説明

フォークリフトのワーク搬送用治具及びワーク搬送方法

【課題】利便性の向上を図りつつ、作業性及び安全性の向上を図ることのできるワーク搬送用治具を提供する。
【解決手段】ダクトDの搬送に際してフォークリフト31のフォーク35に取付けられるアタッチメント1は、直線状をなし、左右一対のフォーク35に架け渡されるベース壁3と、ベース壁3のうち当該ベース壁3の長手方向に沿って延びる一側部から上方に延出する立壁4とを備えて断面略L字状をなす本体部2と、ベース壁3の下面側において左右一対で設けられ、それぞれ断面略コ字状に構成されて内周側にフォーク35を挿通可能な挿通孔7を形成する差込み形成部6と、ベース壁3に取付けられ、該ベース壁3に対する上下方向への突出長を調整可能な固定用ボルト13とを備え、挿通孔7に挿通されたフォーク35を、固定用ボルト13と、差込み形成部6とで挟持することで、フォーク35に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底部が湾曲状をなす中空のワークをフォークリフトで搬送する場合に、フォークリフトのフォークに取付けられるワーク搬送用治具、及びこれを用いたワークの搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、1〜5m程度の長さに分割された円筒体よりなる丸ダクト等の中空のワークを建設現場などで搬送する際に、フォークリフトが用いられる場合がある。この場合、ワークが脱落しないように、フォークに対して直交するよう一対の角材を前後に設置するとともに針金で括り付けて固定し、一対の角材の間においてワークを人手などによりフォークに載せてから、ワーク及び角材を一緒にバンドで括り付けていた。しかしながら、径の異なるワークを運搬したり、円筒状以外の(例えば、底面が平らな)ワークを運搬したりする場合には、角材の位置をずらしたり取外したりする必要があり、その作業に多大な労力と時間を要してしまうことが懸念される。
【0003】
また、略円筒状のワークを載置可能な支持台と、支持台に載置されたワークが転がらないように支持台から上方に突出してワークの外周面を支持する位置決め部とを備えるとともに、支持台においてフォークリフトのフォークを差し込み可能な開口部が形成された搬送用治具を用いてワークを搬送するといった技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
かかる搬送用治具は、パレットと同様に、フォークリフトのフォークが開口部に差し込まれて上昇されることで開口部上縁を画定する支持面がフォークと当接するとともに、その状態からさらにフォークが上昇されることで持ち上げられる。また、フォークが下降されて搬送用治具が接地されるとともに、その状態からさらにフォークが下降されることでフォークが搬送用治具の支持面から離間し、フォークを開口部から簡単に抜き取ることができるようになっている。従って、例えば、丸ダクトを搬送した次に丸ダクトとは別のもの(例えばコンテナ等)を運ぶような場合に比較的スムースに作業を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−291334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、別の種類のワークを運搬する場合には、その都度、それに見合った位置決め部を有する搬送用治具に交換する必要がある。つまり、ワークのサイズに応じた複数パターンの搬送用治具を製造・保管しておく必要が生じる。また、搬送用治具を支持したフォークリフトのフォークが傾いたり、フォークリフトが急停止したりすると、搬送用治具がフォークから抜け出してしまうことも懸念される。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、利便性の向上を図りつつ、作業性及び安全性の向上を図ることのできるワーク搬送用治具、及びワーク搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0009】
手段1.底部が湾曲状(断面円弧状)をなすワークの搬送に際してフォークリフトのフォークに取付けられるワーク搬送用治具であって、
直線状をなし、左右一対の前記フォークに架け渡されるベース壁と、前記ベース壁のうち当該ベース壁の長手方向に沿って延びる一側部から上方に延出する立壁とを備えて断面略L字状をなす本体部と、
前記ベース壁の下面側において左右一対で設けられ、それぞれ断面略コ字状又は筒状に構成されて内周側に前記フォークを挿通可能な挿通孔を形成する差込み形成部と、
前記ベース壁又は前記差込み形成部に取付けられ、該ベース壁又は差込み形成部に対する上下方向への突出長を調整可能な固定用ボルトとを備え、
前記挿通孔に挿通された前記フォークを、前記固定用ボルトと、前記差込み形成部又は前記ベース壁とで挟持することで、前記本体部が前記フォークに固定されることを特徴とするワーク搬送用治具。
【0010】
手段1によれば、ワークを(湾曲面がフォークに支持されるように)一対のフォークに跨るようにして横向きに載置しても、フォークにワーク搬送用治具を取付けることで、ダクトがフォーク上を転がってフォークから転落するといった事態を防止することができる。また、ワーク搬送用治具は、フォークに固定される。このため、ワーク搬送用治具がフォークに対して相対的に変位してしまうといった事態を防止することができ、ワークをより安定して支持することができる。
【0011】
さらに、ワーク搬送用治具は、挿通孔に挿通されたフォークを、突出長の変更が可能な固定用ボルトと、フォークを挟んで固定用ボルトの反対側に位置する差込み形成部又はベース壁とで挟持することで、フォークに固定されている。このため、固定用ボルトを緩めれば、比較的簡単にワーク搬送用治具の固定状態を解除することができる。従って、比較的容易にワーク搬送用治具の位置を前後にずらしたり、フォークから取外したりすることができる。
【0012】
より具体的には、ワーク搬送用治具は、ワークの前方及び後方への移動を防止するべく、ワークの前方及び後方に1つずつ、すなわち、一対で使用されることが考えられる。このとき、一対のワーク搬送用治具間の距離を変更可能であることから、その距離をワークの径に合わせて設定することで、ワークの径に応じて1対1で対応するワーク搬送用治具を製造しなくても、一対のワーク搬送用治具をそのワークにしっかりとフィットさせて、位置ずれはおろかガタツキをも確実に防止することができる。従って、フォークに載るようなサイズのワークであれば、いかなるものでも本手段1のワーク搬送用治具を用いて前後の位置ずれを好適に防止することができ、利便性や安全性の向上を図ることができる。しかも、搬送するワークのサイズの変更に伴い、ワーク搬送用治具の固定状態を解除したり固定状態としたりする作業は、基本的に固定用ボルトを緩めたり締めたりするだけであって、ワークサイズ変更は固定用ボルトを緩めたまま差込み形成部をフォークに相対移動させるだけなので、作業性の向上を図ることができる。また、一対の(2つの)ワーク搬送用治具が一体となったような構成のものに比べ、重量やコストを抑制するとともに、コンパクトにまとめて保管しておくことができる。
【0013】
手段2.一対の前記固定用ボルトと前記本体部の長手方向両端部との間において前記本体部から突出し、フック状の部材を係止可能な係止部が設けられていることを特徴とする手段1に記載のワーク搬送用治具。
【0014】
手段2によれば、帯状体の両端にフック部が設けられた締め具でワークを押さえ付ける場合に、前記フック部を係止部に引っ掛けて係止させることができる。従って、締め具をダクトに一周回してから締め具の両端のフック部同士を連結するような場合に比べ、締め具の設置作業を比較的容易なものとすることができる。
【0015】
また、係止部が固定用ボルトとは別に設けられることで、係止部を固定用ボルトよりも本体部の長手方向の端部側に設けることができる。これにより、一対の係止部のピッチを比較的大きくすることができ、締め具によってワークをより安定して支持することができる。加えて、固定用ボルトに関係なく、係止部をフック部との係止に適した位置及び向きとなるように設置することができる。従って、固定用ボルトと係止部とが共通化される場合に比べ、フック部の係止作業性の向上、係止状態の安定性の向上等を図ることができる。
【0016】
手段3.前記ベース壁又は前記差込み形成部において前記挿通孔に連通する連通孔が形成されるとともに、前記貫通孔を囲むようにしてナットが固着され、
前記固定用ボルトは、前記ナットに螺着され、前記連通孔を介して、前記挿通孔に突出していることを特徴とする手段1又は2に記載のワーク搬送用治具。
【0017】
手段3によれば、固定用ボルトを螺着するための雌ねじを比較的簡単に設けることができる。従って、製造作業性の向上を図ることができる。また、本体部や差込み形成部自体に雌ねじを形成する必要がなく、本体部や差込み形成部が比較的薄肉であってもよい。さらに、市販のボルト及びナットを使用することもできる。このため、生産性の向上及びコストの削減等を図ることができる。
【0018】
尚、上記手段2の係止部がボルト(係止用ボルト)で構成される場合、本手段3で固定用ボルトに具体化された構成を、かかる係止用ボルトにも適用することができる。すなわち、「前記ベース壁又は前記立壁においてその厚み方向に貫通する貫通孔が形成されるとともに、当該貫通孔を囲むようにしてナットが固着され、前記係止用ボルトは前記貫通孔を貫通するようにして前記ナットに螺着されていること」としてもよい。加えて、ナットの固着は、溶接でもよいし接着でもよい。
【0019】
手段4.上記手段1乃至3のいずれかに記載のワーク搬送用治具を用いたワークの搬送方法であって、
前記フォークに対して前記ワーク搬送用治具が前後一対で設置されるとともに、一対の前記ワーク搬送用治具の間において前記ワークが載置されることを特徴とするワークの搬送方法。
【0020】
手段4によれば、基本的に上記手段1乃至3と同様の作用効果が奏され、さらに、予めフォークに設置されたワーク搬送用冶具の略中央に、ワークを上方から載置したのち搬送するので、多数のワークを効率よく搬送できるという作用効果も奏される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】フォークリフトで搬送されるダクト等を示す側面図である。
【図2】(a)はアタッチメントの平面図であり、(b)はアタッチメントの一部断面を含む正面図である。
【図3】図2(a)のJ−J線断面図である。
【図4】図2(a)のK−K線断面図である。
【図5】別の実施形態におけるアタッチメントを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、本実施形態では、フォークリフト31で円筒形のダクトD(丸ダクト)をワークとして、建設現場などへの搬出入等の機会として、1〜5m程度の長さに分割された多数のワークを搬送する際に、フォークリフト31のフォーク35に対してアタッチメント1が取付けられる。アタッチメント1が取付けられるフォークリフト31は、フォークリフト本体32に対して傾動可能に設けられたマスト33と、マスト33に対して昇降可能に設けられたバックレスト34とを備え、バックレスト34は、下部において左右一対のフォーク35を備えている。また、ダクトDは、ダクトDの長手方向と各フォーク35の長手方向とが交差するように、ダクトDを一対のフォーク35に跨るようにして横向きに載置されている。本実施形態のダクトDは、一対のフォーク35間の距離よりも長く(例えば2000mm)、一対のフォーク35よりも左右に張り出している。また、ダクトDの直径は、フォーク35の長さよりも短くなっている(例えば500mm)。本実施形態では、ダクトDがワークに相当し、アタッチメント1がワーク搬送用治具に相当する。
【0023】
図2(a)、(b)に示すように、アタッチメント1は、一対のフォーク35に架け渡される真っ直ぐな帯板状のベース壁3、及び、ベース壁3のうちベース壁3の長手方向に沿って延びる一側部から上方に直交して延出する立壁4を備えて断面略L字状をなす本体部2と、ベース壁3の下面側において左右一対で設けられ、それぞれ断面略コ字状に構成されて内周側に(ベース壁3との間に)フォーク35を挿通可能な挿通孔7を形成する差込み形成部6とを備えている。
【0024】
本体部2は比較的薄肉(例えば厚み3.2mm)の鉄板をL字に折り曲げることで形成されており、ベース壁3の前後幅及び立壁4の上下幅は同じ(例えばともに100mm)となっている。また、差込み形成部6は、断面略コ字状に折り曲げ形成された鉄板が前後方向及び上方向に開口する向きでベース壁3の下面に当接状態とされ、その上縁部がベース壁3の下面に溶接固定されることで構成されている。
【0025】
さらに、ベース壁3のうち各挿通孔7の上縁を画定する部位には、それぞれ上下に貫通して、挿通孔7と連通する第1貫通孔11(図4参照)がそれぞれ形成されている。また、第1貫通孔11を囲むようにして、ベース壁3の上面に対し、ナット(以下、「第1支持ナット12」と称する)が溶接固定されている。さらに、第1支持ナット12に対して上方からボルト(以下、「固定用ボルト13」と称する)が螺着されており、固定用ボルト13の先端部は、第1貫通孔11を介して、挿通孔7に突出している。
【0026】
そして、フォーク35が挿通孔7に挿通された状態で、固定用ボルト13のベース壁3下面からの突出長が大きくなるように固定用ボルト13を締めることで、挿通孔7に挿通されたフォーク35が、固定用ボルト13の先端部と、差込み形成部6の下壁部6aとで挟持される。これにより、アタッチメント1がフォーク35に対して相対変位不可能に取付けられている。一方、固定用ボルト13のベース壁3下面からの突出長が小さくなるように固定用ボルト13を緩めることで、フォーク35が挟持された状態、すなわち、アタッチメント1のフォーク35への固定状態が解消され、アタッチメント1を移動させたり、フォーク35からアタッチメント1を取外したりすることができる。
【0027】
また、ベース壁3のうち一対の固定用ボルト13が取付けられた部位よりも本体部2の長手方向両端末側の部位(一対のフォーク35の側方に張り出した部位)には、上下に貫通する第2貫通孔15(図3参照)が形成されている。尚、第2貫通孔15が形成された部位には差込み形成部6は設けられていない。また、第2貫通孔15を囲むようにして、ベース壁3の上面に対し、ナット(以下、「第2支持ナット16」と称する)が溶接固定されている。さらに、第2支持ナット16に対して下方から第2貫通孔15を介してボルト(以下、「係止用ボルト17」と称する)が螺着されている。尚、係止用ボルト17は、係止用ボルト17の頭部がベース壁3から下方に離間するようにして、第2貫通孔15を貫通した状態とされている。また、係止用ボルト17のベース壁3から下方に突出した部位には、ダクトDの搬送に際し、後述するゴムバンド21のフック部23が引っ掛けられる(係止される)ようになっている。本実施形態では、係止用ボルト17、特に、ベース壁3から下方に突出する部位によって係止部が構成される。
【0028】
さて、アタッチメント1は一対で使用され、一対のアタッチメント1の間において一対のフォーク35に跨るようにしてダクトDが横向きに載置されることとなる。より詳しく説明すると、図1等に示すように、一対のアタッチメント1は、立壁4の内面(ベース壁3側の面)同士が対向するようにして前後に離間してフォーク35に取付けられる。そして、一対のアタッチメント1の間にダクトDが載置されることで、ダクトDの最下端が一対のフォーク35にそれぞれ当接して支持されることとなる。また、一対のアタッチメント1は、その両方がフォーク35に載置されたダクトDと接触するようなピッチで配置される。つまり、ダクトDをフォーク35の側方から見ると、ダクトDは、フォーク35、及び一対のアタッチメント1の3点で支持される格好となっている。従って、ダクトDをフォーク35に直接当てて支持させることで、ダクトDからアタッチメント1に付加される加重を抑制しつつ、一対のアタッチメント1により、ダクトDの転動(回転して前後するような変位)が規制されることとなる。
【0029】
尚、図4等に示すように、本実施形態では、ベース壁3がダクトDを支持するフォーク35から上方に離間しており、アタッチメント1はベース壁3の端縁においてダクトDに当接し、ダクトDの転動を規制している。さらに、万一、ベース壁3でダクトDの転動を規制しきれず、ダクトDがベース壁3に乗り上げるような格好となっても、ダクトDは立壁4或いは固定用ボルト13に接触することとなり、そこでそれ以上の転動が規制されることとなる。
【0030】
また、上記のようにフォーク35にダクトDを載置した後、ダクトDの脱落をより確実に防止するべく、一方のアタッチメント1から他方のアタッチメント1にかけて、締め具としてのゴムバンド21が一対で装着されるようになっている。図3に示すように、ゴムバンド21は、帯状をなす伸縮可能な帯状体としてのバンド部22と、バンド部22の両端に設けられたフック部23とを備えており、バンド部22はダクトDの上方に回され、一方のアタッチメント1の係止用ボルト17に一端部側のフック部23が引っ掛けられ、他方のアタッチメント1の係止用ボルト17に他端側のフック部23が引っ掛けられることで、ダクトDを押さえ付けるようになっている。但し、ゴムバンド21は、一対のアタッチメント1に設けられる一対の係止用ボルト17のうち、相対する位置の係止用ボルト17同士を連結するのではなく、対角に配置されている係止用ボルト17同士を連結するようにしてクロスに装着されている。
【0031】
以上詳述したように、本実施形態では、ダクトDを一対のフォーク35に跨るようにして横向きに載置しても、フォーク35にアタッチメント1を取付けることで、ダクトDがフォーク35上を転がってフォーク35から転落するといった事態を防止することができる。尚、ダクトDを、その長手方向がフォーク35の長手方向に沿って延びるように載置する場合、フォーク35のピッチによってはその向きで載置できない場合があったり、載置できたとしてもバランスが悪かったりすることが懸念される。また、ダクトDの長手方向を上下にしてフォーク35に載せる場合には、載せる作業が困難なものとなることが懸念される上、バランスが悪いことが懸念される。従って、載置した場合のバランスを考慮すると、ダクトDはフォーク35の長手方向と交差するように横向きに載置されることが望ましく、また、ダクトDを横向きで載置される場合のフォーク35上を転がるといった不具合は、上記アタッチメント1を設けることで解消される。
【0032】
また、アタッチメント1は、フォーク35に固定される。このため、アタッチメント1がフォーク35に対して相対的に変位してしまうといった事態を防止することができ、ダクトDをより安定して支持することができる。
【0033】
さらに、アタッチメント1は、挿通孔7に挿通されたフォーク35を、突出長の変更が可能な固定用ボルト13と、フォーク35を挟んで固定用ボルト13の反対側に位置する差込み形成部6の下壁部6aとで挟持することで、フォーク35に固定されている。このため、固定用ボルト13を緩めれば、比較的簡単にアタッチメント1の固定状態を解除することができる。従って、比較的容易にアタッチメント1の位置を前後にずらしたり、フォーク35から取外したりすることができる。
【0034】
より具体的には、アタッチメント1は、ダクトDの前方及び後方への移動を防止するべく、ダクトDの前方及び後方に1つずつ、すなわち、一対で使用される。このとき、一対のアタッチメント1間の距離を変更可能であることから、その距離をダクトDの径に合わせて設定することで、ダクトDの径に応じて1対1で対応する搬送用治具を製造しなくても、一対のアタッチメント1をそのダクトDにしっかりとフィットさせて、位置ずれはおろかガタツキをも確実に防止することができる。従って、フォーク35に載るようなサイズのダクトDであれば、いかなるものでも本実施形態のアタッチメント1を用いて前後の位置ずれを好適に防止することができ、利便性や安全性の向上を図ることができる。しかも、搬送するダクトDのサイズの変更に伴い、アタッチメント1の固定状態を解除したり固定状態としたりする作業は、基本的に固定用ボルト13を緩めたり締めたりするだけであり、固定用ボルト13を緩めたままアタッチメント1(差込み形成部6)をフォーク35に相対移動させるだけでダクトDのサイズ変更に対処できるため、作業性の向上を図ることができる。
【0035】
また、一対のアタッチメント1が一体となったような構成のもの(例えば、ダクトDの下面を受けることのできる円弧状の受部を有するようなもの)に比べ、重量やコストを抑制するとともに、コンパクトにまとめて保管しておくことができる。さらに、ダクトDをフォーク35に直接当接させて支持させることができるため、アタッチメント1自身の必要強度(形状を維持するうえで必要な強度)を低減させることができ、省資源化、低コスト化、コンパクト化等を図ることができる。
【0036】
さらに、固定用ボルト13とは別に、一対の固定用ボルト13と本体部2の長手方向両端部との間においてベース壁3から突出し、ゴムバンド21のフック部23を係止可能な係止用ボルト17が設けられている。このため、ゴムバンド21でダクトDを押さえ付ける場合に、フック部23を係止用ボルト17に引っ掛けて係止させることができる。従って、ゴムバンド21をダクトDに一周回してからゴムバンド21の両端のフック部23同士を連結するような場合に比べ、ゴムバンド21の設置作業を比較的容易なものとすることができる。
【0037】
また、係止用ボルト17が固定用ボルト13とは別に設けられることで、係止用ボルト17を固定用ボルト13よりも本体部2の長手方向の端部側に設けることができる。これにより、一対の係止用ボルト17のピッチを比較的大きくすることができ、ゴムバンド21によってダクトDをより安定して支持することができる。加えて、固定用ボルト13に関係なく、係止用ボルト17をフック部23との係止に適した位置及び向きとなるように設置することができる。従って、固定用ボルト13と係止用ボルト17とが共通化される場合に比べ、フック部23の係止作業性の向上、係止状態の安定性の向上等を図ることができる。また、係止用ボルト17は、その頭部がベース壁3から下方に離間するようにして設けられているため、フック部23を引っ掛け易くなっている。
【0038】
さらに、固定用ボルト13及び係止用ボルト17は、ベース壁3に形成された貫通孔11、15を囲むようにしてベース壁3に固着されたナット12、16に螺着されることで、本体部2に取付けられている。このため、固定用ボルト13及び係止用ボルト17を螺着するための雌ねじを比較的簡単に設けることができる。従って、製造作業性の向上を図ることができる。また、本体部2自体に雌ねじを形成する必要がなく、本体部2が比較的薄肉であってもよい。さらに、市販のボルト及びナットを使用することもできる。このため、生産性の向上及びコストの削減等を図ることができる。
【0039】
また、多数のダクトDを順次搬送する場合は、予めフォーク35に設置された一対のアタッチメント1の略中央に、ダクトDを上方から載置して搬送し、搬送後、ダクトDのみを下ろすといった作業を繰り返し行うこととなる。このため、フォーク35をアタッチメント1ごと積み下ろしするような場合に比べ、多数のダクトDを効率よく搬送できるという作用効果が奏される。
【0040】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0041】
(a)上記実施形態では、固定用ボルト13がベース壁3(に固定された第1支持ナット12)に取付けられているが、図5に示すように、差込み形成部6の下壁部6aに対して上下に貫通する第1貫通孔11を形成するとともに、当該第1貫通孔11を囲むようにして下壁部6aに第1支持ナット12を固定し、該第1支持ナット12に対して下方から固定用ボルト13を螺着するように構成してもよい。この場合、アタッチメント1は、ベース壁3の下面においてフォーク35と面で当接して支持されることとなる。このため、アタッチメント1が上方から大きな力を受けることで固定用ボルト13が破損するといった事態を回避することができる。また、当該構成を採用する場合、ベース壁3とフォーク35との高さ位置のずれが小さくなることから、ダクトDの径等にも左右されるが、ベース壁3の前後幅と立壁4の上下幅とが同じような場合には、ダクトDはベース壁3ではなく、立壁4に当接し易くなる。
【0042】
尚、上記実施形態のように、ベース壁3に固定用ボルト13を設ける場合には、固定用ボルト13によってベース壁3とフォーク35とが離間させられるため、ベース壁3とフォーク35とで高さ位置が比較的大きくずれる傾向にあり、ダクトDは、立壁4ではなく、ベース壁3に当接し易い。但し、この場合においても、立壁4があることで、強度の向上が図られる上、ダクトDがベース壁3を乗り越えようとした場合にも立壁4で阻止することができる。
【0043】
(b)また、上記実施形態では、係止用ボルト17がベース壁3(に固定された第2支持ナット16)に取付けられているが、図5に示すように、立壁4に係止用ボルト17を取付けることとしてもよい。尚、ゴムバンド21のフック部23は、係止用ボルト17のうち頭部側ではなく先端側に引っ掛けることも可能であるが、当然頭部側に引っ掛けた方が外れ難い。また、係止用ボルト17は、フック部23を引っ掛ける部位(頭部側の部位)が、本体部2とダクトDとの間に挟まれないように設けられることが望ましい。つまり、上記実施形態のように、一対のアタッチメント1が立壁4の内面同士を対向させるようにして配置される場合には、係止用ボルト17の頭部側の部位は、ベース壁3の下面側、又は、立壁4の外面側(ベース壁3とは反対側)に位置することが望ましい。この場合、フック部23を引っ掛ける際にダクトDと立壁4との間にフック部23を入れ込む必要がなく、フック部23を引っ掛け易くなる上、引掛けたフック部23が外れ難くなる等の作用効果が奏される。
【0044】
尚、係止用ボルト17を省略し、固定用ボルト13の頭部側にゴムバンド21のフック部23を引っ掛けることも可能であるが、外れ易くなる、引っ掛け難くなる、バンド部22が損傷し易くなる等の不具合を招くおそれがあるため、別途設けることが望ましい。但し、上記(a)のように固定用ボルト13を差込み形成部6の下壁部6aに取付ける場合には、上記不具合を解消することができる。尚、係止用ボルト17を固定用ボルト13とは別に設けることで、一対の係止用ボルト17間のピッチを大きくすることができるため、ゴムバンド21でダクトDを固定した場合のより一層の安定化を図ることができる。また、ゴムバンド21のフック部23を引っ掛けるための係止部は必ずしも係止用ボルト17で構成する必要はなく、例えば、本体部2に突起を溶接したり、本体部2に突部を一体形成(折り曲げることで形成)したりすることで係止部を形成することとしてもよい。但し、固定用ボルト13と同様に、係止部をボルトで構成することで、作業性の向上を図ることができる上、本体部2等の構成の簡素化を図ることができる。さらに、突出長を変化させることもでき、利便性の向上を図ることができる。
【0045】
(c)さらに、上記実施形態では、一対のアタッチメント1が立壁4の内面同士を対向させるようにして配置されているが、立壁4の外面同士を対向させるようにして配置したり、一方側の立壁4の内面と他方側の立壁4の外面とが対向するように配置したりすることとしてもよい。例えば、一対で取付けられるアタッチメント1のうち前側(フォーク35の先端側)のものを、フォーク35の先端側に立壁4の内面が向くようにして設置することで、ダクトDをフォーク35に載せた後でも、一対のアタッチメント1間の距離を比較的容易に調整することが可能となる。つまり、ダクトDをフォーク35に載せ、ダクトDを予め固定されている後側のアタッチメント1に当接状態としてから、前側のアタッチメント1をダクトDに当接するまでスライドさせて固定することで、(ダクトDを逐一退けなくても)フォーク35と一対のアタッチメント1とでダクトDを3点支持する状態を比較的スムースかつ確実に作り出すことができる。
【0046】
(d)上記実施形態では、差込み形成部6が上方に開放した断面略コ字状に構成され、ベース壁3に溶接されて形成されているが、四角筒状に構成され、その上辺とベース壁3とを固着して形成することとしてもよい。さらに、上記実施形態では、ベース壁3と立壁4とが同じ幅であるが、異なる構成としてもよい。また、ナット12、16は、ベース壁3に溶接固定されているが、接着固定されることとしてもよい。加えて、ダクトDを押さえ付ける締め具としてはゴムバンド21に限定されるものではなく、例えば、帯状体は伸長しないがバックルを備えて長さ調節可能に構成されたものであってもよい。
【0047】
(e)上記実施形態では、ダクトDの搬送に具体化されているが、フォーク35にアタッチメント1を取付けて搬送するワークは特に限定されるものではなく、底部が湾曲状(円弧状)で、当該湾曲状部分がフォーク35に当接するようにして載置されるワークであればよい。例えば、円筒状のパイプ、円筒体の両端が閉塞されたドラム缶等が挙げられる。また、上記実施形態ではアタッチメント1を一対で使用しているが、例えば、フォークリフト31のバックレスト34等でダクトDの後面側を支持可能な場合には、アタッチメント1を1つで使用することも可能である。すなわち、フォーク35の基端部から上方に延びているバックレスト34の縦辺部にダクトDを当接させるとともに、ダクトDの前方においてダクトDに当接するようにアタッチメント1を1つ設けることとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…アタッチメント、2…本体部、3…ベース壁、4…立壁、6…差込み形成部、7…挿通孔、11…第1貫通孔、12…第1支持ナット、13…固定用ボルト、15…第2貫通孔、16…第2支持ナット、17…係止用ボルト、21…ゴムバンド、23…フック部、31…フォークリフト、35…フォーク、D…ダクト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が湾曲状をなすワークの搬送に際してフォークリフトのフォークに取付けられるワーク搬送用治具であって、
直線状をなし、左右一対の前記フォークに架け渡されるベース壁と、前記ベース壁のうち当該ベース壁の長手方向に沿って延びる一側部から上方に延出する立壁とを備えて断面略L字状をなす本体部と、
前記ベース壁の下面側において左右一対で設けられ、それぞれ断面略コ字状又は筒状に構成されて内周側に前記フォークを挿通可能な挿通孔を形成する差込み形成部と、
前記ベース壁又は前記差込み形成部に取付けられ、該ベース壁又は差込み形成部に対する上下方向への突出長を調整可能な固定用ボルトとを備え、
前記挿通孔に挿通された前記フォークを、前記固定用ボルトと、前記差込み形成部又は前記ベース壁とで挟持することで、前記本体部が前記フォークに固定されることを特徴とするワーク搬送用治具。
【請求項2】
一対の前記固定用ボルトと前記本体部の長手方向両端部との間において前記本体部から突出し、フック状の部材を係止可能な係止部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワーク搬送用治具。
【請求項3】
前記ベース壁又は前記差込み形成部において前記挿通孔に連通する連通孔が形成されるとともに、前記貫通孔を囲むようにしてナットが固着され、
前記固定用ボルトは、前記ナットに螺着され、前記連通孔を介して、前記挿通孔に突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク搬送用治具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のワーク搬送用治具を用いたワークの搬送方法であって、
前記フォークに対して前記ワーク搬送用治具が前後一対で設置されるとともに、一対の前記ワーク搬送用治具の間において前記ワークが載置されることを特徴とするワークの搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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