説明

フタロシアニン類およびインクジェット印刷でのそれらの使用

フタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニン染料およびその塩の調製方法。同様に、新規化合物、インク、印刷方法、印刷された材料、およびインクジェットカートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、組成物およびインク、印刷方法、印刷された基材、ならびにインクジェット印刷機用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、ノズルを基材と接触させることなくインクの液滴を微細ノズルに通して基材上に噴出させる、ノンインパクト印刷技術である。この技術に用いられるインクのセットは、典型的には黄色、マゼンタ、シアンおよび黒色インクを含む。
【0003】
高解像度デジタルカメラの出現に伴い、消費者がインクジェット印刷機を用いて写真を印刷することが、次第に一般的になってきている。これにより、従来の銀塩写真の費用および不便さが回避されている。
【0004】
インクジェット印刷機は他の形の印刷および現像に対し多くの利点を有するが、取り組むべき技術的課題がなお存在する。例えば、インク媒体に溶解するが優れた耐湿潤堅牢度を示すインク着色剤(すなわち、印刷したときに滲んだり不鮮明になったりしないプリント)を提供するという、相反する要件がある。また、インクは、印刷したシートがくっつくのを回避するために迅速に乾燥することが必要であるが、印刷機に用いられている微小ノズルの上を覆ってクラスト(crust)を形成すべきではない。印刷機のノズルを詰まらせうる粒子の形成を回避するために、貯蔵安定性も重要である。これは特に、消費者はインクジェットインクカートリッジを数ヶ月にわたり保持する可能性があるためである。さらに、特に写真用品質の再生に重要なことであるが、得られる像は、光または一般的な酸化ガス、例えばオゾンへの暴露により、急激に日焼けまたは退色を起こすべきでない。あらゆる像を最適に再生することができるように、着色剤の色調および彩度が厳密に的確であることも重要である。
【0005】
したがって、インクジェット印刷のための新規着色剤の開発は、これら矛盾していて要求の厳しい性質をすべて釣り合わせるという点で、独特な課題を提起する。
主としてインクジェット印刷用に設計される染料は、場合によってはカラーフィルターの形成に使用するのに適していることもできる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、フタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニン染料およびその塩の調製方法であって、以下:
(a)式(1)の化合物を式(2)の化合物ならびに所望により式(3)および/または式(4)の化合物と環化する段階:
【0007】
【化1】

【0008】
[式中:
およびRは、シアノ、カルボキシまたはカルボキサミドであるか、一緒になって以下の式の基:
【0009】
【化2】

【0010】
を形成し;
Qは電子求引基であり;
Xは、CN、置換されていてもよいC1−4アルキルおよびC1−4アルコキシからなる群より選択され;
nは1〜4であり;
は0〜3である]
ここにおいて、該環化プロセスは、適した窒素源(必要な場合)および金属塩(必要な場合)の存在下で実施する;
(b)段階(a)で形成したスルホン化フタロシアニン、スルホン化アザフタロシアニン、スルホン化金属フタロシアニンまたはスルホン化金属アザフタロシアニンを塩素化剤で塩素化して、スルホン酸置換基をスルホニルクロリドに転化する段階;ならびに
(c)段階(b)で形成した、スルホニルクロリド基を持つフタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニンを、アンモニアおよび/または1以上のアミンと反応させる段階、
を含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
フタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニン染料およびその塩は、好ましくは金属フタロシアニン染料または金属アザフタロシアニン染料およびその塩、より好ましくは銅またはニッケルフタロシアニンまたはアザフタロシアニン染料およびその塩、とりわけ銅フタロシアニン染料または銅アザフタロシアニン染料およびその塩である。
【0012】
およびRは、好ましくはシアノまたはカルボキシ、特にカルボキシである。より好ましくは、RおよびRは同一である。
Qは、好ましくはNO、FまたはCl、より好ましくはClである。
【0013】
nは2〜4であることが好ましく、より好ましくはnは4である。
は、好ましくは0または1、より好ましくは0である。
段階(a)の環化反応は、任意の相溶性溶媒中で実施することが好ましい。好ましい溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびスルホランが挙げられる。
【0014】
式(1)の化合物を式(2)の化合物と環化する場合、式(1)の化合物と式(2)の化合物の好ましいモル比は、10/1〜1/10の範囲にある。より好ましくは、モル比は1/3〜3/1の範囲にある。
【0015】
式(1)の化合物を式(2)の化合物ならびに式(3)および/または式(4)の化合物と環化する場合、式(1)の化合物と式(2)の化合物ならびに式(3)および/または式(4)の化合物との好ましいモル比は、10/1/1〜1/10/1〜1/1/10の範囲にある。より好ましくは、モル比は、2/1/1〜1/2/1〜1/1/2の範囲にある。式(1)の化合物と式(2)の化合物ならびに式(3)および/または式(4)の化合物とのモル比が1/2/1であることが、特に好ましい。
【0016】
環化反応は、好ましくは80〜180℃、より好ましくは100〜150℃、特に110〜130℃の範囲の温度で実施する。
段階(a)の環化反応は、好ましくは1〜12時間、より好ましくは2〜8時間、特に3〜6時間の範囲にわたり実施する。
【0017】
段階(a)の環化反応を実施する時間の長さは、用いる温度に依存する。例えば、より高い温度ではより短い時間が必要であり、より低い温度ではより長い時間が必要である。好ましい態様では、環化を、110〜130℃の範囲の温度で3〜6時間の範囲の時間にわたり実施する。
【0018】
本発明の方法では、反応体および反応条件によっては、環化反応に塩基を組み込むことが好都合である可能性がある。任意の適した塩基を用いることができる。塩基は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)であることが好ましい。
【0019】
本方法の生成物が金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニンである場合、金属塩が必要である。任意の適した塩を用いることができる。例えば、反応の生成物が銅フタロシアニンである場合、CuClである。
【0020】
およびRが窒素を含有していない場合、フタロシアニンまたはアザフタロシアニン環を形成させたい場合は窒素源が必要である。適した窒素源としてはアンモニアおよび尿素が挙げられる。
【0021】
式(1)、式(2)、式(3)および式(4)の化合物は、当分野で周知の方法により調製することができる。それらは、一般に市販されてもいる。
段階(b)で用いられる塩素化剤は、任意の適した塩素化剤、例えば、クロロスルホン酸、五塩化リン、オキシ塩化リン、または三塩化リンなどであることができる。塩素化剤は、クロロスルホン酸とオキシ塩化リンの混合物を含むことが好ましい。クロロスルホン酸とオキシ塩化リンの比率は、好ましくは25モル当量〜0.5モル当量、より好ましくは12.5モル当量〜1.0モル当量の範囲にある。
【0022】
塩素化剤と、スルホン化したフタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニン染料の混合物との好ましいモル比は、反応体の性質に明らかに依存する。しかしながら、フタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニン染料の混合物が、スルホン化した銅フタロシアニン染料または銅アザフタロシアニン染料の混合物であり、塩素化剤がクロロスルホン酸とオキシ塩化リンの混合物を含む場合、塩素化剤とスルホン化銅フタロシアニン染料の混合物との好ましい比率は、100モル当量〜1.0モル当量、より好ましくは50モル当量〜1.0モル当量である。
【0023】
塩素化は、好ましくは90〜180℃、より好ましくは120〜150℃、特に130〜148℃、さらに特に135〜145℃の範囲の温度で実施する。
塩素化は、好ましくは0.5〜16時間、より好ましくは1〜8時間、特に1.5〜5時間にわたり実施する。
【0024】
塩素化を実施する時間の長さは、用いる温度に依存する。例えば、より高い温度ではより短い時間が必要であり、より低い温度ではより長い時間が必要である。好ましい態様では、塩素化を、135〜145℃の温度で1.5〜8時間、より好ましくは2〜7時間にわたり実施する。
【0025】
段階(c)における段階(b)の生成物とアンモニアおよび/または1以上のアミンとの縮合は、好ましくは10〜80℃の温度、より好ましくは20〜60℃の温度で、1〜14時間、より好ましくは2〜6時間にわたり実施する。アンモニアおよびアミン(1以上)との反応は順次実施することができるが、段階(c)において、スルホニルクロリド基を持つフタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニンの混合物をアンモニアおよび/またはアミン(1以上)と同時に反応させることが好ましい。
【0026】
段階(c)において、スルホニルクロリド基を持つフタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニンの混合物と反応させるアミンは、スルホニルクロリドと反応してスルホンアミドを生じることができる任意のアミンであることができる。
【0027】
アミン(1以上)は式(5)および式(6)のものであることが好ましい
NHR
式(5)
NHR
式(6)
[式中:
およびRは、H、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい);置換されていてもよいアリール;および置換されていてもよいヘテロシクリレン(置換されていてもよいヘテロアリールを含む)からなる群より選択され;そして
およびRは、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい);置換されていてもよいアリール;および置換されていてもよいヘテロシクリレン(置換されていてもよいヘテロアリールを含む)からなる群より選択される]。
【0028】
より好ましくは、RおよびRは、Hおよび置換されていてもよいC1−8アルキル、特に、−OH、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される1以上の水可溶化基を持つC1−8アルキルからなる群より選択される。
【0029】
特に、RおよびRは、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであることが好ましく、さらに特に、RおよびRは、独立して、Hまたは置換されていないC1−4アルキル、とりわけメチルであることが好ましい。
【0030】
式(5)のアミンは、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される水可溶化基を、直接または置換基上に持つことが好ましい。
好ましい式(6)のアミンは式(7)のものである:
NHR−L−NR
式(7)
[式中:
Lは二価の連結基であり;
は、Hまたは置換されていてもよいアルキルであり;
およびRは、独立して、H、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい)、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルである]。
【0031】
二価の連結基であるLは、置換されていてもよいアルキレン(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい);置換されていてもよいアリーレン;および置換されていてもよいヘテロシクリレン(置換されていてもよいヘテロアリーレンを含む)からなる群より選択されることが好ましい。
【0032】
より好ましくは、Lは、置換されていてもよいアルキレン、特に、置換されていてもよいC1−4アルキレン、さらに特に、置換されていないC1−4アルキレン、とりわけ−CHCH−である。
【0033】
は、好ましくは、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキル、より好ましくは、H、メチルまたはエチル、特にHまたはメチル、さらに特にHである。
およびRは、独立して、H、置換されていてもよいC1−4アルキル、または置換されていてもよいヘテロシクリルである。
【0034】
は、好ましくは、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキル、より好ましくは、H、メチルまたはエチル、特にHまたはメチル、さらに特にHである。
は、置換されていてもよいトリアジニル基であることが好ましい(ここにおいて、該トリアジニル基またはその上の置換基は、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの水可溶化基を持つことが好ましい)。
【0035】
より好ましくは、Rは式(8)の基である
【0036】
【化3】

【0037】
[式中:
Aは、−OR10、−SR10、−NR1011からなる群より選択され;
Bは、−OR12、−SR12、−NR1213からなる群より選択され;
10、R11、R12およびR13は、独立して、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルであり、ただし、R10、R11、R12およびR13により表される基の少なくとも1つは、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を持つという条件が付く]。
【0038】
AおよびBにより表される好ましい基は、独立して、−OH、−NHCH、−N(CH、−NHCSOH、−N(CH)CSOH、−NCSOH、−NHジスルホフェニル、−NHスルホフェニル、−NHカルボキシフェニルまたは−NHジカルボキシフェニル、−NHスルホナフチル、−NHジスルホナフチル、−NHトリスルホナフチル、−NHカルボキシナフチル、−NHジカルボキシナフチル、−NHトリカルボキシナフチル、−NHスルホヘテロシクリル、−NHジスルホヘテロシクリルまたは−NHトリスルホヘテロシクリルからなる群より選択することができる。
【0039】
が式(9)の基であることが特に好ましい
【0040】
【化4】

【0041】
[式中:
10は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
11は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
12は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
13は、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を持つ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルである]。
【0042】
10は、Hまたは置換されていないC1−4アルキルであることが好ましく、より好ましくは、R10はHまたはメチル、特にHである。
11は、Hまたは置換されていないC1−4アルキルであることが好ましく、より好ましくは、R11はHまたはメチル、特にHである。
【0043】
12は、Hまたは置換されていないC1−4アルキルであることが好ましく、より好ましくは、R12はHまたはメチル、特にHである。
好ましい態様において、R10、R11およびR12は、すべて独立してHまたはメチルのいずれかであり、より好ましくは、R10、R11およびR12は、すべてHである。
【0044】
13は、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を持つ置換されていてもよいアリールであることが好ましい。より好ましくは、R13は、1〜3、特に2つの−SOHまたは−COH基を持つアリール基(とりわけフェニル基)である。
【0045】
L、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12およびR13のいずれか1つの上に存在することができる好ましい所望による置換基は、独立して以下から選択される:置換されていてもよいアルコキシ(好ましくはC1−4−アルコキシ)、置換されていてもよいアリール(好ましくはフェニル)、置換されていてもよいアリールオキシ(好ましくはフェノキシ)、置換されていてもよいヘテロシクリル、ポリアルキレンオキシド(好ましくはポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド)、ホスファト、ニトロ、シアノ、ハロ、ウレイド、ヒドロキシ、エステル、−NR、−COR、−CONR、−NHCOR、カルボキシエステル、スルホン、および−SONR[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、H、置換されていてもよいアルキル(特にC1−4−アルキル)、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである]。L、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12およびR13が環状基を含む場合、該環状基は、置換されていてもよいアルキル(特にC1−4−アルキル)置換基を持つこともできる。L、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12およびR13について記載した置換基のいずれかに関する所望による置換基は、同じ置換基のリストから選択することができる。
【0046】
当業者なら、これらの反応の生成物であるフタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニン染料およびその塩が、成分環の性質および相対的位置ならびにこれらの成分環上の任意の置換基の性質および位置によってさまざまである異性体を含有する、分散性の高い混合物になることを、理解するであろう。
【0047】
本発明の第2の観点は、本発明の第1の観点に従った方法により得ることができるフタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニン染料およびその塩を提供する。
【0048】
優先傾向は、本発明の第1の観点で記載し選んだとおりである。
本発明の第3の観点は、式(10)の金属フタロシアニン染料およびその塩を提供する:
【0049】
【化5】

【0050】
[式中:
Mは、NiまたはCuであり;
14、R15およびR16は、独立して、H、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により置換されていてもよい);置換されていてもよいアリール;および置換されていてもよいヘテロシクリレン(置換されていてもよいヘテロアリールを含む)からなる群より選択され;
17は、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により置換されていてもよい);置換されていてもよいアリール;および置換されていてもよいヘテロシクリレン(置換されていてもよいヘテロアリールを含む)であり;
Qは、電子求引基であり;
nは1〜4であり;
xは0〜4であり;
yは0〜4であり;
zは、0より大きく4未満であり;そして
x+y+zは、0より大きく4未満である]。
【0051】
14、R15およびR16は、独立して、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであることが好ましく、より好ましくは、R14、R15およびR16は、独立して、Hまたは置換されていないC1−4アルキル、とりわけメチルである。R14、R15およびR16がすべてHであることが、特に好ましい。
【0052】
17は、式(11)の基であることが好ましい:
−L−NR
式(11)
[式中:
Lは二価の連結基であり;
およびRは、独立して、H、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい)、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルである]。
【0053】
L、RおよびRは、本発明の第1の観点で選んだとおりである。
14、R15、R16およびR17に関する好ましい所望による置換基は、本発明の第1の観点で上記したとおりである。
【0054】
本発明の第3の観点の染料は、好ましくは本発明の第1の観点に記載したような方法により得ることができ、その結果それらは分散混合物になり、したがって、yおよびzの値は整数ではなく平均数になる。
【0055】
yは、1〜3の範囲にあることが好ましい。
zは、1〜3の範囲にあることが好ましい。
y+zは、1〜3の範囲にあることが好ましい。
【0056】
本発明の第4の観点は、式(12)および/または式(13)の金属アザフタロシアニン染料およびその塩を提供する:
【0057】
【化6】

【0058】
[式中:
Mは、NiまたはCuであり;
14、R15およびR16は、独立して、H、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により置換されていてもよい);置換されていてもよいアリール;および置換されていてもよいヘテロシクリレン(置換されていてもよいヘテロアリールを含む)からなる群より選択され;
17は、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により置換されていてもよい);置換されていてもよいアリール;および置換されていてもよいヘテロシクリレン(置換されていてもよいヘテロアリールを含む)であり;
Qは、電子求引基であり;
Xは、CN、置換されていてもよいC1−4アルキルおよびC1−4アルコキシからなる群より選択され;
nは1〜4であり;
は0〜3であり;
xは0〜4であり;
yは0〜4であり;
zは、0より大きく4未満であり;そして
x+y+zは、0より大きく4未満である]。
【0059】
M、R14、R15、R16、R17、Q、X、n、n、x、yおよびzに関する優先傾向は、先に選んだとおりである。
本発明の第4の観点の染料は、好ましくは本発明の第1の観点に記載したような方法により得ることができ、その結果それらは分散混合物になり、したがって、x、yおよびzの値は整数ではなく平均数になる。
【0060】
本発明の染料は、魅力的な強い色調を有し、インクジェット印刷用のシアンインクの調製で使用するのに有益な着色剤である。それらは、溶解性、貯蔵安定性、ならびに水、オゾンおよび光に対する堅牢度の良好なバランスにより益を得る。とりわけ、それらは優れた耐湿潤堅牢度、耐光堅牢度および耐オゾン堅牢度を示す。
【0061】
本発明で開示する化合物上の酸性または塩基性基、とりわけ酸性基は、塩の形にあることが好ましい。したがって、本明細書中に示す化学式はすべて、塩の形にある化合物を包含する。
【0062】
好ましい塩は、アルカリ金属塩、特に、リチウム、ナトリウムおよびカリウム、アンモニウムおよび置換アンモニウム塩((CHのような第四アミンを含む)、ならびにそれらの混合物である。特に好ましいものは、ナトリウム、リチウム、アンモニアおよび揮発性アミンを伴う塩、さらに特にナトリウム塩である。フタロシアニンまたは金属フタロシアニン染料の混合物を、公知の技術を用いて塩に転化してもよい。
【0063】
本明細書で開示する化合物は、示したもの以外の互変異性体の形で存在していてもよい。これらの互変異性体は、本発明の範囲内に包含される。
本発明の第5の観点に従って、本発明の第2、第3および第4の観点に記載したような染料と液体媒体とを含む組成物を提供する。
【0064】
本発明の第5の観点に従った好ましい組成物は、以下:
(a)本発明の第2、第3および第4の観点に記載したような染料を0.01〜30部;および
(b)70〜99.99部の液体媒体;
ここにおいて、部はすべて重量に基づく
を含む。
【0065】
部数(a)+(b)=100であることが好ましい。
成分(a)の部数は、好ましくは0.1〜20、より好ましくは0.5〜15、特に1〜5部である。成分(b)の部数は、好ましくは80〜99.9、より好ましくは85〜99.5、特に95〜99部である。
【0066】
成分(a)は、成分(b)に完全に溶解していることが好ましい。成分(a)は、20℃において少なくとも10%の成分(b)への溶解度を有することが好ましい。これにより、より希薄なインクを調製するために用いることができる液体染料濃縮物の調製が可能になり、貯蔵中に液体媒体の蒸発が起こった場合に染料が沈殿する可能性が低下する。
【0067】
インクは、高濃度シアンインク、低濃度シアンインク、または高濃度および低濃度インクの両方として、インクジェット印刷機に組み込むことができる。後者の場合、これは、印刷像の解像度および品質に改善をもたらすことができる。したがって、本発明は、成分(a)が2.5〜7部、より好ましくは2.5〜5部の量(高濃度インク)で存在するか、または成分(a)が0.5〜2.4部、より好ましくは0.5〜1.5部の量(低濃度インク)で存在する、組成物(好ましくはインク)も提供する。
【0068】
好ましい液体媒体としては、水、水と有機溶媒の混合物、および水を含まない有機溶媒が挙げられる。液体媒体は、水と有機溶媒の混合物または水を含まない有機溶媒を含むことが好ましい。
【0069】
液体媒体(b)が水と有機溶媒の混合物を含む場合、水と有機溶媒の重量比は、好ましくは99:1〜1:99、より好ましくは99:1〜50:50、特に95:5〜80:20である。
【0070】
水と有機溶媒の混合物中に存在する有機溶媒は、水混和性有機溶媒またはそのような溶媒の混合物であることが好ましい。好ましい水混和性有機溶媒としては、C1−6−アルカノール、好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノールおよびシクロヘキサノール;線状アミド、好ましくは、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド;ケトンおよびケトン−アルコール、好ましくは、アセトン、メチルエーテルケトン、シクロヘキサノンおよびジアセトンアルコール;水混和性エーテル、好ましくは、テトラヒドロフランおよびジオキサン;ジオール、好ましくは、2〜12の炭素原子を有するジオール、例えば、ペンタン−1,5−ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールおよびチオジグリコール、ならびに、オリゴ−およびポリ−アルキレングリコール、好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくは、グリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、好ましくは、2〜12の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、特に、2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)−エトキシ]−エタノールおよびエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド、好ましくは、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタムおよび1,3−ジメチルイミダゾリドン;環状エステル、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシド;ならびに、スルホンが挙げられる。液体媒体は、水と2以上、特に2〜8種の水混和性有機溶媒を含むことが好ましい。
【0071】
特に好ましい水混和性有機溶媒は、環状アミド、特に、2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドンおよびN−エチル−ピロリドン;ジオール、特に、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール;ならびに、ジオールのモノ−C1−4−アルキルおよびC1−4−アルキルエーテル、より好ましくは、2〜12の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、特に、2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエタノールである。
【0072】
水と1以上の有機溶媒との混合物を含む他の適した液体媒体の例は、米国特許公報第4963189号、第4703113号、第4626284号および欧州出願公開EP−A−425150号に記載されている。
【0073】
液体媒体が、水を含まない有機溶媒(すなわち1重量%未満の水)を含む場合、該溶媒は、好ましくは30〜200℃、より好ましくは40〜150℃、特に50〜125℃の沸点を有する。有機溶媒は、水不混和性、水混和性、またはそのような溶媒の混合物であることができる。好ましい水混和性有機溶媒は、上記水混和性有機溶媒のいずれかおよびその混合物である。好ましい水不混和性溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素;エステル、好ましくは酢酸エチル;塩素化炭化水素、好ましくはCHCl;およびエーテル、好ましくはジエチルエーテル;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0074】
液体媒体が水不混和性有機溶媒を含む場合、極性溶媒が包含されることが好ましい。これは、極性溶媒が液体媒体へのフタロシアニン染料の混合物の溶解性を向上させるためである。極性溶媒の例としてはC1−4−アルコールが挙げられる。
【0075】
前述の優先傾向を考慮すると、液体媒体が、水を含まない有機溶媒である場合、それは、ケトン(特にメチルエチルケトン)および/またはアルコール(特にC1−4−アルカノール、さらに特にエタノールまたはプロパノール)を含むことが特に好ましい。
【0076】
水を含まない有機溶媒は、単一の有機溶媒であるか、2種以上の有機溶媒の混合物であることができる。液体媒体が、水を含まない有機溶媒である場合、それは2〜5種の異なる有機溶媒の混合物であることが好ましい。これにより、インクの乾燥特性および貯蔵安定性に対し良好な制御をもたらす液体媒体を選択することが可能になる。
【0077】
水を含まない有機溶媒を含む液体媒体は、迅速な乾燥時間が必要とされる場合、とりわけ、疎水性および非吸収性基材、例えば、プラスチック、金属およびガラス上に印刷するときに、とりわけ有用である。
【0078】
言うまでもなく、液体媒体は、インクジェット印刷用インクに従来用いられている追加的成分、例えば、粘度および表面張力の改質剤、腐敗抑制剤、殺生物剤、コゲーション低減剤(kogation reducing additives)、ならびに、イオン性または非イオン性であることができる界面活性剤を、含有することができる。
【0079】
通常は必要ないが、色調および性能特性を改変するために、さらなる着色剤をインクに加えてもよい。
本発明に従った組成物は、インクジェット印刷機での使用に適したインクであることが好ましい。インクジェット印刷機での使用に適したインクは、微細ノズルを詰まらせることなく、インクジェット印刷ヘッドに通して繰り返し発射させることができるインクである。これを行うために、インクは、粒子を含んでいてはならず、安定でなければならず(すなわち、貯蔵中に沈殿しない)、腐食性元素(例えば塩化物)を含んでいてはならず、そして、印刷ヘッドでの良好な液滴形成を可能にする粘度を有していなければならない。
【0080】
インクジェット印刷機での使用に適したインクは、25℃において好ましくは20cP未満、より好ましくは10cP未満、特に5cP未満の粘度を有する。
インクジェット印刷機での使用に適したインクは、合計で好ましくは500ppm未満、より好ましくは250ppm未満、特に100ppm未満、さらに特に10ppm未満の二価および三価の金属イオン(式(1)の着色剤またはインクに組み込まれている他の着色剤もしくは添加剤に結合している二価および三価の金属イオンを除く)を含有する。
【0081】
インクジェット印刷機での使用に適したインクは、好ましくは10μm未満、より好ましくは3μm未満、特に2μm未満、さらに特に1μm未満の平均孔径を有するフィルターに通して濾過されている。この濾過により、多くのインクジェット印刷機に見いだされる微細ノズルを通常なら詰まらせうる粒状物質が除去される。
【0082】
インクジェット印刷機での使用に適したインクは、合計で好ましくは500ppm未満、より好ましくは250ppm未満、特に100ppm未満、さらに特に10ppm未満のハロゲン化物イオンを含有する。
【0083】
本発明の第5の観点に従った組成物を、とりわけカラーフィルターの製造においてフィルムコーティングの形成に使用したい場合、それは、フィルム形成材料をさらに含むことが好ましい。
【0084】
フィルム形成インクは、インクおよび得られるカラーフィルターの耐光堅牢度および耐熱堅牢度の改善を促進するために、ラジカルスカベンジャーおよび/または紫外線吸収剤を含むこともできる。
【0085】
本発明の第6の観点は、基材上に像を形成するための方法であって、本発明の第5の観点に従った組成物、好ましくはインクジェット印刷機での使用に適したインクを、インクジェット印刷機により基材に施用することを含む方法を提供する。
【0086】
インクジェット印刷機は、インクを基材に、小さなオリフィスに通して基材上に噴出させる液滴の形で施用することが好ましい。好ましいインクジェット印刷機は、圧電インクジェット印刷機およびサーマルインクジェット印刷機である。サーマルインクジェット印刷機では、プログラム化した熱パルスをオリフィスに隣接する抵抗器によりリザーバー中のインクに施用し、それにより、基材とオリフィスとの相対運動中に、インクを小さな液滴の形でオリフィスから基材に向けて噴出させる。圧電インクジェット印刷機では、小さな結晶の振動により、オリフィスからインクを噴出させる。あるいは、可動式のパドルまたはプランジャーに接続している電気機械的作動装置により、インクを噴出させることができる。
【0087】
基材は、好ましくは、紙、プラスチック、生地、金属またはガラス、より好ましくは、紙、オーバーヘッドプロジェクター用スライドまたは生地材料、特に紙である。
好ましい紙は、酸性、アルカリ性もしくは中性の性質を有することができる普通紙または処理紙である。写真用品質の紙が特に好ましい。
【0088】
本発明の第7の観点は、本明細書中に記載したようなフタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニン染料およびその塩、本発明の第5の観点に従った組成物、あるいは本発明の第6の観点に従った方法を用いて、印刷された材料、好ましくは、紙、プラスチック、生地、金属またはガラス、より好ましくは、紙、オーバーヘッドプロジェクター用スライドまたは生地材料、特に紙、さらに特に、普通紙、塗被紙または処理紙を提供する。
【0089】
本発明の第7の観点の印刷された材料が、本発明の第6の観点に従った方法を用いて印刷された写真用品質の紙上のプリントであることが、特に好ましい。
本発明の最後の観点は、チャンバーと、組成物、好ましくは、インクジェット印刷機での使用に適したインクとを含むインクジェット印刷機用カートリッジであって、該組成物が該チャンバー内にあり、該組成物が本発明の第5の観点で定義し選んだとおりである、前記インクジェット印刷機用カートリッジを提供する。該カートリッジは、本発明の第5の観点に記載したような高濃度インクおよび低濃度インクを異なるチャンバー内に含有することができる。
【0090】
本発明を以下の実施例によりさらに例示する。ここにおいて、すべての部および百分率は、特記しない限り重量に基づく。
【実施例】
【0091】
実施例1
プロセス例:以下の式の染料を成分として含むフタロシアニン染料の混合物の調製:
【0092】
【化7】

【0093】
式中、x+y+z=3である。
中間体アミンの調製:
【0094】
【化8】

【0095】
塩化シアヌル(9.23g)を、数滴のカルソレン油(calsolene oil)を含有する0〜5℃の氷/水(2000g)中で攪拌した。その後、pH5〜6の水(50mL)中の2,5−ジスルホアニリン(13.8g)の溶液を、攪拌しつつ滴下して加えた。反応混合物を≦5℃およびpH5〜6で2時間攪拌した。その後、2M水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7に上昇させ、温度を20〜25℃に上昇させ、反応混合物を1時間放置した。その後、ジメチルアミン(40%、6.3mL)を加え、pHを8.5〜9に調整した。反応混合物を室温およびpH8.5〜9で2時間、その後pH8.5〜9、60℃で1時間、そして80℃でさらに1時間攪拌した後、一晩放置して冷却した。翌日、エチレンジアミン(33mL)を混合物に加え、反応物を80℃でさらに2時間攪拌した。ロータリーエバポレーターを用いて反応混合物の体積を200mLに減少させ、NaCl(20g)を加え、濃HClを用いてpHを1に低下させた。形成した沈殿物を濾過により収集し、20%NaClで洗浄し、60℃のメタノール(170mL)および水(9mL)中で1時間スラリー化した。その後、固体を濾過により収集し、メタノール(25mL)で洗浄し、乾燥して、生成物(18.5g)を得た。
段階1a
以下の式の化合物を成分として含む中間体の混合物の調製:
【0096】
【化9】

【0097】
テトラクロロフタル酸(21.3g)、4−スルホフタル酸(64.05g)、塩化銅II(9.8g)、尿素(168g)、DBU(10.5g)およびモリブデン酸アンモニウム(1.68g)を室温で混合した。その後、該混合物を1時間かけて攪拌しながら180℃に加熱した。固体反応混合物を冷却し、生成物を水(3×200mL)で抽出した。得られた溶液を濾過し、生成物を塩化ナトリウムで沈殿させた。沈殿した生成物を濾過により取り出し、10%ブライン(50mL)で洗浄し、アセトン(100mL)中でスラリー化し、濾過し、アセトンで洗浄し、乾燥し、水に溶解した。この溶液を低伝導率まで透析し、乾燥して、生成物(8.2g)を得た。
段階1b
段階1(a)で生成した中間体の混合物の対応するスルホニルクロリドへの転化:
オキシ塩化リン(6.2g)を、温度を35℃未満に保ちつつクロロスルホン酸(60g)に5〜10分かけて滴下して加えた。すべてのオキシ塩化リンを加えた後、段階1aからの化合物(10g)を少しずつ加えた。反応混合物の温度を30分かけて徐々に130℃に上昇させ、反応物をこの温度で6時間保持した後、室温で一晩攪拌した。翌日、該混合物を水/氷(300g)に加えた。固体沈殿物を濾過し、5%氷冷ブラインで洗浄し、濾過して、35.2gの中間体を得た。
段階1c
フタロシアニン染料の表題混合物の調製:
水(50mL)中の段階1bの生成物(17.6g)を、0〜5℃の水(50mL)中の中間体アミン(2.76g)および塩化アンモニウム(1.6g)の混合物に加えた。該混合物を0〜10℃およびpH9〜9.5で10分間、その後50℃で一晩攪拌した。2M水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを維持した。その後、該溶液を80℃およびpH12で2時間加熱した。反応物を60℃に冷却し、pHを8.5に調整した。その後、反応物を濾過し、pH6の25%ブラインで塩析した。沈殿した固体を濾過し、メタノールで洗浄し、脱イオン水に溶解し、透析し、濾過した後、70℃で乾燥して、生成物を得た。
実施例2
段階1cにおいて3.95gの中間体アミンおよび0.8gの塩化アンモニウムを用いた点を除き、実施例1と同様に調製した。
実施例3
プロセス例:以下の式の化合物を成分として含むフタロシアニン染料の混合物の調製:
【0098】
【化10】

【0099】
x+y+z=2である。
段階3(a)
以下の式の化合物を成分として含む中間体の混合物の調製:
【0100】
【化11】

【0101】
テトラクロロフタル酸(15.2g)、4−スルホフタル酸(15.8g)、塩化銅II(3.5g)、尿素(60g)、DBU(3.75g)、モリブデン酸アンモニウム(0.6g)およびスルホラン(50mL)を室温で混合した。その後、該混合物を攪拌しながら15分かけて140〜150℃まで加熱し、1時間にわたり190〜200℃で加熱した後、80℃に冷却した。温水(200mL)を加え、混合物を60〜80℃で15分間撹拌した。反応混合物を濾過し、温水(2×50mL)で洗浄した。濾液および洗液を合わせて室温まで放置して冷却した後、60〜70℃の塩化ナトリウムを用いて15%に塩化した(salted)。沈殿した固体を濾過により収集し、最初に15%ブライン(20mL)、その後メタノール/水(150mL/10mL)で洗浄した。固体を脱イオン水(150mL)に溶解し、低伝導率まで透析し、乾燥して、中間体(4g)を得た。
段階3(b)
段階3(a)で生成した中間体の混合物の対応するスルホニルクロリドへの転化:
オキシ塩化リン(4.5g)を、温度を35℃未満に保ちつつクロロスルホン酸(43.1g)に5〜10分かけて滴下して加えた。すべてのオキシ塩化リンを加えた後、段階3aからの化合物(7.6g)を少しずつ加えた。反応混合物の温度を30分かけて徐々に130℃に上昇させ、反応物をこの温度で6時間保持した後、室温で一晩攪拌した。翌日、該混合物を水/氷(250g)に加えた。固体沈殿物を濾過し、5%氷冷ブラインで洗浄し、濾過して、30gの中間体を得た。
段階3c
フタロシアニン染料の表題混合物の調製:
水(120mL)中の段階3bの生成物(30g)を、0〜5℃の水(100mL)中の実施例1からの中間体アミン(4g)および塩化アンモニウム(2.28g)の混合物に加えた。該混合物を、5〜10℃およびpH9.5で10分間、続いて40〜45℃およびpH9〜9.5で1時間、その後室温で一晩攪拌した。2M水酸化ナトリウム溶液を添加して反応物のpHを維持した。その後、該溶液を80〜85℃およびpH12で1.5時間加熱した。反応物を60℃に冷却し、pHを8.5に調整した。その後、反応物を濾過し、pH6および60℃の18%ブラインで塩析した。沈殿した固体を濾過し、20%ブライン(2×100mL)で洗浄して、湿った固体(38.2g)を得た。該湿った固体を40〜50℃のメタノール/水(300mL/20mL)中で1時間にわたりスラリー化し、室温に冷却し、濾過し、メタノール(25mL)で洗浄した。固体を脱イオン水(150mL)に溶解し、低伝導率まで透析し、濾過した後、70℃で乾燥して、生成物(4.1g)を得た。
比較例:
比較例は、以下の式の化合物を成分として含むフタロシアニン染料の混合物であった:
【0102】
【化12】

【0103】
本明細書中で参考として援用する米国特許公報第7575626号の実施例3に記載されているように調製した。
実施例4
インクの調製:
インクを、実施例3および比較例の染料3.5gを、以下:
ジエチレングリコール 7%
エチレングリコール 7%
2−ピロリドン 7%
SurfynolRTM 465 1%
トリス緩衝液 0.2%
水 77.8%(%はすべて重量に基づく)
を含む液体媒体96.5gに溶解し、水酸化ナトリウムを用いてインクのpHを8〜8.5に調整することにより調製した。
【0104】
SurfynolRTM465はAir Productsからの界面活性剤である。
実施例5
インクジェット印刷:
上記のように調製したインクおよび比較インクを、0.45ミクロンのナイロン製フィルターに通して濾過した後、シリンジを用いて空の印刷用カートリッジ中に組み込んだ。
【0105】
その後、これらのインクを以下のインクジェット媒体上に50%の深さでインクジェット印刷した:
Epson(登録商標) Ultra Premium Glossy Photo Paper(SEC PM);
Canon(登録商標) Photo Paper Pro Platinum PT101 Photo Paper(PT101);および
HP Advanced Photo Paper(HPP)。
【0106】
プリントを、Hampden 903 Ozoneキャビネットにおいて40℃、相対湿度50%で1ppmのオゾンに24時間暴露することにより、耐オゾン堅牢度について試験した。印刷されたインクのオゾンに対する堅牢度は、オゾンへの暴露前後の光学濃度の差により判定する。
【0107】
印刷像の耐光堅牢度は、印刷像をAtlasRTM Ci5000 Weatherometer内で100時間退色させた後、光学濃度の変化を測定することにより評価した。
【0108】
光学濃度の測定は、以下のパラメーターに設定したGretagRTM spectrolino分光光度計を用いて実施した:
測定配置:0°/45°
スペクトル域:380〜730nm
スペクトル間隔:10nm
光源:D65
観測視野:2°(CIE1931)
密度:Ansi A
外部充填物(External Filler):なし
光およびオゾンに対する堅牢度を、プリントの光学濃度の百分率での変化により評価した。ここにおいて、数字が小さいほど堅牢度および退色度が高いことを示す。退色度はΔEとして表され、ここにおいて、数字が小さいほど耐光堅牢度が高いことを示す。ΔEは、プリントのCIE色座標L、a、bにおける全体的変化として定義され、式ΔE=(ΔL+Δa+Δb0.5により表される。
【0109】
結果を以下の表に示す:
耐オゾン堅牢度
【0110】
【表1】

【0111】
耐光堅牢度
【0112】
【表2】

【0113】
明らかに、本発明の染料を用いて調製したインクは、光およびオゾンに対する堅牢度において明らかな優位を示す。
さらなるインク
表AおよびBに記載したインクは、実施例1の化合物を用いて調製することができる。第1列に示した染料を、第2列以降に明記したインク100部に溶解する。第2列以降に挙げた数字は当該インク構成成分の部数をさし、すべての部は重量に基づく。インクのpHは、適した酸または塩基を用いて調整することができる。インクは、インクジェット印刷により基材に施用することができる。
【0114】
以下の略語を表AおよびBに用いる:
PG=プロピレングリコール
DEG=ジエチレングリコール
NMP=N−メチルピロリドン
DMK=ジメチルケトン
IPA=イソプロパノール
2P=2−ピロリドン
MIBK=メチルイソブチルケトン
P12=プロパン−1,2−ジオール
BDL=ブタン−2,3−ジオール
TBT=第三ブタノール
【0115】
【表3】

【0116】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニン染料およびその塩の調製方法であって、以下:
(a)式(1)の化合物を式(2)の化合物ならびに所望により式(3)および/または式(4)の化合物と環化する段階:
【化1】

[式中:
およびRは、シアノ、カルボキシまたはカルボキサミドであるか、一緒になって以下の式の基:
【化2】

を形成し;
Qは電子求引基であり;
Xは、CN、置換されていてもよいC1−4アルキルおよびC1−4アルコキシからなる群より選択され;
nは1〜4であり;
は0〜3である]
ここにおいて、該環化プロセスは、適した窒素源(必要な場合)および金属塩(必要な場合)の存在下で実施する;
(b)段階(a)で形成したスルホン化フタロシアニン、スルホン化アザフタロシアニン、スルホン化金属フタロシアニンまたはスルホン化金属アザフタロシアニンの混合物を塩素化剤で塩素化して、スルホン酸置換基をスルホニルクロリドに転化する段階;ならびに
(c)段階(b)で形成した、スルホニルクロリド基を持つフタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニンの混合物を、アンモニアおよび/または1以上のアミンと反応させる段階、
を含む方法。
【請求項2】
金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニン染料が銅フタロシアニンまたは銅アザフタロシアニン染料およびその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
およびRがシアノまたはカルボキシである、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
Qが、NO、FまたはClである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
段階(b)において、塩素化剤がクロロスルホン酸とオキシ塩化リンの混合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
段階(c)において、アミンが式(7)のものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法:
NHR−L−NR
式(7)
[式中:
Lは二価の連結基であり;
は、Hまたは置換されていてもよいアルキルであり;
およびRは、独立して、H、置換されていてもよいアルキル(1以上の複素環式基により遮断されていてもよい)、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルである]。
【請求項7】
Lが−CHCH−である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
が式(8)の基である、請求項6または請求項7のいずれかに記載の方法
【化3】

[式中:
10は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
11は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
12は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
13は、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を持つ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルである]。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法により得ることができるフタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニン染料およびその塩。
【請求項10】
式(10)の金属フタロシアニン染料およびその塩:
【化4】

[式中:
Mは、NiまたはCuであり;
14、R15およびR16は、独立して、H、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい);置換されていてもよいアリール;および置換されていてもよいヘテロシクリレン(置換されていてもよいヘテロアリールを含む)からなる群より選択され;
17は、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい);置換されていてもよいアリール;および置換されていてもよいヘテロシクリレン(置換されていてもよいヘテロアリールを含む)であり;
Qは、電子求引基であり;
nは1〜4であり;
xは0〜4であり;
yは0〜4であり;
zは、0より大きく4未満であり;そして
x+y+zは、0より大きく4未満である]。
【請求項11】
式(12)および/または式(13)の金属アザフタロシアニン染料およびその塩の混合物:
【化5】

[式中:
Mは、NiまたはCuであり;
14、R15およびR16は、独立して、H、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい);置換されていてもよいアリール;および置換されていてもよいヘテロシクリレン(置換されていてもよいヘテロアリールを含む)からなる群より選択され;
17は、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい);置換されていてもよいアリール;および置換されていてもよいヘテロシクリレン(置換されていてもよいヘテロアリールを含む)であり;
Qは、電子求引基であり;
Xは、CN、置換されていてもよいC1−4アルキルおよびC1−4アルコキシからなる群より選択され;
nは1〜4であり;
は0〜3であり;
xは0〜4であり;
yは0〜4であり;
zは、0より大きく4未満であり;そして
x+y+zは、0より大きく4未満である]。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載したような染料およびその塩と液体媒体とを含む組成物。
【請求項13】
基材上に像を形成するための方法であって、請求項12に記載の組成物をインクジェット印刷機により基材に施用することを含む方法。
【請求項14】
請求項9〜11のいずれか一項に記載したようなフタロシアニン、アザフタロシアニン、金属フタロシアニンまたは金属アザフタロシアニン染料およびその塩で印刷された材料。
【請求項15】
チャンバーと組成物を含むインクジェット印刷機用カートリッジであって、該組成物が該チャンバー内にあり、該組成物が請求項12で定義したとおりである、前記インクジェット印刷機用カートリッジ。

【公表番号】特表2013−500376(P2013−500376A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522247(P2012−522247)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050870
【国際公開番号】WO2011/012872
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】