説明

フットウェル出口付きHVAC装置

【課題】フットウェル出口付きのHVAC装置を提供する。
【解決手段】本発明のフットウェル出口付きのHVAC装置において、フットウェル出口は、付随する空気チャネルが好ましくはトンネルの方向で前面壁において通ることができるように配置される。本発明は、コンパクトなコックピット構造に適した、フライングコックピットアーキテクチャを可能にするHVAC装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載された特徴事項を有する、フットウェル出口付きのHVAC装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかるHVAC装置は、既知であり、通常、冷却剤用の蒸発器、暖房用熱交換器、および場合によっては追加の電気暖房装置をともなって供給される。かかるHVAC装置は、移動の方向で見られ、筐体の背面にフットウェル出口を有している。この配設は、具体的に、熱交換器、特に蒸発器がいくぶん鉛直に、したがって水平面に対して45°を超える角度を含んで、配設される場合、通常である。これらの配設は、通常のコックピット設計に関して特に有利である。しかしながら、コックピット設計時に、いわゆるフライングアーキテクチャ(flying architecture)が意図され、そうでなければ通常の中央コンソールが存在しないような場合、HVAC装置の設計に対する特別な要求が、特にリアフットウェル出口の設計をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ドイツ国特許第DE 199 62 097 A1号は、デフロスター、およびコンパートメント用の出口とは別にフットウェル用の出口を備えた車両HVACシステムを開示している。しかし、熱交換器およびダンパードアが互いの鉛直上方に配置されているため、開示されている車両HVACシステムは、コンパクトなコックピット構造の取得を可能にしない。フットウェル出口は蒸発器の下方に位置しているが、前面壁の領域内に設けられていない。
【0004】
ドイツ特許第DE 199 53 565 A1号明細書は、蒸発器が概して水平に配設される車両HVACシステムを開示している。調節される空気は、蒸発器下方に位置する空気通路を通ってHVACシステムに入り、底部から上部へ水平蒸発器を通過する。ドアの位置に応じて、加熱器コアは貫通される、または代わりによけて通る。出口は、コンパートメント、および加熱器コアの上方のデフロスターのために設けられている。フットウェルチャネルが、HVAC装置の前、つまりエンジン室の方向に設けられている。かかるHVAC装置は、フライングコックピットアーキテクチャ付きの車両には適しておらず、わずかしか空間がない場合には取り付けることもできない。さらに、出口は前面壁に隣接して設置されていない。
【0005】
最後に、米国特許第US 6,311,763 B1号明細書から、一般に鉛直に配設される蒸発器および加熱器コアを備えた車両用のHVAC装置が知られている。フロントフットウェルおよびリアフットウェル用の出口は、HVAC装置の後部での移動方向に配置され、したがってこのHVACシステムはフライングコックピットアーキテクチャをともなう、つまり中央コンソールが設けられていない車両には適さない。
【0006】
したがって、本発明の問題は、空気チャネルが、トンネルの方向で前面壁上で誘導できるようにフットウェル出口が確立されたHVAC装置を提供し、ひいてはフライングコックピットアーキテクチャを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
問題を解決するために、請求項1に示されている特徴が提案されている。HVAC装置の有利な実施形態は、請求項1を参照する請求項2から9の主題である。
【0008】
蒸発器の下方にフットウェル出口を配置するため、フットウェル出口は、チャネル経路も前面壁の領域を通ることができるように、前面壁の領域内に位置する。本発明の基本的な事項は、本発明に基づいて、フットウェル出口を前面壁に設けることができるようになるHVAC装置のかかる設計が可能になり、これによりHVACシステムの完全な機能性が維持されるとともに、取り付け空間の利点が、特にフライングコックピットアーキテクチャに対してその効果を有するシステムの後部領域にもたらされる、という点である。要するに、本発明にかかるHVAC装置は、効率的な統合されたエアダクト配管を含む。本発明にかかる後部乗客用のフットウェル出口の設置は、前面壁へのチャネルシステムの組み付けを簡略化する。装置内部での分岐は、温度要求に関して最適な位置で行われる。統合型エアダクトのため、換気チャネルとHVAC装置との間に自由空間は必要とされず、したがって取り付け空間を縮小できる。空気出口の簡略化された経路は、より少ない数の接合部が必要となり、結果的に潜在的な漏れ位置は少なくなる。本発明により、HVAC装置の前底部でのリアフットウェル出口の配設の代わりに、フットウェル出口を、蒸発器下方のZ方向に、および前面壁と装置の中心との間のX方向に設置することも、本発明の範囲内で提供できる。
【0009】
先行技術に優る本発明にかかる解決策の特別な利点は、HVAC装置の簡略化された組み立てが可能になり、装置の構成部品数が削減される点である。さらに、組み立て時に、コックピットが車両の中に移送されるとき、前面壁での車両の空気チャネルの接続を自動的に行うことができ、効率の改善およびコスト節約をもたらすことが強調されるべきである。
【0010】
他の優位点および機能性も、図面を参照し、以下の説明から得られるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】フラットコックピット用に確立された先行技術のHVAC装置の図である。
【図2】従来のチャネル経路によるフラットコックピット用HVAC装置の取り付け状況の図である。
【図3】中央に自由な取り付け空間のあるフラットコックピット用HVAC装置の取り付け状況の図である。
【図4】車両の中央に自由取り付け空間のある車両後部用空気チャネルの経路、および本発明にかかるHVAC装置の図である。
【図5】前面壁に隣接するフットウェル出口付きの、本発明にかかるHVAC装置の図である。
【図6】車両の中央に自由取り付け空間のあるフラットコックピット内の、本発明によるHVAC装置の取り付け状況の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1では、フラットコックピットでの取り付け用に提供される、先行技術のHVAC装置1が示されている。HVAC装置1では、純粋に原理に則った配設に従って、冷却剤用の蒸発器2、車両暖房用の熱交換器3、および後部領域用のフットウェル出口4が描かれている。車両コンパートメント換気装置5およびデフロスター6用の出口は、後部領域用のフットウェル出口4の上方にある。後部領域用のフットウェル出口4に隣接して、乗客コンパートメントの前部領域用の不図示のフットウェル出口12が配置されている。
【0013】
図2では、車両コンパートメントの前部領域が、概略で示されている。フラットコックピット9内では、HVAC装置1用の取り付け空間7は、斜線領域として示されている。HVAC装置1で処理される空気をリアフットウェルの中に導くために、通常は、破線で示される従来のチャネル経路8が設けられる。自由取り付け空間10を車両の中央で図3に提供することが意図される場合、これがこの従来のチャネル経路8では可能ではないことを示す。
【0014】
図3では、車両フロントコンパートメントが、図2に示されるように、概略で示されている。車両の中央での自由取り付け空間10は、フライングコックピットアーキテクチャの印象が展開し、したがって車両コンパートメントが全体としてよりゆったりしていると認識できるように、構成部品を妨げることなく表されている。HVAC装置1用の取り付け空間7のあるフラットコックピット9は、図2に表されている事実に一致する。
【0015】
図4では車両フロントコンパートメントは、図2および図3で概略的に示されるように表されている。空気は、最高水準の技術に対応するHVAC装置1で処理される。空気が後部領域の中に導かれる後部領域用フットウェル出口からであると、後部領域用フットウェル出口からの空気は、最初にHVAC装置1をよけ、前面壁まで通過しなければならないため、結果として生じるチャネル経路11は高価である。
【0016】
図5には、本発明にかかるHVAC装置1が示されている。詳細に示されているのではなく、その位置とともに概略だけで示されている、車両フロントコンパートメント用の、冷却剤用蒸発器2、暖房用熱交換器3、車両コンパートメント換気装置用出口5、デフロスター用出口6、およびフットウェル出口12は、例えば図1に関してのように、通常通りに配設されている。HVAC装置1内で処理される空気を後部領域の中に入れるように確立されたチャネル経路用のフットウェル出口4は、移動方向で見ると前部に向けられてHVAC装置1の下方に設置される。これにより最適な空気配管が可能になる。処理された空気は、温度要求に関して最適な位置で、HVAC装置1の内部で分岐される。フットウェル出口4の位置のため、簡略化された組み立ておよび前面壁でのより簡略なチャネルシステムが可能になる。統合型空気配管によって、HVAC装置1用の取り付け空間の縮小がもたらされる。図6に示されているチャネル11とHVAC装置1との間の自由空間は必要とされない。
【0017】
図6では、図3に詳説されるように、自由取り付け空間10が車両の中央に設けられ、したがって中央コンソールが存在しない、フロント乗客コンパートメントが概略で示されている。HVAC装置1は、コックピット9内に平らに確立して位置している。HVAC装置1では、冷却剤用蒸発器2、車両暖房用の熱交換器3、ならびにコンパートメント換気装置およびデフロスター用の出口5および6が概略で示されている。HVAC装置1で処理される空気を通すチャネル経路11用のフットウェル出口4は、移動方向に偏位されてHVAC装置1の底部に配置される。これによって、フットウェル出口4をチャネル経路11に簡略に接続できるようになる。したがって、チャネル経路11は、前面壁に隣接して簡略に確立できる。
【符号の説明】
【0018】
1 HVAC装置
2 冷却剤用蒸発器
3 暖房用熱交換器
4 後部領域用フットウェル出口
5 車両コンパートメント換気装置
6 デフロスター用出口
7 HVAC装置用取り付け空間
8 後部領域用標準チャネル経路
9 中央コンソールのないフラットコックピット
10 車両の中央の自由取り付け空間
11 最高水準の技術のHVAC装置での後部領域用チャネル経路
12 フロントコンパートメント用フットウェル出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパクトな構造のコックピットを備え、前記コックピットとトンネルとの間に自由空間を具備する車両のための、フットウェル出口(4)を備えたHVAC装置(1)であって、前記HVAC装置(1)は、蒸発器(2)および加熱器コアを備え、更に、デフロスター用の出口(4)、コンパートメント用の出口(5)、およびフロアスペース用の出口(6)を備え、前記HVAC装置(1)は、前記コンパクトなコックピット(9)に適応され、前記蒸発器(2)が前面壁の領域内に配置され、後部乗客用の前記フットウェル出口(4)が前記蒸発器(2)の下方に配置され、前記フットウェル出口(4)が前記前面壁に隣接して設置されることを特徴とする、HVAC装置(1)。
【請求項2】
前記後部乗客用の前記フットウェル出口(4)が、前記蒸発器(2)の下方のZ方向、および前記前面壁と前記HVAC装置(1)の中心との間のX方向に設置されることを特徴とする、請求項1に記載のHVAC装置(1)。
【請求項3】
後部領域用のチャネル経路(11)が、トンネル/底部の方向で前記前面壁に沿った簡略なチャネルとして設計できることを特徴とする、請求項1又は2に記載のHVAC装置(1)。
【請求項4】
前記蒸発器(2)下方の前記後方乗客用の前記フットウェル出口(4)の設置のため、取り付け空間の利点が、前記HVAC装置(1)の後部領域にもたらされることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載のHVAC装置(1)。
【請求項5】
前記取り付け空間の利点が、フライングコックピットアーキテクチャ(9)を取得するために使用できることを特徴とする、請求項4に記載のHVAC装置(1)。
【請求項6】
従来の中央コンソールの代わりに、フライングコックピットアーキテクチャ(9)が提供されることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載のHVAC装置(1)。
【請求項7】
前記コンパートメントのフロントコンパートメント用の前記フットウェル出口(12)が、前記車両暖房用の熱交換器(3)の上方、および前記車両コンパートメント換気用の前記出口(5)の下方に配置され続けることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載のHVAC装置(1)。
【請求項8】
前記後部乗客用の前記フットウェル出口(4)の設置のために、効率的な統合型空気配管を取得できることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載のHVAC装置(1)。
【請求項9】
本発明にかかる前記HVAC装置(1)が、コックピットとトンネルとの間に自由空間が設けられない車両内でも使用できることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載のHVAC装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−240677(P2012−240677A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−114648(P2012−114648)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】