説明

フライバックトランス保持装置

【課題】 フライバックトランス保持装置(ホルダー)を用いてフライバックトランスを筐体のリアキャビネットなどに作業者が容易にかつ正確にビス止めすることを可能にする。
【解決手段】 第1結合部20と第2結合部50とを有するフライバックトランス保持装置10が、第2結合部50が、孔部62を有する筒状部60と、ねじ挿通孔81を有する筒状受部80とを備える。筒状部60を第1結合部20に一体化し、筒状受部80をリアキャビネットに設ける。筒状部60に複数の突片65,66,67を追加し、筒状受部80に、突片65,66,67を受け入れるスリット状のガイド溝部85,86,87を追加する。好ましくは、突片65,66,67やガイド溝部85,86,87を90度おきに設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライバックトランスを電気機器筐体によって支持させることに用いられるフライバックトランス保持装置に関する。特に、電気機器筐体のリアキャビネットに取付けねじを用いてビス止めするときの作業性を改善するための対策を講じたフライバックトランス保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CRT型テレビジョン受像機などに用いられるフライバックトランスは、配線基板に搭載される背高で重さの重い電気部品である。このため、フライバックトランスを備えた電気機器では、配線基板に搭載されているフライバックトランスを電気機器筐体によって支持させることが多々行われている(たとえば、特許文献1、同文献2参照)。このうち、特許文献1に記載されているものは、キャビネットやバックカバーに設けられた連結体の端部を、フライバックトランスの頂部に設けたリブに係合させるというものである。また、特許文献2に記載されているものは、フライバックトランスの横向きボスをシャーシの貫通孔に掛け止めすることにより仮固定した上で、その横向きボスをシャーシにねじ締結するというものである。
【0003】
図5は一般的なフライバックトランス100の基本的な外観形状を示した概略斜視図である。同図のように、フライバックトランス100には、その上部に円柱状の横向きボス110が設けられている。このフライバックトランス100を電気機器筐体によって支持させるときには、上記横向きボス110を電気機器筐体などに連結するということが行われている。
【0004】
この種のフライバックトランス100を、その横向きボス110を利用して電気機器筐体によって支えさせる方法として、横向きボス110を直接に電気機器筐体に固定する方法や、電気機器筐体に固定したフライバックトランスホルダーとしての保持装置を横向きボス110に連結しておくといった方法などがある。
【0005】
このうち、前者の方法には、上掲の特許文献2によって示されたものが含まれる。
【0006】
一方、後者の方法を採用する場合において、フライバックトランス100の横向きボス110にビス止めされたフライバックトランス保持装置を電気機器筐体にビス止めすることがある。たとえば、図6に概略図で示したように、フライバックトランス保持装置に備わっている筒状部300を、電気機器筐体200に一体成形した筒状受部210に遊嵌合させた後で、筐体200の外側から取付けビス(不図示)を筒状部300にねじ込んで締め付けるということが行われる。ここで、筒状受部210に筒状部300が遊嵌合される構成を採用しているのは、フライバックトランスの横向きボス110に対するフライバックトランス保持装置のビス止めによる取付け精度や筒状受部210の位置精度にずれがあっても、筒状受部210を筒状部300に嵌合することができるようにすることなどによっている。
【特許文献1】実開平2−138410号公報
【特許文献2】実開平6−70215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、CRT型テレビジョン受像機の電気機器筐体は、フロントキャビネットとリアキャビネットとに分割されていて、フライバックトランス100を搭載した配線基板を装備しているフロントキャビネットに対して、リアキャビネットが後方から合わされるようになっていることが多い。そこで、フライバックトランス保持装置をリアキャビネットにビス止めするためには、リアキャビネット(筐体200)の外側から取付けビス(不図示)を筒状部300にねじ込んで締め付ける作業を行う必要がある。そして、そのようなビス止め作業を行うときには、筒状部300と筒状受部210とがリアキャビネットにより覆い隠されてしまっているので、作業者は筒状部300と筒状受部210とが正しく位置合わせされて遊嵌合さているか否かを目で見て判断することができない。そのため、作業者が取付けねじをリアキャビネットの外側からビス止め作業を行うことによって、筒状受部210に対して正しく位置合わせされていない筒状部300を傷付けてしまうという事態を起こしたり、場合によっては、筒状受部210が筒状部300に正しく遊嵌合されていないこともあって、そのときにはビス止め自体ができなくなる。
【0008】
本発明は以上の状況に鑑みてなされたものであり、フライバックトランス保持装置に関して、フライバックトランスに対する取付け精度や筒状受部の位置精度に多少のずれがあっても、筒状受部が筒状部に正しく嵌合されて筒状受部のビス挿通孔と筒状部の孔部とが満足のいく程度に位置合わせされて、作業者によるビス止め作業を、筒状部を傷付けたりすることなく容易にかつ正確に行うことができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るフライバックトランス保持装置は、フライバックトランスに連結される第1結合部と電気機器筐体に連結される第2結合部とを有して、フライバックトランスを電気機器筐体に連結することに用いられる。そして、上記第2結合部が、取付けねじがねじ込まれる孔部を有する筒状部と、上記取付けねじが挿通されるねじ挿通孔を有して上記筒状部が遊嵌合される筒状受部とを備えている。また、上記筒状部が上記第1結合部に一体化されているのに対して、上記筒状受部が、電気機器のフロントキャビネットの後端に合わされて筐体を形成するリアキャビネットに設けられていると共に、上記筒状部の外周面複数箇所に放射方向に張り出した突片が追加され、かつ、上記筒状受部に、上記突片を受け入れて上記筒状部の孔部を上記ねじ挿通孔に対して位置合わせするスリット状のガイド溝部が追加されている。
【0010】
この構成を備えるフライバックトランス保持装置によると、筒状受部と筒状部とが遊嵌合した状態では、筒状受部のガイド溝部が筒状部の突片を受け入れられている。そのため、ガイド溝部と突片とが共働して筒状受部と筒状部とを位置合わせする作用を発揮する。したがって、筒状受部のねじ挿通孔に挿通させた取付けねじを筒状部の孔部に適切にねじ込むことができるようになる。また、筒状部に設けられている突片が筒状受部のガイド孔部に滑るように入り込むことによって、筒状部が筒状受部に嵌まりやすくなるという作用が奏される。
【0011】
本発明では、上記突片が、少なくとも上記筒状部の外周面の90度おきの3箇所に設けられていることが望ましい。この構成であると、ガイド溝部と突片との共働により、筒状受部とその筒状受部に遊嵌合された筒状部とが互いに直交す2軸方向で位置合わせされる。このことにより、筒状受部のねじ挿通孔と筒状部の孔部が正確に位置合わせされて取付けねじを筒状部の孔部に適切にねじ込むことができるようになる。
【0012】
本発明では、上記第1結合部が、フライバックトランスの上部に設けられて上記筒状部の軸線方向に対して直交する方向の軸線を有する横向きボスにビス止めされるように構成されていることが望ましい。この構成であると、第1結合部をフライバックトランスの横向きボスにビス止めするときに当該フライバックトランス保持装置に発生する回転力が、筒状部を介してその筒状部が遊嵌合している筒状受部によって受け止められるだけでなく、突片とガイド溝部との嵌合部分によって筒状部が筒状受部に仮保持された状態になるので、第1結合部をビス止めするときの当該フライバックトランス保持装置の共回りや位置ずれが防止され、それだけ第1結合部のビス止め作業性が改善される。
【0013】
本発明に係るフライバックトランス保持装置の構成や作用は、後述する実施形態によっでさらに具体性をもって明らかになる。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成される本発明に係るフライバックトランス保持装置によれば、フライバックトランスに対する取付け精度や筒状受部の位置精度に多少のずれがあっても、筒状受部が筒状部に正しく嵌合されて筒状受部のビス挿通孔と筒状部の孔部とが満足のいく程度に位置合わせされる。したがって、作業者によるビス止め作業を、筒状部を傷付けたりすることなく容易にかつ正確に行うことができるようになるという効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の実施形態に係るフライバックトランス保持装置などを示した概略分解斜視図である。フライバックトランス保持装置10は、フライバックトランス100を電気機器筐体(たとえばキャビネット)200によって支持させるためのホルダーとしての役割を備えている。したがって、以下の説明では、フライバックトランス保持装置10をホルダー10と称することにする。
【0016】
ホルダー10は、配線基板300に搭載されているフライバックトランス100の上部の円柱状の横向きボス110にビス止めされる第1結合部20と電気機器の筐体200に固着される第2結合部50とを有して、フライバックトランス100をキャビネット200に連結することに用いられる。すなわち、第1結合部20が取付けビス400によって横向きボス110にビス止めされ、第2結合部50が取付けビス500によって筐体200にビス止めされる。
【0017】
ホルダー10の第1結合部20は、取付けビス400が挿通されるビス挿通孔21を備えていて、このビス挿通孔21に挿通させた取付けビス400を、フライバックトランス100の横向きボス110の孔部112にねじ込むことによってその横向きボス110にビス止めされる。
【0018】
ホルダー10の第2結合部50は、長いボスによって形成された筒状部60を有している。そして、第1結合部20をフライバックトランス100の横向きボス110にビス止めした状態では、筒状部60の軸線方向61と横向きボス110の軸線方向111とが互いに直交する方向を向いている。
【0019】
図2は筒状部60などを示した概略斜視図、図3は筒状部60の相手方である筒状受部80などを示した概略斜視図である。また、図4は筒状部60と筒状受部80とが互いに遊嵌合した状態を示した正面図である。
【0020】
図2に示した筒状部60と図3に示した筒状受部80は共に第2結合部50に含まれている。そして、図1からも明らかなように、筒状部60は第1結合部20と共に樹脂で一体成形されているのに対し、筒状受部80は筐体200に樹脂で一体成形されている。また、図2に示した筒状部60は取付けねじ500(図1参照)がねじ込まれる孔部62を有するボスでなり、図3に示した筒状受部80は取付けねじ500が挿通されるねじ挿通孔81を有するボスでなる。さらに、筒状受部80の内径は筒状部60の外径に比べて大きく定められていて、両者60,80は互いに比較的大きながたつきを保って互いに遊嵌合することができるようになっている。
【0021】
図2の示した筒状部60には、その外周面複数箇所、図例では外周面の90度おきの3箇所に放射方向に張り出したリブ状の突片65,66,67が一体に設けられている。そして、それらの突片65,66,67の先端コーナ部が面取りされて、その面取り箇所に傾斜した誘導ガイド面65a,66a,67aが形成されている。これに対し、図3に示した筒状受部80には、その周方向複数箇所、図例では90度おきの3箇所にスリット状のガイド溝部85,86,87が設けられていて、それらのガイド溝部85,86,87の始端部分の両側には、傾斜した誘導ガイド面85a,86a,87aが形成されている。そして、ガイド溝部85,86,87の溝幅寸法は、上記突片65,66,67の厚さ寸法よりも長くなっていて、ガイド溝部85,86,87に突片65,66,67が各別に容易に嵌まり合うようになっている。
【0022】
第1結合部50の筒状部60と筒状受部80とが上記のように構成されていると、両者50,80を向き合わせて近付けていくだけで、筒状部60の突片65,66,67が筒状受部80のガイド溝部85,86,87に滑るように円滑に嵌まり込んで、図4のように筒状部60と筒状受部80とが互いに遊嵌合される。また、その筒状部60と筒状受部80とが遊嵌合しているだけであるにもかかわらず、90度おきに位置している突片65,66,67と85,86,87とが互いに直交する2軸方向で係合することになるために、筒状部60の孔部62と筒状受部80のねじ挿通孔210とが比較的正確に位置合わせされる。したがって、作業者は筐体200の外側からの作業でねじ挿通孔210に挿通させた取付けねじ500(図1参照)を筒状部60の孔部62に正しくねじ込むことが可能になる。また、突片65,66,67の誘導ガイド面65a,66a,67aやガイド溝部85,86,87の誘導ガイド面85a,86a,87aが、突片65,66,67とガイド溝部85,86,87との嵌合を容易にすることに役立つ。
【0023】
ところで、冒頭で説明したように、CRT型テレビジョン受像機の筐体は、フロントキャビネットとリアキャビネットとに分割されていて、フロントキャビネットに対してリアキャビネットを後方からスライドさせて合わされるようになっていることが多い。そのようなリアキャビネットが図1や図3に示した筐体200に相当しているときには、リアキャビネットをフロントキャビネットの後方からスライドさせて合わせるという組立工程を行うことによって、筒状受部80が、フライバックトランス100にビス止めされているホルダー10の筒状部60に正しく遊嵌合されることが必要である。仮に、上記組立工程を行うときに、筒状受部80が、フライバックトランス100にビス止めされているホルダー10の筒状部60に正しく遊嵌合されないという状況が生じた場合には、作業者がリアキャビネットの外側からビス止め作業を行うことによって、筒状受部80に対して正しく位置合わせされていない筒状部60を傷付けてしまうという事態を起こしたり、ビス止め自体ができないという自体が生じたりする。
【0024】
この点に関して、上記した実施形態では、既述したように、筒状部60の突片65,66,67が筒状受部80のガイド溝部85,86,87に滑るように円滑に嵌まり込んで筒状部60と筒状受部80とが互いに遊嵌合され、しかも、突片65,66,67の誘導ガイド面65a,66a,67aやガイド溝部85,86,87の誘導ガイド面85a,86a,87aが、突片65,66,67とガイド溝部85,86,87との嵌合を容易にすることに役立つので、組立工程での筒状受部80と筒状部60との嵌合が円滑にかつ正確に行われるようになるという利点がある。そのため、作業者がビス止め作業で筒状受部80に対して正しく位置合わせされていない筒状部60を傷付けてしまうという事態を起こしたり、ビス止め自体ができないという自体が生じたりするという状況が改善される。
【0025】
この実施形態では、筒状部60や筒状受部80に3つずつの突片65,66,67やガイド溝部85a,86a,87aを設けた事例を説明したけれども、突片やガイド溝部の数は図例に限定されない。しかし、突片やガイド溝部の数を1つにすると、位置決め作用が不十分になるそれがあるので、それらの数は2つ以上の複数に定めておくことが望ましい。
【0026】
なお、本発明に係るフライバックトランス保持装置(ホルダー10)において、図1などに示した筐体200がパネルであって、筒状部60と筒状受部80との嵌合箇所が作業者の目に見える場合には、筒状部60に筒状受部80を遊嵌合させて突片65,66,67をガイド溝部85,86,87に受け入れさせておくと、ホルダー10が筐体200に仮固定された状態になる。そのため、ホルダー10の第1結合部20をフライバックトランス100の横向きボス110にビス止めする作業を容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るフライバックトランス保持装置などを示した概略分解斜視図である。
【図2】筒状部などを示した概略斜視図である。
【図3】筒状部の相手方である筒状受部などを示した概略斜視図である。
【図4】筒状部と筒状受部とが互いに遊嵌合した状態を示した正面図である。
【図5】フライバックトランス100の基本的な外観形状を示した概略斜視図である。
【図6】フライバックトランスホルダーとしての保持装置の筒状部を筐体に嵌め込む状態を示した概略分解斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
10 フライバックトランス保持装置
20 第1結合部
50 第2結合部
60 筒状部
61 筒状受部の軸線方向
62 孔部
65,66,67 突片
81 ねじ挿通孔
80 筒状受部
85,86,87 ガイド溝部
100 フライバックトランス
110 横向きボス
111 筒状部
200 筐体(リアキャビネット)
500 取付けねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライバックトランスに連結される第1結合部と電気機器筐体に連結される第2結合部とを有して、フライバックトランスを電気機器筐体に連結することに用いられるフライバックトランス保持装置であって、
上記第2結合部が、取付けねじがねじ込まれる孔部を有する筒状部と、上記取付けねじが挿通されるねじ挿通孔を有して上記筒状部が遊嵌合される筒状受部とを備え、
上記筒状部が上記第1結合部に一体化されているのに対して、上記筒状受部が、電気機器のフロントキャビネットの後端に合わされて筐体を形成するリアキャビネットに設けられていると共に、上記筒状部の外周面複数箇所に放射方向に張り出した突片が追加され、かつ、上記筒状受部に、上記突片を受け入れて上記筒状部の孔部を上記ねじ挿通孔に対して位置合わせするスリット状のガイド溝部が追加されていることを特徴とするフライバックトランス保持装置。
【請求項2】
上記突片が、少なくとも上記筒状部の外周面の90度おきの3箇所に設けられている請求項1に記載したフライバックトランス保持装置。
【請求項3】
上記第1結合部が、フライバックトランスの上部に設けられて上記筒状部の軸線方向に対して直交する方向の軸線を有する横向きボスにビス止めされるように構成されている請求項1又は請求項2に記載したフライバックトランス保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−64818(P2009−64818A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229104(P2007−229104)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】