説明

フィールド機器

【課題】2線式伝送路から一定の駆動電源を常時確保する。
【解決手段】スイッチング回路11で、ループ電流ILを高周波でスイッチングし、トランスLで、このスイッチングにより当該一次側巻線L1に発生した高周波信号を二次側巻線L2から出力し、整流回路12で、この高周波信号を整流して平滑化することにより直流の駆動電源VPを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2線式伝送路を介してデータ通信を行うとともに、当該伝送路の直流電流ループ電流で動作するフィールド機器に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用プラントなどの設備では、発信機やポジショナーなどの複数のフィールド機器を設置して、各部における圧力、流量、温度などの物理量を計測し、これらフィールド機器から伝送路を介して収集した計測値に基づいて、設備の制御や管理を行うものとなっている。
【0003】
フィールド機器を上位装置と接続する場合、4−20mA直流電流ループを用いたアナログ通信用の伝送路からなる2線式伝送路が、広く用いられている。この2線式伝送路を用いた場合、フィールド機器において、計測により得られた物理量を示すアナログの計測値が、所定の電流範囲4〜20mAの直流電流信号に変換されて、2線式伝送路に出力され、上位装置へ伝送される。また、フィールド機器は、2線式伝送路から得られる4〜20mAの直流電流を用いて自己の動作電源を生成している。
【0004】
このようなフィールド機器では、2線式伝送路を用いて計測値を伝送する場合、電流範囲4〜20mAの直流電流信号を用いて伝送するため、フィールド機器から上位装置へ1つの計測値しか伝送することができず、例えば、計測値以外のデバイス設定や診断などの他の機能に関するデータを伝送することができない。
【0005】
このため、フィールド機器に無線回路を付加して、上位装置と無線データ通信を行うことにより、複数の計測値を伝送するものとし、2線式伝送路の4−20mA直流電流ループから、計測用の動作電源として使用されていない余剰電流を取得して、二次電池やコンデンサに蓄積した余剰電力で、無線回路を動作させる技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−226878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来技術では、フィールド機器において、2線式伝送路から最低でも4mAの直流電流ループ電流を利用することは可能である。しかしながら、計測の高精度化、高速化、処理負担の増大などの要因でフィールド機器の規模が増大しているため、直流電流ループを流れるループ電流が4mAの場合、動作電源として使用されていない余剰電流がほとんどない。このため、従来のように、ループ電流から余剰電流を分流することができず、無線回路などの付加回路で用いる一定の駆動電源を常時確保することができず、結果として付加回路を安定して駆動することができないという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、2線式伝送路から一定の駆動電源を常時確保することができるフィールド機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかるフィールド機器は、4−20mA直流電流ループ方式の2線式伝送路に形成される直流電流ループのループ電流を、物理量を計測して得られた計測値に応じて調整することにより、当該計測値を上位装置へ伝送するフィールド機器であって、直流電流ループ上に接続されたスイッチング素子からなり、ループ電流を高周波でスイッチングするスイッチング回路と、一次側巻線が直流電流ループ上に接続されて、スイッチングにより当該一次側巻線に発生した高周波信号を二次側巻線から出力するトランスと、トランスの二次側巻線に接続されて、当該二次側巻線から出力された高周波信号を整流して平滑化することにより直流の駆動電源を生成する整流回路とを備えている。
【0010】
この際、トランスの一次側巻線に、互いに並列的に接続された第1および第2の巻線を設け、スイッチング回路で、直流電流ループのうち第1の巻線を通る経路上に接続されて当該第1の巻線に流れるループ電流をスイッチングする第1のスイッチング素子と、直流電流ループのうち第2の巻線を通る経路上に接続されて第2の巻線に流れるループ電流をスイッチングする第2のスイッチング素子とからなり、第1および第2のスイッチング素子が交互にオンオフ動作を行うようにしてもよい。
【0011】
また、スイッチング回路に、直流電流ループのうちループ電流がトランスの一次側巻線の一端へ流れ込む経路上に接続されて当該経路上を流れるループ電流をスイッチングする第1のスイッチング素子と、直流電流ループのうちループ電流がトランスの一次側巻線の他端へ流れ込む経路上に接続されて当該経路上を流れる当該ループ電流をスイッチングする第2のスイッチング素子と、直流電流ループのうちループ電流がトランスの一次側巻線の一端から流れ出る経路上に接続されて当該経路上を流れる当該ループ電流をスイッチングする第3のスイッチング素子と、直流電流ループのうちループ電流がトランスの一次側巻線の他端から流れ出る経路上に接続されて当該経路上を流れるループ電流をスイッチングする第4のスイッチング素子とを設け、第1および第3のスイッチング素子が、第2および第4のスイッチング素子と、交互にオンオフ動作を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2線式伝送路に形成される直流電流ループのループ電流から余剰電流を分流できないような動作条件であっても、2線式伝送路から一定の駆動電源を常時確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態にかかるフィールド機器の回路構成を示すブロック図である。
【図2】高周波制御信号を示す信号波形図である。
【図3】第2の実施の形態にかかるフィールド機器の回路構成を示すブロック図である。
【図4】第3の実施の形態にかかるフィールド機器の回路構成を示すブロック図である。
【図5】相補的な高周波制御信号を示す信号波形図である。
【図6】第4の実施の形態にかかるフィールド機器の回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるフィールド機器100について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかるフィールド機器の回路構成を示すブロック図である。
【0015】
このフィールド機器100は、接続端子T1,T2から4−20mA直流電流ループ方式の2線式伝送路2Wを介して上位装置200に接続されて、2線式伝送路2Wに形成される直流電流ループLPのループ電流ILを、物理量を計測して得られた計測値に応じて調整することにより、当該計測値を上位装置200へ伝送する機能を有している。
【0016】
本実施の形態は、ループ電流ILを高周波でスイッチングすることにより、一次側巻線が直流電流ループLP上に接続されたトランスの二次側巻線から、直流電流ループLPに発生した高周波信号を取り出し、この高周波信号を整流して平滑化することにより直流の駆動電源を生成するようにしたものである。
【0017】
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかるフィールド機器の回路構成について詳細に説明する。
フィールド機器100には、主な機能部として、スイッチング回路11、平滑化回路12、制御回路13、計測回路20、および無線回路30が設けられている。
【0018】
スイッチング回路11は、2線式伝送路2Wの直流電流ループLP上に接続されたスイッチング素子Qからなり、制御回路13からの高周波制御信号Sに基づいて、直流電流ループLPを流れるループ電流ILを、高周波でスイッチングする機能を有している。図1において、スイッチング回路11は、トランスLの一次側巻線L1の他端と計測回路20の入力端との間に接続されている。
スイッチング素子Qは、例えばMOSトランジスタなどの半導体素子からなり、数100KHz以上の一定周波数からなる高周波制御信号Sに基づき、オンオフ動作を行う機能を有している。
【0019】
トランスLは、全体として高周波トランスからなり、一次側巻線L1が直流電流ループLP上に接続されており、スイッチング回路11でのループ電流ILに対するスイッチングにより、一次側巻線L1に発生した高周波信号を二次側巻線L2から出力する機能を有している。図1において、ループ電流ILが入力される接続端子T1に、一次側巻線L1の一端が接続されており、一次側巻線L1の他端がスイッチング回路11の入力端に接続されている。
【0020】
整流回路12は、トランスLの二次側巻線L2に接続されて、当該二次側巻線L2から出力された高周波信号を、ダイオードDで半波整流して容量素子Cで平滑化することにより直流の駆動電源VPを生成する機能を有している。
ダイオードDは、アノード端子が二次側巻線L2の一端に接続され、カソード端子が容量素子Cの一端に接続されており、容量素子Cの一端から駆動電源VPが出力される。容量素子Cの他端は、二次側巻線L2とともに、接地電位GNDに接続されている。この接地電位GNDは、計測回路20や無線回路30の接地電位GNDと共通接続されている。
【0021】
制御回路13は、全体として高周波発振器からなり、数100KHz以上の一定周波数からなる高周波制御信号Sを発生させて、スイッチング回路11のスイッチング素子Qへ出力する機能を有している。この制御回路13には、電源として、整流回路12からの駆動電源VPが供給されているが、計測回路20で生成した動作電源を供給してもよい。
図2は、高周波制御信号を示す信号波形図である。ここでは、デューティ比が50%の一定周波数からなる高周波制御信号Sが示されている。
【0022】
計測回路20は、2線式伝送路2Wの直流電流ループLP上に接続されて、センサ(図示せず)により、工業用プラントなどの設備の各部における圧力、流量、温度などの物理量を計測して得られた計測値に応じて、2線式伝送路2Wに形成される直流電流ループLPのループ電流ILを調整することにより、当該計測値を上位装置200へ伝送する機能と、直流電流ループLPのループ電流ILから自己の動作電源を生成する機能とを有している。図1において、計測回路20は、スイッチング素子Qの出力端とループ電流ILが出力される接続端子T2との間に接続されている。
【0023】
一般に、上位装置200には、図1に示すように、ループ電流ILを出力するインターフェース回路が設けられており、2線式伝送路2Wの両端に接続された、電圧源Vと負荷抵抗RLとの直列接続回路により等価的に表すことができる。したがって、フィールド機器100の計測回路20において、直流電流ループLPを閉結するトランジスタを、計測値に応じてアナログ制御することにより、ループ電流ILの値が調整される。
なお、計測回路20の内部構成については、一般的な公知のフィールド機器と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0024】
無線回路30は、全体として短距離無線ネットワークIEEE802.15.4や、産業用無線通信規格ISA100.11a規格のほか、無線LANやブルートゥース(登録商標)などの無線通信方式に基づき無線データ通信を行う回路部からなり、整流回路12で生成された駆動電源VPにより駆動して、計測回路20から通知された、計測値データ、フィールド機器100に関するデバイス設定や診断などの他の機能に関するデータを、上位装置200へ無線送信する機能を有している。
【0025】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかるフィールド機器100の動作について説明する。
フィールド機器100には、上位装置200から2線式伝送路2Wを介して、電流範囲4〜20mAの直流のループ電流ILが供給されている。この電流範囲に対してフィールド機器100で計測する物理量の計測レンジ0%−100%が予め割り当てられており、計測回路20は、得られた計測値の百分率に基づき、4〜20mAの電流範囲でループ電流ILを調整する。これにより、上位装置200は、当該ループ電流値を検出して、実際の計測値を逆算することにより、フィールド機器100で計測した計測値を取得する。
【0026】
一方、フィールド機器100の制御回路13は、常時、高周波制御信号Sを出力しており、スイッチング回路11のスイッチング素子Qは、この高周波制御信号Sに基づきオンオフ動作を繰り替えしている。
したがって、直流電流ループLP上を流れるループ電流ILは、高周波制御信号Sと同期して高周波でスイッチングされるため、トランスLの一次側巻線L1に交流の高周波信号が発生する。この際、一次側巻線L1と二次側巻線L2との巻線比を調整して昇圧してもよく、所望の電圧値が得られる。
【0027】
この高周波信号は、トランスLの二次側巻線L2から整流回路12へ出力され、ダイオードDで半波整流された後、容量素子Cで平滑化され、直流の駆動電源VPとして無線回路30へ供給される。
これにより、無線回路30は、ループ電流ILから分流した余剰電流を用いることなく、駆動電源VPで駆動され、計測回路20から通知された各種データを無線通信により上位装置200へ送信することができる。
【0028】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、スイッチング回路11で、ループ電流ILを高周波でスイッチングし、トランスLで、このスイッチングにより当該一次側巻線L1に発生した高周波信号を二次側巻線L2から出力し、整流回路12で、この高周波信号を整流して平滑化することにより直流の駆動電源VPを生成するようにしたものである。
これにより、2線式伝送路2Wに形成される直流電流ループLPのループ電流ILから余剰電流を分流できないような動作条件であっても、2線式伝送路2Wから一定の駆動電源VPを常時確保することができる。
【0029】
また、本実施の形態では、トランスLを介して高周波信号を抽出しているため、直流電流ループLP側に対して直流的に絶縁された駆動電源VPを生成することができる。これにより、駆動電源VPの接地電位GNDを計測回路20の接地電位と共通接続することができる。したがって、計測回路20と無線回路30との信号電位を整合させることができ、計測回路20と無線回路30との間でやり取りするアナログ/デジタル信号を、フォトカプラなどのアイソレータで絶縁する必要がなくなり、回路構成を簡素化することができる。
【0030】
また、本実施の形態では、スイッチング回路11で数100KHz以上の一定周波数でループ電流ILをスイッチングするようにしたので、既存の計測回路20に対して影響することなく、上位装置200の電圧源Vのエネルギーを、高周波信号によりフィールド機器100で受け取って駆動電源VPとして利用することができる。
【0031】
[第2の実施の形態]
次に、図3を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるフィールド機器100について説明する。図3は、第2の実施の形態にかかるフィールド機器の回路構成を示すブロック図である。
【0032】
第1の実施の形態では、トランスLを介して得られた高周波信号を整流回路12で半波整流する場合を例として説明した。本実施の形態では、高周波信号を整流回路12で全波整流する場合、すなわちフォワード方式について説明する。
図3に示すように、第1の実施の形態と比較して、本実施の形態では、整流回路12が、ダイオードD1,D2、チョークコイルCH、および容量素子Cから構成されている点が異なる。なお、他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0033】
ダイオードD1は、アノード端子が二次側巻線L2の一端に接続され、カソード端子がチョークコイルCHの一端に接続されている。
ダイオードD2は、アノード端子が二次側巻線L2の他端に接続され、カソード端子がチョークコイルCHの一端に接続されている。
チョークコイルCHの他端は、容量素子Cの一端に接続されており、容量素子Cの一端から駆動電源VPが出力される。
容量素子Cの他端は、二次側巻線L2とともに、接地電位GNDに接続されている。
【0034】
これにより、トランスLの二次側巻線L2に、接地電位GNDに対して正側電位を持つ高周波信号が発生した場合には、ダイオードD1により整流されて、チョークコイルCHと容量素子Cとにより平滑化される。一方、接地電位GNDに対して負側電位を持つ高周波信号が発生した場合には、ダイオードD2により整流されて、チョークコイルCHと容量素子Cとにより平滑化される。
このため、第1の実施の形態と比較して、より効率よく高調波信号を整流することができ、駆動電源VPとしてより多くの電力を供給できる。
【0035】
[第3の実施の形態]
次に、図4を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかるフィールド機器100について説明する。図4は、第3の実施の形態にかかるフィールド機器の回路構成を示すブロック図である。
【0036】
本実施の形態では、トランスLに2つの巻線L11,L12を設け、スイッチング回路11において、2つのスイッチング素子Q1,Q2でループ電流ILをスイッチングする場合、すなわちプッシュ方式について説明する。
【0037】
図4に示すように、本実施の形態では、トランスLの一次側巻線L1は、互いに並列的に接続された第1の巻線L11および第2の巻線L12からなる。図4において、これら第1の巻線L11の一端と第2の巻線L12の一端の接続点に、接続端子T1が接続されている。また、第1の巻線L11の他端は、Q1の入力端に接続されており、第2の巻線L12の他端は、Q2の入力端に接続されている。
【0038】
また、スイッチング回路11は、直流電流ループLPのうちトランスLの第1の巻線L11を通る経路上に、第1の巻線L11に流れるループ電流ILをスイッチングする第1のスイッチング素子Q1と、直流電流ループLPのうち第2の巻線L12を通る経路上に、第2の巻線L12に流れるループ電流ILをスイッチングする第2のスイッチング素子Q2が接続されている。図4において、Q1の出力端とQ2の出力端の両方が、計測回路20の入力端に接続されている。
【0039】
これらQ1,Q2は、例えばMOSトランジスタなどの半導体素子からなり、制御回路13から出力される高周波制御信号S1,S2に基づいて、それぞれオンオフ動作する。
図5は、相補的な高周波制御信号を示す信号波形図である。制御回路13は、数100KHz以上の一定周波数からなる高周波制御信号S1,S2を、図5に示すように、相補的な位相関係で発生させて、スイッチング回路11のスイッチング素子Q1,Q2へ出力する。
したがって、Q1,Q2は、互いに逆位相で交互にオンオフ動作を行う。これにより、トランスLの一次側の巻線L11,L12のいずれか一方にのみ高周波信号が発生する。
【0040】
一方、トランスLの二次側巻線L2は、第1の巻線L21と第2の巻線L22が設けられている。図4において、第1の巻線L21の一端と第2の巻線L22の一端が、接地電位GNDに接続されており、第1の巻線L21の他端が整流回路12のダイオードD1のアノード端子に接続され、第2の巻線L22の他端が整流回路12のダイオードD2のアノード端子に接続されている。
【0041】
また、整流回路12において、ダイオードD1のカソード端子とダイオードD2のカソード端子は、チョークコイルCHの一端に接続され、チョークコイルCHの他端は、容量素子Cの一端に接続されており、容量素子Cの一端から駆動電源VPが出力される。容量素子Cの他端は、二次側巻線L2とともに、接地電位GNDに接続されている。
【0042】
したがって、第1の巻線L11で発生した高周波信号は、接地電位GNDに対して正側電位を持つ高周波信号として第1の巻線L21に現われて、ダイオードD1により整流されて、チョークコイルCHと容量素子Cとにより平滑化される。一方、第2の巻線L12で発生した高周波信号は、接地電位GNDに対して正側電位を持つ高周波信号として第2の巻線L22に現われて、ダイオードD2により整流されて、チョークコイルCHと容量素子Cとにより平滑化される。
このため、第1および第2の実施の形態と比較して、より効率よく高調波信号を整流することができ、駆動電源VPとしてより多くの電力を供給できる。
【0043】
[第4の実施の形態]
次に、図6を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかるフィールド機器100について説明する。図6は、第4の実施の形態にかかるフィールド機器の回路構成を示すブロック図である。
【0044】
本実施の形態では、スイッチング回路11において、4つのスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4でループ電流ILをスイッチングする場合、すなわちブリッジ方式について説明する。
【0045】
図6に示すように、本実施の形態では、スイッチング回路11を構成するQ1〜Q4が、ブリッジ形式で、トランスLの一次側巻線L1に接続されている。すなわち、直流電流ループLPのうちループ電流ILが一次側巻線L1の一端へ流れ込む経路上に、当該経路上を流れるループ電流ILをスイッチングする第1のスイッチング素子Q1が接続されている。また、ループ電流ILが一次側巻線L1の他端へ流れ込む経路上に、当該経路上を流れる当該ループ電流ILをスイッチングする第2のスイッチング素子Q2が接続されている。
【0046】
また、ループ電流ILが一次側巻線L1の一端から流れ出る経路上に、当該経路上を流れる当該ループ電流ILをスイッチングする第3のスイッチング素子が接続されている。また、ループ電流ILが一次側巻線L1の他端から流れ出る経路上に、当該経路上を流れるループ電流ILをスイッチングする第4のスイッチング素子Q4が接続されている。
【0047】
図6において、Q1の入力端が接続端子T1に接続され、Q1の出力端が一次側巻線L1の一端に接続されている。また、Q2の入力端が接続端子T1に接続され、Q2の出力端が一次側巻線L1の一端に接続されている。また、Q3の入力端が一次側巻線L1の一端に接続されており、Q3の出力端が計測回路20の入力端に接続されている。また、Q4の入力端が一次側巻線L1の他端に接続されており、Q4の出力端が計測回路20の入力端に接続されている。
【0048】
これらQ1〜Q4は、例えばMOSトランジスタなどの半導体素子からなり、制御回路13から出力される高周波制御信号S1,S2に基づいて、それぞれオンオフ動作する。これら高周波制御信号S1,S2は、前述した図5と同様であり、互いに相補的な位相関係を持つ。
したがって、Q1,Q3の組とQ2,Q4の組とは、互いに逆位相で交互にオンオフ動作を行う。これにより、トランスLの一次側巻線L1に逆極性の高周波信号が発生する。
【0049】
一方、トランスLの二次側巻線L2は、第1の巻線L21と第2の巻線L22が設けられている。図6において、第1の巻線L21の一端と第2の巻線L22の一端が、接地電位GNDに接続されており、第1の巻線L21の他端が整流回路12のダイオードD1のアノード端子に接続され、第2の巻線L22の他端が整流回路12のダイオードD2のアノード端子に接続されている。
【0050】
また、整流回路12において、ダイオードD1のカソード端子とダイオードD2のカソード端子は、チョークコイルCHの一端に接続され、チョークコイルCHの他端は、容量素子Cの一端に接続されており、容量素子Cの一端から駆動電源VPが出力される。容量素子Cの他端は、二次側巻線L2とともに、接地電位GNDに接続されている。
【0051】
したがって、一次側巻線L1で発生した高周波信号が、接地電位GNDに対して正側電位を持つ高周波信号として第1の巻線L21に現われた場合、ダイオードD1により整流されて、チョークコイルCHと容量素子Cとにより平滑化される。一方、接地電位GNDに対して正側電位を持つ高周波信号として第2の巻線L22に現われた場合、ダイオードD2により整流されて、チョークコイルCHと容量素子Cとにより平滑化される。
このため、第1〜第3の実施の形態と比較して、より効率よく高調波信号を整流することができ、駆動電源VPとしてより多くの電力を供給できる。
【0052】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【0053】
また、各実施の形態では、整流回路12で得られた駆動電源VPを無線回路30で用いる場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、他の付加回路や計測回路20で、駆動電源VPを用いてもよい。
【0054】
また、各実施の形態では、ループ電流ILが入力される接続端子T1とループ電流ILが出力される接続端子T2との間に、トランスLおよびスイッチング回路11と、計測回路20とを直列接続した場合を例として説明したが、トランスLおよびスイッチング回路11と、計測回路20と接続順序を逆にしても、前述と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0055】
100…フィールド機器、11…スイッチング回路、12…整流回路、13…制御回路、20…計測回路、30…無線回路、200…上位装置、L…トランス、Q1,Q2,Q3,Q4…スイッチング素子、L1…一次側巻線、L11…第1の巻線(一次側巻線)、L12…第2の巻線(一次側巻線)、L2…二次側巻線、L21…第1の巻線(二次側巻線)、L22…第2の巻線(二次側巻線)、D,D1,D2…ダイオード、CH…チョークコイル、C…容量素子、S,S1,S2…高周波制御信号、T1,T2…接続端子、2W…2線式伝送路、LP…直流電流ループ、IL…ループ電流、VP…駆動電源、GND…接地電位、V…電圧源、RL…負荷抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−20mA直流電流ループ方式の2線式伝送路に形成される直流電流ループのループ電流を、物理量を計測して得られた計測値に応じて調整することにより、当該計測値を上位装置へ伝送するフィールド機器であって、
前記直流電流ループ上に接続されたスイッチング素子からなり、前記ループ電流を高周波でスイッチングするスイッチング回路と、
一次側巻線が前記直流電流ループ上に接続されて、前記スイッチングにより当該一次側巻線に発生した高周波信号を二次側巻線から出力するトランスと、
前記トランスの二次側巻線に接続されて、当該二次側巻線から出力された前記高周波信号を整流して平滑化することにより直流の駆動電源を生成する整流回路と
を備えることを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
請求項1に記載のフィールド機器において、
前記トランスの一次側巻線は、互いに並列的に接続された第1および第2の巻線からなり、
前記スイッチング回路は、前記直流電流ループのうち前記第1の巻線を通る経路上に接続されて当該第1の巻線に流れる前記ループ電流をスイッチングする第1のスイッチング素子と、前記直流電流ループのうち前記第2の巻線を通る経路上に接続されて前記第2の巻線に流れる前記ループ電流をスイッチングする第2のスイッチング素子とからなり、前記第1および第2のスイッチング素子が交互にオンオフ動作を行う
ことを特徴とするフィールド機器。
【請求項3】
請求項1に記載のフィールド機器において、
前記スイッチング回路は、
前記直流電流ループのうち前記ループ電流が前記トランスの一次側巻線の一端へ流れ込む経路上に接続されて当該経路上を流れる前記ループ電流をスイッチングする第1のスイッチング素子と、
前記直流電流ループのうち前記ループ電流が前記トランスの一次側巻線の他端へ流れ込む経路上に接続されて当該経路上を流れる当該ループ電流をスイッチングする第2のスイッチング素子と、
前記直流電流ループのうち前記ループ電流が前記トランスの一次側巻線の一端から流れ出る経路上に接続されて当該経路上を流れる当該ループ電流をスイッチングする第3のスイッチング素子と、
前記直流電流ループのうち前記ループ電流が前記トランスの一次側巻線の他端から流れ出る経路上に接続されて当該経路上を流れる前記ループ電流をスイッチングする第4のスイッチング素子とからなり、
前記第1および第3のスイッチング素子が、前記第2および第4のスイッチング素子と、交互にオンオフ動作を行う
ことを特徴とするフィールド機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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