説明

フック装置

【課題】フックの引っ張り強度を高めつつ、製造コストを抑えたフック装置を提供する。
【解決手段】フック装置10において、フック20は、金属板を打ち抜き加工および曲げ加工して形成され、対向するフック側軸受部を有する。ベース40は、ベース側軸受部を有し、フック20を収容可能である。シャフト30は、フック側軸受部およびベース側軸受部に挿通して、フック20をベース40に回動可能に支持する。このフック装置10においてフック20の板厚寸法は、フック20の板幅寸法より小さくなるように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープ用フックを備えるフック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の室内にはフック装置が設けられ、ロープなどを掛けるために使用される。フックが使われない場合に突き出していると煩わしいため、フックを収納可能なフック装置が用いられる(特許文献1等参照)。
【0003】
特許文献1に記載のフック装置は、略U字状をなすアーム部とアーム部から突設する一対の軸部とを有するフック部と、フック部の軸部を回動可能に保持する嵌合凹部を有する本体部と、を備える。また、特許文献2に記載のフック装置は、ケースと、略U形の掛止部材と、ケースに対して掛止部材の両端を枢支するピンと、を備える。また、特許文献3に記載のラゲッジフックは、ケースと、ケースの開口部を閉鎖する蓋体と、蓋体の裏面に回動可能に取り付けられた引掛体と、を備える。特許文献3に記載のラゲッジフックは、断面が円形の金属棒材により形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−326445号公報
【特許文献2】特開2007−24279号公報
【特許文献3】特開2004−26082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フック装置ではフックの引っ張り強度の向上が求められており、たとえば数千ニュートンの荷重に耐えられる引っ張り強度が望まれている。そのような強度に耐えられるにはフックを金属で形成する必要がある。たとえば特許文献3に記載のフックは金属で形成されているものの、その断面は円形である。そのため、フックを収容するケースとの間に隙間ができ、その隙間をふさぐ蓋体を用いることになり、コストがかかる。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フックの引っ張り強度を高めつつ、製造コストを抑えたフック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のフック装置は、金属板を打ち抜き加工および曲げ加工して形成され、対向するフック側軸受部を有するフックと、ベース側軸受部を有し、フックを収容可能なベースと、フック側軸受部およびベース側軸受部に挿通して、フックをベースに回動可能に支持するシャフトと、を備える。このフック装置においてフックの板厚寸法は、フックの板幅寸法より小さい。
【0008】
この態様によると、フックを金属板から加工して成形することができるため、フックの引っ張り強度を高めつつ、製造コストを抑えることができる。打ち抜き加工において板厚寸法が板幅寸法より大きい場合と比べて、少ない荷重で容易に抜くことができる。また曲げ加工により成形できるため、板幅より薄い板厚方向に曲げ加工を施すため、板厚寸法が板幅寸法より大きい場合と比べて、少ない荷重で容易に曲げ加工ができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フック装置において、フックの引っ張り強度を高めつつ、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係るフック装置の分解図である。
【図2】実施形態に係るフック装置の斜視図である。
【図3】ケースの斜視図である。
【図4】ケースの上面図および断面図である。
【図5】フックを説明するための説明図である。
【図6】図6(a)は、ブラケットの斜視図であり、図6(b)は、シャフトの斜視図である。
【図7】フック装置を車体に取り付ける際の状態を説明するための説明図である。
【図8】フック装置の断面図である。
【図9】フック装置におけるフックの開き動作を説明するための説明図である。
【図10】フックが開いた状態を説明するための説明図である。
【図11】変形例のフック装置の組み立て図である。
【図12】変形例のフック装置の斜視図である。
【図13】図12に示すフック装置の線分G−Gの断面図である。
【図14】変形例のフックについて説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係るフック装置10の分解図である。フック装置10は、略U字形状に形成されたフック20と、フック20を収容可能なベース40と、フック20をベース40に回動可能に支持させるシャフト30とを備える。ベース40は、ケース60とブラケット50とにより構成される。
【0012】
ケース60に対して外側から軸孔の位置を合わせてブラケット50を装着する。そしてケース60に対して上側から軸孔の位置を合わせてフック20を組み付け、ブラケット50、ケース60およびフック20の軸孔にシャフト30を挿入してフック装置10を組み立てる。
【0013】
図2は、実施形態に係るフック装置10の斜視図である。図2(a)はフック20が閉じた状態のフック装置10の斜視図であり、図2(b)はフック20が開いた状態のフック装置10の斜視図である。
【0014】
フック装置10は、たとえば車室の内壁にベース40を埋め込むように取り付けられ、フック装置10は、図2(a)に示すフック20をベース40に収容した状態からフック20を開方向に回転させ、図2(b)に示すフック20を突き出た状態にしてフック20にロープを掛けて用いられる。
【0015】
図2(a)に示すフック20がベース40に収容された状態を、収容状態または閉状態といい、図2(b)に示すようにフック20がベース40から突き出た状態をフック20の開状態という。また、図2(a)に示すフック20がベース40に収容された状態から、図2(b)に示すケース60から突き出る状態への回転を、フック20の開方向への回転といい、その逆の図2(b)に示すケース60から突き出た状態から図2(a)に示すケース60に収容される状態への回転を、フック20の閉方向への回転という。また、図2(a)に示す収容状態において、ベース40の底面側を下側とし、その逆の露出する側を上側とする。またフック装置10において、フック20の軸側を手前側とし、その逆のフック20の連結された部分が出入りする側を奥側とする。
【0016】
図3は、ケース60の斜視図である。図3(a)は上側からみたケース60の斜視図であり、図3(b)は下側からみたケース60の斜視図であり、図3(c)はケース60の軸受周りを拡大して示す部分拡大図であり、シャフト30を挿入した状態を示す。図4は、ケース60の上面図および断面図を示す。図4(a)はケース60の上面図を示し、図4(b)は図4(a)のケース60の線分C−Cの断面を示し、図4(c)は図4(b)のケース60の線分D−Dの断面を示す。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0017】
ケース60は、樹脂により形成され、本体部62、フランジ部64、ケース側軸受部66、カバー部72、ヒンジ部78、係合爪80、第1弾性部84および第2弾性部82を有する。
【0018】
本体部62は箱状に形成され、本体部62の上端にはフランジ部64が形成される。本体部62の底面62aには、車体に固定するためのボルトを挿入する取付孔70が形成される。本体部62の長尺の側面には、シャフト30を挿入するための一対の軸孔68が形成される。図4(b)に示すように一対の軸孔68の間の中央にケース側軸受部66が配される。ケース側軸受部66は、軸方向に連続した円筒状に形成される。ケース側軸受部66は、一対の壁部88に支持される。本体部62の内側にはフック20の閉方向の回転を規制するフック用台座63が設けられる。
【0019】
図3(c)に示すように壁部88は、底面62aと側部62bとに連結し、リブ状に突き出るように形成され、それぞれが対向するように配される。図4(c)に示すように壁部88の上端には係合爪80がそれぞれ形成されている。
【0020】
図3(c)に示すように一対の壁部88の外側には、第1弾性部84が上下方向に延在するようにそれぞれ設けられる。第1弾性部84の一端は本体部62の手前側の側部62bに連結し、他端は本体部62の底面62aに連結する。第1弾性部84は階段状に形成され、その段部が本体部62の手前側の側部62bから軸近傍に向かって張り出す。
【0021】
一対の壁部88に挟まれた壁部88の内側には、第2弾性部82が設けられる。第2弾性部82の一端は手前側の側部62bに連結し、他端は本体部62の底面62aに連結する。第2弾性部82は、側部62bからケース60の内部に向かって張り出すように形成される。第2弾性部82は、ヒンジ部78とケース側軸受部66の間に配される。これにより、カバー部72を付勢する構成をヒンジ部78とケース側軸受部66の間に収めることで、フック装置10を小型にできる。
【0022】
カバー部72は、板状に形成され、ヒンジ部78によりフック20の開口側の本体部62の上端部に回動可能に連結される。ヒンジ部78は、薄肉に形成され、カバー部72を本体部62の手前側の側部62bに連結する。
【0023】
カバー部72は、取付孔70にボルトを挿入して車体にフック装置10を取り付けるまで開いた状態にされ、車体に取り付けた後は図2に示すように閉状態にされる。カバー部72の裏面72bは、取付状態において本体部62の底面62aに対向する。裏面72bには、突起部74と、一対の弾性爪体76とが設けられる。突起部74は、カバー部72の閉状態において第2弾性部82に接触する。一対の弾性爪体76は、カバー部72の閉状態において係合爪80にそれぞれ係合し、カバー部72の開方向への回転を規制される。
【0024】
図5は、フック20を説明するための説明図である。図5(a)はフック20の斜視図を示し、図5(b)はフック20の裏面図を示し、図5(c)はフック20の断面図を示す。
【0025】
フック20は、板厚寸法Tの金属板を打ち抜き加工して板状の一次成形部材を形成した後、その一次成形部材を板厚方向に曲げプレス加工をしてU字状に形成される。なお打ち抜き加工以外にも、切断加工、せん断加工を用いて一次成形部材を形成してよい。金属板から加工することで、樹脂製のフックと比べて強度を高めることができるとともに、ダイカストでフックを生産する場合と比べて非常に安価に加工できる。フック20は、フック側軸受部22、延伸部24、連結部26および張出部28を有する。
【0026】
一対のフック側軸受部22は、フック20の両端に形成された貫通孔を有し、対向して配される。貫通孔は金属板を打ち抜いて加工するため容易に加工でき、かつ、蝶番のように曲げて形成した軸受より強度を高くすることができる。フック側軸受部22の周囲には、円弧状の小径部27と、小径部27より径が大きい円弧状の大径部29が形成され、小径部27と大径部29を連結するように径方向に張り出す張出部28が形成される。なお、実施形態の張出部28は段差形状に形成されているが、それに限られず、径方向に張り出す突起であってもよい。張出部28は、フック20が収容状態から開方向に所定の回転角まで回転するとブラケット50に当接してフック20の回転を規制する。
【0027】
一対の延伸部24は、それぞれのフック側軸受部22から伸び、平行に対向して配される。連結部26は、対向する延伸部24を連結する。連結部26は、軸方向に沿っており、フック20を開く際には使用者に操作される操作部として機能する。
【0028】
図5(c)に示すようにフック20は、フックの板厚寸法Tがフックの板幅寸法Wより小さくなるように加工される。フック20の板幅寸法Wは軸受孔が形成された面の寸法であり、板厚寸法Tは軸受孔が形成されていない面の寸法であり、金属板の板厚寸法および一次成形部材の板厚寸法と同一である。また、フック20を組み付けた状態で、板厚寸法Tは、ケース60の側部62bに沿った方向の寸法であり、板幅寸法は、ケース60の底面62aに沿った方向の寸法である。なお、図5(c)では連結部26の断面を示すが、延伸部24においても同様の関係を満たす。これにより、板厚寸法Tの金属板を板幅寸法Wの板状の一次成形部材に打ち抜いて加工できるため、板厚寸法Tが板幅寸法Wより大きい場合と比べて、少ない荷重で容易に抜き加工ができる。また、一次成形部材を折り曲げプレス加工によりU字状に形成できるため、幅より薄い板厚方向に曲げ加工を施すため、板厚寸法Tが板幅寸法Wより大きい場合と比べて、少ない荷重で容易に曲げ加工ができる。
【0029】
図6(a)は、ブラケット50の斜視図であり、図6(b)は、シャフト30の斜視図である。ブラケット50は、金属により形成され、樹脂材であるケース60の底部および側部の一部を覆うようケース60の外側に配され、フック装置10の強度を高める。
【0030】
ブラケット50は、一対のブラケット側軸受部52と、フック装置10を車体に固定するためのボルトが挿入される取付孔54と、フック20が全開状態となったときにフック20の張出部28に当接してフック20の開方向の回転を規制するストッパ部56と、を有する。ストッパ部56は、ブラケット50の底面における手前側の端部に位置する。
【0031】
シャフト30は、金属で棒状に形成され、ケース60のケース側軸受部66および軸孔68、フック20のフック側軸受部22、ブラケット50のブラケット側軸受部52に挿通する。シャフト30の一端には抜け止めのためのフランジが設けられ、他端はかしめにより抜け止めしてよい。シャフト30は、フック20をベース40に回動可能に支持する。フック装置10の各部材と別体のシャフト30を、各部材の孔に貫通してフック20を軸支することで、軸の強度を高めることができ、フック装置10の耐久荷重を高めることができる。以上の各部材により、図2に示すフック装置10を構成する。
【0032】
図7は、フック装置10を車体に取り付ける際の状態を説明するための説明図である。図7(a)はフック装置10を上側から見た斜視図であり、図7(b)はフック装置10を下側から見た斜視図である。
【0033】
フック装置10は、フック20およびカバー部72が開いた状態で納入される。カバー部72が開いた状態ではケース60の底面62aの中央にある取付孔70が露出している。そこにボルト12を挿入して車体に取り付ける。ボルト12を挿入した後はカバー部72を閉じ、図2(a)に示す状態にする。ボルト12は金属製のブラケット50の取付孔54に挿入されるため、強固に車体に固定できる。
【0034】
ボルト12を締めて車体に取り付けた後、カバー部72を閉じることで、図2(a)に示すように、フック20の間をカバー部72で埋めて、フック装置10の上面を平らにすることができ、フック装置10の上面を蓋でふさがなくとも、ゴミなどがたまりにくい形状となっている。またフック装置10の上面が平らであるため、見栄えがよい外観を有する。
【0035】
またシャフト30を金属製のブラケット50に固定することで、軸強度を高めることができる。ここでフック20にかけたロープからフック20に大きな引っ張り荷重が加わった場合に、U字形状のフック20は両端を接近する方向に変形しようとする。またシャフト30はブラケット側軸受部52の内側で荷重を受けるため、シャフト30の中央部分にも荷重が負荷されてシャフト30の中央部分が撓んで変形し、最悪の場合、シャフト30がブラケット側軸受部52から外れることがある。図7(a)に示すように円筒形状のケース側軸受部66はフック側軸受部22の間の中央に配されている。これにより、フック20の両端が接近する変形を抑え、シャフト30の中央部分の変形を抑えてシャフト30の両端がブラケット側軸受部52から外れる可能性を極めて低減できる。また、ケース側軸受部66の軸方向長さは、対向するフック側軸受部22の間の軸方向長さとほぼ同じである。すなわち、一対のフック側軸受部22の間のほぼ全範囲にわたってシャフト30をケース側軸受部66で覆って保持することができ、シャフト30の変形をより抑えることができる。
【0036】
図8は、フック装置10の断面図である。図8(a)は図2(a)に示すフック装置10の線分A−Aの断面であり、図8(b)は図2(a)に示すフック装置10の線分B−Bの断面である。
【0037】
図8(a)に示すフック20の不使用状態では、図2(a)に示すようにフック20およびカバー部72がケース60内のフック20の間に挟まれるように収容され、ケース60の底面62aと略平行に配されている。図8(a)に示すようにカバー部72の突起部74が第2弾性部82に当接して、カバー部72は第2弾性部82に開方向に付勢される。一方、カバー部72と底面62aとが略平行な状態において、図4(a)および図4(c)に示す係合爪80と弾性爪体76とが、引っかかるように構成され、カバー部72の開方向への回転が規制される。つまり、第2弾性部82の開方向の付勢と、係合爪80の開方向への回転規制とが釣り合って、カバー部72が底面62aと略平行な状態に保持される。
【0038】
図8(b)に示すようにフック20の張出部28が、階段状の第1弾性部84に上側から引っかかるように当接している。すなわち第1弾性部84は、フック20の収容状態において張出部28に接触してフック20を収容状態に保持する。フック20は第1弾性部84により閉方向に付勢される。一方、フック20はフック用台座63に当接して閉方向への回転が規制される。第1弾性部84の付勢と、フック用台座63の規制によりフック20が閉状態に保持される。なお、フック20を開方向に回転させ、張出部28が第1弾性部84を乗り越えるとき、すなわちフック20が開いたとき、使用者にクリック感を伝達することができる。
【0039】
図9は、フック装置10におけるフック20の開き動作を説明するための説明図である。図9(a)はカバー部72を押した状態の斜視図であり、図9(b)は図9(a)に示すフック装置10の線分E−Eの断面図である。図9では、カバー部72を強制的に閉方向に回転させた状態を示す。
【0040】
カバー部72を強制的に閉方向に回転させると、フック装置10の上面が平らな状態から図9(a)に示す凹んだようになる。そして使用者は収容されたフック20を開方向に回転させて取り出す。
【0041】
ここで、図9(b)に示すように連結部26の内周面26aが傾斜している。具体的には、連結部26は、フック20の収容状態においてケース60の底面62aに対向する下面26cとその逆側の露出する上面26bを有し、ケース60のケース側軸受部66の方の側部62bからみて、上面26bが下面26cに対して相対的に手前側となる。すなわち、連結部26の内周面26aは、下面26cから上面26bに向かうにつれて手前側に張り出すように傾斜する。これにより、使用者がフック20を出すときに、連結部26に指を掛けて容易に出せることができる。図9(b)には、連結部26の内周面26aを延ばした線90と上下方向92とがなす傾斜角94が示される。この傾斜角94は、数度から10度までの範囲に定められてよい。
【0042】
図9(b)に示すように突起部74と第2弾性部82が当接し、第2弾性部82によりカバー部72は開方向に付勢されている。したがって、フック20を取り出した後、カバー部72を自由状態にするとカバー部72は元の状態、すなわち図8(a)に示す底面62aと平行な状態に戻る。
【0043】
図10は、フック20が開いた状態を説明するための説明図である。図10(a)はフック20が開状態であるフック装置10の斜視図であり、図10(b)は図10(a)のフック装置10の線分F−Fの断面図である。図10では、フック20が全開状態となっている。
【0044】
フック20を収容状態から開方向に略90度回転させると、フック20の張出部28がブラケット50のストッパ部56に当接して、開方向の回転が規制される。金属製のフック20を、樹脂製のケース60で止めるとケース60が変形することがあるが、金属製のブラケット50で止めることで、フック20の回転をより確実に止めることができる。
【0045】
図10(b)に示すようにフック20の大径部29が第1弾性部84に接触している。これにより、摩擦力が生じてフック20の開状態を保持できる。したがって、車両の振動によりフック20がたついたり、フック20が収容方向に回転して収容状態となることを抑えることができる。また、フック20が全開状態でなくても開状態であれば、第1弾性部84は、フック20が開いた状態においてフック20に接触してフック20を開状態に保持する。これにより開状態のフック20のがたつきを抑えることができる。
【0046】
図11は、変形例のフック装置100の組み立て図である。また、図12は、変形例のフック装置100の斜視図である。また、図13は、図12に示すフック装置100の線分G−Gの断面図である。
【0047】
変形例のフック装置100は、図1に示すフック装置10と同じく、フック120、シャフト30およびフック120を収容可能なベース140を備える。ベース140は、ブラケット150およびケース160を有する。ケース160の軸孔68に、フック120のフック側軸受部22およびブラケット150のブラケット側軸受部52を合わせてシャフト30を挿入して組み付けられる。シャフト30は、フック120をベース140に回動可能に支持する。
【0048】
フック120は、金属板を打ち抜き加工および曲げ加工して形成され、対向するフック側軸受部22を有する。フック120について詳しくは後述する。ブラケット150は、金属により形成され、ケース160の外側に配される。
【0049】
ケース160は、樹脂により形成され、箱状の本体部162、本体部162の上端から張り出すフランジ部64、ケース側軸受部166、車体に固定するための取付孔70、カバー部172、ヒンジ部178および係止爪179を有する。ケース側軸受部166は、対向するフック側軸受部22の間の中央に配され、軸方向に連続した円筒状に形成される。支持部188は、ケース側軸受部166を支持し、ケース160の底面62aおよび手前側のヒンジ側壁部189に連結する。
【0050】
カバー部172は、板状に形成され、ヒンジ部178により本体部162のヒンジ側壁部189の上端に回動可能に連結される。カバー部172の形状は、フック装置10のカバー部72の形状と異なる。カバー部172は、フック120の収容状態においてフック120の間に配され、本体部162の底面62aと対向する。ヒンジ部178は、薄肉に形成され、カバー部172を本体部162のヒンジ側壁部189に連結する。カバー部172は、図11に示すように先端に一対の係止爪179が形成される。
【0051】
カバー部172は、取付孔70にボルトを挿入して車体にフック装置100を取り付けるまで開いた状態にされ、車体に取り付けた後は図12に示すように閉状態にされる。配状態においては、係止爪179が本体部162の底面62aに形成された係止孔169に係止する。これによりフック装置100を組み付けた後、カバー部172が開くことを抑えることができる。
【0052】
カバー部172は、図13に示すように閉状態において先端が本体部162の底面62a近傍まで曲がっている。これにより、使用者がフック120を取り出すときに、指をフック120の下側まで容易に入り込ませることができる。また、カバー部172には閉状態において底面62a側に凹むように形成された屈曲部174が形成される。図12に示すように閉状態において屈曲部174とフック120のフック側軸受部22の周囲の形状を曲線で合わせている。
【0053】
図14は、フック120について説明するための図である。図14(a)は、フック120の斜視図であり、図14(b)は、フック120の上面図であり、図14(c)は、フック120の側面図である。
【0054】
フック120は、フック側軸受部22、延伸部124、連結部26および張出部28を有する。フック120は、図5(a)に示すフック20と比べて、フック120の延伸部124の形状が異なる。フック側軸受部22の周囲には、円弧状の小径部27と、小径部27より径が大きい円弧状の大径部29が形成され、小径部27と大径部29を連結するように径方向に張り出す張出部28が形成される。張出部28は、フック20が収容状態から開方向に所定の回転角まで回転するとブラケット50に当接してフック20の回転を規制する。
【0055】
一対の延伸部124は、それぞれのフック側軸受部22から伸び、平行に対向して配される。連結部26は、対向する延伸部24を連結する。連結部26は、軸方向に沿っており、フック20を開く際には使用者に操作される操作部として機能する。延伸部124は、図5(a)の延伸部24と比べて、小径部27から連結部26へ屈曲させずに傾斜されており、平均した板幅寸法を増しているため、剛性が高くなっている。
【0056】
図14(c)に示すようにフック120の板厚寸法は、フック120の板幅寸法より小さい。これにより、板厚寸法Tの金属板を板幅寸法Wの板状の一次成形部材に打ち抜いて加工できるため、板厚寸法Tが板幅寸法Wより大きい場合と比べて、少ない荷重で容易に抜き加工ができる。また、一次成形部材を折り曲げプレス加工によりU字状に形成できるため、幅より薄い板厚方向に曲げ加工を施すため、板厚寸法Tが板幅寸法Wより大きい場合と比べて、少ない荷重で容易に曲げ加工ができる。
【0057】
連結部26は、フック120の収容状態においてケース160の底面62aに対向する下面とその逆側の上面を有し、ケース160のケース側軸受部166の方の端部からみて、連結部26の上面が下面に対して相対的に手前側となる。これにより、使用者がフック20を出すときに、連結部26に指を掛けて容易に出せることができる。
【0058】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0059】
10 フック装置、 12 ボルト、 20 フック、 22 フック側軸受部、 24 延伸部、 26 連結部、 27 小径部、 28 張出部、 29 大径部、 30 シャフト、 40 ベース、 50 ブラケット、 52 ブラケット側軸受部、 54 取付孔、 56 ストッパ部、 60 ケース、 62 本体部、 62a 底面、 62b 側部、 64 フランジ部、 66 ケース側軸受部、 68 軸孔、 70 取付孔、 72 カバー部、 74 突起部、 76 弾性爪体、 78 ヒンジ部、 80 係合爪、 82 第2弾性部、 84 第1弾性部、 88 壁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を打ち抜き加工および曲げ加工して形成され、対向するフック側軸受部を有するフックと、
ベース側軸受部を有し、前記フックを収容可能なベースと、
前記フック側軸受部および前記ベース側軸受部に挿通して、前記フックを前記ベースに回動可能に支持するシャフトと、を備え、
前記フックの板厚寸法は、前記フックの板幅寸法より小さいことを特徴とするフック装置。
【請求項2】
前記フックは、それぞれの前記フック側軸受部から伸びる一対の延伸部と、対向する前記延伸部を連結する連結部と、を有し、
前記連結部は、前記フックの収容状態において前記ベースの底面に対向する下面とその逆側の上面を有し、前記ベースの軸受部の方の端部からみて、前記連結部の上面が下面に対して相対的に手前側となることを特徴とする請求項1に記載のフック装置。
【請求項3】
前記ベース側軸受部は、前記フック側軸受部の間の中央に配されることを特徴とする請求項1または2に記載のフック装置。
【請求項4】
前記ベースは、樹脂を箱形に形成したケースと、金属により形成され、前記ケースの外側に配されるブラケットと、を有し、
前記フックは、収容状態から開方向に所定の回転角まで回転すると前記ブラケットに当接して回転を規制する張出部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフック装置。
【請求項5】
前記ケースは、前記フックの収容状態において前記張出部に接触して前記フックを収容状態に保持し、前記フックの開状態において前記フックに接触して前記フックを開状態に保持する第1弾性部を有することを特徴とする請求項4に記載のフック装置。
【請求項6】
前記ケースは、
箱状の本体部と
前記フックの収容状態において前記フックの間に配され、前記本体部の底面と対向するカバー部と、
前記フックの開口側で前記カバー部を前記本体部に回動可能に連結するヒンジ部と、を有し、
前記カバー部は、前記本体部の底面と対向する面に突起部を有し、
前記本体部は、前記カバー部が収容状態からさらに閉方向に回転すると、前記突起部に接触して、前記カバー部を開方向に付勢する第2弾性部を有し、
前記第2弾性部は、前記ヒンジ部と前記ベース側軸受部の間に配されることを特徴とする請求項4または5に記載のフック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−64500(P2013−64500A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193522(P2012−193522)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】