説明

フッ素化環状オレフィン系グラフトポリマー

【課題】小さな電荷消失および高い電荷密度を有するフッ素化エレクトレット材料を得ることができるグラフトポリマーを提供する。
【解決手段】60℃から250℃のガラス転移温度および400から300000の分子量を有することを特徴とする環状オレフィンポリマーとその環状オレフィンポリマーにグラフトされたフルオロカーボンアルキル基とを含むグラフトポリマーおよび組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフトポリマーに関し、特にフッ素化環状オレフィン系グラフトポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
有機ポリマーは、エレクトレットなどの誘電体の製造に用いられている。有機ポリマーは、一般的には電荷注入によってエレクトレットに加工される。しかし、電荷注入によって作製されたエレクトレットは、ほこりおよび湿気による劣化を受けやすい表面電荷を生じさせることがある。そこで、電子ビームによる電荷注入により、表面より下に電荷を打ち込むことで、環境劣化を低減することが提案されている。
【0003】
従来のエレクトレットにはオレフィン系化合物と高分子化合物の組み合わせから製造されたものもある。特許文献1には、不飽和カルボン酸およびその誘導体から選択される少なくとも1つの変性モノマーと高分子化合物とのグラフト重合によって作製された環状オレフィン系樹脂および変性高分子化合物を含有する組成物が開示されている。特許文献2には、オレフィンと不飽和の部分フッ素化された官能モノマーとのコポリマーが開示されている。
【特許文献1】特開平8−41260号公報
【特許文献2】米国特許第6,107,422号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現在利用可能なフッ素化エレクトレット材料は、高い生産コスト、低い電荷保持力および低い構造強度のため、適用範囲および性能に制限があり、射出成形により加工することも難しい。
【0005】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、小さな電荷消失および高い電荷密度を有するフッ素化エレクトレット材料を得ることができるグラフトポリマーを提供することにある。
【0006】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、60℃から250℃のガラス転移温度および400から300000の分子量を有することを特徴とする環状オレフィンポリマーとその環状オレフィンポリマーにグラフトされたフルオロカーボンアルキル基とを含むグラフトポリマーを提供する。
【0008】
本発明は、10重量%から99.95重量%の熱可塑性樹脂と、0.05重量%から90重量%の前記グラフトポリマーとを含む組成物を提供する。
【0009】
本発明は、前記グラフトポリマーの層とそのグラフトポリマーの層上のパリレン膜とを含むエレクトレット膜を提供する。
【0010】
本発明は、式:
【0011】
【化1】

(式中、xは1から4、yは1から4、zは0.1から10、nは200から2000であり、Rfは少なくとも1個のフッ素原子を含有する炭素原子数1から30のフルオロカーボンアルキル鎖である)
を有する化合物を提供する。
【0012】
本発明は、前記化合物の層とその化合物の層の上のパリレン膜とを含むエレクトレット膜を提供する。
【0013】
本発明は、構造式:
【0014】
【化2】

(式中、xは1から4、yは1から4、zは0.1から10、nは200から2000であり、Rfは炭素原子数1から30のフルオロカーボンアルキル鎖である)
を有する化合物を提供する。
【0015】
本発明は、前記化合物の層とその化合物の層の上のパリレン膜とを含むエレクトレット膜を提供する。
【0016】
本発明は、10重量%から99.95重量%の熱可塑性樹脂と、0.05重量%から90重量%の上記式の少なくとも1つの化合物とを含む組成物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
すなわち、本発明によれば、電荷消失および高い電荷密度を有するフッ素化エレクトレット材料を得ることができるグラフトポリマーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施の形態は、60℃から250℃のガラス転移温度および400から300000の分子量を有する環状オレフィンポリマーを含むグラフトポリマーである。
【0020】
環状オレフィンポリマーは、その環状オレフィンポリマーのモノマーセグメントにフルオロカーボンアルキル基がグラフトされており、モノマーセグメントは、エチレン、プロピレン、α−オレフィンおよび環状オレフィンモノマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
環状オレフィンポリマーは、例えばブロックコポリマー、交互コポリマーまたはランダムコポリマーとして得ることができ、かつエチレン、プロピレン、炭素原子数4から16のα−オレフィンなどのモノマーまたはこれらの組み合わせと環状オレフィンモノマーとを共重合させることによって形成される環状オレフィンポリマーを含んでもよい。
【0022】
環状オレフィンモノマーとしては、特に制限はないが、例えば、ビシクロヘプテン、トリシクロデカエンおよびテトラクロロデセンが挙げられる。
【0023】
環状オレフィンモノマーは、重合反応中のモノマーに取り付けて、例えばフッ素原子、塩素原子または酸素原子をさらに含有してもよい。
【0024】
また、環状オレフィンモノマーは、任意の置換基としてアルキル基を含んでもよい。
【0025】
さらに、塩素原子、酸素原子または両方が、環状オレフィンポリマーおよびフルオロカーボンアルキル基上に存在してもよい。
【0026】
本発明の一実施の形態では、グラフトプロセスの前に環状オレフィンポリマーを活性化させる。環状オレフィンポリマーの活性化方法としては、特に制限はなく、UV照射、コロナ放電、電子ビーム、プラズマ、メタロセンまたはこれらの任意の組み合わせによる活性化方法が挙げられる。
【0027】
環状オレフィンポリマーは、活性化した後、不飽和モノマーを付加させて、その環状オレフィンポリマー上に側鎖を形成することができる。
【0028】
不飽和モノマーとしては、フルオロカーボンアルキル基が一般的であるが、本発明では特に制限はなく、他の部分フッ素化アルキル基またはパーフルオロアルキル基およびそれらの誘導体を、グラフトポリマーの側鎖を形成するための不飽和モノマーとして含んでもよい。
【0029】
不飽和モノマーは、その環状オレフィンポリマーのモノマーセグメントにグラフトさせる前に、ホモ重合してもよい。
【0030】
フルオロカーボンアルキル基は、式:CH=CH−RfまたはCH=CH−(CHCH−Rf’(これらの式中、nは1または2であり、RfおよびRf’はいずれも、炭素原子数1から30のフルオロカーボンアルキル鎖を含む)を有する非環状アルキル鎖または環状アルキル鎖を含む。
【0031】
本発明の他の一実施形態は、構造式:
【0032】
【化3】

(式中、xは1から4の整数、yは1から4の整数、zは0.1から10の整数、nは200から2000の整数であり、Rfは少なくとも1個のフッ素原子を含有する炭素原子数1から30のフルオロカーボンアルキル鎖である)
を有する化合物である。
【0033】
フルオロカーボンアルキル基は、例えば、式:CH=CH−RfまたはCH=CH−(CHCH−Rf’(これらの式中、nは1または2であり、RfおよびRf’は炭素原子数1から30のフルオロカーボンアルキル鎖を含む)を有する非環状または環状アルキル鎖を含む。
【0034】
本発明のさらに他の一実施形態は、構造式:
【0035】
【化4】

(式中、xは1から4の整数、yは1から4の整数、zは0.1から10の整数、nは200から2000の整数であり、Rfは炭素原子数1から30のフルオロカーボンアルキル鎖である)
を有する化合物である。
【0036】
本発明のグラフトポリマーは、上の式の化合物に限定されず、類似の構造を有する他のフッ化環状オレフィンポリマー、コポリマーまたはそれらの誘導体も本発明の範囲に包含される。
【0037】
本発明のグラフトポリマーの特性は、多数の従来技術を採り入れることにより決定することができる。
【0038】
本発明のグラフトポリマーの固有粘度は、グラフトポリマーを約25℃でデカリンなどの溶媒に溶解して、決定することができ、その固有粘度は例えば、約0.2から60dL/gである。
【0039】
本発明のグラフトポリマーの分子量は、従来のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができ、約300から300000である。
【0040】
本発明のグラフトポリマーのフッ素含量は、例えば約0.5から60重量%である。
【0041】
本発明のグラフトポリマーのガラス転移温度(Tg)は、約60から約150℃であり、融点は約90℃から約250℃である。
【0042】
また、本発明のグラフトポリマーの側鎖の含有量は、例えばそのグラフトポリマーの主鎖に対して0.1から150重量%である。
【0043】
本明細書に記載のグラフトポリマーまたは類似の化合物は、一般に熱可塑性樹脂とブレンドすることができる。ブレンドするのに適する熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリスチレン、環状オレフィンコポリマー、熱可塑性エラストマー、ならびにこれらのコポリマー、誘導体および組み合わせが挙げられる。
【0044】
このため、本発明の他の一実施形態は、約10重量%から約99.95重量%の熱可塑性樹脂と、約0.05重量%から約90重量%の上述したグラフトポリマーまたは類似の化合物とを含む組成物を含む。
【0045】
本発明のグラフトポリマーの自由体積サイズは、例えば約1nmと、約0.5nmの自由体積サイズを有する従来のポリマーと比較して、大きい自由体積サイズを有する。その結果、こうしたグラフトポリマーで製造したポリマーエレクトレットは、高い電荷密度および低い電荷消失率を有する。
【0046】
また、本発明のグラフトポリマーは、均一な微孔性構造および低い誘電率を有し得る。このため、本発明のグラフトポリマーを含む、より小型のエレクトレット構造を製造することができる。本発明のグラフトポリマーから製造したポリマーエレクトレットの厚さは、例えば約1から10μmである。
【0047】
本発明のグラフトポリマー、そのコポリマーまたは組成物で製造したエレクトレットは、様々な装置の製造に適用することができる。
【0048】
その用途としては、例えば、フィルタ、音響用途、エレクトレットモーター、太陽電池、エアフィルタ、線量計および電子写真技術が挙げられる。
【0049】
フィルタとしては、例えば、ウィルスフィルタおよびエアロゾルフィルタも一部として含めることができる。
【0050】
音響用途としては、このエレクトレットをエレクトレットコンデンサ、シリコンエレクトレットコンデンサ、拡声器(音声ビーム)、超音波用途、水中聴音器およびヘッドホンに組み込むことができる。
【0051】
電子デバイスとしては、例えば、SAWフィルタ、エレクトレット継電器、電気光学スイッチおよび変換器の製造に適用することができる。
【0052】
電子写真技術としては、例えば、このエレクトレットは、電子写真装置および静電記録装置に含めることができる。
【0053】
また、本発明のグラフトポリマーは、パリレン膜でさらにコーティングして、フッ素化環状オレフィンエレクトレット膜を形成することができる。
【0054】
パリレン膜は、パリレンN、パリレンDおよびパリレンCのうちの少なくとも1つを含む。パリレンは、一般に、パラ−キシリレンまたはその置換誘導体の重合によって製造される。
【0055】
パリレン膜は、例えば当業者に公知の蒸着法または堆積法によって形成することができる。
【0056】
パリレン膜は、他のパラ−キシリレンモノマーおよび置換誘導体を含んでもよく、例えば、パラ−キシリレン芳香族環として、シアノ基、オルト−ジシアノ基、クロロ基またはジクロロ置換基が挙げられ、パラ−キシレン上にはフッ素原子、塩素原子またはこれらの組み合わせがあってもよい。これらの原子は、パラ−キシリレン中のメチレン基の水素原子と置換基してもよいし、パラ−キシリレンのメチレン基または他の官能基に化学結合によって取り付けてもよい。
【実施例】
【0057】
次に、実施例を用いてより具体的に、本発明の構成により得られる効果等を説明する。勿論、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
グラフトコポリマーの調製
20グラムの市販環状オレフィンポリマーTopas 8007(30mL/10分のボリュームメルティングインデックス(volume melting index))を100mLガラスフラスコ内でトルエンに溶解した。油ポンプを用いて減圧下でそのフラスコを排気した。
【0059】
その後、窒素ガスをフラスコに導入し、フラスコを少なくとも3回、再び排気した後、フラスコを封止した。そのフラスコにコバルト60(Co−60)を25kGyの照射線量で照射した。
【0060】
Co−60が照射されたポリマーに、トリイソブチルアルミニウム(10mmol)、100mLのヘプタンおよび有機ジルコニウムジクロリド(100μmol)を、窒素ガス雰囲気下の3リットルステンレス鋼オートクレーブ内で添加した。オートクレーブを閉じた後、その混合物を機械攪拌によって60℃に加熱し、続いて不飽和モノマーとしての1H,1H,1H−パーフルオロ−1−ヘキサン8グラムを混合物に注入して、重合反応を開始させ、この重合反応を60℃で3時間行った。
【0061】
重合した混合物を濾過し、ヘプタンで数回洗浄した後、30mmHgの下で約5時間乾燥させて、約27グラムのグラフトポリマー生成物を得た。
【0062】
得られたグラフトポリマー収率は、原環状オレフィンポリマーの33重量%であった。グラフトポリマーの重量(W)は、次の式によって計算した。
【0063】
W=[(グラフトポリマーの重量−環状オレフィンポリマーの重量)/環状オレフィンポリマーの重量]×100%
サンプル1196と標識したグラフトポリマーは、図1のESCAスペクトルより、約19mL/10分のメルティングインデックスおよび約33.3重量%のフッ素含量を有していると推定された。
【0064】
図1に示すように、フッ素原子および炭素原子は、それぞれ700eVおよび300eVの結合エネルギーを有していた。また、このグラフトポリマーのフルオロカーボン鎖についてのFT−IR吸収は、約1245から1250cm−1であると測定された。
【0065】
(実施例2)
グラフトコポリマーの調製
20グラムの市販環状オレフィンポリマーTopas 6015(4mL/10分のボリュームメルティングインデックス)を100mLガラスフラスコ内でトルエンに溶解し、油ポンプを用いて減圧下でそのフラスコから排気した。
【0066】
その後、窒素ガスをそのフラスコに導入し、フラスコを少なくとも3回、再び排気した後、フラスコを封止した。そのフラスコにコバルト60(Co−60)を25kGyの照射線量で照射した。
【0067】
Co−60が照射されたポリマーに、トリイソブチルアルミニウム(10mmol)、100mLのヘプタンおよび有機ジルコニウムジクロリド(100μmol)を、窒素ガス雰囲気下の3リットルステンレス鋼オートクレーブ内で添加した。オートクレーブを閉じた後、その混合物を機械攪拌によって約60℃に加熱し、続いて不飽和モノマーとしての1H,1H,1H−パーフルオロ−1−ヘキサン8グラムを混合物に注入して、重合反応を開始させ、この重合反応を60℃で3時間行った。
【0068】
重合した混合物を濾過し、ヘプタンで数回洗浄した後、30mmHgの下で約5時間乾燥させて、約23グラムのグラフトポリマー生成物を得た。
【0069】
得られたグラフトポリマー収率は、原環状オレフィンポリマーの15重量%であった。グラフトポリマーの重量(W)は、次の式によって計算した:
W=[(グラフトポリマーの重量−環状オレフィンポリマーの重量)/環状オレフィンポリマーの重量]×100%
このグラフトポリマーは、約11mL/10分のメルティングインデックスおよび約14重量%のフッ素含量を有していた。また、このグラフトポリマーのフルオロカーボン鎖についてのFT−IR吸収は、約1248から1252cm−1であると測定された。
【0070】
(実施例3)
グラフトポリマーについての表面放電試験
実施例1のグラフトポリマーから製造した薄膜を表面放電試験に付した。この薄膜は、約35μmの厚さおよび約5×5cmの面積を有していた。この薄膜を、14,000ボルトの電圧での30秒間のコロナ放電によって帯電させ、帯電した膜をPEプラスチックバッグの中で保管した。次に、表面放電試験を行うためにPEクランプを用いて、バッグから膜を取り出した。
【0071】
図2に示すように、薄膜の当初の電圧は、約3750ボルトと測定され、それから数日間にわたって、表面放電により急速に低下した。しかし、その薄膜の電圧低下は、20日間の後、約2000ボルトの測定電圧での安定状態に到達した。
【0072】
そのため、本発明のグラフトポリマーで製造した薄膜が小さな電荷消失および高い電荷密度を有することが明らかとなった。
【0073】
(実施例4)
フッ素化環状オレフィンエレクトレット膜の作製
管により熱分解チャンバおよび堆積チャンバに接続された気化タンクに、7グラムのパリレンNポリマーを入れた。約6μmの厚さおよび約6cmの直径を有するフッ素化環状オレフィンポリマーフィルムを堆積チャンバの中の回転体ディッシュの上に置き、堆積チャンバ内の真空バルブを開いて圧力を約0.5トール以下に低下させた。気化タンクを約150℃に加熱することにより、パリレンNを気化させて、環状ジ−p−キシリレンなどの環状二量体を得た。
【0074】
次に、得られた気化二量体を熱分解チャンバに導入し、680℃に加熱して、気化二量体のベンジルの炭素−炭素結合を壊すことにより、p−キシリレンモノマーに転化させた。その後、モノマーを堆積チャンバに通し、濃縮し、フッ化環状オレフィンポリマーフィルムの上で重合させて、室温で約1μmの厚さを有する薄いパリレン膜を得た。堆積が完了したら、堆積チャンバの温度を周囲温度に低下させた後、フッ素化環状オレフィンエレクトレット膜サンプルを堆積チャンバから取り出した。
【0075】
(実施例5)
フッ素化環状オレフィンエレクトレット膜の表面放電試験
実施例4で製造したフッ素化環状オレフィンエレクトレット膜について表面放電試験を行った。このエレクトレット膜は、約15μmの厚さを有するフッ素化環状オレフィンポリマーフィルム上に約1μmの厚さのパリレン膜を含む。
【0076】
このエレクトレット膜を、約30秒間の約14,000ボルトの電圧でのコロナ放電によって帯電させ、帯電した膜をPEプラスチックバッグの中で様々な期間にわたって保管した。その後、表面放電試験を行うためにPEクランプを用いてバッグから膜を取り出した。
【0077】
図3に示すように、このエレクトレット膜の当初の電圧は、約900ボルトと測定され、表面放電により5日の期間で約800ボルトの安定状態へと低下した。つまり、このエレクトレット膜の電圧低下は約10%であった。
【0078】
そのため、本発明のエレクトレット膜は、比較的小さな電荷消失および高い電荷密度を有することが明らかとなった。
【0079】
以上、本発明者によってなされた発明を、実施の形態及び実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0080】
例えば、フッ素化環状オレフィンエレクトレット膜またはグラフトポリマー上に追加の金属またはパリレンオーバーコートを有する他の類似の構造も、本発明の範囲に包含され得る。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一例によるグラフトポリマーの化学分析用電子分光(ESCA)スペクトルのプロットである。
【図2】本発明の他の一例によるグラフトポリマーの表面電圧試験の結果を示すグラフである。
【図3】本発明の他の一例によるフッ素化環状オレフィンエレクトレット膜の表面電圧試験の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
60℃から250℃のガラス転移温度および400から300000の分子量を有する環状オレフィンポリマーと、この環状オレフィンポリマーにグラフトされたフルオロカーボンアルキル基とを含むことを特徴とするグラフトポリマー。
【請求項2】
請求項1に記載のグラフトポリマーにおいて、
前記フルオロカーボンアルキル基が、前記環状オレフィンポリマーの1つのモノマーセグメントにグラフトされており、前記モノマーセグメントが、エチレン、プロピレン、α−オレフィンおよび環状オレフィンモノマーのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とするグラフトポリマー。
【請求項3】
請求項1に記載のグラフトポリマーにおいて、
前記フルオロカーボンアルキル基が、式:
【化1】

および
【化2】

(これらの式中、nは1または2であり、RfおよびRf’は炭素原子数1から30のフルオロカーボンアルキル鎖である)
のアルキル鎖を含むことを特徴とするグラフトポリマー。
【請求項4】
請求項1に記載のグラフトポリマーにおいて、
前記環状オレフィンモノマーが、ビシクロヘプテン、トリシクロデセンおよびテトラシクロドデセンを含むことを特徴とするグラフトポリマー。
【請求項5】
10重量%から約99.95重量%の熱可塑性樹脂と、
0.05重量%から90重量%の請求項1に記載のグラフトポリマーとを含むことを特徴とする組成物。
【請求項6】
式:
【化3】

(式中、xは1から4、yは1から4、zは0.1から10、nは200から2000であり、Rfは少なくとも1個のフッ素原子を含有する炭素原子数1から30のフルオロカーボンアルキル鎖である)
を有することを特徴とする化合物。
【請求項7】
請求項6に記載の化合物において、
前記炭素原子数1〜30のフルオロカーボンアルキル鎖が、式:
【化4】

および
【化5】

(これらの式中、nは1または2であり、RfおよびRF’は炭素原子数1〜12のフルオロカーボンアルキル鎖である)
を含むことを特徴とする化合物。
【請求項8】
10重量%から99.95重量%の熱可塑性樹脂と、
0.05重量%から約90重量%の請求項6に記載の化合物とを含むことを特徴とする組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−19185(P2009−19185A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326031(P2007−326031)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】