説明

フラックス循環器

【課題】使用済みのフラックスを循環使用する際に、フラックスに混合したスラグを除去することができるフラックス循環器を提供する。
【解決手段】フラックスFを収容する第1ホッパ10と、ダストDを収容する第2ホッパ20と、ダストDを捕獲しながら空気を通過排出させるフィルタ30とを有し、第1ホッパ10には吸引系Aが設けられており、第2ホッパ20には排気系Eが設けられており、フィルタ30から空気を排気系Eを介して排気することによって、使用済みのフラックスFを第1ホッパ10に回収して再使用するフラックス循環器1であって、第1ホッパ10内には、吸引配管11の出口に対面する状態の位置に、第1ホッパ10内の天井付近に接続されて垂下する衝突板12と、衝突板12の下部近傍に設置された篩い器13を備え、第1ホッパ10の底部には、収容されたフラックスFを溶接部に供給する供給配管14が接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックスを回収して再使用するフラックス循環器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、サブマージアーク溶接時においては、母材および溶加材から酸化物等を除去し、かつ、外部環境からアーク溶接部を保護するように、粉状や粒状のフラックスを溶接位置に供給し、溶接後に残留した使用済みのフラックスを回収して再使用するフラックス循環器が用いられるようになっている。
【0003】
例えば、図6に示すように、特許文献1に記載されているフラックス循環器100においては、まず、ブロアー200の吸引力にて、溶接済みの継手部からサブマージアーク溶接済みのフラックスFを吸引配管111により吸引する。吸引されたフラックスFは、第1ホッパ101内の衝突板120の作用により流速が低減して自然落下し、第1ホッパ101内に収容される。そして、このフラックスFは供給配管140を通じて溶接前の継手部に供給され再使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3260259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のフラックス循環器では、以下に示すような問題点を有している。
サブマージアーク溶接後の使用済みのフラックスには、しばしば、フラックスが溶融凝固したスラグと称する固形物が混合しており、使用済みのフラックスを吸引配管により吸引する際には、このスラグも同時に吸引される。しかし、このスラグの形状はまちまちであることから、スラグが吸引されると、長期間の使用により供給配管の閉塞につながる恐れがある。また、溶接後に発生したスラグが、再度の溶接の際に溶接部位に供給されても、フラックスとしての役割は果たしえない。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑み創案されたものであり、その課題は、使用済みのフラックスを循環使用する際に、フラックスに混合したスラグを除去することができるフラックス循環器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために、請求項1に記載のフラックス循環器は、仮止めされた被溶接鋼材をその溶接線に沿って片面自動溶接するサブマージアーク片面自動溶接装置に用いられ、フラックスを収容する第1ホッパと、前記第1ホッパに開口を共有する連通状態に並列接続され、ダストを収容する第2ホッパと、前記第2ホッパ内に設けられ、ダストを捕獲しながら空気を通過排出させるフィルタとを有し、前記第1ホッパには、使用済みのフラックスの吸引口を有する吸引配管を含む吸引系が設けられており、前記第2ホッパには、前記開口を通じて吸気し、外部へ排気する排気配管およびブロアーを含む排気系が設けられており、前記フィルタから空気を前記排気系を介して排気することによって、使用済みのフラックスを前記第1ホッパに回収して再使用するフラックス循環器であって、前記第1ホッパ内には、前記吸引配管の出口に対面する状態の位置に、前記第1ホッパ内の天井付近に接続されて垂下する衝突板と、この衝突板の下部近傍に設置された篩い器を備え、さらに前記第1ホッパの底部には、収容されたフラックスを溶接部に供給する供給配管が接続されていることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、ブロアーの吸引により第2ホッパ内および第1ホッパ内の空気が吸引されて、フィルタおよび排気配管を介して外部に排出される。この排気によって、外部の空気および使用済みのフラックスが吸引配管により第1ホッパ内に流入する。そして、外部から流入した空気は、連通口を介して第2ホッパ内に進行し、空気中のダストがフィルタにより捕獲される。一方、フラックスは、第1ホッパ内に設けられた衝突板に衝突することで流速が低減し、篩い器内に自然落下する。このフラックスは、篩い器により篩いにかけられ、フラックスに混合したスラグが篩い器に残存すると共に、スラグが除去されたフラックスは、自然落下して第1ホッパに回収される。そして、回収されたフラックスは、溶接の際に供給配管を介して溶接位置に再度供給される。
【0009】
請求項2に記載のフラックス循環器は、前記第1ホッパの外面または前記第2ホッパの外面に、調整エアダンパを設けたことを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、調整エアダンパを備えることで、フラックスの吸引力が調整される。
【0011】
請求項3に記載のフラックス循環器は、前記吸引系に含まれた前記吸引配管に、気密状態に閉栓可能な第1大気遮断バルブを設け、前記排気系に含まれた前記排気配管に、気密状態に閉栓可能な第2大気遮断バルブを設けたことを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、吸引配管および排気配管が大気遮断バルブを備えることで、運転停止時において、これらの大気遮断バルブを閉栓状態とすることにより、湿気を帯びた空気が吸引系および排気系を介して第1ホッパおよび第2ホッパに侵入することが防止される。
【0013】
請求項4に記載のフラックス循環器は、前記調整エアダンパと、前記第1ホッパまたは前記第2ホッパの間に、気密状態に閉栓可能な第3大気遮断バルブを設けたことを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、第3大気遮断バルブを備えることで、運転停止時において、第3大気遮断バルブを閉栓状態とすることにより、湿気を帯びた空気が調整エアダンパを介して第1ホッパまたは第2ホッパに侵入することが防止される。
【0015】
請求項5に記載のフラックス循環器は、前記第1ホッパの外面に、ヒータを設けたことを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、第1ホッパの外面にヒータを備えることで、外気の温度が低い場合に、第1ホッパをヒータにより加熱することにより、第1ホッパの内面壁に結露が発生することが防止される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、使用済みのフラックスを循環使用する際に、フラックスに混合したスラグを除去することができる。そのため、フラックスの供給配管がスラグにより閉塞することを防止することができる。また、溶接の際に、先の溶接で発生したスラグが溶接部位に供給されることがないため、フラックスとしての効果がより発揮されやすくなる。
【0018】
請求項2に係る発明では、調整エアダンパを備えることで、フラックスの吸引力を調整することができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、排気配管および吸引配管が大気遮断バルブを備えることで、運転停止時に大気遮断バルブを閉栓状態とすることによって、湿気を帯びた空気が吸引系および排気系を介して第1ホッパおよび第2ホッパに侵入することを防止することができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、調整エアダンパと、第1ホッパまたは第2ホッパの間に、大気遮断バルブを備えることで、運転停止時に第3大気遮断バルブを閉栓状態とすることによって、湿気を帯びた空気が調整エアダンパを介して第1ホッパまたは第2ホッパに侵入することを防止することができる。
【0021】
請求項5に係る発明では、第1ホッパがヒータを備えることで、外気の温度が低い場合に、第1ホッパをヒータにより加熱することにより、第1ホッパの内面壁に結露が発生しない。これにより、フラックスが吸湿することがなく、吸湿したフラックスによる溶接欠陥の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るフラックス循環器の構成を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係るフラックス循環器における、篩い器によるフラックスの篩いについて説明するための模式図である。
【図3】本発明に係るフラックス循環器の他の実施形態の構成を示す概略構成図である。
【図4】調整エアダンパの状態と、吸引力の関係を示す模式図である。
【図5】本発明に係るフラックス循環器の他の実施形態の構成を示す概略構成図である。
【図6】従来のフラックス循環器の構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るフラックス循環器の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については、同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0024】
<フラックス循環器>
本発明のフラックス循環器は、仮止めされた被溶接鋼材をその溶接線に沿って片面自動溶接するサブマージアーク片面自動溶接装置に用いられるものである。
そして、図1に示すように、フラックス循環器1は、第1ホッパ10と、第2ホッパ20と、フィルタ30と、を有している。そして、第1ホッパ10には吸引口11aを有する吸引配管11を含む吸引系Aが設けられており、第2ホッパ20には排気配管21およびブロアー22を含む排気系Eが設けられている。これにより、フィルタ30から空気を排気系Eを介して排気することによって、使用済みのフラックスFを第1ホッパ10に回収して再使用するものである。そして、第1ホッパ10内には、衝突板12と、篩い器13を備え、第1ホッパ10の底部には、供給配管14が接続されている。また、第2ホッパ20の底部には、ここではダスト排出配管23が接続されている。
以下、各構成について説明する。
【0025】
[第1ホッパ]
第1ホッパ10は、フラックスFを収容するものである。このフラックスFは、粉状や粒状の形態をしており、サブマージアーク溶接時において、母材および溶加材から酸化物等を除去し、かつ、外部環境からアーク溶接部を保護するように溶接位置に供給される。収容するフラックスFとしては、使用済みのフラックスFの他、新たに供給された未使用のフラックスFも含む。そして第1ホッパ10は、側面壁に形成された連通口15である開口を共有して、第2ホッパ20と連通状態に並列接続されており、連通口15に対向する側面壁の上部から、吸引配管11の導入口11bが第1ホッパ10内に導入されている。第1ホッパ10の形状は特に限定されるものではなく、収容したフラックスFを供給配管14に供給できる形状であればよい。
そして、第1ホッパ10には、吸引配管11を含む吸引系Aが接続されている。
【0026】
[吸引系]
吸引系Aは、使用済みのフラックスFの吸引口11aを有する吸引配管11を含むものである。吸引配管11は、吸引した空気およびフラックスFを第1ホッパ10に導入するものであり、この吸引配管11の先端部である吸引口11aは、空気と共にフラックスFを吸引して回収するように、溶接点の後方位置に配置されるように設置されている。
そして、吸引系Aの吸引配管11の出口に対向するように、第1ホッパ10内には衝突板12が設けられている。
【0027】
[衝突板]
衝突板12は、吸引配管11の出口である導入口11bに対面する状態の位置に、第1ホッパ10内の天井付近に一端が接続されて垂直状に設けられており、天井付近から垂下している。衝突板12は、導入口11bから第1ホッパ10内に流入されたフラックスFを衝突させて流速を低減させることによって、衝突板12の下部近傍に設けられた篩い器13内に、フラックスFを自然落下させる。
ここで、天井付近に接続とは、天井壁に接続する場合や、天井壁に他の部材等が取り付けられている場合はその部材等に接続することをいい、衝突板12は、導入口11bから第1ホッパ10内に流入されたフラックスFを衝突させて流速を低減させることができる位置に接続すればよい。
【0028】
[篩い器]
図1、2に示すように、篩い器13は、吸引系Aを介して回収されたフラックスFから、スラグSを除去するためのものであり、衝突板12の下部近傍に設置されている。
ここで、衝突板12の下部近傍とは、衝突板12に衝突して自然落下するフラックスFを篩い器13内に収容することができる位置であり、例えば、衝突板12の下方、かつ手前(導入口11b側)の位置である。ただし、篩い器13は、衝突板12に衝突して自然落下するフラックスFを篩い器13内に収容することができる位置であれば特に限定されるものではなく、篩い器13の形状や大きさ等により適宜調整すればよい。また、篩い器13の形状や大きさも特に限定されるものではなく、第1ホッパ10のサイズや形状に合わせて適宜調整すればよい。篩い器13のサイズとしては、例えば、縦150〜300、横300〜700、高さ50〜200であり、材質としては、本体として鉄板、篩いの部分としてステンレス鋼が挙げられる。
【0029】
篩い器13における篩いの網目Mは、篩目開き:2.8〜9.0mmのサイズであることが好ましい。網目Mがこのサイズであることで、スラグSが網目Mを通り抜けることがなく、かつ網目MからのフラックスFの落下が円滑に行われる。また、篩い器13は、エアーや電動により篩いを振動させてもよく、その振動は連続でも、間歇的でもよい。
【0030】
篩い器13は、第1ホッパ10内から取り出し可能に構成されており、篩い器13に溜まったスラグSは、篩い器13を第1ホッパ10から取り出すことで除去することができる。なお、篩い器13を取り出しやすいように、篩い器13を2つに分けて、2分割した構成としてもよい。さらに、篩い器13は、回収したスラグSが所定の設定量になった場合に作業者に知らせる構成としてもよい。
【0031】
[供給配管]
供給配管14は、収容されたフラックスFを溶接部に供給するものであり、第1ホッパ10の底部に接続されている。すなわち、第1ホッパ10の底部には、供給口を溶接位置に設定された供給配管14が接続されており、供給配管14は、第1ホッパ10に収容されたフラックスFを自然落下により溶接位置に導出する。そして、供給配管14には、気密状態に閉栓可能な供給配管バルブ16が設けられており、この供給配管バルブ16は、運転停止時に供給配管バルブ16を閉栓状態とすることにより、フラックスFの落下を防止する。
【0032】
[第2ホッパ]
第2ホッパ20は、フィルタ30により捕獲され、フィルタ30から離脱したダストDを収容するものである。
第2ホッパ20は、側面壁に形成された連通口15である開口を共有して、第1ホッパ10と連通状態に並列接続されており、第2ホッパ20の側面壁上部には、フィルタ30から空気を吸引するための排気管連結部32に連通された排気配管21が接続されている。第2ホッパ20の形状は特に限定されるものではなく、収容したダストDをダスト排出配管23に供給できる形状であればよい。
そして、第2ホッパ20には、排気配管21およびブロアー22を含む排気系Eが接続されている。
【0033】
[排気系]
排気系Eは、排気配管21およびブロアー22を含むものである。排気配管21は、前記開口を通じて吸気し、外部へ排気するためのものであり、ブロアー22に接続されて第2ホッパ20内および第1ホッパ10内の空気を流通させる。ブロアー22は、排気配管21、およびフィルタ30を介して第2ホッパ20内および第1ホッパ10内の空気を吸引して外部に排出する。すなわち、ブロアー22の吸引力により第1ホッパ10から第2ホッパ20に流入した空気は、フィルタ30および、フィルタ30に接続されてフィルタ30から空気を吸引するフィルタ用吸引管33を通り、さらに排気管連結部32、排気配管21を通って排気される。
【0034】
[フィルタ]
フィルタ30は、第2ホッパ20内に設けられ、空気中に含まれるダストDを捕獲しながら空気を通過排出するものである。吸引系Aにより吸引され、連通口15を通過した空気は、フィルタ30を通過することでダストDが除去される。
フィルタ30は、複数のフィルタカートリッジとして、例えば、4本のフィルタ(図では2つを図示)を、フィルタ30を収容して保護するための2分割したセル31(図では1つを図示)内に取り付けたものである。
【0035】
フィルタ30に付着したダストDは、フィルタ30に所定量以上に積層したときに、塊状となって自然落下することにより第2ホッパ20に収容される。あるいは、間歇的なジェットパルス、すなわち、図示しないエアータンクに貯めたエアーを一気にフィルタ30内に吹き付けることにより、フィルタ30から払い落とすことができる。しかしながら、長期間使用したフィルタ30は、ダストDが内部に詰まり、吸引力が低下する。その低下の度合いは、フラックス循環器1に設置した図示しない差圧計により確認することができ、例えば、差圧計が150mmAqを超えた場合に、フィルタ30を取り外して清掃または交換すればよい。
【0036】
また、フィルタ30は、第1ホッパ10に併設された第2ホッパ20内に設けられているため、フィルタ30に捕獲されたダストDが離脱しても、第2ホッパ20内に落下して収容され、第1ホッパ10に収容されたフラックスFと混ざることがない。
そして、第2ホッパ20に収容されたダストDは、所定の収容量となったと判断されたときや、所定の期間の経過後に、第2ホッパ20の底部に設けられたダスト排出配管23を介して外部に排出される。
【0037】
[ダスト排出配管]
ダスト排出配管23は、収容されたダストDを外部に排出するものであり、第2ホッパ20の底部に接続されている。すなわち、第2ホッパ20の底部には、ダスト排出配管23が接続されており、ダスト排出配管23は、第2ホッパ20に収容されたダストDを自然落下により外部に導出する。そして、ダスト排出配管23には、気密状態に閉栓可能なダスト排出配管バルブ24が設けられており、このダスト排出配管バルブ24は、第2ホッパ20に収容されたダストDを排出および停止させる際に使用される。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。以下に、本発明の他の実施形態について、適宜、図面を参照しながら説明する。なお、すでに説明した同じ構成については、同じ番号を付して説明を省略する。
【0039】
[調整エアダンパ]
図3に示すように、第1ホッパ10の外面または第2ホッパ20の外面には、調整エアダンパ40を設けることが好ましい。なお、図3では、第1ホッパ10の外面に設けた場合を図示している。
調整エアダンパ40を備えることで、フラックスFの吸引力を調整することができる。
図4に示すように、調整エアダンパ40には4つの流通穴40aが開いており、この流通穴40aの開口度合いの状態によって吸引力を調整する。ここで、流通穴40aを開けるほど吸引力は低下し、流通穴40aを塞ぐほど吸引力は大きくなる。具体的には、調整エアダンパ40は、図4に示すように、第1穴41aを有するパネル41上に、第2穴42aを有するパネル42が重ねられており、第1穴41aと第2穴42aが完全に重なり合って、4つの流通穴40aを完全に開いた状態(図中、全開)とすると、吸引力が最小となる。一方、パネル42の回転により第2穴42aを回転させて4つの流通穴40aを完全にふさいだ状態(図中、全閉)とすると、吸引力が最大となり、フラックスFの回収力は最大となる。そして、パネル42の回転により第2穴42aを回転させて4つの流通穴40aをそれぞれ半分程度塞ぐと(図中、中間)、吸引力は、全開した場合と全閉した場合との中間程度になる。
なお、パネル42の回転による流通穴40aの開閉は、自動で行う構成としてもよいし、手動で行う構成としてもよい。また、調整エアダンパ40の位置は、フラックス循環器1aの運転に支障をきたさない位置であればよい。
【0040】
[大気遮断バルブ]
図3に示すように、吸引配管11には、気密状態に閉栓可能な第1大気遮断バルブ51を設けることが好ましい。
第1大気遮断バルブ51を備えることで、溶接装置の運転停止時に第1大気遮断バルブ51を閉栓状態とすることにより、湿気を帯びた空気が吸引系Aを介して第1ホッパ10に侵入することを防止することができる。
また、排気配管21には、気密状態に閉栓可能な第2大気遮断バルブ52を設けることが好ましい。
第2大気遮断バルブ52を備えることで、溶接装置の運転停止時に第2大気遮断バルブ52を閉栓状態とすることができ、湿気を帯びた空気が排気系Eを介して第2ホッパ20に侵入することを防止することができる。
【0041】
さらに、調整エアダンパ40と、第1ホッパ10または第2ホッパ20の間に、気密状態に閉栓可能な第3大気遮断バルブ53を設けることが好ましい。すなわち、第1ホッパ10の外面または第2ホッパ20の外面に第3大気遮断バルブ53を設け、この第3大気遮断バルブ53を介して調整エアダンパ40を設ける。
第3大気遮断バルブ53を備えることで、溶接装置の運転停止時に第3大気遮断バルブ53を閉栓状態とすることにより、湿気を帯びた空気が調整エアダンパ40を介して第1ホッパ10または第2ホッパ20に侵入することを防止することができる。
これら大気遮断バルブの作用により、運転停止後に第1ホッパ10内のフラックスFを吸湿防止のために回収する必要がない。
【0042】
[ヒータ]
図3に示すように、第1ホッパ10の外面には、ヒータ60を設けることが好ましい。
ヒータ60を備えることで、寒い時期であっても、ヒータ60を作動させて第1ホッパ10の隔壁を加熱することで第1ホッパ10の隔壁が外気で急激に冷却されることがないため、内面壁の結露が生じることがない。そのため、運転停止後に第1ホッパ10内のフラックスFを回収する必要がない。
図3に示すように、第1ホッパ10の底部周辺の傾斜壁には、ヒータ60が面状に接合されており、ヒータ60は、第1ホッパ10の隔壁を加熱する。なお、このヒータ60は、外気の温度に応じて第1ホッパ10を加熱することができるように、図示しない温度設定コントローラにより任意の加熱温度に設定可能になっていることが好ましい。
【0043】
[その他]
第1ホッパ10内には、下限検知器および上限検知器を設けることが好ましい(図示省略)。
下限検知器は、第1ホッパ10内のフラックスFが少ない場合、上限検知器は、第1ホッパ10内のフラックスFが多い場合に、例えば溶接操作盤に警告を出して作業員に知らせるものである。
第1ホッパ10内のフラックスFが少なすぎると、フラックスFはフラックス循環器1の負圧に負けて、供給配管14から逆に吸い込まれることになる。一方、フラックスFが多すぎると、第1ホッパ10内に溜まっているフラックスFが、連通口15を介して第2ホッパ20内に混入する恐れがある。そこで、第1ホッパ10内のフラックスFを適度に調整するため、下限検知器および上限検知器を設けることが好ましい。
【0044】
また、図5に示すように、フラックス循環器1bは、第1ホッパ10aの先端が2極に別れ、供給配管14を2つ有する2連極式のものであってもよい。さらに図示しないが、3連極式や4連極式のフラックス循環器であってもよい。
【0045】
<フラックス循環器の動作方法>
次に、フラックス循環器の動作の一例について、図3の形態を例にとって説明する。
先ず、溶接機を自動運転する場合には、溶接開始後、溶接機の走行によって吸引配管11の吸引口11aが溶接開始部に到達した時点で、図示しない制御装置から送出された運転指示信号によって、あるいは作業員による手動によって、第1大気遮断バルブ51および第2大気遮断バルブ52を開栓状態にすると共に、ブロアー22を作動させる。これにより、第2ホッパ20内および第1ホッパ10内の空気が排気され、外部の空気が吸引配管11の吸引口11aから吸引される。ここで、ブロアー22を作動させる際、第3大気遮断バルブ53を開栓状態にすると共に、調整エアダンパ40の流通穴40a(図4参照)の開閉状態を調整することで、吸引力を調整する。
【0046】
次に、図示しない制御装置から送出された運転指示信号によって、あるいは作業員による手動によって、供給配管バルブ16を開栓状態とすることによって、第1ホッパ10内のフラックスFが供給配管14を介して溶接位置に供給される。フラックスFは、溶接時の母材および溶加材から酸化物等を除去して母材表面を保護するように作用し、溶接後に残留した使用済みのフラックスFは、溶接点の後方位置において、空気と共に吸引される。吸引されたフラックスFは、吸引配管11を介して導入口11bから第1ホッパ10内に流入した後、対向配置された衝突板12に衝突することによって、流動速度が低減される。これにより、フラックスFは、自然落下して篩い器13を通過して、第1ホッパ10の底部に収容される。
【0047】
ここで、図2に示すように、フラックスFは、篩い器13を通過する際に篩いにかけられる。これにより、フラックスFに混合したスラグSは篩い器13に残存し、スラグSが除去されたフラックスFは、自然落下して、第1ホッパ10に回収される。そして、回収されたフラックスFは、供給配管14を介して溶接位置に再度供給されることになる。
【0048】
一方、第1ホッパ10内にフラックスFと共に流入したダストDは、比重が極めて小さいため、第1ホッパ10内を浮遊しながら空気の流動に伴って連通口15を介して第2ホッパ20内に進行する。そして、このダストDは、フィルタ30において捕獲された後、所定量以上に積層したときに、塊状となって自然落下することにより、あるいは、間歇的なジェットパルスによってフィルタ30から払い落とされることにより、第2ホッパ20に収容される。この後、所定の収容量となったと判断されたときや、所定の期間の経過後に、ダスト排出配管バルブ24を開栓状態にすることによって、収容されたダストDを外部に排出する。
【0049】
次に、運転を終了する場合には、図示しない制御装置から送出された運転指示信号によって、あるいは作業員による手動によって、第1大気遮断バルブ51および第2大気遮断バルブ52を閉栓状態にすると共に、ブロアー22を停止する。また、それに先立ち、供給配管バルブ16も閉栓状態にする。さらに、調整エアダンパ40の第3大気遮断バルブ53も閉栓状態にする。これにより、第1ホッパ10内および第2ホッパ20内の空間部は、外部と気密状態に遮断されることになり、外部の湿気を帯びた空気が侵入することがない。従って、フラックスFは、時間の経過と共に吸湿が進行することがないため、長期間にわたり運転を停止していても、運転再開時に吸湿により溶接欠陥を発生させることがない。
【0050】
また、制御装置は、非溶接時にはヒータ60を作動させることによって、第1ホッパ10の隔壁を加熱する。これにより、寒い時期であっても、第1ホッパ10の隔壁が外気で急激に冷却されることがないため、内面壁の結露が生じることがない。
さらに、前記の運転中の動作で説明したように、フィルタ30において捕獲されたダストDは、運転停止時においても、自然落下により第2ホッパ20に収容されるため、第1ホッパ10に収容されたフラックスFと混ざることがない。従って、フラックスFは、吸湿活性の強いダストDにより吸湿が促進されることもない。
【符号の説明】
【0051】
1、1a、1b フラックス循環器
10、10a 第1ホッパ
11 吸引配管
11a 吸引口
11b 導入口
12 衝突板
13 篩い器
14 供給配管
15 連通口
16 供給配管バルブ
20 第2ホッパ
21 排気配管
22 ブロアー
23 ダスト排出配管
24 ダスト排出配管バルブ
30 フィルタ
31 セル
32 排気管連結部
33 フィルタ用吸引管
40 調整エアダンパ
40a 流通穴
41、42 パネル
41a 第1穴
42a 第2穴
51 第1大気遮断バルブ
52 第2大気遮断バルブ
53 第3大気遮断バルブ
60 ヒータ
A 吸引系
D ダスト
E 排気系
F フラックス
M 網目
S スラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮止めされた被溶接鋼材をその溶接線に沿って片面自動溶接するサブマージアーク片面自動溶接装置に用いられ、
フラックスを収容する第1ホッパと、前記第1ホッパに開口を共有する連通状態に並列接続され、ダストを収容する第2ホッパと、前記第2ホッパ内に設けられ、ダストを捕獲しながら空気を通過排出させるフィルタとを有し、
前記第1ホッパには、使用済みのフラックスの吸引口を有する吸引配管を含む吸引系が設けられており、前記第2ホッパには、前記開口を通じて吸気し、外部へ排気する排気配管およびブロアーを含む排気系が設けられており、
前記フィルタから空気を前記排気系を介して排気することによって、使用済みのフラックスを前記第1ホッパに回収して再使用するフラックス循環器であって、
前記第1ホッパ内には、前記吸引配管の出口に対面する状態の位置に、前記第1ホッパ内の天井付近に接続されて垂下する衝突板と、この衝突板の下部近傍に設置された篩い器を備え、
さらに前記第1ホッパの底部には、収容されたフラックスを溶接部に供給する供給配管が接続されていることを特徴とするフラックス循環器。
【請求項2】
前記第1ホッパの外面または前記第2ホッパの外面に、調整エアダンパを設けたことを特徴とする請求項1に記載のフラックス循環器。
【請求項3】
前記吸引系に含まれた前記吸引配管に、気密状態に閉栓可能な第1大気遮断バルブを設け、前記排気系に含まれた前記排気配管に、気密状態に閉栓可能な第2大気遮断バルブを設けたことを特徴とする請求項1に記載のフラックス循環器。
【請求項4】
前記調整エアダンパと、前記第1ホッパまたは前記第2ホッパの間に、気密状態に閉栓可能な第3大気遮断バルブを設けたことを特徴とする請求項2に記載のフラックス循環器。
【請求項5】
前記第1ホッパの外面に、ヒータを設けたことを特徴とする請求項1に記載のフラックス循環器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−167731(P2011−167731A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34747(P2010−34747)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】