説明

フッ素化アルキルリン酸ヨードニウム系光酸発生剤含有エネルギー線硬化性組成物

【課題】 Sb等の毒性の高い元素を含まず、かつ紫外線等の活性エネルギー線に対して高感度な(カチオン重合性能が優れる)ヨードニウム塩系光酸発生剤を利用したエネルギー線硬化性組成物及び硬化体を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表されるフッ素化アルキルリン酸ヨードニウム塩系光酸発生剤とカチオン重合性化合物とを含んでなるエネルギー線硬化性組成物。
【化1】


[式(1)中、R1はI(ヨウ素)に結合している有機基を、Rfは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。bはその個数を示し、1〜5の整数である。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,第1に,光,電子線又はX線等の活性エネルギー線を作用させてカチオン重合性化合物を硬化する際に好適な光酸発生剤として特定のフッ素化アルキルリン酸ヨードニウム塩を含有するエネルギー線硬化性組成物及びこれを硬化させて得られる硬化体に関する。
本発明は、第2に,当該光酸発生剤を含有する化学増幅型のポジ型フォトレジスト組成物,及びこれを用いたレジストパターンの作製方法に関する。
本発明は,第3に,当該光酸発生剤を含有する化学増幅型のネガ型フォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱あるいは光、電子線などの活性エネルギー線照射によってエポキシ化合物などのカチオン重合性化合物を硬化させるカチオン重合開始剤として、ヨードニウム塩が知られている(特許文献1〜10)。
また、これらのヨードニウム塩は、熱あるいは活性エネルギー線照射によって酸を発生するので酸発生剤とも称され、レジストや感光性材料にも使用されている(特許文献11〜13)。
【0003】
ところで、これらの明細書に記載されているカチオン重合開始剤は、アニオンとして、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-を含有するが、カチオン重合開始能はアニオンの種類で異なり、BF4-<PF6-<AsF6-<SbF6-の順に良くなる。しかし、重合開始能の良いAsF6-、SbF6-を含有するカチオン重合開始剤は、As、Sbの毒性の問題から使用用途が限定され、SbF6-塩が光造形などの限定された用途で使用されているのみである。そのため、一般的には重合開始能が劣るPF6-塩が利用されているが、PF6-塩は、例えば、SbF6-塩と同程度の硬化速度を得るには、後者の10倍近い量を添加する必要があり、未反応の開始剤、開始剤を溶解するために必要に応じて使用される溶剤または開始剤の分解物の残存量が多くなるため、硬化物の物性が損なわれること、また開始剤の分解によって副生するHF量が多くなることから、基材や設備等が腐食されやすいことなどの問題がある。このため毒性金属を含まず、SbF6-塩に匹敵するカチオン重合開始能を有するカチオン重合開始剤が強く求められていた。
【0004】
また、近年,電子機器類の一層の小型化に伴い,半導体パッケージの高密度実装が進み,パッケージの多ピン薄膜実装化や小型化,フリップチップ方式による2次元及び3次元実装技術に基づいた実装密度の向上が図られている。そのような高精度のフォトファブリケーションに使用される材料として,オキシムスルホナート化合物を酸発生剤として使用したポジ型感光性樹脂組成物(特許文献14)がある。これは放射線照射(露光)により,光酸発生剤から酸が発生し,露光後の加熱処理により酸の拡散と酸触媒反応が促進されて,樹脂組成物中のベース樹脂のアルカリに対する溶解性を変化させるもので,露光前にアルカリ不溶であったベース樹脂がアルカリ可溶化するもので,ポジ型フォトレジストと呼ばれる。
さらに電子機器の半導体素子に用いられる表面保護膜、層間絶縁膜等にはフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂とトリアジン系の光酸発生剤を用いた感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献15、16)。これは露光により光酸発生剤から酸が発生し、架橋剤とアルカリ可溶性樹脂との反応を促進して現像液に不溶となるもので、ネガ型フォトレジストと呼ばれる。
どちらのフォトレジスト組成物も光照射により発生する酸が触媒反応するもので、強酸のものほどその効率は高いが、強酸のアニオンであるAsF6-、SbF6-は上述の通り毒性の問題があり使用できない。
【0005】
この課題に応える光酸発生剤として、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをアニオンとするオニウム塩(特許文献17)が提案されているが、このもののカチオン重合性化合物に対する重合開始能はPF6-をアニオンとするものよりは優れているが、SbF6-をアニオンとするものよりは劣り、一層の改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭50−151997号公報
【特許文献2】特開昭50−158680号公報
【特許文献3】特開平2−178303号公報
【特許文献4】特開平2−178303号公報
【特許文献5】米国特許4069054号公報
【特許文献6】米国特許4450360号公報
【特許文献7】米国特許4576999号公報
【特許文献8】米国特許4640967号公報
【特許文献9】カナダ国特許1274646号公報
【特許文献10】欧州公開特許203829号公報
【特許文献11】特開2002−193925号公報
【特許文献12】特開2001−354669号公報
【特許文献13】特開2001−294570号公報
【特許文献14】特開2000−66385号公報
【特許文献15】特開2008−77057号公報
【特許文献16】WO2008−117619号公報
【特許文献17】特開平6−184170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の背景において,本発明の第1の目的は,Sb等の毒性の高い元素を含まず、かつ紫外線等の活性エネルギー線に対して高感度な(カチオン重合性能が優れる)
ヨードニウム塩系光酸発生剤を利用したエネルギー線硬化性組成物及び硬化体を提供することである。
本発明の第2の目的は,Sb等の毒性の高い元素を含まず、かつ紫外線等の活性エネルギー線に対して高感度なレジストを得ることが可能な,化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物及びレジストパターンの作製方法を提供することである。
本発明の第3の目的は,Sb等の毒性の高い元素を含まず、かつ紫外線等の活性エネルギー線に対して高感度なレジストを得ることが可能な,化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物及び硬化体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は,上記目的に好適なエネルギー線硬化性組成物を見出した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるフッ素化アルキルリン酸ヨードニウム塩系光酸発生剤とカチオン重合性化合物とを含んでなるエネルギー線硬化性組成物である。
【0009】
【化1】

【0010】
[式(1)中、R1はI(ヨウ素)に結合している有機基を、Rfは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。bはその個数を示し、1〜5の整数である。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【発明の効果】
【0011】
本発明のエネルギー線硬化性組成物は,Sb等の毒性の高い元素を含まず、かつ紫外線等の活性エネルギー線に対して高感度(カチオン重合性能が優れる)である。
本発明の硬化体は,Sb等の毒性の高い元素を含まないため安全性が高い。
本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物および化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物は、Sb等の毒性の高い元素を含まず、かつ紫外線等の活性エネルギー線に対して高感度(カチオン重合性能が優れる)で、かつレジストパターン形状が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明のフッ素化アルキルリン酸ヨードニウム塩系光酸発生剤としては、下記一般式(1)で表される。
【0014】
【化2】

【0015】
[式(1)中、R1はI(ヨウ素)に結合している有機基を表し、Rfは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。bはその個数を示し、1〜5の整数である。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0016】
式(1)中のR1はIに結合している有機基を表し、同一であっても異なってもよい。R1としては、炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30の複素環基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基または炭素数2〜30のアルキニル基を表し、これらはアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基およびハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0017】
上記において炭素数6〜30のアリール基としては、フェニル基などの単環式アリール基およびナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ベンズアントラセニル、アントラキノリル、フルオレニル、ナフトキノン、アントラキノンなどの縮合多環式アリール基が挙げられる。
【0018】
炭素数4〜30の複素環基としては、酸素、窒素、硫黄などの複素原子を1〜3個含む環状のものが挙げられ、これらは同一であっても異なっていてもよく、具体例としてはチエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニルなどの単環式複素環基およびインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニルなどの縮合多環式複素環基が挙げられる。
【0019】
炭素数1〜30のアルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキサデシル、オクダデシルなどの直鎖アルキル基、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、イソヘキシルなどの分岐アルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基が挙げられる。また、炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチル−1−プロペニルなどの直鎖または分岐状のものが挙げられる。さらに、炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−メチル−1−プロピニル、1−メチル−2−プロピニルなどの直鎖または分岐状のものが挙げられる。
【0020】
上記の炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30の複素環基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基または炭素数2〜30のアルキニル基は少なくとも1種の置換基を有してもよく、置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクダデシルなど炭素数1〜18の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなど炭素数1〜18の分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど炭素数3〜18のシクロアルキル基;ヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ドデシルオキシなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルコキシ基;アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2−メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2−メチルブタノイル、3−メチルブタノイル、オクタノイルなど炭素数2〜18の直鎖または分岐のアルキルカルボニル基;ベンゾイル、ナフトイルなど炭素数7〜11のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニルなど炭素数2〜19の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニルなど炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基;フェニルチオカルボニル、ナフトキシチオカルボニルなど炭素数7〜11のアリールチオカルボニル基;アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、オクタデシルカルボニルオキシなど炭素数2〜19の直鎖または分岐のアシロキシ基;フェニルチオ、ビフェニリルチオ、メチルフェニルチオ、クロロフェニルチオ、ブロモフェニルチオ、フルオロフェニルチオ、ヒドロキシフェニルチオ、メトキシフェニルチオ、ナフチルチオ、4−[4−(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4−[4−(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4−[4−(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4−(フェニルチオ)フェニルチオ、4−ベンゾイルフェニルチオ、4−ベンゾイル−クロロフェニルチオ、4−ベンゾイル−メチルチオフェニルチオ、4−(メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4−(p−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ、など炭素数6〜20のアリールチオ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、tert−ブチルチオ、ネオペンチルチオ、ドデシルチオなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキルチオ基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、ナフチルなど炭素数6〜10のアリール基;チエニル、フラニル、ピラニル、キサンテニル、クロマニル、イソクロマニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニルなど炭素数4〜20の複素環基;フェノキシ、ナフチルオキシなど炭素数6〜10のアリールオキシ基;メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、tert−ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニルなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル、ナフチルスルフィニルなど炭素数6〜10のアリールスルフィニル基;メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニルなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル、トリルスルホニル(トシル基)、ナフチルスルホニルなど炭素数の6〜10のアリールスルホニル基;アルキレンオキシ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンなどが挙げられる。
【0021】
ヨードニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、ジ−p−トリルヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4−デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウムおよび4−イソブチルフェニル(p−トリル)ヨードニウムなどのヨードニウムイオンが挙げられる。
【0022】
式(1)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンにおいて、Rfはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素数は1〜4である。アルキル基の具体例としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチルなどの直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの分岐アルキル基;さらにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基などが挙げられ、アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換された割合は、通常、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満では、本発明のエネルギー線硬化性組成物の重合硬化性が低下する。
【0023】
特に好ましいRfは、炭素数が1〜4、かつフッ素原子の置換率が100%の直鎖または分岐アルキル基であり、具体例としては、CF、CF3CF2、(CF32CF、CF3CF2CF2、CF3CF2CF2CF2、(CF32CFCF2、CF3CF2(CF3)CF、(CF33Cが挙げられる。
【0024】
式(1)においてRfの個数bは、1〜5の整数であり、好ましくは2〜4であり、特に好ましくは2または3である。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては[(CF3CF23PF3、[(CF3CF2CF23PF3、[((CF32CF)3PF3、[((CF32CF)2PF4、[((CF32CFCF23PF3および[((CF32CFCF22PF4が挙げられる。
【0026】
式(1)で表されるフッ素化アルキルリン酸ヨードニウム塩系光酸発生剤の好ましい具体例は、ジフェニルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、ジ−p−トリルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、ビス(4−デシルオキシ)フェニルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェートおよび4−イソブチルフェニル(p−トリル)ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェートが挙げられる。
【0027】
本発明の式(1)で表される光酸発生剤以外にも従来公知の他の光酸発生剤を含有させて使用してもよい。
【0028】
他の光酸発生剤を含有する場合,他の光酸発生剤の含有量(モル%)は,本発明の式(1)で表される光酸発生剤の総モル数に対して,0.1〜100が好ましく,さらに好ましくは0.5〜50である。
【0029】
他の光酸発生剤としては,オニウム塩(スルホニウム,ヨードニウム,セレニウム,アンモニウム及びホスホニウム等)並びに遷移金属錯体イオンと,アニオンとの塩等の従来公知のものが含まれる。
【0030】
本発明の式(1)で表される光酸発生剤は,カチオン重合性化合物への溶解を容易にするため,あらかじめカチオン重合を阻害しない溶剤に溶かしておいてもよい。
【0031】
溶剤としては,プロピレンカーボネート,エチレンカーボネート,1,2−ブチレンカーボネート,ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートなどのカーボネート類;アセトン,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン,メチルイソアミルケトン,2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール,エチレングリコールモノアセテート,ジエチレングリコール,ジエチレングリコールモノアセテート,プロピレングリコール,プロピレングリコールモノアセテート,ジプロピレングリコール,及びジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル,モノエチルエーテル,モノプロピルエーテル,モノブチルエーテル,又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類;蟻酸エチル,乳酸メチル,乳酸エチル,酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸ブチル,ピルビン酸メチル,アセト酢酸メチル,アセト酢酸エチル,ピルビン酸エチル,エトキシ酢酸エチル,メトキシプロピオン酸メチル,エトキシプロピオン酸エチル,2−ヒドロキシプロピオン酸メチル,2−ヒドロキシプロピオン酸エチル,2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル,2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル,3−メトキシブチルアセテート,3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのエステル類;トルエン,キシレンなどの芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0032】
溶剤を使用する場合,溶剤の使用割合は,本発明の式(1)で表される光酸発生剤100重量部に対して,15〜1000重量部が好ましく,さらに好ましくは30〜500重量部である。使用する溶媒は,単独で使用してもよく,または2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明のエネルギー線硬化性組成物の構成成分であるカチオン重合性化合物としては,環状エーテル(エポキシド及びオキセタン等),エチレン性不飽和化合物(ビニルエーテル及びスチレン等),ビシクロオルトエステル,スピロオルトカーボネート及びスピロオルトエステル等が挙げられる(特開平11−060996号,特開平09−302269号,特開2003−026993号,特開2002−206017号,特開平11−349895号,特開平10−212343号,特開2000−119306号,特開平10−67812号,特開2000−186071号,特開平08−85775号,特開平08−134405号,特開2008−20838,特開2008−20839,特開2008−20841,特開2008−26660,特開2008−26644,特開2007−277327,フォトポリマー懇話会編「フォトポリマーハンドブック」(1989年,工業調査会),総合技術センター編「UV・EB硬化技術」(1982年,総合技術センター),ラドテック研究会編「UV・EB硬化材料」(1992年,シーエムシー),技術情報協会編「UV硬化における硬化不良・阻害原因とその対策」(2003年,技術情報協会),色材,68,(5),286−293(1995),ファインケミカル,29,(19),5−14(2000)等)。
【0034】
エポキシドとしては,公知のもの等が使用でき,芳香族エポキシド,脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシドが含まれる。
【0035】
芳香族エポキシドとしては,少なくとも1個の芳香環を有する1価又は多価のフェノール(フェノール,ビスフェノールA,フェノールノボラック及びこれらのこれらのアルキレンオキシド付加体した化合物)のグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0036】
脂環式エポキシドとしては,少なくとも1個のシクロヘキセンやシクロペンテン環を有する化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート,等)が挙げられる。
【0037】
脂肪族エポキシドとしては,脂肪族多価アルコール又はこのアルキレンオキシド付加体のポリグリシジルエーテル(1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル,1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等),脂肪族多塩基酸のポリグリシジルエステル(ジグリシジルテトラヒドロフタレート等),長鎖不飽和化合物のエポキシ化物(エポキシ化大豆油及びエポキシ化ポリブタジエン等)が挙げられる。
【0038】
オキセタンとしては,公知のもの等が使用でき,例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン,2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル,2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル,2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル,1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン,オキセタニルシルセスキオキセタン及びフェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。
【0039】
エチレン性不飽和化合物としては,公知のカチオン重合性単量体等が使用でき,脂肪族モノビニルエーテル,芳香族モノビニルエーテル,多官能ビニルエーテル,スチレン及びカチオン重合性窒素含有モノマーが含まれる。
【0040】
脂肪族モノビニルエーテルとしては,メチルビニルエーテル,エチルビニルエーテル,ブチルビニルエーテル及びシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
【0041】
芳香族モノビニルエーテルとしては,2−フェノキシエチルビニルエーテル,フェニルビニルエーテル及びp−メトキシフェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0042】
多官能ビニルエーテルとしては,ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル及びトリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0043】
スチレンとしては,スチレン,α−メチルスチレン,p−メトキシスチレン及びp−tert−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0044】
カチオン重合性窒素含有モノマーとしては,N−ビニルカルバゾール及びN−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0045】
ビシクロオルトエステルとしては,1−フェニル−4−エチル−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン及び1−エチル−4−ヒドロキシメチル−2,6,7−トリオキサビシクロ−[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0046】
スピロオルトカーボネートとしては,1,5,7,11−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン及び3,9−ジベンジル−1,5,7,11−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0047】
スピロオルトエステルとしては,1,4,6−トリオキサスピロ[4.4]ノナン,2−メチル−1,4,6−トリオキサスピロ[4.4]ノナン及び1,4,6−トリオキサスピロ[4.5]デカン等が挙げられる。
【0048】
さらに、1分子中に少なくとも1個のカチオン重合性基を有するポリオルガノシロキサンを使用することができる(特開2001−348482号公報、特開2000−281965号公報、特開平7−242828号公報、特開2008−195931号公報、Journal of Polym. Sci.、Part A、Polym.Chem.、Vol.28,497(1990)等に記載のもの)。
これらのポリオルガノシロキサンは、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。
【0049】
これらのカチオン重合性化合物のうち,エポキシド,オキセタン及びビニルエーテルが好ましく,さらに好ましくはエポキシド及びオキセタン,特に好ましくは脂環式エポキシド及びオキセタンである。また,これらのカチオン重合性化合物は単独で使用してもよく,または2種以上を併用してもよい。
【0050】
エネルギー線硬化性組成物中の本発明の一般式(1)で表される光酸発生剤の含有量は,カチオン重合性化合物100重量部に対し,0.05〜20重量部が好ましく,さらに好ましくは0.1〜10重量部である。この範囲であると,カチオン重合性化合物の重合がさらに十分となり,硬化体の物性がさらに良好となる。なお,この含有量は,カチオン重合性化合物の性質やエネルギー線の種類と照射量,温度,硬化時間,湿度,塗膜の厚み等のさまざまな要因を考慮することによって決定され,上記範囲に限定されない。
【0051】
本発明のエネルギー線硬化性組成物には,必要に応じて,公知の添加剤(増感剤,顔料,充填剤,帯電防止剤,難燃剤,消泡剤,流動調整剤,光安定剤,酸化防止剤,密着性付与剤,イオン補足剤,着色防止剤,溶剤,非反応性の樹脂及びラジカル重合性化合物等)を含有させることができる。
【0052】
本発明のエネルギー線硬化性組成物には,必要により,増感剤を含有できる。このような増感剤としては,公知(特開平11−279212号及び特開平09−183960号等)の増感剤等が使用でき,アントラセン{アントラセン,9,10−ジブトキシアントラセン,9,10−ジメトキシアントラセン,9,10−ジエトキシアントラセン,2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン,9,10−ジプロポキシアントラセン等};ピレン;1,2−ベンズアントラセン;ペリレン;テトラセン;コロネン;チオキサントン{チオキサントン,2−メチルチオキサントン,2−エチルチオキサントン,2−クロロチオキサントン,2−イソプロピルチオキサントン及び2,4−ジエチルチオキサントン等};フェノチアジン{フェノチアジン,N−メチルフェノチアジン,N−エチルフェノチアジン,N−フェニルフェノチアジン等};キサントン;ナフタレン{1−ナフトール,2−ナフトール,1−メトキシナフタレン,2−メトキシナフタレン,1,4−ジヒドロキシナフタレン,及び4−メトキシ−1−ナフトール等};ケトン{ジメトキシアセトフェノン,ジエトキシアセトフェノン,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン,4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等};カルバゾール{N−フェニルカルバゾール,N−エチルカルバゾール,ポリ−N−ビニルカルバゾール及びN−グリシジルカルバゾール等};クリセン{1,4−ジメトキシクリセン及び1,4−ジ−α−メチルベンジルオキシクリセン等};フェナントレン{9−ヒドロキシフェナントレン,9−メトキシフェナントレン,9−ヒドロキシ−10−メトキシフェナントレン及び9−ヒドロキシ−10−エトキシフェナントレン等}等が挙げられる。
【0053】
増感剤を含有する場合,増感剤の含有量は,光酸発生剤100部に対して,1〜300重量部が好ましく,さらに好ましくは5〜200重量部である。
【0054】
顔料としては,公知の顔料等が使用でき,無機顔料(酸化チタン,酸化鉄及びカーボンブラック等)及び有機顔料(アゾ顔料,シアニン顔料,フタロシアニン顔料及びキナクリドン顔料等)等が挙げられる。
【0055】
顔料を含有する場合,顔料の含有量は,光酸発生剤100部に対して,0.5〜400000重量部が好ましく,さらに好ましくは10〜150000重量部である。
【0056】
充填剤としては,公知の充填剤等が使用でき,溶融シリカ,結晶シリカ,炭酸カルシウム,酸化アルミニウム,水酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム,炭酸マグネシウム,マイカ,タルク,ケイ酸カルシウム及びケイ酸リチウムアルミニウム等が挙げられる。
【0057】
充填剤を含有する場合,充填剤の含有量は,光酸発生剤100部に対して,50〜600000重量部が好ましく,さらに好ましくは300〜200000重量部である。
【0058】
帯電防止剤としては,公知の帯電防止剤等が使用でき,非イオン型帯電防止剤、アニオン型帯電防止剤、カチオン型帯電防止剤、両性型帯電防止剤及び高分子型帯電防止剤が挙げられる。
【0059】
帯電防止剤を含有する場合,帯電防止剤の含有量は,光酸発生剤100部に対して,0.1〜20000重量部が好ましく,さらに好ましくは0.6〜5000重量部である。
【0060】
難燃剤としては,公知の難燃剤等が使用でき,無機難燃剤{三酸化アンチモン,五酸化アンチモン,酸化錫,水酸化錫,酸化モリブデン,ホウ酸亜鉛,メタホウ酸バリウム,赤燐,水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウム及びアルミン酸カルシウム等};臭素難燃剤{テトラブロモ無水フタル酸,ヘキサブロモベンゼン及びデカブロモビフェニルエーテル等};及びリン酸エステル難燃剤{トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート等}等が挙げられる。
【0061】
難燃剤を含有する場合,難燃剤の含有量は,光酸発生剤100部に対して,0.5〜40000重量部が好ましく,さらに好ましくは5〜10000重量部である。
【0062】
消泡剤としては,公知の消泡剤等が使用でき,アルコール消泡剤、金属石鹸消泡剤、リン酸エステル消泡剤、脂肪酸エステル消泡剤、ポリエーテル消泡剤、シリコーン消泡剤及び鉱物油消泡剤等が挙げられる。
【0063】
流動調整剤としては,公知の流動性調整剤等が使用でき,水素添加ヒマシ油,酸化ポリエチレン,有機ベントナイト,コロイド状シリカ,アマイドワックス,金属石鹸及びアクリル酸エステルポリマー等が挙げられる。
光安定剤としては,公知の光安定剤等が使用でき,紫外線吸収型安定剤{ベンゾトリアゾール,ベンゾフェノン,サリチレート,シアノアクリレート及びこれらの誘導体等};ラジカル補足型安定剤{ヒンダードアミン等};及び消光型安定剤{ニッケル錯体等}等が挙げられる。
酸化防止剤としては,公知の酸化防止剤等が使用でき,フェノール系酸化防止剤(モノフェノール系,ビスフェノール系及び高分子フェノール系等),硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。
密着性付与剤としては,公知の密着性付与剤等が使用でき,カップリング剤,シランカップリング剤及びチタンカップリング剤等が挙げられる。
イオン補足剤としては,公知のイオン補足剤等が使用でき,有機アルミニウム(アルコキシアルミニウム及びフェノキシアルミニウム等)等が挙げられる。
着色防止剤としては、公知の着色防止剤が使用でき、一般的には酸化防止剤が有効であり、フェノール系酸化防止剤(モノフェノール系、ビスフェノール系及び高分子フェノール系等)、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0064】
消泡剤、流動調整剤、光安定剤、酸化防止剤、密着性付与剤、イオン補足剤又は、着色防止剤を含有する場合,各々の含有量は,光酸発生剤100部に対して,0.1〜20000重量部が好ましく,さらに好ましくは0.5〜5000重量部である。
【0065】
溶剤としては,カチオン重合性化合物の溶解やエネルギー線硬化性組成物の粘度調整のために使用できれば制限はなく,上記光酸発生剤の溶剤として挙げたものが使用できる。
【0066】
溶剤を含有する場合,溶剤の含有量は,光酸発生剤100部に対して,50〜2000000重量部が好ましく,さらに好ましくは200〜500000重量部である。
【0067】
非反応性の樹脂としては,ポリエステル,ポリ酢酸ビニル,ポリ塩化ビニル,ポリブタジエン,ポリカーボナート,ポリスチレン,ポリビニルエーテル,ポリビニルブチラール,ポリブテン,スチレンブタジエンブロックコポリマー水添物,(メタ)アクリル酸エステルの共重合体及びポリウレタン等が挙げられる。これらの樹脂の数平均分子量は,1000〜500000が好ましく,さらに好ましくは5000〜100000である(数平均分子量はGPC等の一般的な方法によって測定された値である。)。
【0068】
非反応性の樹脂を含有する場合,非反応性の樹脂の含有量は,光酸発生剤100部に対して,5〜400000重量部が好ましく,さらに好ましくは50〜150000重量部である。
【0069】
非反応性の樹脂を含有させる場合,非反応性の樹脂をカチオン重合性化合物等と溶解しやすくするため,あらかじめ溶剤に溶かしておくことが望ましい。
【0070】
ラジカル重合性化合物としては,公知{フォトポリマー懇話会編「フォトポリマーハンドブック」(1989年,工業調査会),総合技術センター編「UV・EB硬化技術」(1982年,総合技術センター),ラドテック研究会編「UV・EB硬化材料」(1992年,シーエムシー),技術情報協会編「UV硬化における硬化不良・阻害原因とその対策」(2003年,技術情報協会)}のラジカル重合性化合物等が使用でき,単官能モノマー,2官能モノマー,多官能モノマー,エポキシ(メタ)アクリレート,ポリエステル(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートが含まれる。
【0071】
ラジカル重合性化合物を含有する場合,ラジカル重合性化合物の含有量は,光酸発生剤100部に対して,5〜400000重量部が好ましく,さらに好ましくは50〜150000重量部である。
【0072】
ラジカル重合性化合物を含有する場合,これらをラジカル重合によって高分子量化するために,熱又は光によって重合を開始するラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0073】
ラジカル重合開始剤としては,公知のラジカル重合開始剤等が使用でき,熱ラジカル重合開始剤(有機過酸化物、アゾ化合物等)及び光ラジカル重合開始剤(アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ミヒラーケトン系開始剤、ベンゾイン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アシルホスフィン系開始剤等)が含まれる。
【0074】
ラジカル重合開始剤を含有する場合,ラジカル重合開始剤の含有量は,ラジカル重合性化合物100部に対して,0.01〜20重量部が好ましく,さらに好ましくは0.1〜10重量部である。
【0075】
本発明のエネルギー線硬化性組成物は,カチオン重合性化合物,光酸発生剤及び必要により添加剤を,室温(20〜30℃程度)又は必要により加熱(40〜90℃程度)下で,均一に混合溶解するか,またはさらに,3本ロール等で混練して調製することができる。
【0076】
本発明のエネルギー線硬化性組成物は,エネルギー線を照射することにより硬化させて,硬化体を得ることができる。
エネルギー線としては,本発明のヨードニウム塩の分解を誘発するエネルギーを有する限りいかなるものでもよいが,低圧,中圧,高圧若しくは超高圧の水銀灯,メタルハライドランプ,LEDランプ,キセノンランプ,カーボンアークランプ,蛍光灯,半導体固体レーザ,アルゴンレーザ,He−Cdレーザ,KrFエキシマレーザ,ArFエキシマレーザ又はFレーザ等から得られる紫外〜可視光領域(波長:約100〜約800nm)のエネルギー線が好ましい。なお,エネルギー線には,電子線又はX線等の高エネルギーを有する放射線を用いることもできる。
【0077】
エネルギー線の照射時間は,エネルギー線の強度やエネルギー線硬化性組成物に対するエネルギー線の透過性に影響を受けるが,常温(20〜30℃程度)で,0.1秒〜10秒程度で十分である。しかしエネルギー線の透過性が低い場合やエネルギー線硬化性組成物の膜厚が厚い場合等にはそれ以上の時間をかけるのが好ましいことがある。エネルギー線照射後0.1秒〜数分後には,ほとんどのエネルギー線硬化性組成物はカチオン重合により硬化するが,必要であればエネルギー線の照射後,室温(20〜30℃程度)〜150℃で数秒〜数時間加熱しアフターキュアーすることも可能である。
【0078】
本発明のエネルギー線硬化性組成物の具体的な用途としては,塗料,コーティング剤,各種被覆材料(ハードコート、耐汚染被覆材、防曇被覆材、耐触被覆材、光ファイバー等)、粘着テープの背面処理剤、粘着ラベル用剥離シート(剥離紙、剥離プラスチックフィルム、剥離金属箔等)の剥離コーティング材、印刷板、歯科用材料(歯科用配合物、歯科用コンポジット)インキ,インクジェットインキ,ポジ型レジスト(回路基板,CSP,MEMS素子等の電子部品製造の接続端子や配線パターン形成等),レジストフィルム,液状レジスト,ネガ型レジスト(半導体素子等の表面保護膜,層間絶縁膜,平坦化膜等の永久膜材料等),MEMS用レジスト,ポジ型感光性材料,ネガ型感光性材料,各種接着剤(各種電子部品用仮固定剤、HDD用接着剤、ピックアップレンズ用接着剤、FPD用機能性フィルム(偏向板、反射防止膜等)用接着剤等),ホログラフ用樹脂、FPD材料(カラーフィルター、ブラックマトリックス、隔壁材料、ホトスペーサー、リブ、液晶用配向膜、FPD用シール剤等)、光学部材、成形材料(建築材料用、光学部品、レンズ),注型材料,パテ,ガラス繊維含浸剤,目止め材,シーリング材,封止材,光半導体(LED)封止材,光導波路材料,ナノインプリント材料,光造用,及びマイクロ光造形用材料等が挙げられる。
【0079】
本発明のヨードニウム塩は,光照射によって強酸が発生することから,公知(特開2003−267968号公報,特開2003−261529号公報,特開2002−193925号公報等)の化学増幅型レジスト材料用の光酸発生剤等としても使用できる。
【0080】
化学増幅型レジスト材料としては,(1)酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる樹脂及び光酸発生剤を必須成分とする2成分系化学増幅型ポジ型レジスト,(2)アルカリ現像液に可溶な樹脂,酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる溶解阻害剤及び光酸発生剤を必須成分とする3成分系化学増幅型ポジ型レジスト,並びに(3)アルカリ現像液に可溶な樹脂,酸の存在下で加熱処理することにより樹脂を架橋しアルカリ現像液に不溶とする架橋剤及び光酸発生剤を必須成分とする化学増幅型ネガ型レジストが含まれる。
【0081】
本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物は,光又は放射線照射により酸を発生する化合物である本発明の一般式(1)で表される光酸発生剤を含んでなる成分(A)及び酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂成分(B)を含有することを特徴とする。
【0082】
本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物において,成分(A)は,従来公知の他の光酸発生剤と併用してもよい。他の酸発生剤としては,例えば,オニウム塩化合物,スルホン化合物,スルホン酸エステル化合物,スルホンイミド化合物,ジスルホニルジアゾメタン化合物,ジスルホニルメタン化合物,オキシムスルホネート化合物,ヒドラジンスルホネート化合物,トリアジン化合物,ニトロベンジル化合物のほか,有機ハロゲン化物類,ジスルホン等を挙げることができる。
【0083】
従来公知の他の光酸発生剤として,好ましくは,オニウム化合物,スルホンイミド化合物,ジアゾメタン化合物及びオキシムスルホネート化合物の群の1種以上が好ましい。
【0084】
そのような従来公知の他の光酸発生剤を併用する場合,その使用割合は任意でよいが,通常,上記一般式(1)で表されるヨードニウム塩の合計重量100重量部に対し,他の光酸発生剤は10〜900重量部,好ましくは25〜400重量部である。
【0085】
上記成分(A)の含有量は,化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の固形分中,0.05〜5重量%とすることが好ましい。
【0086】
<酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂成分(B)>
本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物に用いられる,前記「酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(B)」(本明細書において,「成分(B)」という。)は,ノボラック樹脂(B1),ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2),及びアクリル樹脂(B3),からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂,又はこれらの混合樹脂若しくは共重合体である。
【0087】
[ノボラック樹脂(B1)]
ノボラック樹脂(B1)としては,下記一般式(b1)で表される樹脂を使用することができる。
【0088】
【化3】

【0089】
上記一般式(b1)中,R1bは,酸解離性溶解抑制基を表し,R2b,R3bは,それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し,nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
【0090】
更に,上記R1bで表される酸解離性溶解抑制基としては,炭素数1〜6の直鎖状アルキル基,炭素数3〜6の分枝鎖状アルキル基,炭素数3〜6の環状のアルキル基,テトラヒドロピラニル基,テトラヒドロフラニル基,又はトリアルキルシリル基が好ましい。
【0091】
ここで,上記R1bで表される酸解離性溶解抑制基の具体例としては、メトキシエチル基,エトキシエチル基,n−プロポキシエチル基,イソプロポキシエチル基,n−ブトキシエチル基,イソブトキシエチル基,tert−ブトキシエチル基,シクロヘキシロキシエチル基,メトキシプロピル基,エトキシプロピル基,1−メトキシ−1−メチル−エチル基1−エトキシ−1−メチルエチル基,tert−ブトキシカルボニル基,tert−ブトキシカルボニルメチル基、トリメチルシリル基及びトリ−tert−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0092】
[ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)]
ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)としては,下記一般式(b4)で表される樹脂を使用することができる。
【0093】
【化4】

【0094】
上記一般式(b4)中,R8bは,水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し,R9bは,酸解離性溶解抑制基を表し,nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
【0095】
上記炭素数1〜6のアルキル基は,炭素数1〜6の直鎖状アルキル基又は炭素数3〜6の分枝鎖状のアルキル基,炭素数3〜6の環状のアルキル基であり,メチル基,エチル基,プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,tert−ブチル基,ペンチル基,イソペンチル基,ネオペンチル基などが挙げられ,環状のアルキル基としては,シクロペンチル基,シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0096】
上記R9bで表される酸解離性溶解抑制基としては,上記R1bに例示したものと同様の酸解離性溶解抑制基を用いることができる。
【0097】
更に,ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)には,物理的,化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含むことができる。このような重合性化合物としては,公知のラジカル重合性化合物や,アニオン重合性化合物が挙げられる。例えば,アクリル酸などのモノカルボン酸類;マレイン酸,フマル酸,イタコン酸などのジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸などのカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;マレイン酸ジエチルなどのジカルボン酸ジエステル類;スチレン,ビニルトルエンなどのビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニルなどのビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン,イソプレンなどの共役ジオレフィン類;アクリロニトリルなどのニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニルなどの塩素含有重合性化合物;アクリルアミドなどのアミド結合含有重合性化合物類などを挙げることができる。
【0098】
[アクリル樹脂(B3)]
アクリル樹脂(B3)としては,下記一般式(b5)〜(b10)で表される樹脂を使用することができる。
【0099】
【化5】

【0100】
【化6】

【0101】
上記一般式(b5)〜(b7)中,R10b〜R17bは,それぞれ独立して水素原子,炭素数1〜6の直鎖状アルキル基,炭素数3〜6の分枝鎖状のアルキル基,フッ素原子,又は炭素数1〜6の直鎖状フッ素化アルキル基若しくは炭素数3〜6の分枝鎖状フッ素化アルキル基を表し,Xは,それが結合している炭素原子とともに炭素数5〜20の炭化水素環を形成し,Yは,置換基を有していてもよい脂肪族環式基又はアルキル基を表し,nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表し,pは0〜4の整数であり,qは0又は1である。
【0102】
一般式(b8),一般式(b9)及び一般式(b10)において,R18b,R20b及びR21bは,相互に独立に,水素原子又はメチル基を示し,一般式(b8)において,各R19bは,相互に独立に,水素原子,ヒドロキシル基,シアノ基又はCOOR23b基(但し,R23bは水素原子,炭素数1〜4の直鎖状アルキル基若しくは炭素数3〜4の分枝鎖状アルキル基又は炭素数3〜20のシクロアルキル基を表す。)を示し,一般式(b10)において,各R22bは,相互に独立に,炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体又は炭素数1〜4の直鎖状アルキル基若しくは炭素数3〜4の分枝鎖状のアルキル基を示し,かつR22bの少なくとも1つが該脂環式炭化水素基若しくはその誘導体であるか,あるいは何れか2つのR22bが相互に結合して,それぞれが結合している共通の炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成し,残りのR22bは,炭素数1〜4の直鎖状アルキル基若しくは炭素数3〜4の分枝鎖状のアルキル基又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を表す。
【0103】
上記成分(B)の中でも,アクリル樹脂(B3)を用いることが好ましい。
【0104】
また,成分(B)のポリスチレン換算重量平均分子量は,好ましくは10,000〜600,000であり,より好ましくは50,000〜600,000であり,更に好ましくは230,000〜550,000である。このような重量平均分子量とすることにより,レジストの樹脂物性が優れたものとなる。
【0105】
更に,成分(B)は,分散度が1.05以上の樹脂であることが好ましい。ここで,「分散度」とは,重量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。このような分散度とすることにより,レジストのメッキ耐性及び樹脂物性が優れたものとなる。
【0106】
上記成分(B)の含有量は,化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の固形文中,5〜60重量%とすることが好ましい。
【0107】
<アルカリ可溶性樹脂(C)>
本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には,レジストの樹脂物性を向上させるために,更にアルカリ可溶性樹脂(本明細書において,「成分(C)」という。)を含有させることが好ましい。成分(C)としては,ノボラック樹脂,ポリヒドロキシスチレン樹脂,アクリル樹脂及びポリビニル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0108】
上記成分(C)の含有量は,上記成分(B)100重量部に対して,5〜95重量部とすることが好ましく,より好ましくは10〜90重量部とされる。5重量部以上とすることによりレジストの樹脂物性を向上させることができ,95重量部以下とすることにより現像時の膜減りを防ぐことができる傾向がある。
【0109】
<酸拡散制御剤(D)>
本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には,レジストパターン形状,引き置き安定性などの向上のために,更に酸拡散制御剤(D)(本明細書において,「成分(D)」という。)を含有させることが好ましい。成分(D)としては,含窒素化合物が好ましく,更に必要に応じて,有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体を含有させることができる。
【0110】
また,本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には,基板との接着性を向上させるために,接着助剤を更に含有させることもできる。使用される接着助剤としては,官能性シランカップリング剤が好ましい。
【0111】
また,本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には,塗布性,消泡性,レベリング性などを向上させるために,界面活性剤を更に含有させることもできる。
【0112】
また,本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には,アルカリ現像液に対する溶解性の微調整を行うために,酸,酸無水物,又は高沸点溶媒を更に含有させることもできる。
【0113】
また,本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には,必要により,増感剤を含有できる。このような増感剤としては,従来公知のものが使用でき,具体的には,前記のものが挙げられる。
【0114】
これらの増感剤の使用量は,上記一般式(1)で表されるヨードニウム塩の合計重量100重量部に対し,5〜500重量部,好ましくは10〜300重量部である。
【0115】
また,本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物には,粘度調整のため有機溶剤を適宜配合することができる。有機溶剤としての具体例は前記のものが挙げられる。
【0116】
これらの有機溶剤の使用量は,本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物を(例えば,スピンコート法)使用して得られるフォトレジスト層の膜厚が5μm以上となるよう,固形分濃度が30重量%以上となる範囲が好ましい。
【0117】
本発明の厚膜用化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の調製は,例えば,上記各成分を通常の方法で混合,攪拌するだけでよく,必要に応じ,ディゾルバー,ホモジナイザー,3本ロールミルなどの分散機を用いて分散,混合させてもよい。また,混合した後で,更にメッシュ,メンブレンフィルターなどを用いて濾過してもよい。
【0118】
本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物は,支持体上に,通常5〜150μm,より好ましくは10〜120μm,更に好ましくは10〜100μmの膜厚のフォトレジスト層を形成するのに適している。このフォトレジスト積層体は,支持体上に本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物からなるフォトレジスト層が積層されているものである。
【0119】
支持体としては,特に限定されず,従来公知のものを用いることができ,例えば,電子部品用の基板や,これに所定の配線パターンが形成されたものなどを例示することができる。この基板としては,例えば,シリコン,窒化シリコン,チタン,タンタル,パラジウム,チタンタングステン,銅,クロム,鉄,アルミニウムなどの金属製の基板やガラス基板などが挙げられる。特に,本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物は,銅基板上においても良好にレジストパターンを形成することができる。配線パターンの材料としては,例えば銅,ハンダ,クロム,アルミニウム,ニッケル,金などが用いられる。
【0120】
上記フォトレジスト積層体は,例えば以下のようにして製造することができる。すなわち,上述したように調製した化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の溶液を支持体上に塗布し,加熱により溶媒を除去することによって所望の塗膜を形成する。支持体上への塗布方法としては,スピンコート法,スリットコート法,ロールコート法,スクリーン印刷法,アプリケーター法などの方法を採用することができる。本発明の組成物の塗膜のプレベーク条件は,組成物中の各成分の種類,配合割合,塗布膜厚などによって異なるが,通常は70〜150℃,好ましくは80〜140℃で,2〜60分間程度とすればよい。
【0121】
フォトレジスト層の膜厚は,通常5〜150μm,好ましくは10〜120μm,より好ましくは10〜100μmの範囲とすればよい。
【0122】
このようにして得られたフォトレジスト積層体を用いてレジストパターンを形成するには,得られたフォトレジスト層に,所定のパターンのマスクを介して,光又は放射線,例えば波長が300〜500nmの紫外線又は可視光線を部位選択的に照射(露光)すればよい。
【0123】
ここに,「光」は,酸を発生するために酸発生剤を活性化させる光であればよく,紫外線,可視光線,遠紫外線を包含し,また「放射線」は,X線,電子線,イオン線等を意味する。光又は放射線の線源としては,低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯,メタルハライドランプ,アルゴンガスレーザー,LEDランプなどを用いることができる。また,放射線照射量は,組成物中の各成分の種類,配合量,塗膜の膜厚などによって異なるが,例えば超高圧水銀灯使用の場合,50〜10,000mJ/cmである。
【0124】
そして,露光後,公知の方法を用いて加熱することにより酸の拡散を促進させて,この露光部分のフォトレジスト層のアルカリ溶解性を変化させる。ついで,例えば,所定のアルカリ性水溶液を現像液として用いて,不要な部分を溶解,除去して所定のレジストパターンを得る。
【0125】
現像時間は,組成物各成分の種類,配合割合,組成物の乾燥膜厚によって異なるが,通常1〜30分間であり,また現像の方法は液盛り法,ディッピング法,パドル法,スプレー現像法などのいずれでもよい。現像後は,流水洗浄を30〜90秒間行い,エアーガンや,オーブンなどを用いて乾燥させる。
【0126】
このようにして得られたレジストパターンの非レジスト部(アルカリ現像液で除去された部分)に,例えばメッキなどによって金属などの導体を埋め込むことにより,メタルポストやバンプなどの接続端子を形成することができる。なお,メッキ処理方法は特に制限されず,従来から公知の各種方法を採用することができる。メッキ液としては,特にハンダメッキ,銅メッキ,金メッキ,ニッケルメッキ液が好適に用いられる。残っているレジストパターンは,最後に,定法に従って,剥離液などを用いて除去する。
【0127】
本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物はドライフィルムとしても使用できる。このドライフィルムは,本発明の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物からなる層の両面に保護膜が形成されたものである。化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物からなる層の膜厚は,通常10〜150μm,好ましくは20〜120μm,より好ましくは20〜80μmの範囲とすればよい。また,保護膜は,特に限定されるものではなく,従来ドライフィルムに用いられている樹脂フィルムを用いることができる。一例としては,一方をポリエチレンテレフタレートフィルムとし,他方をポリエチレンテレフタレートフィルム,ポリプロピレンフィルム,及びポリエチレンフィルムからなる群より選ばれる1種とすることができる。
【0128】
上記のような化学増幅型ポジ型ドライフィルムは,例えば以下のようにして製造することができる。すなわち,上述したように調製した化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物の溶液を一方の保護膜上に塗布し,加熱により溶媒を除去することによって所望の塗膜を形成する。乾燥条件は,組成物中の各成分の種類,配合割合,塗布膜厚などによって異なるが,通常は60〜100℃で,5〜20分間程度でよい。
【0129】
このようにして得られた化学増幅型ドライフィルムを用いてレジストパターンを形成するには,化学増幅型ポジ型ドライフィルムの一方の保護膜を剥離し,露出面を上記した支持体側に向けた状態で支持体上にラミネートし,フォトレジスト層を得,その後,プレベークを行ってレジストを乾燥させた後に,他方の保護膜を剥離すればよい。
【0130】
このようにして支持体上に得られたフォトレジスト層には,支持体上に直接に塗布することにより形成したフォトレジスト層に関して上記したのと同様の方法で,レジストパターンを形成することができる。
【0131】
本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物は、光又は放射線照射により酸を発生する化合物である本発明の一般式(1)で表される光酸発生剤を含んでなる成分(E)と,フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(F)と、架橋剤(G)とを含有することを特徴とする。
【0132】
フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(F)
本発明における「フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂」(以下、「フェノール樹脂(F)」という。)としては、例えば、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレンとスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレン、スチレン及び(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、フェノール−キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール−キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン縮合樹脂、フェノール性水酸基を含有するポリイミド樹脂等が用いられる。これらのなかでも、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレンとスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレン、スチレン及び(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、フェノール−キシリレングリコール縮合樹脂が好ましい。尚、これらのフェノール樹脂(F)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0133】
また、上記フェノール樹脂(F)には、成分の一部としてフェノール性低分子化合物が含有されていてもよい。
上記フェノール性低分子化合物としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0134】
架橋剤(G)
本発明における「架橋剤」(以下、「架橋剤(G)」ともいう。)は、前記フェノール樹脂(F)と反応する架橋成分(硬化成分)として作用するものであれば、特に限定されない。上記架橋剤(G)としては、例えば、分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物、分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたベンゼンを骨格とする化合物、オキシラン環含有化合物、チイラン環含有化合物、オキセタニル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物(ブロック化されたものを含む)、ビニルエーテル基含有化合物等を挙げることができる。
【0135】
これらの架橋剤(G)のなかでも、分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物、オキシラン環含有化合物が好ましい。更には、分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物及びオキシラン環含有化合物を併用することがより好ましい。
【0136】
本発明における架橋剤(G)の配合量は、前記フェノール樹脂(F)100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜50重量部である。この架橋剤(G)の配合量が1〜100重量部である場合には、硬化反応が十分に進行し、得られる硬化物は高解像度で良好なパターン形状を有し、耐熱性、電気絶縁性に優れるため好ましい。
また、アルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物及びオキシラン環含有化合物を併用する際、オキシラン環含有化合物の含有割合は、アルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物及びオキシラン環含有化合物の合計を100重量%とした場合に、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
この場合、得られる硬化膜は、高解像性を損なうことなく耐薬品性にも優れるため好ましい。
【0137】
架橋微粒子(H)
本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物には、得られる硬化物の耐久性や熱衝撃性を向上させるために架橋微粒子(以下、「架橋微粒子(H)」ともいう。)を更に含有させることができる。
【0138】
架橋微粒子(H)の平均粒径は、通常30〜500nmであり、好ましくは40〜200nm、更に好ましくは50〜120nmである。
この架橋微粒子(H)の粒径のコントロール方法は特に限定されないが、例えば、乳化重合により架橋微粒子を合成する場合、使用する乳化剤の量により乳化重合中のミセルの数を制御し、粒径をコントロールすることができる。
尚、架橋微粒子(H)の平均粒径とは、光散乱流動分布測定装置等を用い、架橋微粒子の分散液を常法に従って希釈して測定した値である。
【0139】
架橋微粒子(H)の配合量は、前記フェノール樹脂(F)100重量部に対して、0.5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜30重量部である。この架橋微粒子(H)の配合量が0.5〜50重量部である場合には、他の成分との相溶性又は分散性に優れ、得られる硬化膜の熱衝撃性及び耐熱性を向上させることができる。
【0140】
密着助剤
また、本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物には、基材との密着性を向上させるために、密着助剤を含有させることができる。
上記密着助剤としては、例えば、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性置換基を有する官能性シランカップリング剤等が挙げられる。
【0141】
密着助剤の配合量は、前記フェノール樹脂(F)100重量部に対して、0.2〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8重量部である。この密着助剤の配合量が0.2〜10重量部である場合には、貯蔵安定性に優れ、且つ良好な密着性を得ることができるため好ましい。
【0142】
溶剤
また、本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物には、樹脂組成物の取り扱い性を向上させたり、粘度や保存安定性を調節するために溶剤を含有させることができる。
上記溶剤は、特に制限されないが、具体例は前記載のものが挙げられる。
【0143】
また,本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物には,必要により,増感剤を含有できる。このような増感剤としては,従来公知のものが使用でき,具体的には,前記のものが挙げられる。
【0144】
これらの増感剤の使用量は,上記一般式(1)で表される光酸発生剤の合計重量100重量部に対し,5〜500重量部,好ましくは10〜300重量部である。
【0145】
他の添加剤
また、本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物には、必要に応じて他の添加剤を本発明の特性を損なわない程度に含有させることができる。このような他の添加剤としては、無機フィラー、クエンチャー、レベリング剤・界面活性剤等が挙げられる。
【0146】
本発明の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法により調製することができる。また、各成分を中に入れ完全に栓をしたサンプル瓶を、ウェーブローターの上で攪拌することによっても調製することができる。
【0147】
本発明における硬化物は、前記化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物が硬化されてなることを特徴とする。
前述の本発明にかかる化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物は、残膜率が高く、解像性に優れていると共に、その硬化物は電気絶縁性、熱衝撃性等に優れているため、その硬化物は、半導体素子、半導体パッケージ等の電子部品の表面保護膜、平坦化膜、層間絶縁膜材料等として好適に使用することができる。
【0148】
本発明の硬化物を形成するには、まず前述の本発明にかかる化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物を支持体(樹脂付き銅箔、銅張り積層板や金属スパッタ膜を付けたシリコンウエハーやアルミナ基板等)に塗工し、乾燥して溶剤等を揮発させて塗膜を形成する。その後、所望のマスクパターンを介して露光し、加熱処理(以下、この加熱処理を「PEB」という。)を行い、フェノール樹脂(F)と架橋剤(G)との反応を促進させる。次いで、アルカリ性現像液により現像して、未露光部を溶解、除去することにより所望のパターンを得ることができる。更に、絶縁膜特性を発現させるために加熱処理を行うことにより、硬化膜を得ることができる。
【0149】
樹脂組成物を支持体に塗工する方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、又はスピンコート法等の塗布方法を用いることができる。また、塗布膜の厚さは、塗布手段、組成物溶液の固形分濃度や粘度を調節することにより、適宜制御することができる。
露光に用いられる放射線としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、g線ステッパー、h線ステッパー、i線ステッパー、gh線ステッパー、ghi線ステッパー等の紫外線や電子線、レーザー光線等が挙げられる。また、露光量としては使用する光源や樹脂膜厚等によって適宜選定されるが、例えば、高圧水銀灯からの紫外線照射の場合、樹脂膜厚1〜50μmでは、100〜50000J/m2程度である。
【0150】
露光後は、発生した酸によるフェノール樹脂(F)と架橋剤(G)の硬化反応を促進させるために上記PEB処理を行う。PEB条件は樹脂組成物の配合量や使用膜厚等によって異なるが、通常、70〜150℃、好ましくは80〜120℃で、1〜60分程度である。その後、アルカリ性現像液により現像して、未露光部を溶解、除去することによって所望のパターンを形成する。この場合の現像方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法、パドル現像法等を挙げることができる。現像条件としては通常、20〜40℃で1〜10分程度である。
【0151】
更に、現像後に絶縁膜としての特性を十分に発現させるために、加熱処理を行うことによって十分に硬化させることができる。このような硬化条件は特に制限されるものではないが、硬化物の用途に応じて、50〜250℃の温度で、30分〜10時間程度加熱し、組成物を硬化させることができる。また、硬化を十分に進行させたり、得られたパターン形状の変形を防止するために二段階で加熱することもでき、例えば、第一段階では、50〜120℃の温度で、5分〜2時間程度加熱し、更に80〜250℃の温度で、10分〜10時間程度加熱して硬化させることもできる。このような硬化条件であれば、加熱設備として一般的なオーブンや、赤外線炉等を使用することができる。
【実施例】
【0152】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、各例中の部は重量部を示す。
【0153】
<エネルギー線硬化性組成物の調製及びその評価−1>
カチオン重合性化合物であるエポキシド(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート,ダウケミカル株式会社製,UVR−6110)に光酸発生剤(P−1〜3)を,表1に示した配合量で均一混合して,エネルギー線硬化性組成物(実施例C1および比較例C1、C2)を調製した。
【0154】
【表1】

【0155】
【化7】

【0156】
P−1:4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル) トリフルオロホスフェート
P−2:4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
P−3:4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート
【0157】
<感度(カチオン重合硬化性)評価>
上記で得た組成物をアプリケーターにてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に膜厚40μmで塗布した。上記塗布後のPETフィルムに紫外線照射装置を用いて、紫外線を照射した。照射後,40分後の塗膜硬度を鉛筆硬度(JIS K5600−5−4:1999)にて測定し,以下の基準により評価した結果を表2に示す。鉛筆硬度が高いほど,エネルギー線硬化性組成物の感度(カチオン重合硬化性)が良好であることを示す。
【0158】
(評価基準)
◎:鉛筆硬度が2H以上
○:鉛筆硬度がH〜B
△:鉛筆硬度が2B〜4B
×:液状〜タックがあり,鉛筆硬度を測定できない
【0159】
(紫外光の照射条件)
・紫外線照射装置:ベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製)
・ランプ:1.5kW高圧水銀灯
・照度(365nmヘッド照度計で測定):145mW/cm
【0160】
・積算光量(365nmヘッド照度計で測定):
条件−1:300mJ/cm
条件−2:400mJ/cm
条件−3:500mJ/cm
【0161】
【表2】

【0162】
<エネルギー線硬化性組成物の調製及びその評価−2>
カチオン重合性化合物であるポリオルガノシロキサン(エポキシ変成シリコーン樹脂,ローディア社製、シリコリースPOLY200)に、光酸発生剤(P−1〜3)を表3に示した配合量で均一混合して,エネルギー線硬化性シリコーン組成物(実施例R1および比較例R1、R2)を調製した。
【0163】
【表3】

【0164】
<感度(カチオン重合硬化性)評価>
上記で得たシリコーン組成物をアプリケーターにてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に膜厚4μmで塗布した。上記塗布後のPETフィルムに紫外線照射装置を用いて、紫外線を照射した。照射後塗膜の硬化の程度を指触によって下記評価基準により判定した。これらの結果を表4に示す。積算光量が少なく硬化の程度が高いほど、シリコーン組成物の感度が高く、カチオン重合硬化性が良好であることを示す。
【0165】
(評価基準)
○:完全硬化(指触によるタックやべとつきなし)
△:表面硬化(指触によるタックはないが、塗膜内部がやわらかい)
×:未硬化(指触によるタックやべとつきあり)
【0166】
(紫外線の照射条件)
・紫外線照射装置:ベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製)
・ランプ:1.5kW高圧水銀灯
・照度(365nmヘッド照度計で測定):145mW/cm
・積算光量(365nmヘッド照度計で測定):
条件−1:300mJ/cm
条件−2:500mJ/cm
【0167】
<剥離力の測定>
上記で得たシリコーン組成物をRIテスターにて、グラシン紙に塗工量を約1.0g/m2で塗布した後、紫外線の照射により硬化させ剥離紙を作成した。作製した剥離紙の硬化皮膜表面に、アクリル系エマルション型粘着剤(東洋インキ製造株式会社製、商品名「オリバインBPW−5526」)を20g/mで塗布し110℃で60秒乾燥処理した。ついで、この処理表面に上質紙を貼り合わせ、25℃で20g/cmの荷重下に15時間保存した。これを50mm幅に切り、引張試験機を用いて180℃の角度で剥離速度0.3m/分、および50m/分で貼り合わせた上質紙を引っ張り、剥離するのに要する力(g/50mm)を測定した。結果を表4に示す。
【0168】
【表4】

【0169】
表2の結果より、本発明のエネルギー線硬化性組成物(実施例C1)は、組成物中に毒性元素であるSbを有していないため安全性が高く、比較例C1、C2に比べて感度が高く、カチオン重合硬化性が良好であることが分かる。
また、表4の結果より、本発明のエネルギー線硬化性シリコーン組成物(実施例R1)も同様に、組成物中にSbを含有せず、比較例R1、R2よりもカチオン重合硬化性が良好であり、かつ実施例R1は比較例R1、R2と同等の剥離力を有しており、粘着ラベル用剥離シート(剥離紙、剥離プラスチックフィルム、剥離金属箔等)の剥離材としても有用であることが分かる。
【0170】
<ポジ型フォトレジスト組成物の調製及びその評価>
表5に示す通り、光酸発生剤である成分(A)1重量部,樹脂成分(B)として,下記化学式(Resin-1)で示される樹脂40重量部,及び樹脂成分(C)として,m−クレゾールとp−クレゾールとをホルムアルデヒド及び酸触媒の存在下で付加縮合して得たノボラック樹脂60重量部,増感剤として,イソプロピルチオキサントン0.25重量部を,溶媒−1(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に均一に溶解させ,孔径1μmのメンブレンフィルターを通して濾過し,固形分濃度40重量%のポジ型フォトレジスト組成物(実施例P1、比較例P1、P2)を調製した。
【0171】
【表5】

【0172】
【化8】

【0173】
<感度評価>
シリコンウェハー基板上に,上記実施例P1および比較例P1、P2で調製したポジ型レジスト組成物をスピンコートした後,乾燥して約20μmの膜厚を有するフォトレジスト層を得た。このレジスト層をプレベークした後,TME−150RSC(トプコン社製)を用いてパターン露光(i線)を行い,ホットプレートにより130℃で5分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後,2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた浸漬法により,5分間の現像処理を行い,流水洗浄し,窒素でブローして10μmのラインアンドスペース(L&S)パターンを得た。更に,それ以下ではこのパターンの残渣が認められなくなる最低限の露光量,すなわちレジストパターンを形成するのに必要な最低必須露光量(感度に対応する)を測定した。結果を表6に示す。露光量が少ない程、高感度であることを示す。
【0174】
【表6】

【0175】
<ネガ型フォトレジスト組成物の調製及びその評価>
表7に示す通り、光酸発生剤である成分(E)1重量部、フェノール樹脂である成分(F)として、p−ヒドロキシスチレン/スチレン=80/20(モル比)からなる共重合体(Mw=10,000)を100重量部、架橋剤である成分(G)として、ヘキサメトキシメチルメラミン(三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW−390」)を20重量部、架橋微粒子である成分(H)として、ブタジエン/アクリロニトリル/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=64/20/8/6/2(重量%)からなる共重合体(平均粒径=65nm、Tg=−38℃)を10重量部、密着助剤である成分(I)として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製、商品名「S510」)5重量部、増感剤としてイソプロピルチオキサントン0.25重量部を、溶剤−2(乳酸エチル)145重量部に均一に溶解して、本発明のネガ型フォトレジスト組成物(実施例N1、比較例N1、N2)を調製した。
【0176】
【表7】

【0177】
<感度評価>
シリコンウェハー基盤上に,各組成物をスピンコートした後,ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱乾燥して約20μmの膜厚を有する樹脂塗膜を得た。その後、TME−150RSC(トプコン社製)を用いてパターン露光(i線)を行い,ホットプレートにより110℃で3分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後,2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた浸漬法により,2分間の現像処理を行い,流水洗浄し,窒素でブローして10μmのラインアンドスペースパターンを得た。更に,現像前後の残膜の比率を示す残膜率が95%以上のパターンを形成するのに必要な最低必須露光量(感度に対応する)を測定した。結果を表8に示す。露光量が少ない程、高感度であることを示す。
【0178】
【表8】

【0179】
表6、8の結果より、本発明のポジ型レジスト組成物(実施例P1)およびネガ型レジスト組成物(実施例N1)は、組成物中に毒性元素であるSbを有していないため安全性が高く、ポジ型レジスト組成物の比較例P1、P2、およびネガ型レジスト組成物の比較例N1、N2に比べて感度が高いため、レジスト組成物として有用であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の組成物は,塗料,コーティング剤,各種被覆材料(ハードコート、耐汚染被覆材、防曇被覆材、耐触被覆材、光ファイバー等)、粘着テープの背面処理剤、粘着ラベル用剥離シート(剥離紙、剥離プラスチックフィルム、剥離金属箔等)の剥離コーティング材、印刷板、歯科用材料(歯科用配合物、歯科用コンポジット)インキ,インクジェットインキ,ポジ型レジスト(回路基板,CSP,MEMS素子等の電子部品製造の接続端子や配線パターン形成等),レジストフィルム,液状レジスト,ネガ型レジスト(半導体素子等の表面保護膜,層間絶縁膜,平坦化膜等の永久膜材料等),MEMS用レジスト,ポジ型感光性材料,ネガ型感光性材料,各種接着剤(各種電子部品用仮固定剤、HDD用接着剤、ピックアップレンズ用接着剤、FPD用機能性フィルム(偏向板、反射防止膜等)用接着剤等),ホログラフ用樹脂、FPD材料(カラーフィルター、ブラックマトリックス、隔壁材料、ホトスペーサー、リブ、液晶用配向膜、FPD用シール剤等)、光学部材、成形材料(建築材料用、光学部品、レンズ),注型材料,パテ,ガラス繊維含浸剤,目止め材,シーリング材,封止材,光半導体(LED)封止材,光導波路材料,ナノインプリント材料,光造用,及びマイクロ光造形用材料等に好適に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフッ素化アルキルリン酸ヨードニウム塩系光酸発生剤とカチオン重合性化合物とを含んでなるエネルギー線硬化性組成物。
【化1】

[式(1)中、R1はI(ヨウ素)に結合している有機基を、Rfは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。bはその個数を示し、1〜5の整数である。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギー線硬化性組成物を硬化させて得られることを特徴とする硬化体。
【請求項3】
請求項1に記載の光酸発生剤を含んでなる成分(A)と,酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂である成分(B)とを含んでなる,化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物。
【請求項4】
該成分(B)がノボラック樹脂(B1),ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2),及びアクリル樹脂(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含んでなるものである,請求項3に記載の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物。
【請求項5】
アルカリ可溶性樹脂(C)及び酸拡散制御剤(D)を更に含んでなる,請求項3又は4に記載の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物。
【請求項6】
請求項3〜5の何れかに記載の化学増幅型ポジ型フォトレジスト組成物からなる膜厚10〜150μmのフォトレジスト層を支持体上に積層してフォトレジスト積層体を得る積層工程と,該フォトレジスト積層体に部位選択的に光又は放射線を照射する露光工程と,該露光工程後にフォトレジスト積層体を現像してレジストパターンを得る現像工程と,を含むことを特徴とするレジストパターンの作製方法。
【請求項7】
請求項1に記載の光酸発生剤を含んでなる成分(E)と,フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂である成分(F)と,架橋剤成分(G)とを含んでなる,化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物。
【請求項8】
更に架橋微粒子成分(H)を含んでなる,請求項7に記載の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物を硬化させて得られることを特徴とする硬化体。


【公開番号】特開2012−22227(P2012−22227A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161383(P2010−161383)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000106139)サンアプロ株式会社 (32)
【Fターム(参考)】