説明

フラクトオリゴ糖の投与に関連する方法及びキット

【課題】コンパニオンアニマルにおける1つ以上の食物構成成分の全消化管消化率を高める方法を提供する。
【解決手段】コンパニオンアニマルにフラクトオリゴ糖を含むコンパニオンアニマル用組成物を投与するとともに、前記組成物の使用はコンパニオンアニマルにおける1つ以上の食物構成成分の全消化管消化率を高めるために有用であるという情報を含むキットもまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラクトオリゴ糖を含むコンパニオンアニマル用組成物を使用する方法、並びにこうした組成物を含むキットを対象とする。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の胃腸管の生体構造、生理機能、及び微生物生態系は、ヒト、イヌ、ネコ、及び他の種の間で異なる。例えば、身長又は体重によって正規化する時、イヌ科動物及びネコ科動物の胃腸管の全長は、ヒトのような雑食性の哺乳類の胃腸管の全長より短く、並びに通過時間の違い及び食習慣のために腸の細菌フローラもまた変化する。腸の細菌フローラは、フラクトオリゴ糖のような発酵性繊維の分解の第1の原因であるため、異なる種は発酵性繊維を独自に使用することが予期される。
【0003】
イヌ、ネコ、及びヒトの食物繊維を使用する能力を直接比較した研究はほとんどなかった。1つの研究は、幾つかの食物繊維を代謝するイヌ、ネコ、及びヒトの大腸の細菌フローラの能力を比較している。試験された発酵性繊維からのブチレートの生成は、これは繊維代謝の特徴であるが、ヒトのサンプルについては、ネコ又はイヌのどちらと比較しても約50%高く、及びラクテートの生成は、ネコ及びヒトについては、イヌのサンプルと比較して約73%低かった。サンボルド(Sunvold)らの「ネコ、イヌ、ウマ、及びブタからの糞便接種材料並びにウシからの反芻流動物を使用する、セルロース、ビートパルプ、シトラスパルプ、及びシトラスペクチンの生体外発酵(In vitro fermentation of cellulose,beet pulp,citrus pulp,and citrus pectin using fecal inoculum from cats,dogs,horses,and pigs and ruminant fluid from cattle)」、畜産学誌(Journal of Animal Science)、73巻、3639〜3648ページ(1995年)を参照のこと。したがって、この研究から、1)コンパニオンアニマルは、フラクトオリゴ糖を包含する食物繊維を代謝及び使用するそれらの能力においてヒトと異なること、及び2)食物繊維の生物学的効果は、イヌ、ネコ、及びヒトの間でこれらの違いに基づいて変わること、及びヒトにおける研究は、イヌ及びネコのようなコンパニオンアニマルについての発見を必ずしも予測するものではないことが明らかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンパニオンアニマルは発酵性繊維を、例えば栄養素消化率及びカルシウム吸収に関連して独自の方式で使用し、それによって、胃腸の健康の治療、骨の健康の改善、及び他の治療のために新規の治療効果をもたらすことが、本明細書において驚くべきことに発見された。なお更には、本発明の発明者達の研究に基づくと、イヌのようなコンパニオンアニマルに関連する以前の研究は、栄養素消化率及び関連する働きに対する発酵性繊維の有益な効果については不完全であった場合もある。例えば、以前の研究は、少数のイヌを使用して、イヌにおいて全消化管栄養素消化率は発酵性繊維の投与により影響されないことを示している。例えば、フリッキンガー(Flickinger)らの「フルクタンのイヌの餌への補給により影響される時の栄養素消化率、微生物個体群、及びタンパク質異化生成物(Nutrient digestibilities,microbial populations,and protein catabolites as affected by fructan supplementation of dog diets)」、畜産学誌(J.Anim.Sci.)、81巻、2008〜2018ページ(2003年)を参照のこと。しかしながら、驚くべきことに、本発明者達による更なる研究に基づくと、栄養素消化率のような働きは、イヌを包含するコンパニオンアニマルにおける発酵性繊維の使用により影響されることが、現在では示されている。本発明のこの利益及びその他の利益については、本明細書において記載される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、多様な実施形態を対象とし、その際第1の実施形態は、コンパニオンアニマルにおける1つ以上の食物構成成分の全消化管消化率を高める方法であって、この方法は、コンパニオンアニマルにフラクトオリゴ糖を含むコンパニオンアニマル用組成物を投与することを含む。コンパニオンアニマル用組成物、及びコンパニオンアニマルによるコンパニオンアニマル用組成物の使用はコンパニオンアニマルにおける1つ以上の食物構成成分の全消化管消化率を高めるために有用であるという情報を含むキットもまた提供される。
【0006】
関連しているが、別の実施形態では、本発明は、カルシウム吸収を高める、骨の健康を改善する、強さを改善する、身体活動能力を改善する、及びこれらの組み合わせから選択される方法を対象とし、この方法は、コンパニオンアニマルにフラクトオリゴ糖を含むコンパニオンアニマル用組成物を投与することを含む。コンパニオンアニマル用組成物、並びにコンパニオンアニマルによるコンパニオンアニマル用組成物の使用は、カルシウム吸収を高める、骨の健康を改善する、強さを改善する、身体活動能力を改善する、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される目的のために有用であるという情報を含むキットもまた提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
例えば刊行物及び特許が挙げられる様々な文書が、本開示を通して引用される。このようなすべての文書は参考として本明細書に組み込まれる。
【0008】
百分率及び比率はすべて、特に指示しない限り、重量で計算される。百分率及び比率はすべて、特に指示しない限り、組成物全体を基準にして計算される。
【0009】
本明細書で参照するのは、本発明で使用する様々な成分を包含する構成要素の商品名である。本発明者達は本明細書において、ある特定の商品名の物質により限定することを目的としていない。商品名により参照されているものと同等の物質(例えば、異なる名称又は参照番号で異なる供給源から得られるもの)は、本明細書の記載において置き換えられて使用されてもよい。
【0010】
本発明の記載において、様々な実施形態及び/又は個々の構成要素が開示される。当業者には明らかであるが、これらの実施形態及び構成要素のあらゆる組み合わせが可能であり、並びに結果として本発明の好ましい実施となり得る。
【0011】
本明細書の組成物は、本明細書に記載されるようないずれかの構成要素を含んでもよいし、いずれかの構成要素から本質的に成ってもよいし、又はいずれかの構成要素から成ってもよい。
【0012】
本発明の様々な実施形態及び個々の構成要素を説明し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正が可能である。これも明らかであろうが、先行する開示で教示された実施形態及び構成要素のあらゆる組み合わせが可能であると共に、本発明の好ましい実施となり得る。
【0013】
(本発明の方法及びキット)
本発明の方法及びキットは、フラクトオリゴ糖を含むコンパニオンアニマル用組成物を使用する。フラクトオリゴ糖(fructooliogosaccharides)は、バナナ、大麦、ニンニク、ハチミツ、タマネギ、ライ麦、ブラウンシュガー、トマト、アスパラガス、チョウセンアザミ、小麦、ヤーコン、又はチコリーが挙げられる多様な果物又は野菜に見い出せる天然起源の化合物である。フラクトオリゴ糖は、例えば、チコリーとして、イヌリンとして、又は短鎖オリゴフラクトースとして提供されてもよい。本明細書で特に有用なのは、1−ケストース(GFと略される)、ニストース(GF)、及び1F−β−フラクトフラノシルニストース(GF)の内の少なくとも1つを含むフラクトオリゴ糖である。フラクトオリゴ糖は、本明細書で記載されるもののような植物から抽出できるが、それらはまた、フルクトース単位(類)とスクロースのフルクトース単位とのB−(2−1)−グリコシド結合によって、1、2、又は3個のフルクトース単位をスクロース分子に加えることにより人工的に形成することができる。例として、フラクトオリゴ糖は、ゴールデン・テクノロジーズ・カンパニー社(Golden Technologies Company,Incorporated)から商標ニュートラフローラ(NUTRAFLORA)(これは、1−ケストース、ニストース、及び1F−β−フラクトフラノシルニストースを含む短鎖オリゴフラクトースである)として市販されている。別の例として、短鎖フラクトオリゴ糖及びイヌリンの混合物は、プレバイオ1(PREBIO1)又は市販のラフティロース(RAFTILOSE)及びラフティライン(RAFTILINE)の混合物であり得る。
【0014】
フラクトオリゴ糖は、短鎖オリゴフラクトースであってもよく、これは当業者に周知である。本明細書で特に有用なのは、1−ケストース(GFと略される)、ニストース(GF)、及び1F−β−フラクトフラノシルニストース(GF)を含む短鎖オリゴフラクトースである。好ましい実施形態では、短鎖オリゴフラクトースは、短鎖オリゴフラクトースの約25重量%〜約45重量%の1−ケストース、約25重量%〜約45重量%のニストース、及び約1重量%〜約20重量%の1F−β−フラクトフラノシルニストース、あるいは短鎖オリゴフラクトースの約30重量%〜約40重量%の1−ケストース、約50重量%〜約60重量%のニストース、及び約5重量%〜約15重量%の1F−β−フラクトフラノシルニストースを含む。例として、短鎖オリゴフラクトースは、ゴールデン・テクノロジーズ・カンパニー社(Golden Technologies Company,Incorporated)から商標ニュートラフローラ(NUTRAFLORA)(これは、すべて短鎖オリゴフラクトースの重量で約35重量%の1−ケストース、55重量%のニストース、及び10重量%の1F−β−フラクトフラノシルニストースを含む短鎖オリゴフラクトースである)として市販されている。
【0015】
本明細書の実施形態では、フラクトオリゴ糖は、特定の有機物消失百分率を示してもよい。この任意の実施形態では、フラクトオリゴ糖は、大腸菌により生体外で24時間にわたって発酵される時、約15%〜約60%の有機物消失(OMD)を有してもよい。即ち、初めに存在した総有機物の約15%〜約50%は、大腸菌により発酵され及び変換される。フラクトオリゴ糖の有機物消失は、あるいは約20%〜約50%、あるいは約30%〜約40%である。
【0016】
したがって、生体外OMD百分率は次のように計算されてもよい:
(1−((OM残留物−OMブランク)/初めのOM))×100
ここで、OM残留物は24時間の発酵の後に回収された有機物であり、OMブランクは対応するブランク管(即ち、培地及び希釈された糞便を含有するが、基質は含有しない管)中で回収された有機物であり、及び初めのOMは発酵前に管の中に設置された有機物である。手順の更なる詳細は、サンボルド(Sunvold)らの畜産学誌(J.Anim.Sci.)、73巻、1099〜1109(1995年)に見出される。
【0017】
コンパニオンアニマル用組成物は、本明細書に記載されるように、様々な濃度のフラクトオリゴ糖を含んでもよい。例えば、この組成物は、すべてコンパニオンアニマル用組成物の重量で約0.01重量%〜約10重量%、あるいは約0.01重量%〜約5重量%、あるいは約0.01重量%〜約2重量%、あるいは約0.01重量%〜約2重量%、あるいは約0.01重量%〜約0.15重量%のフラクトオリゴ糖を含んでもよい。
【0018】
記載したように、本明細書で使用されるフラクトオリゴ糖は、チコリー又はイヌリンであってもよい。あるいは、本明細書の任意の実施形態では、組成物はイヌリン及び/又はチコリー(一般的にはチコリーの根とも呼ばれる)を実質的に含まない。本明細書で使用する時、物質に関して「実質的に含まない」とは、組成物が、すべて組成物の重量で約0.1重量%未満の言及した物質、より好ましくは約0.05重量%未満の言及した物質、更により好ましくは約0.01重量%未満の言及した物質、更により好ましくは約0.005重量%未満の言及した物質を含むことを意味する。
【0019】
任意に、本明細書の組成物は、乾燥組成物(例えば、キブル)、半生組成物、湿った組成物、又はこれらのいずれかの混合物のような食べ物組成物であってもよい。あるいは又は更には、組成物は、グレービー、飲用水、ヨーグルト、粉末、懸濁液、噛み物、トリート(例えばビスケット)、又はいずれかの他の供給形態のようなサプリメントである。
【0020】
その上、好ましい実施形態では、組成物は栄養的にバランスがとれている。本明細書で使用する時、コンパニオンアニマル用の組成物に関して用語「栄養的にバランスがとれている」とは、組成物が、コンパニオンアニマルの栄養学分野の第一人者の推奨に基づいた適切な量及び割合で、生命を維持するために必要な既知の栄養素を有することを意味する。
【0021】
本明細書の組成物は、任意に1つ以上の更なる構成成分を含んでもよい。他の構成成分は、本明細書で使用される組成物に包含されるのに有益であるが、本発明の目的には任意である。例えば、記載したように、食物組成物は、好ましくは栄養的にバランスがとれている。1つの実施形態では、食物組成物は、乾物を基準として、食物組成物の約20重量%〜約50重量%の粗タンパク質、あるいは約20重量%〜約40重量%の粗タンパク質、又はあるいは約20重量%〜約35重量%の粗タンパク質を含んでもよい。粗タンパク質物質は、大豆、綿種子、及び落花生のような植物性タンパク質、又はカゼイン、アルブミン、及び肉タンパク質のような動物性タンパク質を含んでもよい。本明細書で有用な肉タンパク質の非限定例には、牛肉、豚肉、子羊肉、鶏肉、魚、野菜、及びこれらの混合物からなる群から選択されるタンパク質供給源が挙げられる。
【0022】
更に、組成物は、乾物を基準として、食物組成物の約5重量%〜約40重量%の脂肪、あるいは約10重量%〜約35重量%の脂肪を含んでもよい。
【0023】
本発明の組成物は、炭水化物供給源を更に含んでもよい。米、トウモロコシ、ミロ、サトウモロコシ、大麦、アルファルファ、小麦などのようなグレイン又はシリアルは、実例となる供給源である。
【0024】
組成物はまた、乾燥乳清及び他の乳製品副産物のような他の物質をまた含有してもよい。
【0025】
組成物は、短鎖オリゴフラクトースに追加して繊維供給源を更に含んでもよい。多様な可溶性又は不溶性繊維が使用されてもよく、これは当業者に周知である。1つの実施形態では、繊維供給源の少なくとも一部は、ビートパルプ(甜菜から)、アラビアガム、タルハガム(gum talha)、オオバコ、コメヌカ、イナゴマメガム、シトラスパルプ、ペクチン、フラクトオリゴ糖、マンナンオリゴフルクトース(mannanoligofructose)、大豆繊維、アラビノガラクタン、ガラクトオリゴ糖、アラビノキシラン、及びこれらの混合物から選択される。
【0026】
1つの実施形態では、追加の繊維供給源は、発酵性繊維を含む。発酵性繊維は哺乳類により消化されないが、ビフィドバクテリウム属のような腸内細菌種によって代謝される場合がある。しかしながら、すべての腸内細菌が発酵性繊維を代謝できるわけではない。特に、サルモネラ属、大腸菌、及びクロストリジウム属のような細菌は、こうした繊維をいずれかの意味のある程度にまで処理することができない。この優先的な消化性は、発酵性繊維に対して部類として適用でき、コンパニオンアニマルの小腸内の全体的細菌フローラを改善するために使用できる。発酵性繊維は、乳酸菌及びビフィドバクテリウム属のような「良い」細菌にのみ食物を与えるので、サルモネラ属、大腸菌、及びクロストリジウム属のような有害な細菌の量は、食物供給源の減少のために低下する場合がある。そのため、有益な細菌種のための好ましい食物供給源を提供することにより、発酵性繊維により補われた餌は「悪い」細菌の量を減らしながら「良い」腸内細菌を増加することができる。
【0027】
組成物は、任意に、組成物の約0.001重量%〜約30重量%、あるいは約0.01重量%〜約20重量%、又はあるいは約1重量%〜約16重量%の総食物繊維を含んでもよい。
【0028】
組成物はまた1つ以上の栄養素を含んでもよい。本明細書の高められたカルシウム吸収に関連する利益に一致して、当業者は、典型的な又は高級なコンパニオンアニマル用組成物中に存在するカルシウムと比較してカルシウムの濃度を任意に低下させてもよい。例えば、任意に、組成物は、組成物の重量で約1重量%未満のカルシウム、あるいはすべて組成物の重量で約0.01重量%〜約0.95重量%のカルシウム、あるいは約0.1重量%〜約0.95重量%のカルシウム、あるいは約0.5重量%〜約0.95重量%のカルシウムを含む。
【0029】
(本発明の方法)
本発明の方法は、本明細書に記載される1つ以上の健康上の利益を提供するために、本発明の組成物をコンパニオンアニマルに投与すること(即ち摂取を通じて)を含む。
【0030】
1つの実施形態では、本発明は、コンパニオンアニマルにおける1つ以上の食物構成成分の全消化管消化率を高める方法に関する。全消化管消化率は、当該技術分野において周知であり、並びに全消化管灰分消化率、全消化管繊維消化率、全消化管脂肪消化率、及び全消化管乾物消化率を包含する全消化管消化率を決定する方法は、本明細書の以下に記載される。食物構成成分は、当業者が強化することを望むいずれの食物構成成分であってもよく、その例は、栄養素又は食べ物の他の構成成分であってもよい。1つの実施形態では、方法は複数の食物構成成分の全消化管消化率を高めることに関する。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、カルシウム吸収を高める、骨の健康を改善する、強さを改善する、身体活動能力を改善する、及びこれらの組み合わせから選択される方法に関する。これらの利益の各々及び測定方法は当業者に周知であるが、これらの利益の幾つかを対象とする様々な分析方法が本明細書の以下に記載される。
【0032】
一般に、カルシウム吸収の強化は当該技術分野において周知である。その上、骨の健康の利益には、これらに限定されないが、骨量の減少の予防、抑制、中断、及び/若しくは逆転、並びに/又は骨量の増加、並びに/又は骨粗鬆症の予防、抑制、中断、及び/若しくは逆転が挙げられる。その上、骨の健康の利益には、コンパニオンアニマルに特有である多数の骨の疾患(股関節異形成、変形性関節症、運動性の問題など)のいずれかの予防、治療、及び/又は重症度の軽減が挙げられる。このように、骨の健康の改善は、例えば健康的な骨、より強い骨、及び/又は骨量の増加を提供する場合がある。例えば、オオタ(Ohta)らの「食物性フラクトオリゴ糖及びイソフラボンの抱合体の組み合わせは卵巣摘出マウスの大腿骨のミネラル濃度及びエクオル生成を増加させる(A Combination of Dietary Fructooligosaccharides and Isoflavone Conjugates Increases Femoral Bone Mineral Density and Equol Production in Ovariectomized Mice)」、栄養学誌(The Journal of Nutrition)、2002年7月、2048〜2053ページ、ミネオ(Mineo)らの「様々な非消化性の糖は生体外でのラットの小腸及び大腸の上皮からの純カルシウム輸送を高める(Various Indigestible Saccharides Enhance Net Calcium Transport from the Epithelium of the Small and Large Intestine of Rats In Vitro)」、栄養学誌(The Journal of Nutrition)、2001年12月、3243〜3246ページ、タカハラ(Takahara)らの「フラクトオリゴ糖の消費はラットの大腿骨の体積及びミネラル濃度を高める(Fructooligosaccharide Consumption Enhances Femoral Bone Volume and Mineral Concentrations in Rats)」、栄養学誌(The Journal of Nutrition)、2000年7月、1792〜1795ページ、モロハシ(Morohashi)らの「ラットにおける腸内の純カルシウム吸収はフラクトオリゴ糖の給餌により高められる(True Calcium Absorption in the Intestine is Enhanced by Fructooligosaccharide Feeding in Rats)」、栄養学誌(The Journal of Nutrition)、1998年10月、1815〜1818ページを参照のこと。
【0033】
本明細書の発明者達は、コンパニオンアニマルの強さ及び身体活動能力に関連する、本明細書に記載されるフラクトオリゴ糖構成成分の重要性を更に発見した。理論に束縛されるものではないが、フラクトオリゴ糖を含む組成物の摂取の際にコンパニオンアニマルに関して示された、本明細書の高められたカルシウム吸収は、強さ及び身体活動能力の両方の強化の前兆現象であると考えられている。実際にこれは、筋肉収縮及び関連する機構に関連するカルシウムの既知の活性により支持される。強さ及び身体能力は、多様な様々な技術分野で記載されており、並びに様々な技術及び即座の実験により容易に測定することができる。例えば、米国特許出願公開2003/0194478及び米国特許第6,117,872号を参照のこと。
【0034】
本明細書で使用する時、コンパニオンアニマルに関して用語「投与する」とは、動物が摂食すること、又は本明細書の1つ以上の組成物を動物に与えるようにヒトが指示されること、若しくはヒトが実際に与えることを意味する。組成物を与えるようにヒトが指示される場合には、こうした指示は、組成物の使用が言及された利益、例えば全消化管消化率を高めることを提供する場合がある及び/又は提供することになることを、ヒトに指導し及び/又はヒトに知らせるものであってもよい。例えば、こうした指示は、口頭指示(例えば、獣医、若しくは他の保健専門家からの口頭指導を通じて)、ラジオ若しくはテレビ媒体(即ち、広告)、又は書面での指示(例えば、獣医、若しくは他の保健専門家からの書面での指示(例えば、手書きメモ)を通じて、専門販売員若しくは組織からの書面での指示(例えば、広告用チラシ、パンフレット、若しくは他の教育用品)を通じて、文字媒体(例えば、インターネット、電子メール、若しくは他のコンピュータ関連媒体)を通じて)、及び/又は、組成物に関連した包装(例えば、組成物を入れる容器上に存在するラベル)であってもよい。本明細書で使用する時、「書面の」とは、言葉、絵、記号、及び/又はその他の視覚的記述子によることを意味する。こうした情報は、本明細書で使用される実際の言葉、例えば「全」、「消化管」、又は「吸収」を使用する必要はなく、むしろ同じ又は同様の意味を伝える言葉、絵、記号などの使用が、本発明の範囲内で考えられる。
【0035】
本明細書に記載される組成物は、通常の栄養所要量へのサプリメントとして使用されてもよいし、又はコンパニオンアニマルのための主食としの機能を果たしてもよい(及びそのようなものとして、サプリメント又は食べ物は、栄養的にバランスのとれたものであってもよい)。投与は、必要なとき又は望ましいときを基準としたものであってもよく、例えば、月1回、週1回、又は毎日(1日に複数回を包含する)であってもよい。通常の栄養所要量へのサプリメントとして使用される時、組成物はコンパニオンアニマルに直接投与されてもよいし、ないしは別の方法でコンパニオンアニマル用食べ物に接触又は混合されてもよい。コンパニオンアニマル用食べ物として使用される時、投与は当業者に周知である。使用される組成物の量は多様な要因に依存してもよく、それには動物の胃腸の健康の質、動物の飼い主又は組成物を投与する他の人により決定されるような動物の嗜好、コンパニオンアニマル用食べ物の質、及び大きさ又は品種又はコンパニオンアニマルが挙げられる。
【0036】
(分析方法)
フラクトオリゴ糖の働きを決定するために様々な方法が使用されてもよく、所与の使用方法に関連する。非限定例は次のようである。
【0037】
(消化管消化率を決定する方法)
1つ以上の食物構成成分の消化管消化率を決定するための分析方法は、当業者に周知である。非限定例として、次の方法がこうした点で使用されてもよい。
【0038】
動物及び餌 クロスオーバー・デザインにおいて、健康な成犬(n=56)が無作為に2グループの1つに割り当てられる。グループ1は0%のフラクトオリゴ糖(fructooligosacharride)(0%FOS)を含有する餌を21日間給餌した後、0.15%のフラクトオリゴ糖(0.15%FOS)を含有する餌を28日間給餌する。さらにグループ2は、0%FOSを含有する餌を21日間給餌した後、0.25%のフラクトオリゴ糖(0.25%FOS)を含有する餌を28日間給餌する。イヌは、食事及び水を1日の間に2時点で提供され、並びに食べ残しの食べ物及び水は記録される。
【0039】
サンプリング手順 この実験の手順は、動物の健康及び福祉の保護について認可された研究手順のもとで行われる。研究の各期間は、適応段階(0%FOSについては16日、並びに0.15%及び0.25%FOSについては23日)、その後の5日間の全排泄物収集段階を包含する。適応段階の間、食べ物の量を調節して体重のバランスを維持する。5日間の収集期間の間、イヌはステンレス鋼の代謝用の檻に収容され、及びすべての檻は金網床を装備しており、及び尿の滴受けが糞便と尿の分離を可能にする。全実験の間、イヌは、15時間暗く/9時間明るいという周期により、温度制御室(20℃)内に存在する。食物代謝エネルギー(ME)の値及び計算されたME所要量(体重変化に基づく)を用いて、収集段階における1日の食べ物の割当量を確立する。すべてのイヌはそれらの1日の割当量の2分の1を毎日6時45分と12時00分に提供され、及びいずれかの残された餌は収集され、秤量され、及び廃棄される。各イヌは1600mLの水を毎日提供される。実験の間イヌは毎週秤量される。
【0040】
尿サンプルが、微生物の繁殖及びアンモニアの気化を防ぐために6規定のHCl20mLを含有する容器中に収集される。毎日の尿の排出量が測定され、保存され、及びその後の研究室での分析のために混ぜ合わされる。毎日、糞便が収集され、秤量され、及び堅さについて得点されるが、100gが保存され及び混ぜ合わされる。混ぜ合わされた糞便サンプルは3日間凍結乾燥され、細かくされ(2mmのふるい、ウィリー(Wiley)粉砕器)、及びその後栄養素消化率を決定するために分析される。
【0041】
化学分析 餌及び糞便サンプルが、乾物(DM)、灰分、及び窒素(N)について分析される(公認分析化学者協会公定法(Association of Official Analytical Chemist Official Method)、1995年)。餌(2g)及び糞便(1g)の脂肪含有量が、酸加水分解(公認分析化学者協会公定法(Association of Official Analytical Chemist Official Method)、1995年)を75.5℃で45分間、25%HCl(10mL)中で用い、その後エーテル抽出(120mL)することにより決定される。餌及び糞便サンプル中の全食物繊維(TDF)濃度がAOAC法により決定される。餌、糞便、及び尿サンプルの総エネルギーの決定は、ボンベ熱量計(イリノイ州モリーンのパー機器(Parr Instrument))を用いて行われる。タンパク質消化率(%)は、粗タンパク質(CP)を基準として計算される。全消化管消化率は次の式を用いて計算される。
全消化管消化率={(食物摂取量−全糞便の栄養素排出量)/食物摂取量}×100%
【0042】
カルシウムは、餌、糞便、及び尿において誘導結合プラズマ質量分析法を用いて測定される。カルシウム定着は次の式を用いて決定される。
カルシウム吸収=(食物のカルシウム摂取量−(糞便のカルシウム+尿のカルシウム))
【0043】
尿のサンプルはエネルギーの決定のために、3〜4gのサンプルを105℃で強制換気オーブン中で乾燥することにより調製される。乾燥されたサンプルは、燃焼前に安息香酸の錠剤と組み合わされる。各サンプルの総エネルギー(GE)値は、安息香酸の添加ために補正される(AOAC、1995年)。
【0044】
(製造方法)
現在記載されるコンパニオンアニマル用組成物は、当業者に周知の方法によって製造される。例えば、本発明の組成物は、すべての構成成分を単独で又は適した組み合わせで一緒に混合することにより調製されてもよく、及び水中では規定通りに、すべての成分が可溶化されるか、分散されるか、ないしは別の方法で混合されるまで、適切に機械的に攪拌される。押出成形のような特定のプロセス(例えば、キブルを形成するために)が使用される場合、こうしたプロセスは当該技術分野において周知である。
【実施例】
【0045】
次のものは従来の方法を使用して調製した本発明の組成物の非限定実施例である。次の実施例は本発明を説明するために提供され、及びいかなる方式においても本発明の範囲を限定することを目的としない。
【0046】
(実施例1)
おおよそ指示量で次の構成成分を有する2つのキブルの組成物が、当該技術分野において標準である方法を用いて調製され、及びイヌに与えられ、各々が胃腸の健康の改善及び糞便の臭いの改善を結果としてもたらす。
【表1】

*ビタミン及びミネラルには、ビタミンE、β−カロチン及びビタミンA、酸化亜鉛、アスコルビン酸、硫酸マンガン、硫酸銅、酸化マンガン、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ビタミンB12、ビタミンB、ナイアシン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンD、葉酸が挙げられる。
【0047】
(実施例2)
実施例1のキブル食べ物の投与後に全消化管消化率が、イヌについて各々試験される。試験されたサンプルが食べ物である時、この食べ物は各々が複数の食物構成成分を含有する。試験は、全消化管消化率、及び具体的には灰分消化率、繊維消化率、脂肪消化率、及び乾物消化率に関して本明細書の以上に提供された記載に従って行われる。実施例1Aのキブル食べ物に関しては、灰分消化率、繊維消化率、及び乾物消化率の各々において増加傾向が示されるが、このキブル食べ物に関しては脂肪消化率において著しい増加がある。実施例1Bのキブル食べ物に関しては、灰分消化率、繊維消化率、脂肪消化率、及び乾物消化率の各々において著しい増加が示される。これらの結果は当該技術分野に関して予期しないことである。
【0048】
(実施例3)
実施例1のキブル食べ物の投与後のカルシウム吸収がイヌにおいて試験される。試験されたサンプルが食べ物である時、この食べ物は各々が複数の食物構成成分を含有する。試験は、カルシウム吸収に関して本明細書の以上に提供された記載に従って行われる。実施例1A及び実施例1Bの両方のキブル食べ物に関して、カルシウム吸収の著しい増加が示される。その上、実施例1のキブル食べ物の投与後、多様な既知のモデルによって観察される時に、イヌは強さ及び身体能力の増加を示す。これらの結果は当該技術分野に関して予期しないことである。
【0049】
(実施例4)
次の構成成分を従来の方式で混ぜ合わせることにより牛肉風味のグレービー組成物を調製する。
【表2】

【0050】
キブル及びグレービーの投与後にカルシウム吸収及び骨の健康を改善するために、成長期のイヌ科動物への給餌前に毎日、グレービー組成物は標準的イヌ用キブルの餌と混合される。グレービー組成物の量は、イヌの飼い主が所望するように決定される。
【0051】
(実施例5)
次の構成成分を従来の方式で混ぜ合わせることにより鶏肉風味のグレービー組成物を調製する。
【表3】

【0052】
キブル及びグレービー食物構成成分の全消化管消化率を改善するために、イヌへの給餌前に毎日、グレービー組成物は標準的イヌ用キブルの餌と混合される。グレービー組成物の量は、イヌの飼い主が所望するように決定される。
【0053】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に関して先行技術であることを容認するものとして解釈されるべきではない。
【0054】
本発明の特定の実施形態を説明し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパニオンアニマルにおける1つ以上の食物構成成分の全消化管消化率を高める方法であって、該方法が、前記コンパニオンアニマルにフラクトオリゴ糖を含むコンパニオンアニマル用組成物を投与することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記コンパニオンアニマル用組成物が、該組成物の0.01重量%〜10重量%のフラクトオリゴ糖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
全消化管灰分消化率、全消化管繊維消化率、全消化管脂肪消化率、全消化管乾物消化率、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される全消化管消化率を高める方法である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フラクトオリゴ糖がイヌリンを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フラクトオリゴ糖がチコリーを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フラクトオリゴ糖が、短鎖オリゴフラクトースであって、該短鎖オリゴフラクトースの30重量%〜40重量%の1−ケストース、50重量%〜60重量%のニストース、及び5重量%〜15重量%の1F−β−フラクトフラノシルニストースを含むものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コンパニオンアニマル用組成物が、牛肉、豚肉、子羊肉、鶏肉、魚、野菜、及びこれらの混合物からなる群から選択されるタンパク質供給源を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コンパニオンアニマル用組成物が、栄養的にバランスのとれた食物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コンパニオンアニマルが、イヌ、ネコ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2011−200243(P2011−200243A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113218(P2011−113218)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【分割の表示】特願2006−542682(P2006−542682)の分割
【原出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(595056859)ザ・アイムス・カンパニー (52)
【氏名又は名称原語表記】The Iams Company
【Fターム(参考)】