説明

フォトリフラクティブ組成物の光を外部バイアス電圧なしで変調する方法

【課題】大きな外部バイアス電圧の印加を必要とすることなく、優れたフォトリフラクティブ特性を提供する材料を含む光学装置を提供すること。
【解決手段】光を変調する方法であって、増感剤とポリマーとを含むフォトリフラクティブ組成物を提供する工程であって、ここで、増感剤は、アントラキノン、2−ニトロ−9−フルオレノンおよび2,7−ジニトロ−9−フルオレノンからなる群から選択される少なくとも1つを含む工程、ならびにレーザーでフォトリフラクティブ組成物を照射する工程を含む、方法。フォトリフラクティブ組成物は、外部バイアス電圧を使用することなく回折格子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2008年10月20日に出願された、発明の名称が「METHOD FOR MODULATING LIGHT OF PHTOREFRACTIVE COMPOSITION WITHOUT EXTERNAL BIAS VOLTAGE」の米国仮特許出願第61/106,859号の優先権を主張し、その内容は、引用により本明細書中にその全体が援用される。
【0002】
本発明は、増感剤とポリマーとを含むフォトリフラクティブ組成物を用いて、フォトリフラクティブ組成物中に回折格子を形成する方法に関する。フォトリフラクティブ組成物は、レーザー照射によりフォトリフラクティブとなり、外部バイアス電圧を使うことなく回折格子を提供するように構成することが可能である。ポリマーは、カルバゾール部分、テトラフェニルジアミノビフェニル部分、およびトリフェニルアミン部分からなる群から選択される部分を含む繰り返し単位を含む。その組成物の実施形態は、ホログラフィックデータ記憶および画像記録材料を含むいろいろな用途および装置に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
光屈折性(フォトリフラクティブ特性)は、ある材料の屈折率がレーザービーム照射などにより、その材料内の電界を変えることによって変更されうる現象である。その屈折率の変化は、以下のものを典型的に含む:(1)レーザー照射による電荷発生、(2)正電荷および負電荷の分離をもたらす電荷輸送、(3)1種の電荷の捕獲(電荷非局在化)、(4)電荷の非局在化の結果として不平等内部電界(空間電荷電界)の形成、および(5)不平等電界によって誘発された屈折率変化。優れたフォトリフラクティブ特性は、優れた、電荷発生、電荷輸送あるいは光導電性、および電気光学活性を組み合わせた材料に典型的に見られる。フォトリフラクティブ材料は、高密度光データ記憶、ダイナミックホログラフィー、光学画像処理、位相共役鏡、光コンピューター、並列光論理、およびパターン認識などの多くの将来性がある用途を有している。特に、長期にわたる回折格子の挙動は、高密度光データ記憶またはホログラフィック表示アプリケーションのために大いに貢献することができる。
【0004】
元来、そのフォトリフラクティブ効果は、LiNbOなどの様々な無機電気光学結晶の中に見つけられた。これらの材料では、内部空間電荷電界による屈折率変調の機構は、線形電気光学効果に基づいている。
【0005】
1990年および1991年に、最初の有機フォトリフラクティブ結晶および高分子フォトリフラクティブ材料が発見され、報告された。そのような材料は、例えば、米国特許第5,064,264号に開示されており、その内容は、引用によりその全体が本明細書に援用される。有機フォトリフラクティブ材料は、元来の無機フォトリフラクティブ結晶に比べて、大きな光学非線形性、低誘電率、低コスト、軽量、構造柔軟性、および装置組み立ての容易性など多くの利点を提供する。その用途に応じて好ましいとされる他の重要な特徴として、十分に長い寿命、光学的品質、および熱安定性が挙げられる。これらの活性有機ポリマーは、先進情報および通信技術のための重要な材料として浮かび上がっている。
【0006】
近年、有機のフォトリフラクティブ材料、特にポリマーのフォトリフラクティブ材料の特性を改善するために努力が払われている。これらの特性のそれぞれを与える成分の選択および組み合わせを調べる様々な研究が行われている。光導電性能は、カルバゾール基を含む材料を配合することによって提供されうる。フェニルアミン基もまた、その材料の電荷輸送部分として使用することができる。
【0007】
フォトリフラクティブ組成物は、望ましい個々の特性を提供する分子成分をホストポリマーマトリックスに混合することによって作ることが可能である。しかし、先に調製された組成物は一般に、大きな外部電界を用いて書き込まれ、読み出さなければならない。いろいろなホログラフィックアプリケーション(例えば、データ記憶)については、データを読むために大量の電圧を使うことは、データを失うか、さもなければデータに障害を引き起こす危険性をもたらす。したがって、外部バイアス電圧を印加することなくフォトリフラクティブである組成物を提供するための努力がなされてきた。
【0008】
米国特許出願公開第2008/0039603号および米国特許第6,653,421号(それらの内容は、引用によりその全体が両方共、本明細書に援用される)は、(メタ)アクリレート系ポリマーおよびコポリマー系材料を開示しており、これらは、それぞれ緑色レーザーおよび赤色レーザーに感受性がある。特開2006−171320号公報および特開2004−258604号公報は、両方とも、PVKおよびカルバゾール型フォトリフラクティブ組成物を作る方法を開示している。
【0009】
また、いくつかのフォトリフラクティブポリマーは、Pengらの“Synthesis and Characterization of Photorefractive Polymers Containing Transition Metal Complexes as Photosensitizer,”J.Amer.Chem.Soc.,119(20),4622(1997)およびDarracqらの“Stable photorefractive memory effect in sol−gel materials,”Appl.Phys.Lett.,70,292(1997)に先に示された。回折格子を長期保持する材料は、照射された後、数時間も、数日さえもの間、回折格子信号挙動を示す能力を備えている。これらの特性を有する光学装置は、いろいろな用途(例えば、データまたは画像記憶)に有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、大きな外部バイアス電圧の印加を必要とすることなく、優れたフォトリフラクティブ特性を提供する材料を含む光学装置に対する必要性が依然として存続する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの実施形態は、フォトリフラクティブ組成物およびそれを使用する方法を提供することにあり、そこでは、大きな外部バイアス電圧の使用を必要とすることなく、回折格子を書き込み、回折格子信号を読み出すことができる。さらに、回折格子は、長期間、例えば数時間から数日にもわたってホログラフィック用途のために保持され得る。本明細書で記述される有機系材料およびホログラフィック媒体の実施形態は、可視光レーザービーム、特に約500nm〜約700nmの波長を有する光に応答して優れた回折効率を示す。連続波レーザーシステムに感受性があるそのような材料の有用性は、いろいろな産業上の用途に大いに有益であって、役に立つことができる。
【0012】
1つの実施形態は、フォトリフラクティブ組成物中に回折格子を形成する方法を提供し、その方法は、可視光レーザービームに応答するフォトリフラクティブ組成物を提供する工程を含み、そこでは、フォトリフラクティブ組成物は、増感剤と優れた相安定性を示す正孔移動型ポリマーとを含む。1つの実施形態では、増感剤は、アントラキノン、2−ニトロ−9−フルオレノンおよび2,7−ジニトロ−9−フルオレノンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、そして、ポリマーは、カルバゾール部分、テトラフェニルジアミノビフェニル部分、およびトリフェニルアミン部分からなる群から選択される部分を含む少なくとも1つの繰り返し単位を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ホログラフィックデータ記憶などのホログラフィック用途に画像記録材料として、および光学装置において使用することができる。1つの実施形態では、方法は、外部バイアス電圧を印加することなく、フォトリフラクティブ組成物を可視光レーザービームで照射する工程を含む。回折格子は、照射の際にフォトリフラクティブ組成物中に形成される。光は、回折格子形成の際に変調される。
【0013】
1つの実施形態では、フォトリフラクティブ組成物中のポリマーは、以下の式からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む繰り返し単位を含む:
【化1】

【化2】

(式(Ia)、(Ib)および(Ic)中の各Qは、独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンを表し;式(Ia)、(Ib)および(Ic)中のRa〜Ra、Rb〜Rb27、およびRc〜Rc14は、それぞれ独立して、水素、直鎖状もしくは分岐状の場合により置換されたC〜C10アルキルまたはヘテロアルキル、および場合により置換されたC〜C10アリールからなる群から選択される)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
従来のフォトリフラクティブ組成物は、大きな外部バイアス電圧を印加する可視光レーザービーム照射に応答性である。しかし、本明細書に記述される好ましいフォトリフラクティブ組成物は、外部バイアス電圧をほとんどあるいは全く使用しないで、可視光レーザービームに対してフォトリフラクティブ挙動を示す。1つの実施形態では、フォトリフラクティブ組成物は、増感剤とポリマーとを含む。1つの実施形態では、ポリマーは、上記したように、カルバゾール部分(式(Ia)によって表される)、テトラフェニルジアミノビフェニル部分(式(Ib)によって表される)、およびトリフェニルアミン部分(式(Ic)によって表される)からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む第1繰り返し単位を含む。
【0015】
式(Ia)、(Ib)、および(Ic)中のアルキル基、ヘテロアルキル基、またはアリール基のそれぞれは、1つ以上の置換基で「場合により置換される」ことができる。置換される場合には、置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、およびアミノ(モノ−およびジ−置換アミノ基を含む)、ならびにそれらの保護された誘導体から個々に、独立して選択された1つ以上の基である。置換基の非限定的な例としては、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、ペントキシド、およびフェニルが挙げられる。
【0016】
本明細書中で記述される様々な式(式(Ia)、(Ib)、および(Ic)を含む)中のQにより表されるアルキレン基またはヘテロアルキレン基は、1から約20までの炭素原子を含むことができる。1つの実施形態では、式(Ia)、(Ib)、および(Ic)中のQは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、およびヘプチレンからなる群から選択され、それらは各々、O、N、またはSなどのヘテロ原子を場合により含んでいてもよい。ヘテロアルキレン基は、1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。O、N、S、およびそれらの任意の組み合わせを含めて、いかなるヘテロ原子やヘテロ原子のいかなる組み合わせでも使用することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、式(Ia)、(Ib)、および(Ic)のうちの少なくとも1つを含む第1繰り返し単位を含むポリマーは、フォトリフラクティブ組成物の電荷輸送成分を形成するように重合または共重合されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、それらの部分の1つだけを単独で含む第1繰り返し単位を含むポリマーは、フォトリフラクティブポリマーを形成するために重合できる。いくつかの実施形態では、例えば、2つ以上の部分は、また、フォトリフラクティブポリマーを形成するためにコポリマー中に存在していてもよい。これらの部分のうちの1つ、2つ、または3つさえをも含むポリマーまたはコポリマーは、好ましくは、電荷輸送能を有する。
【0018】
式(Ia)、(Ib)、および(Ic)の部分は、それぞれ、ポリマー骨格に結合することができる。ポリウレタン、エポキシポリマー、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリシロキサン、およびポリアクリレートを含むけれども、それらに制限されない多くのポリマー骨格は、適切な側鎖が結合しており、フォトリフラクティブ組成物のポリマーを作るために使用できる。いくつかの実施形態は、アクリレートまたはスチレンに基づく骨格単位を含み、好ましい骨格単位のいくつかは、アクリレート系モノマーから形成され、いくつかは、メタクリレートモノマーから形成される。ポリマー自体に光導電性を含む最初のポリマー材料は、アリゾナ大学で開発されたポリビニルカルバゾール材料であったと考えられている。しかしながら、これらのポリビニルカルバゾールポリマーは、フォトリフラクティブ装置での使用のためにポリマーをフィルムまたは他の形状とするのに使用されるいくつかの熱処理方法に付された場合、粘着性が生じる傾向がある。
【0019】
本明細書に記述される実施形態で使用される(メタ)アクリレート系ポリマーおよびアクリレート系ポリマーは、改善された熱的特性および機械的特性を有する。本明細書に記述されるポリマーは、特にポリマーがラジカル重合で調製されるとき、射出成形または押し出しによる加工の間、優れた耐久性と加工性を提供する。いくつかの実施形態は、増感剤および可視光レーザービームによる照射の際に活性化されるフォトリフラクティブポリマーを含む組成物を提供し、ここで、該フォトリフラクティブポリマーは、以下の式からなる群から選択される繰り返し単位を含む。
【化3】

【化4】

【0020】
1つの実施形態では、式(Ia’)、(Ib’)および(Ic’)中の各Qは、独立して、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表す。1つの実施形態では、式(Ia’)、(Ib’)および(Ic’)中のRa〜Ra、Rb〜Rb27、およびRc〜Rc14は、それぞれ独立して、水素、直鎖状または分岐状の場合により置換されたC〜C10アルキルまたはヘテロアルキル、および場合により置換されたC〜C10アリールからなる群から選択される。ヘテロアルキレン基またはヘテロアルキル基中のヘテロ原子は、S、N、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、式(Ia’)、(Ib’)および(Ic’)のうちの少なくとも1つの部分を含む少なくとも1つの繰り返し単位を含むポリマーもまた、電荷輸送能を提供するフォトリフラクティブポリマーを形成するために重合または共重合することができる。いくつかの実施形態では、フェニルアミン誘導体を含むモノマーを共重合して、同様に電荷輸送成分を形成することができる。そのようなモノマーの非限定的な例は、カルバゾリルプロピル(メタ)アクリレートモノマー;4−(N,N−ジフェニルアミノ)−フェニルプロピル(メタ)アクリレート;N―[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N,N’,N’−トリフェニル(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;N−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル−N’−フェニル−N,N’−ジ(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;およびN−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル−N’−フェニル−N,N’−ジ(4−ブトキシフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミンである。これらのモノマーは、それら自身によるポリマーの生成のために、あるいは例えば、2つ以上のモノマーの混合物の重合によるコポリマー−の生成のために使用することができる。
【0022】
好ましい実施形態では、本明細書で記述されるフォトリフラクティブ組成物は、増感剤の配合により、可視光レーザービームでの照射の際にフォトリフラクティブとなるように構成されるか、または処方される。本明細書で記述される増感剤はまた、外部バイアス電圧を用いることなく回折格子が組成物に書き込まれ、組成物から読み出されることを可能にする。1つの実施形態において、組成物は、外部バイアス電圧なしに回折格子を提供し得るように処方される。1つの実施形態では、フォトリフラクティブ組成物は、そのフォトリフラクティブ組成物へ照射された回折格子が外部バイアス電圧の印加なしに読み出され得るように処方される。増感剤は、ポリマーとの混合物として組成物に添加することができ、そして/または、例えば、共有結合または他の結合によりポリマーへ直接的に結合することができる。
【0023】
1つの実施形態では、増感剤は、アントラキノン、2−ニトロ−9−フルオレノン、および2,7−ジニトロ−9−フルオレノンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【化5】

【化6】

【0024】
上述の増感剤の1つ以上の任意の組み合わせを用いることができ、増感剤の全量は、変動しうる。1つの実施形態では、フォトリフラクティブ組成物中の増感剤の量は、組成物の重量に基づき約0.01%から約10%の範囲である。1つの実施形態では、フォトリフラクティブ組成物中の増感剤の量は、組成物の重量に基づき約0.01%から約7%の範囲である。1つの実施形態では、フォトリフラクティブ組成物中の増感剤の量は、組成物の重量に基づき約1%から約5%の範囲である。1つの実施形態では、フォトリフラクティブ組成物中の増感剤の量は、組成物の重量に基づき約2%から約4%の範囲である。
【0025】
1つの実施形態では、フォトリフラクティブ組成物は、アントラキノン、2−ニトロ−9−フルオレノンおよび2,7−ジニトロ−9−フルオレノン以外の増感剤をさらに含むことができる。例えば、フラーレンを組成物に加えることができる。「フラーレン」は、中空球、楕円面、チューブ、または平面の形態の炭素分子、およびその誘導体である。球形のフラーレンの1つの例がC60である。フラーレンは、一般に、もっぱら炭素分子からなるけれども、他の原子、例えば、フラーレンに結合した1つ以上の置換基を含むフラーレン誘導体であってもよい。1つの実施形態では、増感剤は、C60、C70、C84から選択されるフラーレンであり、それらの各々は、場合により置換されていてもよい。1つの実施形態では、フラーレンは、可溶性C60誘導体[6,6]−フェニル−C61−ブチル酸−メチルエステル、可溶性C70誘導体[6,6]−フェニル−C71−ブチル酸−メチルエステル、または可溶性C84誘導体[6,6]−フェニル−C85−ブチル酸−メチルエステルから選択される。フラーレンは、また、単一壁または多重壁のカーボンナノチューブの形態でありうる。単一壁または多重壁のカーボンナノチューブは、場合により1つ以上の置換基で置換されることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、フォトリフラクティブ組成物は、非線形光学機能性を有する追加成分、例えば、発色団をさらに含む。部分または発色団は、非線形光学能を提供する当該分野で公知のいかなる基であってもよい。非線形光学機能性を有する部分または発色団は、組成物への添加物として、あるいは共重合されるモノマーに結合している官能基として、ポリマーマトリックスに組み込まれてもよい。
【0027】
例えば、フォトリフラクティブ組成物は、1つ以上の非線形光学部分を有するさらなる繰り返し単位を含んでもよい。いくつかの実施形態では、非線形光学部分は、電荷輸送部分を有するポリマーとの共重合を可能にするポリマー骨格上の側鎖として存在しうる。いくつかの実施形態では、フォトリフラクティブポリマーは、以下の式により表される第2繰り返し単位をさらに含む:
【化7】

(式(IIa)中のQは、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、前記ヘテロアルキレン基は、S,N、またはOから選択される1つ以上のヘテロ原子を有し;式(IIa)中のRは、水素、直鎖状または分岐状のC〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から選択され;式(IIa)中のGは、π−共役基であり;式(IIa)中のEacptは、電子受容体基である)。いくつかの実施形態では、式(IIa)中のRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルから選択されるアルキル基である。いくつかの実施形態では、式(IIa)中のQは、(CHで表されるアルキレン基であり、ここで、pは約2〜約10の範囲である。いくつかの実施形態では、式(IIa)中のQは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、およびヘプチレンからなる群から選択される。
【0028】
いくつかの実施形態では、フォトリフラクティブポリマーは、以下の式により表される第2繰り返し単位を含む:
【化8】

(式(IIa’)中のQは、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、該ヘテロアルキレン基は、SまたはOなどの1つ以上のヘテロ原子を有し;式(IIa’)中のRは、水素、直鎖状または分岐状のC〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から選択され;式(IIa’)中のGは、π−共役基であり;式(IIa’)中のEacptは、電子受容体基である)。いくつかの実施形態では、式(IIa’)中のRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルから選択されるアルキル基である。いくつかの実施形態では、式(IIa’)中のQは、(CHで表されるアルキレン基であり、ここで、pは約2〜約10の範囲である。いくつかの実施形態では、式(IIa’)中のQは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、およびヘプチレンからなる群から選択される。
【0029】
「π−共役基」という用語は、π−共役結合を含む分子フラグメントを意味する。π−共役結合は、原子軌道の重なりによって2つの原子間に形成されるσ結合およびπ結合(σ結合に対してs+p混成原子軌道;π結合に対してp原子軌道)を有する原子間の共有結合を意味する。いくつかの実施形態では、式(IIa)および(IIa’)中のGは、以下から選択される式により独立して表される:
【化9】

(式中、式(G−1)および(G−2)中のRd〜Rdは、それぞれ独立して、水素、直鎖状または分岐状のC〜C10アルキル、C〜C10アリール、およびハロゲンからなる群から選択され;式(G−1)および(G−2)中のRは、独立して、水素、直鎖状または分岐状のC〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から選択される)。
【0030】
「電子受容体基」という用語は、π−共役基に結合可能な高い電子親和性を有する原子の基を意味する。典型的な受容体を強度が増加していく順に示すと以下の通りである:C(O)NR<C(O)NHR<C(O)NH<C(O)OR<C(O)OH<C(O)R<C(O)H<CN<S(O)R<NO、ここで、これらの電子受容体における各Rは、独立して、例えば、水素、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10アルキル、またはC〜C10アリールであってよい。米国特許第6,267,913号に示されるように、電子受容体基の例としては、以下のものを含む:
【化10】

(式中、上記化合物のそれぞれにおけるRは、水素、直鎖状または分岐状のC〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から独立して選択される)。化学構造式中、「‡」の記号は、他の化学基に結合する原子を特定しており、「‡」がない場合の構造によって通常意味される水素が1つ欠落していることを示す。
【0031】
いくつかの実施形態では、式(IIa)および(IIa’)中のEacptは、酸素であるか、または独立して以下の式(E−2)〜(E−6)からなる群から選択される式により表される構造であってもよい:
【化11】

(上記式におけるR、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、直鎖状または分岐状のC〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から選択される)。
【0032】
非線形光学成分含有コポリマーを調製するために、非線形光学能を備えている側鎖基を有するモノマーを使用することが可能である。そのようなモノマーの非限定的な例は、以下を含む:
【化12】

(式中、上記モノマー中の各Qは、独立して、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、該ヘテロアルキレン基は、O、N、またはSなどの1つ以上のヘテロ原子を有し;上記モノマー中の各Rは、独立して、水素またはメチルから選択され;上記モノマー中の各Rは、独立して、直鎖状または分岐状のC〜C10アルキルから選択される)。いくつかの実施形態では、上記モノマー中のQは、(CHで表されるアルキレン基であってもよく、ここで、pは約2〜約6の範囲である。いくつかの実施形態では、上記モノマー中の各Rは、独立して、メチル、エチル、およびプロピルからなる群から選択されてもよい。)。
【0033】
いくつかの実施形態では、発色団を含むモノマーは、非線形光学成分含有ポリマーを調製するのに用いることもできる。非線形光学成分として発色団基を含むモノマーの非限定的な例としては、N−エチル,N−4−ジシアノメチリデニルアクリレートおよびN−エチル,N−4−ジシアノメチリデニル−3,4,5,6,10−ペンタヒドロナフチルペンチルアクリレートが挙げられる。
【0034】
フォトリフラクティブ組成物中の発色団の量は、変動しうる。1つの実施形態では、発色団は、組成物の重量に対して約0.1%〜約70%の範囲の量で組成物に提供される。1つの実施形態では、発色団は、組成物の重量に対して約5%〜約60%の範囲の量で組成物に提供される。1つの実施形態では、発色団は、組成物の重量に対して約10%〜約50%の範囲の量で組成物に提供される。1つの実施形態では、発色団は、組成物の重量に対して約20%〜約40%の範囲の量で組成物に提供される。
【0035】
本明細書で記述されるポリマーは、いろいろな方法、例えば、対応するモノマーまたはその前駆体の重合によって調製することができる。重合は、本明細書に提供されているガイダンスで知られるように、当業者に公知の方法によって実施されうる。いくつかの実施形態では、AIBN(アゾイソブチルニトリル)などのアゾタイプの開始剤を用いるラジカル重合が実施されうる。ラジカル重合技術は、電荷輸送基、増感剤基、および非線形光学基を含むランダムコポリマーまたはブロックコポリマーを調製することを可能とする。さらに、本明細書に記述される技術に従うことによって、非常に優れた特性(例えば、光導電性と回折効率)を有するそのような材料を調製することが可能である。ラジカル重合法の1つの実施形態では、重合触媒は、全重合性モノマーのモルにつき0.01モル%〜5モル%、または0.1モル%〜1モル%の量で通常使用される。
【0036】
いくつかの実施形態では、ラジカル重合は、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、またはヘリウム)の下で、および/または溶媒(例えば、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、酢酸ブチル、トルエンまたはキシレン)の存在下で実施することができる。重合は、約1Kgf/cm〜約50Kgf/cmまたは約1Kgf/cm〜約5Kgf/cmの範囲の圧力下で実施されうる。いくつかの実施形態では、溶媒中の全重合性モノマーの濃度は、約0.99重量%〜約50重量%、好ましくは約2重量%〜約9.1重量%であってよい。重合は、約50℃〜約100℃の範囲の温度で実施することが可能であり、重合は、望ましい最終的な分子量、重合温度に依存し、重合率を考慮して約1〜約100時間続行することが可能である。
【0037】
いくつかの実施形態は、コポリマーを調製するために、非線形光学能についての官能基を有する前駆体モノマーの使用を伴う重合方法を提供する。前駆体は、以下の式で表すことが可能である:
【化13】

(式中、(P1)中のRは、水素またはメチルであり、(P1)中のVは、式(V−1)および(V−2)から選択される基である:
【化14】

式中、(V1)および(V2)中の各Qは、独立して、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、該ヘテロアルキレン基は、OおよびSなどの1つ以上のヘテロ原子を有し;(V1)および(V2)中のRd〜Rdは、それぞれ独立して、水素、直鎖状または分岐状のC〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から選択され;(V1)および(V2)中のRは、C〜C10アルキル(分岐状または直鎖状)である)。いくつかの実施形態では、(V1)および(V2)中のQは、独立して、(CHで表されるアルキレン基であってもよく、ここで、pは約2から約6の範囲である。いくつかの実施形態では、(V1)および(V2)中のRは、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルからなる群から選択される。1つの実施形態では、(V1)および(V2)中のRd〜Rdは、水素である。
【0038】
いくつかの実施形態では、前駆体モノマーの重合方法は、上記したのと一般的に類似した条件下で実施することができる。前駆体コポリマーが形成された後、それを縮合反応により非線形光学基と非線形光学能を有する対応するコポリマーに変換することができる。いくつかの実施形態では、縮合試薬は、以下の式から選択されうる:
【化15】

(式中、上記縮合試薬のR、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、C〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から選択される)。前記アルキル基は、分岐状であってもよく、あるいは直鎖状であってもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、前駆体ポリマーと縮合試薬の間の縮合反応は、ピリジン誘導体触媒の存在下、室温で約1〜約100時間実施することができる。いくつかの実施形態では、酢酸ブチル、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、またはキシレンなどの溶媒を使用することもできる。いくつかの実施形態では、反応は、触媒なしで30℃以上の溶媒の還流温度で約1時間〜約100時間、実施することができる。
【0040】
ポリマーマトリックス中で非線形光学特性を有する他の発色団は、米国特許第5,064,264号(引用により本明細書に援用される)に記載されており、また、いくつかの実施形態で使用することが可能である。当該分野で公知のさらなる適切な材料が、また、使用される場合があり、D.S.Chemla & J.Zyss,“Nonlinear Optical Properties of Organic Molecules and Crystals”(Academic Press,1987)などの文献によく記載されている。米国特許第6,090,332号は、熱安定フォトリフラクティブ組成物を形成することができる縮合環ブリッジおよび環ロック型発色団を記述しており、それらもまた有用である。選択された化合物(複数も可)は、しばしば、約1重量%〜約50重量%の濃度で、コポリマー中に混合される。
【0041】
いくつかの実施形態では、フォトリフラクティブ組成物は、可塑剤をさらに含む。フタレート誘導体または低分子量の正孔移動化合物(例えば、N−アルキルカルバゾールまたはトリフェニルアミン誘導体またはアセチルカルバゾールまたはトリフェニルアミン誘導体)などの任意の市販可塑剤をポリマーマトリックスに取り込んでもよい。電子受容体基を含むN−アルキルカルバゾールまたはトリフェニルアミン誘導体は、フォトリフラクティブ組成物をより安定化するのを助けることができる適切な可塑剤である。その理由は、その可塑剤は、1つの化合物の中にN−アルキルカルバゾールまたはトリフェニルアミン部分と非線形光学部分とを両方含んでいるからである。
【0042】
可塑剤の他の非限定的な例としては、エチルカルバゾール;4−(N,N−ジフェニルアミノ)−フェニルプロピルアセテート;4−(N,N−ジフェニルアミノ)−フェニルメチルオキシアセテート;N−(アセトキシプロピルフェニル)−N,N’,N’−トリフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;N−(アセトキシプロピルフェニル)−N’−フェニル−N,N’−ジ(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;およびN−(アセトキシプロピルフェニル)−N’−フェニル−N,N’−ジ(4−ブトキシフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミンが挙げられる。そのような化合物は、単独で使用してもよく、あるいは2種以上の可塑剤の混合物として使用してもよい。また、未重合モノマーは、低分子量の正孔移動化合物、例えば、4−(N,N−ジフェニルアミノ)−フェニルプロピル(メタ)アクリレート;N−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;N−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N’−フェニル−N,N’−ジ(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン;およびN−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N’−フェニル−N,N’−ジ(4−ブトキシフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミンであり得る。そのようなモノマーは、単独であるいは2種以上のモノマーの混合物として使用することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、可塑剤は、N−アルキルカルバゾールまたはトリフェニルアミン誘導体から選択されうる:
【化16】

【化17】

(式中、Ra、Rb〜Rb、およびRc〜Rcは、それぞれ独立して、水素、分岐状もしくは直鎖状のC〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から選択される;各pは、独立して、0または1である;Eacptは電子受容体基であり、酸素であるか、または以下の構造からなる群から選択される構造で表される:
【化18】

式(E−3)、(E−4)、(E−5)、および(E−6)中のR、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、直鎖状または分岐状のC〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から選択される)。
【0044】
いくつかの実施形態では、フォトリフラクティブ組成物は、光導電(電荷輸送)能と非線形光学能を提供するコポリマーを含む。フォトリフラクティブ組成物は、また、所望の他の成分(例えば、可塑剤成分)を含んでもよい。いくつかの実施形態は、コポリマーを含むフォトリフラクティブ組成物を提供する。コポリマーは、電荷輸送能を有する第1部分を含む第1繰り返し単位、非線形光学能を有する第2部分を含む第2繰り返し単位、および可塑性を有する第3部分を含む第3繰り返し単位を含むことが可能である。
【0045】
コポリマーを形成する際に使用される異なるタイプのモノマーの割合は、広範囲にわたって変動しうる。いくつかの実施形態は、電荷輸送能を有する第1繰り返し単位と非線形光学能を有する第2繰り返し単位とを有するフォトリフラクティブ組成物を提供し、第1繰り返し単位の第2繰り返し単位に対する重量比率は、約100:1〜約0.5:1、好ましくは、約10:1〜約1:1である。そのような第1繰り返し単位の第2繰り返し単位に対する重量比率が、約0.5:1より小さいとき、コポリマーの電荷輸送能は非常に弱く、十分なフォトリフラクティブ特性を与えることができなくなる場合がある。しかし、そのような低い比率でも、非線形光学能を有する低分子量成分(例えば、本明細書の他の場所に記載される)を加えることによって十分なフォトリフラクティブ特性を提供することがなお可能である。そのような第1繰り返し単位のそのような第2繰り返し単位に対する重量比率が、約100:1より大きいとき、コポリマー自体の非線形光学能は非常に低く、フォトリフラクティブ特性を提供することができなくなる場合がある。しかし、そのような高い比率の場合でも、上述した電荷輸送能を有する低分子量成分(例えば、本明細書の他の場所に記載される)を加えることによってフォトリフラクティブ特性を増強することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、コポリマーの分子量とガラス転移温度(Tg)は、望ましい物理特性を提供するために選択される。いくつかの実施形態では、ポリマーが、標準ポリマー加工技術(例えば、溶媒コーティング、射出成形、押し出し加工)によって、様々な種類のフィルム、コーティングおよび成形体に形成しうることは、必須でないけれども有用であって望ましい。
【0047】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、約3,000から500,000の範囲、好ましくは約5,000から100,000の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。本明細書で使用される場合、「重量平均分子量」という用語は、当該分野で周知のように、ポリスチレン標準を用いるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により決定される値を意味する。いくつかの実施形態では、さらなる利益が、可塑剤に対する依存性を減少させることによって提供することが可能である。本質的に適度のTgを有するコポリマーを選択することにより、そして、平均Tgを下げる傾向がある方法を用いることにより、組成物中の可塑剤の量を約30%以下または25%以下に、そして、いくつかの実施形態では、約20%以下に制限することが可能である。いくつかの実施形態では、可視光レーザービームによって活性化されることができるフォトリフラクティブ組成物は、約105μmの厚さと、約30%を超える透過率、より好ましくは約40%〜約90%の透過率を有することが可能である。可視光レーザービームによって照射される場合に、フォトリフラクティブ組成物が105μmの厚さで約30%を超える透過率を有するならば、レーザービームは、組成物を円滑に通過して回折格子画像と信号を形成することができる。
【0048】
1つの実施形態は、可視光レーザービーム照射により光を変調するフォトリフラクティブ組成物を提供し、ここで、フォトリフラクティブ組成物は、上で定義される式(Ia)、(Ib)および(Ic)からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む第1繰り返し単位を含むポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、式(IIa)および発色団から選択される少なくとも1つの部分を含む第2繰り返し単位をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーは、式(IIa’)の繰り返し単位をさらに含むことが可能である。いくつかの実施形態では、ポリマーは、式(IIIa)、(IIIb)および(IIIc)から選択される少なくとも1つの部分を含む第3繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0049】
多くの現在利用可能なフォトリフラクティブポリマーは、相安定性に乏しく、数日後にはかすみが生じ得る。フォトリフラクティブポリマーを含むフィルム組成物がかなりのかすみを示す場合には、乏しいフォトリフラクティブ特性が典型的に示される。フィルム組成物のかすみは、通常いくつかのフォトリフラクティブ成分間の非相溶性から生じる。例えば、電荷輸送能成分と非線形光学成分との両方を含むフォトリフラクティブ組成物は、電荷輸送能を有する成分が通常疎水性で非極性であるのに対し、非線形光学能を有する成分が通常親水性で極性であるので、かすみを示す場合がある。その結果、組成物の当然の傾向として、相分離し、したがって、かすみを生じる。
【0050】
しかし、本明細書に提示される好ましい実施形態は、数カ月経っても優れた相安定性を示し、かすみを与えなかった。組成物が非常に安定で、ほとんどまたは全く相分離を示さないので、そのような組成物は優れたフォトリフラクティブ特性を保持する。理論に束縛されるものではないが、安定性は、増感剤構造および/またはフォトリフラクティブ組成物中での増感剤と発色団との組み合わせにおそらく起因している。さらに、マトリックスポリマー系は、電荷輸送能を有する成分と非線形光学能を有する成分とのコポリマーとすることができる。つまり、電荷輸送能を有する成分と非線形光学能を有する成分は、1つのポリマー鎖中で共存し、したがって、重大で有害な相分離を難しくして、起こらないようにしている。
【0051】
さらに、熱は通常、相分離の割合を増加させるが、本明細書に記述される好ましい組成物は、加熱された後でさえ、優れた相安定性を示す。加速加熱試験で、約40℃、約60℃、約80℃、および約120℃で加熱された試験サンプルは、数日後でも、数週間後でも、そして、時には6カ月後にさえ安定であることが分かる。優れた相安定性は、コポリマーをさらに加工し、いろいろな商品のための光学装置アプリケーションに組み込むことを可能とする。1つの実施形態では、光学装置は、可視光レーザービーム照射によりフォトリフラクティブである。1つの実施形態では、光学装置は、回折格子が外部バイアス電圧を印加することなくその中に書き込まれることができるフォトリフラクティブ組成物を含む。1つの実施形態では、回折格子信号は、外部バイアス電圧を印加することなく、フォトリフラクティブ組成物から読み出すことができる。
【0052】
好ましいフォトリフラクティブ装置について、通常、フォトリフラクティブ層の厚さは、約10μm〜約200μmの範囲である。好ましくは、厚さの範囲は、約30μm〜約150μmの範囲である。多くの場合、サンプルの厚さが10μm未満であるならば、回析信号は、所望のBragg回折領域でなく、適切な回折格子挙動を示すことができないRaman−Nathan領域である。一方、サンプルの厚さが200μmを超えると、回折格子挙動を示すのに一般的に必要なバイアス電圧量が、所望するより大きくなるであろう。さらに、レーザービームに対する組成物の透過率は、しばしば著しく減少して、回折格子信号がほとんどあるいは全く生じないようにすることができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、組成物は、約500nm〜約700nmの波長のレーザービームを透過させるように構成される。組成物透過率は、フォトリフラクティブ層の厚さに依存し、したがって、フォトリフラクティブ組成物を含むフォトリフラクティブ層の厚さをコントロールすることによって、光変調特性は、所望通りに調整されることができる。透過率が低いとき、レーザービームは、その層を通過せずに回折格子画像と信号とを形成しない場合がある。一方、吸収が0%であれば、レーザエネルギーは全く吸収されず、回折格子信号を発生させることができない。いくつかの実施形態では、透過率の適切な範囲は、約10%〜約99.99%、約30%〜約99.9%、または35約%〜約90%である。線形透過率を測定してフォトリフラクティブ装置の吸収係数を決定した。測定値に関しては、フォトリフラクティブ層は、層面と垂直をなす入射経路で532nmのレーザービームに照射された。フォトリフラクティブ層を通過する前後のビーム強度をモニターし、サンプルの線形透過率は以下の式:
T=I透過/I入射
によって与えられる。
【0054】
レーザーの波長は、特に制限されないが、通常、約500nm〜約700nmの範囲にある。レーザー光源として、一般的に、広く利用可能な532nmのレーザーを使用することができる。
【0055】
本明細書に記述される好ましいフォトリフラクティブ組成物のいろいろな長所のうちの1つは、長い回折格子保持時間である。より長い回折格子保持は、フォトリフラクティブ組成物がホログラフィックデータ記憶や画像記録などの用途のために使用されるのを可能とする。1つの実施形態では、回折格子保持時間は、1時間以上である。1つの実施形態では、回折格子保持時間は、4時間以上である。1つの実施形態では、回折格子保持時間は、1日以上である。1つの実施形態では、回折格子保持時間は、2日以上である。1つの実施形態では、回折格子保持時間は、1週間以上である。1つの実施形態では、回折格子保持時間は、1カ月以上である。1つの実施形態では、回折格子保持時間は、6カ月以上である。1つの実施形態では、回折格子保持時間は、1年以上である。1つの実施形態では、回折格子保持時間は、数年である。1つの実施形態では、回折格子保持時間は、ほとんど永久的、例えば、10年以上である。
【0056】
回折格子は、外部電界(バイアス電圧として表される)を使用して、あるいは使用しないで、フォトリフラクティブ組成物に書き込むことができる。さらに、回折格子信号は、外部バイアス電圧を印加して、あるいは印加することなく、フォトリフラクティブ組成物から読み出すことができる。外部バイアス電圧をほとんどまたは全く使わないで信号を読み出す、および/または書き込む能力は、本明細書に記述されるフォトリフラクティブ組成物で使われる増感剤のタイプと量の適切な選択によって成し遂げることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるフォトリフラクティブ組成物は、ゼロバイアス電圧で、数分から数時間の回折格子保持時間を示した。
【0057】
好ましいフォトリフラクティブ組成物のさらなる利点は、達成することができる高い回折効率ηである。回折効率は、回析ビームの強度の入射プローブビームの強度に対する比率として定義され、それぞれのビームの強度を測定することで決定される。装置が効率的であればあるほど、比率はますます100%に近づく。一般に、所定のフォトリフラクティブ組成物に関して、より高い回折効率は、印加されるバイアス電圧を増加することによって達成することができる。本明細書に記述される実施形態のサンプルは、回折効率として少なくとも約40%および約50%さえも提供することができた。
【0058】
実施形態は、以下の実施例によりさらに説明されるが、それらは、本発明を例示することを意図するものであり、その範囲または基本的原理を決して限定するものではない。
【実施例】
【0059】
実施例1
(a)電荷輸送基を含むモノマー
TPDアクリレート型電荷輸送モノマー(N−[アクロイルオキシプロピルフェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン)(TPDアクリレート)をFuji Chemical,Japanから購入した。TPDアクリレート型モノマーは以下の構造を有した。
【化19】

【0060】
(b)非線形光学基を含むモノマー
非線形光学前駆体モノマーの5−[N−エチル−N−4−ホルミルフェニル]アミノ−ペンチルアクリレートを以下の合成スキームに従って合成した。
【化20】

【0061】
ステップI:酢酸ブロモペンチル(5mL、30mmol)、トルエン(25mL)、トリエチルアミン(4.2mL、30mmol)、およびN−エチルアニリン(4mL、30mmol)をともに室温で加えた。混合物を一晩中120℃で加熱した。冷却した後に、反応混合物をロータリーエバポレーターにかけて残渣を生成した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/アセトン=9/1)により精製した。油状のアミン化合物が得られた(収率:6.0g(80%))。
【0062】
ステップII:無水DMF(6mL、77.5mmol)を氷浴中で冷却した。次いで、POCl(2.3mL、24.5mmol)を冷却した無水DMFへ滴下して加え、混合物を室温に戻した。上記アミン化合物(5.8g、23.3mmol)をジクロロエタンと共に注射器を使ってゴムセプタムを通して加えた。30分の攪拌後に、この反応混合物を90℃まで加熱し、反応をアルゴン雰囲気下で一晩中進行させた。一晩中反応の後、反応混合物を冷却し、ブラインへ注ぎ、エーテルで抽出した。エーテル層を炭酸カリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを除去した後に、溶媒を除去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=3/1)により精製した。アルデヒド化合物が得られた(収率:4.2g(65%))。
【0063】
ステップIII:上記アルデヒド化合物(3.92g、14.1mmol)をメタノール(20mL)に溶解した。この溶液に炭酸カリウム(400mg)と水(1mL)を室温で加え、溶液を一晩中攪拌した。次に、溶液をブラインへ注ぎ、エーテルで抽出した。エーテル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを除去した後に、溶媒を除去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/アセトン=1/1)により精製した。アルデヒドアルコール化合物が得られた(収率:3.2g(96%))。
【0064】
ステップIV:上記アルデヒドアルコール(5.8g、24.7mmol)を無水THF(60mL)に溶解した。この溶液に、トリエチルアミン(3.8mL、27.1mmol)を加え、溶液を氷浴で冷却した。塩化アクロリル(2.1mL、26.5mmol)を加え、溶液を20分間0℃に維持した。その後、溶液を室温にまで加温し、室温で1時間攪拌し、その時点ですべてのアルコール化合物が消失したことをTLCが示した。溶液をブラインへ注ぎ、エーテルで抽出した。エーテル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを除去した後に、溶媒を除去し、残渣のアクリレート化合物をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:ヘキサン/アセトン=1/1)により精製した。化合物の収率は、5.38g(76%)であり、化合物の純度は99%(GCによる)であった。
【0065】
(c)発色団
NPP((s)−(−)−1−(4−ニトロフェニル)−2−ピロリジンメタノール、98%)は、Aldrichから商業的に入手可能であり、エタノールから再結晶して使用する。
【化21】

【0066】
(d)可塑剤
N−エチルヘキシルカルバゾールは、Aldrichから商業的に入手可能であり、そのまま使用する。
【化22】

【0067】
(e)増感剤
アントラキノンおよび2−ニトロ−9−フルオレノン増感剤は、Aldrichから商業的に入手可能であり、そのまま使用する。
【0068】
実施例2
AlBNラジカル開始重合によるコポリマー(TPDアクリレート/発色団タイプ10:1)の調製
電荷輸送モノマーのN−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPDアクリレート)(43.34g)、および非線形光学前駆体モノマーの5−[N−エチル−N−4−ホルミルフェニル]アミノ−ペンチルアクリレート(4.35g)(実施例1に記載のように調製した)を3ツ口フラスコに入れた。トルエン(400mL)を加え、アルゴンガスにより1時間パージした後、アゾイソブチルニトリル(118mg)をその溶液に加えた。それから、アルゴンガスでパージを継続しながら、この溶液を65℃まで加熱した。
【0069】
18時間の重合の後、ポリマー溶液をトルエンで希釈した。ポリマーを溶液から沈殿させ、メタノールに加え、得られたポリマー沈殿物を回収し、ジエチルエーテルとメタノールで洗浄した。白色のポリマー粉末を回収し、乾燥した。ポリマーの収率は、66%であった。
【0070】
重量平均分子量と数平均分子量は、ポリスチレン標準を使用してゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した。結果は、Mn=10,600、Mw=17,100であり、1.61の多分散度を与えた。
【0071】
実施例3
AIBNラジカル開始重合によるTPDアクリレートポリマーの調製
電荷輸送モノマーのN−[(メタ)アクロイルオキシプロピルフェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPDアクリレート)(61.50g)を3ツ口フラスコに入れた。トルエン(400mL)を加え、アルゴンガスで1時間パージし、それからアゾイソブチルニトリル(138mg)をこの溶液に加えた。アルゴンガスでパージを継続しながら、その溶液を65℃に加熱した。
【0072】
18時間の重合の後、ポリマー溶液をトルエンで希釈した。ポリマーを溶液から沈殿させて、メタノールに加え、そして、生成したポリマー沈殿物を回収し、ジエチルエーテルとメタノールで洗浄した。白色のポリマー粉末を回収し、乾燥した。ポリマーの収率は、78%であった。
【0073】
重量平均分子量と数平均分子量は、ポリスチレン標準を使用してゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定した。結果は、Mn=20,400、Mw=42,900であり、そして、2.10の多分散を与えた。
【0074】
実施例4
フォトリフラクティブ組成物の調製
フォトリフラクティブ組成物試験サンプルを調製した。組成物の成分を以下のような概算量で提供した。
(i)マトリックスポリマー(実施例2に記載): 47.18重量%
(ii)NPP発色団 24.18重量%
(iii)エチルヘキシルカルバゾール可塑剤 24.98重量%
(iv)アントラキノン増感剤 3.03重量%
【0075】
組成物を調製するために、上にリストした成分を撹拌しながらジクロロメタンに溶解し、ろ過ガラスシリンジを用いて、60℃でガラスプレート上に滴下した。次いで、その複合体を60℃で5分間処理し、次いで5分間真空とした。それから、複合体を150℃で5分間処理し、次いで30秒間真空とした。それから複合体を解体し、小さな塊に切断した。この塊を小量取り、105μmのスペーサーで隔てられた酸化インジウムスズ(ITO)被覆ガラスプレートに挟んで個々のサンプルを形成した。
【0076】
測定1−回折効率
回折効率をレーザービームを用いる2光波結合実験により532nmで測定した。2光波結合実験は、空気中で20.5度の角度をなす2つの書き込みビームを使用して実行し、書き込みビームの2等分線はサンプル法線に対して60度の角度をなしていた。サンプルにおいて20mWの等しい強度を有する2つのスプリットp−偏光書き込みビームを用い、そして、ビームスポット径は、約2mmであった。サンプルに照射されるレーザー強度は、約0.67W/cmであった。外部電圧を印加することなく、2つのp−偏光ビームの間のエネルギー移動(2光波結合)が観察された。回折格子の書き込みの10分後には、書き込みビームのうちの1つが遮断された。
【0077】
他のビームからの透過信号と回析信号とを各々、光検出器でモニターし回折効率を決定した。回折格子信号は、外部バイアス電圧を印加することなく読み出された。回折効率(η)は、
η=I回折信号/(I回折信号+I透過信号
によって計算された。
【0078】
測定2−透過率
組成物の厚さは105μmであった。測定のために、フォトリフラクティブ層を、層面と垂直の入射経路を有する約532nmのレーザービームで照射した。フォトリフラクティブ層を通過する前後のビーム強度をモニターし、そして、サンプルの線形透過率は以下の式:
T=I透過/I入射
によって与えられる。
【0079】
組成物に回折格子を書き込む際、あるいはその後、回折格子信号を読み出す際のいずれにおいても、いかなる外部バイアス電圧も使用されなかった。それにもかかわらず、実施例4の組成物は、優れた回折効率(1時間後でさえ)と優れた透過率特性を示した。実施例4に対する実測性能は以下の通りであった。
回折効率(%): 22%
60分後の回折効率(%): 14%
532nmでの透過率: 38%
【0080】
実施例5
フォトリフラクティブ組成物の調製
フォトリフラクティブ組成物試験サンプルを調製した。組成物の成分を以下のような概算量で提供した。
(i)マトリックスポリマー(実施例3に記載): 46.76重量%
(ii)NPP発色団 25.17重量%
(iii)エチルヘキシルカルバゾール可塑剤 24.63重量%
(iv)アントラキノン増感剤 3.44重量%
【0081】
回折格子を実施例5の組成物に書き込み、回折格子信号を実施例4と同様にして(どちらのステップでも外部バイアス電圧は使用されなかった)読み出した。再び、組成物は、優れた回折効率(1時間後でさえ)と優れた透過率特性を示した。実施例5に対する実測性能は以下の通りであった。
初期回折効率(%): 13%
25分後の回折効率(%): 12%
532nmでの透過率: 32%
【0082】
実施例6
フォトリフラクティブ組成物の調製
フォトリフラクティブ組成物試験サンプルを調製した。組成物の成分を以下のような概算量で提供した。
(i)マトリックスポリマー(実施例3に記載): 36.36重量%
(ii)NPP発色団 19.34重量%
(iii)エチルヘキシルカルバゾール可塑剤 41.97重量%
(iv)アントラキノン増感剤 2.32重量%
【0083】
回折格子を実施例6の組成物に書き込み、回折格子信号を実施例4と同様にして(どちらのステップでも外部バイアス電圧は使用されなかった)読み出した。再び、組成物は、優れた回折効率(1時間後でさえ)と優れた透過率特性を示した。実施例6に対する実測性能は以下の通りであった。
初期回折効率(%): 50%
25分後の回折効率(%): 11%
532nmでの透過率: 51%
【0084】
実施例7
フォトリフラクティブ組成物の調製
フォトリフラクティブ組成物試験サンプルを調製した。組成物の成分を以下のような概算量で提供した。
(i)マトリックスポリマー(実施例3に記載): 45.90重量%
(ii)NPP発色団 24.41重量%
(iii)エチルヘキシルカルバゾール可塑剤 26.46重量%
(iv)2−ニトロ−9−フルオレノン増感剤 3.22重量%
【0085】
回折格子を実施例7の組成物に書き込み、回折格子信号を実施例4と同様にして(どちらのステップでも外部バイアス電圧は使用されなかった)読み出した。再び、組成物は、優れた回折効率(1時間後でさえ)と優れた透過率特性を示した。実施例7に対する実測性能は以下の通りであった。
初期回折効率(%): 2%
25分後の回折効率(%): 1%
532nmでの透過率: 39%
【0086】
比較例1
フォトリフラクティブ組成物の調製
異なる組成物成分を使用したことを除き、実施例4と同様の方法でフォトリフラクティブ組成物を得た。増感剤は供給しなかった。組成物の成分は以下の通りであった。
(i)マトリックスポリマー(実施例2に記載): 50重量%
(ii)7−FDCST発色団: 30重量%
(iii)エチルヘキシルカルバゾール可塑剤: 20重量%
【0087】
組成物は優れた透過率を有したけれども、回折格子信号は、外部バイアス電圧の印加の際に見られたのみであった。比較例1に対する実測性能は以下の通りであった。
初期回折効率(%): 外部バイアス電圧なしで無信号
532nmでの透過率: 35%
【0088】
比較例2
フォトリフラクティブ組成物の調製
異なる組成物成分を使用したことを除き、実施例4と同様の方法でフォトリフラクティブ組成物を得た。増感剤は供給しなかった。組成物の成分は以下の通りであった。
(i)マトリックスポリマー(実施例2に記載): 50重量%
(ii)NPP発色団: 30重量%
(iii)エチルヘキシルカルバゾール可塑剤: 20重量%
【0089】
組成物は優れた透過率を有したけれども、回折格子信号は、外部バイアス電圧の印加の際に見られたのみであった。比較例2に対する実測性能は以下の通りであった。
初期回折効率(%): 外部バイアス電圧なしで無信号
532nmでの透過率: 60%
【0090】
比較例で示されるように、外部バイアス電圧が印加されない限り、回折格子は形成せず、回折格子信号を読み出すことができない。回折効率は、比較例1および比較例2において、外部バイアス電圧が印加された後で観測されるのみである。
【0091】
本明細書に記載されたすべての引用文献と特許は、その全体が本明細書に援用される。以上の記載により本教示の新規な基本的特徴を示し、説明し、指摘してきたが、例示した装置の細部の形態において、同様にその使用において、種々の省略、置換、および変更が、本教示の範囲を逸脱することなく当業者によりなされうることが理解されるであろう。従って、本教示の範囲は、上記考察に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に基づいて規定されるべきである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトリフラクティブ組成物中に回折格子を形成する方法であって、
増感剤とポリマーとを含むフォトリフラクティブ組成物を提供する工程であって、ここで、前記増感剤は、アントラキノン、2−ニトロ−9−フルオレノン、および2,7−ジニトロ−9−フルオレノンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、ここで、前記ポリマーは、以下の式(Ia)、(Ib)および(Ic):
【化1】

【化2】

(式(Ia)、(Ib)および(Ic)中の各Qは、独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンを表し;式(Ia)、(Ib)および(Ic)中のRa〜Ra、Rb〜Rb27、およびRc〜Rc14は、それぞれ独立して、水素、直鎖状もしくは分岐状の場合により置換されたC〜C10アルキルまたはヘテロアルキル、および場合により置換されたC〜C10アリールからなる群から選択される)からなる群から選択される部分を含む第1繰り返し単位を含む工程;および
外部バイアス電圧を印加することなく、前記フォトリフラクティブ組成物を可視光レーザービームで照射して前記回折格子を提供する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記可視光レーザービームが、約500nm〜約700nmの波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フォトリフラクティブ組成物が、前記可視光レーザービームにより照射されるとき、105μmの厚さで約30%を超える透過率を有する、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記フォトリフラクティブ組成物が、可塑剤をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記フォトリフラクティブ組成物が、発色団をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
増感剤とポリマーとを含み、可視光レーザービーム照射によって光を変調するフォトリフラクティブ組成物であって、ここで、
前記増感剤は、アントラキノン、2−ニトロ−9−フルオレノンおよび2,7−ジニトロ−9−フルオレノンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、ここで、前記ポリマーは、以下の式(Ia)、(Ib)および(Ic):
【化3】

(式(Ia)、(Ib)および(Ic)中の各Qは、独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンを表し;式(Ia)、(Ib)および(Ic)中のRa〜Ra、Rb〜Rb27、およびRc〜Rc14は、それぞれ独立して、水素、直鎖状もしくは分岐状の場合により置換されたC〜C10アルキルまたはヘテロアルキル、および場合により置換されたC〜C10アリールからなる群から選択される)からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む第1繰り返し単位を含み;そして、
ここで、前記組成物は、外部バイアス電圧なしで回折格子を提供することができるように処方される、フォトリフラクティブ組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、以下の式(IIa)により表される部分を含む第2繰り返し単位をさらに含む、請求項6に記載の組成物:
【化4】

(式(IIa)中のQは、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し;式(IIa)中のRは、水素、直鎖状C〜C10アルキル、分岐状C〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から選択され;式(IIa)中のGは、π−共役基であり;式(IIa)中のEacptは、電子受容体基である)。
【請求項8】
前記第2繰り返し単位が、以下の式(IIa’)により表される、請求項7に記載の組成物:
【化5】

(式(IIa’)中のQは、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し;式(IIa’)中のRは、水素、直鎖状C〜C10アルキル、分岐状C〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から選択され;式(IIa’)中のGは、π−共役基であり;式(IIa’)中のEacptは、電子受容体基である)。
【請求項9】
前記式(IIa)および(IIa’)中のGが、以下の式(G−1)および(G−2)からなる群から選択される構造により表される、請求項7〜8のいずれかに記載の組成物:
【化6】

(式(G−1)および(G−2)中のRd〜Rdは、それぞれ独立して、水素、直鎖状C〜C10アルキル、分岐状C〜C10アルキル、C〜C10アリール、およびハロゲンからなる群から選択され;式(G−1)および(G−2)中のRは、独立して、水素、直鎖状C〜C10アルキル、分岐状C〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から選択される)。
【請求項10】
前記式(IIa)および(IIa’)中のEacptが、酸素、または以下の式(E−2)〜(E−6)からなる群から選択される構造により表される、請求項7〜9のいずれかに記載の組成物:
【化7】

(式(E−3)、(E−4)および(E−6)中のR、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、直鎖状C〜C10アルキル、分岐状C〜C10アルキル、およびC〜C10アリールからなる群から選択される)。
【請求項11】
前記組成物が、可塑剤をさらに含む、請求項6〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、発色団をさらに含む、請求項6〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記第1繰り返し単位が、以下の式(Ia’)(Ib’)、および(Ic’)からなる群から選択される、請求項6〜12のいずれかに記載の組成物:
【化8】

【化9】

(式(Ia’)(Ib’)、および(Ic’)中の各Qは、独立して、アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し;式(Ia’)(Ib’)、および(Ic’)中のRa〜Ra、Rb〜Rb27、およびRc〜Rc14は、それぞれ独立して、水素、直鎖状もしくは分岐状の場合により置換されたC〜C10アルキルまたはヘテロアルキル、および場合により置換されたC〜C10アリールからなる群から選択される)。
【請求項14】
前記組成物が、可視光レーザービームによって照射されるとき、105μmの厚さにおいて約30%よりも高い透過率を有する、請求項6〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、約500nm〜約700nmの範囲の波長を有するレーザービームの照射によりフォトリフラクティブである、請求項6〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
請求項6〜15のいずれかに記載の組成物を含む光学装置であって、前記光学装置が、可視光レーザービーム照射によりフォトリフラクティブであり、ここで、前記光学装置が外部バイアス電圧を印加することなく回折格子を提供する、光学装置。


【公表番号】特表2012−506068(P2012−506068A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532118(P2011−532118)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/057562
【国際公開番号】WO2010/047904
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】