説明

フッ素化有機ケイ素コーティング材料

ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を含有するコーティング、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を製造する方法、及びペルフルオロポリエーテルケイ素コーティングを製造する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を含有するコーティング、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を製造する方法、及びペルフルオロポリエーテルケイ素コーティングを製造する方法に関する。
【0002】
[関連出願]
本願は、2005年5月23日付で出願された米国特許仮出願第60/683,624号(参照により本明細書に援用される)に対する優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
重合性両親媒性分子及び加水分解性アルキルシランは、種々の表面上に薄膜を形成するのに使用される。薄膜は、多種多様の有用な目的を有する。例えば、薄膜は、耐引っかき性のためにレンズ上に、又は防食のために金属上に形成され得る。
【0004】
撥油コーティング及び撥水コーティングは、基体にフッ素化シランを塗布することによって或る特定の基体に設けることができる。塗布されたフッ素化シランは多くの場合、触媒を伴った加熱によって硬化して、基体に化学的に固着する。いくつかの例では、撥油コーティング及び撥水コーティングの耐久性が問題となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フッ素化シランを基体に塗布することに関する1つの問題は、フッ素化シランが長期間の保存寿命を有することができない点である。別の問題は、多くの場合、フッ素化シランが基体上へのコーティング前に高剪断混合を必要とする点である。多くのフッ素化シラン組成物は高固形分を有するため、コーティングが厚くなる。これは、薄いコーティングが所望される際に問題となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[概要]
本発明のいくつかの態様の基本的な理解を提示するために、以下で本発明の簡潔な概要を述べる。この概要は、本発明の広範な概略を示すものではない。本発明の重要な又は決定的な要素を明確にすることも、本発明の範囲を正確に概説することも意図していない。むしろ、この概要の目的は、以後に述べられる詳細な説明の前置きとして、本発明のいくつかの概念を簡潔に述べることに過ぎない。
【0007】
本発明は、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を製造する好適且つ単純な方法、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を含有する疎水性コーティング、及びペルフルオロポリエーテルケイ素コーティングを製造する有効な方法を提供する。
【0008】
上述及び関連の目的の達成のために、本発明は、以後に十分に説明される特徴及び特許請求の範囲において特に指摘される特徴を含む。以下の説明及び添付の図面は、本発明の或る特定の例示的な態様及び実施態様を詳細に説明するものである。しかしながら、これらは、本発明の原理が使用され得る様々な方法のほんのいくつかを示しているに過ぎない。本発明の他の目的、利点及び新規な特徴は、図面と併せて考慮すれば以下の本発明の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[詳細な説明]
分岐鎖又は非分岐鎖であるペルフルオロエーテルの1つの末端を、官能化し、次にアリル化合物等の炭化水素含有化合物と反応させ、その後シランによりヒドロシリル化して、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物が生成される。ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物は、眼鏡用の耐引っかき性コーティング等のガラスコーティングとして使用することができる。
【0010】
一実施形態において、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物は、式I:
SiHOCHZ (I)
(式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アリール、アリールオキシ、置換アリール(これらは全て約1〜約20個の炭素原子を含有する)、ハロゲン、ヒドロキシ及びアセトキシであり、Rは、約2〜約10個の炭素原子を含有するアルキルであり、Zは、約2〜約2,000個の炭素原子を含有するフッ素化アルキルエーテルであり、mは約1〜約3であり、nは0〜約2であり、m+nは3である)で表わされる。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。別の実施形態では、Rはそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ(これらは全て約2〜約10個の炭素原子を含有する)であり、Rは、約2〜約5個の炭素原子を含有するアルキルであり、Zは、約5〜約1,500個の炭素原子を含有するフッ素化アルキルエーテルであり、mは約2〜約3であり、nは0〜約1であり、m+nは3である。フッ素化アルキルエーテルは、分岐鎖又は非分岐鎖であってもよい。式Iの二量体化合物も、可能なペルフルオロポリエーテルケイ素化合物(RSiHOCHZCHORSiH)である。
【0011】
別の実施形態において、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物は、式IIa:
SiCHCHCHOCHZ (IIa)
(式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アリール、アリールオキシ、置換アリール(これらは全て約1〜約20個の炭素原子を含有する)、ハロゲン、ヒドロキシ及びアセトキシであり、Zは、約2〜約2,000個の炭素原子を含有するフッ素化アルキルエーテルである)で表わされる。別の実施形態では、Rはそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ(これらは全て約2〜約10個の炭素原子を含有する)であり、Zは、約10〜約1,500個の炭素原子を含有するフッ素化アルキルエーテルである。フッ素化アルキルエーテルは、分岐鎖又は非分岐鎖であってもよい。ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物はまた、式IIb:
SiCHCHCHOCHZCHOCHCHCHSiR (IIb)
(式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アリール、アリールオキシ、置換アリール(これらは全て約1〜約20個の炭素原子を含有する)、ハロゲン、ヒドロキシ及びアセトキシであり、Zは、約2〜約2,000個の炭素原子を含有するフッ素化アルキルエーテルである)で表されるもの等の、式IIaの二量体化合物であってもよい。別の実施形態では、Rはそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ(これらは全て約2〜約10個の炭素原子を含有する)であり、Zは、約5〜約1,500個の炭素原子を含有するフッ素化アルキルエーテルである。フッ素化アルキルエーテルは、分岐鎖又は非分岐鎖であってもよい。
【0012】
ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物のフッ素化アルキルエーテル部分、多くの場合、上記式中の「Z」部分は、フッ化炭素エーテル繰り返し単位を含有する。列挙すべき例があまりにも多く存在するため、代表的な例として:
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rはそれぞれ独立して、CF、C、C、CF(CF、並びに類似のフッ化炭素基及びフッ化炭化水素基等の類似の基のいずれかであり、mはそれぞれ独立して約2〜約300であり、nはそれぞれ独立して約1〜約5であり、pはそれぞれ独立して約0〜約5であり、qはそれぞれ独立して約0〜約5である)が挙げられる。別の実施形態では、mはそれぞれ独立して約5〜約100であり、nはそれぞれ独立して約2〜約4であり、pはそれぞれ独立して約1〜約4であり、qはそれぞれ独立して約1〜約4である。上記式のいずれかにおいて、フッ素化アルキルエーテル部分の全体的なペルフルオロの性質に影響を及ぼさない水素原子によるフッ素原子の偶発的な置換は許容可能である。
【0015】
一実施形態において、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物は、ケイ素原子のペルフルオロポリエーテルリガンド中にアミド部分(−CONH−)を含有していない。ケイ素原子のペルフルオロポリエーテルリガンドに伴うアミド部分は、多くの場合、熱不安定性を有する化合物をもたらすおそれがあるため、本発明のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物は高温安定性に優れている。
【0016】
一般的に言えば、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物は、ヒドロカルビル化ペルフルオロエーテルをヒドロシリル化することによって生成することができる。ヒドロカルビル化ペルフルオロエーテルの例は、DuPontから入手可能なKRYTOXアリルエーテルである。あるいは、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物は、官能化ペルフルオロポリエーテルをヒドロカルビル化することによりヒドロカルビル化ペルフルオロエーテルとし、その後ヒドロシリル化することによって、製造することができる。
【0017】
官能化させた後、アリル化合物等の炭化水素含有化合物と反応したペルフルオロエーテルは、上記のフッ素化アルキルエーテル部分に対応する化合物である。例えば、式(III)〜式(VIII)におけるフッ素化アルキルエーテルの場合、ペルフルオロエーテル出発材料は、式(XIV−III)〜式(XIX−VIII):
【0018】
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0019】
(式中、Rはそれぞれ独立して、CF、C、C、CF(CF、並びに類似のフッ化炭素基及びフッ化炭化水素基等の類似の基のいずれかであり、Rは上記の通りであり、mはそれぞれ独立して約2〜約300であり、nはそれぞれ独立して約1〜約5である)で表される任意の化合物の1つ又は複数であってもよい。別の実施形態では、mはそれぞれ独立して約5〜約100であり、nはそれぞれ独立して約2〜約4である。各化学式の左側の6種類の末端基(FOC−、RC−、RO−、HOC−、HOHC−及びFO−)をそれぞれ、式(III)〜(XIII)のそれぞれに付与して、ペルフルオロエーテルのさらなる例を提供することができる。ペルフルオロエーテルの全体的なペルフルオロの性質に影響を及ぼさないペルフルオロエーテル出発材料中の水素原子によるフッ素原子の偶発的な置換は、許容可能である。
【0020】
いくつかのペルフルオロエーテルは、例えば、KRYTOXペルフルオロエーテルの商品名でduPontから、FOMBLIN流体、FLUOROLINK流体及びGALDEN流体の商品名でAusimont/Montedison/Solvayから、DEMNUM流体及びDEMNUMグリースの商品名でDaikin Industriesから市販されている。KRYTOXペルフルオロエーテルはCFCFCFO−[CFCFCFO]−CFCFCFCOOH一酸の化学式を有し、FOMBLIN流体はHOOC−CFO−[CFCFO]−[CFO]CFCOOH二酸の化学式を有し、DEMNUM流体はCFCFCFO−[CFCFCFO]−CFCFCOOH一酸(式中、m及びnは上記で定義された通りである)の化学式を有すると考えられる。
【0021】
好ましくは、使用される特定のペルフルオロエーテル出発材料にかかわらず、出発材料は、既知の有機合成技法を用いて処理され、以下の:
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、R、m及びnは上記で定義された通りである)等のアルコールペルフルオロエーテルを生成する。また、式(III)〜式(XIII)のいずれかが処理されて、対応するアルコールペルフルオロエーテル(式の左側にCHOH基を有する式(III)〜式(XIII)の化合物)を生成することが理解される。
【0024】
ペルフルオロエーテル及び好ましくはアルコールペルフルオロエーテルは、所定のペルフルオロエーテルを、低級アルキルアルコール(C1〜C5)(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、アミルアルコール)等のアルコール、アルカリ金属アルコラート(例えば、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート及びナトリウムイソプロピラート)等の金属低級アルキルアルコラート、又は金属(アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属)のフッ素化物と化合させることによって官能化することができる。金属低級アルキルアルコラートを使用する場合、対応するアルコールが、副生成物として(アルコラートに対応して)生成され、得られる官能化ペルフルオロエーテルは金属アルコラートペルフルオロエーテルである。例えば、式(XIX−III)〜式(XIX−VIII)の金属アルコラートペルフルオロエーテルは、以下の式:
【0025】
【化8】

【0026】
(式中、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属等の金属であり、R、m及びnは上記で定義した通りである)を有するものである。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルテニウム、セシウム、マンガン、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等が挙げられる。また、式(III)〜式(XIII)及びそれらに対応する式(XIV)〜式(XIX)のいずれかは処理されて、対応する金属アルコラートペルフルオロエーテル(式の左側にCHOM基を有する式(III)〜式(XIII)の化合物)を生成し得ることが理解される。
【0027】
金属アルコラートペルフルオロエーテル又はアルコールペルフルオロエーテル等の官能化ペルフルオロエーテルを、アリル化合物又はスチレン化合物等の炭化水素含有化合物と接触させる。官能化ペルフルオロエーテルのヒドロカルビル化を行うことにより、シラン化合物に対するペルフルオロエーテルのその後の結合が容易になる。例えば、アリル化合物は、
【0028】
【化9】

【0029】
(式中、Xは、ハロゲン又はヒドロキシ等の反応性基であり、Rは水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アリール、アリールオキシ、置換アリール(これらは全て約1〜約20個の炭素原子を含有する)、ハロゲン、ヒドロキシ及びアセトキシである)で表わされ得る。
【0030】
いくつかのヒドロカルビル化ペルフルオロエーテルは、例えば、KRYTOXアリルエーテルの商品名でDuPontから市販されている。さらに、このような化合物の合成は、米国特許第6,753,301号(参照により本明細書に援用される)に記載されている。アリルエーテルを製造すると共に処理する方法も、Howell他の「New derivatives of poly-hexafluoropropylene oxide from the corresponding alcohol、Journal of Fluorine Chemistry, 126 (2005) 281-288」(参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0031】
ヒドロカルビル化ペルフルオロエーテルを、好ましくは触媒の存在下でシラン化合物と接触させることによってヒドロシリル化させて、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を生成する。シラン化合物の例は、式(XXII)
SiH (XXII)
(式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アリール、アリールオキシ、置換アリール(これらは全て約1〜約20個の炭素原子を含有する)、ハロゲン、ヒドロキシ及びアセトキシであり、mは約2〜約3であり、nは1〜約2であり、m+nは4である)で表される。別の実施形態では、Rはそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アリール、アリールオキシ、置換アリール(これらは全て約1〜約20個の炭素原子を含有する)であり、mは約3であり、nは約1である。この観点から、トリオルガノシランをシラン化合物として使用することができる。
【0032】
シラン化合物の例としては、ジイソプロペノキシメチルシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジプロポキシメチルシラン及びジブトキシメチルシラン等のジアルコキシアルキルシラン;トリイソプロペノキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリブトキシシラン等のトリアルコキシシラン;トリクロロシラン、アルキルジクロロシラン等のジハロシラン及びトリハロシランが挙げられる。何百ものさらなる例は、簡潔にするために列挙していない。
【0033】
任意の好適な触媒を使用して、ヒドロシリル化反応を促進させることができる。ヒドロシリル化触媒の例としては、白金含有触媒、例えば、白金黒、シリカ担持白金、炭素担持白金、HPtCl等の塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金/オレフィン錯体、白金/アルケニルシロキサン錯体、白金/β−ジケトン錯体、及び白金/ホスフィン錯体等;パラジウム含有触媒、例えば、炭素担持パラジウム及び塩化パラジウム等;ニッケル含有触媒;ロジウム触媒、例えば、塩化ロジウム、及び塩化ロジウム/ジ(n−ブチル)硫化物錯体等;クロム触媒;並びに、他の貴金属触媒等が挙げられる。
【0034】
ヒドロシリル化反応は、当該技術分野で既知の方法、例えばSpeierの「Homogenous catalysis of hydrosilation by transition metals、Advances in Organometallic Chemistry, vol.17, pp 407-447, 1979」(参照により本明細書に援用される)を用いて実行することができる。
【0035】
具体的な反応スキームの一例は以下の通りである。
【0036】
【化10】

【0037】
(式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アリール、アリールオキシ、置換アリール(これらは全て約1〜約20個の炭素原子を含有する)、ハロゲン、ヒドロキシ及びアセトキシであり、Zは、約2〜約2,000個の炭素原子を含有するフッ素化アルキルエーテルである)
【0038】
ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物に関する利点は、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を製造する方法が、最終生成物の比較的大きい収率を有することである。一実施形態において、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を製造する方法は、%収率が約90%以上である。別の実施形態では、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を製造する方法は、%収率が約95%以上である。さらに別の実施形態では、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を製造する方法は、%収率が約97%以上である。
【0039】
製造されると、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物は、容器、アンプル内に保存されるか、るつぼ内に置かれるか、又は多孔質キャリア上および/又は多孔質キャリア中に組み込まれてコーティングプロセスを促進させる複合体を形成する。多孔質キャリア複合体は、気密容器内で又は別様に保護された容器内で保存され得る。多孔質キャリアはスポンジのように機能し、および/又はスポンジのように見え得る。
【0040】
ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物の保存、及び/又は容器、アンプル、るつぼ又は多孔質キャリアへの装填を容易にするために、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を任意で溶媒と組み合わせてもよい。ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物が、多孔質キャリア全体にわたって実質的に均質に分散することが望ましい。
【0041】
ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物と組み合わされ得る溶媒は通常、無極性有機溶媒である。このような溶媒としては一般的に、イソプロパノール等のアルコール;シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサン等のアルカン;トルエン、トリフルオロトルエン等の芳香族化合物;アルキルハロシラン、アルキル又はフルオロアルキル(fluoralkyl)置換シクロヘキサン;エーテル;ペルフルオロヘキサン等のペルフルオロ液体;並びに、他の炭化水素含有液体が挙げられる。ペルフルオロ液体の例としては、3Mから入手可能な商品名Fluorinert(商標)及びNovec(商標)が挙げられる。ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を1つ又は複数の溶媒と組み合わせる際、任意で熱を加えることによって、均質な混合物の形成が促される。
【0042】
コーティング触媒及び/又は失活剤を、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物、又はペルフルオロポリエーテルケイ素化合物と溶媒との混合物と混合して、コーティングプロセスを促進させることができる。コーティング触媒としては、塩化亜鉛及び塩化アルミニウム等の金属塩化物、並びに鉱酸が挙げられる、失活剤としては、亜鉛粉末及びアミンが挙げられる。コーティング触媒及び/又は失活剤はそれぞれ、約0.01重量%〜約1重量%の量で、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物、又はペルフルオロポリエーテルケイ素化合物と溶媒との混合物中に存在する。
【0043】
ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物と溶媒との混合物を含有する容器、アンプル、るつぼ又は多孔質キャリアを任意の好適な手段によって処理して、溶媒又は実質的に全ての溶媒を除去することができる。例えば、気化又は真空蒸留を使用してもよい。溶媒を除去した後、重量が一定になるまで熱を加える。この場合、約40〜約100℃の温度の加熱が有用である。ほとんどの場合、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物は固化するか、半固体となるか又は低粘性液体となり、容器、アンプル、るつぼ又は多孔質キャリアの孔に保持される。
【0044】
容器、アンプル、るつぼ又は多孔質キャリアは、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物に対して不活性な任意の材料、例えば、磁器、ガラス、パイレックス、金属、金属酸化物及びセラミックから作製され得る。多孔質キャリアを形成し得る材料の具体例としては、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、アルミニウム、黄銅、青銅、クロム、銅、金、鉄、マグネシウム、ニッケル、パラジウム、白金、炭化ケイ素、銀、ステンレス鋼、スズ、チタン、タングステン、亜鉛、ジルコニウム、Hastelloy(登録商標)、Kovar(登録商標)、Invar、Monel(登録商標)、Inconel(登録商標)、及び種々の他の合金のうちの1つ又は複数が挙げられる。
【0045】
多孔質キャリアの例としては、Mott Corporationから入手可能な商品名Mott Porous Metal、Filtros Ltd.から入手可能な商品名Kellundite、並びにProvair Advanced Materials Inc.から入手可能なMetal Foam、Porous Metal Media及びSinterflo(登録商標)の商品名のものが挙げられ、多孔質キャリアを使用する方法は、米国特許第6,881,445号(参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0046】
コーティング技法は、減圧、高温、照射及び電力の少なくとも1つの下、チャンバ又は閉鎖環境内で容器、アンプル、るつぼ中又は多孔質キャリア上のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物に基体を曝すことを伴う。好ましくは、減圧及び/又は高温を用いる。課される減圧、高温、照射及び/又は電力は、チャンバ雰囲気中へのペルフルオロポリエーテルケイ素化合物の気化又は昇華、及び基体表面における一様且つ連続的なその後の自己組織化及び/又は自己重合を引き起こし、疎水性コーティングを形成する。別法では、ディッピング、浸漬、(例えば、布を用いた)ワイプオン(wipe-on:塗りつけ)法、ブレードを用いたコーティング等によって、基体をペルフルオロポリエーテルケイ素化合物に曝す。
【0047】
一実施形態において、(特に真空とすることなく)約0.000001〜約760torrの圧力下で基体をペルフルオロポリエーテルケイ素化合物に曝す。別の実施形態では、約0.00001〜約200torrの圧力下で基体をペルフルオロポリエーテルケイ素化合物に曝す。さらに別の実施形態では、約0.0001〜約100torrの圧力下で基体をペルフルオロポリエーテルケイ素化合物に曝す。
【0048】
一実施形態において、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を約20〜約400℃の温度に加熱する。別の実施形態では、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を約40〜約350℃の温度に加熱する。さらに別の実施形態では、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を約50〜約300℃の温度に加熱する。ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物は、コーティングの形成を誘起させるために上記の温度である必要があるに過ぎない。基体は、チャンバ内においてペルフルオロポリエーテルケイ素化合物とおよそ同じか又は異なる温度である。ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物は、チャンバの雰囲気とおよそ同じか又は異なる温度である。基体は、チャンバの雰囲気とおよそ同じか又は異なる温度である。一実施形態において、基体、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物及び雰囲気はそれぞれ、約20〜約400℃の温度である。
【0049】
コーティング形成技法の一般的な例としては、(コーティング溶液中への)ディッピング、湿式塗布(噴霧、塗りつけ、印刷、スタンプ);蒸着;真空蒸着;真空コーティング;ボックスコーティング(box coating);スパッタコーティング;蒸着又は化学蒸着(CVD)、例えば低圧化学蒸着(LPCVD)、プラズマ促進化学蒸着(PECVD)、高温化学蒸着(HTCVD);及びスパッタリングが挙げられる。このような技法は、当該技術分野で既知であり、簡潔にするために説明していない。
【0050】
蒸着/化学蒸着技法及びプロセスは、例えば、Thin Solid Films, 1994, 252, 32-37; Vacuum technology by Ruth A. 3rd edition, Elsevier Publication, 1990, 311-319; Appl. Phys. Lett. 1992, 60, 1866-1868; Polymer Preprints, 1993, 34, 427-428;米国特許第6,265,026号;同第6,171,652号;同第6,051,321号;同第5,372,851号;及び同第5,084,302号の文献(これらの文献は、コーティングを形成すること又は有機化合物を基体上に蒸着させることについての教示に関して参照により本明細書に援用される)に広範に開示されている。
【0051】
別の実施形態では、溶液中の1つ又は複数のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を用いて、コーティング溶液の環境条件において浸漬又は濡れた布を用いるワイプオンによって基体表面を接触させることで薄膜を形成することができる。ペルフルオロヘキサン等の不活性溶媒中にペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を約0.001重量%〜約5重量%の濃度で希釈させることによって、コーティング溶液を作製する。コーティング溶液は代替的には、約0.01重量%〜約1重量%の1つ又は複数のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を含有し得る。清潔なティッシュペーパーで基体を拭き取ることによって過剰なポリマーを除去し、その後、空気硬化して、基体表面上に薄膜ポリマーの高度に架橋されたネットワークを得る。
【0052】
ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物及び/又はペルフルオロポリエーテルケイ素化合物から形成される膜は反応性ヒドロキシル基を有し、これは、基体との化学結合(水素及び/又は共有)に関係するようになる。基体表面が水分(空気中の水分子)と反応するため、層の自己組織化に類似する表面との共有結合を行うことにより、永久的且つ透明な均一薄膜コーティングが得られ、これは、優れた疎水性/疎油性を有する。
【0053】
本発明のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物、方法及び組成物は、基体上に疎水性薄膜又はコーティングを設けるのに有益である。本発明のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物、方法及び組成物はまた、基体上に1つ以上の種類の膜/コーティング、例えば、保護膜、防食コーティング、耐摩耗性コーティング、汚れ防止膜(基体表面がきれいなままであることを目的とする)を設けるのに有益である。
【0054】
基体としては、多孔質表面及び無孔質表面を有するもの、例えば、ガラス、セラミック、磁器、ガラス繊維、金属、ポリカーボネート等の熱硬化性樹脂及び熱可塑材を含む有機材料、並びにセラミックタイルが挙げられる。さらなる有機材料としては、ポリスチレン及びその混合ポリマー、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリプロピレン、ポリアクリル酸化合物、ポリビニル化合物(例えば、ポリ塩化ビニル及びポリ酢酸ビニル)、ポリエステル及びゴム、またビスコースから成るフィラメント、セルロースエーテル、セルロースエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル(例えばポリグリコールテレフタレート)、及びポリアクリロニトリルが挙げられる。
【0055】
ガラスとしては特に、眼鏡用レンズ等のレンズ、顕微鏡のスライドガラス、装飾ガラス片、プラスチックシート、ミラーガラス、紙、セラミックタイル又は大理石タイル、車両/自動車用の窓、シャワードア、建造物用の窓及びドア、双眼鏡用レンズ、顕微鏡用レンズ、望遠鏡用レンズ、カメラ用レンズ、ビデオ用レンズ、テレビ画面、コンピュータ画面、LCD、鏡、及びプリズム等が挙げられる。
【0056】
基体上に形成されるコーティングは一般的に、基体の一部分において(疎水性コーティングが形成される場合、疎水性コーティングは均一に厚い)、基体上に均一な厚みを有する。一実施形態において、コーティングの厚みは単独で、約0.1nm〜約250nmである。別の実施形態では、コーティングの厚みは単独で、約1nm〜約200nmである。さらに別の実施形態では、コーティングの厚みは単独で、約2nm〜約100nmである。さらに別の実施形態では、コーティングの厚みは単独で、約5nm〜約20nmである。別の実施形態では、コーティングの厚みは単独で、約10nm以下である。コーティングの厚みは、蒸着パラメータを調節することによって制御することができる。
【0057】
本発明のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物、方法及び組成物に関する別の利点は、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を製造する方法及び使用する方法が環境汚染を実質的に伴わないため、環境保全上の利点が提供される点である。すなわち、ペルフルオロポリエーテルケイ素化合物を製造する方法は、溶媒を用いることなく(および/又は少量の有機溶媒を用いて)実施することができる反応を伴うため、反応により発生する廃棄物を最低限に抑えることによって環境を清浄に保つ。
【0058】
以下の実施例は、本発明を示すものである。特に指示がなければ、以下の実施例、並びに本明細書及び特許請求の範囲のいずれかにおいて、全ての部及びパーセンテージは重量に基づくものであり、全ての温度は摂氏に基づくものであり、圧力は気圧又は気圧に近いものである。
【実施例1】
【0059】
KRYTOX流体は、様々な分子量範囲(600〜20000)でE. I. du Pontから市販されている。例えば、KRYTOX 157FS(L)、(M)及び(H)を、PClによる処理によって酸塩化物に変換させ、その後、メタノールと反応させて、対応するメチルエステルを得た。このメチルエステルを、HowellによるJournal of Fluorine Chemistry 126 (2005) 281-288に発表されている方法に従い、2−プロパノール中の水素化ホウ素ナトリウムによって還元してアルコールとした。次に、当該アルコールを出発材料として、フッ素化有機ケイ素化合物を生成した。
【0060】
乾燥した100mL容の3つ口丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で0.9g(0.036mol)の水素化ナトリウムを充填した後、フラスコを、攪拌棒、温度計及び還流冷却器を備えるドラフトに移した。25g(0.0169mol)のKRYTOXアルコールKDP−4599(平均分子量1460)、及びその後50mLの無水THFを、反応の全過程の間、積極的なアルゴン雰囲気を維持し続けながら攪拌中に添加した。この反応混合物を加熱して沸騰させ、水素ガスが発生しなくなるまで加熱を続けた。冷却後、3.2mL(0.037mol)の臭化アリルを反応混合物に徐々に添加し5時間加熱した。水を用いて反応物を冷却し、徐々に分解させた(worked up by decomposing)。ペルフルオロヘキサン/FC−72 3Mフロリナート溶媒を添加して、有機相を分離した。水による洗浄の後、硫酸ナトリウムにより乾燥させ、溶媒を蒸留除去した。二重結合含有フッ素化有機ポリマー化合物、すなわち、いわゆるKYTOXアリルエーテルKDP 4599(平均分子量1460amu)の収率(98%)を得た。生成物を、IR及びNMRにかけ、パーセント変換率を得た。
IR(NaCl、cm−1)Vmax:アルコール(図1)及びアリルエーテル(図2)。
H NMR(300MHz、C/C):アルコール(図3)及びアリルエーテル(図4)。
【実施例2】
【0061】
商品名FOMBLlN及びFLUOROLINKの市販の二官能性アルコールをSolvay Solexisから様々な分子量範囲で手に入れ、例えば、全て適正な(true)官能性又は単官能性の不純物を有するZdol−2000、Zdol 4000、FLK D 2000、FLK D 4000、FLK E10H及びFLK Eを、実施例1と同様に水素化ナトリウムで処理して、対応するアリルエーテルに変換した以外は、実施例1を繰り返した。
【実施例3】
【0062】
実施例1で用いた同一反応条件に従い、Daikinから入手可能なDEMNUM SHの商品名を有する別の市販用の出発材料をアリルエーテル誘導体に変換して、実施例1と同等の化合物のアリルエーテルを得ることができる。
【実施例4】
【0063】
アリルエーテル化合物を上記の実施例1、2及び3から得て、特定のシラン化合物によりヒドロシリル化反応を行うことができる。
【0064】
圧力反応容器に、窒素下で488gのKRYTOXアリルエーテルKDP−4599(分子量およそ1465)、0.8mLの触媒(0.097mmol)ヘキサクロロ白金酸水素、及び110mLのトリクロロシランを充填した。反応容器を窒素下で密閉し、165℃で6時間加熱した。この時間の間、NMRはオレフィンプロトンのシグナルを示さなかった。これを蒸留により精製し、95%を超える収率の純粋なフッ素化有機ケイ素(silicone)材料を得た。
IR:図5、NMR:図6
【実施例5】
【0065】
圧力反応容器に、窒素下で75gのKRYTOXアリルエーテルKDP−4599(分子量およそ4000)(IRに関して図13及びNMRに関して図14を参照)、0.1mLの触媒(0.012mmol)ヘキサクロロ白金酸水素、及び22mLのトリクロロシランを充填した。反応容器を窒素下で密閉し、175℃で8時間加熱した。この時間の間、NMRはオレフィン部分のシグナルを示さなかった。これを蒸留により精製し、95%を超える収率の純粋材料を得た。
IR:図7、NMR:図8
【実施例6】
【0066】
実施例4からの化合物をメタノールで処理して、トリメトキシフッ素化有機コーティング材料に変換した。実施例4からの60gの材料、20mLの無水メタノールをフラスコに添加し、アルゴン下で1時間加熱した。塩化水素ガスが発生しなくなった時点で、これに20mL量の無水メタノールをさらに2回添加した。これを、酸性でなくなるまで無水メタノールで数回洗浄し、透明から淡黄色の粘性油を得た。収率100%。
IR:図9、NMR:図10
【実施例7】
【0067】
実施例5からの化合物をメタノールで処理して、トリメトキシフッ素化有機コーティング材料に変換した。実施例5からの12gの材料、10mLの無水メタノールをフラスコに添加し、アルゴン下で1時間加熱した。塩化水素ガスが発生しなくなった時点で、これに20mL量の無水メタノールをさらに2回添加した。これを、酸性でなくなるまで無水メタノールで数回洗浄し、透明から淡黄色の粘性油を得た。収率100%。
IR:図11、NMR:図12
【実施例8】
【0068】
湿式コーティング法:
コーティング組成物を、全て3MからのペルフルオロヘキサンFC−72、FC77又はHFE7200中で、イソ−プロパノールと合わせて又はイソ−プロパノールを用いることなく、実施例5又は実施例6で調製した0.05〜0.1重量%のフッ素化有機材料を混合することによって調製した。これを、Pentax Vision, MN.から手に入れた、シリカのラストレイヤー(last layer)を有するベアガラス試験片又はARコーティングレンズ上で試験を行った。濡れたワイプクロスへの塗布を容易にするために、コーティング溶液を封止ポーチ内で含浸させた。コーティングは、ディップ塗布法を用いて形成した。結果を表1にまとめる。
【0069】
【表1】

【0070】
コーティングは、塗布のワイプオン法を用いて形成した。結果を表2にまとめる。
【0071】
【表2】

【実施例9】
【0072】
米国特許第6,881,445号に記載されるように、実施例4からのポリマーを多孔質キャリアに担持させ、ガラス(レンズ)基体をコーティングした。結果を表3にまとめる。
【0073】
【表3】

【実施例10】
【0074】
米国特許第6,881,445号に記載されているように、実施例5からのポリマーを多孔質キャリアに担持させ、基体をコーティングした。結果を表4にまとめる。
【0075】
【表4】

【比較例1】
【0076】
SATIN pillを用いてボックスコータSatis MC 380H内でレンズをコーティングした。結果を表5にまとめる。
【0077】
【表5】

【0078】
ボックスコータSatis MC 380H内で、実施例6のコーティングによりレンズをコーティングした。結果を表6にまとめる。
【0079】
【表6】

【0080】
所定の特徴に関する任意の数字又は数値範囲に関して、或る数字又は1つの範囲からのパラメータは、同一特徴に関する別の数字又は異なる範囲からのパラメータと組み合わせて、数値範囲を作り出すことができる。
【0081】
本発明は或る特定の実施形態に関して説明されているが、本発明の様々な変更形態は、本明細書を読み込むことによって当業者にとって明らかとなるであろうことを理解されたい。したがって、本明細書に開示される発明は、添付の特許請求の範囲内にあるような変更形態を網羅するものであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の1つの態様によるアルコールペルフルオロエーテルのIRスペクトルである。
【図2】本発明の1つの態様によるアルコールペルフルオロエーテルのNMRスペクトルである。
【図3】本発明の1つの態様によるヒドロカルビル化ペルフルオロエーテルのIRスペクトルである。
【図4】本発明の1つの態様によるヒドロカルビル化ペルフルオロエーテルのNMRスペクトルである。
【図5】本発明の1つの態様によるペルフルオロポリエーテルケイ素化合物のIRスペクトルである。
【図6】本発明の1つの態様によるペルフルオロポリエーテルケイ素化合物のNMRスペクトルである。
【図7】本発明の1つの態様による別のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物のIRスペクトルである。
【図8】本発明の1つの態様による別のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物のNMRスペクトルである。
【図9】本発明の1つの態様によるさらに別のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物のIRスペクトルである。
【図10】本発明の1つの態様によるさらに別のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物のNMRスペクトルである。
【図11】本発明の1つの態様によるさらに別のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物のIRスペクトルである。
【図12】本発明の1つの態様によるさらに別のペルフルオロポリエーテルケイ素化合物のNMRスペクトルである。
【図13】本発明の1つの態様によるヒドロカルビル化ペルフルオロエーテルのIRスペクトルである。
【図14】本発明の1つの態様によるヒドロカルビル化ペルフルオロエーテルのNMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
SiHOCHZ (I)
(式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アリール、アリールオキシ、置換アリール(これらは全て約1〜約20個の炭素原子を含有する)、ハロゲン、ヒドロキシ及びアセトキシであり、Rは、約2〜約10個の炭素原子を含有するアルキルであり、Zは、約2〜約2,000個の炭素原子を含有するフッ素化アルキルエーテルであり、mは約1〜約3であり、nは0〜約2であり、m+nは3である)
で表わされる、化合物。
【請求項2】
がプロピレン基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rがそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アリール、アリールオキシ、置換アリール(これらは全て約1〜約10個の炭素原子を含有する)、ハロゲン、ヒドロキシ及びアセトキシであり、Rが、約2〜約5個の炭素原子を含有するアルキルであり、Zが、約5〜約1,500個の炭素原子を含有するフッ素化アルキルエーテルであり、mが約2〜約3であり、nが0〜約1であり、m+nが3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rがそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アリール、アリールオキシ、置換アリール(これらは全て約1〜約10個の炭素原子を含有する)、ハロゲン、ヒドロキシ及びアセトキシであり、Zが、約5〜約1,500個の炭素原子を含有するフッ素化アルキルエーテルであり、mが約2〜約3であり、nが0〜約1であり、m+nが3である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
Zが、
【化1】


(式中、Rはそれぞれ独立して、CF、C、C、CF(CF、並びに類似のフッ化炭素基及びフッ化炭化水素基等の類似の基のいずれかであり、mはそれぞれ独立して約2〜約300であり、nはそれぞれ独立して約1〜約5であり、pはそれぞれ独立して約0〜約5であり、qはそれぞれ独立して約0〜約5である)
から成る群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
mはそれぞれ独立して、約5〜約100であり、nはそれぞれ独立して約2〜約4であり、pはそれぞれ独立して約1〜約4であり、qはそれぞれ独立して約1〜約4である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Zがアミド部分を含まない、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物を製造する方法であって、ヒドロシリル化触媒の存在下で、ヒドロカルビル化ペルフルオロエーテルをシラン化合物と接触させることにより請求項1に記載の化合物を生成する、方法。
【請求項9】
前記ヒドロカルビル化ペルフルオロエーテルが、官能化ペルフルオロエーテルを炭化水素含有化合物と接触させることによって生成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記官能化ペルフルオロエーテルが、金属アルコラートペルフルオロエーテル及びアルコールペルフルオロエーテルから成る群より選択される少なくとも1を含み、且つ前記炭化水素含有化合物が、アリル化合物及びスチレン化合物から成る群より選択される少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記官能化ペルフルオロエーテルが、FOC−、RC−、RO−、HOC−、HOHC−及びFO−から成る群より選択される少なくとも1つを含む末端基を有するペルフルオロエーテルから生成される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記シラン化合物が、式(XXII):
SiH (XXII)
(式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、アリール、アリールオキシ、置換アリール(これらは全て約1〜約20個の炭素原子を含有する)、ハロゲン、ヒドロキシ及びアセトキシであり、mは約2〜約3であり、nは1〜約2であり、m+nは4である)
で表される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記シラン化合物が、ジアルコキシアルキルシラン、トリアルコキシシラン、ジハロシラン及びトリハロシランから成る群より選択される少なくとも1つである、請求項8に記載の化合物を製造する方法。
【請求項14】
前記ヒドロシリル化触媒が、白金含有触媒、パラジウム含有触媒、ニッケル含有触媒、ロジウム触媒、及びクロム触媒から成る群より選択される少なくとも1つを含む、請求項8に記載の化合物を製造する方法。
【請求項15】
請求項2に記載の化合物を製造する方法であって、ヒドロシリル化触媒の存在下で、ヒドロカルビル化ペルフルオロエーテルをシラン化合物と接触させることにより請求項2に記載の化合物を生成する、方法。
【請求項16】
表面に(thereon)コーティングを有する基体であって、該コーティングが請求項1に記載の化合物を含む、基体。
【請求項17】
前記基体が、ガラス、セラミック、磁器、ガラス繊維、金属、有機熱硬化性樹脂、及び有機熱可塑材から成る群より選択される少なくとも1つを含む、請求項16に記載の表面にコーティングを有する基体。
【請求項18】
基体を請求項1に記載の化合物と接触させることを含む、基体上にコーティングを製造する方法。
【請求項19】
前記基体を前記化合物と接触させながら、熱を加えるか、又は圧力を低下させることをさらに含む、請求項18に記載の基体上にコーティングを製造する方法。
【請求項20】
溶液が、前記化合物と、不活性溶媒とを含む、請求項18に記載の基体上にコーティングを製造する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2008−545836(P2008−545836A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513608(P2008−513608)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/019843
【国際公開番号】WO2006/127664
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(504166336)イノベーション ケミカル テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】