説明

フタロシアニン誘導体含有シリカ粒子の製造法、当該粒子および用途

本発明は、少なくとも1種のフタロシアニン誘導体を含むシリカ粒子の製造方法、少なくとも1種のケイ素フタロシアニン誘導体から逆マイクロエマルション経由で製造される当該粒子、当該シリカ粒子、およびその用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子の分野、取り分け、シリカフタロシアニン型の色素を含有するシリカナノ粒子の分野に関する。
【0002】
実際に、本発明の目的は、フタロシアニンおよびナフタロシアニン誘導体を取り込むシリカ粒子の製造法である。本発明の目的はまた、この方法により製造されるフタロシアニンおよびナフタロシアニン誘導体を取り込むシリカ粒子、およびそれらの異なる用途並びに適用にも関する。
【背景技術】
【0003】
アキシアルリガンドを有するケイ素フタロシアニンもしくはナフタロシアニンの複合体から誘導される色素の合成と性質については、ケニイ(Kenney)[1](特許文献1)、ジョイナー(Joyner)[2](非特許文献1)、およびエスポジト(Esposito)[3](非特許文献2)による文献に記載されている。フタロシアニンの物理化学的性質については、相当に興味をそそる発展があった。この興味の対象は、一部、様々な分野、例えば、電子写真[4](非特許文献3)、液晶[5](非特許文献4)、導電性ポリマー[6](非特許文献5)、エレクトロクロミックディスプレイ[7](非特許文献6)、エネルギーの光電化学変換「8」(非特許文献7)、透明熱可塑剤および架橋重合体用の赤外線吸収剤[9](特許文献2)、および光伝導性[10](非特許文献8)などでのそれらの可能性のある適用に由来する。
【0004】
実際に、フタロシアニンおよび他の大環状類似体は、特にすぐれた電子工学的性質および光学的性質をもつ分子材料として著しく注目されている。これらの性質は、電子雲の非局在化に由来するものであり、材料科学、さらには、ナノテクノロジーの様々な研究分野でこれらの生成物を興味深いものとしている。従って、フタロシアニンは半導体成分、エレクトロクロミズム装置の成分、情報記憶システムの成分に成功裏に組み込まれている。
【0005】
フタロシアニンを科学技術上の装置に組み込むために考慮すべき重大な問題は、これらマクロ環の空間的配置の制御である。このことは巨大分子もしくは分子のスケールで、フタロシアニンの物理化学的性質を拡張し、改善する可能性を与える。超分子性を得るためには、フタロシアニンの共通面の重ね合わせが必要である。例えば、伝導率の増加は、共平面マクロ環を介しての電子の非局在化により、フタロシアニンのスタッキングシステムの主軸に沿って完遂し得る。フタロシアニンに基づくシステムの伝導率は、一般に、極めて特異なフタロシアニンの固有の性質に依存している。従って、ケイ素フタロシアニンは電界効果トランジスタなどのデバイスの製造に使用されていた。良好な伝導率は、フタロシアニンに基づくポリマーにおいても得られる。フタロシアニンに基づく多種多様な半導体ポリマーの中で、最も重要な一群は、フタロシアニンのシロキサン[PcSiOのものである。
【0006】
従って、ナノ対象物およびその他のシロキサンフタロシアニンポリマーは、先行技術分野において周知である。これらの構造は文献上種々の方法で作製される。幾つもの方法がシリカフタロシアニンの重合のために有効であるとされている。
【0007】
フタロシアニンポリシロキサンの調製については、文献に記載されている。このように、ポリマーは前駆体としてケイ素フタロシアニンを使用することにより合成されている。これらの化合物は、ラングミュア−ブロジェット(Langmuir−Blodgett)フィルム(高硬度ポリマー型の一次元フィルム)の調製に参入している[11](非特許文献9)。重合反応は、極めて極端な条件、すなわち、真空下、350〜400℃で2時間実施される。ポリマーの別の合成では、ジメチルスルホキシド中、同じケイ素フタロシアニン前駆体を用いて、135℃で24時間行う[12](非特許文献10)。つい最近、新しいより適切な方法が、3単位ないし4単位のモノマー(ケイ素フタロシアニン)からのオリゴマーの製造について報告された[13](非特許文献11)が、当該方法は、キノリン存在下のモノマーの縮合と、引き続く、塩化tert−ブチルジメチルシリル(TBDMSCl)でのシリル化よりなる。
【0008】
フタロシアニンの芳香性マクロ環の平面に縦軸方向に架橋したポリマーを得るために、別の方法が開発された。従って、アキシアル官能基化は、ポリ(ポリセバシン酸無水物)と軸方向に共役するケイ素フタロシアニンを得ることに繋がる。それによって得た生成物は、さらにマイクロフェーズ反転法を経由する親水性ナノ粒子を形成するために使用された[14](非特許文献12)。
【0009】
一般的に強調すべきことは、これらのポリマーが高電気伝導度を生じることである。しかし、これらの材料は、水と一般的な有機溶媒両方に不溶であり、そのことがそれらの工業的製造を難しくしている。事実、フタロシアニン型の芳香性マクロ環の有機的性質は、後者を著しく不溶なものとする。この不溶性は、ナフタロシアニンまたはアントラセン類似体を用いることでより明白である。この現象は、部分的に、π−π相互作用によって形成される凝集体によるものである。従って、この群の色素に、有機溶媒への良好な溶解性を付与するためには、周辺位置および/または非周辺位置に芳香性マクロ環を置換させることがときに必要である。残念ながら、この官能基化は本来の性質に変化を惹き起こし得る。従って、特定の事例においては、非置換マクロ環の芳香性ネットワークを維持することが好ましい。
【0010】
ケイ素フタロシアニンの封緘(カプセル化)は、二三の研究対象でもあった。フタロシアニンに基づく材料の顕著な認識される疎水性を考慮すると、湿式ルート経由の常套方法によりそれらをシリカナノ対象物中にカプセル化することは非常に難しい。
【0011】
従って、これらの生成物をリポタンパク塩基と共にナノプラットフォームとして使用するために、ケイ素フタロシアニン・ビスオレイン酸エステルの誘導体がリポタンパクナノ粒子に導入された。これらの化合物は引き続き、多機能性および治療診断デバイスとして使用されている[15](非特許文献13)。特許出願(特許文献3)はまた、銅フタロシアニン結晶(ケイ素の存在について言及なし)のカプセル化に関する[16]。このように製造された分散液を含有するインク用のナノ粒子、カラーフィルター用粒子、および感光性着色樹脂組成物用粒子の研究についてもまた報告されている[17](非特許文献14)。
【0012】
最後に、ケイ素フタロシアニンと共役したカドミウムセレン化物(CdSe)ナノ粒子の形成についての研究が記載されている。CdSeナノ粒子の表面は、活性基(アミン基)の縮合により官能基化され、ケイ素フタロシアニンのマクロ環のアキシアル位に配置されて、アルキル基を介し、後者に結合する[18](非特許文献15)。2006年に公開された同様の研究は、銅フタロシアニンテトラスルホナートが、アミン基による官能基化により、シリカナノ粒子の修飾表面に導入されることを示している[19](非特許文献16)。
【0013】
国際公開第2008/138727号は、銅フタロシアニンにより官能基化されたシリカナノ粒子の製造について報告している。銅フタロシアニンが担持し、シリカナノ粒子の形成に必要なシロキサン官能基は、周辺の位置にあって、銅フタロシアニンの官能基化の工程を必要とする[20](特許文献4)。
【0014】
そこには、シリカ粒子などのフタロシアニンに基づく材料を製造するための工業的規模で適用し得る簡単な実用的方法について、現実的な要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第3,094,536号(ケニイ;Kenney)(1963年6月18日公告)[1]
【特許文献2】国際公開第2008/083918号(チバ・ホールディング・インクおよびチバSPA)(2008年7月17日公開)[9]
【特許文献3】日本国特許公開2005−272760号(東洋インクMFG会社)(2005年10月6日公開)[16]
【特許文献4】国際公開第2008/138727(チバ・ホールディング・インク)(2008年11月20日公開)[20]
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Joyner, R.D.; Cekada, J.; Link Jr.R.G.; Kenney, M.E. J. Inorg. Nucl. Chem. 1960, 15, 387 [2]
【非特許文献2】Esposito, J.N.; Lloyd, J.E.; Keeney, M.E. Inorg. Chem. 1966, 5, 1979 [3]
【非特許文献3】Lotfy, R.O.; Hor, A.M.; Rucklidge, A. J. Imag. Sci. 1987, 31, 31 [4]
【非特許文献4】Belarbi, Z.; Sirlin, C.; Simon, J.; Andre, J. J. Phys. Chem. 1989, 93, 8105 [5]
【非特許文献5】Hanack, M. Mol. Cryst. Liq. Cryst. 1988, 160, 133 [6]
【非特許文献6】Castenada, F.; Plichon, V.; Clarisse, C.; Riou, M.T. J. Electroanal. Chem. 1987, 233, 77 [7]
【非特許文献7】Sims, T.D.; Pemberton, J.E.; Lee, P.; Armstrong, N.R. Chem. Mater. 1989, 1, 26 [8]
【非特許文献8】Hayashida, S.; Hayashi, N. Chem. Mater 1991, 3, 92 [10]
【非特許文献9】Chen, P.; Tang, D.; Wang, X.; Chen, H.; Liu, M.; Li, J.; Liu, X. Colloids and Surfaces A (コロイドおよび表面A) : Physicochemical and Engineering Aspects 2000, 175, 171 [11]
【非特許文献10】Nicolau, M.; Henry, C.; Martinez-Diaz, M.V.; Torres, T.; Armand, F.; Palacin, S.; Ruaudel-Teixier, A.; Wegner, G. Synthetic Metals 1999, 102, 1521 [12]
【非特許文献11】Cammidge, A.N.; Nekelson, F.; Helliwell, M.; Heeney, M.J.; Cook, M.J. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 16382 [13]
【非特許文献12】Lee, P.P.S.; Ngai, T.; Wu, C.; Ng, D.K.P. Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry 2005, 43, 837 [14]
【非特許文献13】Zheng, G.; Chen, J.; Li, H.; Glickson, J.D. PNAS、2005, 102, 17757 [15]
【非特許文献14】Inomata H.; Arai K.; Nakanishi H. Jpn. J. Appl. Phys., 1999, 38, L81 [17]
【非特許文献15】Dayal, S.; Krolicki, R.; Lou, Y.; Qiu, X.; Berlin, J.C.; Kenney, M.E.; Burda, C. Appl. Phys. B 2006, 84, 309 [18]
【非特許文献16】Kim, T.H.; Lee, J.K.; Park, W.H.; Lee, T.S. Mol. Cryst. Liq. Cryst. 2006, 444, 23 [19]
【発明の概要】
【0017】
本発明により、上に列記した欠陥および科学技術上の問題の救済策を見出すことが可能である。実際に、後者はシリカに基づく球状の微粒子材料、特にナノ微粒子材料の製造方法を提案するものであり、その微粒子のサイズは、有利には、100nm未満であって、フタロシアニン誘導体を取り込んでいる;当該方法は工業的規模での適用が可能であり、如何なる非現実的方法もしくは工程をも必要とせず、また容易に入手可能で、危険性のない、さらに殆ど毒性のない生産物を使用する。
【0018】
本発明者らの研究は、シリカ前駆体としてケイ素フタロシアニンの誘導体を用いることにより、フタロシアニン誘導体を取り込んでいるシリカナノ微粒子などのシリカ粒子を作製することが可能であることを示している。フタロシアニンマクロ環の空隙中に導入されたケイ素原子の存在と組み合わせたアキシアルリガンドの利用可能性は、逆ミセルルートを経由してシリカナノ微粒子の適切な合成に必要な前駆体として、それを使用することを可能とする。
【0019】
この研究は、フタロシアニンに基づく材料の顕著な疎水性に関係する技術的先入観を克服する可能性を提供した。実際に、当業者は、形成されるミセルがこれらの誘導体の疎水性と相いれないと考えられる水を含有するので、フタロシアニン誘導体を取り込むシリカ粒子を製造するために、逆ミセルシステムを使用することはないであろう。
【0020】
さらに、本発明の範囲内で、本発明による方法により得られるシリカ粒子の表面は官能基化することが可能であって、それによって粒子の極性に対する影響も可能となり、従って、それを適用する場合に使用される溶媒、すなわち、極性溶媒、非極性溶媒などとの親和性に対する影響が可能となり、結果として、所望の分散液との親和性に対する影響が可能となる。
【0021】
従って、本発明は少なくとも1種のフタロシアニン誘導体を取り込むシリカ粒子の製造法であって、少なくとも1種のフタロシアニンのケイ素誘導体から逆マイクロエマルションを経由して当該粒子を製造する方法に関する。
【0022】
<逆マイクロエマルション>とは、<油中水>マイクロエマルションとも呼称され、第二の非極性液体、従って、第一液体と非混和性の液体中の、第一極性液体の微細小滴の熱力学的に安定な、透明な懸濁液を意味する。<逆ミセルルートを経由>という表現は、<逆マイクロエマルションを経由>という表現と同義である。
【0023】
<フタロシアニンのケイ素誘導体>とは、下記式(I)で示される化合物を意味する:
【0024】
【化1】



【0025】
式中、
、R、RおよびRは、同一または異なって、置換されていてもよいアリーレン基を表し;また
およびRは、同一または異なって、−Cl、−F、−OH、および−OR’(ただし、R'は1〜12個の炭素原子、特に、1〜6個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖もしくは分枝のアルキルを表す)からなる群より選択される。
【0026】
<置換されていてもよい>とは、式(I)の化合物のアルキル基が本発明の範囲内で、ハロゲン、アミン基、ジアミン基、アミド基、アシル基、ビニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、ホスホネート基、スルホン酸基、イソシアナート基、カルボキシル基、チオール(またはメルカプト基)、グリシドキシ基またはアクリルオキシ基により、特に、メタアクリルオキシ基により置換されていることを意味する。有利には、R'はメチルまたはエチルを表す。
【0027】
<アリーレン基>とは、本発明の範囲内で、それぞれ3〜8個の原子を含む1個以上の芳香族もしくはヘテロ芳香族環からなるモノ−もしくはポリ−置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族の炭素質構造体を意味し、ヘテロ原子は、N、O、PまたはSであり得る。
【0028】
<置換されていてもよい>とは、モノ−置換またはポリ−置換されていてもよいアリーレン基を意味し、該置換基は、カルボキシラート、アルデヒド、エステル、エーテル、ヒドロキシル、ハロゲン、アリール(例えば、フェニル、ベンジルまたはナフチル)、1〜12個の炭素原子、特に、1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝のアルキル(メチル、エチル、プロピル、またはヒドロキシプロピルなどで置換されていてもよい)、アミン、アミド、スルホニル、スルホキシドおよびチオールからなる群より選択される基である。
【0029】
有利には、基R、R、RおよびRは、同一または異なって、それぞれフェニレン、ナフタレンまたはアントラセンを表す。さらに詳しくは、基R、R、RおよびRは、同一であって、フェニレン、ナフタレンまたはアントラセンを表す。
【0030】
取り分け、本発明の範囲内で適用されるフタロシアニンのケイ素誘導体は、式(II)で表される:
【0031】
【化2】



【0032】
式中、
基R〜R22は、同一または異なって、水素、カルボキシラート、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、ヒドロキシル、ハロゲン、アリール(例えば、フェニル、ベンジルまたはナフチル)、1〜12個の炭素原子、特に、1〜6個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖もしくは分枝のアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、またはヒドロキシプロピル)、アミン、アミド、スルホニル、スルホキシド、およびチオールからなる群より選択される;
基RおよびRは、前記定義のとおりである。
【0033】
本発明の範囲内で、式(II)で示される好適な化合物は、基R〜R22が水素を表し、基RおよびRが前記定義のとおりである化合物である。
【0034】
あるいは、本発明の範囲内で適用されるフタロシアニンのケイ素誘導体は、ナフタロシアニン型の式(III)で示される化合物である:
【0035】
【化3】



【0036】
式中、
基R23〜R46は、同一または異なって、水素、カルボキシラート、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、ヒドロキシル、ハロゲン、アリール(例えば、フェニル、ベンジルまたはナフチル)、1〜12個の炭素原子、特に、1〜6個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖もしくは分枝のアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、またはヒドロキシプロピル)、アミン、アミド、スルホニル、スルホキシド、およびチオールからなる群より選択される;
基RおよびRは、前記定義のとおりである。
【0037】
本発明の範囲内の式(III)で示される好適な化合物は、基R23〜R46が水素を表し、基RおよびRが前記定義のとおりである化合物である。
式(I)、(II)および(III)において、点線で示す結合は、配位結合または供与結合を表す。
【0038】
有利には、式(I)、(II)および(III)で示される化合物において、基RおよびRは同一であり、−Cl、−F、−OH、および−OR’(ただし、R'は1〜12個の炭素原子、特に、1〜6個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖もしくは分枝のアルキルを表す)からなる群より選択され、また−Cl、−F、−OH、−OCHおよび−OCからなる群より選択される。さらに詳しくは、式(I)、(II)および(III)で示される化合物において、基RおよびRは同一であり、−OHまたは−Clを表す。
【0039】
本発明の範囲内で特に適用される式(II)および(III)で示される化合物は、フタロシアニナトジクロロシラン、フタロシアニアジヒドロキシシラン、ナフタロシアニナトジクロロシラン複合体、およびナフタロシアニナトジヒドロキシシラン複合体である。これらの複合体は、Rが−OHまたは−Clを表す場合、以下の方式で描出し得る:
【0040】
【化4】



【0041】
本発明による方法は、より詳しくは、以下の連続する工程からなる:
a)少なくとも1種のケイ素フタロシアニン誘導体を含有する油中水型のマイクロエマルション(Ma)を調製する工程;
b)選択肢として、工程(a)で得られたマイクロエマルション(Ma)に、少なくとも1種のシラン化合物を加える工程;
c)工程(b)で得られたマイクロエマルション(Mb)に、シラン化合物を加水分解し得る少なくとも1種の化合物を加える工程;
d)工程(c)で得られたマイクロエマルション(Mc)に、当該マイクロエマルションを不安定化し得る溶媒を加える工程;
e)工程d)にて沈殿した少なくとも1種のフタロシアニンのケイ素誘導体を取り込んでいるシリカ粒子を回収する工程。
【0042】
本発明による方法の工程(a)は、少なくとも1種のケイ素フタロシアニン誘導体を含有する油中水型のマイクロエマルション(Ma)を製造することからなる。かかるマイクロエマルションの製造を可能とするいずれの技法も、本発明の範囲内で使用し得る。
【0043】
従って、可能なことは:
−マイクロエマルション(Ma)を得るために、第一の溶液(M)を調製し、引き続きそこにケイ素フタロシアニンを取り込ませること;
−または、異なる成分と、それ故にケイ素フタロシアニン誘導体とを混合することにより、直接マイクロエマルション(Ma)を調製すること;
である。
【0044】
有利には、本発明による方法の工程(a)は、第一溶液(M)を調製し、引き続きその溶液にケイ素フタロシアニン誘導体(類)を取り込ませることからなる。この溶液(M)は、
−少なくとも1種の界面活性剤、
−選択肢として少なくとも1種の共界面活性剤、および
−少なくとも1種の非極性または弱極性溶媒
を混合することにより得られる。
【0045】
有利には、該界面活性剤、選択肢としての共界面活性剤、および非極性または弱極性溶媒は、以下の順、すなわち、界面活性剤、次いで選択肢としての共界面活性剤、および非極性または弱極性溶媒の順で、次々と加える。
【0046】
混合は、攪拌機、磁気バー、超音波浴、またはホモジナイザーを用いて撹拌しながら実施し、10〜40℃の温度、有利には、15〜30℃の温度、取り分け、室温(すなわち、23℃±5℃)で、1〜45分、特に、5〜30分、取り分け、15分間、実施する。
【0047】
本発明の範囲内で使用し得る界面活性剤は、親水性種を疎水性環境に導入することを目的とし、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびその混合物から選択し得る。<混合物>とは、本発明の範囲内で、少なくとも2種の異なるイオン性界面活性剤の混合物、少なくとも2種の異なる非イオン性界面活性剤の混合物、または非イオン性界面活性剤の1種と少なくとも1種のイオン性界面活性剤の混合物を意味する。
【0048】
イオン性界面活性剤は、特に、荷電した炭化水素鎖として発現し得、その電荷は対イオンにより釣り合わせる。考慮すべきイオン性界面活性剤の例は、限定されるものではないが、ビス(スルホコハク酸2−エチルヘキシル)ナトリウム(AOT)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、臭化セチルピリジニウム(CPB)およびその混合物である。
【0049】
本発明の範囲内にて使用し得る非イオン性界面活性剤は、ポリエトキシル化アルコール、ポリエトキシル化フェノール、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、およびその混合物からなる群より選択し得る。考慮すべき市販の非イオン性界面活性剤の例は、限定されるものではないが、トリトンX−100などのトリトンX界面活性剤、ブリジ−30などのブリジ系界面活性剤、イゲパールCO−720などのイゲパールCO界面活性剤、トゥイーン20などのトゥイーン系界面活性剤、スパン85などのスパン系界面活性剤などである。
【0050】
有利には、本発明の範囲内で使用し得る界面活性剤は、トリトンX−100である。
共界面活性剤は、選択肢として溶液(M)に添加し得る。
【0051】
<共界面活性剤>とは、本発明の範囲内でマイクロエマルションの形成を容易にし、それらを安定化し得る試薬を意味する。有利には、当該共界面活性剤は、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)などの8〜20個の炭素原子を有するアルキル硫酸ナトリウム;プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびヘキサノールの異性体などのアルコール;グリコールおよびその混合物からなる群より選択される両親媒性化合物である。
有利には、本発明の範囲内にて使用される共界面活性剤は、n−ヘキサノールである。
【0052】
非極性もしくは弱極性溶媒が、本発明の範囲内にて使用される。有利には、当該非極性もしくは弱極性溶媒は、非極性もしくは弱極性有機溶媒であり、特に、n−ブタノール、ヘキサノール、シクロペンタン、ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、シクロへプタン、n−へプタン、n−オクタン、イソ−オクタン、ヘキサデカン、石油エーテル、ベンゼン、イソブチル−ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ジエチルエーテル、酢酸n−ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、およびその混合物からなる群より選択される。
有利には、本発明の範囲内にて使用される非極性もしくは弱極性溶媒は、シクロヘキサンである。
【0053】
該溶液(M)において、該界面活性剤は、当該溶液の総容量に基づいて容量で1〜30%、特に、5〜25%、取り分け、10〜20%からなる割合で存在する。共界面活性剤は任意なものとして、当該溶液の総容量に基づいて、容量で1〜30%、特に、5〜25%、取り分け、10〜20%の割合で、溶液(M)中に存在する。従って、非極性もしくは弱極性溶媒は、当該溶液の総容量に基づいて、容量で40〜98%、特に、50〜90%、取り分け、60〜80%の割合で、溶液(M)中に存在する。
【0054】
該溶液(M)を調製した後、油中水型のマイクロエマルション(Ma)を形成させるために、前記定義のケイ素フタロシアニン誘導体を取り込ませる。
ケイ素フタロシアニン誘導体は、固体の形状で、液体の形状で、または溶液として極性溶媒に添加し得る。数種の異なるケイ素フタロシアニン誘導体を使用した場合、それらは一度で混合するか、または1種ずつ加えるか、またはまとめて添加し得る。
【0055】
適用したいずれの方法の場合にも、極性溶媒は、当該ケイ素フタロシアニン誘導体を溶媒(M)に取り込ませた後に、マイクロエマルション(Ma)に加える。有利には、ケイ素フタロシアニン誘導体は極性溶媒中の溶液として該溶液(M)に添加し、次いで、ある種の極性溶媒(第一の溶媒と同一でも、異なってもよい)をさらに加える。最も多くの場合、使用する両方の極性溶媒は同一である。あるいは、一緒に使用する極性溶媒は異なっているが、少なくとも一部は混和性の溶媒、例えば、THFおよび水である。ケイ素フタロシアニン誘導体と選択肢としての極性溶剤の添加は、攪拌機、磁気バー、超音波浴またはホモジナイザーを用いることにより、撹拌下に実施し得る。
【0056】
<極性溶媒>とは、本発明の範囲内で、水、脱イオン水、蒸留水、酸性化もしくは塩基性のヒドロキシル化溶媒(例えば、メタノールおよびエタノール)、低分子量液体グリコール(エチレングリコールなど)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)およびその混合物からなる群より選択される溶媒を意味する。
【0057】
極性溶媒または極性溶媒の混合物(ケイ素フタロシアニン誘導体が溶液中に存在する極性溶媒、および/または引き続き加えられる別の極性溶媒)は、当該マイクロエマルションの総容量に基づいて、容量で0.5〜20%、特に、1〜15%、取り分け、2〜10%の割合で、マイクロエマルション(Ma)中に存在する。ケイ素フタロシアニン誘導体は、この極性溶媒またはこの極性溶媒の混合物中に、極性溶媒の総容量に基づき、容量で0.05〜10%、特に、0.1〜5%、取り分け、0.2〜1%の量で存在する。
【0058】
工程(b)は任意工程である。この工程が適用される場合、この工程は、1種のシラン化合物または同一または異なる数種のシラン化合物を、得られたマイクロエマルション(Ma)に取り込ませることからなり、ゾル−ゲル反応によるケイ素フタロシアニン誘導体同様に、本発明シリカ粒子のシリカを与える。シラン化合物のマイクロエマルション(Ma)への取り込みは、油中水型のマイクロエマルション(Mb)を得るためのもので、インジェクションにより実施するが、有利には、次いで、攪拌機、磁気バー、超音波浴またはホモジナイザーを用いて撹拌し;適用し得る温度は、10〜40℃、有利には、15〜30℃、取り分け、室温(すなわち、23℃±5℃)とし、5分〜2時間、特に、15分〜1時間、取り分け、30分間実施する。
【0059】
有利には、当該シラン化合物は、アルキルシランまたはアルコキシシランである。さらに詳しくは、当該シラン化合物は、一般式:SiRaRbRcRd[式中、Ra、Rb、RcおよびRdは互いに独立して、水素、ハロゲン、アミン基、ジアミン基、アミド基、アシル基、ビニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、ホスホナート基、スルホン酸基、イソシアナート基、カルボキシル基、チオール(またはメルカプト)基、グリシドキシル基、アクリルオキシ基(例えば、メタアクリルオキシ基);1〜12個の炭素原子、特に、1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝の、置換されていてもよいアルキル基;4〜15個の炭素原子、特に、4〜10個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖もしくは分枝のアリール基;式−OReで示されるアルコキシ基(ただし、Reは前記定義のアルキル基を表す)、およびその塩から選択される]で示される化合物である。
【0060】
<置換されていてもよい>とは、シラン化合物のアルキル基およびアリール基が本発明の範囲内で、ハロゲン、アミン基、ジアミン基、アミド基、アシル基、ビニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、ホスホナート基、スルホン酸基、イソシアナート基;カルボキシル基、チオール(またはメルカプト)基、グリシドキシル基、またはアクリルオキシ基、特に、メタアクリルオキシ基により置換されることを意味する。
【0061】
該シラン化合物は、より詳しくは、ジメチルシラン(DMSi)、フェニルトリエトキシシラン(PTES)、テトラエトキシシラン(TEOS)、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン(DMDMOS)、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(メルカプト)−トリエトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,2−エタンジアミンおよびアセトキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシシリルプロポキシ)ジフェニルケトン、メチル−トリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(ベンゾイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−トリヒドロキシシリルプロピルメチルリン酸ナトリウム、(3−トリヒドロキシシリル)−1−プロパンスルホン酸、(ジエチルホスホナトエチル)トリエトキシシラン、およびその混合物からなる群より選択される。取り分け、該シラン化合物は、テトラエトキシシラン(TEOS、Si(OC)である。
【0062】
本発明により得られるシリカ粒子の表面の官能基化を目的として、適用されるシラン化合物は、シラン化合物総量に基づいて、20%未満、特に、5〜15%の予め官能基化したシランの混合物であり得る。一例として、TEOSおよび5〜15%のメルカプトトリエトキシシランを含む混合物が、本発明によるシリカ粒子の製造のために使用され、チオール基によって官能基化され得る。
【0063】
マイクロエマルション(Mb)中、シラン化合物は、当該マイクロエマルションの総容量に基づいて、容量で0.05〜20%、特に、0.1〜10%、取り分け、0.5〜5%からなる割合で存在する。
【0064】
本発明による方法の工程(c)は、シラン化合物の加水分解を可能とする化合物をマイクロエマルション(Mb)に加えることによりシラン化合物を加水分解することを目的とするものであり、それによって得られるマイクロエマルション(Mc)は、油中水型マイクロエマルションである。留意すべきことは、<シラン化合物の加水分解を可能とする化合物>とは、シラン化合物の加水分解を可能とするのみならず、ケイ素フタロシアニン誘導体の加水分解をも可能とする化合物を意味することである。
【0065】
シラン化合物の加水分解を可能とする化合物は、有利には、アンモニア、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)および水酸化ナトリウム(NaOH)からなる群より選択され、有利には、工程(b)において使用される極性溶媒と同一であるか、または異なる極性溶媒中のかかる化合物の溶液である。シラン化合物の加水分解を可能とする化合物は、より詳しくは、アンモニアまたは前記定義の極性溶媒中のアンモニア溶液である。実際に、アンモニアはシラン化合物の、またはケイ素フタロシアニン誘導体の加水分解のための試薬(HO)として、また触媒(NHOH)として作用する。
【0066】
シラン化合物の加水分解を可能とする化合物は、それを極性溶媒中の溶液とする場合、当該溶液の総容量に基づき、容量で5〜50%、特に、10〜40%、取り分け、20〜30%の割合で存在する。さらに、当該溶液は、マイクロエマルション(Mc)の総容量に基づき、容量で0.05〜20%、特に、0.1〜10%、取り分け、0.5〜5%からなる割合で存在する。
【0067】
工程(c)は、攪拌機、磁気バー、超音波浴またはホモジナイザーを用いる撹拌下に、10〜40℃、有利には、15〜30℃の温度、特に、室温(すなわち、23℃±5℃)で、6〜48時間、特に、12〜36時間、取り分け、24時間、実施し得る。
【0068】
使用するシラン化合物がTEOSである場合、本方法の工程(c)に際して起こる反応、すなわち、アンモニアの存在下のケイ素フタロシアニン誘導体とTEOSとの縮合反応は、以下の様式で図式化し得る:
【0069】
【化5】

【0070】
本発明による方法の工程(d)は、該粒子の構造を変性させはしないないが、工程(c)で得られるマイクロエマルション(Mc)を不安定化または変性させるような溶媒を加えることによって、シリカ粒子を沈殿させることを目的とする。
【0071】
有利には、使用する溶媒は前記定義の極性溶媒である。工程(d)にて適用すべき具体的な溶媒は、エタノール、アセトンおよびメタノールからなる群より選択される。有利には、本発明による方法の工程(d)において使用される溶媒はエタノールである。従って、マイクロエマルション(Mc)には、当該マイクロエマルションの容量よりも多い溶媒容量、特に、ファクター1.5だけ多い容量、取り分け、ファクター2だけ多い容量、あるいはさらにはファクター3だけ多い容量の溶媒を加える。
【0072】
工程(d)にて沈殿させた少なくとも1種のフタロシアニン誘導体を取り込んでいるシリカ粒子の回収を可能とするいずれの技法も、本発明による方法の工程(e)に適用し得る。有利には、この工程(e)では、遠心分離、沈降および洗浄の工程から選択される、同一または異なる1工程または数工程を実施する。洗浄工程は、上記定義の極性溶媒中で実施する。回収工程に数回の洗浄を適用する場合、同じ極性溶媒を数回の、さらにはすべての洗浄に使用するか、または異なる極性溶媒を各洗浄で使用する。遠心分離工程に関しては、この工程はシリカ粒子を、特に、洗浄溶媒中、室温で、4,000〜8,000rpmからなる速度で、取り分け、6,000rpm程度(すなわち、6,000±500rpm)で、5分〜2時間、特に、10分〜1時間、取り分け、15分間、遠心分離することにより実施する。
【0073】
本発明による方法は、工程(e)の後に、<工程(f)>と呼称する、その後に得られるシリカ粒子を精製することからなるさらなる工程を含み得る。
【0074】
有利には、この工程(f)は、本発明による方法の工程(e)の後に回収されるシリカ粒子を大容量の水と接触させることからなる。<大容量>とは、本発明による方法の工程(e)の後に回収されるシリカ粒子の容量よりも、ファクター50多い容量、特に、ファクター500多い容量、取り分け、ファクター1,000多い容量を意味する。工程(f)は、シリカ粒子が、ゼラストランス(Zellus trans;登録商標)(ロス(Roth))タイプのセルロース膜によりその容量が分離される、透析工程であってもよい。あるいは、透析工程の代わりに、ポリエーテルスルホン膜を経由する限外濾過工程を提供してもよい。工程(f)は、さらに、攪拌機、磁気バー、超音波浴またはホモジナイザーを用いる撹拌下に、0〜30℃、有利には、2〜20℃の温度、取り分け、冷却条件下(すなわち、6℃±2℃)で、30時間〜15日間、特に、3日〜10日間、取り分け、1週間、実施し得る。
【0075】
本発明は、本発明方法による範囲内で提供し得るマイクロエマルション(Mc)にも関係する。この油中水型のマイクロエマルションは以下のものから構成される:
−特に前記定義の、少なくとも1種の界面活性剤;
−選択肢として、特に前記定義の、少なくとも1種の共界面活性剤;
−特に前記定義の、少なくとも1種の非極性または弱極性溶媒;
−特に前記定義の、少なくとも1種の極性溶媒;
−特に前記定義の、少なくとも1種のケイ素フタロシアニン誘導体;
−選択肢として、特に前記定義の、少なくとも1種のシラン化合物;および
−特に前記定義の、シラン化合物を加水分解し得る少なくとも1種の化合物。
【0076】
有利には、本発明の目的対象である油中水型のマイクロエマルションは、以下のものから構成される:
−1〜30%、特に、5〜25%、取り分け、10〜20%からなる量の、少なくとも1種の界面活性剤;
−選択肢として、1〜30%、特に、5〜25%、取り分け、10〜20%からなる量の、少なくとも1種の共界面活性剤;
−40〜95%、特に、50〜90%、取り分け、60〜80%からなる量の、少なくとも1種の非極性または弱極性溶媒;
−0.5〜20%、特に、1〜15%、取り分け、2〜10%からなる量の、少なくとも1種の極性溶媒;
−0.001〜1%、特に、0.005〜0.1%、取り分け、0.001〜0.05%からなる量の、少なくとも1種のケイ素フタロシアニン誘導体;
−選択肢として、0.05〜20%、特に、0.1〜10%、取り分け、0.5〜5%からなる量の、少なくとも1種のシラン化合物;および
−0.01〜5%、特に、0.05〜1%、取り分け、0.1〜0.5%からなる量の、当該シラン化合物を加水分解し得る少なくとも1種の化合物;
(該量は当該マイクロエマルションの容量に基づき、容量で表す)。
【0077】
本発明は、さらに、本発明方法により製造し得るシリカ粒子に関する。この粒子は、前記定義の少なくとも1種のフタロシアニン誘導体を含んでなるシリカ粒子である。このものは、現在到達し得る最先端の技術水準のシリカ粒子とは識別される;その理由は、Si原子とフタロシアニン誘導体を結合する2つの共有結合にあり、フタロシアニン誘導体はシリカ粒子を官能基化する基ではないからである。実際に、Si原子とフタロシアニン誘導体とを結合する共有結合は、本発明による方法の最後の段階で形成されるシリカ粒子に保持されている。従って、シリカ粒子の格子構造とフタロシアニン誘導体との間には、共有結合の存在による強力な相互作用が存在する。それ故、フタロシアニン誘導体は、本発明による粒子のシリカ格子に共有結合により結合している。
【0078】
有利には、本発明によるシリカ粒子は、平均粒径が100nmまたはそれ以下、特に、10〜80nm、取り分け、20〜60nmからなり、さらには40nm程度(すなわち、40±10nm)のナノ粒子である。本発明によるシリカ粒子は、選択肢として官能基化されていてもよい。さらに、本発明によるシリカ粒子は、可能性として多孔性であり得る。
【0079】
最後に、本発明は本発明によるシリカ粒子の用途に関する;その分野は、触媒、印刷、塗料、濾過、重合、熱交換、熱安定性、材料化学、炭化水素精製、水素生産、吸光度、食品工業、活性薬品の輸送、生物分子、医薬製品、断熱コーティング、生物電気化合物と電子、光学装置、半導体デバイス、およびセンサである。
【0080】
本発明のその他の特徴および利点は、以下に説明するものであって、かつ限定されない
実施例を読み、添付の図面を参照することで、当業者にさらに明らかなものとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明による方法により製造したシリカナノ粒子による凝集体の透過型電子顕微鏡(TEM)により得られた図を示す。
【図2】本発明による方法により製造した凝集体がないシリカナノ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)により得られた図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
I.本発明によるシリカナノ粒子の製造法
以下の化学物質をこの順に加えることにより、溶液(本発明よる溶液M)を生成させた;界面活性剤トリトンX100(2.1mL)、共界面活性剤n−ヘキサノール(2.05mL)、シクロヘキサン有機溶媒(9.38mL)。この溶液を次いで室温で15分間撹拌する。
【0083】
次に、THF溶液中の2,3−ナフタロシアニン−ケイ素二水酸化物または<ケイ素2,3−ナフタロシアニン二水酸化物>であるシリカのフタロシアニン誘導体を加え(100μLの0.1M/THF、M=774.88g.mol−1、n=10−5mol)、次いで、水(0.5mL)を加えた。
【0084】
TEOS(テトラエトキシシラン、125μL、5.6×10−4mol、d=0.934、M=208.33gmol−)ケイ素誘導体をこのエマルションに注入した。得られたエマルションを室温で30分間撹拌した。25%アンモニア水(125μL)を加えることによりTEOSの加水分解を開始させ、反応混合物を室温で24時間撹拌した。
【0085】
エタノール(50mL)を加えてこのエマルションを不安定化し、シリカビーズをエタノールで3回、水で1回洗浄し、各洗浄の後に、遠心分離(6,000rpmで15分間)により沈降させた。
洗浄工程の後、磁気撹拌下に、水(1L)中、1週間、透析することにより得られたナノ粒子の精製を完了した。
【0086】
II.本発明によるシリカナノ粒子の特性化
第I部の方法に従って製造した水(40mL)に分散したシリカナノ粒子を、ナノ粒子のナノ構造の認識を可能にする、透過型電子顕微鏡(TEM)分析により特性化した。
このように、凝集体が球状のナノ粒子と共に観察される(図1)。これらナノ粒子の粒径は40nmと50nmの間で変化する。図2は凝集体を含まない球状ナノ粒子を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のフタロシアニン誘導体を取り込むシリカ粒子の製造法であって、少なくとも1種のケイ素フタロシアニン誘導体から逆マイクロエマルションを経由して当該粒子を製造することを特徴とする方法。
【請求項2】
当該ケイ素フタロシアニン素誘導体が、下記式(I)で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【化1】



[式中、
、R、RおよびRは、同一または異なって、置換されていてもよいアリーレン基を表し;また
およびRは、同一または異なって、−Cl、−F、−OH、および−OR’(ただし、R'は1〜12個の炭素原子、特に、1〜6個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖もしくは分枝のアルキルを表す)からなる群より選択される]
【請求項3】
当該ケイ素フタロシアニン誘導体が、下記式(II)で示される化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【化2】



[式中、
基R〜R22は、同一または異なって、水素、カルボキシラート、アルデヒド、エステル、エーテル、ヒドロキシル、ハロゲン、アリール(例えば、フェニル、ベンジルまたはナフチル)、1〜12個の炭素原子、特に、1〜6個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖もしくは分枝のアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、またはヒドロキシプロピル)、アミン、アミド、スルホニル、スルホキシド、およびチオールからなる群より選択され;
基RおよびRは、請求項2に定義のとおりである]
【請求項4】
当該ケイ素フタロシアニン誘導体が、ナフタロシアニン型の下記式(III)で示される化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【化3】


[式中、
基R23〜R46は、同一または異なって、水素、カルボキシラート、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、ヒドロキシル、ハロゲン、アリール(例えば、フェニル、ベンジルまたはナフチル)、1〜12個の炭素原子、特に、1〜6個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖もしくは分枝のアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、またはヒドロキシプロピル)、アミン、アミド、スルホニル、スルホキシド、およびチオールからなる群より選択され;
基RおよびRは、請求項2に定義のとおりである]
【請求項5】
当該方法が以下の連続する工程を含んでなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。:
a)少なくとも1種のケイ素フタロシアニン誘導体を含有する油中水型のマイクロエマルション(Ma)を調製する工程;
b)選択肢として、工程(a)で得られたマイクロエマルション(Ma)に、少なくとも1種のシラン化合物を加える工程;
c)工程(b)で得られたマイクロエマルション(Mb)に、シラン化合物を加水分解し得る少なくとも1種の化合物を加える工程;
d)工程(c)で得られたマイクロエマルション(Mc)に、当該マイクロエマルションを不安定化し得る溶媒を加える工程;
e)工程(d)にて沈殿した少なくとも1種のケイ素フタロシアニン誘導体を取り込んでいるシリカ粒子を回収する工程;
【請求項6】
当該工程(a)が、第一溶液(M)を調製し、この溶液に、引き続きケイ素フタロシアニン誘導体(類)を取り込ませることからなることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
油中水型の当該マイクロエマルション(M)が、
−少なくとも1種の界面活性剤、
−選択肢として少なくとも1種の共界面活性剤、および
−少なくとも1種の非極性または弱極性溶媒
を混合することにより得られるものであることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
当該ケイ素フタロシアニン誘導体(類)を該溶液(M)に取り込ませた後に、マイクロエマルション(Ma)に極性溶媒を加えることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
当該シラン化合物が、一般式:
SiR
[式中、R、R、RおよびRは互いに独立して、水素、ハロゲン、アミン基、ジアミン基、アミド基、アシル基、ビニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、ホスホナート基、スルホン酸基、イソシアナート基、カルボキシル基、チオール(またはメルカプト)基、グリシドキシル基、アクリルオキシ基(例えば、メタアクリルオキシ基);1〜12個の炭素原子、特に、1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝の、置換されていてもよいアルキル基;4〜15個の炭素原子、特に、4〜10個の炭素原子を有する置換されていてもよい直鎖もしくは分枝のアリール基;式−OR(ただし、Rは前記定義のアルキル基を表す)、およびその塩から選択される]
で示される化合物であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該シラン化合物が、ジメチルシラン(DMSi)、フェニルトリエトキシシラン(PTES)、テトラエトキシシラン(TEOS)、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン(DMDMOS)、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(メルカプト)−トリエトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,2−エタンジアミンおよびアセトキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシシリルプロポキシ)ジフェニルケトン、メチル−トリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(ベンゾイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−トリヒドロキシシリルプロピルメチルリン酸ナトリウム、(3−トリヒドロキシシリル)−1−プロパンスルホン酸、(ジエチルホスホナトエチル)トリエトキシシランおよびその混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
当該シラン化合物の加水分解を可能とする化合物が、アンモニア、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)および水酸化ナトリウム(NaOH)からなる群より選択されることを特徴とする請求項5〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に定義した方法の範囲内で適用し得る油中水型のマイクロエマルション(Mc)であって、
−少なくとも1種の界面活性剤;
−選択肢として、少なくとも1種の共界面活性剤;
−少なくとも1種の非極性または弱極性溶媒;
−少なくとも1種の極性溶媒;
−少なくとも1種のケイ素フタロシアニン誘導体;
−選択肢として、少なくとも1種のシラン化合物;および
−シラン化合物を加水分解し得る少なくとも1種の化合物;
を含んでなるマイクロエマルション。
【請求項13】
当該マイクロエマルションが、
−1〜30%、特に、5〜25%、取り分け、10〜20%からなる量の、少なくとも1種の界面活性剤;
−選択肢として、1〜30%、特に、5〜25%、取り分け、10〜20%からなる量の、少なくとも1種の共界面活性剤;
−40〜95%、特に、50〜90%、取り分け、60〜80%からなる量の、少なくとも1種の非極性または弱極性溶媒;
−0.5〜20%、特に、1〜15%、取り分け、2〜10%からなる量の、少なくとも1種の極性溶媒;
−0.001〜1%、特に、0.005〜0.1%、取り分け、0.001〜0.05%からなる量の、少なくとも1種のケイ素フタロシアニン誘導体;
−選択肢として、0.05〜20%、特に、0.1〜10%、取り分け、0.5〜5%からなる量の、少なくとも1種のシラン化合物;および
−0.01〜5%、特に、0.05〜1%、取り分け、0.1〜0.5%からなる量の、当該シラン化合物を加水分解し得る少なくとも1種の化合物;
(該量は当該マイクロエマルションの容量に基づき、容量で表す)
を含んでなることを特徴とする請求項12に記載のマイクロエマルション。
【請求項14】
請求項1ないし11のいずれか1項に定義した方法により製造し得る少なくとも1種のフタロシアニン誘導体を含んでなるシリカ粒子であって、当該フタロシアニン誘導体が当該粒子のシリカ格子に共有結合しているものであるシリカ粒子。
【請求項15】
平均粒径が100nm以下、特に、10〜80nm、取り分け、20〜60nm、さらには40nm程度であることを特徴とする請求項14記載のシリカ粒子。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−503097(P2013−503097A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526069(P2012−526069)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062516
【国際公開番号】WO2011/023783
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】