説明

フッ素化ポリエーテル組成物

【課題】環境に優しく、かつ加工上の難点を伴うことなく調製することのできるフルオロケミカル組成物を提供する。
【解決手段】式Rf−(Q−Tky [式中、Rfは分子量が約750g/モル〜約4000g/モルの1価または2価のペルフルオロ化ポリエーテル基を表し、Qは化学結合あるいは2価または3価の有機結合基を表し、Tは−C(O)F、−CO23(ここで、R3は水素、低級アルキル、シクロアルキルまたはアルカノールである)、−C(O)N(R1)(R2)(ここで、R1およびR2は独立に、低級アルキル、シクロアルキルまたはアルカノールである)、−OH、−SH−および−NH2からなる群から選択され、kは1または2であり、yは1または2である]のフッ素化ポリエーテル、またはその混合物を含む、フルオロケミカル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用なフルオロケミカルポリマー組成物の調製用の中間体である選択された分子量範囲のフッ素化ポリエーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化ポリエーテルは長年にわたり知られている。例えば、このようなポリエーテルは、米国特許第3,214,478号明細書、同第3,242,218号明細書、同第3,322,826号明細書およびミロワー(Millauer)らの「アンゲバンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション(Angewandte Chemie Int. Ed.)」、1995年、24巻(3)号、161〜179頁に記載され、すべて参照により本明細書に組み込まれる。こうしたポリフッ素化エーテルは、撥油特性および撥水特性を付与するために硬質表面基材や繊維質基材などの基材に適用される有用な組成物の調製の際に中間体として使用されてきた。例えば、このような組成物の中間体であるペルフルオロ化ポリエーテル化合物は、欧州特許第1,038,919号明細書、欧州特許第273,449号明細書、特開平4−146917号公報、特開平10−081873号公報、米国特許第3,536,710号明細書、同第3,814,741号明細書、同第3,553,179号明細書および同第3,446,761号明細書に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした有用で効率的な組成物を探す際には、使用する特定のフッ素化ポリエーテルの選択が重要である。例えば、フルオロケミカル組成物が環境に優しいものであるという要件もある。これは、生物の身体から徐々に排出されるフルオロケミカル成分を実質的に含まないフルオロケミカルポリマー組成物が得られるということを意味する。
【0004】
環境への優しさに加えて、コストを削減し、かかるフルオロケミカル組成物の製造の際容易にするために、加工効率も望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、分子量が約750g/モル〜約4000g/モルのペルフルオロ化ポリエーテルまたはフッ素化ポリエーテル化合物から誘導されたフルオロケミカル組成物によって、環境に優しい組成物が得られるだけでなく、加工上の難点を伴うことなく調製できる組成物が得られることを本願出願人らは見出した。
【0006】
さらに、同様にこうした材料から形成し得るフルオロケミカル分解生成物は、生物の身体から完全になくなると考えられる。特に、兆候は、分子量が少なくとも750g/モルのペルフルオロ化ポリエーテル部分を有するフッ素化ポリエーテル化合物、およびそれから形成し得るペルフルオロ化ポリエーテル分解生成物が、生物の身体からより効果的になくなるはずであると示している。特に、ヘキサフルオロプロピレンオキシドの重縮合から誘導可能なフッ素化ポリエーテル部分を有し、かつ分子量が少なくとも750g/モルのフッ素化ポリエーテル化合物は長鎖ペルフルオロ脂肪族化合物に比べて、生物の身体からより効果的になくなるはずであるという兆候がある。
【0007】
したがって、本発明は、次式のペルフルオロ化ポリエーテル
f−(Q−Tky (I)
[式中、
fは分子量が約750g/モル〜4000g/モルの1価または2価のペルフルオロ化ポリエーテル基を表し、
Qは化学結合あるいは2価または3価の有機結合基であり、
Tは−C(O)F、−CO23(ここで、R3は水素、低級アルキル、シクロアルキルまたはアルカノールである)、−C(O)N(R1)(R2)(ここで、R1およびR2は独立に、低級アルキル、シクロアルキルまたはアルカノールである)、−OH、−SHおよび−NH2から選択される官能基であり、
kは1または2であり、
yは1または2である]、またはその混合物を含むフルオロケミカル組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
このフルオロケミカル組成物に使用されるフッ素化化合物は、式(I)のものである。
f−(Q−Tky (I)
式中、Rfは1価または2価のペルフルオロ化ポリエーテル基を表し、Qは化学結合あるいは2価または3価の非フッ素化有機結合基を表し、Tは−C(O)F、−CO23(ここで、R3は水素、低級アルキル、シクロアルキルまたはアルカノールである)、−C(O)N(R1)(R2)(ここで、R1およびR2は独立に、低級アルキル、シクロアルキルまたはアルカノールである)、−OH、−SHおよび−NH2から選択される官能基を表し、kは1または2であり、nは1または2である。
【0009】
「低級アルキル」という用語には、例えばメチル、エチル、プロピル、1−メチル−2−エチル、ブチルなど炭素原子1〜6個を含む直鎖または分岐アルキル基が含まれる。
【0010】
「シクロアルキル」という用語には、例えばシクロプロピルやシクロヘキシルなど炭素原子3〜6個の環状炭化水素基が含まれる。
【0011】
「アルカノール」は、例えば−CH2OH、−CH2CH(OH)CH3、−CH2CH(OH)CH2OHなど互いに結合し、1個または複数のヒドロキシル基で置換された直鎖または分岐鎖のメチレン基である。
【0012】
式(I)のフッ素化ポリエーテルのペルフルオロ化ポリエーテル部分Rfは、次式に対応することが好ましい。
f1−(O−Rf2−(Rf3qy− (II)
式中、Rf1はペルフルオロ化アルキルまたはアルキレン基を表し、Rf2は1、2、3または4個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキレンオキシ基あるいはこのようなペルフルオロ化アルキレンオキシ基の混合物からなるペルフルオロ化ポリアルキレンオキシ基を表し、Rf3はペルフルオロ化アルキレン基を表し、qは0または1であり、yは1または2である。式(II)中のペルフルオロ化アルキルまたはアルキレン基Rf1は、線状、分岐状、または環状とすることができ、N、O、Sなどのヘテロ原子を懸垂状に含むことができ、炭素原子1〜10個、好ましくは炭素原子1〜6個を含むことができる。典型的なペルフルオロ化アルキル基は、CF3−CF2−CF2−である。Rf3は炭素原子1〜6個を通常は有する線状または分岐状ペルフルオロ化アルキレン基である。例えば、Rf3は−CF2−または−CF(CF3)−である。ペルフルオロ化ポリアルキレンオキシ基Rf2のペルフルオロアルキレンオキシ基の例としては、
−CF2−CF2−O−、
−CF(CF3)−CF2−O−、
−CF2−CF(CF3)−O−、
−CF2−CF2−CF2−O−、
−CF2−O−、
−CF(CF3)−O−、および
−CF2−CF2−CF2−CF2−Oがある。
ペルフルオロアルキレンオキシ基は同じペルフルオロアルキレンオキシ単位、または異なるペルフルオロアルキレンオキシ単位の混合物からなるものとすることができる。ペルフルオロアルキレンオキシ基が異なるペルフルオロアルキレンオキシ単位からなる場合、これらはランダム配置、交互配置で存在する、あるいはブロックで存在することができる。ペルフルオロ化ポリアルキレンオキシ基の典型的な例としては、−[CF2−CF2−O]r−;−[CF(CF3)−CF2−O]n−;−[CF2CF2−O]I−;−[CF2O]j−;−[CF2−CF2−O]l−;および−[CF2CF−(CF3)−O]m−がある。式(II)に対応する好ましいペルフルオロ化ポリエーテル部分は、CF3−CF2−CF2−O−[CF(CF3)−CF2O]n−CF(CF3)−(ここで、nは3〜23の整数である)である。このペルフルオロ化ポリエーテル基は、nが3に等しいとき分子量が783であり、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化から誘導することができる。このようなペルフルオロ化ポリエーテル基は、その環境に優しい特性によって特に好ましい。
【0013】
結合基Qの例としては、O,NまたはSを挟んでもよくかつアルキレン基、オキシ基、チオ基および/またはカルボニル基で置換されていてもよい芳香族または脂肪族基を含む有機基がある。
【0014】
具体的な実施形態では、フッ素化ポリエーテルは下記の式(III)に対応する。
f1−(O([CF(CF3)−CF2O]n−CF(CF3)−Q−Tky (III)
式中、Rf1はペルフルオロ化アルキルまたはアルキレン基、例えば炭素原子1〜6個を有する線状または分岐状ペルフルオロ化アルキル基を表し、nは3〜23の整数であり、Qは化学結合あるいは例えば結合基について上記に記載したような2価または3価の有機結合基であり、kは1または2であり、Tは上記に記載したとおりであり、Tはそれぞれ同じでも異なってもよく、yは1または2である。特に好ましい化合物は、Rf1がCF3CF2CF2−であるものである。具体的な実施形態によれば、部分Q−Tkは、式−CO−X−Ra(OH)kの部分(式中、kは1または2であり、XはOまたはNRbであり、Rbは水素、または炭素原子1〜4個のアルキル基を表し、Raは炭素原子1〜15個のアルキレンである)である。
【0015】
上記の式(III)中の部分Q−Tkの代表的例としては、
1.−CONRc−CH2CHOHCH2OH(ここで、Rcは水素、または例えば炭素原子1〜4個のアルキル基である)、
2.−CH2OH、
3.−CH2OCH2CH(OH)CH2OH、
4.−COOCH2CH(OH)CH2OH、
5.−CONRd−(CH2mOH
6.−N(CH2CH2OH)CH2CH2OH、
7.−C(O)F
8.−C(O)ORd
9.−CO2
(ここで、Rdは水素、またはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどのアルキル基であり、mは2〜12である)がある。
【0016】
式(III)による化合物は例えば、ペルフルオロポリエーテルカルボニルフルオリドをもたらすヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)のオリゴマー化によって得ることができる。このカルボニルフルオリドを、当業者によく知られている反応によって酸、酸塩、エステル、アミドまたはアルコールに転換することができる。次いで、カルボニルフルオリド、あるいはそれから誘導された酸、エステルまたはアルコールをさらに反応させて、知られている手順に従って所望の反応性基を導入することができる。例えば、アルコールと(メタ)アクリル酸クロライドのエステル化によって、アルコール官能基を(メタ)アクリラート官能基に容易に転換することができる。また、欧州特許第870778号明細書は、所望の部分Q−Tkを有する式(III)による化合物を生成するのに適した方法を記載している。上記に挙げた部分1を有する化合物は、フッ素化ポリエーテルのメチルエステル誘導体と3−アミノ−2−ヒドロキシ−プロパノールを反応させることによって得ることができる。上記に挙げた部分5を有する化合物は、ヒドロキシ官能基を1個しか有しないアミノアルコールを同様に反応させることによって得ることができる。例えば、2−アミノエタノールであれば、Rdが水素であり、mが2である上記に挙げた部分5を有する化合物をもたらすであろう。
【0017】
上記の式(I)による化合物のさらに別の例は、欧州特許第870778号または米国特許第3,536,710号に開示されている。
【0018】
フルオロケミカル組成物のフッ素化ポリエーテル化合物を調製するために、式(I)によるフッ素化ポリエーテルの混合物を使用できることが当業者には明らかであろう。一般には、本発明のための式(I)によるフッ素化ポリエーテルを作製する方法によって、様々な分子量を有し、(1)分子量が750g/モル未満のペルフルオロ化ポリエーテル部分を有するフッ素化ポリエーテル化合物と(2)分子量が4000g/モルを超えるポリフッ素化ポリエーテル部分を有するフッ素化ポリエーテル化合物とを含まないフッ素化ポリエーテルの混合物が得られる。
【0019】
約4000g/モルを超える分子量に対応するフッ素化ポリエーテルを使用すると、加工上の問題を招くおそれがある。こうした問題は通常、より高い分子量の材料が、乳濁、不安定および不溶の問題をもたらすことによるものである。さらに、より高い分子量のフッ素化ポリエーテル誘導体が存在すると、分別蒸留による材料の分離プロセスの効率にかなりの影響を与える。
【0020】
このフルオロケミカル組成物は、分子量が750g/モル未満のペルフルオロ化ポリエーテル部分および分子量が4000g/モルを超えるペルフルオロ化ポリエーテル部分を含まないまたは実質的に含まないものとなる。「実質的に含まない」という用語は、この分子量範囲外の特定のペルフルオロ化ポリエーテル部分が、組成物中のペルフルオロ化ポリエーテル部分の総重量に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下、最も好ましくは0.05重量%以下の量で存在することを意味する。こうした部分を含まないまたは実質的に含まない組成物は、その有益な環境特性および次の反応ステップにおけるその加工可能性のために好ましい。
【0021】
このフッ素化ポリエーテル化合物を、硬質表面などの基材または生地などの繊維質基材を処理するためのフッ素化組成物の調製用の中間体として使用することができる。
【0022】
知られている方法で調製され、分子量が750g/モルを超えかつ4000g/モル未満であるこのペルフルオロ化ポリエーテル化合物を、慎重な分別蒸留またはジグリムなどの非プロトン性有機溶媒を使用した共沸蒸留によって、あるいは触媒の選択、触媒量、温度、溶媒、出発材料の純度、出発材料の比などのオリゴマー化パラメータの慎重な制御によって、この分子量範囲外の部分を含まないものとする。
【実施例】
【0023】
それぞれ個々のオリゴマーについて気液クロマトグラフィー面積%とその対応する分子量の積の加算によって、HFPOオリゴマーの平均分子量(平均MW)を決定した。
【0024】
HFPOオリゴマー一般式:C37O[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)COF
【0025】
実施例1:n≧5のHFPOオリゴマー
HFPOオリゴマー(460グラム、気液クロマトグラフィーで決定して、平均MW約1336、六量体以下を13.5%含む;米国特許第3,242,218号に記載されているように調製することができる)の混合物を、銀コーティングされた真空ジャケット式カラム(長さ61cm、内径25.4mm;ニュージャージ州バインランドのエース・ガラス・インコーポレイテッド(Ace Glass Incorporated、Vineland,NJから市販)を用い、エース・ガラス・インコーポレイテッド(Ace Glass Incorporated)から市販のPro−Pak蒸留充填物(0.24インチ(6.0mm)で充填して、真空分別蒸留した。蒸留ヘッド(エース・ガラス・インコーポレイテッド(Ace Glass Incorporated)から市販;カタログ番号6598−10)、マグネチックスターラおよびドライアイス−アセトンスラッシュ浴(留出物を集めるため)を備えた1Lの蒸留フラスコ(エース・ガラス(Ace Glass)から市販;カタログ番号6935−78)を使用した。真空度0.1mmHgで蒸留を実施した。蒸留中に必要な場合は乾燥窒素を使用して真空を破壊した。カラムを完全に還流させて1時間平衡状態にした後、還流比60対1で留出物を取り出した。すなわち、60部をカラムに戻し、1部を留出物として取り出した。カラムヘッド温度140℃/0.1mmHgまでの留出物を取り出し、上相としてジグリム42グラムを含む留出物130グラムを回収した。冷却した後、オーバーヘッドおよびカラムを取り外し、滴下漏斗に取り換えることをすべて窒素ガスシール下で行った。反応温度を30℃未満に維持しながら、無水メタノール(28g)を徐々に滴下した。30分後、脱イオン水(34g)を加え、得られたメチルエステル溶液を洗浄し、相を分離した。所望のメチルエステルは、材料の下相(284g)を形成し、HFPOの六量体を0.19%しか含まず、平均MWは1434g/モルであった。
【0026】
実施例2:n=4および5(六量体および七量体)のHFPOオリゴマー
HFPOオリゴマーの混合物を実施例1に記載したように分別蒸留して、気液クロマトグラフィーで決定して、六量体65%および七量体33%を含む182グラムの留分カットを得た。このカットを、同心チューブカラム(エース・ガラス・インコーポレイテッド(Ace Glass Incorporated)から市販、カタログ番号9331−12)を使用して真空下で再蒸留した。下記の表は、還流比7対1、真空度0.5mmHg(66.7Pa)で行われたこの分別蒸留を要約する。
【0027】
【表1】

【0028】
カット2〜5を合わせて、メチルエステルを上記に記載したように調製した。得られた生成物は、気液クロマトグラフィーで分析して、六量体95.0%のメチルエステルであった。
【0029】
カット7を使用して、六量体の場合に使用したのと同じ手順で、七量体純度95.0%のメチルエステルを調製した。
【0030】
実施例3:n=2(四量体)のHFPOオリゴマー
実施例1に記載したように調製し、気液クロマトグラフィーで決定して、四量体を27%含む粗HFPOオリゴマー100ミリリットルを、実施例2に記載した同心チューブカラムを使用して、大気圧で分別蒸留した。還流比30対1、ヘッド温度160℃で、四量体留分カット20グラムを得た。無水メタノールでエステル化し、水洗した後、気液クロマトグラフィーによる純度94.5%の四量体を20グラム得た。
【0031】
実施例4:n=3(五量体)のHFPOオリゴマー
HFPOオリゴマーメチルエステルの試料を、実施例1に記載したのと基本的に同じ充填カラム蒸留装置で蒸留した(3mmHg)。釜温度を144から185℃に昇温させたとき、気液クロマトグラフィーによる純度31.4%の五量体を含む留分を得た。この留分を再蒸留し、気液クロマトグラフィーによる純度95.1%の五量体メチルエステルを含む沸点118℃/8mmHgの留分を得た。
【0032】
実施例5:n≧4のHFPOオリゴマー
HFPOオリゴマーメチルエステルの試料を実施例1に記載したように調製し、それは約0.3重量%のHFPO三量体(n=1)、およびその量の約1/10のHFPO二量体(n=0)を含んでいることがわかった。この試料に、無水ジグリム50mlを加え、混合物を大気圧で蒸留した。数ミリリットルの留出物が得られた後、蒸留容器に残留している材料を気液クロマトグラフィーで分析すると、約84ppm以下の三量体が含まれていることがわかった。この材料を無水メタノールで数回洗浄して、残留ジグリムを除去した。平均MWは、1742であった。
【0033】
実施例6:n≧5のHFPOオリゴマー
この試料を基本的に実施例1に記載したように調製して、四量体およびそれ以下の同族体を22ppしか含まない、平均MW=1648のHFPOオリゴマーの試料を得た。
【0034】
実施例7:アルコールC37O[CF(CF3)CF2O]nCF(CF3)CONHC24OHの調製
実施例1〜6に記載のHFPOメチルエステルを、非常に同様の方法でそのアミドアルコールに転換した。そのエステルと過剰のエタノールアミン(エステル1モル当たりエタノールアミン約1.25モル)を周囲温度で混合した。16時間撹拌した後、溶液は完全に均質となった。次いで、共生成物であるメタノールは、試料をメタノールの除去によって引き起こされる発泡が基本的に止まるまで約50℃、真空下、通常は10〜15mmHgに置くことによって除去した。この手順では、過剰のエタノールアミンは除去されなかったが、これによって生物学的試験が妨害されることはなかった。実施例6のエステルの場合、わずかに異なる手順を用いた。このエステルと過剰のエタノールアミンを反応させた後の生成混合物を、ジエチルエーテル約200mlで溶解した。次いで、このエーテル溶液を、約5%塩化ナトリウム水溶液で2回、約2NHClで1回、再び塩化ナトリウム水溶液で2回洗浄した。このエーテル溶液を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、ロータリーエバポレータを用いて約15mmHg、50℃で、もはや発泡が観察されなくなるまでエーテルを除去した。GC−MSおよびIRによって、アルコール生成物の構造が確認された。
【0035】
比較例C1および実施例1〜5
HFPOアルコールCF3CF2CF2O(CF(CF3)CF2O)xCF(CF3)C(O)N(H)CH2CH2OHの生態内運命に関する試験
【0036】
この試験の目的は、6個のヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)アルコールオリゴマー(CF3CF2CF2O(CF(CF3)CF2O)xCF(CF3)C(O)N(H)CH2CH2OH)およびその混合物の経口吸収と血清消失半減期をラットで評価することであった。オスSD(Sprague Dawley)ラット(1投与群当たりN=4〜6のラット)に、プロピレングリコールを溶媒とする様々なHFPOアルコールオリゴマーを単回投与量30mg/kgで強制経口により5ml/kgの容量で与えた。投与後1日目および4日目に剖検を行った。
【0037】
総フッ素について、アンテック(Antek)9000Fフッ化物分析計を使用し、公表されている方法(1)に基づいて、剖検で得られた血清試料を分析した。この方法は、1050℃におけるオキシ熱加水分解法に準じて行われた。それによって、C−F結合が切断され、得られる生成物のフッ化水素(HF)が緩衝溶液でトラップされ、フッ化物イオン電極で測定される。この方法によって得られた総フッ素レベルは血清試料中の総有機フッ化物を反映しており、それを表2に報告する。
【0038】
こうしたデータは、HFPOアルコールの比較例C1の場合、血清フッ素レベルの見かけの半減期が約4日であることを示している。平均分子量750g/モル以上のHFPOアルコールオリゴマー(実施例1〜5)は、総有機フッ素で測定して、投与後1日目または4日目に血清中で認められなかったが、これは、このようなより高い分子量のオリゴマーが比較例C1に比べて、生体利用度が比較的低いかまったくないことを示唆している。
【0039】
【表2】

【0040】
検出限界(LOD)は0.3ppmであり、したがってLODの1/2を使用する標準的なFDA手法を用いて、平均値を算出した。
【0041】
参考文献:
1. ヴァン・ゴッホ、H.(Van Gogh,H.)、「Pharm. Weeblad」、1966年、101巻、881〜898頁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式のフッ素化ポリエーテル
f−(Q−Tky (I)
[式中、Rfは分子量が約750g/モル〜約4000g/モルの1価または2価のペルフルオロ化ポリエーテル基を表し、Qは化学結合あるいは2価または3価の有機結合基を表し、Tは−C(O)F、−CO23(ここで、R3は水素、低級アルキル、シクロアルキルまたはアルカノールである)、−C(O)N(R1)(R2)(ここで、R1およびR2は独立に、低級アルキル、シクロアルキルまたはアルカノールである)、−OH、−SH−および−NH2からなる群から選択され、kは1または2であり、yは1または2である]、またはその混合物を含む、フルオロケミカル組成物。
【請求項2】
式(I)のRfが次式
f1−(O−Rf2−(Rf3qy
[式中、Rf1はペルフルオロ化アルキルまたはアルキレン基であり、Rf2は1、2、3または4個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキレンオキシ基あるいはこのようなペルフルオロ化アルキレンオキシ基の混合物からなるペルフルオロ化ポリアルキレンオキシ基であり、Rf3はペルフルオロ化アルキレン基であり、qは0または1であり、yは1または2である]
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
f2が次式
−[CF(CF3)−CF2−O]n
[式中、nは3〜23の整数である]
である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
f3がCF(CF3)であり、qが1であり、Rf2が次式
−[CF(CF3)−CF2O]n
[式中、nは3〜23の整数である]
である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
Tがヒドロキシ基およびアミノ基からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
Tが−C(O)F、−CO23(ここで、R3は水素、低級アルキル、シクロアルキルまたはアルカノールである)、−C(O)N(R1)(R2)(ここで、R1およびR2はそれぞれ独立に、低級アルキル、シクロアルキルまたはアルカノールである)からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)の前記フッ素化ポリエーテルが次式
f1−(O−([CF(CF3)−CF2O]n−CF(CF3)−Q−Tky
[式中、Rf1はペルフルオロ化アルキルまたはアルキレン基を表し、nは3〜23の整数であり、Qは化学結合あるいは2価または3価の有機結合基であり、Tはヒドロキシまたはアミノであり、kは1または2であり、yは1または2である]
に対応する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記有機結合基Qがアルキレン、オキシアルキレン、アミノアルキレン、アミドアルキレン、カルボキシアルキレンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
yが1である、請求項1に記載の組成物。

【公開番号】特開2011−252018(P2011−252018A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−179030(P2011−179030)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【分割の表示】特願2004−565155(P2004−565155)の分割
【原出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】