説明

フォーマーディスペンサー

【課題】泡切れがよく、ノズル閉塞等の弊害を起こすことのないフォーマーディスペンサーを提案する。
【解決手段】内容物の吸引、加圧、圧送に供するフォーマーディスペンサーのポンプ2において、ポペット2dに、シリンダー2aの吸引口2aに適合して吸い込み弁体を形成する先端部を有しその後端に貫通孔hが設けられた筒体2dと、一端が中空ピストン2bの末端開口2bに向けて伸延し他端が前記貫通孔hにスライド可能に嵌合するロッドdを備えた本体部分2dを設け、前記本体部分2dのロッドdに、押圧ヘッド4の押し込みエンドに至る前の段階にて貫通孔(h)との相互間に隙間tを形成してシリンダー2a内の圧力を降下させて内容物の圧送を停止するシール解除部(細径部d)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の内容物を外気と混合して泡状にして噴出させるのに好適なフォーマーディスペンサーに関するものであり、とくに内容物の噴出に際してディスペンサーのノズル内壁や内部通路、メッシュの如き発泡部材等に付着、残存するのが避けられない内容物を泡切れを良くすることで確実に取り除き、内容物の固着に起因したノズルやメッシュの閉塞等を防止し、噴出形態の安定化を図ろうとするものである。
【背景技術】
【0002】
洗顔料や整髪剤等を充填した容器では、容器内の内容物を直接泡状にして噴出させるフォーマーディスペンサーを装着したものが多用されており、これにより内容物の泡立て動作を省略した簡便な使用を実現している。
【0003】
かかるディスペンサーは、容器の口部に固定保持されるベースキャップに、内容物の吸引、加圧、圧送を司るピストンと、外気の吸引、加圧、圧送を行うエアーピストンをそれぞれ同心の直列配置とした単一のシリンダーが取り付けられており、押圧ヘッドにより各ポンプ内のピストンを同期駆動させて内容物と外気をそれぞれ各シリンダーに吸引するとともに加圧、圧送し、ポンプの出側における合流空間にて内容物と外気を相互に混合してメッシュ等の発泡部材を通過させることで内容物を泡状にして外部へ噴出させる仕組みになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−230961号公報
【0005】
ところで、上記のような従来のフォーマーディスペンサーは、内容物の噴出後にノズルの噴出路やそれに至る前の内部通路、発泡部材等に内容物が付着、残存するのが避けられず、これが固化してノズルやメッシュ開口部の閉塞を引き起こすことに起因して噴出形態が変動し均質な泡を噴出させることができない場合があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、内容物を噴出させる際に泡切れをよくすることによってノズルやメッシュ閉塞等の原因となる内容物の残留に伴う固化を防止し得る新規なフォーマーディスペンサーを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器の口部に固定保持されるベースキャップと、このベースキャップに垂下保持され容器内の内容物と外気をそれぞれ個別に、かつ、同期させて吸引、加圧、圧送する2つのポンプと、これら各ポンプの出側経路を合流させる空間領域を有し各ポンプを作動させるとともに、吸引、加圧、圧送された内容物及び外気をそれぞれ空間領域内で混合、発泡させて内部経路を通して外界へ噴出させるノズル付きの押圧ヘッドとを備えたフォーマーディスペンサーであって、
前記2つのポンプのうち、内容物の吸引、加圧、圧送に供するポンプは、容器内の内容物を吸引パイプを通して流入させる吸引口を有するシリンダーと、このシリンダー内にてスライド可能に弾性支持される中空ピストンと、この中空ピストン及び押圧ヘッドを相互につなぎ該押圧ヘッドの押し込みと復帰動作にしたがって該中空ピストンをシリンダー内で往復移動させる中空ステムと、前記シリンダーの内部に配置され押圧ヘッドの押し込みに際してシリンダーの吸引口を閉塞させ、規定圧力に達した時点でもって排出弁を開放してシリンダー内の内容物を圧送する一方、該押圧ヘッドの復帰動作にて該吸引口を開放するポペットからなり、
前記ポペットを、シリンダーの吸引口に適合して吸い込み弁体を形成する先端部を有しその後端に貫通孔を形成した筒体と、一端が中空ピストンの末端開口に向けて伸延し他端が前記貫通孔にスライド可能に嵌合するロッドを備えた本体部分とにて構成し、
前記本体部分のロッドに、押圧ヘッドの押し込みエンドに至る前の段階にて貫通孔との相互間に隙間を形成してシリンダー内の圧力を降下させて該内容物の圧送を停止するシール解除部を設けたことを特徴とするフォーマーディスペンサーである。
【0008】
上記の構成になるフォーマーディスペンサーは、外気を吸引、加圧、圧送するポンプが、内容物を吸引、加圧、圧送するポンプが内容物の圧送を停止した後においても外気の噴出を継続して行うものであって、これによりディスペンサーの中に残存する内容物は全て排出され泡切れがよくなる。
【0009】
前記フォーマーディスペンサーにおける排出弁は、ポペットの端部が中空ピストンの末端開口に適合させて開閉する構造のものや、前記中空ステムの通路に逆止弁を設けそれを開閉する構造のものを適宜選択することができる。
【発明の効果】
【0010】
内容物の圧送が停止された後においても外気(エアー)は継続して圧送、噴出するため、ディスペンサーの中、とくに混合空間からノズル先端に至るまでの通路内に残存する内容物は全て排出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明に従うフォーマーディスペンサーの実施の形態を示した図であり、1は容器の口部にねじあるいはアンダーカットの如き係合手段にて着脱自在に固定保持されるベースキャップ、2、3はベースキャップ1に垂下保持されるポンプである。このポンプ2、3のうちポンプ2は内容物を吸引、加圧、圧送するポンプであり、3はエアーを吸引、加圧、圧送するポンプであって、これらのポンプ2、3は各シリンダー毎にそれぞれ個別に組み込まれているが、シリンダー自体は一体成形された単一部材からなっており押圧ヘッドの操作により各ポンプ2、3は同期して駆動する。
【0012】
また、4はノズル付きの押圧ヘッドである。この押圧ヘッド4はポンプ2、3を駆動し、吸引、加圧、圧送された内容物及びエアーをそれぞれ空間領域内で混合、発泡させて内部通路を通して外界へ噴出させるもので、後述の中空ステムと協同して各ポンプ2、3の出側経路を合流させて空間領域(混合部)を形成する。
【0013】
また、5は押圧ヘッド4の空間領域内に配置されるジェットリング、6はジェットリング5の内側に配置され、その上下端に溶着、接着等の手段により固定されたメッシュを通して内容物を発泡させるメッシュリング、そして7は押圧ヘッド4を覆い隠してベースキャップ1に係止されるカバーである。
【0014】
上記ポンプ2のうち、内容物の吸引、加圧、圧送に供するポンプ2はエアーの吸引、加圧、圧送を行うポンプ3のシリンダー3aと同心に配置され、かつ、一体に成形された小径シリンダー2aと、このシリンダー2a内にてスプリングsを介してスライド可能に弾性支持される中空ピストン2bと、この中空ピストン2b及び押圧ヘッド4を相互につなぎ該押圧ヘッド4の押し込みと復帰動作にしたがって該中空ピストン2bをシリンダー2aで往復移動させるとともにその上方にて前記押圧ヘッド4と協同して内容物及びエアーを混合する混合部を形成する中空ステム2cと、シリンダー2aの内部に配置されたポペット2dからなる。
【0015】
上記ポペット2dは、押圧ヘッド4の押し込みに際して前記混合部の下部に配したスプリングにより押圧されてシリンダー2aの吸引口2aを閉塞させているが、押圧ヘッド4の押し込みに伴いシリンダー2aの内部が規定圧力に達した時点でもって上部に位置するスプリングの反発力に抗して中空ピストン2bの末端開口2bを開放してシリンダー2a内の内容物を圧送し、該押圧ヘッド4の復帰動作にて吸引口2aを開放する。
【0016】
ポペット2dは中空ピストン2bのスライドに追随してスライドするもので、シリンダー2aの吸引口2aに適合して吸い込み弁体を形成する先端部を有しその後端に貫通孔hが設けられた筒体2dと、中空ピストン2bの末端開口2bに適合して該末端開口2bを閉塞状態に維持する排出弁vを有し前記貫通孔hにおいてスライド移動可能に嵌合するロッドdを備えた本体部分2dからなっており、本体部分2dのロッドdには、その要部を拡大して図2に示すように、押圧ヘッド4の押し込みエンドに至る前の段階で貫通孔hとの相互間に隙間tを形成してシリンダー2a内の圧力を降下させて内容物の圧送を停止するシール解除部として細径部dが設けられている。
【0017】
フォーマーディスペンサーにて容器内の内容物を噴出させるに当たり、カバー7を取り外し押圧ヘッド4を最下端(押し込みエンド)まで押し込んだ後に押し込みに係る力を取り除くと、押圧ヘッド4はスプリングsの復元力によって元の位置へと復帰することとなり、この時、排出弁vはその上部に位置するスプリングにより押圧され閉塞状態に維持されていることからシリンダー2a内は負圧になり、容器内の内容物は吸引パイプ8、吸引口2aを経てシリンダー2a内に吸引される。ポンプ3については、やはりシリンダー3a内が負圧となりピストン3bに配された環状の逆止弁3bを通してシリンダー3a内にエアーが導入される。なお、シリンダー3aの壁部に設けられた開口3aは、内容物の噴出に伴う容器内の負圧を解除するエアー導入孔であり、押圧ヘッド4の押し込みにより開口し、外気を容器内へと導入する。
【0018】
押圧ヘッド4が初期姿勢に復帰したのち、図3に示すように再度押圧ヘッド4を押し込むと、ピストン3bが中空ステム2cに対して一定の距離をおいて移動可能に組み付けられているため、まず、中空ピストン2bが押し込まれ、ピストン3bの中空ステム2cへの組み付け部を構成する筒部下端が中空ステム2cの中間外周部に形成された溝部から離間し、エアーの導入通路が開放される。その後、中空ピストン2bが一定の距離を移動した後、ピストン3bも押し込まれることになり、中空ピストン2b、ピストン3bによってシリンダー2a及びシリンダー3aの内部がそれぞれ加圧され、シリンダー2aについては所定の圧力に達した時、中空ピストン2bの末端2bにおけるポペット2dの排出弁vが開となり、加圧された内容物が押圧ヘッド4の空間領域に配置されたメッシュリング6に向けて排出される一方、シリンダー3aについては加圧されたエアーが中空ステム2cと押圧ヘッド4の内壁との間で形成される隙間を通して押圧ヘッド5の空間領域に配置されたメッシュリング6に向けて排出される。
【0019】
ポンプ2、3によって加圧、圧送された内容物及びエアーは押圧ヘッド4の空間領域、すなわち、押圧ヘッド4と中空ステム2cにより構成される混合部において混合、発泡され、メッシュリング6に固定されたメッシュを通過することによりさらに発泡、整泡された後、内部通路を通ってノズルの先端から外界へと噴出される。
【0020】
ポンプ2による内容物の加圧、圧送は、ポペット2dのロッドdが筒体2dの貫通孔hにおいて嵌合している部位が密に接してスライドしている間継続して行われ、図4に示す如く、ロッドdの細径部dが貫通孔hに到達してその相互間に隙間tが形成されてシリンダー2a内の圧力が降下することで内容物の圧送は停止される。
【0021】
ポンプ3によるエアーの加圧、圧送は、内容物の加圧、圧送が停止した状態においても継続して行われ、圧送されたエアーによって押圧ヘッド4の内部経路に存在する内容物は全て外界へと排出される。
【0022】
図5〜7は本発明にしたがうフォーマーディスペンサーの他の実施の形態を示したものであり、ポペット2dが中空ピストン2bの末端開口2bに適合して該末端開口2bを閉状態に維持する排出弁vを構成する前掲図1〜3に示した実施の形態に代えて、中空ステム2cの通路(混合部)にボール型の逆止弁9を設けた構成例であって、逆止弁9はジェットリング5の下端に保持されるスプリングsにより下方に向けて押圧されている。
【0023】
上記の構成になるフォーマーディスペンサーは、ポペット2dの本体部分2dが中空ピストン2bの末端開口2bを挿通して上方へ伸びた形状を呈しており、その上端には棒状突出部pが形成され、末端開孔2bの出側端には複数の羽部rが形成されていて、押圧ヘッド4の押し込みに際して、逆止弁9の下端をスプリングsの反発力に抗して強制的に押し上げて開弁するもので、それ以外の動作は基本的には前掲の実施の形態と同様となる。
【0024】
図8(a)(b)は本発明に従うさらに他の実施の形態をシール解除部について示した図である。図8(a)はシール解除部としての細径部dを形成することなく断面半月状の切欠部dを設けたものであり、図8(b)はロッドdに直接縦長の開口dを設けたものである。
【0025】
上掲図8(a)(b)に示すようなポペット2dを有するフォーマーディスペンサーにおいても、押圧ヘッド4の押し込みに伴いロッドdと貫通孔hとの相互間に隙間tが形成されてシリンダー2a内の圧力が降下することで内容物の圧送が停止され前掲の細径部dと同等の効果を奏する。なお、上記断面半月形状の切欠部dや縦長の開口dは細径部dを形成したものにおいても適用できるものであり、この点については限定されない。また、図示はしないが、シール解除部該当箇所をロッドdと同一の径として縦あるいは斜め方向に伸びる少なくとも一本の溝部を形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
ノズル詰まりやメッシュの目詰まりによる噴出不良を回避した泡切れのよいフォーマーディスペンサーが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明にしたがうフォーマーディスペンサーの実施の形態を示した図である。
【図2】本発明にしたがうフォーマーディスペンサーの押圧ヘッドの押し込み状態における要部の拡大図である。
【図3】図1に示したフォーマーディスペンサーの泡噴出状況の説明図である。
【図4】図1に示したフォーマーディスペンサーの泡切れ状況の説明図である。
【図5】本発明にしたがうフォーマーディスペンサーの他の実施の形態を示した図である。
【図6】図5に示したフォーマーディスペンサーの泡噴出状況を示した図である。
【図7】図5に示したフォーマーディスペンサーの泡切れ状況を示した図である。
【図8】(a)(b)は本発明にしたがうフォーマーディスペンサーの他の実施の形態をポペットの要部について示した図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ベースキャップ
2 ポンプ
2a シリンダー
2b 中空ピストン
2c 中空ステム
2d ポペット
2d 筒体
2d 本体部分
3 ポンプ
3a シリンダー
3b ピストン
3b 逆止弁
4 押圧ヘッド
5 ジェットリング
6 メッシュリング
7 カバー
8 吸引パイプ
9 逆止弁
s スプリング
d ロッド
細径部
断面半月状の切欠部
縦長の開口
p 棒状突出部
r 羽部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に固定保持されるベースキャップと、このベースキャップに垂下保持され容器内の内容物と外気をそれぞれ個別に、かつ、同期させて吸引、加圧、圧送する2つのポンプと、これら各ポンプの出側経路を合流させる空間領域を有し各ポンプを作動させるとともに、吸引、加圧、圧送された内容物及び外気をそれぞれ空間領域内で混合、発泡させて内部経路を通して外界へ噴出させるノズル付きの押圧ヘッドとを備えたフォーマーディスペンサーであって、
前記2つのポンプのうち、内容物の吸引、加圧、圧送に供するポンプは、容器内の内容物を吸引パイプを通して流入させる吸引口を有するシリンダーと、このシリンダー内にてスライド可能に弾性支持される中空ピストンと、この中空ピストン及び押圧ヘッドを相互につなぎ該押圧ヘッドの押し込みと復帰動作にしたがって該中空ピストンをシリンダー内で往復移動させる中空ステムと、前記シリンダーの内部に配置され押圧ヘッドの押し込みに際してシリンダーの吸引口を閉塞させ、規定圧力に達した時点でもって排出弁を開放してシリンダー内の内容物を圧送する一方、該押圧ヘッドの復帰動作にて該吸引口を開放するポペットからなり、
前記ポペットを、シリンダーの吸引口に適合して吸い込み弁体を形成する先端部を有しその後端に貫通孔を形成した筒体と、一端が中空ピストンの末端開口に向けて伸延し他端が前記貫通孔にスライド可能に嵌合するロッドを備えた本体部分とにて構成し、
前記本体部分のロッドに、押圧ヘッドの押し込みエンドに至る前の段階にて貫通孔との相互間に隙間を形成してシリンダー内の圧力を降下させて内容物の圧送を停止するシール解除部を設けたことを特徴とするフォーマーディスペンサー。
【請求項2】
外気を吸引、加圧、圧送するポンプは、内容物を吸引、加圧、圧送するポンプによる内容物の圧送を停止した後においても外気の噴出を継続して行うものである、請求項1記載のフォーマーディスペンサー。
【請求項3】
前記ポペットは、中空ピストンの末端開口に適合して該末端開口を閉状態に維持する排出弁を形成する請求項1又は2記載のフォーマーディスペンサー。
【請求項4】
前記中空ステムの通路に排出弁を構成する逆止弁を有する請求項1又は2記載のフォーマーディスペンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−150289(P2006−150289A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347091(P2004−347091)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】