説明

フェキソフェナジンの調製方法

フェキソフェナジンの調製方法が記述され、この方法では、4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸−アルキルエステルを水と場合により有機溶媒の混合物中で塩基の存在下で加水分解させることで4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸のカルボン酸塩を得た後、これをカルボン酸塩として塩基性環境下で水素を用いて適切な水素添加用触媒の存在下で直接的に還元することでフェキソフェナジンのカルボン酸塩を生じさせ、この溶液を中和することでこれを沈澱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸−アルキルエステルの加水分解により4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸を生じさせ、これをフェキソフェナジンカルボン酸塩として触媒的に水素添加することを含むフェキソフェナジンの調製方法。
【0002】
本発明はフェキソフェナジンの調製方法に関し、この式を以下に示す。
【0003】
【化1】

【0004】
本方法では、4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸−アルキルエステル(これはまた下記
【0005】
【化2】

(式中、Rはアルキル基である。)
でも示される。)を水と場合により有機溶媒の混合物中で塩基の存在下で加水分解することで4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸のカルボン酸塩(これは下記
【0006】
【化3】

(式中、M+はカルボン酸塩のカチオンである(または、言い換えれば、加水分解で用いられる塩基のカチオンである。)。)
で示される。)を得た後、これをカルボン酸塩として塩基性環境下で水素を用いて適切な触媒の存在下で直接的に還元することでフェキソフェナジンのカルボン酸塩を生じさせ、この溶液を中和することでこれを沈澱させる。
【背景技術】
【0007】
文献に報告されている式IIの化合物から開始するフェキソフェナジンを調製する方法では、例えばUS4254129に記述されているように、水素化ホウ素ナトリウムを用いる還元がケトン基の還元に好適な方法であると記述されている。このような反応はエステルの加水分解の前または後に実施可能である。挙げられている接触還元方法はあまり効率がよくないと記述されている。このような反応は式IIの化合物またはこの関連した酸を用いて有機溶媒中で実施される。このような条件下では、水素化分解を完全に行うことにより不純物が形成されることとベンジル位置の片方もしくは両方の酸素が失われることにより、反応収率が極めて低いことが確かめられており、これは水素化分解に由来する生成物の約32%を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4254129号
【発明の概要】
【0009】
この新規な方法では、式II
【0010】
【化4】

(式中、Rはアルキル基、好ましくはC−Cアルキル基、更により好ましくはメチル基である。)
の化合物を塩基の存在下の有機溶媒と水の混合物中または単に水と塩基中で溶解または懸濁させた後、0℃から前記混合物の還流温度を含む温度で撹拌しながら加水分解させる。このような有機溶媒は、好ましくは極性溶媒、通常はプロトン型、好ましくはC−Cアルコール、更により好ましくはメタノールである。前記塩基は、好ましくは無機の性質のもの、例えばアルカリもしくはアルカリ土類金属の水酸化物など、更により好ましくはNaOHである。
【0011】
前記有機溶媒を用いる場合、これは水に対して0.25から16倍の体積の範囲の比率で存在し、または前記水と有機溶媒の混合物は好ましくは化合物IIに対して6から7倍の体積で存在し、同様に、前記塩基は好ましくは式IIの化合物に対してモル過剰量、好ましくは3から5のモル比で用いられる。
【0012】
この反応から式III
【0013】
【化5】

(式中、M+はカルボン酸塩のカチオン、好ましくはNaである。)
の化合物が得られる。
【0014】
このようにして得られた系に、適切な金属的水素添加用触媒、好ましくは適切に担持されているパラジウム、白金またはルテニウム(好ましくは炭素に担持されているパラジウム)から選択される触媒を添加した後、0℃から溶媒の沸点の温度において1から100バール、好ましくは1から10バールの範囲内の圧力で水素添加する。
【0015】
この水素添加反応でフェキソフェナジン、即ち式I
【0016】
【化6】

を得た後、この溶液に存在する塩基を酸、好ましくは酢酸で中和することでこれを沈澱させる。
【0017】
以下に示す実施例は単に例示であり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0018】
機械的撹拌機を取り付けた4つ口フラスコに4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸−メチルエステル100g、メタノール600mlおよび30%の水酸化ナトリウム60mlを入れる。この混合物を加熱還流して撹拌下に約5時間維持する。前記エステルが完全に加水分解された時点で前記反応槽に炭素に5%担持されているパラジウム10gを入れて、前記ベンジルケトンの相当するアルコールへの変換が完了するまで、50℃において6バールの圧力下で水素添加する。この反応が完了した後、前記触媒を濾過し、酢酸を用いてpHを5から8に調整することでフェキソフェナジンを沈澱させる。得られた固体を濾過し、真空下65℃において乾燥させる。
【0019】
HPLCによる純度が平均で>99%の粗フェキソフェナジン85gを得る。水素添加に最適な温度は35から45℃であり、沈澱に最適なpHは5から6である。
【実施例2】
【0020】
機械的撹拌機を取り付けた4つ口フラスコに4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸−メチルエステル100g、水600ml、イソプロパノール150mlおよび30%の水酸化ナトリウム73mlを入れる。この混合物を過熱還流して撹拌下に約5時間維持する。前記エステルが完全に加水分解された時点で前記反応槽に炭素に5%担持されているパラジウム10gを入れて、前記ベンジルケトンの相当するアルコールへの変換が完了するまで、50℃において6バールの圧力下で水素添加する。この反応が完了した後、前記触媒を濾過し、酢酸を用いてpHを5から8に調整することでフェキソフェナジンを沈澱させる。得られた固体を濾過し、真空下65℃において乾燥させる。
【0021】
HPLCによる純度が平均で>99%の粗フェキソフェナジン85gを得る。水素添加に最適な温度は35から45℃であり、沈澱に最適なpHは5から6である。
【実施例3】
【0022】
機械的撹拌機を取り付けた4つ口フラスコに4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸−メチルエステル100g、メタノール600mlおよび30%の水酸化ナトリウム60mlを入れる。この混合物を加熱還流して撹拌下に約5時間維持する。前記エステルが完全に加水分解された時点で前記反応槽に炭素に5%担持されているパラジウム10gを入れて、前記ベンジルケトンの相当するアルコールへの変換が完了するまで、50℃において10バールの圧力下で水素添加する。この反応が完了した後、前記触媒を濾過し、酢酸を用いてpHを5から8に調整することでフェキソフェナジンを沈澱させる。得られた固体を濾過し、真空下65℃において乾燥させる。
【0023】
HPLCによる純度が平均で>99%の粗フェキソフェナジン85gを得る。水素添加に最適な温度は35から45℃であり、沈澱に最適なpHは5から6である。
【実施例4】
【0024】
機械的撹拌機を取り付けた4つ口フラスコに4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジル]−1−オキソブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸−メチルエステル100gおよびメタノール600mlを入れる。前記エステルが完全に可溶化した時点で前記反応槽に炭素に5%担持されているパラジウム10gを入れて、前記ベンジルケトンの相当するアルコールへの変換が完了するまで、50℃において6バールの圧力下で水素添加する。この反応が完了した後、前記触媒を濾過し、30%の水酸化ナトリウム60mlを添加し、この混合物を過熱還流して撹拌下に前記エステルの加水分解が完了するまで約5時間維持する。酢酸を用いてpHを5から8に調整することでフェキソフェナジンを沈澱させる。得られた固体を濾過し、真空下65℃で乾燥させる。
【0025】
HPLCによる純度が約60%で不純物を32に相当するA%の量で含むフェキソフェナジン55gを得たが、この不純物は分子量を計算したところ酸素が1個少ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェキソフェナジンの調製方法であって、式
【化7】

(式中、Rはアルキル基である。)
の化合物を塩基の存在下で加水分解させることで式
【化8】

(式中、Mはカルボン酸塩のカチオンである。)
の化合物を生じさせた後、これに水素添加させる方法。
【請求項2】
RがC−Cアルキル基、好ましくはメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加水分解が有機溶媒と水の混合物中または単に水中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶媒が極性有機溶媒、好ましくはプロトン性である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶媒がC−Cアルコール、好ましくはメタノールである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が水に対して0.25から16倍体積の範囲内の比率で存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記水と有機溶媒の混合物が化合物に対して6から7倍の体積で存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基が式IIの化合物に対してモル過剰量、好ましくは3から5のモル比で用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記塩基がアルカリもしくはアルカリ土類金属の水酸化物、好ましくはNaOHである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
がNaである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記水素添加が水素添加用触媒の存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒がパラジウム、白金およびルテニウムから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が炭素に担持されているパラジウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記水素添加が0℃から溶媒の沸点の温度で実施する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記水素添加が1から100バール、好ましくは1から10バールの範囲内の圧力で実施される、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2009−544691(P2009−544691A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521422(P2009−521422)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【国際出願番号】PCT/IT2007/000525
【国際公開番号】WO2008/012858
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(507201050)アルキミカ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (5)
【氏名又は名称原語表記】ARCHIMICA S.R.L.
【Fターム(参考)】