説明

フォトマスク及びその製造方法

【課題】漏れ光を抑制し、高い寸法精度及び位置精度を実現しうるフォトマスク及びその製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板の第1の領域上に形成されたデバイスパターンと、透明基板の第2の領域上に形成された周辺パターンと、周辺パターンが形成された領域の透明基板内に形成され、デバイスパターンをウェーハに露光する際に用いる露光光に対する周辺パターンの光透過部の透過率を、露光光に対するデバイスパターンの光透過部の透過率よりも低下させる改質層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスの高集積化に伴い、デバイスパターンの微細化が進んでいる。デバイスパターンの形成に用いるフォトマスクには、高い寸法精度及び位置精度を実現することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−304369号公報
【特許文献2】特開2006−220725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、露光光の短波長化に伴い、フォトマスクに形成されたデバイスパターンをウェーハへ転写する際、デバイスパターン領域以外の領域を通過する露光光(漏れ光、フレア)が増加してきた。この漏れ光により、ウェーハに不要なパターンが転写されたり、転写されるデバイスパターンの寸法や形状が変化したりすることがあった。
【0005】
本発明の目的は、漏れ光を抑制し、高い寸法精度及び形状を実現しうるフォトマスク及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一観点によれば、透明基板の第1の領域上に形成されたデバイスパターンと、前記透明基板の第2の領域上に形成された周辺パターンと、前記周辺パターンが形成された領域の前記透明基板内に形成され、前記デバイスパターンをウェーハに露光する際に用いる露光光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率を、前記露光光に対する前記デバイスパターンの光透過部の透過率よりも低下させる改質層とを有するフォトマスクが提供される。
【0007】
また、実施形態の他の観点によれば、透明基板の第1の領域上に、デバイスパターンを形成する工程と、前記透明基板の第2の領域上に、周辺パターンを形成する工程と、前記透明基板の前記第2の領域に選択的にイオン注入を行い、前記第2の領域の前記透明基板に、前記周辺パターンの光透過部の透過率を、前記デバイスパターンの光透過部の透過率よりも低下させる改質層を形成する工程とを有するフォトマスクの製造方法が提供される。
【0008】
また、実施形態の更に他の観点によれば、透明基板の第1の領域上に形成されたデバイスパターンと、前記透明基板の第2の領域上に形成された周辺パターンと、前記周辺パターンが形成された領域の前記透明基板内に形成され、前記デバイスパターンをウェーハに露光する際に用いる露光光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率が、前記露光光に対する前記デバイスパターンの光透過部の透過率よりも低く、マスクアライメント光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率が、前記露光光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率よりも高くなる改質層とを有するフォトマスクに、前記マスクアライメント光を照射してマスクアライメントを行う工程と、前記フォトマスクに前記露光光を照射して前記ウェーハ上のレジストを露光する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
開示のフォトマスク及びその製造方法によれば、フォトマスクに形成されたデバイスパターンをウェーハへ転写する際の漏れ光を抑制し、高い寸法精度及び位置精度でデバイスパターンを形成することができる。これにより、半導体装置の信頼性及び歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1実施形態によるフォトマスクの構造を示す平面図である。
【図2】図2は、第1実施形態によるフォトマスクの構造を示す断面図である。
【図3】図3は、マスクアライメントの方法を示す概略図である。
【図4】図4は、露光装置の観察機構により観察されたアライメントマークの一例を示す図である。
【図5】図5は、第1実施形態によるフォトマスクの製造工程を示す工程断面図(その1)である。
【図6】図6は、第1実施形態によるフォトマスクの製造工程を示す工程断面図(その2)である。
【図7】図7は、第1実施形態によるフォトマスクの製造工程を示す工程断面図(その3)である。
【図8】図8は、第1実施形態によるフォトマスクの製造工程を示す工程断面図(その3)である。
【図9】図9は、第2実施形態によるフォトマスクの構造を示す平面図である。
【図10】図10は、第2実施形態によるフォトマスクの構造を示す断面図である。
【図11】図11は、第2実施形態によるフォトマスクの製造工程を示す工程断面図(その1)である。
【図12】図12は、第2実施形態によるフォトマスクの製造工程を示す工程断面図(その2)である。
【図13】図13は、第2実施形態によるフォトマスクの製造工程を示す工程断面図(その3)である。
【図14】図14は、第2実施形態によるフォトマスクの製造工程を示す工程断面図(その4)である。
【図15】図15は、第2実施形態によるフォトマスクの製造工程を示す工程断面図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態によるフォトマスク及びその製造方法について図1乃至図8を用いて説明する。
【0012】
図1は、本実施形態によるフォトマスクの構造を示す平面図である。図2は、本実施形態によるフォトマスクの構造を示す断面図である。図3は、マスクアライメントの方法を示す概略図である。図4は、露光装置の観察機構により観察されたアライメントマークの一例を示す図である。図5乃至8は、本実施形態によるフォトマスクの製造工程を示す工程断面図である。
【0013】
はじめに、本実施形態によるフォトマスクの構造について図1及び図2を用いて説明する。なお、図2は、図1のA−A′線断面図である。
【0014】
本実施形態によるフォトマスクは、透明基板10上に、遮光層12によって所定のパターンが形成されたものである。透明基板10は例えばガラス基板であり、遮光層12は例えばクロム膜である。
【0015】
透明基板10上には、デバイスパターン領域14と、周辺パターン領域16とが設けられている。なお、図1はフォトマスクの一部分を示したものであり、実際には、デバイスパターン領域14を囲むように周辺パターン領域16が配置されている。
【0016】
デバイスパターン領域14は、半導体ウェーハに転写する所定のデバイスパターン18が形成された領域である。
【0017】
周辺パターン領域16には、種々の周辺パターンが形成されている。周辺パターンは、フォトマスクユーザ毎に必要とするパターンが異なっているため、名称や配置場所、内容は異なることがあり、特に限定されるものではない。周辺パターンの代表例としては、例えば、フォトマスク位置精度測定マーク、フォトマスクナンバリングやバーコード、マスクアライメントマーク(フェディシャルマーク)等が挙げられる。また、フォトマスクの欠陥検査時に使用するアライメントマーク、ハーフトーンマスク製造時などに使用する重ね描画時に使用するターゲットパターン、フォトマスク製造上に必要なパターン等が挙げられる。図1には、これら周辺パターンの例として、フォトマスクの位置合わせに用いられるアライメントパターン20、パターンの配置精度の測定に用いられる配置精度測定パターン22、及びフォトマスクの管理等に用いられるナンバリングパターン24を示している。
【0018】
図2に示すように、周辺パターン(アライメントパターン20、配置精度測定パターン22及びナンバリングパターン24)の光透過部(遮光層12が形成されていない領域)の透明基板10の表面部には、改質層26が形成されている。改質層26は、透明基板10の光学特性を変化するものである。改質層26の厚さは、例えば50nmである。
【0019】
なお、改質層26は、周辺パターンの光透過部の透明基板10の表面部のみならず、周辺パターン領域16の全体に形成されていてもよい。
【0020】
改質層26が形成された領域の透明基板10は、マスクアライメントに使用されるアライメント光の透過率は高いが、ウェーハ露光に使用される露光光の透過率が低くなっている。例えば、アライメント光としては、650nmや633nmの波長の光が用いられている。一方、露光光としては、例えば波長193nmのArFエキシマレーザ光や、波長248nmのKrFエキシマレーザ光が用いられている。
【0021】
次に、本実施形態によるフォトマスクの機能について図3及び図4を用いて説明する。
【0022】
ウェーハやフォトマスクのXY方向の誤差と回転のずれを修正して基準位置を合わせる作業を、アライメントという。アライメントには、フォトマスクのXY方向や回転のずれを補正するマスクアライメント(プリアライメント)と、ウェーハとフォトマスクの位置合わせを行うウェーハアライメントとがある。
【0023】
マスクアライメントでは、露光装置のフォトマスクステージ40上にフォトマスクを載置し、フォトマスクとフォトマスクステージ40との位置合わせを行う。フォトマスクには、予め遮光層12上に、ペリクル41を形成しておく。
【0024】
まず、露光装置の光源42からフォトマスクのアライメントマーク20に向けてマスクアライメント光を照射し、アライメントマーク20を通過したマスクアライメント光を観察機構44に投影・結像する。
【0025】
次いで、アライメントパターン20の投影像52と、観察機構44の所定位置に予め配された、アライメントパターン20に対応するパターン54とが合致するように、フォトマスクステージ40を移動させる。これにより、X,Y方向や回転のずれを補正し、フォトマスクの位置合わせを行う。
【0026】
ウェーハ露光では、露光装置のウェーハステージ(図示せず)上に、レジストが塗布されたウェーハを載置する。
【0027】
次いで、デバイスパターン領域14内のスクライブ領域に配置されたアライメントマークとウェーハ上のアライメントマークとをそれぞれ検出し、位置合わせを行いながらウェーハ上に形成されたレジストが露光される。
【0028】
この際、周辺パターン領域16にあるパターンに露光光が照射されないようにするために、アパーチャによる周辺パターン領域のブラインドが、ウェーハ露光前に行われる。
【0029】
こうして、半導体装置は製造される。
【0030】
しかしながら、近年の半導体デバイスの微細化により、露光光波長が短波長化し、ウェーハ露光の際のブラインドだけで漏れ光を抑制することが困難になってきた。この漏れ光は、周辺パターン領域16に形成されている各種パターンを透過した光が一因となっている。
【0031】
周辺パターン領域16に配置されたアライメントパターン20及び配置精度測定パターン22は、その性質上、デバイスパターン領域14の近傍に配される。これは、デバイスパターン領域14に近いほど、検査精度が向上するためである。そのため、デバイスパターン18をウェーハへ転写する際に、アライメントパターン20や配置精度測定パターン22を通過した露光光(漏れ光、フレア)がウェーハに到達することがある。これにより、不要なパターンが転写されたり、転写されたデバイスパターン18の形状や寸法が変化したりする。
【0032】
そこで、本実施形態によるフォトマスクでは、周辺パターン(アライメントパターン20、配置精度測定パターン22及びナンバリングパターン24)の光透過部(遮光層12が形成されていない領域)の透明基板10表面部に、改質層26を形成している。
【0033】
これにより、改質層26は、マスクアライメント光を透過する一方、ウェーハ露光光の透過を抑制することができる。即ち、本実施形態によるフォトマスクは、漏れ光による周辺パターンのウェーハへの転写や、転写されたデバイスパターン18の寸法及び形状の変化を防止することができる。
【0034】
改質層26は、透明基板10の表面にイオンを注入することにより形成することができる。注入するイオンとしては、例えばリンイオンやアルミニウムイオンやガリウムイオン等を用いることができる。
【0035】
透明基板10にイオンが注入されることにより、透明基板10の改質層26形成部の屈折率が変化する。これは、改質層26内のネットワーク構造の変化と、イオンを注入する際に形成された照射損傷のためである。改質層26の屈折率が高くなるようなイオンを注入することにより、反射増加効果が得られる。一般的に、波長の短い光ほど、反射面に対して屈折及び反射しやすくなる。また、イオンを注入することにより、改質層26の紫外光吸収が誘起される。
【0036】
このように、改質層26は、屈折率の増加及び紫外光の吸収により、短波長の光ほど、光の透過率を低減させることができる。
【0037】
デバイスパターン18をウェーハへ転写する際に用いられる露光光としては、KrFエキシマレーザ光やArFエキシマレーザ光が用いられる。KrFエキシマレーザ光の波長は、248nmである。ArFエキシマレーザ光の波長は、193nmである。露光光は、紫外光である。即ち、改質層26の屈折率の増加及び改質層26による露光光の吸収により、露光光は改質層26を透過しにくい。
【0038】
一方、フォトマスクと露光装置との位置合わせに用いられるマスクアライメント光としては、波長が633nm〜650nm等の光が用いられる。マスクアライメント光は、露光光と比べて長波長である。それ故、マスクアライメント光は、改質層26の屈折率の増加の影響を受けず、改質層26を透過することができる。また、マスクアライメント光は改質層26に吸収されない。即ち、マスクアライメント光は改質層26を容易に透過することができる。
【0039】
次に、本実施形態によるフォトマスクの製造方法について図5乃至図8を用いて説明する。
【0040】
まず、透明基板10を用意する。透明基板10としては、例えばガラス基板を用いることができる。
【0041】
次いで、透明基板10上に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚730nmのクロムを堆積する。これにより、クロム膜の遮光層12を形成する。
【0042】
次いで、遮光層12上に、例えばスピンコート法により、電子線レジスト膜60を形成する(図5(a)参照)。電子線レジスト膜60は、電子線ポジ型レジストでも電子線ネガ型レジストでもよい。
【0043】
次いで、例えば電子線リソグラフィ技術により、電子線レジスト膜60をパターニングする。これにより、デバイスパターン18を形成するための開口部64、アライメントパターン20を形成するための開口部64及び配置精度測定パターン22を形成するための開口部66を形成する(図5(b)参照)。開口部62,64,66の開口寸法は、デバイスパターン18、アライメントパターン20及び配置精度測定パターン22の形状に応じて適宜選択される。
【0044】
次いで、電子線レジスト膜60をマスクとして、例えばドライエッチングにより、遮光層12をエッチングする。これにより遮光層12にデバイスパターン18、アライメントパターン20、配置精度測定パターン22及びナンバリングパターン24を形成する(図5(c)参照)。
【0045】
次いで、例えばアッシングにより、電子線レジスト膜60を除去する(図6(a)参照)。
【0046】
次いで、遮光層12上に、例えばスピンコート法により、電子線レジスト膜68を形成する(図6(b)参照)。電子線レジスト膜68としては、電子線ポジ型レジストを用いる。
【0047】
次いで、例えば電子線リソグラフィ技術により、電子線レジスト膜68をパターニングする。これにより、電子線レジスト膜68に開口部70を形成する。また、アライメントパターン20及び配置精度測定パターン22が形成されている領域における透明基板10が露出する(図6(c)参照)。
【0048】
次いで、電子線レジスト膜68をマスクとしてイオン注入を行い、周辺パターン領域16の透明基板10の表面に、改質層26を形成する(図7(a)参照)。
【0049】
例えば、リンイオンを、加速電圧50keV、ドーズ量5×1015/cmの条件でイオン注入し、厚さ50nmの改質層26を形成する。なお、改質層26の厚さは、50nm以上でもよい。また、ドーズ量は、5×1015/cm以上であってもよい。
【0050】
或いは、アルミニウムイオンをイオン注入し、改質層26を形成する。改質層26に注入されるアルミニウムイオン濃度が8ppm以上となるようにイオン注入条件を適宜設定することにより、ArFエキシマレーザ光を用いた露光光の透過率を10%以下に抑制することができる。このときのマスクアライメント光の透過率は、90%以上である。
【0051】
或いは、例えばガリウムの集束イオンビーム(FIB、Focused Ion Beam)を照射し、改質層26を形成する。ガリウムを用いる場合のイオン照射条件としては、例えば加速電圧30keVとする。これにより、厚さ25nm程度の改質層26を形成することができる。
【0052】
ガリウムを用いたイオン注入においては、改質層26の厚さと加速電圧との関係は、下記の式(1)により表される。
【0053】
D=0.58×V+6.7・・・(1)
式中、Dは改質層26の厚さ(nm)を表し、Vは加速電圧(keV)を表す。
【0054】
加速電圧は、必要とされる改質層26の厚さに応じて、式(1)に基づき適宜設定することが望ましい。その際、所望の改質層26の厚さとなる加速電圧の値より大きな加速電圧を印加することが望ましい。
【0055】
次いで、例えばアッシングにより、電子線レジスト膜68を除去する(図7(b)参照)。
【0056】
こうして、本実施形態によるフォトマスクが製造される。
【0057】
なお、電子線レジスト膜68のパターニング工程及び改質層26の形成工程は、以下のようにしてもよい。
【0058】
例えば電子線リソグラフィ技術により、電子線レジスト膜68をパターニングする。これにより、アライメントパターン20と同様の形状の開口部72及び配置精度測定パターン22と同様の形状の開口部74を形成する(図8(a)参照)。
【0059】
次いで、透明基板10の表面に、図7(a)を用いて上述した改質層26の形成方法と同様の方法により、改質層26を形成する(図8(b)参照)。
【0060】
このように、本実施形態によれば、周辺パターン領域16における透明基板10の表面に、透明基板の光学特性を変化する改質層26を形成するので、露光光が周辺パターン領域16を透過するのを防止することができる。これにより、デバイスパターンをウェーハへ転写する際の漏れ光を効果的に抑制し、高い寸法精度及び位置精度でデバイスパターンを形成することができ、ひいては半導体装置の信頼性及び歩留まりを向上することができる。
【0061】
[第2実施形態]
第2実施形態によるフォトマスクについて図9乃至図15を用いて説明する。図1乃至図8に示す第1実施形態によるフォトマスクと同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0062】
図9は、本実施形態によるフォトマスクの構造を示す平面図である。図10は、本実施形態によるフォトマスクの構造を示す断面図である。図11乃至図15は、本実施形態によるフォトマスクの製造工程を示す工程断面図である。
【0063】
はじめに、本実施形態によるフォトマスクの構造について図9乃至図10を用いて説明する。なお、図10は、図9におけるA−A′線断面図である。
【0064】
本実施形態によるフォトマスクは、透明基板10上に、位相シフト層80及び遮光層12によって所定のパターンが形成されたものである。位相シフト層80は、例えばハーフトーン型位相シフタである。
【0065】
透明基板10上には、デバイスパターン領域14と周辺パターン領域16とが設けられている。図9は、フォトマスクの一部分を示したものであり、実際には、デバイスパターン領域14を囲むように周辺パターン領域16が形成されている。
【0066】
デバイスパターン領域14においては、遮光層12が除去されており、位相シフト層80によってデバイスパターン18が形成されている。
【0067】
周辺パターン領域16においては、遮光層12と位相シフト層80との積層膜によって周辺パターンが形成されている。周辺パターンは、第1実施形態によるフォトマスクの周辺パターンと同様に特に限定されるものではない。図9には、周辺パターンの例として、アライメントパターン20、配置精度測定パターン22及びナンバリングパターン24を示している。
【0068】
図10に示すように、周辺パターンの光透過部の透明基板10の表面には、第1実施形態によるフォトマスクと同様に、改質層26が形成されている。改質層26の厚さは、例えば50nmである。
【0069】
改質層26は、第1実施形態において説明したように、マスクアライメント光を透過する一方、露光光の透過を抑制することができる。即ち、本実施形態によるフォトマスクは、漏れ光による周辺パターンのウェーハへの転写や、転写されたデバイスパターン18の寸法及び形状の変化を防止することができる。
【0070】
次に、本実施形態によるフォトマスクの製造方法について図11乃至図15を用いて説明する。
【0071】
まず、透明基板10を用意する。透明基板10としては、例えばガラス基板を用いることができる。
【0072】
次いで、透明基板10上に、例えば反応性スパッタリング法により、例えば膜厚690nmのMoSi膜を形成する。これにより、透明基板10上にハーフトーン型位相シフタの位相シフト層80を形成する。
【0073】
次いで、位相シフト層80上に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚590nmのクロムを堆積する。これにより、クロム膜の遮光層12を形成する。
【0074】
次いで、遮光層12上に、例えばスピンコート法により、電子線レジスト膜81を形成する(図11(a)参照)。電子線レジスト膜81は、電子線ポジ型レジストでも電子線ネガ型レジストでもよい。
【0075】
次いで、例えば電子線リソグラフィ技術により、電子線レジスト膜81をパターニングする。これにより、デバイスパターン18を形成するための開口部64、アライメントパターン20を形成するための開口部64及び配置精度測定パターン22を形成するための開口部66を形成する(図11(b)参照)。開口部62,64,66の開口寸法は、デバイスパターン18、アライメントパターン20及び配置精度測定パターン22の形状に応じて適宜選択される。
【0076】
次いで、電子線レジスト膜81をマスクとして、例えばドライエッチングにより、遮光層12をエッチングする(図11(c)参照)。
【0077】
次いで、電子線レジスト膜81をマスクとして、例えばCF4、C26等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、位相シフト層80をエッチングする。これにより、デバイスパターン18、アライメントパターン20、配置精度測定パターン22及びナンバリングパターン24を形成する(図11(d)参照)。
【0078】
次いで、例えばアッシングにより、電子線レジスト膜81を除去する(図12(a)参照)。
【0079】
次いで、遮光層12上に、例えばスピンコート法により、電子線レジスト膜82を形成する(図12(b)参照)。
【0080】
次いで、例えば電子線リソグラフィ技術により、電子線レジスト膜82をパターニングする。これにより、デバイスパターン領域14の形状に応じた開口部84を形成する(図12(c)参照)。
【0081】
次いで、電子線レジスト膜82をマスクとして、例えばドライエッチングにより、遮光層12をエッチングする(図13(a)参照)。
【0082】
次いで、例えばアッシングにより、電子線レジスト膜82を除去する(図13(b)参照)。
【0083】
次いで、遮光層12上に、例えばスピンコート法により、電子線レジスト膜86を形成する(図13(c)参照)。電子線レジスト膜86としては、電子線ポジ型レジストを用いる。
【0084】
次いで、例えば電子線リソグラフィ技術により、電子線レジスト膜86をパターニングする。これにより、電子線レジスト膜86に開口部88を形成する。また、アライメントパターン20及び配置精度測定パターン22が形成されている領域における透明基板10が露出する(図14(a)参照)。
【0085】
次いで、電子線レジスト膜86をマスクとして、図7(a)を用いて上述したイオン注入と同様のイオン注入を行い、周辺パターン領域16の透明基板10の表面に、改質層26を形成する(図14(b)参照)。
【0086】
次いで、例えばアッシングにより、電子線レジスト膜86を除去する(図14(c)参照)。
【0087】
こうして、本実施形態によるフォトマスクは製造される。
【0088】
なお、電子線レジスト膜86のパターニング工程及び改質層26の形成工程は、以下のようにしてもよい。
【0089】
電子線レジスト膜86に、図8(a)を用いて上述した電子線レジスト膜68のパターニング方法と同様にして、アライメントパターン20と同様の形状の開口部72及び配置精度測定パターン22と同様の形状の開口部74を形成する(図15(a)参照)。
【0090】
次いで、周辺パターン領域16の透明基板10の表面に、図7(a)を用いて上述した改質層26の形成方法と同様の方法により、改質層26を形成する(図15(b)参照)。
【0091】
このように、本実施形態によれば、周辺パターン領域16における透明基板10の表面に、透明基板の光学特性を変化する改質層26を形成するので、露光光が周辺パターン領域16を透過するのを防止することができる。これにより、デバイスパターンをウェーハへ転写する際の漏れ光を効果的に抑制し、高い寸法精度及び位置精度でデバイスパターンを形成することができ、ひいては半導体装置の信頼性及び歩留まりを向上することができる。
【0092】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0093】
例えば上記実施形態では、改質層26を形成するための物質として、リン、ガリウム又はアルミニウムを用いたが、適用可能な物質はこれらに限定されるものではない。例えば、これら物質のほか、アルカリ金属やアルカリ土類金属や遷移金属を用いることができる。これらの金属元素は紫外光や真空紫外光を吸収する性質を有するため、これらを用いた改質層26によって露光光の透過率を低減させることができる。
【0094】
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。遷移金属としては、例えばチタン、クロム、鉄、ニッケル、バナジウム、マンガン、コバルト等が挙げられる。
【0095】
また、これら金属元素のみならず、シリコン及び酸素以外の他の元素を用いてもよい。シリコン及び酸素イオン以外の物質のなかにも紫外線を吸収する性質を有するものがあり、これらを用いた改質層26によって露光光の透過率を低減させることができる。
【0096】
また、注入するイオンは1種類に限定されるものではなく、複数種類のイオンを用いてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、総ての周辺パターン領域16の透明基板10の表面に改質層26を形成したが、実験に基づいて改質層26が必要と判断された領域の透明基板10の表面に改質層26を形成してもよい。
【0098】
また、例えばハードマスク等を用いた多層フォトマスクにおいては、周辺パターン領域16の光透過部の表面が透明基板10以外の層である場合がある。このような場合には、実験に基づいて改質層26必要と判断された領域の光透過部の表面に改質層26を形成すればよい。
【0099】
また、第2実施形態では、周辺パターン領域16の光透過部の表面は透明基板10であったが、露光光の透過性を低下させるために光透過部に位相シフト層80を残す場合がある。このような場合には、実験に基づいて改質層26が必要とされる領域の位相シフト層80の表面に改質層26を形成するようにしてもよい。
【0100】
また、位相シフト層80として、レベンソン型位相シフタを用いる場合においては、第1実施形態によるフォトマスクの製造方法と同様の製造方法により、所望のフォトマスクを製造することができる。
【0101】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0102】
(付記1) 透明基板の第1の領域上に形成されたデバイスパターンと、
前記透明基板の第2の領域上に形成された周辺パターンと、
前記周辺パターンが形成された領域の前記透明基板内に形成され、前記デバイスパターンをウェーハに露光する際に用いる露光光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率を、前記露光光に対する前記デバイスパターンの光透過部の透過率よりも低下させる改質層と
を有することを特徴とするフォトマスク。
【0103】
(付記2)
付記1記載のフォトマスクにおいて、 前記フォトマスクを位置合わせする際に用いるマスクアライメント光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率は、前記露光光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率よりも高い
ことを特徴とするフォトマスク。
【0104】
(付記3) 付記2記載のフォトマスクにおいて、
前記マスクアライメント光は、前記露光光よりも長波長である
ことを特徴とするフォトマスク。
【0105】
(付記4) 付記3記載のフォトマスクにおいて、
前記改質層は、リン、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属を含む群から選択される少なくとも1つの物質を含む
ことを特徴とするフォトマスク。
【0106】
(付記5) 付記1乃至4のいずれか1項に記載のフォトマスクにおいて、
前記露光光は、ArFエキシマレーザ光又はKrFエキシマレーザ光である
ことを特徴とするフォトマスク。
【0107】
(付記6) 付記1乃至5のいずれか1項に記載のフォトマスクにおいて、
前記デバイスパターン及び前記周辺パターンは、前記透明基板上に形成された遮光層により形成さている
ことを特徴とするフォトマスク。
【0108】
(付記7) 付記1乃至5のいずれか1項に記載のフォトマスクにおいて、
前記デバイスパターンは、前記透明基板上に形成された位相シフト層により形成され、
前記周辺パターンは、前記透明基板上に形成された遮光層及び位相シフト層により形成されている
ことを特徴とするフォトマスク。
【0109】
(付記8) 透明基板の第1の領域上に、デバイスパターンを形成する工程と、
前記透明基板の第2の領域上に、周辺パターンを形成する工程と、
前記透明基板の前記第2の領域に選択的にイオン注入を行い、前記第2の領域の前記透明基板に、前記周辺パターンの光透過部の透過率を、前記デバイスパターンの光透過部の透過率よりも低下させる改質層を形成する工程と
を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【0110】
(付記9) 付記8記載のフォトマスクの製造方法において、
前記改質層を形成する工程では、リン、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属を含む群から選択される少なくとも1つの物質をイオン注入し、前記改質層を形成する
ことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【0111】
(付記10) 付記8又は9記載のフォトマスクの製造方法において、
前記改質層を形成する工程は、前記周辺パターンをマスクとして、前記透明基板にイオン注入を行う
ことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【0112】
(付記11) 透明基板の第1の領域上に形成されたデバイスパターンと、前記透明基板の第2の領域上に形成された周辺パターンと、前記周辺パターンが形成された領域の前記透明基板内に形成され、前記デバイスパターンをウェーハに露光する際に用いる露光光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率が、前記露光光に対する前記デバイスパターンの光透過部の透過率よりも低く、マスクアライメント光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率が、前記露光光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率よりも高くなる改質層とを有するフォトマスクに、前記マスクアライメント光を照射してマスクアライメントを行う工程と、
前記フォトマスクに前記露光光を照射して前記ウェーハ上のレジストを露光する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0113】
10…透明基板
12…遮光層
14…デバイスターン領域
16…周辺パターン領域
18…デバイスパターン
20…アライメントパターン
22…配置精度測定パターン
24…ナンバリングパターン
26…改質層
40…フォトマスクステージ
41…ペリクル
42…光源
44…観察機構
52…投影像
54…パターン
60…電子線レジスト膜
62,64,66…開口部
68…電子線レジスト膜
70,72,74…開口部
81,82…電子線レジスト膜
84…開口部
86…電子線レジスト膜
88…開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の第1の領域上に形成されたデバイスパターンと、
前記透明基板の第2の領域上に形成された周辺パターンと、
前記周辺パターンが形成された領域の前記透明基板内に形成され、前記デバイスパターンをウェーハに露光する際に用いる露光光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率を、前記露光光に対する前記デバイスパターンの光透過部の透過率よりも低下させる改質層と
を有することを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
請求項1記載のフォトマスクにおいて、
前記フォトマスクを位置合わせする際に用いるマスクアライメント光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率は、前記露光光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率よりも高い
ことを特徴とするフォトマスク。
【請求項3】
請求項1又は2記載のフォトマスクにおいて、
前記改質層は、リン、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属を含む群から選択される少なくとも1つの物質を含む
ことを特徴とするフォトマスク。
【請求項4】
透明基板の第1の領域上に、デバイスパターンを形成する工程と、
前記透明基板の第2の領域上に、周辺パターンを形成する工程と、
前記透明基板の前記第2の領域に選択的にイオン注入を行い、前記第2の領域の前記透明基板に、前記周辺パターンの光透過部の透過率を、前記デバイスパターンの光透過部の透過率よりも低下させる改質層を形成する工程と
を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項5】
透明基板の第1の領域上に形成されたデバイスパターンと、前記透明基板の第2の領域上に形成された周辺パターンと、前記周辺パターンが形成された領域の前記透明基板内に形成され、前記デバイスパターンをウェーハに露光する際に用いる露光光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率が、前記露光光に対する前記デバイスパターンの光透過部の透過率よりも低く、マスクアライメント光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率が、前記露光光に対する前記周辺パターンの光透過部の透過率よりも高くなる改質層とを有するフォトマスクに、前記マスクアライメント光を照射してマスクアライメントを行う工程と、
前記フォトマスクに前記露光光を照射して前記ウェーハ上のレジストを露光する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−237869(P2012−237869A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106643(P2011−106643)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】