説明

フェンス

【課題】フェンスの支柱に人や車両が衝突した場合に、支柱から離れても、その反動で、支柱が人や車両に当たるおそれが少ないフェンスを提供する。
【解決手段】ベースプレート3上に支柱1を立設し、支柱1間にパネル体2を取付けたフェンスPであって、ベースプレート3を、支柱1の左右に相対向して立設された一対の立上り部32と、支柱1の前方に立設された支持部33と、支柱1の後方に立設された受け部34とから構成し、支柱1の下部11を立上り部32間に後傾可能に支持し、支柱1の下部11と支持部34との間に支柱1の下部11を後方へ付勢する弾性部材5を配置し、そして受け部33によって支柱1の前傾を阻止するようにフェンスPを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、工場、公園等の敷地境界部や隣地境界部に沿って取付けられるフェンスに関し、特にフェンスの支柱がベースプレートを介して立設されたフェンスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、住宅、駐車場等の敷地境界部や隣地境界部に沿って取付けられるフェンスにおいて、そのフェンス用支柱を設置する場合は、支柱下部にコンクリート基礎部を設けてこの基礎部を土中に埋設する方法が用いられている。
【0003】
これらの方法により設置されたフェンスでは、フェンス本体、あるいは支柱に自動車等の車輌が衝突すると、支柱が変形するばかりでなく、衝突した車輌に対しても変形等の不具合が生じるおそれがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、下端部に弾性体を介して傾動可能に植立された複数本の支柱と、その支柱間に配置された柵体と、その柵体と支柱の間を連結している連結体とからなり、その連結体がゴム様弾性体内に弛緩状態で抗張体を埋設された可動性防護柵が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用登録新案第2560885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記の可動性防護柵は、人が支柱に寄りかかったり、車両が支柱に衝突したりすれば、支柱が傾くと共にゴム様弾性体に弾性エネルギーとして吸収されるため、人や車両が支柱から離れると、弾性エネルギーが解放され、その反動で支柱が元の位置を超えて反対側に大きく傾いて、人や車両に当たるおそれがあり、その点が問題であった。
【0007】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、フェンスの支柱に人や車両が衝突した場合に、支柱から離れても、その反動で、支柱が人や車両に当たるおそれが少ないフェンスを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
【0009】
すなわちこの発明に係るフェンスは、間隔をおいて設置されたベースプレートに支柱がそれぞれ立設けられ、前記支柱間にパネル体が取付けられたフェンスであって、前記ベースプレートは、支柱の左右に相対向して立設された一対の立上り部と、支柱の前方に立設された支持部と、支柱の後方に立設された受け部とを備え、前記支柱の下部が前記立上り部間に後傾可能に支持されると共に、前記支柱の下部と支持部との間には該支柱の下部を後方へ付勢する弾性部材が配置され、かつ前記受け部は、支柱の前傾を阻止するようになされたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベースプレートに立設された支柱は、前記支柱の下部が前記立上り部間に後傾可能に支持されると共に、前記支柱の下部と支持部との間には該支柱の下部を後方へ付勢する弾性部材が配置されているので、支柱の前方から人や車両が衝突した場合は、弾性部材によって衝撃エネルギーを吸収しながら支柱が後傾し、人や車両が受ける衝撃を抑えることができると共に、前記受け部は、支柱の前傾を阻止するようになされているので、人や車両が支柱から離れて弾性部材に吸収された弾性エネルギーが開放されても、支柱は、反動的に前傾しにくくなり、前記反動で支柱が人や車両に当たるおそれが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るフェンスにおいて実施の一形態を示す背面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の主要部の説明図である。
【図4】図2のA−A断面における主要部の拡大断面図である。
【図5】図4の背面図である。
【図6】図3のB−B拡大断面図である。
【図7】図6において支柱の傾動状態を示す説明図である。
【図8】本発明に係るフェンスの変形を示す主要部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0013】
図1〜2において、1は支柱、2は支柱1間に取付けられるパネル体、3は支柱1が立設されるベースプレートであり、本発明に係るフェンスPは、主にこれら支柱1、パネル体2、及びベースプレート3から構成されている。支柱1は、本実施形態では強度的に安定しておりコストの安い角パイプ状の鋼管が用いられているが、丸パイプ状の鋼管でもよく、断面H字状の鋼材等からなる支柱でもよい。又ステンレス合金やアルミニウム合金等の他の金属から形成されたものでもよい。支柱1はベースプレート3に取付けられ、そして支柱1の間にパネル体2が取付けられている。
【0014】
パネル体2は、一般には、正面視矩形状の面部を有する金属板や格子状のパネル等が支柱1の間に取付けられて、パネル体2の前後で敷地境界部等を明示して、その境界部を容易に乗り越えて侵入できないものである。
【0015】
かかるパネル体2は、本実施形態では、多数の縦線材21と横線材22とが格子状に配置されると共に、縦線材21と横線材22とが交差する交差部において熔接により接合されたものである。縦線材21及び横線材22は、強度的に安定しておりコストの安い鋼線が好適に用いられるが、ステンレス合金アルミニウム合金などの他の金属からなる線材を用いてもよい。又、縦線材21及び横線材22の耐食性や耐候性を高めるために金属めっきや塗装が施されてもよい。
【0016】
図3は、図1における支柱1に対するパネル体2の取付構造を示しており、(a)は主要部の拡大正面図、(b)は(a)の側面図である。パネル体2を支柱1に取付けるための取付金具4は、本実施形態では、先端に折返し部41が形成されたJ字状のボルトB1が支柱1を前後に貫通し、前記折返し部41に支柱1の横線材22を係止すると共に、支柱1を貫通した棒状の螺子部42にナットN1を締め付けることによって、折返し部41と支柱1との間に前記横線材22を固定する。取付金具4は、本形態に限定されるものではなく、例えば、支柱1の前面に、上方に向けて開口する縦断面U字状を呈するフック等の係止部材を取付けた形態を挙げることができる。
【0017】
図4〜7は、図1におけるベースプレート3に対する支柱1の取付構造を示しており、図4は、図3のA−A断面における主要部の拡大図、図5は図3の(a)の主要部、図6は図4のB−B断面図、図7は図6において支柱1の傾動状態を示す説明図である。
【0018】
まずベースプレート3は、一般に地面、コンクリート基礎等の地表に設置され、支柱1を弾性的に後傾可能に支持し、かつ支柱1の前傾を阻止するものである。かかるベースプレート3は、地表に固定するための土台部31と、支柱1の左右に相対向して設けられた一対の立上り部32と、支柱1の後方に設けられた受け部33と、支柱1の前方に設けられた支持部34とを備えている。
【0019】
土台部31は、地表にベースプレート3を固定するためのものであり、本実施形態においては、地表に配置される底板部31aと底板部31aの背面から地中に埋設された基礎部Fに固定された固定部31bとを備えている。尚、土台部31は、地表に対して強固に固定されるものであればよく、例えば、基礎部Fにアンカーボルトを取付け、基礎部Fから突出するアンカーボルトが通る貫通孔を底板部31aに設けてナットを螺着させ、土台部31を基礎部Fに締結固定してもよい。また支柱1の下端12は、土台部31と隙間を
【0020】
立上り部32は、支柱1の下部11の左右に相対向して一対に設けられ、この立上り部32間に支柱1が後傾可能に該支柱1の下部11を支持するものである。本実施形態では、ボルトB2が一方の立上り部32のボルト孔32aから支柱1を左右に貫通して、もう一方の立上り部32のボルト孔32aを通り、ボルトB2のねじ端部にナットN2が螺着されている。これにより、支柱1はボルトB2を軸として軸支されている。ボルトB2の高さ位置は特に限定されるものではないが、車輌が衝突した際に支柱1が後傾する点を考慮すれば、車輌のバンパー等の接触部位よりに下方に位置していたほうが好ましい。また立上り部32は、支柱1の下端12と土台部31と間に隙間を設けて支持しており、支柱1が後傾する際、支柱1の下端12が土台部31の上面に接触しないようになされている。
【0021】
受け部33は、支柱1の後方に設けられ、支柱1が前傾する方向に移動する際に、それを阻止するためのものである。すなわち、本実施形態では、受け部33の前面は、支柱1がほぼ垂直に立設した際に、支柱1の背面側に沿うような受け面33aが形成されており、支柱1が垂直状態から前傾しないようにすることができる。
【0022】
また、図4に示すように、本実施形態では、一対の立上り部32と受け部33とは、一体的で後方に開口した断面コ字状に形成され、前記コ字状部の内に支柱1の下部11を収納できる支柱収納部35となされている。そして支柱収納部35を形成する壁部35の厚さは、支柱1を形成する部材の厚さよりも厚くなされている。これにより、支柱1に車輌等が衝突して支柱1に大きな衝撃力がかかった際、支柱収納部35より支柱1が変形しやすいので、取替作業の際に、ベースプレート3はそのままで支柱1のみを交換すればよく、ベースプレート3ごと交換する場合に比べて取替作業が容易でコスト削減となる。
【0023】
支持部34は、支柱1の前方に間隔をおいてに設けら、前記支持部34と支柱1との間には支柱1の下部11を後方へ付勢する弾性部材5が配置されている。これにより、人が支柱1に軽く触った程度の比較的小さな衝撃力では、前記弾性部材5の付勢力によって支柱1は容易には後傾ことはない。また、図7に示すように、支柱1の前方から人の接触や車両の衝突に伴う衝撃により支柱1がL方向に後傾した際、支柱1の下部11がボルトB2を軸として前方に回動して弾性部材5を前方に向けて押圧するので、弾性部材5は収縮して前記衝撃力を弾性エネルギーとして吸収する。そして、支柱1から前記の人や車輌が離れて、弾性部材5に吸収された弾性エネルギーが解放されて、支柱1がボルトB2を軸としてM方向に回動する際、支柱1の下部11の背面は前記受け部33の受け面33aに当接され前傾が抑えられる。これにより、反動的に支柱1が前記支柱1から離れた人や車輌に当たることを抑えることができる。
【0024】
弾性部材5は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、弾性部材5として板ばね51が支柱1の下部11と支持部34との間に配置されている。これにより、支柱1の下部11と支持部34との間隔が比較的狭くても、板ばね51の板厚や折り曲げ角度を調節することにより、弾性部材5としての弾性の程度を調節することができる。
【0025】
板ばね51は、一般的なV字型でもよいが、本実施形態では、板ばね51の折り部52に対して先端側の一方が内側に折り曲げられ、新たな折り部53が設けられると共に、その折り曲げ部が向かい合う内側壁に当接するようになされている。これにより、一般的なV字型と同程度の外形であっても弾性力を高めることができる。
【0026】
板ばね51は、本実施形態では、2個用いると共に、一方を上下反転されて配列したものであるが、必要な弾性力に応じて1個でもよく、3個以上でもよい。
【0027】
更に、図6に示すように、板ばね51と支持部34との間には中板6が配置されている。この中板6は、板ばね51の前面が当接される当接面61と、その反対側に支持部34の前方から螺入された調節ねじB2のねじ先端に押圧される押圧面62を備えている。そして、調節ねじB3を奥に螺入させることによって中板6を介して弾性部材5によって支柱1の下部11を後方へ付勢された状態となる。これにより、調整ねじB3の螺入寸法によって弾性部材5による支柱1の下部11への付勢の程度を調節することができ、支柱1が略垂直に立設している状態での支柱1の後傾のしやすさを調整することができる。
【0028】
例えば、人の通路に面している場所にフェンスPが設置される場合は、人が支柱1に触っても容易に後傾しないように、弾性部材5の初期の付勢力を高めたり、また駐車場の敷地境界部にフェンスPが設置される場合は、車輌が支柱1に接触しても車輌に傷が入りにくくなるように、弾性部材5の初期の付勢力を低くしたりすることができる。
【0029】
又、図4に示すように、本実施形態では、支持部34の両側端部から支柱収納部35の開口側端部とを繋ぐ連結壁部36が左右に相対して立設されている。これにより、板ばね51や中板6の幅寸法を連結壁部36間の離間距離よりやや短い程度にしておけば、板ばね51に付勢力が生じた場合に板ばね51や中板6の左右端部が前後方向にずれるような不具合を抑えることができる。
【0030】
ベースプレート3を構成する土台部31、立上り部32、受け部33、支持部34は、一般には強度的に安定しておりコストの安い鋼材を用いたものであるが、支柱1を支持できる強度を有するものであれば、ステンレス合金、アルミニウム合金等の他の金属を一部あるいは全部に用いたものでもよい。また本実施形態においては、立上り部32、受け部33、支持部34は、それぞれ土台部31上に一体的に立設されたものであるが、例えば、立上り部32、受け部33、支持部34を別体として作成し、土台部31あるいは他の部材を介して土台部31に取付けたものでもよい。
【0031】
図8は、本発明に係るフェンスPの変形を示し、ベースプレート3に取付けられるカバー部材7の説明図であり、(a)は部分分解側面図、(b)は(a)のC−C断面図である。カバー部材7は、ベースプレート3の支持部34及び連結壁部36の上端部に取付けられ、その下方に配置された弾性部材5を覆うものであって、天板71と天板71の外周に沿って設けられ、左右の連結壁部36及び支持部34の上端部の外側に配置される側壁部72とをそなえた蓋状に形成されている。かかるカバー部材7を支持部34及び連結壁部36の上から被せると共に、側壁部72に設けられたビス孔73から左右の連結壁部36及び支持部34の上端部に向けて固定ビスB4を螺入して、カバー部材7をベースプレート3に固定する。
【0032】
天板71は、支柱1が後傾した際、支柱1と天板71とが接触しないために、支柱1側の側端面から中央に向けて切り欠かれた切欠部74が形成されている。
【0033】
なお、天板71は、弾性部材5が外部から容易には見えにくく、弾性部材5に直接雨水が当たりにくいものであれば、本実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
1 支柱
11 下端部
2 フェンス体
21 縦線材
22 横線材
3 ベースプレート
31 土台部
32 立上り部
33 受け部
34 支持部
35 支柱収納部
5 弾性部材
51 板ばね
6 中板
7 カバー材
F 基礎部
P フェンス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて設置されたベースプレートに支柱がそれぞれ立設けられ、前記支柱間にパネル体が取付けられたフェンスであって、前記ベースプレートは、支柱の左右に相対向して立設された一対の立上り部と、支柱の前方に立設された支持部と、支柱の後方に立設された受け部とを備え、前記支柱の下部が前記立上り部間に後傾可能に支持されると共に、前記支柱の下部と支持部との間には該支柱の下部を後方へ付勢する弾性部材が配置され、かつ前記受け部は、支柱の前傾を阻止するようになされたことを特徴とするフェンス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−94340(P2011−94340A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247426(P2009−247426)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】