説明

フラットフロアケーブル

【課題】優れた機械的強度と難燃性を有するフラットフロアケーブルを提供する。
【解決手段】複数本並列配置させた絶縁線心2と、絶縁線心2を所定本数毎に上下から挟むように絶縁線心2の周囲に設けられた外部被覆3とを備えたフラットフロアケーブル1であって、外部被覆3は、最外層にプラスチック層9が設けられており、プラスチック層9よりも下層に難燃層10が設けられているラミネートテープからなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ビルやオフィスなどにおけるアンダーカーペット配線に用いるフラットフロアケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスなどの床面に敷き詰められたカーペットの下に配線(アンダーカーペット配線)されるフラットフロアケーブル100は、図3に示すように、複数本並列配置させた絶縁線心101と、その絶縁線心101を所定本数毎(例えば、2本毎)に上下から挟むように絶縁線心101の周囲に設けられた外部被覆102とからなる。より具体的には、図3に示すように、絶縁線心101を2本並べ、それらの周囲を一括して覆うように外部被覆102を設けることで1対のケーブル部103とし、このケーブル部103を多数本並べて、ケーブル部103同士が外部被覆102からなる連結部104によって連結されてフラットフロアケーブル100を構成している。なお、ケーブル部103における絶縁線心101は、使用目的により、2本、4本、6本、8本、10本などに構成される。
【0003】
フラットフロアケーブル100の外部被覆102は、図4に示すように、従来では、フラットフロアケーブル100の難燃性を向上させるために、ラミネートテープの最外層(プラスチックテープの直上)にビニルテープ(又はビニル層)からなる難燃層106が設けられていることが一般的である。
【0004】
また、従来の難燃性を向上させたフラットフロアケーブル100の外部被覆102は、ケーブルにしたとき外側になる面から、ビニルテープ(又はビニル層)からなる難燃層106、PETテープからなるプラスチック層107、アルミテープ(又はアルミ箔)からなる金属層108、及び絶縁線心101と外部被覆102とを接着させるための接着層109が積層されてなる。なお、アルミテープ(又はアルミ箔)からなる金属層108とPETテープからなるプラスチック層107とは、それらをラミネートしてなるラミネートテープで構成されていてもよい(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−142329号公報
【特許文献2】実開昭60−166919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、難燃性を向上させた従来のフラットフロアケーブル100においては、外部被覆102の最外層がビニルテープ(又はビニル層)からなる難燃層106であるため、機械的強度が十分ではなく、フラットフロアケーブル100をオフィスなどの床面に敷き詰められたカーペットの下に配線する場合に、フラットフロアケーブル100が引き回されることなどによって、最外層である難燃層106に外傷が発生してしまう場合がある。
【0007】
特に難燃層106に外傷が発生した場合には、フラットフロアケーブル100の難燃性が低下してしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、優れた機械的強度を有するフラットフロアケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、複数本並列配置させた絶縁線心と、該絶縁線心を所定本数毎に上下から挟むように前記絶縁線心の周囲に設けられた外部被覆とを備えたフラットフロアケーブルであって、前記外部被覆は、最外層にプラスチック層が設けられており、該プラスチック層よりも下層に難燃層が設けられているラミネートテープからなるフラットフロアケーブルである。
【0010】
請求項2の発明は、前記ラミネートテープは、前記難燃層に接する下層に金属層が設けられている請求項1に記載のフラットフロアケーブルである。
【0011】
請求項3の発明は、前記ラミネートテープは、前記プラスチック層と前記難燃層との間が接着されている請求項1又は2に記載のフラットフロアケーブルである。
【0012】
請求項4の発明は、前記難燃層は、非エーテル型ポリプロ環状化合物からなる請求項1〜3のいずれかに記載のフラットフロアケーブルである。
【0013】
請求項5の発明は、前記ラミネートテープは、前記プラスチック層が10μm以上40μm以下の厚さを有し、前記難燃層が10μm以上40μm以下の厚さを有し、前記金属層が5μm以上20μm以下の厚さを有し、前記接着層が10μm以上40μm以下の厚さ有する請求項1〜4のいずれかに記載のフラットフロアケーブルである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた機械的強度と難燃性を有するフラットフロアケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフラットフロアケーブルの断面図である。
【図2】図1のフラットフロアケーブルに用いる外部被覆の断面図である。
【図3】従来のフラットフロアケーブルの断面図である。
【図4】図3のフラットフロアケーブルに用いる外部被覆の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係るフラットフロアケーブルの断面図である。
【0018】
図1に示すように、フラットフロアケーブル1は、複数本並列配置させた絶縁線心2と、絶縁線心2を所定本数毎(図1では2本毎)に上下から挟むように絶縁線心2の周囲に設けられた外部被覆3とを備える。
【0019】
絶縁線心2は、導体4と、導体4の外周に設けられた絶縁体5とからなる。本実施の形態においては、絶縁線心2を2本並べてそれらの周囲を外部被覆3によって一括して被覆して1対のケーブル部6とし、このケーブル部6を多数本(例えば、10本)並べて、これらのケーブル部6同士を外部被覆3からなる連結部7によって連結してフラットフロアケーブル1を構成している。
【0020】
図2に示すように、外部被覆3は、最外層にPETテープからなる10μm以上40μm以下の厚さを有するプラスチック層9が設けられ、プラスチック層9よりも下層に10μm以上40μm以下の厚さを有する難燃層10が設けられているラミネートテープからなる。
【0021】
プラスチック層9の厚さを10μm以上40μm以下とするのは、10μm未満では機械的強度が十分でなく、40μmを超えると可とう性が悪化するからである。難燃層10の厚さを10μm以上40μm以下とするのは、10μm未満では難燃性が十分でなく、40μmを超えると可とう性が悪化するからである。
【0022】
このラミネートテープは、難燃層10に接する下層にアルミテープ(又はアルミ箔)からなる5μm以上20μm以下の厚さを有する金属層11が設けられており、金属層11と絶縁線心2との間に、EEA樹脂(Ethylen-Ethylacrylate Copolymer:エチレン・アクリル酸エチル共重合体)からなる10μm以上40μm以下の厚さを有する接着層12が設けられている。
【0023】
金属層11の厚さを5μm以上20μm以下とするのは、5μm未満ではシールド特性が十分でなく、20μmを超えると可とう性が悪化するからである。接着層12の厚さを10μm以上40μm以下とするのは、10μm未満ではラミネートテープと絶縁線心2との密着性が十分でなく、40μmを超えると可とう性が悪化するからである。
【0024】
外部被覆3の各層の役割を説明する。
【0025】
プラスチック層9は、フラットフロアケーブル1をオフィスなどの床面に敷き詰められたカーペットの下に配線する場合、例えば、この配線時にフラットフロアケーブル1が引き回されることなどによって外部被覆3に摩擦などの応力が加わったとしても、外部被覆3に外傷が発生するのを防止するための層であり、そのため外部被覆3の最外層に位置するように配置される。
【0026】
難燃層10は、フラットフロアケーブル1の難燃性を向上させるための層であり、プラスチック層9よりも下層に設けられる。また、難燃層10は、臭素系の難燃剤からなる非エーテル型ポリプロ環状化合物で形成される。なお、難燃層10は接着性を有する材料からなることが好ましい。従来においては、難燃層を最外層に設けた構成とするため機械的強度が不十分であった。これに対して、本実施の形態においては、プラスチック層9よりも下層に難燃層10が設けられていることにより、難燃層10に外傷が発生することがないため、外傷による難燃性の低下を防止することができる。特に、プラスチック層9と難燃層10とが接着(密着)していることにより、外部被覆3に摩擦などの応力が加わったとしても、プラスチック層9が難燃層10から剥離などすることがないため、プラスチック層9によって難燃層10を効果的に保護することができる。そのため、難燃層10に外傷が発生しにくくなり、外傷による難燃性の低下を防止することができる。前述の通り、難燃層10は機械的強度が弱いためラミネートテープの中間に設けることが好ましいが、これに加えて、難燃層10が接着性を有する材料からなることにより、プラスチック層9と金属層11との接着層としての作用を兼ねるため、この間に設けるのが好ましい。
【0027】
なお、難燃層10が接着性を有する材料からなる構成に替えて、例えば、プラスチック層9と難燃層10との間、及び難燃層10と金属層11との間に、それぞれ接着層が設けられている構成があってもよい。
【0028】
また、プラスチック層9と難燃層10、あるいは、難燃層10と金属層11は、例えば、加熱融着などによって密着(接着)していてもよい。
【0029】
金属層11は、絶縁線心2をシールドするためのシールド層であり、難燃層10に接する下層に設けられる。
【0030】
接着層12を設ける目的は、外部被覆と絶縁線心2とを所望の接着強度にて接着することと、絶縁線心2を覆う部分以外の外部被覆同士を強力な接着強度にて接着する必要があるためであり、EEA樹脂を用いることが好ましい。EEA樹脂は、熱可塑性樹脂であり、代表的な接着性樹脂の一つである。また、EEA樹脂は、他のポリオレフィンとの相溶性が特に優れており、また、広い温度範囲で柔軟性を保持することができる。
【0031】
本実施の形態に係るフラットフロアケーブル1の作用を説明する。
【0032】
従来のフラットフロアケーブル100においては、外部被覆の難燃層106としてビニルテープ(又はビニル層)を含んでいる。このビニルテープ(又はビニル層)は、火災や焼却などにより燃えるとハロゲン族である塩素ガスやダイオキシンを発生させ、環境汚染につながる。また、難燃層106であるビニルテープには、安定剤として鉛を含んでいることが多く、常時触れると人体に有害であり、配線時などにおいて取り扱いに注意を要するおそれがある。さらに、ビニルテープ(又はビニル層)は、外部被覆の製造時に、フィッシュアイや異物混入が発生しやすく、歩留りが悪く、作業効率も悪く、コストアップなどの要因となるおそれがある。
【0033】
これに対して、本実施の形態に係るフラットフロアケーブル1においては、難燃層10として臭素系の難燃剤からなる非エーテル型ポリプロ環状化合物を用いたことにより、火災や焼却などの場合において難燃層10が燃焼したとしても、従来よりもハロゲン族である塩素ガスやダイオキシンなどの発生を抑制することができる。また、難燃層10には、鉛などが含まれていないため、人体などへ悪影響を及ぼすことがなく、配線時などにおける取り扱い性も良好である。さらに、外部被覆の製造時に、フィッシュアイや異物混入の発生も低減できる。
【0034】
また、本実施の形態に係るフラットフロアケーブル1では、外部被覆3は、最外層にPETテープからなるプラスチック層9が設けられており、プラスチック層9よりも下層に難燃層10が設けられているラミネートテープからなるため、優れた機械的強度と難燃性を有する。本発明では、接着性を有する材料からなる難燃層10がプラスチック層9と金属層11との間に設けられていることで難燃層10が接着層としての作用を兼ねる、あるいは、プラスチック層9と難燃層10との間、難燃層10と金属層11との間に、それぞれ接着層が設けられているため、最上層としてプラスチック層9を設けることができ、優れた機械的強度を有するフラットフロアケーブル1を提供することができる。
【0035】
さらに、難燃層10がプラスチック層9と金属層11との接着層としての作用を兼ねる構成や、プラスチック層9と難燃層10との間、難燃層10と金属層11との間に、それぞれ接着層が設けられている構成にすることにより、ラミネートテープの層別れやラミネートテープと絶縁線心2との剥離を防止することができる。
【0036】
本実施の形態においては、プラスチック層9にPETテープを用いたが、PETテープに代えてナイロンテープやその他のプラスチックテープを用いるようにしてもよい。また、難燃層10の代わりに難燃性の接着剤を用いるようにしてもよい。さらに、アルミテープの代わりに銅など他の金属を用いるようにしてもよい。
【0037】
また、難燃層10の非エーテル型ポリプロ環状化合物の代わりに、臭素を含まないノンハロゲン系の難燃剤などその他の難燃剤を用いるようにしてもよい。
【0038】
さらに、接着層12のEEA樹脂の代わりに、ポリオレフィン系接着剤、PEなどその他の接着剤を用いるようにしてもよい。
【0039】
本実施の形態においては、絶縁線心2を10本としたが、使用目的により、2本、4本、6本、8本としてもよい。
【実施例】
【0040】
本発明を創作するに当って、外部被覆の選定のため数度の試作を施した。表1に試作した外部被覆の構造、及び各々の外部被覆の特性を示す。なお、フラットフロアケーブルの作製においては、外部被覆を2.3g/m2の圧力、110℃〜180℃の温度範囲で絶縁線心の上下から挟むようにして設けて作製した。
【0041】
【表1】

【0042】
比較例1は、図4に示すような最外層にビニル層からなる難燃層を設けた外部被覆を有する従来のフラットフロアケーブルであり、実施例1〜4及び参考例1,2は、図2に示すような最外層をプラスチック層とし、プラスチック層と金属層との間に難燃層を設けて、プラスチック層、難燃層、及び接着層の厚さを変えて作製した外部被覆を有するフラットフロアケーブルである。
【0043】
なお、表1の成形性は、各々の外部被覆を用いて図1に示すようなフラットフロアケーブルを作製した場合に、ケーブル部における絶縁線心と外部被覆とを接着させた部分、あるいは外部被覆同士を接着させた連結部の部分に外観(シワ、絶縁線心の突き出しなど)の不具合がないかを評価したものである。表1中の「○」はシワ、絶縁線心の突き出しなどの発生がないことを示し、「△」はシワ、絶縁線心の突き出しなどの発生は多少あるが、特性等に影響ない範囲であることを示し、「×」はシワ、絶縁線心の突き出しなどの発生があり、特性等に影響があることを示す。
【0044】
また、表1の密着性は、作製したフラットフロアケーブルのケーブル部において、絶縁線心と外部被覆との間の密着の度合いを評価したものである。表1中の「○」は適度な密着性があり、絶縁線心の突き出しがなく、かつ、絶縁層の損傷なく絶縁線心を取り出せることを示し、「△」は「○」よりも密着性が若干劣るが、絶縁線心の突き出し、絶縁層の損傷等がなく、絶縁線心を取り出せることを示し、「×」は密着がなく、絶縁線心の突き出しがあることを示す。
【0045】
また、表1の融着性は、作製したフラットフロアケーブルのケーブル部において、外部被覆と絶縁線心との融着の度合いを評価したものである。表1中の「○」は融着がなく、絶縁層の損傷等がなく絶縁線心を取り出せることを示し、「×」は融着があり、絶縁層の損傷等がなく絶縁線心を取り出せないことを示す。
【0046】
表1に示すように、実施例4の外部被覆が成形性、密着性、融着性に優れている。
【0047】
また、表2に同種の外部被覆を対向させて接着させた際に、180度ピーリング試験によって示される外部被覆同士の接着力の評価を示す。ここでは、従来の外部被覆(比較例1)と、実施例1及び実施例4の外部被覆の接着力を評価した。
【0048】
【表2】

【0049】
表2に示すように、実施例1及び実施例4の外部被覆は、比較例1の外部被覆に比べて同等の接着力を有する結果が得られている。
【符号の説明】
【0050】
1 フラットフロアケーブル
2 絶縁線心
3 外部被覆
9 プラスチック層
10 難燃層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本並列配置させた絶縁線心と、該絶縁線心を所定本数毎に上下から挟むように前記絶縁線心の周囲に設けられた外部被覆とを備えたフラットフロアケーブルであって、
前記外部被覆は、最外層にプラスチック層が設けられており、該プラスチック層よりも下層に難燃層が設けられているラミネートテープからなることを特徴とするフラットフロアケーブル。
【請求項2】
前記ラミネートテープは、前記難燃層に接する下層に金属層が設けられている請求項1に記載のフラットフロアケーブル。
【請求項3】
前記ラミネートテープは、前記プラスチック層と前記難燃層との間が接着されている請求項1又は2に記載のフラットフロアケーブル。
【請求項4】
前記難燃層は、非エーテル型ポリプロ環状化合物からなる請求項1〜3のいずれかに記載のフラットフロアケーブル。
【請求項5】
前記ラミネートテープは、前記プラスチック層が10μm以上40μm以下の厚さを有し、前記難燃層が10μm以上40μm以下の厚さを有し、前記金属層が5μm以上20μm以下の厚さを有し、前記接着層が10μm以上40μm以下の厚さ有する請求項1〜4のいずれかに記載のフラットフロアケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−54305(P2011−54305A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199993(P2009−199993)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】