説明

フッ素樹脂膜付ランプ及びその製造方法

【課題】ガラス球2のネック部付近が割れた場合、ガラス球2がフッ素樹脂膜3ごと口金1から外れてしまい、ガラス球2が落下してしまうことを防止する
【解決手段】ガラス球2の一端に口金1を固着し、内部に発光源を有するランプの前記ガラス球外表面にフッ素樹脂膜3を施したフッ素樹脂膜付ランプにおいて、前記ガラス球2と前記口金1との固着部付近に樹脂熱収縮チューブ4を被覆する。または、前記ガラス球2と前記口金1との固着部付近に被覆されたフッ素樹脂の熱収縮チューブまたはフッ素樹脂シートが前記フッ素樹脂膜と一体化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプや白熱電球などのガラス球外面にフッ素樹脂膜を施したランプの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種のランプを工場・店舗などの天井などに用いる場合、外的衝撃あるいは内的要因によりランプが破損し、ランプのガラス球が落下・飛散することを防止する目的で、ランプ表面にフッ素樹脂膜を施していることがある。このようなランプでは、発光管破裂や外的要因によりランプのガラス球が割れた場合にも、ガラス球の表面を覆ったフッ素樹脂膜によりガラスの欠片がバラバラにならず、ガラス球の飛散を防ぐことができる。
【0003】
上述の中で、特にガラス球のネック部付近が割れた場合、ガラス球がフッ素樹脂膜ごと口金から外れてしまい、ガラス球が落下してしまうことがある。そのため、本発明出願人は以前図3に示すとおりフッ素樹脂塗布範囲をガラス球全体と口金の一部まで塗布することを提案している(特許文献1参照)。
【特許文献1】公開実用 昭和63−6662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、図3のAのガラス球と口金固着部のフッ素樹脂膜強度が得られない場合があり、図4に示すように口金とガラス球との境界でフッ素樹脂膜の一部が裂けてガラス球が斜めにぶら下がる状態になったり、 図5に示すようにフッ素樹脂膜が口金端部の1周分裂けてガラス球が落下する恐れがあった。
【0005】
その理由として、主に以下の3点が考えられる。
(1) ガラス球と口金部付近ではフッ素樹脂膜厚のバラツキが大きくなりやすく、変動範囲は10〜80μmになっている。実験の結果、特に膜厚が薄く30μm以下になるとガラス球の落下の恐れがあることがわかった。
(2) 図3のBに示すハンダ溝の凹部付近はハンダ工程においてハンダ用フラックスの蒸気などが凹部付近に付着することがあるため、表面が汚れ、ハンダ溝の凹部付近の表面のヌレ性が悪くなるため、粉体塗装工程においてハンダ溝の凹部付近にフッ素樹脂粉体が塗着しにくくなり、膜厚が薄くなる傾向がある。
(3) 粉体塗装後の焼成温度はハンダの溶ける温度より高いため、焼成工程においては、ハンダ溝の凹部付近の温度はハンダが溶けて流れ落ちる限界までの温度をキープし、かつハンダが流れ落ちない工夫をしているが焼成温度が不十分な状態になる傾向があり適正なフッ素樹脂膜が形成されず膜強度が得られない。
【0006】
また、上述の推定原因(3)において、ランプ種類によってはどうしてもハンダが流れてしまうものもある。この場合はフッ素樹脂膜コーティング後に再度ハンダ工程をする必要があり、効率的な工程の流れにならず、生産性が悪くなる。
【0007】
本発明は、従来の上記問題点を解消し、ガラス球の落下を防止したフッ素樹脂膜付ランプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明は、請求項1の発明のフッ素樹脂膜付ランプにおいて、ガラス球の一端に口金を固着し、内部に発光源を有するランプの前記ガラス球外表面にフッ素樹脂膜を施したフッ素樹脂膜付ランプにおいて、前記ガラス球と前記口金との固着部付近に樹脂熱収縮チューブを被覆したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明のフッ素樹脂膜付ランプにおいて、ガラス球の一端に口金を固着し、内部に発光源を有するランプの前記ガラス球外表面にフッ素樹脂膜を施したフッ素樹脂膜付ランプにおいて、前記ガラス球と前記口金との固着部付近に被覆されたフッ素樹脂の熱収縮チューブまたはフッ素樹脂シートが前記フッ素樹脂膜と一体化されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明のフッ素樹脂膜付ランプの製造方法において、ガラス球の一端に口金を固着し、内部に発光源を有するランプの前記ガラス球外表面にフッ素樹脂膜を施したフッ素樹脂膜付ランプにおいて、前記ガラス球と前記口金との固着部付近にフッ素樹脂の熱収縮チューブを被せて焼成し、前記フッ素樹脂膜と前記フッ素樹脂の熱収縮チューブを一体化することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明のフッ素樹脂膜付ランプの製造方法において、ガラス球の一端に口金を固着し、内部に発光源を有するランプの前記ガラス球外表面にフッ素樹脂膜を施したフッ素樹脂膜付ランプにおいて、前記ガラス球と前記口金との固着部付近にフッ素樹脂のシートを巻き付けて焼成し、前記フッ素樹脂膜と前記フッ素樹脂のシートを一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、口金とガラス球の固着部の膜強度を高められ、万一のガラス球割れによるガラスの飛散や落下が完全に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るフッ素樹脂膜付ランプの最良の実施形態は、従来と同じ方法でランプガラス球の外面にフッ素樹脂膜を被覆した後、前記ガラス球と前記口金との固着部付近にフッ素の熱収縮樹脂チューブを被覆し、再度フッ素樹脂が軟化する温度で焼成を行なうことによってガラス球外面から口金外面の一部に形成されたフッ素樹脂膜と追加被覆されたフッ素樹脂の熱収縮チューブとを一体化させたものである。
【実施例1】
【0014】
次に本発明の実施例を図に基づき説明する。図1は本発明の一実施例を示し、所定の工程で作成されたランプをランプ表面の脱脂→プライマー塗布(下地処理)→粉体塗装(トップコート)→焼成→冷却という工程でランプ表面にフッ素樹脂膜を塗布する。ここまでは従来の方法で、次に、ランプ表面にフッ素樹脂膜を塗布した上に、ガラス球と口金の固着部付近にフッ素樹脂の熱収縮チューブをかぶせドライヤーなどにて熱収縮チューブをガラス球と口金のサイズまで収縮させる(図6のA)。図6のAにおいて、前記フッ素樹脂膜の上側にかぶせる熱収縮チューブはフッ素樹脂以外の材質を使用してもよい。またフッ素樹脂のうち下側の前記フッ素樹脂膜材質とは異なる種類であってもよい。このような構成では、ランプ表面に密着したフッ素樹脂膜とその上側に被覆した熱収縮チューブとの間に接着力は働かないが、熱収縮チューブで補強されたランプガラス球のネック部付近が割れにくくなるうえ、熱収縮チューブで固定されているために口金固着部付近のフッ素樹脂膜が裂けにくくなる。熱収縮チューブの厚さは材質がFEPの場合、0.05mmから0.5mmであればよく、厚さ0.1mmであれば実用上十分な強度を得られる。
【実施例2】
【0015】
図6のBの方法は、更に焼成工程を追加することにより、最初に塗布された膜とその上側に被覆した熱収縮チューブが互いに溶け一体の膜が形成され膜の強度が更に強くなる。この図6のBの方法では、互いに溶かして一体の膜とするためには、フッ素樹脂膜の上側に被覆した熱収縮チューブはフッ素樹脂である必要がある。更に下側の膜と上側にかぶせたチューブの材質が同一種のフッ素樹脂であることが好ましい。
【0016】
実施例2のランプにおいては、図1に示すように、フッ素樹脂膜3はガラス球2の外表面と口金1のガラス球との固着部Aの外表面まで膜が塗布してある。更にその上側に熱収縮チューブ4が被覆され焼成によって一体化されている。そして、ランプが何らかの原因で破損し、図2に示すようにガラス球2にひび割れが生じても、ガラス球と口金の固着部に施した膜が一体となって厚く丈夫な膜を形成しているため、ガラスの飛散あるいは口金よりの脱落によるガラス球の落下を防止することができる。
【実施例3】
【0017】
図6のCの方法は、上記熱収縮チューブの代わりにフッ素樹脂シートを使用するもので、他の方法と同じく、ランプ表面に塗布されたフッ素樹脂膜とその上側に巻きつけられたフッ素樹脂シートとが、互いに溶け合って一体の膜が形成され、膜の強度が更に強くなる。本ランプの製造にあたってフッ素樹脂シートをランプに巻きつける際には、例えば厚さ0.1mmの細長いフッ素樹脂シートを引き伸ばしながらランプ表面に巻き付けて端部を局部加熱してフッ素樹脂シートを局部溶融することによって仮固定しておき、炉体で加熱することにより一体の膜を容易に形成することができる。実施例3のランプにおいても実施例2のランプと同様の効果を得られる。
【0018】
次に実験例について説明する。従来ランプ及び本発明ランプの外的衝撃実験を行うため、図3に示す従来のメタルハライドランプ400W及び図1に示す本発明のメタルハライドランプ400Wランプについて、フッ素樹脂膜40〜80μm塗布したランプを準備した。そして、ネック部のガラスを故意に割り、そのガラスの飛散状態や口金脱落によるガラス球の落下を観察することとした。その結果、本発明品については、図2に示すようにガラスの飛散や落下はなかったが、従来品については、ガラス球と口金固着部の膜強度のバラツキがあったため、ガラスの飛散や落下はなかったものもあったが、ほとんどは図4のようにガラス球と口金の固着部の一部が割れてガラス球が落下寸前の状態になり、特にガラス球と口金の固着部付近の膜厚が薄いものは図5のようにガラス球と口金の固着部からガラスが割れてガラス球の落下もあった。
【0019】
以上のとおり、本発明に係るフッ素樹脂膜付ランプは、ランプ表面にフッ素樹脂膜を塗布した上に更に、ガラス球と口金の固着部付近にチューブをかぶせる構成により、ランプ破損事故という不測の事態が発生してもガラス球の飛散はもちろん口金よりのガラス球の脱落による落下という事故を完全に防止することができ、その実用的価値は大きい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、開放形照明器具に取り付けた場合にランプのガラス球の欠片が飛散したりガラス球全体が口金から外れて落下するという事故を防ぎ、照明装置の安全性向上に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るフッ素樹脂膜付ランプの一例を示す全体図
【図2】本発明に係るフッ素樹脂膜付ランプにおいてガラス球ネック部が破損した場合の一例を示す全体図
【図3】従来のフッ素樹脂膜付ランプを示す全体図
【図4】従来のフッ素樹脂膜付ランプにおいてガラス球ネック部が破損した場合の一例を示す全体図
【図5】従来のフッ素樹脂膜付ランプにおいてガラス球ネック部が破損した場合の別例を示す全体図
【図6】本発明の概略工程の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
【0022】
1…口金
2…ガラス球
3…フッ素樹脂膜
4…チューブ
A…ガラス球と口金の固着部
B…ハンダ溝の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス球の一端に口金を固着し、内部に発光源を有するランプの前記ガラス球外表面にフッ素樹脂膜を施したフッ素樹脂膜付ランプにおいて、前記ガラス球と前記口金との固着部付近に樹脂熱収縮チューブを被覆したフッ素樹脂膜付ランプ。
【請求項2】
ガラス球の一端に口金を固着し、内部に発光源を有するランプの前記ガラス球外表面にフッ素樹脂膜を施したフッ素樹脂膜付ランプにおいて、前記ガラス球と前記口金との固着部付近に被覆されたフッ素樹脂の熱収縮チューブまたはフッ素樹脂シートが前記フッ素樹脂膜と一体化されているフッ素樹脂膜付ランプ。
【請求項3】
ガラス球の一端に口金を固着し、内部に発光源を有するランプの前記ガラス球外表面にフッ素樹脂膜を施したフッ素樹脂膜付ランプにおいて、前記ガラス球と前記口金との固着部付近にフッ素樹脂の熱収縮チューブを被せて焼成し、前記フッ素樹脂膜と前記フッ素樹脂の熱収縮チューブを一体化するフッ素樹脂膜付ランプの製造方法。
【請求項4】
ガラス球の一端に口金を固着し、内部に発光源を有するランプの前記ガラス球外表面にフッ素樹脂膜を施したフッ素樹脂膜付ランプにおいて、前記ガラス球と前記口金との固着部付近にフッ素樹脂のシートを巻き付けて焼成し、前記フッ素樹脂膜と前記フッ素樹脂のシートを一体化するフッ素樹脂膜付ランプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−123426(P2010−123426A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296633(P2008−296633)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】