説明

フライス工具及びセグメント

【課題】加工精度の向上。
【解決手段】各セグメントは、回転軸C1に対して直角に延びる2つの対向する面平行な端面を有するハブ部11と、接線方向に間隔をあけて配置される複数のフライスインサート20を有する外周カム12を含む。隣接するセグメントは雄及び雌部分の各1つが対で協働することによって着脱可能に連結される。雄及び雌部分はそれぞれ接触表面を含み、それは大きい端から小さい端の方へ収束し、回転軸を横切る断面は円から外れた曲線を形成する。雄及び雌部分の接触表面は、雄及び雌部分を互いに近づけたときに隣接するそれら2つのセグメントを最終結合位置の方へ導き、その最終結合位置は回転軸を中心として円から外れた曲線によって中心位置に芯出しされると共に角度的に決定され、面平行な端面が互いに当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の様態で、本発明は、歯車、ラックなどの歯を有する被削材のホブ切り用に形成されたフライス工具であって、回転軸を規定し、複数のディスク状セグメントを有する円筒状の工具本体を備えるフライス工具に関する。
別の様態で、本発明は、フライス工具の個々のセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
ホブ切り用のフライス工具はしばしば一体型の工具として提供され、円筒状の工具本体に沿ったらせん形ラインに沿ってフライスインサートが配置される。この工具の製造では、フライスインサートのためのインサート座に、あるいは工具本体に装着されて一体化されている場合にはフライスインサートにアクセスするのにときどき問題がある。これは、フライスインサートのらせん形ラインの軸方向での間隔が狭くなっていることによる。そのような理由により、ホブ切り用のフライス工具はまた、円筒状の工具本体が複数のディスク状のセグメントから構成され、個々のセグメントは、通常、らせん形ラインを形成する複数のフライスインサートの一周分を受け入れる。
【0003】
このようなセグメントホブについては複数の異なる実施形態が知られている。特許文献1には、複数の別々のセグメントで構成された円筒状本体を備えるセグメントホブが開示されている。別々になっているセグメントは、ゆるい、別々の取付ボルトによって互いに対して回転的に固定される。各端にエンドピースがあり、セグメントとエンドピースから成るパッケージ全体が長い貫通ねじによってひとつにまとめられている。
【0004】
従来から知られているこのセグメントホブの問題点は、被削材に生成される表面の機械加工精度が用途によっては十分に高い精度に達しないことである。さらに、別々のセグメントを共通のシャフト又は心棒に取り付けるときに問題が生じ、ときには厄介な調整のために研削が必要になる。そのような場合、ある個別のセグメントに損傷が生じた後、工具を分解し、新しい損傷していないセグメントを用いて再び組み立てることが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2005 029053号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述のような従来から知られている問題のタイプのフライス工具における上記のような欠点の少なくともいくつかを完全に又は部分的に解決し、改良された工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は独立請求項1及び13によってそれぞれ規定されるタイプの工具及びセグメントによって達成される。さらに、本発明の好ましい実施形態が従属請求項2〜12と14〜20によって規定される。
【0008】
本発明によるフライス工具は、歯車、ラックなどの歯を有する被削材のホブ切り用に形成されるものであり、回転軸を規定し、複数のディスク状セグメントを有する円筒状の工具本体を備える。各セグメントは、回転軸に対して直角方向に延びる2つの面平行な端面を有するハブ部分と、接線方向に間隔をあけた複数のフライスインサートのための外周カムを含む。隣接するセグメントは、各1つの雄及び雌部分が対となって協働して着脱可能に連結される。雄及び雌部分は、回転軸が雄及び雌部分を貫通して延びるように位置している。雄及び雌部分は、それぞれ接触表面を含み、それは大きな端から小さな端へ収束し、回転軸に交差する断面内においては円から外れた曲線を描く。雄及び雌部分の接触表面は、雄及び雌部分を一緒にするときに隣接する2つのセグメントを回転軸に中心を有する互いに角度的に決定された終端位置に導くように設計されており、その終端位置は円から外れた曲線によって決定され、その位置で面平行な端面が互いに当接する。
【0009】
本発明は、高い製造精度を有し、位置の高い信頼性を保証し、かつ繰り返し装着/脱着しても再現性が高いセグメントによって構成される工具によって上記の目的が達成されるという考えに基づいている。セグメントが各ひとつの協働する雄及び雌部分によって対で連結されるおかげで、公知の方法による多数の取付ボルトと貫通ねじによる複雑で不正確な嵌合という問題を回避できる。ただひとつの協働する雄と雌部分という有利な解決方法は本発明による雄と雌部分の設計と配置によって容易になる。
【0010】
本発明によれば、雄と雌部分にはそれぞれ円錐状に収束する接触表面が設けられ、それは断面で円から外れたカーブを形成する。さらに、雄と雌部分の寸法は互いに対して正確に調整されている。これは、雄部分を雌部分に組み付けるとき、接触表面の円錐形状と相互の寸法により最初は径方向のギャップがあるということである。雄部分と雌部分を少し近づけると、接触表面が互いに接触し、接触は通常、点の形、線の形、又は接触表面の面の一部である。引き続き近づけると、少なくとも接触表面のある割合が互いに摺動する。そうしながら、セグメントは円から外れた断面によって角度的に決定される位置へ回ってゆく。こうして、従来の方法による回転位置を固定するためのコアの径方向外側に位置するロック部材は余分なものになる。雄と雌部分が工具本体の回転軸のまわりに配置されていることによって、それらはさらにセグメントを径方向に導いて互いに回転軸を中心とするある位置に配置することができる。雄と雌部分は、互いに会合する隣接するセグメントのハブ部分における面平行な表面によって決定される軸方向の最終位置で一緒になる。この最終位置でも、通常、接触表面のある割合だけしか互いに接触しない。
【0011】
このように、本発明によって形成され配置される雄及び雌部分と、面平行な端面の組合せによって、隣接するセグメントの非常に正確な相互配置がすべての方向で、すなわち角度方向、半径方向、及び軸方向で好適に実現される。言い換えると、工具に含まれるフライスインサートのきわめて正確な空間的配置が実現される。これは非常に高い位置決めの信頼性を与え、工具の高い寸法精度に寄与する。このようにして、フライスインサートによって切削される溝の間に設けられる歯のなめらかで高い寸法精度の側面(flank surface)という形態で、良好な機械加工結果が保証される。さらに、一対のセグメントあたりただひとつの協働する雄及び雌部分しか必要としないため、装着と脱着がシンプルになることも有利である。さらに、本発明によって、問題のタイプの工具の標準化された設計と製造の手順を構築することが可能になる。
【0012】
本発明のある実施形態では、雄及び雌部分がセグメントと一体化される。本出願で用いられる“一体化”という概念は広い意味に解釈しなければならない。ある標準的な実施形態では、個々のセグメントは単一の固体被削材、例えば鋼の被削材を機械加工することによって製造される。しかし、最初に同じ又は異なる材料の2つ(以上)のコンポーネントを恒久的に結合させて、最終の形を決める機械加工は最終工程まで行わないということも可能である。セグメント自体に結合手段を一体化することは、セグメントを高い精度で寸法的に正確に作る大きな可能性を与える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係わるフライス工具及び歯車のフライス加工における駆動機構のある実施形態を概略で示す斜視図である。
【図2】組み立てられた形の工具の実施形態を示す斜視図である。
【図3】工具の他のセグメント及び前端エンドピースと後端エンドピースから間隔をあけた形でセグメントを示す本発明のある実施形態の分解斜視図である。
【図4】工具のある実施形態に含まれる第1のタイプのセグメントを正面から詳しく見た平面図である。
【図5】同じセグメントを背後から見た同様の平面図である。
【図6】そのセグメントの側面図である。
【図7】セグメントを引き込みボルト並びに脱着ねじと合わせて正面から示す斜視図である。
【図8】同じセグメントを背後から示す斜視図である。
【図9】工具のある実施形態に含まれる別のタイプのセグメントの図7に対応する斜視図であり、このセグメントは第1のタイプのセグメントの間に交互に挿入される。
【図10】図9によるセグメントを背後から示す斜視図である。
【図11】前図に従って互いに結合された2つのセグメントの縦断面図である。
【図12】本発明に係わる工具の別の実施形態の縦断面図である。
【図13】雄部分だけで形成され、図12による工具に含まれるセグメントの縦断面図である。
【図14】雌部分だけで形成され、図12による工具に含まれるセグメントの縦断面図である。
【図15】工具の雄部分と雌部分のある実施形態の断面形を示す幾何形状図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、本発明のある実施形態に従って作られたフライス工具1によって被削材Wを歯車を成形する目的で機械加工している様子が概略図で示されている(分かりやすいように、歯と溝は仕上げ加工された状態で示されている)。言い換えると、本発明がセグメントホブの形で例示されている。この例では、工具1はシャフト2に装着されており、その中心軸はC1と表記され、その一端がチャック3に固定され、他端は軸受ブラケット4に支持されている。一緒に成ってフライス工具1を形成するセグメントは、一対のエンドピースの間に配置され、第1のエンドピースは5と表記され他方は6と表記されている。駆動シャフト2から工具1にトルクを伝達するためにくさび7が駆動シャフトの溝に埋め込まれていろいろなセグメントの内側溝と係合している。チャック3とそれに従って工具1がR1方向に回転可能であり、同時に被削材WはR2方向に、もっと詳しくいうと中心軸C2のまわりで、回ることができる。実際にはフライス工具は被削材よりもかなり高速で駆動される。例えば、被削材が1回転する間に工具は100回転する。工具の送りは二重矢印“f”で示されているように中心軸C2と平行になされる。選ばれた回転方向R1,R2により、送りは上端位置から下向きに行われる。工具に含まれるいろいろなセグメントが一緒になって円筒状のフライス工具又は基本ボディを形成し、個々のフライスインサートはセグメントに含まれて円筒の外側で連続したらせん形のラインに従う。
【0015】
図2と3には工具の性質がもっと詳しく示されている。この例では、工具は全部で6つのセグメントから構成され、それらは8で総称される。図示されたセットのひとつおきのセグメントは中間のセグメントと異なる仕方で形成されている。以下、異なるセグメントを区別するために、それらにそれぞれ添字“a”、“b”を付けて補った。2つのエンドピース5,6のうち、図2と3で観察者から遠い方のエンドピース5を“後方”エンドピースと呼び、他方は“前方”エンドピースになる。図3の分解図ではさらに2つのタイプのねじが示されている、すなわち引き込みボルト9と着脱ねじ10である。これらのねじの目的は以下でもっと詳しく説明する。
【0016】
図4には、図3で8aと表記されたタイプの個別セグメントが示されている。各セグメントはハブ部11(図7も見よ)と外周カム12を含む。ハブ部11は2つの平面の平行な端面13,14(図4と5参照)を含み、最初のものは後方端面、あとのものは前方端面を形成している。外側で、ハブ部11は部分的に円筒状の包絡面15によって限られ(図7と8参照)、カム12がそこから一定の径方向延長を有する。セグメントは共通の駆動シャフト2(再び図1参照)に取り付けられ、ハブ部11は中央に円筒形の貫通開口16を含む。中央の開口16に隣接して溝17が形成され、そこに前述の駆動シャフト2の固定くさび7が係合できる。2つの端面13,14は平面で延び、それは中心軸C3に対して直角方向にあり、中心軸C3は組み立てられた工具の中心軸C1と一致する。言い換えると、端面13,14は互いに平行である。包絡面15は中心軸C3と同心である。
【0017】
外周カムはハブ部11のまわりに一周して延びてから予め定められたピッチのらせん状のラインに従う。このピッチはハブ部の平面端面13とカム12のリング状前方表面18の間の角αによって表される(図6参照)。αは1〜10゜の範囲内にあるのが適当である。カム12は断面がくさび形で広い基底部から尖った外側部分へ傾斜している。反対側の傾斜したカムの側面には、交換可能なフライスインサートのための複数のインサート座(図4参照)が窪んだ形で設けられている。インサート座は接線方向に、言い換えると円周方向で間隔をあけている。各インサート座及びフライスインサートの回転方向で前方に、切り屑チャンネル21があって、フライスインサートによって除去された切り屑を逃がしやすくしている。カムの一方の側面にひとつおきにインサート座とフライスインサートがあり、他方の側面にもひとつおきにある。カム12は平面の表面22で終端しており(図6と7参照)、それが隣接するセグメントのカムの同様の表面に押しつけることができるようになっていることも注意しておきたい。全体として、個々のセグメントのカムがこのようにして組み立てられた工具の連続したひも状のスクリュー形態を形成する。
【0018】
セグメントを使用できる工具の形に組み立てられると、対向する端面13,14が隣接するセグメントの対向する端面とぴったり接触するように適切に圧しつけられる。このために、図示された好ましい実施形態では、引き込みボルト9が図7に最もはっきりと示されているように用いられる。このような各ねじは雄ねじ24を有するシャンク23と、シャンクより大きな径のヘッド25を含む。このヘッドに、例えば六角ヘッドレンチ用のキーグリップ26が形成されている。
【0019】
各セグメントに3つの引き込みボルト9が好適に用いられ、それをハブ部11の貫通孔又は挿通孔27に使用できる。これらの挿通孔はなめらかでねじを有していない。各挿通孔にはねじのヘッドのための径が広がった皿穴28が形成される。詳しくいうと、広げられた皿穴28はハブ部11の前方端面に開口し、狭いセクション29(図5と8を見よ)はハブ部の後方端面に開口している。挿通孔27の前方と後方の断面の径が異なるため、リング状のショルダ30が形成され、ねじのヘッド25をそれに押しつけることができる。3つの挿通孔27は等間隔になっている、すなわち、120゜の角度ピッチを有する。
【0020】
着脱ねじ10(図7参照)はヘッドがなく、前方の雄ねじ31と後方の円筒状部分32を有し、円筒状部分の径は雄ねじの外径より小さい。詳しくいうと、円筒状部分32の直径は小さいので、引き込みボルト9のキーグリップ26に入れることができる。また着脱ネジ10は前方端にキーグリップ33を含むことに注意したい。
【0021】
さらに3つの孔がハブ部分を軸方向に貫通して延び、それらはなめらかな挿通孔と異なり雌ねじ35の形のねじを含む(図7参照)。それぞれのねじ9,10の雄ねじ23,31は同様であり、個々に孔34に固定できる(ただし同時にではない)。また、3つのねじ孔34は互いに等間隔に離れている、すなわち角度ピッチ120゜を有する。さらに、孔34は2つの隣接する挿通孔の中間に位置しており、個々の挿通孔27と2つの隣接するねじ孔34の間の角度ピッチは60゜になる。
【0022】
セグメントの空間的位置が面平行な端面と組み合わされた雄部分と雌部分によって決定されるため、なめらかな挿通孔とねじ孔の許容誤差は高い。それらの整列はセグメントの相互配置にとって重要ではない。ねじ9の目的は、セグメント8のセットを圧しつけて雄部分と雌部分を近づけて対向する端面13,14が互いにぴったりと接触するようにすることである。こうして、ねじ9は組み立てられた工具に残される。ねじの圧縮する力が好適に作用して個々のセグメントの間の結合をきわめて堅くする。
【0023】
本発明の別の実施形態では、セットのセグメントがそれぞれの終端位置に達した後、ねじを戻してしまうことができる。また、セグメントをねじ以外の方法で、例えば外側のクランプによって、圧しつけることもできる。
【0024】
上述の実施形態では、着脱ねじ10は組み立てられた工具に含まれず、工具を分解してひとつ以上のセグメントを分離しなければならなくなるまで用がない。
【0025】
図示した本発明の実施形態では、セグメントは、個々のセグメントと一体化されており対で協働して働く雄部分と雌部分36,37(図7と8参照)の形の結合手段によって互いに対して回転的に(rotationally)固定される。各雄部分と雌部分はそれぞれ接触表面38と39を含み、それらは中心軸C3と直角方向の平面で見たとき円から外れた(out-of-round)断面形状を有する。さらに、接触表面は大きい端から小さな端へ収束している。この例では、各セグメントが、一方でセグメントの後方端面13から軸方向に突出する雄部分36と、他方ではハブ部11の前方端面14に開口している凹み37の形の雌部分を有する。図7では、雌部分の小さな端はエンドレスの境界線40aによって、大きな端は同様にエンドレスな境界線41aによって表されている。同様に、境界線41b(図8参照)は雄部分36の大きい端を表し、小さな端は境界線40bで表される。言い換えると、接触表面38,39は同じ方向に、すなわち後ろ向きの方向に収束する。雄部分36は中空又は管状に(シャフト2を貫通させることができるように)なっており、円筒状の内側表面42を含む。円筒面42と外側接触表面38は共通のリング表面43に結合し、それが雄部分36の自由端を形成する。
【0026】
図示の例では、雄部分と雌部分は中心軸C3上に中心が位置している。しかし、本発明の別の実施形態では、通常は工具の回転軸C1と同じである中心軸C3が雄部分と雌部分をある方向にずれて貫通して延びるように雄部分と雌部分を配置することができる。雄部分と雌部分の中心軸のまわりに中心がある配置(central location)は雄部分と雌部分の幾何形状の設計がシンプルになる利点がある。中心がある配置(centered location)はまた、雄部分と雌部分を小さくすることができ、セグメントが堅くなるという利点がある。
【0027】
この例では、雄部分と雌部分の円から外れた断面形状は、それらを多角形にすることで実現される、詳しくは三角形又は3−コーナーにすることによって実現される。簡単にいうと、形状は3つの丸いコーナーを有するカーブによって決められ、コーナーはコーナーの曲率半径よりも大きな曲率半径を有する3つのカーブしたアーチラインに接する内接円から突出している(図15参照)。
【0028】
幾何学的には、このカーブは次の式によって定義される。
x = (Dm/2)・cos(γ)-2a・cos(2γ)+a・cos(4γ)
y = (Dm/2)・sin(γ)+2a・sin(2γ)+a・sin(4γ)
ここで、
n = 任意の点Pにおけるカーブへの法線、
x及びy = 従来の座標系での座標、
γ= 法線nと座標系のx軸の間の角度、
2a = 内接円ICに対する個々のコーナーに選ばれた偏心度(又はふくれ)、
Dm = 内接円の直径と偏心度2aの和、
である。
【0029】
上記の三角断面形を有する雄及び雌形状の結合は、それ自体では従来から知られており切削加工用の工具で用いられている。商業用途で、問題の結合はCOROMANT CAPTO(登録商標)と呼ばれ、SNDVIK COROMANT ABから市販されている工具に含まれる。
【0030】
2つの接触表面38,39の収束角β(図6参照)は少なくとも2゜であり高々20゜である(β/2=それぞれ1゜及び10゜)。好適には、収束角は6゜−14゜の範囲にある。図示の例では、それぞれの接触表面に沿った任意の母線は真直である。収束角が小さいとき(上記の範囲にあることにより)、雄部分と雌部分の係合は自発的なロックになり、それらの部分を引き離すことは非常に困難になる(=大きな力を必要とする)。他方、収束角が大きすぎて上記の範囲から出てしまうと、空間的に決定される最終位置への本発明が望むような誘導は困難になる。
【0031】
図示した本発明の実施形態では、雄部分と雌部分の接触表面38,39は非常に高い寸法精度に仕上げられている、もっと詳しくいうと好適には0.01mmよりも高い寸法精度に仕上げられている。これはいわゆる適応制御機械加工によって、好ましくはシャンクエンドミルによるフライス削りによって、好適に実現される。このような機械加工は材料が約0.3mmという材料許容誤差で被削材を形成した後にいくつかの引き続くステップで行われる。上記の材料許容誤差を最初に減らした後、少なくともさらに一回のステップで材料をさらに除去する前に許容誤差が測定される。このようにして、接触表面に全体にわたって0.001mmまでの寸法精度が得られる。
【0032】
図11で、Tは個々のセグメントの厚さを表し、これは端面13と14の間の軸方向距離によって決まる。さらにこの尺度はカム12のピッチと一致する。凹み37の深さはL1と表され、雄部分36の軸方向長さはL2と表される。L1はTの少なくとも30%、そして高々80%でなければならない。好ましくは、L1はTの50〜70%の範囲にある。L1はL2より小さい。雄部分36が工具の組み立てられた状態で所属する窪みと係合しているとき、雄部分の自由端43と窪みの底の間にはギャップ44がある。言い換えると、雄部分は窪みの底に接触しない。こうして、2つの隣接するセグメントの面平行な表面が互いに当接する本発明による所望の軸方向の最終位置に雄部分と雌部分の妨害なしに到達できることが保証される。
【0033】
2つのタイプのセグメント8aと8bの違いは、それぞれのセグメントタイプの孔のパタンが互いに対して60゜回転していることである。これは図7aと図9の比較によって見られる。すなわち、図7によるセグメント8aではねじ孔35は溝17とほぼ同じ角度位置にある。しかし、図9によるセグメント8bでは、挿通孔27は溝17から大きく外れた位置にある。
【0034】
図3で、後方エンドピース5は3つのねじ孔34を含むが、なめらかな挿通孔を何も含まないことが見られる。さらに、エンドピース5は雌となる凹み37を含むが、雄部分を含まない。しかし、セグメントと同様にエンドピース5も軸方向の溝17を含む。
【0035】
前方エンドピースには、後方を指している雄部分(図3では隠れている)、並びに全部で6つの孔、すなわちセグメント8aと8bと同様のタイプの3つのねじ孔34と3つのなめらかな挿通孔27が含まれる。
【0036】
組み立てられた工具へのいろいろなコンポーネントの装着は次のように行うことができる。最初のステップで、セグメント8b上の雄部分36を後方エンドピース5の雌部分37と係合させ、その他に3つのヘッドを備えたねじ9がねじ孔34に係合する。こうして、セグメント8bを大きな力でエンドピース5に圧しつけることができ、その後方端面13がエンドピース5の前方表面とぴったり接触するように圧し付けられる。次のステップで、タイプ8aの雄部分36をすでに装着された雌部分37の前方開口と係合させ、その後でセグメントを圧しつけて3つの別のねじ9によって圧しつけて互いにぴったりと接触するようにする。次に、所望の数のセグメントが互いに結合されるまでこの手順が繰り返される。最後のステップで、3つのねじ9を用いて前方エンドピース6を前方セグメント8aに固定する。
【0037】
図2による工具の組み立てられた状態で、異なるセグメントが一緒になって非常に高い堅さの円筒状ボディを形成し、いろいろなフライスインサートの空間的な位置が非常に正確に決定される。その結果、被削材Wに生成される歯の側面が非常に良い許容誤差で生成される。
【0038】
例えば損傷したセグメントの取り替えのために必要になるかもしれない工具の分解は、脱着ねじ10によって実行できる。これらが前方エンドピース6のねじ孔34にねじ込まれると、それが前方セグメント8aの引き込みボルト9に圧しつけられる。詳しくいうと、個々のねじの円筒部分32がねじヘッドのキーグリップ26の底部に圧しつけられる。ねじ10をほぼ一様に締めることによって、エンドピース6の雄部分がセグメント8aの雌部分から正確に軸方向に確実に外される。さらに続くステップで、3つの同時に働く着脱ねじ10によって異なるセグメントを同じような仕方で互いから分離することができる。
【0039】
セグメントは(一定の内在的弾性を有する)鋼から好適に製造され、他方従来の形の交換可能なフライスインサートは超硬合金などもっと硬い摩耗しにくい材料から製造される。しかし、切れ刃がセグメントと同じ材料のピースである一体型の無垢のセグメントを用いることも可能である。
【0040】
本発明のある実施形態では、セグメントの製造において個々の雄部分に協働する雌部分に対して小さな、径方向に余分な寸法が与えられる。余分な寸法は0.01から0.03mmのオーダーになる。これは結果として、互いに向き合う隣接するセグメントが、引き込みボルトを弱く締めただけの状態では最初は狭いギャップ(0.01〜0.5mm幅)によって隔てられることになる。しかし、引き込みボルトを最終的に大きなトルクで締めると、雄部分はすぐに雌部分に軸方向の力で圧し込まれ、この力は雄部分の材料並びにまわりのハブ部分が降伏するに十分な強さであり、セグメントの端面が互いにぴったりと接触するように圧しつけられる。このようにして、セグメントの間の回転的に固定された結合はきわめて硬く強いものになる。セグメントの端面がぴったりと接触して互いに圧しつけあうことで、組み立てられた工具本体のきわめて正確な軸方向の位置決めが保証される。
【0041】
図12〜14には、本発明による工具の別の実施形態が示されている。この場合、工具に含まれるセグメントの半数、すなわちセグメント8c、には2つの雄部分36が形成され、それがセグメントの対向する端面から突出している。これらの雄部分の接触表面38は反対方向に収束する、もっと詳しくは接触表面の大きな端が端面13,14に最も近く位置し、小さな端が雄部分の自由端に最も近くなっている。
【0042】
別のタイプのセグメント8dは2つの窪みという形の雌部分37だけを含み、それらがリング状のフランジ45によって隔てられている。前述の実施形態と類似した形で、雄部分並びに雌部分の接触表面は、大きい端と小さな端の間で収束する他に、円から外れた、好ましくは三角形の、断面形状を有する。その他の点では、前に説明したものと同じ種類のねじが、一方ではセグメントを圧しつけて堅い管状の工具本体とするために用いられ、他方では工具を分解するときにセグメントを分離するように用いられる。
【0043】
本発明は上で説明して図示した実施形態に限られず、添付された特許請求の範囲内で多くの異なる仕方で変更することができる。すなわち、いろいろなセグメントをねじによる方法と別の方法で確実に圧しつけて保持することも可能である。上述した雄部分と雌部分は、収束の角度が2〜20゜という上記の範囲にある場合は自然にロックするようになるので、セグメントは外側の圧縮機構によって圧しつけて崩れないように保持することができる。
【0044】
図示した実施形態では、組み立てられた工具は偶数の、すなわち6つのセグメントを含む。しかし、セグメントの数はこれよりも多くても少なくてもよい。しかし、工具は少なくとも3つの、そして多くても12個のセグメントで構成しなければならない。セグメントの数は奇数であってもよい。
【0045】
また、雄部分と雌部分の円から外れた断面形状は必ずしも多角形である必要はない。すなわち、これは楕円形であっても、その他の仕方で円形からずれていてもよい。
【0046】
工具はフライスインサートのためのインサート座を備えても、切れ刃と一体的に成形されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
2 駆動シャフト
8 セグメント
9 引き込みボルト
11 ハブ部
13,14 端面
27 挿通孔
34 ねじ孔
36 雄部分
37 雌部分(凹み)
38,39 接触表面
40a,40b 小さい端
41a,41b 大きい端
44 ギャップ
C1,C3 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車、ラックなど歯を有する被削材のホブ切りのために形成され、回転軸(C1,C3)を規定し、複数のディスク状のセグメント(8)を有する円筒状の工具本体を備えるフライス工具であって、
各セグメントは、
回転軸(C1,C3)に対して直角方向に延びる2つの対向する面平行な端面(13,14)を有するハブ部(11)と、
接線方向に間隔をあけて配置される複数のフライスインサート(20)のための外周カム(12)と、を含むフライス工具において、
隣接するセグメント(8)は、雄及び雌部分の各1つが対で協働することによって着脱可能に連結され、
雄及び雌部分は回転軸(C1,C3)が雄及び雌部分を貫通して延びるように位置し、
雄及び雌部分はそれぞれ接触表面を含み、接触表面は、大きい端(41a,41b)から小さい端(40a,40b)の方へ収束し、回転軸を横切る断面内において円から外れた曲線を形成し、
雄及び雌部分の接触表面は、雄及び雌部分を互いに近づけたときに、隣接するそれら2つのセグメント(8)を最終結合位置の方へ導くように設計され、最終結合位置は、回転軸(C1,C3)を中心として円から外れた曲線によって中心位置に芯出しされると共に角度方向に決定され、面平行な端面を互いに当接させる、
ことを特徴とするフライス工具。
【請求項2】
雄部分の接触表面は雌部分の接触表面に対して径方向に過剰な寸法を有し、その結果、工具の組み立てられた状態で、雌部分の接触表面は雄部分の接触表面に圧力によって当接するようになることを特徴とする請求項1に記載のフライス工具。
【請求項3】
工具の組み立てられた状態で、雄部分の小さな端(40a,40b)と雌部分の小さな端(40a,40b)の間にギャップ(44)があることを特徴とする請求項1又は2に記載のフライス工具。
【請求項4】
雄部分と雌部分とがそれらのセグメント(8)と一体化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフライス工具。
【請求項5】
個々のセグメント(8)には、一方ではひとつの端面(13)から軸方向に突出する雄部分(36)が形成され、他方では他方の端面(14)に開口する雌部分(37)として用いられる凹みが形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフライス工具。
【請求項6】
個々の接触表面(38,39)が0.01mmより精密な寸法精度で仕上げられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフライス工具。
【請求項7】
個々の接触表面(38,39)が三角形の断面形状を有し、それが次の式によって、すなわち、
x = (Dm/2)・cos(γ)-2a・cos(2γ)+a・cos(4γ)、
y = (Dm/2)・sin(γ)+2a・sin(2γ)+a・sin(4γ)、
ここで、
n = 任意の点Pにおけるカーブへの法線、
x と y = 従来の座標系での座標、
γ = 法線nと座標系のx-軸の間の角度、
2a = 内接円ICに対する個別コーナーの選ばれた偏心度(又はふくれ)、
Dm = 内接円の直径と偏心度の和、
によって定義されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフライス工具。
【請求項8】
隣接するセグメント(8)の複数の対が複数の引き込みボルト(9)によって圧縮されて配置され、引き込みボルト(9)はヘッド(25)及び雄ねじ(24)を有するシャンク(23)を含み、シャンクは、一方のセグメントの挿通孔(27)に通されて他方のセグメントのねじ孔(35)内で雄ねじによって締結されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のフライス工具。
【請求項9】
個々のセグメント(8)における挿通孔(27)の数もねじ孔(34)の数も3であり、挿通孔並びにねじ孔は角度ピッチ120゜で等間隔に隔てられ、個々の挿通孔(27)と隣接する2つのねじ孔(34)の間の角度ピッチは60゜になることを特徴とする請求項8に記載のフライス工具。
【請求項10】
工具は2つの異なるタイプのセグメント(8a、8b)を含み、それらの孔のパターンが互いに60゜ずれており、互いに交互に配置されていることを特徴とする請求項9に記載のフライス工具。
【請求項11】
雄及び雌部分の個々の接触表面は収束角(β)で収束しており、収束角(β)は少なくとも2゜そして大きくても20゜であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のフライス工具。
【請求項12】
セグメント(8)は共通の駆動シャフト(2)に沿って配置され、2つのディスク形状のエンドピース(5,6)の間に位置し、それらのエンドピースは最初及び最後のセグメント(8)と協働する雄又は雌部分を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のフライス工具。
【請求項13】
歯車、ラックなど歯を有する被削材のホブ切りのために形成されたフライス工具の円筒状工具本体のためのセグメントであって、
工具本体は複数の着脱可能に連結されたセグメントを備え、
セグメントはディスク形状であり、
回転軸(C1,C3)に対して直角方向に延びる2つの対向する面平行な端面(13,14)を有するハブ部(11)と、
接線方向に間隔をあけて配置される複数のフライスインサート(20)のための外周カム(12)と、を含むセグメントにおいて、
セグメント(8)はさらに隣接するセグメントとの着脱可能な連結のための雄又は雌部分を含み、
雄又は雌部分は、回転軸が雄又は雌部分を通って延びるように位置し、
雄又は雌部分は接触表面を含み、その接触表面は大きい端(41a,41b)から小さな端(40a,40b)の方へ収束し、回転軸を横切る断面内において円から外れた曲線を形成する、
ことを特徴とするセグメント。
【請求項14】
雄又は雌部分はセグメントと一体化していることを特徴とする請求項13に記載のセグメント。
【請求項15】
雄部分(36)は第1の端面(13)から軸方向に突出し、窪みの形の雌部分(37)は他方の端面(14)に開口していることを特徴とする請求項13又は14に記載のセグメント。
【請求項16】
接触表面(38,39)は0.01mmより精密な寸法精度に仕上げられていることを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載のセグメント。
【請求項17】
接触表面(38,39)は三角形の断面形状を有し、それは次の式、すなわち、
x = (Dm/2)・cos(γ)-2a・cos(2γ)+a・cos(4γ)、
y = (Dm/2)・sin(γ)+2a・sin(2γ)+a・sin(4γ)、
ここで、
n = 任意の点Pにおけるカーブへの法線、
x と y = 従来の座標系での座標、
γ = 法線nと座標系のx-軸の間の角度、
2a = 内接円ICに対する個別コーナーの選ばれた偏心度(又はふくれ)、
Dm = 内接円の直径と偏心度の和、
によって定義されることを特徴とする請求項13〜16のいずれか一項に記載のセグメント。
【請求項18】
接触表面(38,39)の収束角(β)が少なくとも2゜そして大きくても20゜であることを特徴とする請求項13〜17のいずれか一項に記載のセグメント。
【請求項19】
ハブ部(11)は、一方では複数のなめらかな貫通する挿通孔(27)を含み、他方では複数の雌ねじ(35)を有する貫通孔(34)を含むことを特徴とする請求項13〜18のいずれか一項に記載のセグメント。
【請求項20】
挿通孔(27)の数及びねじ孔(34)の数が3であり、挿通孔は角度ピッチ120゜で等距離で隔てられ、個々の挿通孔(27)と2つの隣接するねじ孔(34)の間の角度ピッチが60゜であることを特徴とする請求項19に記載のセグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−883(P2013−883A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−138617(P2012−138617)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(507226695)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (34)
【Fターム(参考)】