説明

フォーカス用ナットの製造方法及び該方法に用いる順送り型

【課題】ねじが1山のフォーカス用ナットを、効率よく且つ従来のタップ方式の製造方法に比してはるかに低コストにて製造することができるようにする。
【解決手段】帯板材料20に、先ず下穴あけパンチ4とダイ17を用いて下穴あけ加工を施す。次いで、下穴より僅かに大径で、夫々先端部外縁に両者の端面を突き合わせたとき断面V字形の溝ができる傾斜面をねじ1山分螺旋状に設けた一対のねじ形成パンチ5、6で上記工程であけられた下穴の内面に1山のねじを形成する。その後、外形切り抜きパンチ7とダイ17で、内面に1山のねじを形成した下穴の外周に、最終製品と同じ外形であって一部が帯板材料に接続された状態に本体を切り抜く外形切り抜き加工を施す。最後に、切り離しパンチ8とダイ17で、上記外形切り抜き加工で残した本体の帯板材料20との接続部分、を切断して最終製品25とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ、携帯電話等における部品であるフォーカス用ナットの製造方法及び該方法に用いる順送り型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、携帯電話等における部品であるフォーカス用ナットは、従来タップ方式によって製造されていた。
【0003】
斯かるタップ方式は、切断機により線状の鋼材を一定の寸法に切断し、ヘッダーによって所定の外形形状に成形した後下穴をあけ、ねじ切機により該下穴にねじを切って製品とするものである。
【0004】
斯かるタップ方式による製造方法の場合には、多量生産が容易にできるという利点がある反面、多くの種類の機械や付帯設備を必要とし、特に旋削加工用の刃物は非常に高価であることから、設備費が非常に高くつくと共に運転費、保守費等も嵩むことになり、コストダウンが図れないという問題点がある。
【0005】
そしてまた、タップ方式によって製造した従来のフォーカス用ナットは、板厚0.6〜0.8cm、ピッチ0.2〜0.3cmで3山が形成されているが、タップによる転造加工では3山のうちの入口と出口部にあっては転造に必要な体積が不足するために充分な転造ができず、有効ねじは1山が実態である。よってまた、これらの実態からして、フォーカス用ナットでは1山のもので充分に用途に足りることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、ねじが1山のフォーカス用ナットを、効率よく且つ従来のタップ方式の製造方法に比してはるかに低コストにて製造することができるようになしたフォーカス用ナットの製造方法及び該方法に用いる順送り型を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
而して、本発明の要旨とするところは、帯板材料に、先ず下穴あけパンチとダイを用いて下穴あけ加工を施し、次いで、次工程の、下穴より僅かに大径で、夫々先端部外縁に両者の端面を突き合わせたとき断面V字形の溝ができる傾斜面をねじ1山分螺旋状に設けた一対のねじ形成パンチで上記工程であけられた下穴の内面に1山のねじを形成し、その後、次工程の外形切り抜きパンチとダイで、前記内面に1山のねじを形成した下穴の外周に、最終製品としてのフォーカス用ナットにおける外形と同じ外形であって一部が帯板材料に接続された状態にフォーカス用ナット本体を切り抜く外形切り抜き加工を施し、最後に、次工程の切り離しパンチとダイで、上記外形切り抜き加工で残したフォーカス用ナット本体の帯板材料との接続部分を切断して最終製品とするようにしたことを特徴とするフォーカス用ナットの製造方法にある。
【0008】
また、上記製造方法には、パンチホルダーと、前記パンチホルダー側に設けられ、帯板材料に下穴をあけるための下穴あけパンチと、前記パンチホルダー側と後記ダイプレート側に対向させて夫々設けられ、前記下穴あけパンチによりあけられた下穴の内面に1山のねじを形成するための、下穴より僅かに大径で、夫々先端部外縁に両者の端面を突き合わせたとき断面V字形の溝ができる傾斜面をねじ1山分螺旋状に設けた一対のねじ形成パンチと、前記パンチホルダー側に設けられ、前記一対のねじ形成パンチで内面に1山のねじを形成した下穴の外周に、最終製品としてのフォーカス用ナットにおける外形と同じ外形であって一部が帯板材料に接続された状態にフォーカス用ナット本体を切り抜く外形切り抜き加工をするための外形切り抜きパンチと、前記パンチホルダー側に設けられ、前記外形切り抜きパンチによる切り抜き加工で残したフォーカス用ナット本体の帯板材料との接続部分を切断して切り離すための切り離しパンチと、前記パンチホルダー側に弾性材を介してパンチホルダーと接離するよう支持され、帯板材料を前記パンチホルダー側の後記ダイホルダー側への下降にともなってダイホルダー側に移動させるストリッパプレートと、前記パンチホルダーの下方に、これと対向して設けられたダイホルダーと、前記ダイホルダーの上面に設けられたダイプレートとからなるフォーカス用ナットの製造方法に用いる順送り型を用いるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ねじが1山のフォーカス用ナットを、効率よく且つ従来のタップ方式の製造方法に比してはるかに低コストにて製造することができるものである。また、材料としての帯板も従来の場合よりも肉圧が半分程度のもので済み、且つ高価な旋削加工用の刃物も不要であり、大幅なコストダウンが図れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態は、帯板材料に、先ず下穴あけパンチとダイを用いて下穴あけ加工を施し、次いで、次工程の、下穴より僅かに大径で、夫々先端部外縁に両者の端面を突き合わせたとき断面V字形の溝ができる傾斜面をねじ1山分螺旋状に設けた一対のねじ形成パンチで上記工程であけられた下穴の内面に1山のねじを形成し、その後、次工程の外形切り抜きパンチとダイで、前記内面に1山のねじを形成した下穴の外周に、最終製品としてのフォーカス用ナットにおける外形と同じ外形であって一部が帯板材料に接続された状態にフォーカス用ナット本体を切り抜く外形切り抜き加工を施し、最後に、次工程の切り離しパンチとダイで、上記外形切り抜き加工で残したフォーカス用ナット本体の帯板材料との接続部分を切断して最終製品とすることにある。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施例について説明する。
図1は本発明に係るフォーカス用ナットの製造方法に用いる順送り型の説明図、図2は製造工程の説明図、図3はねじ形成パンチの一部省略して示した斜視図、図4はねじ形成パンチの正面図、図5は図4中A部分の拡大図、図6は図4中I−I線切断部拡大端面図、図7はねじ形成パンチの平面図、図8は図7中B部分の拡大図、図9は一対のねじ形成パンチの突き合わせた状態の部分拡大図である。
【0012】
図中、1は順送り型におけるパンチホルダー、2は前記パンチホルダー1の下面に取り付けられたパンチプレートである。また、該パンチプレート2には後記支持ピンの挿通穴3、3が形成されている。
【0013】
4は前記パンチプレート2に取り付けられた下穴あけパンチであり、帯板材料に下穴をあけるものである。5、6は一対のねじ形成パンチであり、一方のねじ形成パンチ5は前記パンチプレート2に、またもう一方のねじ形成パンチ6は後記ダイプレートに取付けられ、両者は端面が突き合うように対向して取り付けられている。また、該一対のねじ形成パンチ5、6は、前記下穴あけパンチによりあけられた下穴の内面に1山のねじを形成するためのものであり、同形、同大とされている。そしてまた、これら一対のねじ形成パンチ5、6は、いずれも下穴より僅かに大径であり、且つ先端部外縁に両者の端面を突き合わせたとき断面V字形の溝ができる傾斜面5a、6aをねじ1山分螺旋状に設けている。
【0014】
7は前記パンチプレート2に取り付けられた外形切り抜きパンチであり、前記一対のねじ形成パンチ5、6で内面に1山のねじを形成した下穴の外周に、最終製品としてのフォーカス用ナットにおける外形と同じ外形であって一部が帯板材料に接続された状態にフォーカス用ナット本体を切り抜く外形切り抜き加工をするためのものである。
【0015】
8は前記パンチプレート2に取り付けられた切り離しパンチであり、前記外形切り抜きパンチ7による切り抜き加工で残したフォーカス用ナット本体の帯板材料との接続部分を切断して切り離すためのものである。
【0016】
9は前記パンチプレート2の下方に配置されたストリッパプレートであり、パンチホルダー1に弾性材(コイルばね)10、10を介して該パンチホルダー1と接離するよう支持され、帯板材料をパンチホルダー1の後記ダイホルダー側への下降にともなってダイホルダー側に移動させるものである。
【0017】
また、該ストリッパプレート9には、前記下穴あけパンチ4、一対のねじ形成パンチ5、6のうちの一方のパンチ5、外形切り抜きパンチ7並びに切り離しパンチ8の夫々を挿通させるパンチガイド穴11、12、13、14が形成されている。尚、前記弾性材(コイルばね)10、10はパンチホルダー1内に4箇所配置されている。15、15は前記弾性材(コイルばね)10、10の弾力によって夫々下方に突出して前記ストリッパプレート9を支持する4本の支持ピンである。
【0018】
16は前記パンチホルダー1の下方に、これと対向して設けられたダイホルダーである。17は前記ダイホルダーの上面に取り付けられたダイプレートである。
【0019】
18は前記パンチプレート2に取り付けられたパイロット穴あけパンチ、19は前記ストリッパプレート9に形成された前記パイロット穴あけパンチのガイド穴である。また、その他、図中20は帯板材料、21は下穴、22は下穴21の内面に形成された1山のねじ、23は切り抜き部分、24はフォーカス用ナット本体、24′はフォーカス用ナット本体24の帯板材料20との接続部分、25は最終製品である。
【0020】
次に、上記順送り型を用いた本発明に係るフォーカス用ナットの製造方法について説明する。
プレスラム(図示せず。)の上死点からの下降によってパンチホルダー1が下がると、ストリッパプレート9が帯板材料20を押し下げてダイプレート17に接触させる。そして、プレスラムがさらに下降して下死点に達すると、下穴あけパンチ4、一対のねじ形成パンチ5、6のうちの一方のパンチ5、外形切り抜きパンチ7並びに切り離しパンチ8の夫々がガイド穴11、12、13、14を通り抜けて帯板材料20に対して夫々の加工を施すものである。
【0021】
また、一対のねじ形成パンチ5、6による下穴21の内面への1山のねじ22の形成は、図9に示す如く、これら両者を下穴21内に上下から差し込んで加圧すると、夫々の傾斜面5a、6aによって下穴21の内面が押圧されて変形し、該傾斜面5a、6aによって形成される断面V字形の溝と同形のねじが形成されるものである。
【0022】
そして、帯板材料20を一工程分宛送ると、図2に示す如く、先ず下穴あけ加工を行い、次に下穴の内面に1山のねじを形成し、その後外形切り抜き加工を行い、最後に、外形切り抜き加工で残したフォーカス用ナット本体の帯板材料との接続部分を切断して切り離しを行う工程が連続して行われるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るフォーカス用ナットの製造方法に用いる順送り型の説明図である。
【図2】製造工程の説明図である。
【図3】ねじ形成パンチの一部省略して示した斜視図である。
【図4】ねじ形成パンチの正面図である。
【図5】図4中A部分の拡大図である。
【図6】図4中I−I線切断部拡大端面図である。
【図7】ねじ形成パンチの平面図である。
【図8】図7中B部分の拡大図である。
【図9】一対のねじ形成パンチの突き合わせた状態の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0024】
1 パンチホルダー
2 パンチプレート
4 下穴あけパンチ
5、6 一対のねじ形成パンチ
5a、6a 傾斜面
7 外形切り抜きパンチ
8 切り離しパンチ
9 ストリッパプレート
16 ダイホルダー
17 ダイプレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯板材料に、先ず下穴あけパンチとダイを用いて下穴あけ加工を施し、次いで、次工程の、下穴より僅かに大径で、夫々先端部外縁に両者の端面を突き合わせたとき断面V字形の溝ができる傾斜面をねじ1山分螺旋状に設けた一対のねじ形成パンチで上記工程であけられた下穴の内面に1山のねじを形成し、その後、次工程の外形切り抜きパンチとダイで、前記内面に1山のねじを形成した下穴の外周に、最終製品としてのフォーカス用ナットにおける外形と同じ外形であって一部が帯板材料に接続された状態にフォーカス用ナット本体を切り抜く外形切り抜き加工を施し、最後に、次工程の切り離しパンチとダイで、上記外形切り抜き加工で残したフォーカス用ナット本体の帯板材料との接続部分を切断して最終製品とするようにしたことを特徴とするフォーカス用ナットの製造方法。
【請求項2】
パンチホルダーと、前記パンチホルダー側に設けられ、帯板材料に下穴をあけるための下穴あけパンチと、前記パンチホルダー側と後記ダイプレート側に対向させて夫々設けられ、前記下穴あけパンチによりあけられた下穴の内面に1山のねじを形成するための、下穴より僅かに大径で、夫々先端部外縁に両者の端面を突き合わせたとき断面V字形の溝ができる傾斜面をねじ1山分螺旋状に設けた一対のねじ形成パンチと、前記パンチホルダー側に設けられ、前記一対のねじ形成パンチで内面に1山のねじを形成した下穴の外周に、最終製品としてのフォーカス用ナットにおける外形と同じ外形であって一部が帯板材料に接続された状態にフォーカス用ナット本体を切り抜く外形切り抜き加工をするための外形切り抜きパンチと、前記パンチホルダー側に設けられ、前記外形切り抜きパンチによる切り抜き加工で残したフォーカス用ナット本体の帯板材料との接続部分を切断して切り離すための切り離しパンチと、前記パンチホルダー側に弾性材を介してパンチホルダーと接離するよう支持され、帯板材料を前記パンチホルダー側の後記ダイホルダー側への下降にともなってダイホルダー側に移動させるストリッパプレートと、前記パンチホルダーの下方に、これと対向して設けられたダイホルダーと、前記ダイホルダーの上面に設けられたダイプレートとからなるフォーカス用ナットの製造方法に用いる順送り型。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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