説明

フシコッカン合成キメラ型酵素およびその遺伝子

【課題】抗ガン剤として有望なコチレニンおよび12-デオキシフシコクシン類、ならびにその誘導体の製造原料として有用なフシコッカ-2,10(14)-ジエンの大量生産に有効に使用できる新規酵素及びその遺伝子を提供する。また当該酵素または当該酵素の製造のために使用されるベクター及び形質転換体を用いてフシコッカ-2,10(14)-ジエンを製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素は、N端領域に配列番号1に記載するアミノ酸配列またはその機能的同等配列からなるテルペン環化酵素ドメイン、およびC端領域に配列番号2に記載するアミノ酸配列またはその機能的同等配列からなるプレニルトランスフェラーゼドメインを有することを特徴とする。当該酵素をコードする遺伝子を有する形質転換体を培養することにより、当該酵素ならびにフシコッカ-2,10(14)-ジエンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フシコクシン生合成の中間体であるフシコッカ-2,10(14)-ジエン(Fusicocca-2,10(14)-diene)の合成に関与する酵素(フシコッカン合成キメラ型酵素)及びその遺伝子に関する。また本発明は、当該酵素の製造方法、並びにその製造のために使用されるベクター及び形質転換体に関する。さらに、本発明は当該酵素または当該酵素の製造に使用される上記ベクターもしくは形質転換体を用いてフシコッカ-2,10(14)-ジエンを製造する方法に関する。なお、上記本発明の酵素は、テルペン環化酵素ドメインとプレニルトランスフェラーゼドメインからなるキメラ型酵素である。従って本発明は、当該キメラ型酵素を構成する各酵素(テルペン環化酵素、プレニルトランスフェラーゼ)、およびそれらの遺伝子にも関する。
【背景技術】
【0002】
フシコクシン(Fusicoccin A:FC-A、Fusicoccin J:FC-J)は、アーモンドあるいはモモの小枝や葉に萎凋病を引き起こす植物病原菌真菌〔PhomopsisFusicoccumamygdali〕の主な二次代謝産物として単離されたジテルペン配糖体である(非特許文献1または2など参照)。一方、構造的に極めて類似したコチレニン(Cotylenin A:CN-A)が、Cladosporium属に属する糸状菌の一菌株(sp.501-7W)から単離されている(非特許文献3など参照)。これらの化合物は、下式で示すように、いずれも5-8-5員環が縮環したフシコッカン型ジテルペン配糖体であり、極めて類似した化学構造を有している。
【0003】
【化1】

【0004】
このため、フシコクシンおよびコチレニンは、強力な植物ホルモン様活性を有するなど、高等植物に対して同一の生理活性作用を有していることが知られており、いずれも植物生理学における生化学試薬として汎用されている。
【0005】
さらに最近になって、コチレニンにヒト骨髄性白血病細胞に対する分化誘導活性があることが見出され、その癌化学療法剤としての応用が期待されている(非特許文献4など)。しかしながら、Cladosporium属の新種と思われるコチレニン生産菌(sp.501-7W)は、長く保存し継代培養を繰り返す過程で絶えてしまい、今後の供給の見通しは全く立っていない。そこで、化学構造的に極めて類似するフシコクシンからコチレニンまたはコチレニン様活性を有する誘導体を供給することが待望される。
【0006】
また、本発明者らの研究により、フシコクシンには動物細胞に対する分化誘導活性はないものの、それから12位の水酸基を除去した12-デオキシフシコクシン類には細胞分化誘導活性があり、その活性に基づいて抗ガン活性を有することが確認されている(非特許文献5)。そこで、コチレニンと同様、癌化学療法剤としての用途が期待される12-デオキシフシコクシン類についても、その製造方法、特に大量に生産する方法の確立が望まれる。
【0007】
一方、フシコクシン(フシコクシンAやJ)は、植物病原菌真菌〔PhomopsisFusicoccumamygdali〕中で、ゲラニルゲラニル2リン酸(Geranylgeranyl diphosphate:GGDP)を出発物質として、中間体フシコッカ-2,10(14)-ジエン(Fusicocca-2,10(14)-diene)(下式中、5で示す)を経て、生合成されることが知られている(非特許文献6)。
【0008】
【化2】

【0009】
かかる中間体フシコッカ-2,10(14)-ジエンは、コチレニンおよび12-デオキシフシコクシン類の基本骨格である、5-8-5員環が縮環したフシコッカン型ジテルペン骨格を有しているため、これを原料として、前述するコチレニンや12-デオキシフシコクシン類を始めとする、抗ガン剤として有効な化合物が製造できる可能性がある。
【0010】
しかし、現在、フシコッカ-2,10(14)-ジエンは、植物病原菌真菌〔PhomopsisFusicoccumamygdali〕から極わずか得られるのみであり、これを原料として種々の化合物を創製することは困難である。またフシコッカ-2,10(14)-ジエンを化学合成する方法は知られているものの、その効率は必ずしもよくない(非特許文献7)。
【0011】
このため、コチレニンや12-デオキシフシコクシン類などの製造原料となりえるフシコッカ-2,10(14)-ジエンを大量に製造する方法が求められている。
【非特許文献1】A.Ballio, et al., Experimantia, 24, 631 (1968)
【非特許文献2】A.Ballio, et al., Experimantia, 30, 844 (1974)
【非特許文献3】T. Sassa, Agric. Biol. Chem., 35, 1415 (1971)
【非特許文献4】K, Asahi, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun, 238, 758 (1997)
【非特許文献5】加藤修雄、「フシコクシン型ジテルペン配糖体の抗癌活性」、第22回Combinatorial Chemistry研究会要旨集、平成18年4月19日発行
【非特許文献6】T. Sassa, et al., Tetrahedron Letters 41 (2000) 2401-2404
【非特許文献7】J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 2473-2474 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、抗ガン剤として有望なコチレニンおよび12-デオキシフシコクシン類、ならびにその誘導体の製造原料として有用なフシコッカ-2,10(14)-ジエンの大量生産に有効に使用できる新規酵素及びその遺伝子を提供することである。また本発明は、当該酵素の製造方法、並びにその製造のために使用されるベクター及び形質転換体に関する。さらに、本発明は当該酵素または当該酵素の製造のために使用されるベクター及び形質転換体を用いてフシコッカ-2,10(14)-ジエンを製造する方法に関する。
【0013】
なお、上記酵素は、テルペン環化酵素ドメインとプレニルトランスフェラーゼドメインからなるキメラ型酵素である。従って、本発明は、当該キメラ型酵素を構成する各酵素(テルペン環化酵素、プレニルトランスフェラーゼ)、およびそれらの遺伝子を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために、フシコクシンの生合成中間体であるフシコッカ-2,10(14)-ジエンの生合成に関与する環化酵素遺伝子の取得を目的として鋭意研究を重ねていたところ、フシコッカ-2,10(14)-ジエンの生合成原料であるゲラニルゲラニル2リン酸(GGDP)を合成する遺伝子(GGDP合成遺伝子:GGS)を対象とした遺伝子歩行と縮重プライマーを用いたRT-PCRにより、上記目的に適ったテルペン環化酵素遺伝子の取得に成功し、当該遺伝子産物(酵素)に、GGDPを環化してフシコッカ-2,10(14)-ジエンに変換する作用があることを確認した。さらに、当該酵素は、当該テルペン環化活性(テルペンシクラーゼ活性)に加えて、プレニル鎖伸長活性(プレニルトランスフェラーゼ活性)も有しており、点変異実験および切断実験により、当該酵素は、N末端側とC末端側のそれぞれにテルペン環化酵素ドメインとプレニルトランスフェラーゼドメインを有するキメラ型酵素であることが確認された。また、本酵素を過剰発現させた大腸菌内でフシコッカ-2,10(14)-ジエンが大量に蓄積することから、当該酵素は、生体内に存在するイソプレン単位から、フシコッカ-2,10(14)-ジエンの生合成原料(基質)となるゲラニルゲラニル2リン酸(GGDP)を自ら合成し、それを利用してフシコッカ-2,10(14)-ジエンを効率的に合成する機能を有する特異な酵素であることが判明した。
【0015】
本発明は、これらの知見に基づいて完成したものであり、下記の態様を含むものである。
【0016】
(I)フシコッカン合成キメラ型酵素
(I-1)N端領域に(a)または(b)に記載するアミノ酸配列からなるテルペン環化酵素ドメイン、およびC端領域に(c)または(d)に記載するアミノ酸配列からなるプレニルトランスフェラーゼドメインを有するフシコッカン合成キメラ型酵素:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列、
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列、
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【0017】
(I-2)下記(A)または(B)に記載するアミノ酸配列からなる、(I-1)に記載するフシコッカン合成キメラ型酵素:
(A)配列番号3に示すアミノ酸配列、
(B)配列番号3において、1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、テルペンシクラーゼ活性およびプレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【0018】
(II)フシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子
(II-1)5’側領域に(a)または(b)に記載するアミノ酸配列からなるテルペン環化酵素ドメインをコードする塩基配列、および3’側領域に(c)または(d)に記載するアミノ酸配列からなるプレニルトランスフェラーゼドメインをコードする塩基配列を有するフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列、
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列、
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【0019】
(II-2)下記(A)または(B)に記載するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する、請求項3に記載するフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子:
(A)配列番号3に示すアミノ酸配列、
(B)配列番号3において、1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、テルペンシクラーゼ活性およびプレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【0020】
(II-3)5’側領域に(i)または(ii)に記載するテルペン環化酵素ドメインをコードする塩基配列、および3’側領域に(iii)または(iv)に記載するプレニルトランスフェラーゼドメインをコードする塩基配列を有する、(II-1)または(II-2)に記載するフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子:
(i)配列番号4に示す塩基配列、
(ii)配列番号4に示す塩基配列と少なくとも85%の同一性を有する塩基配列であって、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(iii)配列番号5に示す塩基配列、
(iv)配列番号5に示す塩基配列と少なくとも85%の同一性を有する塩基配列であって、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
【0021】
(II-4)下記(I)または(II)に記載する塩基配列を有する、(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載するフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子:
(I)配列番号6に示す塩基配列、
(II)配列番号6に示す塩基配列と少なくとも85%の同一性を有する塩基配列であって、テルペンシクラーゼ活性およびプレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
【0022】
(III)フシコッカン合成キメラ型酵素の製造およびそれに使用する材料
(III-1)(II-1)乃至(II-4)のいずれかに記載するフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子を含有する組み換えベクター。
(III-2)(III-1)に記載する組み換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
(III-3)宿主細胞が大腸菌である(III-2)に記載する形質転換体。
(III-4)(III-2)または(III-3)に記載する形質転換体を培地で培養する工程、および必要に応じて、得られる培養物からテルペンシクラーゼ活性およびプレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質を採取する工程を有する、(I-1)または(I-2)に記載するフシコッカン合成キメラ型酵素の製造方法。
【0023】
(IV)フシコッカ-2,10(14)-ジエンの製造方法
(III-2)または(III-3)に記載する形質転換体を培地で培養する工程、および必要に応じて、得られる培養物からフシコッカ-2,10(14)-ジエンを採取することを特徴とする、フシコッカ-2,10(14)-ジエンの製造方法。
【0024】
(V)テルペン環化酵素およびその遺伝子
(V-1)下記(a)または(b)に記載するアミノ酸配列からなるテルペン環化酵素:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【0025】
(V-2)(a)または(b)に記載するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるテルペン環化酵素遺伝子:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【0026】
(V-3)下記(i)または(ii)に記載する塩基配列からなる(V-2)に記載するテルペン環化酵素遺伝子:
(i)配列番号4に示す塩基配列、
(ii)配列番号4に示す塩基配列と少なくとも85%の同一性を有する塩基配列であって、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(VI)プレニルトランスフェラーゼおよびその遺伝子
(VI-1)下記(c)または(d)に記載するアミノ酸配列からなるプレニルトランスフェラーゼ:
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列、
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【0027】
(VI-2)(c)または(d)に記載するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるプレニルトランスフェラーゼ遺伝子:
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列、
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【0028】
(VI-3)下記(iii)または(iv)に記載する塩基配列からなる(VI-2)に記載するプレニルトランスフェラーゼ遺伝子:
(iii)配列番号5に示す塩基配列、
(iv)配列番号5に示す塩基配列と少なくとも85%の同一性を有する塩基配列であって、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
【0029】
なお、本発明において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さは特に制限されるものではない。従って、本明細書でいう「遺伝子」または「DNA」とは、特に言及しない限り、ゲノムDNAを含む2本鎖DNA、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)及び該正鎖に対して相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖、逆鎖)、並びに合成DNAが含まれ、さらに「遺伝子」にはRNAも含まれる。また「遺伝子」または「DNA」は、本発明の効果を保有する限りにおいて、コード領域(シグナルペプチド領域を含む)以外に、例えば発現制御領域、シグナル領域、エキソン、イントロンを含むことができる。
【0030】
また、特に言及しない限り、本発明でいう「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生理学的機能が同等であるタンパク質(例えば、同族体、変異体または誘導体など、本明細書では「機能的同等物」ともいう)をコードする「遺伝子」または「DNA」が含まれる。本明細書では、かかる「遺伝子」または「DNA」を、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の「ホモログ」ともいう。かかる「ホモログ」としては、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の相補鎖に対して、ストリンジェントな条件で、ハイブリダイズする塩基配列を有する「遺伝子」または「DNA」を挙げることができる。
【発明の効果】
【0031】
フシコッカ-2,10(14)-ジエンは、コチレニンおよび12-デオキシフシコクシン類の基本骨格である、5-8-5員環が縮環したフシコッカン型ジテルペン骨格を有しているため、これを原料として、前述するコチレニンや12-デオキシフシコクシン類を始めとする、抗ガン剤として有効な化合物が製造できる可能性がある。しかし、前述するように、現在、その効率的な製造方法はなく、これを原料として種々の化合物を創製することは困難である。本発明が提供するフシコッカン合成キメラ型酵素は当該フシコッカ-2,10(14)-ジエンを合成する酵素であり、大腸菌などの微生物を用いることによって、抗ガン剤として有用なコチレニンや12-デオキシフシコクシン類の製造原料となりえるフシコッカ-2,10(14)-ジエンを大量に製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(I)フシコッカン合成キメラ型酵素
本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素は、(1)プレニルトランスフェラーゼドメインと(2)テルペン環化酵素ドメインの2つの機能性ドメインを有することを特徴とする。このため、当該酵素は、かかる2つの機能性ドメインに基づいて、C5のイソプレン単位の鎖伸長反応を触媒する作用(プレニルトランスフェラーゼ活性)と、生成した化合物を環化する反応を触媒する作用(テルペンシクラーゼ活性)の2つの酵素作用を有する。
【0033】
ここで(1)プレニルトランスフェラーゼドメイン(以下、単に「PTドメイン」ともいう)をコードするアミノ酸配列としては、好ましくは配列表:配列番号2で示される385のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を挙げることができる。しかし、当該PTドメインは、かかる特定のアミノ酸配列からなるものに制限されず、その機能的同等物であってもよい。ここで機能的同等物としては、配列番号2に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列からなり、上記配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様に、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するものである。好ましくは、上記配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様に、C5のイソプレン単位の鎖伸長反応を触媒して炭素鎖長20のゲラニルゲラニル2リン酸(以下、「GGDP」という)を生成するプレニルトランスフェラーゼ活性を有するもの、より好ましくは3-イソペンテニルピロリン酸(以下、「IPP」という)と、3,3-ジメチルアリルピロリン酸(以下、「DMAPP」という),ゲラニルピロリン酸(以下、「GPP」という)あるいはファルネシルピロリン酸(以下、「FPP」という)とを基質として、上記GGDPを生成するプレニルトランスフェラーゼ活性を有するものである。かかる機能的同等物としてより好ましくは、配列番号2に示すアミノ酸配列と、アミノ酸配列において85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有し、且つ上記のプレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質を挙げることができる。以下、本明細書では配列番号2で示されるPTドメインの機能的同等物をコードするアミノ酸配列を、配列番号2で示すアミノ酸配列の「機能同等配列」と称する。なお、2つのアミノ酸配列を対比した場合における配列の同一性は、当該配列間で同一であるアミノ酸数の、全アミノ酸数に対する百分率で示される(以下において同じ)。
【0034】
上記の原理に従い、2つのアミノ酸配列における配列の同一性は、Karlin および Altschul のアルゴリズム[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 87, 2264-2268 (1990)およびProc. Natl. Acad. Sci., USA, 90, 5873-5877 (1993)]により、決定することができる。このようなアルゴリズムを用いたプログラムとしては、BLASTプログラム [Altschul et al., J. Mol. Biol., 215, 403-410 (1990)]、及び当該BLASTより感度良く配列同一性を決定することのできるGapped BLASTプログラム[Nucleic Acids Res., 25, 3389-3402, (1997)]を挙げることができる。これらのプログラムは、例えば米国National Center for Biotechnology Informationのインターネット上のウェブサイトにおいて利用可能である。
【0035】
なお、プレニルトランスフェラーゼ活性は、測定対象とするタンパク質の存在下で、IPPと、DMAPP,GPPあるいはFPPとを反応させて、反応産物の炭素鎖長を測定することによって評価することができる。
【0036】
具体的には、下記の方法を例示することができる:
(1)基質として、標識されたIPP(例えば[1-14C]IPP)と、DMAPP、GPPあるいはFPPを含む反応液に、測定対象とするタンパク質(被験酵素)を加えて反応させる。なお、上記反応液には、他成分として、マグネシウムなどの2価の金属イオン、界面活性剤、酵素安定化剤または緩衝液を配合してもよい。
(2)反応後、等量のn−ヘキサン抽出処理し、反応生成物を抽出する。
(3)抽出溶媒を濃縮後、メタノール、酸性側に緩衝能を有する緩衝液(pH5-6)、および界面活性剤を含む溶液中で、Acid phosphataseを作用させて、脱リン酸化する。
(4)反応後、n−ヘキサン反応産物を抽出し、得られた抽出物をTLCで展開して、ベーター線検出装置を用いて反応産物の炭素鎖長を決定する。
【0037】
炭素鎖長決定の結果、上記反応(1)によって、炭素数20のGGDPの生成が認められる場合は、当該測定対象のタンパク質にプレニルトランスフェラーゼ活性があると判断することができる。
【0038】
また(2)テルペン環化酵素ドメイン(以下、単に「TCドメイン」ともいう)をコードするアミノ酸配列としては、好ましくは配列表:配列番号1で示される334のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を挙げることができる。しかし、当該TCドメインは、かかる特定のアミノ酸配列からなるものに制限されず、その機能的同等物であってもよい。ここで機能的同等物としては、配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列からなり、上記配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様にテルペンシクラーゼ活性を有するものである。より好ましくは、上記配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様に、GGDPを原料としてフシコッカ-2,10(14)-ジエンを生成するテルペンシクラーゼ活性を有するものである。かかる機能的同等物としてより好ましくは、配列番号1に示すアミノ酸配列と、アミノ酸配列において85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有し、且つ上記のテルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質を挙げることができる。以下、本明細書では配列番号1で示されるTCドメインの機能的同等物をコードするアミノ酸配列を、配列番号1で示すアミノ酸配列の「機能同等配列」と称する。
【0039】
なお、テルペンシクラーゼ活性は、測定対象とするタンパク質とGGDPとを反応させて、フシコッカ-2,10(14)-ジエンの生成の有無を確認することによって評価することができる。
【0040】
具体的には、下記の方法を例示することができる:
(1)GGDPを含む反応液に、測定対象とするタンパク質(被験酵素)を加えて反応させる。なお、上記反応液には、他成分として、マグネシウムなどの2価の金属イオン、界面活性剤、酵素安定化剤または緩衝液を配合してもよい。
(2)反応後、n−ヘキサン反応生成物を抽出する。
(3)溶出液を濃縮した後、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)または液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)などの分析に供して、生成物を同定する。
【0041】
分析の結果、上記反応(1)によって、フシコッカ-2,10(14)-ジエンの生成が認められる場合は、当該測定対象のタンパク質にテルペンシクラーゼ活性があると判断することができ。
【0042】
本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素は、N端領域に上記のTCドメインを有し、C端領域に上記のPTドメインを有することを特徴とする。好ましくはN端領域のTCドメインに続いて、そのC末端側にPTドメインがタンデム結合してなるものを挙げることができる。なお、フシコッカン合成キメラ型酵素は、PTドメインに基づくプレニルトランスフェラーゼ活性、およびTCドメインに基づくテルペンシクラーゼ活性が妨げられない限り、N末端側のTCドメインとC末端側のPTドメインと間に1もしくは複数の任意のアミノ酸残基を有するものであってもよい。
【0043】
本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素として、好ましくは配列表:配列番号3で示される719のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。しかし、本発明の酵素は、かかる特定のアミノ酸配列からなるタンパク質に制限されず、その機能的同等物であってもよい。ここで機能的同等物としては、配列番号3に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列からなり、上記配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様に、プレニルトランスフェラーゼ活性およびテルペンシクラーゼ活性を有するものである。より好ましくは、上記配列番号3で示されるタンパク質と同様に、C5のイソプレン単位の鎖伸長反応を触媒してGGDPを生成するプレニルトランスフェラーゼ活性(好ましくはIPPと、DMAPP,GPPもしくはFPPとを基質として、GGDPを生成するプレニルトランスフェラーゼ活性)と、GGDPを原料としてフシコッカ-2,10(14)-ジエンを生成するテルペンシクラーゼ活性を有するものである。かかる機能的同等物としてより好ましくは、配列番号3に示すアミノ酸配列と、アミノ酸配列において85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有し、且つ上記のプレニルトランスフェラーゼ活性とテルペンシクラーゼ活性とを有するタンパク質を挙げることができる。以下、本明細書では配列番号3で示されるフシコッカン合成キメラ型酵素の機能的同等物をコードするアミノ酸配列を、配列番号3で示すアミノ酸配列の「機能同等配列」と称する。
【0044】
なお、本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素は、本発明で開示するアミノ酸配列に基づいて化学的または遺伝子工学的手法によって製造することができる。遺伝子工学的手法による製造方法の詳細については、後述する。また、アミノ酸配列における改変は、当業界において既に公知な方法、例えば部位特異的変異導入法[Current Protocols I molecular Biology, edit. Ausubel et al., John Wily & Sons, Section 8. 1-8.5 (1987)]等を用いて、改変しようとするアミノ酸配列に、適宜、置換、欠失、挿入、付加、逆位などの変異を導入することによって行うことができる。
【0045】
(II)フシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子
本発明はまた、上記のフシコッカン合成キメラ型酵素の遺伝子を提供する。なお、ここでいう遺伝子には、前述するように、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA(組換えDNA)、ならびにRNAが含まれる。
【0046】
当該遺伝子は、前述するフシコッカン合成キメラ型酵素をコードする塩基配列を有するものであればよい。具体的には、(3)配列番号2に示すアミノ酸配列またはその機能同等配列からなるプレニルトランスフェラーゼドメイン(PTドメイン)をコードする塩基配列と、(4)配列番号1に示すアミノ酸配列またはその機能同等配列からなるテルペン環化酵素ドメイン(TCドメイン)をコードする塩基配列を有する。
【0047】
ここで(3)PTドメインをコードする塩基配列としては、好ましくは配列表:配列番号5に示す塩基配列を挙げることができる。なお、当該配列番号5に示す塩基配列は、配列番号2に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列である。
【0048】
しかし、PTドメインをコードする塩基配列は、かかる特定の塩基配列に制限されず、前述する配列番号2で示すアミノ酸配列の機能同等配列をコードする塩基配列であってもよい。かかる塩基配列として、具体的には、配列番号5で示される塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を挙げることができる。ストリンジェントな条件としては、BergerとKimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol.152, Academic Press, San Diego, CA, USA, 1987)に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えば、ハイブリダイズ後の洗浄条件(いわゆる、これが「ストリンジェントな条件」)として、6 x ssc (1 x sscの組成;0.15 M NaCl, 0.015 M クエン酸ナトリウム、pH 7.0), 0.5% SDS, 5Xデンハート及び100 mg/mlニシン精子DNA)を含む溶液にプロ-ブと共に65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる(Sambrookら、 Molecular Cloning-a Loboratory Mannual, 2nd ed.)(本明細書において以下同じ)。
【0049】
好ましくは、配列番号5で示される塩基配列と、塩基配列において85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列である。以下、本明細書ではかかる塩基配列を、配列番号5の「ホモログ配列」とも称する。
【0050】
また(4)TCドメインをコードする塩基配列としては、好ましくは配列表:配列番号4に示す塩基配列を挙げることができる。なお、当該配列番号4に示す塩基配列は、配列番号1に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列である。
【0051】
しかし、TCドメインをコードする塩基配列は、かかる特定の塩基配列に制限されず、前述する配列番号1で示すアミノ酸配列の機能同等配列をコードする塩基配列であってもよい。かかる塩基配列として、具体的には、配列番号4で示される塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を挙げることができる。ストリンジェントな条件は、前述の通りである。好ましくは、配列番号4で示される塩基配列と、塩基配列において85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列である。以下、本明細書ではかかる塩基配列を、配列番号4の「ホモログ配列」とも称する。
【0052】
本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子は、5’側領域に上記の(3)TCドメインをコードする塩基配列を有し、3’側領域に上記の(4)PTドメインをコードする塩基配列を有する。好ましくは、5’側領域にあるTCドメインをコードする塩基配列に引き続いて、その3’末端にPTドメインをコードする塩基配列がタンデム結合してなるものを挙げることができる。なお、フシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子は、その発現産物が、PTドメインに基づくプレニルトランスフェラーゼ活性、およびTCドメインに基づくテルペンシクラーゼ活性を有するものである限り、PTドメインをコードする塩基配列とTCドメインをコードする塩基配列の間に、任意の複数の塩基を有するものであってもよい。
【0053】
本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子として、好ましくは配列表:配列番号6で示される2157の塩基を有する塩基配列からなる遺伝子を挙げることができる。
【0054】
しかし、本発明の酵素は、かかる特定の塩基配列からなる遺伝子に制限されず、前述する配列番号3で示すアミノ酸配列の機能同等配列をコードする塩基配列であってもよい。かかる塩基配列として、具体的には、配列番号6で示される塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を挙げることができる。ストリンジェントな条件は、前述の通りである。好ましくは、配列番号6で示される塩基配列と、塩基配列において85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列である。以下、本明細書ではかかる塩基配列を、配列番号6の「ホモログ」と称する。
【0055】
なお、本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子は、実施例で示すように、植物病原菌真菌「PhomopsisFusicoccumamygdali」から、RT-PCTなどを用いて単離取得することもできる。それ以外の方法として、本発明で開示するその塩基配列に基づいて化学的または遺伝子工学的手法によって製造することもできる。遺伝子工学的手法による製造方法の詳細については、後述する。また、塩基配列における改変は、当業界において既に公知な方法、例えば部位特異的変異導入法[Current Protocols I molecular Biology, edit. Ausubel et al., John Wily & Sons, Section 8. 1-8.5 (1987)]等を用いて、改変しようとする塩基配列に、適宜、置換、欠失、挿入、付加、逆位などの変異を導入することによって行うことができる。
【0056】
(III)組み換えベクター
本発明は、上記フシコッカン合成キメラ型酵素をコードする遺伝子を含有する組み換えベクターを提供する。当該組み換えベクターは、フシコッカン合成キメラ型酵素をコードする遺伝子を、所望の宿主細胞内で発現可能な状態で含んでおり、当該宿主細胞を形質転換するために使用される。ゆえに、本発明の組み換えベクターは、かかる宿主細胞の形質転換が達成できる形態を有するものであればよく、例えばプラスミド、バクテリオファージ、レトロトランスポゾンの形態を有するものであってもよい。
【0057】
本発明の組み換えベクター(発現ベクター)は、宿主として大腸菌(E. coli)や枯草菌(B. subtilis)などの細菌を使用する場合、一般に、少なくともプロモーター−オペレーター領域(プロモーター、オペレーター及びリボゾーム結合領域(SD領域)を含む)、開始コドン、本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素をコードするDNA、終止コドン、ターミネーター領域、及び複製可能単位を有する。また、酵母等の真菌細胞または動物細胞を宿主細胞として用いる場合は、一般に、少なくともプロモーター、開始コドン、シグナルペプチド及び本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素をコードするDNA、及び終止コドンを有する。また、本発明の組み換えベクター(発現ベクター)は、必要に応じて、エンハンサーなどのシスエレメント、本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素をコードするDNAの5’側または3’側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリアデニレーション部位、複製可能単位、相同領域、選択マーカーを含むことができる。これらのエレメントは、本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素をコードする遺伝子の発現に用いられる宿主に対応したものであれば、特に制限されず、当業界の技術常識に基づいて選択することができる。
【0058】
なお、選択マーカーとしては、特に制限されず、例えば遺伝子発現に使用される宿主が細菌の場合は、薬剤抵抗性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、シクロヘキシミド耐性遺伝子、テトラマイシン耐性遺伝子など)、宿主が細菌以外の例えば酵母などの場合は、栄養要求性遺伝子(例えば、HIS4、URA3、LEU2、ARG4など)などを始めとする公知の各種選択マーカーを利用することができる。
【0059】
本発明の組み換えベクター(発現ベクター)は、簡便には、上記本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素をコードするDNAを、公知の発現用ベクターに、目的のフシコッカン合成キメラ型酵素が発現可能な状態で導入することによって、具体的にはプロモーターの下流に導入することによって作成することができる。かかる導入は、DNA組み換えの一般的な方法、例えばMolecular Cloning (1989) (Cold Spring Harbor Lab.)に記載される方法に従って行うことができる。
【0060】
発現用ベクターとしては、プラスミドベクターとして、例えばpRS413、pRS415、pRS416、YCp50、pAUR112またはpAUR123などのYCp型大腸菌(E. coli)-酵母シャトルベクター;pRS403、pRS404、pRS405、pRS406、pAUR101またはpAUR135などのYIp型大腸菌(E.coli)-酵母シャトルベクター;大腸菌(E. coli)由来のプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC18、pUC19、pUC119、pTV118N、pTV119N、pBluescript、pHSG298、pHSG396またはpTrc99AなどのColE系プラスミド;pACYC177またはpACYC184などのp1A系プラスミド;pMW118、pMW119、pMW218またはpMW219などのpSC101系プラスミドなど);枯草菌(B.subtilis)由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5など);pHSP64などの大腸菌(E. coli)-枯草菌(B. subtilis)シャトルベクターを挙げることができる。またファージベクターとして、λファージ(Charon 4A, Charon21A, EMBL4, λgt100, gt11, zap)、ψX174、M13mp18、M13mp19などを挙げることができる。レトロトランスポゾンとしてはTy因子などを挙げることができる。また、融合タンパク質として発現する発現ベクター、例えばpGEXシリーズ(Amersham Pharmacia製)、pMALシリーズ(Biolabs社製)を使用することもできる。
【0061】
本発明の実施例では、フシコッカン合成キメラ型酵素コードする遺伝子を、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質発現用ベクター(pGEX-4T-3)(Amersham Pharmacia製)のマルチプルクローニングサイトに導入して、フシコッカン合成キメラ型酵素発現用ベクターを作成している。斯くして本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素は、そのN末端にグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を有する融合タンパク質として発現される。なお、pGEX-4T-3を始めとするpGEXシリーズのベクターの全塩基配列はGenbankに登録され公知になっている(例えば、pGEX-4T-3の全塩基配列のGenbank accession番号はNo.U13855である)。
【0062】
かかるGST融合タンパク質発現用ベクターを用いたGST融合タンパク質発現系は、GSTがキャリアーとなり高い発現量が得られること、GST活性やGSTに対する抗体を用いて容易に検出することができること、GSTの基質であるグルタチオンとの親和性を用いてアフィニティークロマトグラフィーにより簡単に精製することができるという利点があり、広く用いられている発現系である。しかも目的とするタンパク質(本発明ではフシコッカン合成キメラ型酵素)は、プロテアーゼ消化によって簡単に回収、精製することができる。
【0063】
(IV)形質転換体
本発明はまた、宿主細胞に上記組み換えベクターを導入して形質転換されてなる形質転換体を提供する。
【0064】
組み換えベクターの宿主細胞への導入(形質転換)方法は、特に制限されず、トランスフォーメーション法、トランスフェクション法、コンピテント細胞法、エレクトロポレーションなど、導入する宿主細胞の種類や組み換えベクターの形態に応じて、適宜選択することができる。
【0065】
宿主細胞としては、生体内で、GGDPの基質となるIPP、ならびにDMAPP、FPPまたはGPPを産生する能力を有する細胞、具体的にはメバロン酸経路やMEP経路(非メバロン酸経路)を有する細胞であれば特に制限されず、例えば、大腸菌(E. coli)や枯草菌(B. subtilis)などの細菌;サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ポンベ(Saccharomycespombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母;sf9やsf21などの昆虫細胞;COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)などの動物細胞;タバコなどの植物細胞を挙げることができる。好ましくは、大腸菌や枯草菌などの細菌、及び酵母である。より好ましくは大腸菌等の細菌である。
【0066】
なお、発現ベクターの宿主細胞内での存在様式は、特に制限されず、染色体中に挿入されて、あるいは置換されて組み込まれてもよいし、またプラスミド状態で存在していてもよい。
【0067】
(V)フシコッカン合成キメラ型酵素の製造方法
斯くして得られた形質転換体は、宿主に応じて適切な培地中で培養されることによって、本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素を産生することができる。本発明は、かかる形質転換体を利用したフシコッカン合成キメラ型酵素の製造方法を提供するものである。当該方法は、上記の形質転換体を培地で培養することによって実施することができる。
【0068】
培地には、上記形質転換体の生育に必須な炭素源、窒素源、無機塩、ビタミン、薬剤などが含有される。炭素源としてはマンナン成分、アラビノース、セロビオース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グリセロール、イノシトール、ラクトース、マンニトール、マンノース、ラフィノース、ラムノース、スクロース、トレハロース、キシロースが;窒素源としては硫酸アンモニウムや塩化アンモニウムなどの無機窒素、並びにカゼイン分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン及びビーフ抽出物などの有機窒素源;無機塩としては例えば二リン酸ナトリウムまたは二リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等;ビタミンとしてはビタミンB1を始めとする各種のビタミン;薬剤としてはアンピシリン、ネオマイシン、シクロヘキシミド、テトラマイシンなどの各種抗生物質を挙げることができる。なお、これらは一例であり、これらに制限はされない。
【0069】
培地の一例としては、宿主が大腸菌などのグラム陰性菌、または枯草菌などのグラム陽性菌といった細菌の場合は、LB培地(日水製薬)、M9培地(J. Exp. Mol. Genet., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, p.431, 1972)などが;また宿主が酵母の場合、YPD培地(1% Bacto yeast extract, 2% Bacto peptone, 2% glycerol)、YPG培地(1% Bacto yeast extract, 2% Bacto peptone, 2% glycerol)、YP培地(1% Bacto yeast extract, 2% Bacto peptone、YPD培地(1% Bacto yeast extract, 2% Bacto peptone, 2% glucose)、0.7% Yeast Nitrogen Base (Difco社)、YP培地〔1% Bacto yeast extract (Difco社) , 2% Polypeptone S (日本製薬)〕、などが例示される。
【0070】
培養は、通常10〜40℃の温度範囲で数〜80時間程度実施され、必要に応じて通気、攪拌を加えることもできる。培養温度は、宿主に応じて設定できるため、特に制限されないが、好ましくは18〜42℃程度、より好ましくは25〜38℃程度の範囲で実施することができる。
【0071】
斯くして、宿主細胞内で本発明のフシコッカン合成キメラ型酵素を製造することができるが、また必要に応じて、上記培養によって得られた培養物からフシコッカン合成キメラ型酵素を採取する工程を行うこともできる。
【0072】
フシコッカン合成キメラ型酵素の採取は、培養後、培養上清中または形質転換体(菌体)中に蓄積された、フシコッカン合成キメラ型酵素を公知の方法で抽出し、また必要に応じて精製することによって行うことができる。分離精製は、例えば、塩析法、溶媒沈澱法、透析法、限外濾過法、ゲル電気泳動法、あるいはゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の手法を組み合わせて行うことができる。この場合、フシコッカン合成キメラ型酵素の分子量(約81kDa)、ならびに当該酵素が有するプレニルトランスフェラーゼ活性およびテルペンシクラーゼ活性を指標とすることができる。
【0073】
(VI)フシコッカン-2,10(14)ジエンの製造方法
また、上記の形質転換体は、フシコッカン-2,10(14)ジエンの製造にも使用することができる。すなわち、上記形質転換体を、宿主に応じて適切な培地中で培養することによって、目的とするフシコッカン-2,10(14)ジエンを産生することができる。ゆえに本発明は、かかる形質転換体を利用したフシコッカン-2,10(14)ジエンの製造方法をも提供するものである。当該方法は、上記の形質転換体を培地で培養することによって実施することができる。
【0074】
培地には、上記(V)のフシコッカン合成キメラ型酵素の製造と同様の培地を使用することができ、ここでも上記記載を援用することができる。
【0075】
培養は、上記(V)と同様に、通常10〜40℃の温度範囲で数〜80時間程度実施され、必要に応じて通気、攪拌を加えることもできる。培養温度は、宿主に応じて設定できるため、特に制限されないが、好ましくは18〜42℃程度、より好ましくは25〜38℃程度の範囲で実施することができる。
【0076】
斯くして、宿主細胞内で本発明が対象とするフシコッカン-2,10(14)ジエンを製造することができるが、また必要に応じて、上記培養によって得られた培養物からフシコッカン-2,10(14)ジエンを採取する工程を行うこともできる。
【0077】
フシコッカン-2,10(14)ジエンの採取は、培養後、培養上清中または形質転換体(菌体)中に蓄積された、フシコッカン-2,10(14)ジエンを公知の方法で抽出し、また必要に応じて精製することによって行うことができる。分離精製は、例えば、塩析法、溶媒沈澱法、透析法、限外濾過法、ゲル電気泳動法、あるいはゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の手法を組み合わせて行うことができる。この場合、フシコッカン-2,10(14)ジエンの同定は、その分子量などを指標として、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)または液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)などを用いて行うことができる。
【0078】
(VII)プレニルトランスフェラーゼおよびその遺伝子
本発明はまた、前述するフシコッカン合成キメラ型酵素を構成する1つの酵素、すなわちプレニルトランスフェラーゼおよびその遺伝子を提供する。
【0079】
本発明が提供するプレニルトランスフェラーゼは、プレニルトランスフェラーゼ活性、好ましくはC5のイソプレン単位の鎖伸長反応を触媒してGGDPを生成するプレニルトランスフェラーゼ活性、より好ましくは、IPPと、DMAPP,GPPもしくはFPPとを基質として、GGDPを生成するプレニルトランスフェラーゼ活性を有する。当該活性は、(I)で説明した方法によって測定することができる。
【0080】
本発明のプレニルトランスフェラーゼは、好ましくは配列番号2で示される385のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。しかし、本発明のプレニルトランスフェラーゼは、かかる特定のアミノ酸配列からなるタンパク質に制限されず、その機能的同等物であってもよい。ここで機能的同等物としては、配列番号2に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列からなり、上記配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様に、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質である。より好ましくは、上記配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様に、C5のイソプレン単位の鎖伸長反応を触媒してGGDPを生成するプレニルトランスフェラーゼ活性(好ましくは、IPPと、DMAPP,GPPもしくはFPPとを基質として、GGDPを生成するプレニルトランスフェラーゼ活性)を有するタンパク質である。かかる機能的同等物としてより好ましくは、配列番号2に示すアミノ酸配列と、アミノ酸配列において85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有し、且つ上記のプレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質を挙げることができる。
【0081】
本発明はまた、上記のプレニルトランスフェラーゼの遺伝子を提供する。なお、ここでいう遺伝子には、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA(組換えDNA)、ならびにRNAが含まれる。
【0082】
当該遺伝子は、前述するプレニルトランスフェラーゼをコードする塩基配列を有するものであればよい。本発明のプレニルトランスフェラーゼ遺伝子としては、好ましくは配列番号5に示す塩基配列からなる遺伝子を挙げることができる。なお、当該配列番号5に示す塩基配列は、配列番号2に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列である。
【0083】
しかし、本発明のプレニルトランスフェラーゼ遺伝子は、かかる特定の塩基配列からなるものに制限されず、前述する配列番号2で示すアミノ酸配列からなるタンパク質の機能的同等物をコードする塩基配列からなるものであってもよい(これを「ホモログ」ともいう)。かかるホモログとしては、具体的には、配列番号5で示される塩基配列の相補配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列からなる遺伝子を挙げることができる。好ましくは、配列番号5で示される塩基配列と、塩基配列において85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列からなる遺伝子である。
【0084】
本発明のプレニルトランスフェラーゼおよびその遺伝子は、本発明で開示するアミノ酸配列や塩基配列に基づいて化学的または遺伝子工学的手法によって製造することができる。遺伝子工学的手法による製造方法の詳細については、実施例の記載を参照することができる。また、アミノ酸配列における改変は、当業界において既に公知な方法、例えば部位特異的変異導入法[Current Protocols I molecular Biology, edit. Ausubel et al., John Wily & Sons, Section 8. 1-8.5 (1987)]等を用いて、改変しようとするアミノ酸配列に、適宜、置換、欠失、挿入、付加、逆位などの変異を導入することによって行うことができる。
【0085】
(VIII)テルペン環化酵素およびその遺伝子
本発明はまた、前述するフシコッカン合成キメラ型酵素を構成するもう一つの酵素、すなわちテルペン環化酵素およびその遺伝子を提供する。
【0086】
本発明が提供するテルペン環化酵素は、テルペンシクラーゼ活性、好ましくはGGDPを原料としてフシコッカ-2,10(14)-ジエンを生成するテルペンシクラーゼ活性を有するものである。当該活性は、(I)で説明した方法によって測定することができる。
【0087】
本発明のテルペン環化酵素は、好ましくは配列番号1で示される334のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。しかし、本発明のテルペン環化酵素は、かかる特定のアミノ酸配列からなるタンパク質に制限されず、その機能的同等物であってもよい。ここで機能的同等物としては、配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列からなり、上記配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様に、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質である。より好ましくは、上記配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様に、GGDPからフシコッカン-2,10(14)ジエンを生成する活性を有するタンパク質である。かかる機能的同等物としてより好ましくは、配列番号1に示すアミノ酸配列と、アミノ酸配列において85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有し、且つ上記のテルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質を挙げることができる。
【0088】
本発明はまた、上記のテルペン環化酵素の遺伝子を提供する。なお、ここでいう遺伝子には、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA(組換えDNA)、ならびにRNAが含まれる。
【0089】
当該遺伝子は、前述するテルペン環化酵素をコードする塩基配列を有するものであればよい。本発明のテルペン環化酵素遺伝子としては、好ましくは配列番号4に示す塩基配列からなる遺伝子を挙げることができる。なお、当該配列番号4に示す塩基配列は、配列番号1に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列である。
【0090】
しかし、本発明のテルペン環化酵素遺伝子は、かかる特定の塩基配列からなるものに制限されず、前述する配列番号1で示すアミノ酸配列からなるタンパク質の機能的同等物をコードする塩基配列からなるものであってもよい(これを「ホモログ」ともいう)。かかるホモログとしては、具体的には、配列番号4で示される塩基配列の相補配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列からなる遺伝子を挙げることができる。好ましくは、配列番号4で示される塩基配列と、塩基配列において85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列からなる遺伝子である。
【0091】
本発明のテルペン環化酵素およびその遺伝子は、本発明で開示するアミノ酸配列や塩基配列に基づいて化学的または遺伝子工学的手法によって製造することができる。遺伝子工学的手法による製造方法の詳細については、実施例の記載を参照することができる。また、アミノ酸配列における改変は、当業界において既に公知な方法、例えば部位特異的変異導入法[Current Protocols I molecular Biology, edit. Ausubel et al., John Wily & Sons, Section 8. 1-8.5 (1987)]等を用いて、改変しようとするアミノ酸配列に、適宜、置換、欠失、挿入、付加、逆位などの変異を導入することによって行うことができる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例等に限定されるものではない。なお、本発明で用いられる遺伝子工学的技術並びに分子生物学的実験操作は、一般に広く用いられている方法、例えばJ.,Sambrook, E., F., Frisch,T.,Maniatis著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド・スプリング・ハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory press)発行、1989年、及びD.,M.,Glover著、DNAクローニング、IRL発行、1985年などに記載されている方法に従って行うことができる。
【0093】
なお、下記実施例に出てくる次の略称の意味は下記の通りである:
DTT:ジチオスレイトール(dithiothreitol)
IPP:イソペンテニルピロリン酸
FPP:ファルネシルピロリン酸
GPP:ゲラニルピロリン酸
DMAPP:ジメチルアリルピロリン酸
GGDP:ゲラニルゲラニル2リン酸
GGS:GGDP合成酵素
TES:N-Tris(hydroxymethyl)methyl-2-aminoethanesulfonic acid
IPTG:イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(isopropyl-β-D-thiogalactoside)。
【0094】
下記の実施例で用いた(1)テルペンシクラーゼ活性の測定、および(2)プレニルトランスフェラーゼ活性の測定は、次の操作に従って行った。
【0095】
(1)テルペンシクラーゼ活性の測定
測定対象とするタンパク質(30〜50μg)、基質、およびproteinase inhibitor cockatail tablets 1/200 錠 (Complete、ロシュダイアグノスティック) を含む反応液 (100mM Tris-HCl、pH7.4、2 mM DTT、0.5 mM EDTA 10%(w/w)グリセロール、6.8%ペプスタチンA) 500μLを調製し、30℃で1〜2時間インキュベートする。なお基質として、GGDP (シグマアルドリッチ)、FPP (シグマアルドリッチ)、GPP(シグマアルドリッチ)、およびDMAPP(シグマアルドリッチ)をそれぞれ (20μg) を用いる。また、IPP(シグマアルドリッチ) 10μgを添加する場合は、上記FPP、GPP、およびDMAPPは、それぞれ10μgで用いる。反応後、得られた反応液をn-ヘキサンで抽出する(3回程度)。
【0096】
無水硫酸ナトリウム処理で脱水後、エバポレーターで約80μLまで減圧濃縮し、うち2μLを下記条件のガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)に供し、フシコッカン-2,10(14)ジエンの生成を確認する。
【0097】
<ガスクロマトグラフ質量分析>
GC :Agilent 6890N GC システム
MS :Agilent 5973N MSD
データ処理 :Agilent ケミステーション
キャリアガス :ヘリウム、流速1 mL/分
インジェクター :スプリットレス、250℃
カラム :HP-5MS、30 m×I.D. 0.25 mm
昇温プログラム :60℃、2分間→30℃/分(60-150℃)→10℃/分(150-180℃)
→2℃/分(180-210℃)→30℃/分(210-300℃) 300℃、10分間
試料導入部 :300℃。
【0098】
(2)プレニルトランスフェラーゼ活性の測定
50 mM TES緩衝液(pH8.0)、5 mM 2-mercaptoethanol、5 mM MgCl2、50μM[1-14C]IPP(GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社、CFA476, 2.15GBq/mmol)、50μMのDMAPP(SIGMA)、GPP (SIGMA)、あるいはFPP (SIGMA)を含む反応液に、最終濃度が20μg/mlになるように精製した被験タンパク質を加えて30℃で1時間から12時間程度反応を行う。反応後、等量の水飽和1-ブタノールによる抽出操作を3回程度行い、反応生成物を抽出する。l-ブタノール層が50μlになるまで濃縮した後、100μlのメタノール、25μl の1 M酢酸緩衝液(pH5.6)、25μl の1% TritonX-100、50 μlのAcid phosphatase (SIGMAのAcid phosphatase を37 mg/mlになるように0.1 Mの酢酸緩衝液(pH5.6)に溶解したもの)を加え、37℃で終夜反応し脱リン酸操作を行う。反応液を 250μl のペンタンによる抽出操作を2回程度行った後、ペンタン層を500μlの蒸留水で洗浄し、遠心分離(15,000 rpm, 30分間, 4℃)でペンタン層を回収する。
【0099】
これらを濃縮した後、ヘキサン 20μlを加えて溶解しTLCで展開する〔プレートHPTLC plates RP-18F (SIGMA )、展開溶媒 Aceton : H2O= 9:1〕。展開したTLCを、BAS-2500 (Fujifilm)などを用いることによって反応産物の炭素鎖長を決定する。この条件下では、炭素数20のGGDPに相当する脱リン酸反応産物はRf値=0.6前後に、それより短いものは、より大きいRf値で検出される。
【0100】
実施例1 キメラ型酵素をコードするcDNA の単離
(1)GGDP合成酵素(GGS)遺伝子を基点とした遺伝子歩行(Genome Walking)と縮重プライマーを用いたRT-PCRにより、植物病原菌真菌(P. amygdali)の菌糸体から、2種類のテルペン環化酵素様遺伝子、PaDC3 および PaDC4を取得した。
【0101】
なお、RT-PCRおよび遺伝子歩行(Genome Walking)は下記の方法に従って行った。
【0102】
(1-1) RT-PCR
フシコクシン生産菌として植物病原菌真菌(モモ枝折れ病菌)(Phomopsis amygdali Niigata)を用いた。これを500ml 容量のフラスコ内で3 日間 25℃で攪拌振盪培養を行った(Biosci Biotechnol Biochem 68: 1608-1610, 2004)。次いで形成された菌糸体を採取して液体窒素で凍結した。かかる凍結試料から、poly (A)+ RNA を抽出し、定法に従ってcDNA を調製した(Plant Physiol 118: 1517-1523, 1998)。調製したcDNA プールを鋳型として、Advantage 2 PCR system (Clontech社製)を用いてRT-PCRを行った。
【0103】
なお、GGDP合成酵素(GGS)遺伝子の単離およびテルペン環化酵素様遺伝子の単離に際して使用した縮重プライマー、ならびにPCR条件は下記の通りである:
<プライマー>
(a) GGDP合成酵素(GGS)遺伝子の単離;
センスプライマー:5’-AAYAARACNGGNGGNYTNTT-3’(配列番号7)
アンチセンスプライマー:5’-CANARRTTCTARTARTCRTC-3’ (配列番号8)
(b) テルペン環化酵素様遺伝子の単離
センスプライマー:5’-GCNATGGSNYTNACNATHCC-3’ (配列番号9)
アンチセンスプライマー:5’-TARTCRTCNCKDATYTGRAA-3’ (配列番号10)
(なお、上記プライマー配列中、YはT又はC、RはG又はA、NはA又はG又はC又はT、SはG又はC、HはA又はC又はT、KはG又はT、DはA又はG又はTを意味する)
<PCR条件>
下記の変性、アニーリングおよび伸長反応からなるサイクルを40回繰り返す
変性:94℃で1分間
アニーリング:48℃で1分 (GGS遺伝子)、または 50℃で1分 (キメラ遺伝子)
伸長:72℃で1分間。
【0104】
なお、RACE は、豊増ら(Plant Physiol 118: 1517-1523,1998)に記載する方法に従って、ゲノムDNA配列に応じた特異的プライマーを用いて行った。
【0105】
(1-2) 遺伝子歩行(Genome Walking)
遺伝子歩行(Genome walking)はUniversal Genome Walker kit (Clontech社製)を用いて行った。Nucleon PhytoPure Kit (Amersham Pharmacia社製)を用いて、上記で調製した菌糸体からゲノムDNAを抽出して遺伝子歩行ライブラリー(Genome walker library)を構築し、上記のキットに添付されている説明書に従って、これをnested PCRに使用した。なお、制限酵素として、キットに付属されているDraI, Eco RV, Pvu II,およびStu Iに加えて、Fsp I, Nru I, Sca I,およびSsp Iの4つを使用した。
【0106】
(2)上記方法により2種類のテルペン環化酵素様遺伝子(PaDC3、PaDC4)を取得した。具体的には遺伝子歩行(上記GGDP合成酵素(GGS)遺伝子用プライマーでGGSを得てそこから歩行)により、まずPaDC3を取得し、その配列を基に縮重プライマー(上記テルペン環化酵素様遺伝子用)によりPaDC4を取得した。次いで、当該PaDC4のcDNAの全長配列をシークエンスした。
【0107】
その結果、3’末端にGGDP合成酵素遺伝子(GGS遺伝子)が融合していることが確認された(以下、これを「PaDC4:GGS遺伝子」という)。この cDNA は719個のアミノ酸残基をコードする81kDaの遺伝子(配列番号3)であり、対応する染色体DNA配列から判断して、8つのイントロン挿入部位を含んでいると考えられた。この翻訳産物(ペプチド)の推定一次構造(配列番号6)は、ユニークであり、N末端側にテルペン環化酵素ドメイン(1-334領域)(配列番号4)、C末端側にプレニルトランスフェラーゼドメイン(335-719領域)(配列番号5)を有していた(図1)。このうち、テルペン環化酵素ドメインは、アミノ酸配列において、糸状菌のセスキテルペン環化酵素であるaristolochene synthaseと約20%同一で、約40%の割合で類似していた。一方、プレニルトランスフェラーゼドメインのアミノ酸配列は、他の糸状菌中に存在するGGSと高い相同性を有していた(約40% の同一性と約60%の類似性)。
【0108】
また各ドメインには、「DDxxD」モチーフが共通して存在することが確認された。具体的には、テルペン環化酵素ドメインには92-96領域に「DDVTD」配列が、プレニルトランスフェラーゼドメインには474-478領域に「DDFQD」配列が存在することが確認された(図1B)。当該「DDxxD」モチーフは、Mg2+イオン配位領域であると考えられる(Hohn TM (1999) in Comprehensive Natural Products Chemistry vol 2, ed Cane D (Elsevier Science, Oxford), pp 201-21529)。
【0109】
かかる2つのドメインを有するペプチドのアミノ酸配列について、登録されたデータベースを対象にしてBLAST 相同性検索(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を行ったところ、真菌コクシジオイデス・イミティスコクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis) (EAS27885)由来のペプチドのアミノ酸配列と39%同一、Gibberella zeae(EAA68264) 由来のペプチドのアミノ酸配列と36%同一、およびChaetomium globosum (EAQ85668) 由来のペプチドのアミノ酸配列と35%同一であることが判明した。このことから、このキメラ型のテルペン環化酵素様遺伝子(PaDC4:GGS遺伝子)は、従来知られていない新規な遺伝子であることが判明した。
【0110】
実施例2 キメラ型酵素(PaDC4:GGS)の機能解析
実施例1で得られたキメラ型酵素(PaDC4:GGS)の機能を調べるため、N末端にグルタチンS-トランスフェラーゼ(GST)を結合させた融合タンパク質(GST-PaDC4:GGS)を用いて、基質としてGPP、FPP、およびGGDPを用いて、前述する方法に従ってテルペンシクラーゼアッセイを行った。
【0111】
その結果、GGDPは、下記条件のGC-MSにおいて保持時間13.2 分にピークを有する物質に変換されたことが確認された(図2Aのピーク1)。
【0112】
この物質は、そのGC-MS上の保持時間(図2A)とマススペクトル(図2C)から、フシコッカ-2,10(14)-ジエン(fusicocca-2,10(14)-diene)であると同定された。なお、図2BおよびCは、フシコッカ-2,10(14)-ジエン標準品のGC-MS(ピーク2)およびマススペクトルをそれぞれ示す(Sassa T, et al., Biosci Biotechnol Biochem 68: 1608-1610, 2004)。
【0113】
この結果から、実施例1で取得したキメラ型酵素PaDC4:GGS は、フシコッカ-2,10(14)-ジエン合成酵素であると判断された。そこで、当該キメラ型酵素PaDC4:GGSを、「P. amygdali fusicoccadiene synthase(PaFS)」と命名した。以下、「PaFS」と称する。
【0114】
当該PaFS は、前述するように、2つのドメイン、すなわちN末端側にテルペン環化酵素ドメイン(1-334領域)、およびC末端側にプレニルトランスフェラーゼドメイン(335-719領域)を有している(図1B)。
【0115】
そこで、N末端にグルタチンS-トランスフェラーゼ(GST)を結合させた融合タンパク質(GST-PaFS)を用いて、基質としてIPP、ならびにDMAPP, GPP, または FPPを用いて、前記の方法と同様にしてテルペンシクラーゼアッセイを行った。
【0116】
その結果、基質としてDMAPP, GPP, または FPPのいずれを用いた場合も、基質として上記GGDPを用いたときと同じく、フシコッカ-2,10(14)-ジエンが主な生成物として得られた。この実験の結果から、キメラ型酵素PaFSは、イソプレン単位を順次GGDPに変換し、生成したGGDPをさらにフシコッカ-2,10(14)-ジエンに変換する活性を有する酵素であること、言い換えれば、プレニルトランスフェラーゼ活性(プレニル鎖伸長活性)とテルペンシクラーゼ活性(テルペン環化活性)の両方を有する、多機能なジテルペン合成酵素であることが判明した。
【0117】
実施例3 PaFSを発現する形質転換体の構築およびそれを用いたPaFSの製造
(1)プラスミド構築
(1-1)ORF cDNAの増幅とサブクローニング
BD AdvantageII Polymerase Mix (クロンテック) 、BD Advantage HF2 PCR キット (クロンテック) 、およびプライマー (ORF 増幅用 PaDC4 ORF F/EcoRI:GAATTCTATGGAGTTCAAATACTCGGA(配列番号11)、PaDC4 ORF R/NotI:GCGGCCGCACAACCGTCAGAGTTACGAG(配列番号12)、下線は各制限酵素サイト)を用いて、RT-PCRを行い(サイクル数:25〜35)、PaFSのORF cDNAを増幅した。得られたPCR産物は、1%TAEアガロースゲル電気泳動により解析し、下記の方法に従って、pGEM-T easy ベクター(プロメガ)とLigation kit ver. 1(タカラバイオ)を用いて、サブクローニングした。
【0118】
(1-2)発現用プラスミドの調製
斯くして調製されたPaFSのORFcDNAをpGEMに組み込んだプラスミドより、それぞれ末端にサイトを付加した制限酵素、EcoRI (東洋紡) 、NotI (東洋紡) を利用してORF-cDNAを切り出した。制限酵素反応液は、プラスミド (200 ng) 、10×Hバッファー (2μL) 、EcoRI (10 units) 、NotI (9 units) を含む20μLで調製した。同様に発現ベクターpGEX-4T-3 (GEヘルスケアバイオサイエンス) (2μg)は、EcoRI (30 units)とNotI (27 units) により37℃、12時間おくことで消化した。これら反応液は、フェノール・クロロホルム抽出にて反応を停止させ、エタノール沈殿により、濃縮、精製した。
【0119】
精製した産物を0.7%アガロースゲル電気泳動し、Sephagras band prep kit (GEヘルスケアバイオサイエンス) を用いてマニュアル通り切り出しを行った。DNA Ligation Kit Ver.2.1 (タカラバイオ) を用いて、切り出されたORF-cDNAを発現ベクターpGEX (GEヘルスケアバイオサイエンス) にモル比1:1でライゲーションし、大腸菌 (XL1-Blue) に形質転換した。得られた大腸菌より抽出・精製したプラスミドを用いてシークエンス分析を行い、ベクターとインサートの連結部の配列を確認した。
【0120】
(2)組換えPaFSの発現と精製
上記の大腸菌を LB/amp 液体培地においてO.D600が0.6〜1.0になるまで37℃で培養した。IPTGを終濃度0.1m Mとなるように添加後、17℃で20時間培養し、組換えタンパク質の発現を誘導させた。8400 g、4℃、5分間の遠心分離による集菌後、PBSバッファー ( 137 mM NaCl, 8.1 mM Na2HPO4, 2.68 mM KCl, 1.47 mM KH2PO4, pH7.4 ) で洗浄し、氷冷下で超音波破砕し(Ultrasonic Processor) 、8400 g、4℃、5分間の遠心分離後、その上清を可溶性タンパク質画分とした。この可溶性画分について、セファロース4Bグルタチオンアフィニティーレジン(GEヘルスケアバイオサイエンス) を用いてマニュアル通りに組換えGST融合PaFSを精製した。SDS-PAGEはLaemmli(1970)の方法に準じて行った。得られたタンパク質の濃度は、Bio Rad protein assay system (日本バイオラッドラボシリーズ) を用いて測定した。
【0121】
実施例4 テルペン環化酵素ドメインとプレニルトランスフェラーゼドメインの同定
(1)欠失変異体の調製とその活性評価
PaFS の各ドメイン(テルペン環化酵素ドメインとプレニルトランスフェラーゼドメイン)の機能を調べるために、N-末端または C-末端を切断した複数の変異体を調製した(図3参照)。具体的には、図3Aに示すように、N334 (1-334領域を有する断片:38 kDa)、 N390 (1-390領域を有する断片:44 kDa)、N436 (1-436領域を有する断片:49 kDa)、N493 (1-493領域を有する断片:56 kDa)、およびC385 (335-719領域を有する断片:43 kDa)を調製した。なお、719のアミノ酸残基からなる全長のPaFS の分子量は81 kDaである。
【0122】
なお、上記下記変異体は下記のようにして調製した。
【0123】
実施例1においてフシコクシン生産菌から調製したcDNAプールを鋳型として、RT-PCR を行ったcDNA を増幅した。RT-PCRで使用したプライマーは下記の通りである:なお、下線部は括弧内に記載する制限酵素部位である。
【0124】
F1, sense:5’-GAATTCTATGGAGTTCAAATACTCGGA-3’(EcoRI) (配列番号13)
F2, sense:5’-GAATTCGACACAATTGGAATGGATGC-3’(Eco RI) (配列番号14)
R1, antisense:5’-GCGGCCGCACAACCGTCAGAGTTACGAG-3’(Not I) (配列番号15)
R2, antisense:5’-GCGGCCGCTCAAAAGATGTTATGCGTCGAC-3’(Not I) (配列番号16)
R3, antisense:5’-GCGGCCGCTCATCCTTTAGATGGCATGGAA-3’(Not I) (配列番号17)
R4, antisense:5’-GCGGCCGCTCACAGCGAAGAATCCTGCCTA-3’(Not I) (配列番号18)
R5, antisense:5’-GCGGCCGCTCACTTGTTGAATGAAACATCT-3’(Not I) (配列番号19)。
【0125】
PaFS、ならびその変異体(欠失変異体)である N493、N436、N390、N334およびC385をコードするcDNAの増幅には、上記プライマーをそれぞれF1-R1、F1-R2、F1-R3、F1-R4、F1-R5、およびF2-R1の組み合わせで使用した。
【0126】
(1-1)プラスミドの調製
サブクローニングしたPCR産物をEco RI とNot Iで消化し、次いでN末端にGSTを有する融合タンパク質を発現させるために、発現用ベクター(pGEX-4T-3)(GEヘルスケアバイオサイエンス) にライゲートした。次いでE. coli XL1-Blue(stratagene)を形質転換した後、該形質転換体をアンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。生育してきたアンピシリン耐性の形質転換体のコロニー数個について、アンピシリン50μg/mlを含むLB液体培地5mlで37℃、16時間振盪培養した。得られた培養液を遠心分離することにより、菌体を取得した。該菌体より常法に従ってプラスミドを単離した。該方法により単離したプラスミドを各種制限酵素で切断して構造を調べ、さらに塩基配列を決定することにより、目的のDNA断片が挿入されているプラスミドであることを確認した(以下、これを「本プラスミド」という)。
【0127】
(1-2) テルペンシクラーゼ活性とプレニルトランスフェラーゼ活性の評価
テルペンシクラーゼ活性については、前述する方法に従って、酵素の調製と活性を測定した。なお、テルペンシクラーゼ活性は、基質としてGGDP(各20μg)を用いて行った。また、プレニルトランスフェラーゼ活性については以下のように酵素の調製は行った。本プラスミドで、発現用大腸菌BL21(GEヘルスケアバイオサイエンス(株))を形質転換した後、LB/Ampicillin (100μg/ml)/0.2% glucose、37℃でOD600が0.5〜0.8になるまで培養し、氷上で急冷した。急冷した培養液に終濃度が0.1 mMになるようにIPTGを添加し、その培養菌体を18℃でさらに培養した後、集菌してColumn緩衝液で懸濁した。その懸濁液を超音波破砕機で破砕(強度8、1min×10、間隔1min TOMY)し、遠心分離(15,000 rpm, 30分間, 4℃ HITACHI himac CR 20E)した後、可溶性画分をGlutathion Sepharose 4B (GEヘルスケアバイオサイエンス(株))に供し、目的のGST-融合タンパク質を精製した。また、この精製した組換えタンパク質の大きさ、純度をSDS-PAGE(10%)により確認した。得られた各酵素について、前述する方法に従って、プレニルトランスフェラーゼ活性を測定した。基質には、FPPと標識IPPを用いた。
【0128】
(1-3)結果
その結果、欠失変異体N390, N436およびN493は、全長のPaFS と同様に、GGDPからフシコッカ-2,10(14)-ジエンへの反応を触媒するシクラーゼ活性を示した。特に、N390とN436は、プレニルトランスフェラーゼドメインに存在する「DDFQD」モチーフを含まないにもかかわらず、テルペンシクラーゼ活性を有していた。一方、N334とC385は当該テルペンシクラーゼ活性を示さなかった(図3A中、「CA」で示す)。また、C385は、IPPとFPPからGGDPの生成を触媒する活性(プレニルトランスフェラーゼ活性)を示したが、C端領域を欠失した他の欠失変異体は、いずれもプレニルトランスフェラーゼ活性を示さなかった(図3A中、「PA」で示す)。
【0129】
(2)点変異体の調製とその活性評価
次いで各ドメインにおける「DDxxD」モチーフの役割を調べるために、2つの点変異体、D92A および D474A(図3B)を調製した。なお、当該変位体(D92A および D474A)は、図3Bに示すように、最初のアスパラギン酸を非極性のアラニンに置換したものである。
【0130】
なお、当該点変異体は、定法の部位特異的突然変異誘発法(Site-directed mutagenesis)に従って調製した。具体的には、前述するRT-PCRにおいて、下記のプラーマーセットを用いて、overlap extension PCR (Nucleic Acids Res 16: 7351-7367, 1988) により行った。
【0131】
D92A
センスプライマー:5’-TCTGCACGCTGATGTTACCGAC-3’(下線部が変異部位) (配列番号20)
アンチセンスプライマー:5’-CGGTAACATCAGCGTGCAGAAAGG-3’(下線部が変異部位) (配列番号21)。
【0132】
D474A
センスプライマー:5’-GCTGCTCGCCGACTTCCAAGACA-3’(下線部が変異部位) (配列番号22)
アンチセンスプライマー:5’-TCTTGGAAGTCGGCGAGCAGCAG-3’(下線部が変異部位) (配列番号23)。
【0133】
サブクローニングしたPCR産物をEco RI とNot Iで消化し、次いでN末端にGSTを有する融合タンパク質(GST-PaFS)を発現させるために、発現用ベクター(pGEX-4T-3)(GEヘルスケアバイオサイエンス) にライゲートした。得られたプラスミドを用いて、前述と同様の方法で、テルペンシクラーゼ活性とプレニルトランスフェラーゼ活性を測定した。
【0134】
その結果、プレニルトランスフェラーゼドメインに存在する「DDFQD」モチーフだけを「ADFQD」に変異させたD474Aは、GGDPを フシコッカ-2,10(14)-ジエンに変換する活性を有していたが(テルペンシクラーゼ活性)、テルペン環化酵素ドメインの「DDVTD」モチーフを「ADVTD」変異させたD92Aは、その活性を示さなかった(図3B中、「CA」で示す)。一方、プレニルトランスフェラーゼ活性はその逆を示し、テルペン環化酵素ドメインの「DDVTD」モチーフを「ADVTD」に変異させたD92Aは、プレニルトランスフェラーゼ活性を示したが、プレニルトランスフェラーゼドメインに存在する「DDFQD」モチーフを「ADFQD」に変異させたD474Aは、その活性を示さなかった(図3B中、「PA」で示す)。
【0135】
これらの結果から、PaFSのN末端領域に位置する44-kDa のペプチドがテルペンシクラーゼ活性を示しGGDPの環化反応を触媒し、一方、C末端領域に位置する43-kDa のペプチドがプレニルトランスフェラーゼ活性を示してGGDPの合成に関与していることが確認された。
【0136】
実施例5 PaFSを発現する形質転換体を用いたフシコッカ-2,10(14)-ジエンの製造.
実施例3で作成したPaFSを発現する形質転換体(大腸菌)を、LB/amp 液体培地においてO.D600が0.6〜1.0になるまで37℃で培養した。IPTGを終濃度0.1m Mとなるように添加後、17℃で20時間培養した。これを8400 xg、4℃、5分間遠心分離して集菌し、得られたペレットを適量の脱塩水で懸濁した後、総量の2〜3倍量のアセトンを加えて40℃、5分間抽出した。脱脂綿により濾過した後、減圧濃縮した。水溶性残渣をn-ヘキサンで抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラム ( BM-820MH、フジシリシア化学、愛知、日本)で不純物を吸着させて精製した。
【0137】
これを下記条件のガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)に供した。
<ガスクロマトグラフ質量分析>
GC :Agilent 6890N GC システム
MS :Agilent 5973N MSD
データ処理 :Agilent ケミステーション
キャリアガス :ヘリウム、流速1 mL/分
インジェクター :スプリットレス、250℃
カラム :HP-5MS、30 m×I.D. 0.25 mm
昇温プログラム :60℃、2分間→30℃/分(60-150℃)→10℃/分(150-180℃)
→2℃/分(180-210℃)→30℃/分(210-300℃) 300℃、10分間
試料導入部 :300℃。
【0138】
その結果、多量のフシコッカ-2,10(14)-ジエンが検出され(図4B、ピーク3)、実施例3で作成したPaFSを発現する形質転換体(大腸菌)の細胞内でフシコッカ-2,10(14)-ジエンが生成され、蓄積されていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】(A)PaFS周辺の染色体地図を示す。図中、▼は遺伝子歩行の開始点を示す。図中の「C」,「D」,「E」,「F」,「P」および「S」の表記は、遺伝子歩行で使用した制限酵素Sca I, Dra I, Eco RV, Fsp I, Pvu II,およびStu Iをそれぞれ示す。また矢印により、転写の方向と領域を示す。また図中、「orf1」, 「orf2」,「orf3」,「orf4」および「orf5」 はそれぞれ「2-oxo-glutarate-dependent dioxygenase様遺伝子」,「P450 monooxygenase様遺伝子」, 「short-chain dehydrogenase/reductase様遺伝子」,「alpha-mannosidase様遺伝子」および「Nop14 様遺伝子」の領域を示す。(B) PaFSの2つの主なドメインの模式図を示す。N端側の黒い領域がテルペン環化酵素ドメイン、C端側のグレーの領域がプレニルトアンスフェラーゼドメインを示す。図中、▽は各ドメインの「DDxxD」モチーフ領域を示す。
【図2】GST-PaFS融合タンパク質を用いたテルペンシクラーゼアッセイ(実施例2)において、GGDPから生成した反応物のGC-MS結果を示す。 (A) GST-PaFS融合タンパク質とGGDPをインキュベーションして生成した反応物のトータルイオンクロマトグラムを示す。 (B) Phomopsis amygdali N2の菌糸体の炭化水素画分のトータルイオンクロマトグラムを示す。(C) 図Aのピーク1のフル-スキャンマススペクトルを示す。(D)標準品 であるフシコッカ-2,10(14)-ジエン(図Bのピーク2)のフル-スキャンマススペクトルを示す。
【図3】変異タンパク質のシクラーゼ活性(CA)およびプレニルトランスフェラーゼ活性(PA)を示す。各バーの黒い領域はテルペンシクラーゼドメイン、グレーの領域はフェニレントランスフェラーゼドメインを意味する。▽は各ドメインの「DDxxD」モチーフ領域を示す。
【図4】GST-PaFSを導入した大腸菌中におけるフシコッカ-2,10(14)-ジエンの蓄積を評価した結果である。(A) 組換えタンパク質(GST-PaFS)の発現の有無をCBB-染色SDS-PAGE ゲルで確認した結果を示す。レーン1:GST (vector control)、レーン2: GST-GfCPS/KS (Gibberella fujikuroi 由来ent-kaurene合成酵素、約130 kDa)、レーン3:GST-PaFS (約110 kDa)。図中、△は、各組換えタンパク質のバンドを示す。(B) GST-PaFS を発現した大腸菌から取得した炭化水素画分んのクロマトグラムを示す。ピーク3のマススペクトルは、図2CとDに示すマススペクトルと一致した(結果示さす)。
【図5】PaFSが触媒するフシコッカ-2,10(14)-ジエンの合成スキームの模式図を示す。まずPaFSのプレニルトランスフェラーゼドメインのプレニルトランスフェラーゼ活性によってイソプレン単位からGGDPが生成し、次いでPaFSのテルペンシクラーゼドメインのテルペン環化活性によってGGDP からフシコッカ-2,10(14)-ジエンが生成する。PaFSは、プレニルトランスフェラーゼ活性とテルペン環化活性の両方を有する新規なジテルペン炭化水素合成酵素である。
【配列表フリーテキスト】
【0140】
配列番号7はGGDP合成酵素(GGS)遺伝子の単離に使用したセンスプライマーの塩基配列を示す。
配列番号8はGGDP合成酵素(GGS)遺伝子の単離に使用したアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
配列番号9はテルペン環化酵素様遺伝子の単離に使用したセンスプライマーの塩基配列を示す。
配列番号10はテルペン環化酵素様遺伝子の単離に使用したアンチセンスプライマーの塩配列を示す。
配列番号11は、PaFSのORF cDNAの増幅に使用したプライマーの塩配列を示す。
配列番号12は、PaFSのORF cDNAの増幅に使用したプライマーの塩配列を示す。
配列番号13は、PaFSの欠失変異体の調製に使用したF1センスプライマーの塩配列を示す。
配列番号14は、PaFSの欠失変異体の調製に使用したF2センスプライマーの塩配列を示す。
配列番号15は、PaFSの欠失変異体の調製に使用したR1アンチセンスプライマーの塩配列を示す。
配列番号16は、PaFSの欠失変異体の調製に使用したR2アンチセンスプライマーの塩配列を示す。
配列番号17は、PaFSの欠失変異体の調製に使用したR3アンチセンスプライマーの塩配列を示す。
配列番号18は、PaFSの欠失変異体の調製に使用したR4アンチセンスプライマーの塩配列を示す。
配列番号19は、PaFSの欠失変異体の調製に使用したR5アンチセンスプライマーの塩配列を示す。
配列番号20は、PaFSの点変異体(D92A)の調製に使用したセンスプライマーの塩配列を示す。
配列番号21は、PaFSの点変異体(D92A)の調製に使用したアンチセンスプライマーの塩配列を示す。
配列番号22は、PaFSの点変異体(D474A)の調製に使用したセンスプライマーの塩配列を示す。
配列番号23は、PaFSの点変異体(D474A)の調製に使用したアンチセンスプライマーの塩配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N端領域に(a)または(b)に記載するアミノ酸配列からなるテルペン環化酵素ドメイン、およびC端領域に(c)または(d)に記載するアミノ酸配列からなるプレニルトランスフェラーゼドメインを有するフシコッカン合成キメラ型酵素:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列、
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列、
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【請求項2】
下記(A)または(B)に記載するアミノ酸配列からなる、請求項1に記載するフシコッカン合成キメラ型酵素:
(A)配列番号3に示すアミノ酸配列、
(B)配列番号3において、1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、テルペンシクラーゼ活性およびプレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【請求項3】
5’側領域に(a)または(b)に記載するアミノ酸配列からなるテルペン環化酵素ドメインをコードする塩基配列、および3’側領域に(c)または(d)に記載するアミノ酸配列からなるプレニルトランスフェラーゼドメインをコードする塩基配列を有するフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列、
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列、
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【請求項4】
下記(A)または(B)に記載するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する、請求項3に記載するフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子:
(A)配列番号3に示すアミノ酸配列、
(B)配列番号3において、1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、テルペンシクラーゼ活性およびプレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【請求項5】
5’側領域に(i)または(ii)に記載するテルペン環化酵素ドメインをコードする塩基配列、および3’側領域に(iii)または(iv)に記載するプレニルトランスフェラーゼドメインをコードする塩基配列を有する、請求項3または4に記載するフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子:
(i)配列番号4に示す塩基配列、
(ii)配列番号4に示す塩基配列と少なくとも85%の同一性を有する塩基配列であって、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
(iii)配列番号5に示す塩基配列、
(iv)配列番号5に示す塩基配列と少なくとも85%の同一性を有する塩基配列であって、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
【請求項6】
下記(I)または(II)に記載する塩基配列を有する、請求項3乃至5のいずれかに記載するフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子:
(I)配列番号6に示す塩基配列、
(II)配列番号6に示す塩基配列と少なくとも85%の同一性を有する塩基配列であって、テルペンシクラーゼ活性およびプレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれかに記載するフシコッカン合成キメラ型酵素遺伝子を含有する組み換えベクター。
【請求項8】
請求項7に記載する組み換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
【請求項9】
宿主細胞が大腸菌である請求項8に記載する形質転換体。
【請求項10】
請求項8または9に記載する形質転換体を培地で培養する工程、および必要に応じて、得られる培養物からテルペンシクラーゼ活性およびプレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質を採取する工程を有する、請求項1または2に記載するフシコッカン合成キメラ型酵素の製造方法。
【請求項11】
請求項8または9に記載する形質転換体を培地で培養する工程、および必要に応じて、得られる培養物からフシコッカ-2,10(14)-ジエンを採取することを特徴とする、フシコッカ-2,10(14)-ジエンの製造方法。
【請求項12】
下記(a)または(b)に記載するアミノ酸配列からなるテルペン環化酵素:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【請求項13】
(a)または(b)に記載するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるテルペン環化酵素遺伝子:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【請求項14】
下記(i)または(ii)に記載する塩基配列からなる請求項13に記載する2テルペン環化酵素遺伝子:
(i)配列番号4に示す塩基配列、
(ii)配列番号4に示す塩基配列と少なくとも85%の同一性を有する塩基配列であって、テルペンシクラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列、
【請求項15】
下記(c)または(d)に記載するアミノ酸配列からなるプレニルトランスフェラーゼ:
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列、
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【請求項16】
(c)または(d)に記載するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるプレニルトランスフェラーゼ遺伝子:
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列、
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列であって、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列。
【請求項17】
下記(iii)または(iv)に記載する塩基配列からなる請求項16に記載するプレニルトランスフェラーゼ遺伝子:
(iii)配列番号5に示す塩基配列、
(iv)配列番号5に示す塩基配列と少なくとも85%の同一性を有する塩基配列であって、プレニルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−245628(P2008−245628A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94968(P2007−94968)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼発行者名 植物化学調節学会 刊行物名 植物化学調節学会第41回大会 研究発表記録集 発行年月日 平成18年10月4日 ▲2▼掲載年月日 平成19年2月1日 掲載アドレス (1)http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/search/get_entry?accnumber=AB267396 (2)http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/search/get_entry?accnumber=AB272062 ▲3▼研究集会名 平成18年度山形大学農学部生物資源学科 卒業論文発表会 主催者名 国立大学法人山形大学 開催日 平成19年2月15日及び16日 ▲4▼発行者名 The National Academy of Sciences of the United States of America 刊行物名 PNAS,February 27,2007,vol.104,No.9 発行年月日 平成19年2月20日 ▲5▼発行者名 社団法人 日本農芸化学会 刊行物名 日本農芸化学会2007年度(平成19年度)大会 講演要旨集 発行年月日 平成19年3月5日 ▲6▼発行者名 社団法人 日本農芸化学会 刊行物名 日本農芸化学会2007年度(平成19年度)大会 講演要旨集 発行年月日 平成19年3月5日
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】