説明

フェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成方法

【課題】 高世代数であっても簡便なプロセスで、効率的にフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成を可能とし、末端置換基の変換も容易とする。
【解決手段】 アミンとケトン化合物とのイミン結合形成によりコアアミン・イミン分子骨格を生成させ、順次にケトン化合物の反応によるダイバージェント法でのイミン結合形成によって所定世代数の樹状構造を形成する。
また、ダイバージェント法と従来のコンバージェント法とを組合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の新しい合成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)やその誘導体は、光・電子機能や触媒能等の点において新しいナノ機能材料を実現するものとして注目されている。このように新しいナノ材料として注目を集めるフェニルアゾメチンデンドリマーは、これまでケトンとアミンの脱水反応を基本としたコンバージェント合成によって合成されてきた。たとえば、この出願の発明者によっても改善された方法が提案されている(特許文献1−2)。
【0003】
特許文献1の方法では、たとえば図1に示したように、ケトン化合物(2)とアミノケトン化合物(1)とを反応させてイミン化合物を合成し、さらにアミノケトン化合物(1)を順次反応させて、所定世代数の樹状構成を形成し、得られたデンドロン、たとえば図中のデンドロンG4をジアミン化合物と反応させることで、フェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)に変換するようにしている。
【0004】
また、特許文献2の方法では、デンドロン化合物をジアミンジフェニルメタン化合物と反応させた後に酸化反応を行ってデンドロン化合物に変換し、最終的にジアミン化合物と反応させることで所定世代数のデンドリマーを合成するようにしている。
【0005】
しかしながら、このような従来のコンバージェント法による合成では、精密合成により単一分子量のデンドリマーの取得が可能であって、コアとなる最終段階でのジアミンの変更が比較的容易であるという長所を有するものの、発明者らによる改善工夫がなされていても、これまでの合成法にはさらなる改善が望まれてもいた。
【0006】
それと言うのも、これまでのコンバージェント合成では、副生成物の存在により目的とするデンドロンが各段階において単離が必ずしも容易ではなく、そのような副生成物の生成を防ぐために、過剰の原料デンドロンを用いなければならないからである。そのため、結果として、たとえば1グラムの第4世代デンドリマーを合成するために、たとえば、原料となるベンゾフェノンを258グラム使用しなければならない計算となる。つまり、従来の方法では、高世代のデンドリマーであるほどその精製は煩雑となって、取得効率の向上が難しくなるという問題点があった。このような事情から、より効率的なフェニルアゾメチンデンドリマーの合成は、新しいナノ材料の効率的な提供を考える上で欠かせない。
【0007】
また、従来のコンバージェント合成法の場合には、樹状構成の末端置換の変更が必ずしも容易でないという問題点がある。たとえば、末端基として親水基を導入して水溶性のデンドリマーを合成すること等も容易ではなかった。
【特許文献1】特開2003−221441号公報
【特許文献2】特開2004−331850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のとおりの背景から、従来の問題点を解消し、高世代数のデンドリマーであってもその精製が比較的簡便でその取得は効率的でもあり、しかも末端置換の変更も容易な新しいデンドリマーの合成方法を提供することを課題としている。そして、末端置換基の変更によって、従来困難であった水溶性のフェニルアゾメチンデンドリマー類をも実現する。
【0009】
また、さらには、従来のコンバージェント法の特徴であるコアアミン部の変更が容易で、精密合成が可能とされるとの長所をも生かした上記の方法を提供することを課題としてもいる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の合成方法は、上記の課題を解決するものとして以下のことを特徴としている。
【0011】
第1:イミン結合を介しての樹状分子構造が構成されている次式(1);
【0012】
【化1】

(式中のR1は芳香環または複素環を有する有機基を示し、R2は水素原子または置換基を示し、mおよびnは、各々1以上の整数を示す。)
で表わされるフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成方法であって、以下の工程を含むことを特徴とするフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成方法。
【0013】
<1a>次式(2);
【0014】
【化2】

(式中のR1,mは前記のものを示す。)
で表わされるアミン化合物に対し、次式(3);
【0015】
【化3】

(式中のA0は、保護基を有するアミノ基を示す。)
で表わされるケトン化合物を反応させて、次式(4);
【0016】
【化4】

(式中のR1,A0,mは前記のものを示す。)
で表わされるイミン化合物を生成させる。
【0017】
<1b>生成したイミン化合物の保護基を有するアミノ基A0の保護基を脱離させた後に、あるいは脱離させることなく、前記式(3)の化合物によるイミン結合形成反応をn回行う。
【0018】
<1c>次いで生成した次式(5);
【0019】
【化5】

(R1,A0,m,nは前記のものを示す。)
で表わされるイミン化合物の保護基を有するアミン基A0を、前記置換基R2に変換反応させる。
【0020】
第2:イミン結合を介しての樹状分子構造が構成されている次式(1);
【0021】
【化6】

(式中のR1は芳香環または複素環を有する有機基を示し、R2は水素原子または置換基を示し、mおよびnは各々1以上の整数を示す。)
で表わされるフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする。
【0022】
<2a>次式(2);
【0023】
【化7】

(式中のR1,mは前記のものを示す。)
で表わされるアミン化合物に対し、次式(3);
【0024】
【化8】

(式中のA0は、保護基を有するアミノ基を示す。)
で表わされるケトン化合物を反応させて、次式(4);
【0025】
【化9】

(式中のR1,A0,mは前記のものを示す。)
で表わされるイミン化合物を生成させる。
【0026】
<2b>生成したイミン化合物の保護基を有するアミノ基A0の保護基を脱離させた後に、あるいは脱離させることなく、前記式(3)の化合物によるイミン結合形成反応をk回(ただし、kは整数を示し、0≦k<n−1である)行う。
【0027】
<2c>次いで、生成した次式(6);
【0028】
【化10】

(R1,A0,m,kは前記のものを示す。)
で表わされるイミン化合物の保護基を有するアミノ基A0の保護基を脱離させた後に、あるいは脱離させることなく、次式(7);
【0029】
【化11】

(式中のB0は保護基を有する置換基を示す。)
で表わされるケトン化合物と反応させて、次式(8);
【0030】
【化12】

(式中のR1,B0,m,nは前記のものを示す。)
で表わされる化合物を生成させる。
【0031】
<2d>保護基を有する置換基B0の保護基を脱離させた後に、あるいは脱離させることなく、前記置換基R2に変換反応させる。
【0032】
第3:上記第2の方法において、保護基を有する置換基B0は保護ヒドロキシル基であって、置換基R2は、ポリアルキレングリコール化変換反応によって形成された次式(9)
【0033】
【化13】

(式中のR0は炭素鎖を、lは整数を示す。)
で表わされるものであることを特徴とする。
【0034】
第4:イミン結合を介しての樹状分子構造が構成されている次式(1);
【0035】
【化14】

(式中のR1は芳香環または複素環を有する有機基を示し、R2は水素原子または置換基を示し、mおよびnは、各々1以上の整数を示す。)
で表わされるフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする。
【0036】
<3a>次式(2);
【0037】
【化15】

(式中のR1,mは前記のものを示す。)
で表わされるアミン化合物に対し、次式(3)
【0038】
【化16】

(式中のA0は、保護基を有するアミノ基を示す。)
で表わされるケトン化合物を反応させて、次式(4);
【0039】
【化17】

(式中のR1,A0,mは前記のものを示す。)
で表わされるイミン化合物を生成させる。
【0040】
<3b>生成したイミン化合物の保護基を有するアミノ基A0の保護基を脱離させた後に、あるいは脱離させることなく、前記式(3)の化合物によるイミン結合形成反応をp回(ただし、pは整数を示し、0≦p<nである)行う。
【0041】
<3c>次いで、生成した次式(10);
【0042】
【化18】

(R1,A0,m,pは前記のものを示す。)
で表わされるイミン化合物の保護基を有するアミノ基A0の保護基を脱離させた後に、あるいは脱離させることなく、次式(11);
【0043】
【化19】

(R2は前記のものを示し、qは整数であって、
1<q≦n−pを示す。)
で表わされるケトン化合物と反応させる。
【発明の効果】
【0044】
上記第1の発明によれば、従来のコンバージョン法による合成の問題点を解消し、高世代数のデンドリマーであってもその精製がステップの削減等によってより簡便、かつ効率的なものとなる。
【0045】
また、第2の発明によれば、末端置換基の変更が容易となり、たとえば第3の発明のように水溶性のアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成も容易となる。
【0046】
そして、第4の発明によれば、従来のコンバージェント法との組合わせにより、コンバージェント法の長所をも生かしたデンドリマー合成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
上記第1の本発明の合成方法においては、アゾメチンデンドリマー(DPA)骨格のコア部分を形成する式(2)で表わされるアミン化合物をまず最初の反応段階で用いることを特徴としている。本発明の合成方法は、従来の「コンバージェント(Convergent)法」に対して、「ダイバージェント(Dyvergent) 法」と呼ぶことができる。
【0048】
合成反応のステップとしては、前記のように、以下の工程を含むことになる。
【0049】
<1a>前記式(2)のアミン化合物を、式(3)のケトン化合物と反応させる。
【0050】
ここでの式(2)のアミン化合物においては、R1は芳香環または複素環を有する有機基である。たとえば、次式
【0051】
【化20】

(式中のArは、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環を、Hetは、ピリジン環、ピロール環、チオフェン環、ポルフィリン環等の複素環を、R3、R4は、鎖状、環状の炭化水素基あるいはO、S、N等の異種原子を介在させている炭素鎖であることを示す。)
で表わされるものである。もちろんR1は、置換基を有していてもよい。係数mは1以上の整数である。たとえば1〜4の数である。
【0052】
式(3)のケトン化合物においては、A0は保護基を有するアミノ基、すなわち保護アミノ基である。この場合の保護基としては従来よりペプチド合成法等において用いられている各種のものであってよいが、なかでもアミド基が好適なものの一つとして考慮される。
【0053】
保護基については、式(2)(3)の化合物によるイミン結合形成反応に耐えることができ、しかも形成されたイミン結合を壊さずに脱保護できることが望まれる。どのような保護基を用いるかは、反応溶媒、反応条件等を考慮することができる。たとえばアミド基を保護基とする場合には、保護基を有するアミノ基A0としては、
3C−CO−NH−
ClH2−CO−NH−
Cl3C−CO−NH−
3C−CO−NH−
の順に脱離しやすい傾向がある。この傾向を考慮して、反応溶媒との組合わせを選択することができる。
【0054】
<1b>反応により生成された式(4)のイミン化合物に対しては、次いで、所定の世代数のデンドリマー構造とするために、保護基を有するアミノ基A0の保護基を脱離させた後に、あるいは反応中に脱離可能な場合には、あらかじめ脱離させることなく、式(3)で表わされるケトン化合物を反応させるイミン結合形成反応をn回行う。これによって式(5)の樹状分子構造のデンドリマー化合物を生成させる。
【0055】
<1c>そして最終的に、末端の保護基を有するアミノ基A0を所定の置換基R2に変換して、前記の式(1)で表わされるフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類を合成する。
【0056】
ここで置換基R2としては、保護基を脱離させた後のアミノ基−NH2をはじめ、たとえばアミノ基から誘導されるアミド基、カーバメート基、尿素基、ヒドラジノ基、ヒドラゾン基、あるいは炭化水素置換アミン基、ヒドロキシアルキルアミノ基、ペプチド基等の各種のものであってよい。ただ、末端アミノ基の変換による置換基R2への誘導が必ずしも容易でない場合がある。そこで、本発明では、ダイバージェント法の変法として、最終のイミン結合形成反応において、末端置換反応が容易な官能基を有するケトン化合物を反応させることも有効である。
【0057】
すなわち、第2の本発明方法のように、まず、
<2b>式(3)のケトン化合物を用いたイミン結合形成反応をk回、つまりO≦k<n−1の関係にあるk回行う。
【0058】
<2c>次いで、式(7)で表わされる前記A0の保護アミノ基以外の保護置換基B0を有するケトン化合物を用いて式(8)のデンドリマーを合成し、さらに、
<2d>保護置換基B0をR2に変換する。
【0059】
ここで、保護置換基B0は、前記A0の保護アミノ基よりもR2置換基に変換しやすいものとする。
【0060】
以上の第2の発明の方法は、たとえば水溶性デンドリマーを合成するのに有用である。後述の実施例に示したように、たとえばベンゾイル保護ヒドロキシル基(−O−Bz)デンドリマーを生成させ、ポリエチレングリコール(PEG)等を用いてポリアルキレングリコール化反応を行うことができる。
【0061】
そして、本発明では、第3の発明方法として、従来のコンバージェント法とダイバージェント法とを組合わせ、双方の長所を生かす方法も提供する。すなわち、次の反応工程を含むプロセスとする。
【0062】
<3a>前記プロセス<1a>と同様にして、式(2)(3)のアミンとケトン化合物とを反応させて、デンドリマーのコア部として式(4)で表わされるイミン化合物を生成させる。
【0063】
<3b>式(3)のケトン化合物を用いてのイミン結合形成反応をp回行う。ここで、O≦p<nである。
【0064】
<3c>次いで生成した式(10)のデンドリマー化合物を、あらかじめ従来のコンバージェント法により合成した末端置換基R2を有するデンドロン化合物と反応させる。
【0065】
つまり、工程<3a><3b>をダイバージェント法による合成反応として行い、工程<3c>においてコンバージェント法との組合わせとして行う。
【0066】
そこで、以下に実施例を示し、これに沿ってさらに詳しく説明する。もちろん本発明は以下の例によって限定されることはない。
【実施例】
【0067】
<実施例1>
次の反応式に従って、ダイバージェント法により第一世代(G1)デンドリマーを合成した。
【0068】
【化21】

すなわち、ジアミノベンゾフェノン(3.00 g, 14.2 mmol)を室温、THF溶媒中、トリエチルアミン(3.11 g, 30.7 mmol)存在下に、トリクロロアセチルクロライド(5.10 g, 28.1 mmol)と1時間反応させる事によりジトリクロロアセトアミドベンゾフェノン(6.19 g, 12.3 mmol, 収率87 %, NMR: , MALDI-TOF MS: Calcd; )を合成した。得られたジトリクロロアセトアミドベンゾフェノン(4 g, 7.95 mmol)とパラフェニレンジアミン(0.429 g, 2.02 mmol)をクロロベンゼン中125℃において、DABCO(ジアザビシクロジアミノオクタン, 5.36 g, 47.9 mmol)存在下、四塩化チタン(2.25 g, 11.9 mmol)による脱水縮合を行った後、ろ過、濃縮後、熱酢酸エチルで洗う事により末端アミドG1デンドリマー(3.61 g, 3.35 mmol, 収率84.4 %,)を得た。さらに末端アミドG1デンドリマー(0.72 g, 0.67mmol)をKOH(2.39 g, 42.7mmol)存在下、H2O/MeOH溶媒中(13mL, H2O : MeOH = 1:4)で加水分解を行う事により目的の末端アミンG1デンドリマー(0.30 g, 0.60 mmol, 収率90 %,
【0069】
【表1】

)を得た。
<実施例2>
実施例1においてダイバージェント法で合成したG1デンドリマーを用いて、さらにダイバージェント法によって第4世代デンドリマーを合成した。
【0070】
すなわち、実施例1と同様に、末端アミンG1デンドリマーとジトリクロロアセトアミドベンゾフェノンをクロロベンゼンあるいはジオキサン中、DABCO存在下、四塩化チタンによる脱水縮合を行い、末端アミド第2世代デンドリマーの合成を行った。得られた末端アミド第2世代デンドリマーを同様に、KOH条件下、加水分解を行う事により末端アミン第2世代デンドリマーへと変換した。以下、脱水縮合反応と脱保護を繰り返す事により第3世代あるいは第4世代デンドリマーの合成を行った。
<実施例3>
実施例1においてダイバージェント法で合成したG1デンドリマーを用いて、既報のコンバージェント法により合成したG3デンドロンとの反応によって第4世代デンドリマーを合成した(図2)。すなわち、末端アミンG1デンドリマー(0.13 g, 0.26 mmol)と第3世代デンドロン(1.96 g, 1.56 mmol)をクロロベンゼン中、DABCO(1.40 g, 12.5 mmol)存在下125℃において、四塩化チタン(0.59 g, 3.12 mmol)による脱水縮合を行い、第4世代デンドリマーの合成を行った。なお、図2における質量分析のチャートは反応系のものであり、目的物の生成と原料以外の副生成物が見られない事を明らかとしている。
<実施例4>
次式に従いベンゾイル(Bz)エステル化デンドロンG2を合成した。
【0071】
【化22】

すなわち、ジヒドロキシベンゾフェノン(14.0 mmol)とベンゾイルクロライド(29.0 mmol)をトリエチルアミン(31.0 mmol)存在下、室温においてTHF中で反応させ、ジベンゾイルエステルベンゾフェノン(12.6 mmol, 90 %,
【0072】
【表2】

)を得た。得られたジベンゾイルエステルベンゾフェノン(4.73 mmol)とメチレンジアニリン(2.40 mmol)をクロロベンゼン中、DABCO(28.4 mmol)存在下125℃において、四塩化チタン(3.60 mmol)による脱水縮合を行い、末端エステルデンドロンG2前駆体(2.31 mmol, 96 %,
【0073】
【表3】

)を得た。末端エステルデンドロンG2前駆体(1.49 mmol)は過マンガン酸カリウム(9.5 mmol)、TBABr(4.65 mmol)を用いたジクロロエタン中での酸化反応により末端エステルデンドロンG2(1.30 mmol, 87 %,
【0074】
【表4】

)へと変換した。
【0075】
次いで、この末端エステルデンドロンG2を、次式に従って、実施例1に示した末端アミンデンドリマーG1と反応させ、末端ベンゾイルエステル基を加水分解し、末端ヒドロキシデンドリマーG3を合成した。
【0076】
【化23】

すなわち、末端エステルデンドロンG2(0.39 mmol)と末端アミンデンドリマーG1(0.098 mmol)をクロロベンゼン中、DABCO(4.39 mmol)存在下125℃において、四塩化チタン(0.55 mmol)による脱水縮合を行い末端エステルデンドリマーG3(0.031 mmol, 収率32 %)を合成した。得られた末端エステルデンドリマーG3(0.029 mmol)をKOH(0.46 mmol)存在下、MeOH/THF中で加水分解を行い、末端ヒドロキシデンドリマーG3(84 %)へと変換した。
<実施例5>
実施例4において合成した末端ヒドロキシデンドリマーG3を、次式に従い、ドデカエチレングリコールモノパラトルエンスルホネイト(Tosyl-PEG12)と反応させた。
【0077】
【化24】

得られた末端ヒドロキシデンドリマーG3(0.012 mmol)とドデカエチレングリコールモノパラトルエンスルホネイト(Tosyl-PEG12, 0.31 mmol)をK2CO3(0.34 mmol)存在下、DMF中で反応する事により末端PEG第3世代デンドリマー(56 %)を合成した。
【0078】
図3は得られた末端PEG第3世代デンドリマーの全体図と水中に溶けた様子を示した図、図4はMASSデータを示した図である。図3にも示したように、この末端PEG第3世代デンドリマーは水溶性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】従来のコンバージェント法におけるデンドロン合成のプロセスを例示した図である。
【図2】実施例3の反応プロセスと反応系のMALDI-TOF MASSデータを示した図である。
【図3】実施例5において得られた末端PEGデンドリマーの全体図と水中に溶けた様子を示した図である。
【図4】実施例5において得られた末端PEGデンドリマーのMASSデータを示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミン結合を介しての樹状分子構造が構成されている次式(1);
【化1】

(式中のR1は芳香環または複素環を有する有機基を示し、R2は水素原子または置換基を示し、mおよびnは、各々1以上の整数を示す。)
で表わされるフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成方法であって、以下の工程を含むことを特徴とするフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成方法。
<1a>次式(2);
【化2】

(式中のR1,mは前記のものを示す。)
で表わされるアミン化合物に対し、次式(3);
【化3】

(式中のA0は、保護基を有するアミノ基を示す。)
で表わされるケトン化合物を反応させて、次式(4);
【化4】

(式中のR1,A0,mは前記のものを示す。)
で表わされるイミン化合物を生成させる。
<1b>生成したイミン化合物の保護基を有するアミノ基A0の保護基を脱離させた後に、あるいは脱離させることなく、前記式(3)の化合物によるイミン結合形成反応をn回行う。
<1c>次いで生成した次式(5);
【化5】

(R1,A0,m,nは前記のものを示す。)
で表わされるイミン化合物の保護基を有するアミン基A0を、前記置換基R2に変換反応させる。
【請求項2】
イミン結合を介しての樹状分子構造が構成されている次式(1);
【化6】

(式中のR1は芳香環または複素環を有する有機基を示し、R2は水素原子または置換基を示し、mおよびnは各々1以上の整数を示す。)
で表わされるフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成方法であって、以下の工程を含むことを特徴とするフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成方法。
<2a>次式(2);
【化7】

(式中のR1,mは前記のものを示す。)
で表わされるアミン化合物に対し、次式(3);
【化8】

(式中のA0は、保護基を有するアミノ基を示す。)
で表わされるケトン化合物を反応させて、次式(4);
【化9】

(式中のR1,A0,mは前記のものを示す。)
で表わされるイミン化合物を生成させる。
<2b>生成したイミン化合物の保護基を有するアミノ基A0の保護基を脱離させた後に、あるいは脱離させることなく、前記式(3)の化合物によるイミン結合形成反応をk回(ただし、kは整数を示し、0≦k<n−1である)行う。
<2c>次いで、生成した次式(6);
【化10】

(R1,A0,m,kは前記のものを示す。)
で表わされるイミン化合物の保護基を有するアミノ基A0の保護基を脱離させた後に、あるいは脱離させることなく、次式(7);
【化11】

(式中のB0は保護基を有する置換基を示す。)
で表わされるケトン化合物と反応させて、次式(8);
【化12】

(式中のR1,B0,m,nは前記のものを示す。)
で表わされる化合物を生成させる。
<2d>保護基を有する置換基B0の保護基を脱離させた後に、あるいは脱離させることなく、前記置換基R2に変換反応させる。
【請求項3】
保護基を有する置換基B0は保護ヒドロキシル基であって、置換基R2は、ポリアルキレングリコール化反応によって形成された次式(9)
【化13】

(式中のR0は炭素鎖を、lは整数を示す。)
で表わされるものであることを特徴とする請求項2に記載のフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成方法。
【請求項4】
イミン結合を介しての樹状分子構造が構成されている次式(1);
【化14】

(式中のR1は芳香環または複素環を有する有機基を示し、R2は水素原子または置換基を示し、mおよびnは、各々1以上の整数を示す。)
で表わされるフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成方法であって、以下の工程を含むことを特徴とするフェニルアゾメチンデンドリマー(DPA)類の合成方法。
<3a>次式(2);
【化15】

(式中のR1,mは前記のものを示す。)
で表わされるアミン化合物に対し、次式(3)
【化16】

(式中のA0は、保護基を有するアミノ基を示す。)
で表わされるケトン化合物を反応させて、次式(4);
【化17】

(式中のR1,A0,mは前記のものを示す。)
で表わされるイミン化合物を生成させる。
<3b>生成したイミン化合物の保護基を有するアミノ基A0の保護基を脱離させた後に、あるいは脱離させることなく、前記式(3)の化合物によるイミン結合形成反応をp回(ただし、pは整数を示し、0≦p<nである)行う。
<3c>次いで、生成した次式(10);
【化18】

(R1,A0,m,pは前記のものを示す。)
で表わされるイミン化合物の保護基を有するアミノ基A0の保護基を脱離させた後に、あるいは脱離させることなく、次式(11);
【化19】

(Rは前記のものを示し、qは整数であって、1<q≦n−pを示す。)
で表わされるケトン化合物と反応させる。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−29753(P2009−29753A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196640(P2007−196640)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年3月12日 社団法人 日本化学会発行の「日本化学会第87春季年会 講演予稿集」に発表
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】