説明

フライホイールエネルギー貯蔵装置

【課題】フライホイールエネルギー貯蔵装置の回転損失を低減させ、フライホイールエネルギー貯蔵装置のエネルギーの貯蔵時間や貯蔵量を増大させること。
【解決手段】本発明では、フライホイール(5)を接続した回転軸(3)を超伝導スラスト軸受(4)で回動自在に支持したフライホイールエネルギー貯蔵装置(1)において、回転軸(3)の中途部にフライホイール(5)を接続し、フライホイール(5)の前後で回転軸(3)を超伝導スラスト軸受(4、4)で回動自在に支持するとともに、フライホイール(5)を超伝導スラスト軸受(6)で回動自在に支持することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイールを接続した回転軸を超伝導スラスト軸受で回動自在に支持したフライホイールエネルギー貯蔵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーを一時的に貯蔵しておき必要時に取出せるようにしたフライホイールエネルギー貯蔵装置が開発されている。
【0003】
このフライホイールエネルギー貯蔵装置は、回転軸を超伝導スラスト軸受で回動自在に支持するとともに、回転軸にフライホイールを接続した構成となっている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
そして、余剰エネルギーなどを利用して回転軸を回転させ、フライホイールに作用する遠心力を利用して長時間にわたって回転軸を回転させ続け、これによりエネルギーを貯蔵し、その後、必要となったときに回転軸からエネルギーを取出すようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−300017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のフライホイールエネルギー貯蔵装置にあっては、回転損失を低減させることによってエネルギーの貯蔵時間や貯蔵量を増大させることが課題となっていた。
【0007】
特に、従来のフライホイールエネルギー貯蔵装置では、フライホイールの遠心力によって回転軸が撓み、回転損失が生じてしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、フライホイールを接続した回転軸を超伝導スラスト軸受で回動自在に支持したフライホイールエネルギー貯蔵装置において、回転軸の中途部にフライホイールを接続し、フライホイールの前後で回転軸を超伝導スラスト軸受で回動自在に支持するとともに、フライホイールを超伝導スラスト軸受で回動自在に支持することにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記フライホイールは、回転軸の回転中心から偏芯させた位置に円環体を配置するとともに、円環体と回転軸との間に円周方向に向けて等間隔に配置したスポークを介設し、回転軸にスポークを半径方向に向けて摺動自在に接続する一方、円環体にスポークを円周方向に向けて移動可能かつ係止可能に接続することにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項2に係る本発明において、前記円環体にガイドレールを形成するとともにガイドレールの所定位置にストッパーを形成する一方、前記スポークにガイドレールに沿って滑動する車輪を設け、車輪がガイドレールに沿って滑動することでスポークを円周方向に向けて移動可能とし、車輪とストッパーとが当接することでスポークを係止可能とすることにした。
【発明の効果】
【0011】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0012】
すなわち、本発明では、フライホイールを接続した回転軸を超伝導スラスト軸受で回動自在に支持したフライホイールエネルギー貯蔵装置において、回転軸の中途部にフライホイールを接続し、フライホイールの前後で回転軸を超伝導スラスト軸受で回動自在に支持するとともに、フライホイールを超伝導スラスト軸受で回動自在に支持することにしているために、フライホイールの遠心力によって回転軸が撓んでしまうのを防止することができ、回転損失を低減させることができ、フライホイールエネルギー貯蔵装置のエネルギーの貯蔵時間や貯蔵量を増大させることができる。
【0013】
また、本発明では、回転軸の回転中心から偏芯させた位置に円環体を配置するとともに、円環体と回転軸との間に円周方向に向けて等間隔に配置したスポークを介設し、回転軸にスポークを半径方向に向けて摺動自在に接続する一方、円環体にスポークを円周方向に向けて移動可能かつ係止可能に接続することにしているために、回転軸とフライホイールとの回転差を吸収しながら回転軸を撓ませることなく回転軸とフライホイールとを連動連結させることができる。
【0014】
また、本発明では、円環体にガイドレールを形成するとともにガイドレールの所定位置にストッパーを形成する一方、スポークにガイドレールに沿って滑動する車輪を設け、車輪がガイドレールに沿って滑動することでスポークを円周方向に向けて移動可能とし、車輪とストッパーとが当接することでスポークを係止可能とすることにしているために、回転軸とフライホイールとの連動機構を組立容易な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るフライホイールエネルギー貯蔵装置を示す正面図。
【図2】同右側面図。
【図3】同中央端面図。
【図4】同前側端面図。
【図5】同後側断面図。
【図6】同軸周り展開側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るフライホイールエネルギー貯蔵装置の具体的な構造について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1〜図6に示すように、フライホイールエネルギー貯蔵装置1は、ケーシング2に前後に伸延する回転軸3を前後一対の超伝導スラスト軸受4,4を介して回動自在に取付けるとともに、回転軸3の中央部にフライホイール5を接続し、フライホイール5をケーシング2に超伝導スラスト軸受6を介して回動自在に取付けている。
【0018】
ケーシング2は、矩形板状の基台7の前後端左側部に前後一対の板状の支持台8.9を立設して支持台8,9で超伝導スラスト軸受4,4を支持するとともに、基台7の中央部に板状の支持台10を立設して支持台10で超伝導スラスト軸受6を支持している。
【0019】
回転軸3は、中空円筒状に形成しており、フライホイール5よりも前方位置及び後方位置でケーシング2に取付けた超伝導スラスト軸受4,4で回動自在に支持されている。
【0020】
超伝導スラスト軸受4,4は、回転軸3の外周部に円環状のローター側の永久磁石11を取付ける一方、ケーシング2の支持台8,9の上部に中空円環状のケース12を取付け、ケース12の内周面に超伝導物質からなるステーター側の超伝導体13を円周方向に間隔をあけて複数個埋設している。なお、ここではケース12と超伝導体13とを別体で形成しているが、一体的に形成するようにしてもよい。
【0021】
また、超伝導スラスト軸受4,4は、ケース12の左側部に中空部へ連通する注入口14と排出口15とを形成しており、超伝導体13を冷却するための液体窒素等の冷媒をケース12の注入口14から中空部に注入したり、冷媒をケース12の中空部から排出口15に排出できるようにしている。
【0022】
これにより、超伝導スラスト軸受4,4は、ケース12の中空部に充填した冷媒の作用で超伝導現象を生起させ、回転軸3を超伝導ピン止め効果現象により軸線方向に移動させることなく回動自在に支持するようにしている。
【0023】
フライホイール5は、回転軸3の回転中心から偏芯させた位置で円環状の円環体16を超伝導スラスト軸受6によって回動自在に支持し、円環体16と回転軸3との間に円周方向に向けて等間隔に配置した前後一対の8個のスポーク17を介設している。
【0024】
ここで、円環体16は、前後面に円環状のガイド体18を取付け、各ガイド体18の内外周面に溝状のガイドレール19,20を形成するとともに、外側のガイドレール20に5個のストッパー21を円周方向に間隔をあけて形成している。
【0025】
一方、スポーク17は、回転軸3に左右一対の棒体22をベアリング23を介して半径方向に向けて摺動自在に取付け、棒体22の一端部に錘24をダンパー25を介して棒体22に沿って摺動自在に取付けるとともに、棒体22の他端部に錘26を棒体22に沿って摺動自在に取付け、各錘24,26に回転軸3と平行に伸延させた棒状の支持体27の基端部を取付け、支持体27の先端部に略三角板状のフレーム28を回転軸3と直交する方向に回動自在に取付け、フレーム28の内周側に内側のガイドレール19に沿って滑動する車輪29を回動自在に取付け、フレーム28の外周側に外側のガイドレール20に沿って滑動する車輪30,30を回動自在に取付けている。
【0026】
これにより、フライホイール5は、回転軸3にスポーク17を半径方向に向けて摺動自在に接続するとともに、車輪29,30がガイドレール19,20に沿って滑動することでスポーク17を円周方向に向けて移動可能とし、車輪30とストッパー21とが当接することでスポーク17を係止可能として、円環体16にスポーク17を円周方向に向けて移動可能かつ係止可能に接続している。
【0027】
超伝導スラスト軸受6は、円環体16の外周部に円環状のローター側の永久磁石31を取付ける一方、ケーシング2の支持台10の上部に中空円環状のケース32を取付け、ケース32の内周面にステーター側の超伝導体33を円周方向に間隔をあけて複数個埋設している。なお、ここでは、円環体16と永久磁石31とを別体で形成しているが、一体的に形成するようにしてもよい。また、ケース32と超伝導体33も一体的に形成するようにしてもよい。
【0028】
また、超伝導スラスト軸受6は、ケース32の左側部に中空部へ連通する注入口34と排出口35とを形成しており、超伝導体33を冷却するための液体窒素等の冷媒をケース32の注入口34から中空部に注入したり、冷媒をケース32の中空部から排出口35に排出できるようにしている。
【0029】
これにより、超伝導スラスト軸受6は、ケース32の中空部に充填した冷媒の作用で超伝導現象を生起させ、フライホイール5を超伝導ピン止め効果現象により軸線方向に移動させることなく回動自在に支持するようにしている。
【0030】
フライホイールエネルギー貯蔵装置1は、以上に説明したように構成しており、回転軸3を回転させることで、フライホイール5に作用する遠心力を利用して長時間にわたって回転軸3を回転させ続け、これによりエネルギーを貯蔵し、その後、必要となったときに回転軸3からエネルギーを取出すようにしている。
【0031】
なお、回転軸3を回転させる機構は特に限定されるものではなく、クラッチ等の動力断続機構を介して接続したモータなどを用いてもよく、或いは、回転軸3を振動や風力などを利用して回転させるようにしてもよい。
【0032】
また、回転軸3からエネルギーを取出す機構も特に限定されるものではなく、クラッチ等の動力断続機構を介して接続した発電機などを用いてもよく、或いは、フライホイールエネルギー貯蔵装置1を動力源とし回転軸3から直接動力を取出すように構成してもよい。
【0033】
以上に説明したように、上記フライホイールエネルギー貯蔵装置1では、回転軸3の中途部(中央部)にフライホイール5を接続し、フライホイール5の前後で回転軸3を超伝導スラスト軸受4,4で回動自在に支持するとともに、フライホイール5を超伝導スラスト軸受6で回動自在に支持した構成となっている。
【0034】
そのため、上記構成のフライホイールエネルギー貯蔵装置1では、超伝導スラスト軸受6でフライホイール5を支持することでフライホイール5の遠心力によって回転軸3が撓んでしまうのを防止することができ、これにより、フライホイールエネルギー貯蔵装置1の回転損失を低減させることができ、フライホイールエネルギー貯蔵装置1のエネルギーの貯蔵時間や貯蔵量を増大させることができる。
【0035】
また、上記フライホイールエネルギー貯蔵装置1では、回転軸3の回転中心から偏芯させた位置に円環体16を配置するとともに、円環体16と回転軸3との間に円周方向に向けて等間隔に配置したスポーク17を介設し、回転軸3にスポーク17を半径方向に向けて摺動自在に接続する一方、円環体16にスポーク17を円周方向に向けて移動可能かつ係止可能に接続している。
【0036】
そのため、上記構成のフライホイールエネルギー貯蔵装置1では、回転軸3とフライホイール5との回転差を吸収しながら回転軸3を撓ませることなく回転軸3とフライホイール5とを連動連結させることができる。
【0037】
さらに、上記フライホイールエネルギー貯蔵装置1では、円環体16にガイドレール20を形成するとともにガイドレール20の所定位置にストッパー21を形成する一方、スポーク17にガイドレール20に沿って滑動する車輪30を設け、車輪30がガイドレール20に沿って滑動することでスポーク17を円周方向に向けて移動可能とし、車輪30とストッパー21とが当接することでスポーク17を係止可能としている。
【0038】
そのため、上記構成のフライホイールエネルギー貯蔵装置1では、回転軸3とフライホイール5との連動機構を組立容易な構造とすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 フライホイールエネルギー貯蔵装置 2 ケーシング
3 回転軸 4 超伝導スラスト軸受
5 フライホイール 6 超伝導スラスト軸受
7 基台 8,9,10 支持台
11 永久磁石 12 ケース
13 超伝導体 14 注入口
15 排出口 16 円環体
17 スポーク 18 ガイド体
19,20 ガイドレール 21 ストッパー
22 棒体 23 ベアリング
24 錘 25 ダンパー
26 錘 27 支持体
28 フレーム 29,30 車輪
31 永久磁石 32 ケース
33 超伝導体 34 注入口
35 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライホイールを接続した回転軸を超伝導スラスト軸受で回動自在に支持したフライホイールエネルギー貯蔵装置において、
回転軸の中途部にフライホイールを接続し、フライホイールの前後で回転軸を超伝導スラスト軸受で回動自在に支持するとともに、フライホイールを超伝導スラスト軸受で回動自在に支持したことを特徴とするフライホイールエネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記フライホイールは、回転軸の回転中心から偏芯させた位置に円環体を配置するとともに、円環体と回転軸との間に円周方向に向けて等間隔に配置したスポークを介設し、回転軸にスポークを半径方向に向けて摺動自在に接続する一方、円環体にスポークを円周方向に向けて移動可能かつ係止可能に接続したことを特徴とする請求項1に記載のフライホイールエネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
前記円環体にガイドレールを形成するとともにガイドレールの所定位置にストッパーを形成する一方、前記スポークにガイドレールに沿って滑動する車輪を設け、車輪がガイドレールに沿って滑動することでスポークを円周方向に向けて移動可能とし、車輪とストッパーとが当接することでスポークを係止可能としたことを特徴とする請求項2に記載のフライホイールエネルギー貯蔵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−72660(P2012−72660A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157213(P2009−157213)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(509186605)有限会社留さん (1)
【出願人】(508313574)
【出願人】(509186616)
【出願人】(509186627)
【Fターム(参考)】