
【図11】図11:フィコール(登録商標)の有効性に対して、Nicodenz(登録商標)法を用いることによる当該T細胞の除去工程の有効性の比較。当該結果は以下のとおりである。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養培地Mp中の哺乳類T細胞集団Pから哺乳類T細胞集団P’のin vitro産生方法であって、前記産生は前記培養培地中の少なくとも1つの因子の存在を必要とし、:
a)前記少なくとも1つの因子を発現し得るフィーダー細胞を、培養培地Mf中で温度T1で培養する工程であって、そのようなT1により前記フィーダー細胞の増殖が可能になる工程;
b)前記培養培地Mfから取り除かれたまたは取り除かれていない、工程(a)で得られたフィーダー細胞を、初めに前記少なくとも1つの因子を含まない培養培地Mp中に含まれるT細胞集団Pと接触させ、前記T細胞集団P、フィーダー細胞、及び前記培養培地Mpを含む混合物を獲得する工程;
c)前記培養培地Mp中の前記フィーダー細胞によって発現された前記少なくとも1つの因子を含む、工程(b)で得られた混合物を培養する工程であって、:
−前記T細胞集団Pが増殖し;且つ
−前記フィーダー細胞が増殖しない;
ように選択される温度T2で実施され、且つ前記T細胞集団P’が産生される工程;並びに
d)そのようにして産生されたT細胞集団P’を回収する工程;
を含む方法。
【請求項2】
前記T細胞集団Pからの前記T細胞集団P’の産生が増大を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィーダー細胞が工程(c)の間に死滅する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィーダー細胞の死滅により生じる前記細胞の細胞膜及びDNA断片が工程(d)で除去される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞膜及びDNA断片の除去が、:
−任意的に、アルブミン溶液における洗浄工程;
−濃度勾配溶液における分離工程であって、当該濃度指標が約1.120と約1.146の間に含まれる工程;
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの因子が、前記フィーダー細胞の細胞膜に埋め込まれた因子または前記フィーダー細胞によって分泌された因子を含む群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの因子が、前記T細胞集団Pの細胞表面タンパク質と相互作用する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記フィーダー細胞が組換え細胞であり、且つ前記少なくとも1つの因子をコードする異種核酸を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フィーダー細胞が昆虫フィーダー細胞である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記昆虫フィーダー細胞が、国立微生物培養物コレクション(CNCM)にI-3407の番号で2005年3月25日に寄託されたS2ショウジョウバエ細胞株由来である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
T1がT2よりも低く、且つT2が少なくとも約35℃である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記培養培地Mpが無血清培養培地である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記培養培地Mfが無血清培養培地である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記フィーダー細胞がそれらの表面に任意の内在性クラスI及び/またはII主要組織適合複合体(MHC)分子を有さない、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記フィーダー細胞が工程(b)でそれらの培養培地Mfから取り除かれる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フィーダー細胞が少なくとも2つの因子を発現する、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
当該T細胞集団を増大すべき場合、前記フィーダー細胞が、前記T細胞集団の以下の細胞表面タンパク質:
−CD3/TCRタンパク質複合体;
−CD28タンパク質;及び
−任意的に、インターロイキン-2(IL-2)レセプター;
と相互作用する組換え因子を発現する組換えフィーダー細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記因子が、:
−改変抗CD3抗体またはそのバリアントであって、当該抗CD3抗体の改変が、抗CD3重鎖の抗CD3細胞質内ドメインの膜貫通ドメインでの置換を含み、当該改変抗CD3抗体が前記フィーダーの細胞膜に埋め込まれており、且つ前記T細胞のCD3/TCRタンパク質複合体と相互作用しやすい、改変抗CD3抗体またはそのバリアント;
−前記フィーダー細胞の細胞膜に埋め込まれ、前記T細胞のCD28タンパク質と相互作用しやすい、CD80またはCD86タンパク質、好ましくはCD80タンパク質、あるいはそのバリアント;並びに
−任意的に、前記T細胞のIL-2レセプターと相互作用しやすい、前記フィーダー細胞によって分泌された、IL-2またはそのバリアント;
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗CD3抗体重鎖の細胞質内ドメインを置換する膜貫通ドメインが、血小板由来増殖因子(PDGF)の膜貫通ドメインである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記T細胞集団がTr1細胞集団である、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記因子が請求項17に規定されたT細胞集団の細胞表面タンパク質と、並びに前記Tr1細胞集団の以下のさらなる細胞表面タンパク質:
−CD2タンパク質;
−インターロイキン-2(IL-2)レセプター;及び
−インターロイキン-4(IL-4)レセプター;
と相互作用する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記因子が請求項18に規定された因子、並びに以下のさらなる因子:
−前記Tr1細胞のCD2タンパク質と相互作用しやすい、前記フィーダー細胞の細胞膜に埋め込まれた、CD58タンパク質またはそのバリアント;
−前記Tr1細胞のIL-2レセプターと相互作用しやすい、前記フィーダー細胞によって分泌された、IL-2またはそのバリアント;及び
−IL-4とインターロイキン13(IL-13)、好ましくはIL-4を含む群から選択されるインターロイキンであって、前記インターロイキンは前記フィーダー細胞から分泌され、且つ前記Tr1細胞のIL-4レセプターと相互作用しやすい、インターロイキンまたはそのバリアント;
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記T細胞集団が抗原特異的T細胞集団である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗原特異的T細胞集団が抗原特異的Tr1細胞集団である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記哺乳類細胞集団Pの細胞がヒト細胞である、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの因子がヒト由来のものである、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記改変抗CD3抗体の軽鎖が、配列番号1の異種核酸または配列番号1と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされ、且つ前記改変抗CD3抗体の重鎖が、配列番号2の異種核酸または配列番号2と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記CD80タンパク質が、配列番号3の異種核酸または配列番号3と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記CD86タンパク質が、配列番号4の異種核酸または配列番号4と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項26または27に記載の方法。
【請求項30】
前記IL-2が、配列番号5の異種核酸または配列番号5と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記CD58タンパク質が、配列番号6の異種核酸または配列番号6と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項26から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記IL-4が、配列番号7の異種核酸または配列番号7と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記IL-13が、配列番号8の異種核酸または配列番号8と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記T細胞集団が、前記T細胞集団を工程(c)で少なくとも12時間、有利には24時間培養した後に工程(d)で回収される、請求項18から33のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−535525(P2008−535525A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510529(P2008−510529)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061648
【国際公開番号】WO2006/108882
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507370080)
【出願人】(507241492)アンスティトゥート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシャルシュ・メディカル・(インセルム) (9)
【Fターム(参考)】