フラット引戸
【課題】部品点数が少なく、構造が簡単で、レール溝内の異物を容易に除去することができ、良好な開閉動作を行うことができるフラット引戸を提供する。
【解決手段】閉鎖時に、引戸2または3の下摺動部材6が下レール10の上段レール溝11から下摺動部材収納凹部13に進入し、下摺動ピン7が下レール10の下段レール溝12から下摺動ピン収納凹部14に進入する。同時に、上摺動部材8が上レール20の下段レール溝22から上摺動部材収納凹部23に進入し、上摺動ピン9が上レール20の上段レール溝21から上摺動ピン収納凹部24に進入して2枚の引戸2,3がフラット状態となる。下レール10の下段レール溝12の深さが上レール20の上段レール溝21より浅く形成され、下レール20の下摺動部材収納凹部13の前側壁部13aが着脱可能に形成され、下レール20の下摺動ピン収納凹部14の前側壁部14aが着脱可能に形成される。
【解決手段】閉鎖時に、引戸2または3の下摺動部材6が下レール10の上段レール溝11から下摺動部材収納凹部13に進入し、下摺動ピン7が下レール10の下段レール溝12から下摺動ピン収納凹部14に進入する。同時に、上摺動部材8が上レール20の下段レール溝22から上摺動部材収納凹部23に進入し、上摺動ピン9が上レール20の上段レール溝21から上摺動ピン収納凹部24に進入して2枚の引戸2,3がフラット状態となる。下レール10の下段レール溝12の深さが上レール20の上段レール溝21より浅く形成され、下レール20の下摺動部材収納凹部13の前側壁部13aが着脱可能に形成され、下レール20の下摺動ピン収納凹部14の前側壁部14aが着脱可能に形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば洗面化粧台のカウンター下部の前面扉、その上部キャビネットの前面扉、トイレなどの狭いスペースに設置される収納キャビネットの前面扉、或いは鏡付きスライド扉などに好適に使用可能なフラット前面を有したフラット引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、洗面化粧台において、カウンターの上方に上部キャビネットを設け、そのキャビネットの正面扉の前面に鏡が固定されたものが、下記特許文献1などで各種提案されている。
【0003】
この種のカウンターの上方に鏡扉付きキャビネットを備えた洗面化粧台は、正面の鏡の内側に収納容積の大きいキャビネットが形成できるため、使用者は、洗面道具、化粧品など多くの収納物を収納でき、また、鏡付きの扉を開閉するだけで、便利に使用することができるため、この種の洗面化粧台は広く普及されるに至っている。
【0004】
一方、近年、洗面化粧台は大型化する傾向にあり、それに伴いカウンター上方のキャビネットも大型化したものが製造されているが、大型のキャビネットには、面積の広い大型の鏡付き開閉扉がヒンジを介して開閉可能に装着されることになる。このため、必然的に開閉扉の重量が増大し、それを支えるヒンジやキャビネットの構造も強固にして大型化する必要があり、デザイン的な制限があって、洗面化粧台の大型化には限界があった。
【特許文献1】特開平5−176851号公報
【特許文献2】特開平5−133157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、洗面化粧台の上部キャビネットの正面扉を引戸とすることが検討されたが、キャビネットの正面扉を左右2枚の引戸とし、各々の前面に鏡を固定した場合、左右2枚の引戸は前後方向に段差があるため、そこに固定された2枚の鏡にも必然的に段差ができ、2枚の鏡を1枚の鏡のように広く使用できない不具合が生じる。
【0006】
このため、引戸としてフラット前面を有したフラット引戸の採用が検討された。フラット引戸としては、従来、家具や建物に使用され、閉鎖した状態で、両側の引戸の前面がフラットになる構造のものが、上記特許文献2などにより提案されている。しかし、この種の従来のフラット引戸は、案内レールのガイド溝に対し傾斜して交差する摺動部材を移動可能に配設する必要があるなど、部品点数が多く、複雑な構造を有していた。そのため、長期の使用によっては摺動部分、可動部分に劣化が生じ、引戸の動きが阻害されやすいという課題があった。さらに、レール溝が深くなると、レールの外観が悪化しやすく、またそこに異物が侵入すると、除去が難しく、引戸の摺動性が悪化する課題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、部品点数が少なく、構造が簡単で、レール溝内の異物を容易に除去することができ、良好な開閉動作を行うことができるフラット引戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1のフラット引戸は、開口部の前縁下部に下レールが水平に取り付けられると共に、該下レールに対向した前縁上部に上レールが水平に取り付けられ、該下レールと上レールには各々上段レール溝と下段レール溝が上下2段に重ねて形成され、さらに該下レールには上段レール溝に連続して下摺動部材収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、該上レールには下段レール溝に連続して上摺動部材収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、該下レールの下段レール溝に連続して下摺動ピン収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、該上レールの上段レール溝に連続して上摺動ピン収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、2枚の引戸の下部には、下摺動部材が該下レールの上段レール溝に係合して設けられると共に、下摺動ピンが該下レールの下段レール溝に係合して設けられ、該2枚の引戸の上部には、上摺動部材が該上レールの下段レール溝に係合して設けられると共に、上摺動ピンが該上レールの上段レール溝に係合して設けられ、
該2枚の引戸を閉じたとき、該各引戸の下摺動部材が該下レールの上段レール溝から該下摺動部材収納凹部に進入し、該下摺動ピンが下レールの下段レール溝から該下摺動ピン収納凹部に進入すると共に、該上摺動部材が上レールの下段レール溝から該上摺動部材収納凹部に進入し、該上摺動ピンが上レールの上段レール溝から上摺動ピン収納凹部に進入して2枚の引戸がフラット状態となるフラット引戸であって、
該下レールの該下段レール溝の深さが該上レールの上段レール溝より浅く形成されると共に、該下レールの該下摺動部材収納凹部の前側壁部が着脱可能に形成され、該下レールの該下摺動ピン収納凹部の前側壁部が着脱可能に形成されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、上記フラット引戸においては、請求項2のように、上記下レールの下段レール溝内に補助レールが嵌入され、下レールの下段レール溝の深さを上レールの上段レール溝より浅く形成することができる。
【0010】
また、請求項3のように、下レールの下段レール溝の深さと上レールの上段レール溝の深さに対応して、下摺動ピンの長さは上摺動ピンの長さより短く形成することができる。
【0011】
また、請求項4のように、下レールの前面側に化粧カバーを着脱可能に取り付け、化粧カバーを外した状態で、下摺動ピン収納凹部の前側壁部を外して開口可能とすると共に、下摺動部材収納凹部の前側壁部を外して開口可能とすることができる。
【0012】
さらに、請求項5のように、上記下摺動部材は取付部に対し摺動部がスペーサを介して高さ調整可能に取り付けられ、上記下摺動ピンは取付部に対し摺動ピンがスペーサを介して高さ調整可能に取り付けることができる。
【0013】
さらに、請求項6のように、上記下摺動部材と下摺動ピンに取付用の長孔を縦方向に長く形成し、下摺動部材又は下摺動ピンが引戸の下部の被取付部に取り付けられる際、被取付部との間にスペーサを介在させ、下摺動部材又は下摺動ピンの高さを調整可能に取り付けるように構成することができる。
【0014】
さらに、請求項7のように、下レールの下摺動ピン収納凹部の底部に、ピン移動方向に向けて滑らかに傾斜する傾斜面を有する山形部が形成され、引戸を閉じる際、下摺動ピンが該山形部に乗り上げて制動がかかるように構成することができる。
【0015】
さらに、請求項8のように、上記下レールと上レールの前面縁部に化粧カバーを係止させるための係止凸部を設け、係止凸部は下レールまたは上レールの取付面から段状に突出する形状に形成することができる。
【0016】
さらに、請求項9のように、上記下レールの上段レール溝の端部に、塵だし用の傾斜部を設けることができる。
【0017】
さらに、請求項10のように、上記下レールの下摺動ピン収納凹部の端部に、塵を溜めて取り出すための塵収納孔を、下摺動ピンの外径より小さい内径で形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
上記構成のフラット引戸は、例えば狭いスペースに設置される収納キャビネットなどの開口前部に取り付けられる引戸などに適用される。閉鎖時、各引戸の下摺動部材が下レールの上段レール溝からレール前部の下摺動部材収納凹部に進入し、下摺動ピンが下レールの下段レール溝からレール前部の下摺動ピン収納凹部に進入すると共に、上摺動部材が上レールの下段レール溝からレール前部の上摺動部材収納凹部に進入し、上摺動ピンが上レールの上段レール溝からレール前部の上摺動ピン収納凹部に進入して停止する。このため、2枚の引戸は平坦なフラット状態となって閉鎖される。
【0019】
一方、引戸を開く場合は、一方の引戸の外側を手前に引き、内側(中央側)を奥に押し込むようにすると、その引戸は、下摺動ピンと上摺動ピンを軸にして、引戸の中央側を内側に入れるように回動し、これによって、下摺動部材が、下レールの下摺動部材収納凹部から上段レール溝に進入し、上摺動部材が上レールの上摺動部材収納凹部から下段レール溝に進入して係合する。
【0020】
その状態で、一方の引戸を他方の引戸の背面側に進入させるように引けば、引戸の下摺動部材が下レールの上段レール溝を摺動して開放側に進み、下摺動ピンが下レールの下段レール溝を摺動して開放側に進むと共に、引戸の上摺動部材が上レールの下段レール溝を摺動して開放側に進み、上摺動ピンが上レールの上段レール溝を開放側に進む。これによって、一方の引戸が他方の引戸の背面側に収納されて、キャビネットの前部が開放される。
【0021】
上記構成のフラット引戸は、レールが下レールと上レールのみから簡単に構成され、引戸の下部に取り付けた下摺動部材と下摺動ピン、及び上部に取り付けた上摺動部材と上摺動ピンを、上下レールのレール溝に係合させるだけで、簡単に装着することができる。また、従来のフラット引戸のように複数種類の摺動部材をレール上に使用していないため、部品点数が少なく、簡単に組み付けることができ、使用に伴う摺動部分の劣化も少なくすることができる。
【0022】
また、請求項2のように、下レールの下段レール溝内に補助レールを嵌入し、下レールの下段レール溝の深さを上レールの上段レール溝より浅く形成することにより、下段レール溝の深さを浅くして溝を目立たなくし、外観の悪化を防止することができ、また、下段レール溝内に入った異物や塵を容易に取り出すことができる。
【0023】
さらに、請求項4のように、下レールの前面側に化粧カバーを着脱可能に取り付けると共に、化粧カバーを外した状態で、下摺動ピン収納凹部の側壁の一部を前側に外して開口すると共に、下摺動部材収納凹部の前側壁部の一部を外して開口する構造とすれば、下レールの前面から化粧カバーを外し、さらに下摺動ピン収納凹部の前側壁部と下摺動部材収納凹部の前側壁部を外せば、下レールの下段レール溝内に入った異物や塵、或は下摺動ピン収納凹部内または下摺動部材収納凹部内に入った異物や塵を、容易に取り出すことができる。
【0024】
さらに、請求項5のように、下摺動部材は取付部に対し摺動部がスペーサを介して高さ調整可能に取り付けられ、下摺動ピンは取付部に対し摺動ピンがスペーサを介して高さ調整可能に取り付けられる構成とすれば、現場において、介在させるスペーサの枚数を変えることにより、下摺動ピンと下摺動部材の高さを調整して、引戸のガタツキをなくし、摺動性を良好に調整することができる。
【0025】
また、請求項6のように、下摺動部材と下摺動ピンに取付用の長孔を縦方向に長く形成し、下摺動部材又は下摺動ピンが引戸の下部の被取付部に取り付けられる際、被取付部との間にスペーサを介在させ、下摺動部材又は下摺動ピンの高さを調整可能に取り付ける構成とすれば、現場において、介在させるスペーサの枚数を変えることにより、下摺動ピンと下摺動部材の高さを調整して、引戸のガタツキをなくし、摺動性を良好に調整することができる。
【0026】
さらに、請求項7のように、下レールの下摺動ピン収納凹部の底部に、ピン移動方向に向けて滑らかに傾斜する傾斜面を有する山形部を設ける構成とすれば、引戸を閉じる際、下摺動ピンが山形部に乗り上げて自動的に制動がかかり、その後、低速で停止させ、閉じた状態の引戸を安定して保持することができる。
【0027】
さらに、請求項8のように、下レールと上レールの前面縁部に化粧カバーを係止させるための係止凸部を設け、係止凸部は下レールまたは上レールの取付面から段状に突出する形状に形成すれば、下レールと上レールをキャビネットの開口縁部の横桟などに取り付ける際、段状の係止凸部を横桟の角部に当て、レールを正確に位置決めして取り付けることができる。
【0028】
さらに、請求項9のように、下レールの上段レール溝の端部に、塵だし用の傾斜部を設けることにより、下レールの上段レール溝に溜まった塵を、傾斜部から簡単に外に掃きだすことができる。
【0029】
さらに、請求項10のように、下レールの下摺動ピン収納凹部の端部に、塵を溜めて取り出すための塵収納孔を設け、その塵収納孔の内径は下摺動ピンの外径より小さく形成すれば、下摺動ピン収納凹部に溜まった塵が下摺動ピンの移動などにより収納凹部の端部まで運ばれたとき、下摺動ピンの停止位置に悪影響を与えずに、塵を塵収納孔に導き、最終的にはその塵収納孔から良好に塵を外に出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1はフラット引戸を装着したキャビネットの斜視図を示している。このキャビネットは、例えば狭いスペースに設置される収納キャビネットとして使用されるもので、そのキャビネットの正面開口部の前縁部に2枚の引戸2,3からなるフラット引戸が、下レール10と上レール20間に保持されて走行可能に装着される。
【0031】
引戸2,3の本体は例えば合板により形成され、各引戸2,3の外側の端部には把手2a,3aが設けられている。さらに、各引戸2,3の下端部には下摺動部材6と下摺動ピン7が下に突き出すように取り付けられている。図2、図3は左側の引戸2を示しており、この左側の引戸2には、下摺動部材6が右端の下端部に取り付けられ、下摺動ピン7が中央から左寄りの下端部に取り付けられている。右側の引戸3については図示を省略しているが、右側の引戸3は左側の引戸2と対称形に形成され、下摺動部材6が引戸3の左端の下端部に取り付けられ、下摺動ピン7がその中央から右寄りの下端部に取り付けられている。
【0032】
下摺動部材6は、図4に示すように、略L型の形成された取付部61の下部に略小判型の摺動部62を、スペーサ63を介して固定ねじ64とナット65により締付固定して形成されている。スペーサ63は小判型の薄い合成樹脂板から形成されて複数枚用意され、摺動部62の高さ位置は、スペーサ63の重ね枚数を変えることにより、調整可能となっている。摺動部62は略小判状の平面形状を有すると共に、その底部に凸状曲面を有して形成され、後述の下レール10の上段レール溝11に緩く係合して円滑に摺動走行するように形成されている。取付部61と摺動部62の当接部には凹凸の嵌合部が形成され、その嵌合部を嵌め合わせて両者は嵌着され、さらに、中央部に挿入された固定ねじ64とナット65により両者は相互に締付固定される。さらに、取付部61には引戸2,3の合板本体の厚さ方向にねじ止めするための取付孔が穿設され、摺動部62にも合板本体の上下方向にねじ止めするための取付孔が穿設されている。
【0033】
下摺動ピン7は、図5に示すように、略L型の形成された取付部71の下部に略円筒型の摺動ピン72を、スペーサ73を介して固定ボルト74により締付固定されて形成されている。摺動ピン72は、内側にめねじを螺刻したスリーブ72aをインサートとして合成樹脂により略弾丸形状にインサート成形され、取付部71側に突設された固定ボルト74のねじ部にねじ込んで取り付けられる。先端に略半球部を有した摺動ピン72は後述の下レール10の下段レール溝12内を円滑に摺動走行可能である。
【0034】
摺動ピン72は、取付部71の中央に嵌入され固定ボルト74のねじ部にそのスリーブ72aをねじ込んで固定される一方、そのねじ部の元部に挿入されるワッシャ形のスペーサ73の枚数を変えることにより、下摺動ピン7の摺動ピン72の高さ位置を調整することができる。摺動ピン72の長さは、後述の上摺動ピン9の摺動ピン92より短い、例えば8mmに形成され、スペーサ73は例えば厚さ1mmの合成樹脂製のワッシャ形に形成され、その摺動ピン72の元部にこのスペーサ73を介装して下摺動ピン7の高さが8mm+αに調整できるようにしている。その挿入枚数を調整しながら固定ボルト74にスペーサ73を挿入して摺動ピン72は取付部71に固定される。
【0035】
下摺動ピン7の摺動ピン72の長さは上記のように例えば8mmとされ、上摺動ピン9の摺動ピン92の長さ(例えば11mm)より短く形成される。下摺動ピン7の摺動ピン72が係合する下レール10の下段レール溝12が、上摺動ピン9の摺動ピン92が係合する上レール20の上段レール溝21の深さより浅く形成されるためである。下段レール溝12内には、図22、図23に示すように、補助レール19a,19bを嵌入してレール溝の深さを浅くし、下レール10の外観の悪化やレール溝内への異物の落下を防止するようにしている。一方、上摺動ピン9の摺動ピン92の長さは後述のように例えば11mmとより長く形成され、この摺動ピン92は上レール20のより深い上段レール溝21に係合して摺動走行し、引戸の外れを防止して安定走行させるようにしている。図5に示すように、下摺動ピン7の取付部71には引戸2,3の合板本体の厚さ方向と上下方向にねじ止めするための取付孔が各々穿設されている。
【0036】
一方、各引戸2,3の上端部には、図3に示すように、上摺動部材8と上摺動ピン9が上に突き出すように取り付けられている。上摺動部材8は、図6に示す如く、略L型に形成された取付部81の上部に略小判型の摺動部82を、固定ねじ84と固定ナット85により締付固定して形成され、摺動部82は、後述の上レール20の下段レール溝22内に緩く係合して円滑に摺動走行可能に形成される。
【0037】
摺動部82は、上記下摺動部材の摺動部62と同様に、略小判状の平面形状を有すると共に、その上部に凸状曲面を有して形成され、後述の上レール20の下段レール溝22に緩く係合して円滑に摺動走行するように形成されている。取付部81と摺動部82の当接部には凹凸の嵌合部が形成され、その嵌合部を嵌め合わせて両者は嵌着され、さらに、中央部に挿入された固定ねじ84とナット85により両者は相互に締付固定される。
【0038】
さらに、図6のように、取付部81には引戸2,3の合板本体の厚さ方向にねじ止めするための取付孔が穿設され、摺動部82にも合板本体の上下方向にねじ止めするための取付孔が穿設されている。上記下摺動部材6の取付部61と上摺動部材8の取付部81とは同一形状とすることができ、このため、同じ部品を兼用して使用することができる。なお、図6では、取付部81と摺動部82間に上記のようなスペーサは介装されていないが、この上摺動部材8においても、取付部81と摺動部82間に高さ調整用のスペーサを挿入することはできる。
【0039】
上摺動ピン9は、図7に示すように、略L型の形成された取付部91の上部に略円筒型の摺動ピン92を、スペーサ93を介して固定ボルト94により締付固定して形成されている。摺動ピン92は、上記摺動ピン72と同様に、内側にめねじを螺刻したスリーブ92aをインサートとして合成樹脂により略弾丸形状にインサート成形されて成形され、後述の上レール20の上段レール溝21内に緩く係合して摺動走行可能となっている。この摺動ピン92は、取付部91の中央に嵌入され固定ボルト94のねじ部にそのスリーブ92aをねじ込んで固定される。また、摺動ピン92の高さ位置は、固定ボルト94の元部に挿入するスペーサ93の重ね枚数を変えることにより、調整可能となっている。
【0040】
上摺動ピン9の摺動ピン92の長さは、引戸を安定して摺動走行させるために必要な長さ、例えば11mmに設定され、下摺動ピン7の摺動ピン72の長さより長く形成されている。その摺動ピン92の元部に例えば厚さ1mmの合成樹脂製のスペーサ93を介装して上摺動ピン9の高さは11mm+αに調整できるようにしている。摺動ピン92は後述の上レール20の充分な深さを持つ上段レール溝21内に係合し、上段レール溝21内を円滑に安定して摺動走行することができる。さらに、上記と同様に、取付部91には引戸2,3の合板本体の厚さ方向と上下方向にねじ止めするための取付孔が各々穿設されている。
【0041】
なお、上記摺動ピン72,92の外周にローレットが刻設され、摺動ピンを締付固定する際、ピンを回し易くしているが、摺動ピンの摺動性はピンの略半球状の先端部によるところが大きく、また、レール及びピンは共に例えばABS樹脂などの硬質合成樹脂により成形され、相互の摺動性は非常に良好であるため、ピン外周のローレットがピンとレール間の摩擦抵抗を増大させることはない。
【0042】
図8は、最も短い構成の下レール10の左半分の斜視図を示し、図9は、そのレールの内側に2本の中間連結レール部材17、17を連結して長尺とした状態の下レール10Aを示している。下レール10及び下レール10Aは、図8,図9において、紙面の大きさからその左半部のみを示しているが、実際には、下摺動部材収納凹部13を設けた中央レール部材15を中心に左右対称形に形成される。下レール10は比較的間口の狭い開口部の引戸に使用され、下レール10Aは間口の広い開口部の引戸に使用される。下レール10及び下レール10Aのレール本体の上面には、上段レール溝11と下段レール溝12が連続して形成され、上段レール溝11の端部には下摺動部材収納凹部13が形成され、下段レール溝12の反対側の端部には下摺動ピン収納凹部14が形成されている。
【0043】
長尺の下レール10Aは、下摺動部材収納凹部13を含む中央レール部材15の左右に、下摺動ピン収納凹部14を含む端部レール部材16を連結し、レールの長さに応じて、中央レール部材15と端部レール部材16の間に、1本、2本或は3本以上の任意の数の中間連結レール部材17を連結して構成される。したがって、基本的には、最も短いレールは、中央レール部材15の両側に端部レール部材16を連結して構成され、レールの長さが長くなるほど中央レール部材15と端部レール部材16の間に接続する中間連結レール部材17の本数を増加させ、共通部品を使用しながら低コストで各種の長さのレールを製作できるようにしている。
【0044】
また、図11のように、端部レール部材16の正面側の上角部と下角部には、化粧カバー18を係止させるための爪状の係止凸部16bが形成され、特に下角部の係止凸部16bは段状に突出する形状に形成されている。このため、図20、図21のように、下レール10,10Aをキャビネットの開口部下の横桟上に取り付ける際、下角部の係止凸部16bを横桟の角部に当て、容易に位置決めして固定することができる。
【0045】
中央レール部材15は、図16に示すように、その上面に上段レール溝11と下段レール溝12の直線部分を上下2段状に設けると共に、2つの下摺動部材収納凹部13、13が上段レール溝11に連接しレールの前部にシフトして、レール上面に並設されている。また、中央レール部材15の両端部には嵌合連結用の凸部15a、15cが突設され、端部レール部材16または中間連結レール部材17の端部に設けた凹部に、その凸部15a、15cを嵌合させ、両者を連結する構造としている。図14に示すように、中間連結レール部材17は内側に空間を設けて構成され、下レール10Aの長さを調整するために、中間連結レール部材17の一端を任意の長さに切断した場合でも、中央レール部材15の凸部15a、15cを嵌合可能な凹部が形成されるようにしている。これにより、中間連結レール部材17の長さを任意に決めることによって、レールの長さを任意に調整することができる。
【0046】
下レール10,10Aの上段レール溝11は、レール本体の内側寄りに長手方向に沿って直線状に形成され、図11に示すように、下段レール溝12に比べその幅は広くその深さは浅く形成されている。この上段レール溝11は、左右の各引戸2,3の下摺動部材6の摺動部62が係合して摺動走行可能な幅に形成される。中央レール部材15の略中央部には、図16に示す如く、前方にシフトして下摺動部材収納凹部13が上段レール溝11と同じレベルで形成され、各引戸2,3の閉鎖時に、各引戸2,3の中央側寄り、つまり左側の引戸2ではその右端下部の下摺動部材6の摺動部62が、右側の引戸3ではその左端下部の下摺動部材6の摺動部62が、そこに進入して停止する構造となっている。一方、図8のように、端部レール部材16の上段レール溝11の端部に、前方に向けて傾斜する面を有した傾斜部11aが設けられ、上段レール溝11内に入った異物や塵などを排出し易くしている。
【0047】
下段レール溝12は、図11a、図16cに示すように、上段レール溝11の一部下側に沿って形成され、上段レール溝11の幅より狭い幅(摺動ピン72が摺動可能な程度の幅)に形成され、そこを引戸2または引戸3の下摺動ピン7の摺動ピン72が係合して摺動可能である。さらに、この下段レール溝12の両側の端部は、図9に示すように、上段レール溝11から離れて正面側に緩やかにカーブしてシフトするように形成され、その末端部には下摺動ピン収納凹部14が形成され、各引戸2,3の閉鎖時に、各引戸2,3の中央側下部の下摺動ピン7の摺動ピン72がそこに進入して停止する構造である。
【0048】
さらに、下レール10は、後述の上レール20と主要部品を共通化しつつ、その下段レール溝12と下摺動ピン収納凹部14の深さを、上レール20のそれに比べ、浅くするように形成されている。このために、補助レール19a,19bが下段レール溝12と下摺動ピン収納凹部14の底部に嵌め込まれ、溝の深さを上レールのそれより浅くしている。直線状の補助レール19bは、図15に示すように、細い板状に形成され、上面には樋状の凹部が長手方向にそって設けられ、レールの下部には複数の係止爪19cが所定の間隔で突設されている。
【0049】
一方、図10、図14に示すように、下レール10の下段レール溝12内、つまり、中央レール部材15と中間連結レール部材17の下段レール溝12の底部には、係止孔12aが所定の間隔で形成される。それらの係止孔12aに上記係止爪19cが嵌め込まれ、補助レール19bは下段レール溝12内底部に嵌着される。
【0050】
下レール10の端部レール部材16における曲線状の下段レール溝12には、図12のように曲線状の補助レール19aがその底部にはめ込まれる。補助レール19aは、図12に示すように、湾曲した細い板状に形成され、上面には樋状の凹部が長手方向にそって設けられ、レールの下部には複数の係止爪19dが所定の間隔で突設されている。
【0051】
また、図12bに示すように、下摺動ピン収納凹部14寄りに嵌め込まれる補助レール19aの端部近傍の底部には、緩い傾斜の山形部19eが形成され、引戸2,3が閉じられるとき、下摺動ピン7がその山形部19eを乗り越える際に、引戸2,3に適度な制動がかかり、その後、下摺動ピン7が下摺動ピン収納凹部14内に良好に保持されるようにしている。
【0052】
このように、図10に示す如く、端部レール部材16上には、上段レール溝11が直線状に形成され、その上段レール溝11の右端で重なるように、下段レール溝12が幅を狭くして形成され、下段レール溝12は、そこから外れて正面側にシフトするように湾曲して延設される。そして、その下段レール溝12の端部には下摺動ピン収納凹部14が形成され、各引戸2,3の閉鎖時、各引戸2,3の中央側下部の下摺動ピン7の摺動ピン72がその下段摺動ピン収納凹部14内に進入し保持される。
【0053】
図8、図9に示すように、下レール10の前面側には、長手方向に沿って化粧カバー18が着脱可能に嵌着されている。さらに、端部レール部材16においては、化粧カバー18を外した状態で、下摺動ピン収納凹部14が前面に開口するように、下摺動ピン収納凹部14の前部に前側壁部14aが着脱可能に嵌合されている。すなわち、図10に示すように、下レール10の端部レール部材16においては、下摺動ピン収納凹部14が前側の側壁部に凹部16aが前方に開口して形成され、その開口部から下摺動ピン7をレール溝内に出し入れ可能としている。
【0054】
そして、その凹部16aには、図13に示すような形状の前側壁部14aが着脱可能に嵌着され、下摺動ピン収納凹部14の前側の側壁部を形成する。前側壁部14aの前端部には、化粧カバー18を係止するための係止部14bが形成され、化粧カバー18がその前面に係止される。したがって、化粧カバー18と前側壁部14aを外せば、凹部16aが開口し、下摺動ピン7を凹部16aから下摺動ピン収納凹部14に挿入し或は引き出すことができる。
【0055】
なお、図8、図10に示すように、下摺動ピン収納凹部14の末端部には、塵を溜めて取り出すための塵収納孔14cが設けられる。この塵収納孔14cの内径は下摺動ピン72の外径より小さく形成され、下摺動ピン収納凹部14に溜まった塵が下摺動ピン72の移動などにより収納凹部14の端部まで運ばれたとき、下摺動ピン72の停止位置に悪影響を与えずに、塵を塵収納孔14cに導くようにしている。また、下レール10を取り付ける横桟における塵収納孔14cの対応位置に、貫通孔を設ければ、その貫通孔から塵をさらに容易に外に出すことができる。
【0056】
一方、図16に示すように、中央レール部材15の前面側には、化粧カバー18を外した状態で、下摺動部材収納凹部13がその前面を開口するように、下摺動部材収納凹部13の前部に、前側壁部13aが着脱可能に嵌合されている。つまり、下摺動部材収納凹部13の前側の壁部に凹部15bが前方に開口して形成され、その開口部から下摺動部材6をレール溝内に出し入れ可能としている。そして、その凹部15bには、図17に示すような形状の前側壁部13aが着脱可能に嵌着され、下摺動部材収納凹部13の前側の側壁部を形成する。前側壁部13aの前端部には、化粧カバー18を係止するための係止部13bが形成され、化粧カバー18がその前面に係止される。
【0057】
また、図16のように、中央レール部材15の上面には、上段レール溝11とそれより幅の狭い下段レール溝12が上下に重なり合うように形成され、さらにその上段レール溝11に連続するように2つの下摺動部材収納凹部13が並設されている。さらに、中央レール部材15の両側部には、連結用の凸部15a、15cが突設され、その両側に、端部レール部材16または中間連結レール部材17の端部の凹部を嵌め込み、連結可能としている。
【0058】
また、中央レール部材15の正面側の上角部と下角部には、端部レール部材16と同様に、化粧カバー18を係止させるための爪状の係止凸部15dが形成され、特に下角部の係止凸部15dは段状に突出する形状に形成されている。このため、図20、図21のように、下レール10,10Aをキャビネットの開口部下の横桟上に取り付ける際、下角部の係止凸部15dを横桟の角部に当て、容易に位置決めして固定することができる。
【0059】
このように、下レール10の前面から化粧カバー18と前側壁部13a,14aを外せば、レールの正面側から引戸2,3を下レール10に容易に嵌め込むことができ、また、保守点検の際などには、上下レール溝11,12や収納凹部13,14に入った異物や塵を容易に取り出すことができる。
【0060】
一方、上レール20は、図18、図19に示すように、そのレール本体の下面に、左右の引戸2,3の上部の各々の上摺動部材8と上摺動ピン9を係合させ、引戸2,3を左右にスライド可能とするように形成される。つまりこの上レール20には、長尺のレール本体の下面に、上段レール溝21と下段レール溝22を重ね合わせて形成し、下段レール溝22の中央端部には2つの上摺動部材収納凹部23、23が前方にシフトし且つレール溝に連接して形成され、上段レール溝21の端部には上摺動ピン収納凹部24が連接して形成される。
【0061】
図18は、最も短い構成の上レール20の左半分の斜視図を示し、図19は、そのレールの内側に2本の中間連結レール部材27、27を連結して長尺とした状態の上レール20Aを示している。上レール20及び上レール20Aは、図18,19では紙面の大きさから左半部のみを示し、実際には、下摺動部材収納凹部23を設けた中央レール部材25を中心に左右対称形に形成される。上レール20は比較的間口の狭い開口部の引戸に使用され、上レール20Aは間口の広い開口部の引戸に使用される。上レール20及び上レール20Aのレール本体の下面には、上段レール溝21と下段レール溝22が連続して形成され、上段レール溝21と下段レール溝22の端部には下摺動部材収納凹部23と下摺動ピン収納凹部24が形成されている。
【0062】
長尺の上レール20Aは、下摺動部材収納凹部23を含む中央レール部材25の左右に、下摺動ピン収納凹部24を含む端部レール部材26を連結し、レールの長さに応じて、中央レール部材25と端部レール部材26の間に、1本、2本または任意の数の中間連結レール部材27を連結して構成されている。したがって、基本的には、最も短いレールは、中央レール部材25の両側に端部レール部材26を連結して構成され、レールの長さが長くなるほど中央レール部材25と端部レール部材26の間に接続する中間連結レール部材27の本数を増加させ、共通部品を使用しながら低コストで各種の長さのレールを製作できるようにしている。
【0063】
中央レール部材25は、上記下レール10の中央レール部材15と同様に、その下面に上段レール溝21と下段レール溝22の直線部分を設けると共に、下段レール溝22に連接するように2つの下摺動部材収納凹部23、23を並設している。また、中央レール部材25の両端部には嵌合連結用の凸部25aが突設され、端部レール部材26または中間連結レール部材27の端部に設けた凹部に、その凸部15aを嵌合させ、両者を連結する構造としている。
【0064】
さらに、上レール20の前面側には、上記下レール10と同様、長手方向に沿って化粧カバー28が着脱可能に嵌着されている。そして、端部レール部材26においては、化粧カバー28を外した状態で、上摺動ピン収納凹部24が前面に開口するように、上摺動ピン収納凹部24の前部に前側壁部24aが着脱可能に嵌合されている。つまり、上レール20の端部レール部材26において、上摺動ピン収納凹部24が前側の側壁部に凹部が前方に開口して形成され、その開口部から上摺動ピン9をレール溝内に出し入れ可能としている。そして、その凹部には、前側壁部24aが着脱可能に嵌着され、上摺動ピン収納凹部24の前側の側壁部を形成する。前側壁部24aの前端部には、化粧カバー28を係止するための係止部が形成され、化粧カバー28がその前面に係止される。
【0065】
中央レール部材25の前面側には、化粧カバー28を外した状態で、上摺動部材収納凹部23がその前面を開口するように、上摺動部材収納凹部23の前部に、前側壁部23aが着脱可能に嵌合されている。つまり、上摺動部材収納凹部23の前側の壁部に凹部が前方に開口して形成され、その開口部から上摺動部材8をレール溝内に出し入れ可能としている。そして、その凹部には前側壁部23aが着脱可能に嵌着され、上摺動部材収納凹部23の前側の側壁部を形成する。
【0066】
前側壁部23aの正面側の端部を含む上レール20の正面側の上角部と下角部に、化粧カバー28を係止するための爪状の係止凸部が形成され、化粧カバー28がその前面に係止される。この爪状の係止凸部も、上記下レール10の各レール部材の係止凸部15d、16bと同様に、特に上角部の係止凸部29は、図22のように段状に突出する形状に形成されている。このため、図22のように、上レール20をキャビネットの開口部上の横桟に取り付ける際、上角部の係止凸部29を横桟の角部に当て、容易に位置決めして固定することができる。
【0067】
このように、上レール20の前面から化粧カバー28と前側壁部23a,24aを外せば、上摺動ピン収納凹部24と上摺動部材収納凹部23の側壁部が開口し、その開口部を通して、つまりレールの正面側から引戸2,3の上摺動ピン9と上摺動部材8を上レール20に容易に嵌め込むことができる。
【0068】
また、上レール20は、上記下レール10と同様な形状に形成され、上摺動部材8は下レール10の下摺動部材6に対応し、上摺動ピン9は下レール10の下摺動ピン7に対応する。さらに、下段レール溝22と上段レール溝21は下レール10の上段レール溝11と下段レール溝12に対応するが、下レール10の下段レール溝12と下摺動ピン収納凹部14にかけてはめ込まれていた上記補助レール19a、19bは、この上レール20には使用されていない。
【0069】
したがって、下レール10と上レール20は、補助レール19a、19b以外は、同じレール部材を使用して形成され、つまり、上レール20の中央レール部材25、端部レール部材26、及び中間連結レール部材27は、下レール10の中央レール部材15、端部レール部材16、及び中間連結レール部材17と同じ部品を使用して形成される。そして、下レール10は、上レール20の上段レール溝22と上摺動ピン収納凹部24の底部に補助レール19a、19bをはめ込むことにより、製作される。
【0070】
このように、上レール20と下レール10とは補助レール19a、19bを除き同一形状であるから、同じ部品として製作し、兼用して使用することができ、よって、金型製作費などのコストを低減することができる。また、引戸2,3の中央寄りの端部に取り付ける下摺動部材6と上摺動部材8も、スペーサ63を除き同一形状であり、取付部61,81及び摺動部62,82は同じ部品を使用することができる。さらに、下摺動ピン7と上摺動ピン9においても、スペーサ93及び摺動ピン72、92を除き、取付部71,91が同一形状であり、これらは、同じ部品として製作し、兼用して使用することができる。
【0071】
上記のように構成された下レール10は、例えばトイレなどの狭いスペースに設置される収納キャビネット1における開口部の前端下部の横桟上に固定され、同様に上レール20は開口部前端上部の上横桟の下面における下レール10に対向した位置に固定される。下レール10と上レール20はその化粧カバー18が前面に位置するようにセットし、固定ねじを用いて固定する。このとき、上記のように、下レール10の正面側の下角部または上レール20の正面側の上角部に段状に突設した係止凸部15d、29を、横桟の角部に当てるようにしてレールを取り付ければ、下レール10と上レール20を所定位置に正確に且つ簡単に位置決めして固定することができる。
【0072】
キャビネット1の開口部に装着された下レール10は、その上面が前方から良く見える位置にあり、その外観の良否に影響を与えやすいが、この下レール10は、通常、その深さが深く形成される下段レール溝12内に、補助レール19a,19bが嵌めこまれてその深さを浅くしているため、レール溝の深さが深くなることによる外観の悪化は防止され、使用者に違和感を感じさせることはない。さらに、図22、図23の断面図に示すように、下レール10の上面がキャビネット1の底板より上に位置し、これにより、キャビネットの収納物が下レール10上に載りにくくし、レール上の障害物とならないようになっている。
【0073】
そして、下レール10と上レール20からその前面の化粧カバー18、28及び前側壁部13a、14a、23a,24aを外した状態で、レールの前面側から引戸2,3を上下レール10,20間に装着する。すなわち、引戸2,3を装着する場合、先ず、その下摺動部材6を、下レール10の中央レール部材15の凹部15aから下摺動部材収納凹部13内に挿入し、下摺動ピン7を、端部レール部材16の凹部16aから下摺動ピン収納凹部14内に挿入する。さらに、引戸2,3の上摺動部材8を、上レール20の中央レール部材25の凹部25aから上摺動部材収納凹部23内に挿入し、上摺動ピン9を、上レール20の端部レール部材26の凹部26aから上摺動ピン収納凹部24内に挿入する。そして、引戸2,3を下レール10と上レール20間にセットした後、図20、図21のように、前側壁部13a、14a、23a,24a及び化粧カバー18、28を、下レール10と上レール20の前面に嵌着する。
【0074】
このように、引戸2,3はその前方から上下レール10,20間に簡単に組み付けることができる。また、化粧カバー18,28を外さない限り、前側壁部13a、14a、23a,24aは外れない構造のため、下摺動部材6、下摺動ピン7、上摺動部材8、及び上摺動ピン9の不用意な外れを防止することができる。
【0075】
両引戸2,3を装着した状態、つまり引戸を閉鎖した状態では、図24の最上部に示すように、引戸2,3の下部の下摺動部材6の摺動部62が下レール10の下摺動部材収納凹部13に位置し、下摺動ピン7の摺動ピン72が下レール10の下摺動ピン収納凹部14に位置し、さらに、引戸2,3の上部の上摺動部材8の摺動部82が上レール20の上摺動部材収納凹部23に位置し、上摺動ピン9の摺動ピン92が上レール20の上摺動ピン収納凹部24に位置する。
【0076】
そして、下レール10と上レール20においては、下摺動部材収納凹部13と上摺動部材収納凹部23及び下摺動ピン収納凹部14と上摺動ピン収納凹部24が、奥に位置するレール溝11,12,21,22より前部にシフトして位置しているから、図1、図24に示すように、閉鎖した状態の両引戸2,3は、レールの前部につまりキャビネット1の最も手前の前部にフラットにした状態で位置することになる。
【0077】
閉鎖状態の引戸2,3を開く場合、例えば左の引戸2を開く際には、図24の中段に示すように、左端の把手2aを持って手前に引く。このとき、引戸2は、下摺動ピン7の摺動ピン72と上摺動ピンの摺動ピン92を軸にして、引戸2の中央側(右端)を内側(キャビネットの内側)に入れるように僅かに回動する。これによって、下摺動部材6の摺動部62が、下レール10の下摺動部材収納凹部13から上段レール溝11に進入し、上摺動部材8の摺動部82が上レール20の上摺動部材収納凹部23から下段レール溝22に進入して係合する。
【0078】
この状態で、引戸2の把手2aを右に引けば、図24の下段に示すように、下摺動ピン72が下レール10の下段レール溝12内を摺動し、上摺動ピン92が上レール20の上段レール溝22内を摺動すると共に、摺動部62が下レール10の上段レール溝11を右方向に摺動し、摺動部82が上レール20の下段レール溝21を右方向に摺動して、引戸2は、図25に示すように、右側に移動する。これにより、左側の引戸2は、右側の引戸3の内側(背面側)に進入して入り込み、最終的に図25下段に示すような下レール10と上レール20の端部まで進入し、引戸2は引戸3の内側に完全に移動した状態で停止する。これにより、キャビネット1の左前部が開放された状態となる。
【0079】
一方、引戸2を閉じる場合は、図25下段の開放状態から、引戸2の把手2aを持って左側に引くと、引戸2の下摺動ピン72が下レール10の下段レール溝12内を摺動し、上摺動ピン92が上レール20の上段レール溝22内を摺動すると共に、摺動部62が下レール10の上段レール溝11を左方向に摺動し、摺動部82が上レール20の下段レール溝21を左方向に摺動して、引戸2は左側に移動する。
【0080】
そして、引戸2が上下レール10,20の左側端部に達したとき、摺動ピン72が下レール10の下段レール溝12から下摺動ピン収納凹部14に進入し、上摺動ピン9bが上レール20の上段レール溝22から上摺動ピン収納凹部24に進入する。このとき、図24の中段に示す状態となる。次に、その把手2aを少し奥に押すようにすると、引戸2が摺動ピン72、92を軸に僅かに回動し、下摺動部材6の摺動部62が下レール10の上段レール溝11から下摺動部材収納凹部13に進入し、上摺動部材8の摺動部82が上レール20の下段レール溝21から上摺動部材収納凹部23に進入して停止する。これで、引戸2は閉鎖状態となる。
【0081】
一方、引戸2,3を装着した後、或いは保守点検時に、引戸2,3にガタツキや走行障害がある場合、下摺動部材6の摺動部62、下摺動ピン7の摺動ピン72、上摺動部材8の摺動部82、及び上摺動ピン9の摺動ピン92の各々の高さを調整し、ガタツキをなくすと共に、引戸2,3がスムーズに摺動するようにする。このような摺動部62,82、摺動ピン72,92の高さ調整は、上下レール10,20から引戸2,3を外して行う。固定ねじ64を緩めて下摺動部材6の摺動部62を外し、取付部61と摺動部62の間に挿入するスペーサ63の枚数を調整する。また、固定ボルト74を緩めて下摺動ピン7の摺動ピン72を外し、取付部71と下摺動ピン72の間に挿入するスペーサ73の枚数を調整する。さらに、固定ねじ84を緩めて上摺動部材8の摺動部82を外し、取付部81と摺動部82の間に挿入するスペーサの枚数を調整して実施する。同様に、固定ボルト94を緩めて上摺動ピン9の摺動ピン92を外し、取付部91と摺動ピン92の間に挿入するスペーサ93の枚数を調整して、摺動ピン92の高さを調整する。これにより、引戸2,3のガタツキをなくすと共に、スムーズに摺動するように調整することができる。
【0082】
また、保守点検を行う際には、レール前面の化粧カバー18、28を外すと共に、前側壁部13a、14a、23a,24aを外し、これにより、前方から2枚の引戸2,3を容易に外すことができる。そして、引戸2,3を上下レール10,20から外した状態で、下レール10の上段レール溝11や下段レール溝12などに溜まった異物や塵を、下摺動部材収納凹部13又は下摺動ピン収納凹部14を通して外部に排出し、下レール10の清掃を極めて簡単に行うことができる。また、下段レール溝12には補助レール19a、19bが嵌着され、その深さを浅くしているため、下レールの外観を悪化させることがない。
【0083】
図26は、他の実施形態の下摺動部材66、上摺動ピン96、及び下摺動ピン76を示している。この下摺動部材66、上摺動ピン96、及び下摺動ピン76は各々合成樹脂により所定の形状に一体成形される。つまり、取付部と摺動部または取付部と摺動ピンが型成形により一体に成形される。
【0084】
そこで、摺動部又は摺動ピンの高さ位置を現場で調整可能とするために、下摺動部材66の取付部には縦方向に長い長孔67が固定孔として形成され、上摺動ピン96の取付部には縦方向に長い長孔97が固定孔として形成され、下摺動ピン76の取付部には縦方向に長い長孔77が固定孔として形成される。
【0085】
そして、各下摺動部材66、上摺動ピン96、又は下摺動ピン76を引戸の下端部又は上端部に取り付ける際には、図26のように、それらの取付水平面に薄い板状のスペーサ68,98,又は78を介挿して、下摺動部材66、上摺動ピン96、又は下摺動ピン76を引戸に取り付けることになる。このように、下摺動部材66、上摺動ピン96、及び下摺動ピン76を、各々合成樹脂により所定の形状に一体成形し、固定孔を長孔として取付位置の調整を可能とすることにより、製造コストを削減することができる。
【0086】
図27は、他の実施形態のフラット引戸を示し、このフラット引戸に使用される引戸2,3には、上記の前方に突出する把手2a,3aに代えて、前方の突出しない、引戸の端部に埋設されるタイプの把手2b、3bが引戸2,3の両側の端部近傍に取り付けられている。すなわち、この把手2b、3bは、図28に示すように、略コ字状の横断面を有した長尺のチャンネル材状に形成され、その内側凹部の両側に手掛け部が形成されている。このような形状の把手2b、3bの本体は、例えばアルミニウムの引き抜き加工により形成され、図29に示すように、その上端と下端にキャップ3cが嵌着されている。
【0087】
このような引戸の端部に埋設されるタイプの把手2b、3bを取り付けた引戸2,3は、図27に示すように、キャビネット1に装着した場合、キャビネットの前端面から把手2b、3bが前方に突き出すことはなく、例えば、スペースの少ないトイレなどの収納キャビネット1の引戸として便利に使用することができる。
【0088】
また、図27に示すように、収納キャビネット1の両側の側板1aの端面が正面に現われる場合、側板1aの端面と上レール20と下レール10の正面の化粧カバー18,28が面一となるようにレールを取り付ける。そして、面一となった側板1aの端面と化粧カバー18,28は、略ロの字状に引戸2,3を囲う形状として表われ、例えば引戸2,3と同じ模様と色の装飾シートを貼着すれば、キャビネット1の正面のデザイン性を向上させることができる。
【0089】
なお、上記実施形態では、補助レール19a,19bを下段レール溝12、下摺動ピン収納凹部14に嵌着して使用したが、補助レールを使用せずに、下レールの各部分を一体成形することもできる。この場合、上レールと下レールの本体を共通使用することはできないが、成形上問題なく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態を示すフラット引戸の斜視図である。
【図2】左側引戸4の下から見た斜視図である。
【図3】左側引戸4の上から見た斜視図である。
【図4】(a)は下摺動部材6の正面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図5】(a)は下摺動ピン7の正面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図6】(a)は上摺動部材8の正面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図7】(a)は上摺動ピン9の正面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図8】最も短い構成の下レール10における部分組付け状態の斜視図である。
【図9】下レール10Aにおける部分組付け時の斜視図である。
【図10】(a)は端部レール部材16の平面図、(b)はその右側面図である。
【図11】(a)は図10におけるa−a断面図、(b)は同b−b断面図、(c)は同c−c断面図である。
【図12】(a)は補助レール19aの平面図、(b)は同部分断面図、(c)は同拡大右側面図である。
【図13】(a)は前側壁部14aの平面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図14】(a)は中間連結レール部材17の平面図、(b)は同右側面図、(c)は同部分断面図、(d)はそのd−d断面図である。
【図15】(a)は補助レール19bの平面図、(b)は同右側面図、(c)は同半断面図、(d)はその拡大d−d断面図である。
【図16】(a)中央レール部材15の平面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図17】(a)下摺動部材13の前側壁部13aの平面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図18】最も短い上レール20の半分組立て時の斜視図である。
【図19】上レール20Aの半分組立て時の斜視図である。
【図20】下摺動ピン収納凹部14における前側壁部14aと化粧カバー18の分解断面図である。
【図21】下摺動部材収納凹部13における前側壁部13aと化粧カバー18の分解断面図である。
【図22】図1における拡大a−a断面図である。
【図23】図1における拡大b−b断面図である。
【図24】引戸2を開く際の平面説明図である。
【図25】引戸2を開く際の平面説明図である。
【図26】他の実施形態の下摺動部材、上摺動ピン、下摺動ピンを示し、(a)は下摺動部材の正面図及び右側面図、(b)上摺動ピンの正面図及び右側面図、(c)下摺動ピンの正面図及び右側面図である。
【図27】他の実施形態のフラット引戸の斜視図である。
【図28】図27のA−A拡大断面図である。
【図29】引戸の斜視図である。
【符号の説明】
【0091】
1-キャビネット
2、3-引戸
6-下摺動部材
7-下摺動ピン
8-上摺動部材
9-上摺動ピン
10-下レール
11-上段レール溝
12-下段レール溝
13-下摺動部材収納凹部
13a-前側壁部
14-下摺動ピン収納凹部
14a-前側壁部
18−化粧カバー
20-上レール
21-上段レール溝
22-下段レール溝
23-上摺動部材収納凹部
23a-前側壁部
24-上摺動ピン収納凹部
24a-前側壁部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば洗面化粧台のカウンター下部の前面扉、その上部キャビネットの前面扉、トイレなどの狭いスペースに設置される収納キャビネットの前面扉、或いは鏡付きスライド扉などに好適に使用可能なフラット前面を有したフラット引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、洗面化粧台において、カウンターの上方に上部キャビネットを設け、そのキャビネットの正面扉の前面に鏡が固定されたものが、下記特許文献1などで各種提案されている。
【0003】
この種のカウンターの上方に鏡扉付きキャビネットを備えた洗面化粧台は、正面の鏡の内側に収納容積の大きいキャビネットが形成できるため、使用者は、洗面道具、化粧品など多くの収納物を収納でき、また、鏡付きの扉を開閉するだけで、便利に使用することができるため、この種の洗面化粧台は広く普及されるに至っている。
【0004】
一方、近年、洗面化粧台は大型化する傾向にあり、それに伴いカウンター上方のキャビネットも大型化したものが製造されているが、大型のキャビネットには、面積の広い大型の鏡付き開閉扉がヒンジを介して開閉可能に装着されることになる。このため、必然的に開閉扉の重量が増大し、それを支えるヒンジやキャビネットの構造も強固にして大型化する必要があり、デザイン的な制限があって、洗面化粧台の大型化には限界があった。
【特許文献1】特開平5−176851号公報
【特許文献2】特開平5−133157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、洗面化粧台の上部キャビネットの正面扉を引戸とすることが検討されたが、キャビネットの正面扉を左右2枚の引戸とし、各々の前面に鏡を固定した場合、左右2枚の引戸は前後方向に段差があるため、そこに固定された2枚の鏡にも必然的に段差ができ、2枚の鏡を1枚の鏡のように広く使用できない不具合が生じる。
【0006】
このため、引戸としてフラット前面を有したフラット引戸の採用が検討された。フラット引戸としては、従来、家具や建物に使用され、閉鎖した状態で、両側の引戸の前面がフラットになる構造のものが、上記特許文献2などにより提案されている。しかし、この種の従来のフラット引戸は、案内レールのガイド溝に対し傾斜して交差する摺動部材を移動可能に配設する必要があるなど、部品点数が多く、複雑な構造を有していた。そのため、長期の使用によっては摺動部分、可動部分に劣化が生じ、引戸の動きが阻害されやすいという課題があった。さらに、レール溝が深くなると、レールの外観が悪化しやすく、またそこに異物が侵入すると、除去が難しく、引戸の摺動性が悪化する課題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、部品点数が少なく、構造が簡単で、レール溝内の異物を容易に除去することができ、良好な開閉動作を行うことができるフラット引戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1のフラット引戸は、開口部の前縁下部に下レールが水平に取り付けられると共に、該下レールに対向した前縁上部に上レールが水平に取り付けられ、該下レールと上レールには各々上段レール溝と下段レール溝が上下2段に重ねて形成され、さらに該下レールには上段レール溝に連続して下摺動部材収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、該上レールには下段レール溝に連続して上摺動部材収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、該下レールの下段レール溝に連続して下摺動ピン収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、該上レールの上段レール溝に連続して上摺動ピン収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、2枚の引戸の下部には、下摺動部材が該下レールの上段レール溝に係合して設けられると共に、下摺動ピンが該下レールの下段レール溝に係合して設けられ、該2枚の引戸の上部には、上摺動部材が該上レールの下段レール溝に係合して設けられると共に、上摺動ピンが該上レールの上段レール溝に係合して設けられ、
該2枚の引戸を閉じたとき、該各引戸の下摺動部材が該下レールの上段レール溝から該下摺動部材収納凹部に進入し、該下摺動ピンが下レールの下段レール溝から該下摺動ピン収納凹部に進入すると共に、該上摺動部材が上レールの下段レール溝から該上摺動部材収納凹部に進入し、該上摺動ピンが上レールの上段レール溝から上摺動ピン収納凹部に進入して2枚の引戸がフラット状態となるフラット引戸であって、
該下レールの該下段レール溝の深さが該上レールの上段レール溝より浅く形成されると共に、該下レールの該下摺動部材収納凹部の前側壁部が着脱可能に形成され、該下レールの該下摺動ピン収納凹部の前側壁部が着脱可能に形成されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、上記フラット引戸においては、請求項2のように、上記下レールの下段レール溝内に補助レールが嵌入され、下レールの下段レール溝の深さを上レールの上段レール溝より浅く形成することができる。
【0010】
また、請求項3のように、下レールの下段レール溝の深さと上レールの上段レール溝の深さに対応して、下摺動ピンの長さは上摺動ピンの長さより短く形成することができる。
【0011】
また、請求項4のように、下レールの前面側に化粧カバーを着脱可能に取り付け、化粧カバーを外した状態で、下摺動ピン収納凹部の前側壁部を外して開口可能とすると共に、下摺動部材収納凹部の前側壁部を外して開口可能とすることができる。
【0012】
さらに、請求項5のように、上記下摺動部材は取付部に対し摺動部がスペーサを介して高さ調整可能に取り付けられ、上記下摺動ピンは取付部に対し摺動ピンがスペーサを介して高さ調整可能に取り付けることができる。
【0013】
さらに、請求項6のように、上記下摺動部材と下摺動ピンに取付用の長孔を縦方向に長く形成し、下摺動部材又は下摺動ピンが引戸の下部の被取付部に取り付けられる際、被取付部との間にスペーサを介在させ、下摺動部材又は下摺動ピンの高さを調整可能に取り付けるように構成することができる。
【0014】
さらに、請求項7のように、下レールの下摺動ピン収納凹部の底部に、ピン移動方向に向けて滑らかに傾斜する傾斜面を有する山形部が形成され、引戸を閉じる際、下摺動ピンが該山形部に乗り上げて制動がかかるように構成することができる。
【0015】
さらに、請求項8のように、上記下レールと上レールの前面縁部に化粧カバーを係止させるための係止凸部を設け、係止凸部は下レールまたは上レールの取付面から段状に突出する形状に形成することができる。
【0016】
さらに、請求項9のように、上記下レールの上段レール溝の端部に、塵だし用の傾斜部を設けることができる。
【0017】
さらに、請求項10のように、上記下レールの下摺動ピン収納凹部の端部に、塵を溜めて取り出すための塵収納孔を、下摺動ピンの外径より小さい内径で形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
上記構成のフラット引戸は、例えば狭いスペースに設置される収納キャビネットなどの開口前部に取り付けられる引戸などに適用される。閉鎖時、各引戸の下摺動部材が下レールの上段レール溝からレール前部の下摺動部材収納凹部に進入し、下摺動ピンが下レールの下段レール溝からレール前部の下摺動ピン収納凹部に進入すると共に、上摺動部材が上レールの下段レール溝からレール前部の上摺動部材収納凹部に進入し、上摺動ピンが上レールの上段レール溝からレール前部の上摺動ピン収納凹部に進入して停止する。このため、2枚の引戸は平坦なフラット状態となって閉鎖される。
【0019】
一方、引戸を開く場合は、一方の引戸の外側を手前に引き、内側(中央側)を奥に押し込むようにすると、その引戸は、下摺動ピンと上摺動ピンを軸にして、引戸の中央側を内側に入れるように回動し、これによって、下摺動部材が、下レールの下摺動部材収納凹部から上段レール溝に進入し、上摺動部材が上レールの上摺動部材収納凹部から下段レール溝に進入して係合する。
【0020】
その状態で、一方の引戸を他方の引戸の背面側に進入させるように引けば、引戸の下摺動部材が下レールの上段レール溝を摺動して開放側に進み、下摺動ピンが下レールの下段レール溝を摺動して開放側に進むと共に、引戸の上摺動部材が上レールの下段レール溝を摺動して開放側に進み、上摺動ピンが上レールの上段レール溝を開放側に進む。これによって、一方の引戸が他方の引戸の背面側に収納されて、キャビネットの前部が開放される。
【0021】
上記構成のフラット引戸は、レールが下レールと上レールのみから簡単に構成され、引戸の下部に取り付けた下摺動部材と下摺動ピン、及び上部に取り付けた上摺動部材と上摺動ピンを、上下レールのレール溝に係合させるだけで、簡単に装着することができる。また、従来のフラット引戸のように複数種類の摺動部材をレール上に使用していないため、部品点数が少なく、簡単に組み付けることができ、使用に伴う摺動部分の劣化も少なくすることができる。
【0022】
また、請求項2のように、下レールの下段レール溝内に補助レールを嵌入し、下レールの下段レール溝の深さを上レールの上段レール溝より浅く形成することにより、下段レール溝の深さを浅くして溝を目立たなくし、外観の悪化を防止することができ、また、下段レール溝内に入った異物や塵を容易に取り出すことができる。
【0023】
さらに、請求項4のように、下レールの前面側に化粧カバーを着脱可能に取り付けると共に、化粧カバーを外した状態で、下摺動ピン収納凹部の側壁の一部を前側に外して開口すると共に、下摺動部材収納凹部の前側壁部の一部を外して開口する構造とすれば、下レールの前面から化粧カバーを外し、さらに下摺動ピン収納凹部の前側壁部と下摺動部材収納凹部の前側壁部を外せば、下レールの下段レール溝内に入った異物や塵、或は下摺動ピン収納凹部内または下摺動部材収納凹部内に入った異物や塵を、容易に取り出すことができる。
【0024】
さらに、請求項5のように、下摺動部材は取付部に対し摺動部がスペーサを介して高さ調整可能に取り付けられ、下摺動ピンは取付部に対し摺動ピンがスペーサを介して高さ調整可能に取り付けられる構成とすれば、現場において、介在させるスペーサの枚数を変えることにより、下摺動ピンと下摺動部材の高さを調整して、引戸のガタツキをなくし、摺動性を良好に調整することができる。
【0025】
また、請求項6のように、下摺動部材と下摺動ピンに取付用の長孔を縦方向に長く形成し、下摺動部材又は下摺動ピンが引戸の下部の被取付部に取り付けられる際、被取付部との間にスペーサを介在させ、下摺動部材又は下摺動ピンの高さを調整可能に取り付ける構成とすれば、現場において、介在させるスペーサの枚数を変えることにより、下摺動ピンと下摺動部材の高さを調整して、引戸のガタツキをなくし、摺動性を良好に調整することができる。
【0026】
さらに、請求項7のように、下レールの下摺動ピン収納凹部の底部に、ピン移動方向に向けて滑らかに傾斜する傾斜面を有する山形部を設ける構成とすれば、引戸を閉じる際、下摺動ピンが山形部に乗り上げて自動的に制動がかかり、その後、低速で停止させ、閉じた状態の引戸を安定して保持することができる。
【0027】
さらに、請求項8のように、下レールと上レールの前面縁部に化粧カバーを係止させるための係止凸部を設け、係止凸部は下レールまたは上レールの取付面から段状に突出する形状に形成すれば、下レールと上レールをキャビネットの開口縁部の横桟などに取り付ける際、段状の係止凸部を横桟の角部に当て、レールを正確に位置決めして取り付けることができる。
【0028】
さらに、請求項9のように、下レールの上段レール溝の端部に、塵だし用の傾斜部を設けることにより、下レールの上段レール溝に溜まった塵を、傾斜部から簡単に外に掃きだすことができる。
【0029】
さらに、請求項10のように、下レールの下摺動ピン収納凹部の端部に、塵を溜めて取り出すための塵収納孔を設け、その塵収納孔の内径は下摺動ピンの外径より小さく形成すれば、下摺動ピン収納凹部に溜まった塵が下摺動ピンの移動などにより収納凹部の端部まで運ばれたとき、下摺動ピンの停止位置に悪影響を与えずに、塵を塵収納孔に導き、最終的にはその塵収納孔から良好に塵を外に出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1はフラット引戸を装着したキャビネットの斜視図を示している。このキャビネットは、例えば狭いスペースに設置される収納キャビネットとして使用されるもので、そのキャビネットの正面開口部の前縁部に2枚の引戸2,3からなるフラット引戸が、下レール10と上レール20間に保持されて走行可能に装着される。
【0031】
引戸2,3の本体は例えば合板により形成され、各引戸2,3の外側の端部には把手2a,3aが設けられている。さらに、各引戸2,3の下端部には下摺動部材6と下摺動ピン7が下に突き出すように取り付けられている。図2、図3は左側の引戸2を示しており、この左側の引戸2には、下摺動部材6が右端の下端部に取り付けられ、下摺動ピン7が中央から左寄りの下端部に取り付けられている。右側の引戸3については図示を省略しているが、右側の引戸3は左側の引戸2と対称形に形成され、下摺動部材6が引戸3の左端の下端部に取り付けられ、下摺動ピン7がその中央から右寄りの下端部に取り付けられている。
【0032】
下摺動部材6は、図4に示すように、略L型の形成された取付部61の下部に略小判型の摺動部62を、スペーサ63を介して固定ねじ64とナット65により締付固定して形成されている。スペーサ63は小判型の薄い合成樹脂板から形成されて複数枚用意され、摺動部62の高さ位置は、スペーサ63の重ね枚数を変えることにより、調整可能となっている。摺動部62は略小判状の平面形状を有すると共に、その底部に凸状曲面を有して形成され、後述の下レール10の上段レール溝11に緩く係合して円滑に摺動走行するように形成されている。取付部61と摺動部62の当接部には凹凸の嵌合部が形成され、その嵌合部を嵌め合わせて両者は嵌着され、さらに、中央部に挿入された固定ねじ64とナット65により両者は相互に締付固定される。さらに、取付部61には引戸2,3の合板本体の厚さ方向にねじ止めするための取付孔が穿設され、摺動部62にも合板本体の上下方向にねじ止めするための取付孔が穿設されている。
【0033】
下摺動ピン7は、図5に示すように、略L型の形成された取付部71の下部に略円筒型の摺動ピン72を、スペーサ73を介して固定ボルト74により締付固定されて形成されている。摺動ピン72は、内側にめねじを螺刻したスリーブ72aをインサートとして合成樹脂により略弾丸形状にインサート成形され、取付部71側に突設された固定ボルト74のねじ部にねじ込んで取り付けられる。先端に略半球部を有した摺動ピン72は後述の下レール10の下段レール溝12内を円滑に摺動走行可能である。
【0034】
摺動ピン72は、取付部71の中央に嵌入され固定ボルト74のねじ部にそのスリーブ72aをねじ込んで固定される一方、そのねじ部の元部に挿入されるワッシャ形のスペーサ73の枚数を変えることにより、下摺動ピン7の摺動ピン72の高さ位置を調整することができる。摺動ピン72の長さは、後述の上摺動ピン9の摺動ピン92より短い、例えば8mmに形成され、スペーサ73は例えば厚さ1mmの合成樹脂製のワッシャ形に形成され、その摺動ピン72の元部にこのスペーサ73を介装して下摺動ピン7の高さが8mm+αに調整できるようにしている。その挿入枚数を調整しながら固定ボルト74にスペーサ73を挿入して摺動ピン72は取付部71に固定される。
【0035】
下摺動ピン7の摺動ピン72の長さは上記のように例えば8mmとされ、上摺動ピン9の摺動ピン92の長さ(例えば11mm)より短く形成される。下摺動ピン7の摺動ピン72が係合する下レール10の下段レール溝12が、上摺動ピン9の摺動ピン92が係合する上レール20の上段レール溝21の深さより浅く形成されるためである。下段レール溝12内には、図22、図23に示すように、補助レール19a,19bを嵌入してレール溝の深さを浅くし、下レール10の外観の悪化やレール溝内への異物の落下を防止するようにしている。一方、上摺動ピン9の摺動ピン92の長さは後述のように例えば11mmとより長く形成され、この摺動ピン92は上レール20のより深い上段レール溝21に係合して摺動走行し、引戸の外れを防止して安定走行させるようにしている。図5に示すように、下摺動ピン7の取付部71には引戸2,3の合板本体の厚さ方向と上下方向にねじ止めするための取付孔が各々穿設されている。
【0036】
一方、各引戸2,3の上端部には、図3に示すように、上摺動部材8と上摺動ピン9が上に突き出すように取り付けられている。上摺動部材8は、図6に示す如く、略L型に形成された取付部81の上部に略小判型の摺動部82を、固定ねじ84と固定ナット85により締付固定して形成され、摺動部82は、後述の上レール20の下段レール溝22内に緩く係合して円滑に摺動走行可能に形成される。
【0037】
摺動部82は、上記下摺動部材の摺動部62と同様に、略小判状の平面形状を有すると共に、その上部に凸状曲面を有して形成され、後述の上レール20の下段レール溝22に緩く係合して円滑に摺動走行するように形成されている。取付部81と摺動部82の当接部には凹凸の嵌合部が形成され、その嵌合部を嵌め合わせて両者は嵌着され、さらに、中央部に挿入された固定ねじ84とナット85により両者は相互に締付固定される。
【0038】
さらに、図6のように、取付部81には引戸2,3の合板本体の厚さ方向にねじ止めするための取付孔が穿設され、摺動部82にも合板本体の上下方向にねじ止めするための取付孔が穿設されている。上記下摺動部材6の取付部61と上摺動部材8の取付部81とは同一形状とすることができ、このため、同じ部品を兼用して使用することができる。なお、図6では、取付部81と摺動部82間に上記のようなスペーサは介装されていないが、この上摺動部材8においても、取付部81と摺動部82間に高さ調整用のスペーサを挿入することはできる。
【0039】
上摺動ピン9は、図7に示すように、略L型の形成された取付部91の上部に略円筒型の摺動ピン92を、スペーサ93を介して固定ボルト94により締付固定して形成されている。摺動ピン92は、上記摺動ピン72と同様に、内側にめねじを螺刻したスリーブ92aをインサートとして合成樹脂により略弾丸形状にインサート成形されて成形され、後述の上レール20の上段レール溝21内に緩く係合して摺動走行可能となっている。この摺動ピン92は、取付部91の中央に嵌入され固定ボルト94のねじ部にそのスリーブ92aをねじ込んで固定される。また、摺動ピン92の高さ位置は、固定ボルト94の元部に挿入するスペーサ93の重ね枚数を変えることにより、調整可能となっている。
【0040】
上摺動ピン9の摺動ピン92の長さは、引戸を安定して摺動走行させるために必要な長さ、例えば11mmに設定され、下摺動ピン7の摺動ピン72の長さより長く形成されている。その摺動ピン92の元部に例えば厚さ1mmの合成樹脂製のスペーサ93を介装して上摺動ピン9の高さは11mm+αに調整できるようにしている。摺動ピン92は後述の上レール20の充分な深さを持つ上段レール溝21内に係合し、上段レール溝21内を円滑に安定して摺動走行することができる。さらに、上記と同様に、取付部91には引戸2,3の合板本体の厚さ方向と上下方向にねじ止めするための取付孔が各々穿設されている。
【0041】
なお、上記摺動ピン72,92の外周にローレットが刻設され、摺動ピンを締付固定する際、ピンを回し易くしているが、摺動ピンの摺動性はピンの略半球状の先端部によるところが大きく、また、レール及びピンは共に例えばABS樹脂などの硬質合成樹脂により成形され、相互の摺動性は非常に良好であるため、ピン外周のローレットがピンとレール間の摩擦抵抗を増大させることはない。
【0042】
図8は、最も短い構成の下レール10の左半分の斜視図を示し、図9は、そのレールの内側に2本の中間連結レール部材17、17を連結して長尺とした状態の下レール10Aを示している。下レール10及び下レール10Aは、図8,図9において、紙面の大きさからその左半部のみを示しているが、実際には、下摺動部材収納凹部13を設けた中央レール部材15を中心に左右対称形に形成される。下レール10は比較的間口の狭い開口部の引戸に使用され、下レール10Aは間口の広い開口部の引戸に使用される。下レール10及び下レール10Aのレール本体の上面には、上段レール溝11と下段レール溝12が連続して形成され、上段レール溝11の端部には下摺動部材収納凹部13が形成され、下段レール溝12の反対側の端部には下摺動ピン収納凹部14が形成されている。
【0043】
長尺の下レール10Aは、下摺動部材収納凹部13を含む中央レール部材15の左右に、下摺動ピン収納凹部14を含む端部レール部材16を連結し、レールの長さに応じて、中央レール部材15と端部レール部材16の間に、1本、2本或は3本以上の任意の数の中間連結レール部材17を連結して構成される。したがって、基本的には、最も短いレールは、中央レール部材15の両側に端部レール部材16を連結して構成され、レールの長さが長くなるほど中央レール部材15と端部レール部材16の間に接続する中間連結レール部材17の本数を増加させ、共通部品を使用しながら低コストで各種の長さのレールを製作できるようにしている。
【0044】
また、図11のように、端部レール部材16の正面側の上角部と下角部には、化粧カバー18を係止させるための爪状の係止凸部16bが形成され、特に下角部の係止凸部16bは段状に突出する形状に形成されている。このため、図20、図21のように、下レール10,10Aをキャビネットの開口部下の横桟上に取り付ける際、下角部の係止凸部16bを横桟の角部に当て、容易に位置決めして固定することができる。
【0045】
中央レール部材15は、図16に示すように、その上面に上段レール溝11と下段レール溝12の直線部分を上下2段状に設けると共に、2つの下摺動部材収納凹部13、13が上段レール溝11に連接しレールの前部にシフトして、レール上面に並設されている。また、中央レール部材15の両端部には嵌合連結用の凸部15a、15cが突設され、端部レール部材16または中間連結レール部材17の端部に設けた凹部に、その凸部15a、15cを嵌合させ、両者を連結する構造としている。図14に示すように、中間連結レール部材17は内側に空間を設けて構成され、下レール10Aの長さを調整するために、中間連結レール部材17の一端を任意の長さに切断した場合でも、中央レール部材15の凸部15a、15cを嵌合可能な凹部が形成されるようにしている。これにより、中間連結レール部材17の長さを任意に決めることによって、レールの長さを任意に調整することができる。
【0046】
下レール10,10Aの上段レール溝11は、レール本体の内側寄りに長手方向に沿って直線状に形成され、図11に示すように、下段レール溝12に比べその幅は広くその深さは浅く形成されている。この上段レール溝11は、左右の各引戸2,3の下摺動部材6の摺動部62が係合して摺動走行可能な幅に形成される。中央レール部材15の略中央部には、図16に示す如く、前方にシフトして下摺動部材収納凹部13が上段レール溝11と同じレベルで形成され、各引戸2,3の閉鎖時に、各引戸2,3の中央側寄り、つまり左側の引戸2ではその右端下部の下摺動部材6の摺動部62が、右側の引戸3ではその左端下部の下摺動部材6の摺動部62が、そこに進入して停止する構造となっている。一方、図8のように、端部レール部材16の上段レール溝11の端部に、前方に向けて傾斜する面を有した傾斜部11aが設けられ、上段レール溝11内に入った異物や塵などを排出し易くしている。
【0047】
下段レール溝12は、図11a、図16cに示すように、上段レール溝11の一部下側に沿って形成され、上段レール溝11の幅より狭い幅(摺動ピン72が摺動可能な程度の幅)に形成され、そこを引戸2または引戸3の下摺動ピン7の摺動ピン72が係合して摺動可能である。さらに、この下段レール溝12の両側の端部は、図9に示すように、上段レール溝11から離れて正面側に緩やかにカーブしてシフトするように形成され、その末端部には下摺動ピン収納凹部14が形成され、各引戸2,3の閉鎖時に、各引戸2,3の中央側下部の下摺動ピン7の摺動ピン72がそこに進入して停止する構造である。
【0048】
さらに、下レール10は、後述の上レール20と主要部品を共通化しつつ、その下段レール溝12と下摺動ピン収納凹部14の深さを、上レール20のそれに比べ、浅くするように形成されている。このために、補助レール19a,19bが下段レール溝12と下摺動ピン収納凹部14の底部に嵌め込まれ、溝の深さを上レールのそれより浅くしている。直線状の補助レール19bは、図15に示すように、細い板状に形成され、上面には樋状の凹部が長手方向にそって設けられ、レールの下部には複数の係止爪19cが所定の間隔で突設されている。
【0049】
一方、図10、図14に示すように、下レール10の下段レール溝12内、つまり、中央レール部材15と中間連結レール部材17の下段レール溝12の底部には、係止孔12aが所定の間隔で形成される。それらの係止孔12aに上記係止爪19cが嵌め込まれ、補助レール19bは下段レール溝12内底部に嵌着される。
【0050】
下レール10の端部レール部材16における曲線状の下段レール溝12には、図12のように曲線状の補助レール19aがその底部にはめ込まれる。補助レール19aは、図12に示すように、湾曲した細い板状に形成され、上面には樋状の凹部が長手方向にそって設けられ、レールの下部には複数の係止爪19dが所定の間隔で突設されている。
【0051】
また、図12bに示すように、下摺動ピン収納凹部14寄りに嵌め込まれる補助レール19aの端部近傍の底部には、緩い傾斜の山形部19eが形成され、引戸2,3が閉じられるとき、下摺動ピン7がその山形部19eを乗り越える際に、引戸2,3に適度な制動がかかり、その後、下摺動ピン7が下摺動ピン収納凹部14内に良好に保持されるようにしている。
【0052】
このように、図10に示す如く、端部レール部材16上には、上段レール溝11が直線状に形成され、その上段レール溝11の右端で重なるように、下段レール溝12が幅を狭くして形成され、下段レール溝12は、そこから外れて正面側にシフトするように湾曲して延設される。そして、その下段レール溝12の端部には下摺動ピン収納凹部14が形成され、各引戸2,3の閉鎖時、各引戸2,3の中央側下部の下摺動ピン7の摺動ピン72がその下段摺動ピン収納凹部14内に進入し保持される。
【0053】
図8、図9に示すように、下レール10の前面側には、長手方向に沿って化粧カバー18が着脱可能に嵌着されている。さらに、端部レール部材16においては、化粧カバー18を外した状態で、下摺動ピン収納凹部14が前面に開口するように、下摺動ピン収納凹部14の前部に前側壁部14aが着脱可能に嵌合されている。すなわち、図10に示すように、下レール10の端部レール部材16においては、下摺動ピン収納凹部14が前側の側壁部に凹部16aが前方に開口して形成され、その開口部から下摺動ピン7をレール溝内に出し入れ可能としている。
【0054】
そして、その凹部16aには、図13に示すような形状の前側壁部14aが着脱可能に嵌着され、下摺動ピン収納凹部14の前側の側壁部を形成する。前側壁部14aの前端部には、化粧カバー18を係止するための係止部14bが形成され、化粧カバー18がその前面に係止される。したがって、化粧カバー18と前側壁部14aを外せば、凹部16aが開口し、下摺動ピン7を凹部16aから下摺動ピン収納凹部14に挿入し或は引き出すことができる。
【0055】
なお、図8、図10に示すように、下摺動ピン収納凹部14の末端部には、塵を溜めて取り出すための塵収納孔14cが設けられる。この塵収納孔14cの内径は下摺動ピン72の外径より小さく形成され、下摺動ピン収納凹部14に溜まった塵が下摺動ピン72の移動などにより収納凹部14の端部まで運ばれたとき、下摺動ピン72の停止位置に悪影響を与えずに、塵を塵収納孔14cに導くようにしている。また、下レール10を取り付ける横桟における塵収納孔14cの対応位置に、貫通孔を設ければ、その貫通孔から塵をさらに容易に外に出すことができる。
【0056】
一方、図16に示すように、中央レール部材15の前面側には、化粧カバー18を外した状態で、下摺動部材収納凹部13がその前面を開口するように、下摺動部材収納凹部13の前部に、前側壁部13aが着脱可能に嵌合されている。つまり、下摺動部材収納凹部13の前側の壁部に凹部15bが前方に開口して形成され、その開口部から下摺動部材6をレール溝内に出し入れ可能としている。そして、その凹部15bには、図17に示すような形状の前側壁部13aが着脱可能に嵌着され、下摺動部材収納凹部13の前側の側壁部を形成する。前側壁部13aの前端部には、化粧カバー18を係止するための係止部13bが形成され、化粧カバー18がその前面に係止される。
【0057】
また、図16のように、中央レール部材15の上面には、上段レール溝11とそれより幅の狭い下段レール溝12が上下に重なり合うように形成され、さらにその上段レール溝11に連続するように2つの下摺動部材収納凹部13が並設されている。さらに、中央レール部材15の両側部には、連結用の凸部15a、15cが突設され、その両側に、端部レール部材16または中間連結レール部材17の端部の凹部を嵌め込み、連結可能としている。
【0058】
また、中央レール部材15の正面側の上角部と下角部には、端部レール部材16と同様に、化粧カバー18を係止させるための爪状の係止凸部15dが形成され、特に下角部の係止凸部15dは段状に突出する形状に形成されている。このため、図20、図21のように、下レール10,10Aをキャビネットの開口部下の横桟上に取り付ける際、下角部の係止凸部15dを横桟の角部に当て、容易に位置決めして固定することができる。
【0059】
このように、下レール10の前面から化粧カバー18と前側壁部13a,14aを外せば、レールの正面側から引戸2,3を下レール10に容易に嵌め込むことができ、また、保守点検の際などには、上下レール溝11,12や収納凹部13,14に入った異物や塵を容易に取り出すことができる。
【0060】
一方、上レール20は、図18、図19に示すように、そのレール本体の下面に、左右の引戸2,3の上部の各々の上摺動部材8と上摺動ピン9を係合させ、引戸2,3を左右にスライド可能とするように形成される。つまりこの上レール20には、長尺のレール本体の下面に、上段レール溝21と下段レール溝22を重ね合わせて形成し、下段レール溝22の中央端部には2つの上摺動部材収納凹部23、23が前方にシフトし且つレール溝に連接して形成され、上段レール溝21の端部には上摺動ピン収納凹部24が連接して形成される。
【0061】
図18は、最も短い構成の上レール20の左半分の斜視図を示し、図19は、そのレールの内側に2本の中間連結レール部材27、27を連結して長尺とした状態の上レール20Aを示している。上レール20及び上レール20Aは、図18,19では紙面の大きさから左半部のみを示し、実際には、下摺動部材収納凹部23を設けた中央レール部材25を中心に左右対称形に形成される。上レール20は比較的間口の狭い開口部の引戸に使用され、上レール20Aは間口の広い開口部の引戸に使用される。上レール20及び上レール20Aのレール本体の下面には、上段レール溝21と下段レール溝22が連続して形成され、上段レール溝21と下段レール溝22の端部には下摺動部材収納凹部23と下摺動ピン収納凹部24が形成されている。
【0062】
長尺の上レール20Aは、下摺動部材収納凹部23を含む中央レール部材25の左右に、下摺動ピン収納凹部24を含む端部レール部材26を連結し、レールの長さに応じて、中央レール部材25と端部レール部材26の間に、1本、2本または任意の数の中間連結レール部材27を連結して構成されている。したがって、基本的には、最も短いレールは、中央レール部材25の両側に端部レール部材26を連結して構成され、レールの長さが長くなるほど中央レール部材25と端部レール部材26の間に接続する中間連結レール部材27の本数を増加させ、共通部品を使用しながら低コストで各種の長さのレールを製作できるようにしている。
【0063】
中央レール部材25は、上記下レール10の中央レール部材15と同様に、その下面に上段レール溝21と下段レール溝22の直線部分を設けると共に、下段レール溝22に連接するように2つの下摺動部材収納凹部23、23を並設している。また、中央レール部材25の両端部には嵌合連結用の凸部25aが突設され、端部レール部材26または中間連結レール部材27の端部に設けた凹部に、その凸部15aを嵌合させ、両者を連結する構造としている。
【0064】
さらに、上レール20の前面側には、上記下レール10と同様、長手方向に沿って化粧カバー28が着脱可能に嵌着されている。そして、端部レール部材26においては、化粧カバー28を外した状態で、上摺動ピン収納凹部24が前面に開口するように、上摺動ピン収納凹部24の前部に前側壁部24aが着脱可能に嵌合されている。つまり、上レール20の端部レール部材26において、上摺動ピン収納凹部24が前側の側壁部に凹部が前方に開口して形成され、その開口部から上摺動ピン9をレール溝内に出し入れ可能としている。そして、その凹部には、前側壁部24aが着脱可能に嵌着され、上摺動ピン収納凹部24の前側の側壁部を形成する。前側壁部24aの前端部には、化粧カバー28を係止するための係止部が形成され、化粧カバー28がその前面に係止される。
【0065】
中央レール部材25の前面側には、化粧カバー28を外した状態で、上摺動部材収納凹部23がその前面を開口するように、上摺動部材収納凹部23の前部に、前側壁部23aが着脱可能に嵌合されている。つまり、上摺動部材収納凹部23の前側の壁部に凹部が前方に開口して形成され、その開口部から上摺動部材8をレール溝内に出し入れ可能としている。そして、その凹部には前側壁部23aが着脱可能に嵌着され、上摺動部材収納凹部23の前側の側壁部を形成する。
【0066】
前側壁部23aの正面側の端部を含む上レール20の正面側の上角部と下角部に、化粧カバー28を係止するための爪状の係止凸部が形成され、化粧カバー28がその前面に係止される。この爪状の係止凸部も、上記下レール10の各レール部材の係止凸部15d、16bと同様に、特に上角部の係止凸部29は、図22のように段状に突出する形状に形成されている。このため、図22のように、上レール20をキャビネットの開口部上の横桟に取り付ける際、上角部の係止凸部29を横桟の角部に当て、容易に位置決めして固定することができる。
【0067】
このように、上レール20の前面から化粧カバー28と前側壁部23a,24aを外せば、上摺動ピン収納凹部24と上摺動部材収納凹部23の側壁部が開口し、その開口部を通して、つまりレールの正面側から引戸2,3の上摺動ピン9と上摺動部材8を上レール20に容易に嵌め込むことができる。
【0068】
また、上レール20は、上記下レール10と同様な形状に形成され、上摺動部材8は下レール10の下摺動部材6に対応し、上摺動ピン9は下レール10の下摺動ピン7に対応する。さらに、下段レール溝22と上段レール溝21は下レール10の上段レール溝11と下段レール溝12に対応するが、下レール10の下段レール溝12と下摺動ピン収納凹部14にかけてはめ込まれていた上記補助レール19a、19bは、この上レール20には使用されていない。
【0069】
したがって、下レール10と上レール20は、補助レール19a、19b以外は、同じレール部材を使用して形成され、つまり、上レール20の中央レール部材25、端部レール部材26、及び中間連結レール部材27は、下レール10の中央レール部材15、端部レール部材16、及び中間連結レール部材17と同じ部品を使用して形成される。そして、下レール10は、上レール20の上段レール溝22と上摺動ピン収納凹部24の底部に補助レール19a、19bをはめ込むことにより、製作される。
【0070】
このように、上レール20と下レール10とは補助レール19a、19bを除き同一形状であるから、同じ部品として製作し、兼用して使用することができ、よって、金型製作費などのコストを低減することができる。また、引戸2,3の中央寄りの端部に取り付ける下摺動部材6と上摺動部材8も、スペーサ63を除き同一形状であり、取付部61,81及び摺動部62,82は同じ部品を使用することができる。さらに、下摺動ピン7と上摺動ピン9においても、スペーサ93及び摺動ピン72、92を除き、取付部71,91が同一形状であり、これらは、同じ部品として製作し、兼用して使用することができる。
【0071】
上記のように構成された下レール10は、例えばトイレなどの狭いスペースに設置される収納キャビネット1における開口部の前端下部の横桟上に固定され、同様に上レール20は開口部前端上部の上横桟の下面における下レール10に対向した位置に固定される。下レール10と上レール20はその化粧カバー18が前面に位置するようにセットし、固定ねじを用いて固定する。このとき、上記のように、下レール10の正面側の下角部または上レール20の正面側の上角部に段状に突設した係止凸部15d、29を、横桟の角部に当てるようにしてレールを取り付ければ、下レール10と上レール20を所定位置に正確に且つ簡単に位置決めして固定することができる。
【0072】
キャビネット1の開口部に装着された下レール10は、その上面が前方から良く見える位置にあり、その外観の良否に影響を与えやすいが、この下レール10は、通常、その深さが深く形成される下段レール溝12内に、補助レール19a,19bが嵌めこまれてその深さを浅くしているため、レール溝の深さが深くなることによる外観の悪化は防止され、使用者に違和感を感じさせることはない。さらに、図22、図23の断面図に示すように、下レール10の上面がキャビネット1の底板より上に位置し、これにより、キャビネットの収納物が下レール10上に載りにくくし、レール上の障害物とならないようになっている。
【0073】
そして、下レール10と上レール20からその前面の化粧カバー18、28及び前側壁部13a、14a、23a,24aを外した状態で、レールの前面側から引戸2,3を上下レール10,20間に装着する。すなわち、引戸2,3を装着する場合、先ず、その下摺動部材6を、下レール10の中央レール部材15の凹部15aから下摺動部材収納凹部13内に挿入し、下摺動ピン7を、端部レール部材16の凹部16aから下摺動ピン収納凹部14内に挿入する。さらに、引戸2,3の上摺動部材8を、上レール20の中央レール部材25の凹部25aから上摺動部材収納凹部23内に挿入し、上摺動ピン9を、上レール20の端部レール部材26の凹部26aから上摺動ピン収納凹部24内に挿入する。そして、引戸2,3を下レール10と上レール20間にセットした後、図20、図21のように、前側壁部13a、14a、23a,24a及び化粧カバー18、28を、下レール10と上レール20の前面に嵌着する。
【0074】
このように、引戸2,3はその前方から上下レール10,20間に簡単に組み付けることができる。また、化粧カバー18,28を外さない限り、前側壁部13a、14a、23a,24aは外れない構造のため、下摺動部材6、下摺動ピン7、上摺動部材8、及び上摺動ピン9の不用意な外れを防止することができる。
【0075】
両引戸2,3を装着した状態、つまり引戸を閉鎖した状態では、図24の最上部に示すように、引戸2,3の下部の下摺動部材6の摺動部62が下レール10の下摺動部材収納凹部13に位置し、下摺動ピン7の摺動ピン72が下レール10の下摺動ピン収納凹部14に位置し、さらに、引戸2,3の上部の上摺動部材8の摺動部82が上レール20の上摺動部材収納凹部23に位置し、上摺動ピン9の摺動ピン92が上レール20の上摺動ピン収納凹部24に位置する。
【0076】
そして、下レール10と上レール20においては、下摺動部材収納凹部13と上摺動部材収納凹部23及び下摺動ピン収納凹部14と上摺動ピン収納凹部24が、奥に位置するレール溝11,12,21,22より前部にシフトして位置しているから、図1、図24に示すように、閉鎖した状態の両引戸2,3は、レールの前部につまりキャビネット1の最も手前の前部にフラットにした状態で位置することになる。
【0077】
閉鎖状態の引戸2,3を開く場合、例えば左の引戸2を開く際には、図24の中段に示すように、左端の把手2aを持って手前に引く。このとき、引戸2は、下摺動ピン7の摺動ピン72と上摺動ピンの摺動ピン92を軸にして、引戸2の中央側(右端)を内側(キャビネットの内側)に入れるように僅かに回動する。これによって、下摺動部材6の摺動部62が、下レール10の下摺動部材収納凹部13から上段レール溝11に進入し、上摺動部材8の摺動部82が上レール20の上摺動部材収納凹部23から下段レール溝22に進入して係合する。
【0078】
この状態で、引戸2の把手2aを右に引けば、図24の下段に示すように、下摺動ピン72が下レール10の下段レール溝12内を摺動し、上摺動ピン92が上レール20の上段レール溝22内を摺動すると共に、摺動部62が下レール10の上段レール溝11を右方向に摺動し、摺動部82が上レール20の下段レール溝21を右方向に摺動して、引戸2は、図25に示すように、右側に移動する。これにより、左側の引戸2は、右側の引戸3の内側(背面側)に進入して入り込み、最終的に図25下段に示すような下レール10と上レール20の端部まで進入し、引戸2は引戸3の内側に完全に移動した状態で停止する。これにより、キャビネット1の左前部が開放された状態となる。
【0079】
一方、引戸2を閉じる場合は、図25下段の開放状態から、引戸2の把手2aを持って左側に引くと、引戸2の下摺動ピン72が下レール10の下段レール溝12内を摺動し、上摺動ピン92が上レール20の上段レール溝22内を摺動すると共に、摺動部62が下レール10の上段レール溝11を左方向に摺動し、摺動部82が上レール20の下段レール溝21を左方向に摺動して、引戸2は左側に移動する。
【0080】
そして、引戸2が上下レール10,20の左側端部に達したとき、摺動ピン72が下レール10の下段レール溝12から下摺動ピン収納凹部14に進入し、上摺動ピン9bが上レール20の上段レール溝22から上摺動ピン収納凹部24に進入する。このとき、図24の中段に示す状態となる。次に、その把手2aを少し奥に押すようにすると、引戸2が摺動ピン72、92を軸に僅かに回動し、下摺動部材6の摺動部62が下レール10の上段レール溝11から下摺動部材収納凹部13に進入し、上摺動部材8の摺動部82が上レール20の下段レール溝21から上摺動部材収納凹部23に進入して停止する。これで、引戸2は閉鎖状態となる。
【0081】
一方、引戸2,3を装着した後、或いは保守点検時に、引戸2,3にガタツキや走行障害がある場合、下摺動部材6の摺動部62、下摺動ピン7の摺動ピン72、上摺動部材8の摺動部82、及び上摺動ピン9の摺動ピン92の各々の高さを調整し、ガタツキをなくすと共に、引戸2,3がスムーズに摺動するようにする。このような摺動部62,82、摺動ピン72,92の高さ調整は、上下レール10,20から引戸2,3を外して行う。固定ねじ64を緩めて下摺動部材6の摺動部62を外し、取付部61と摺動部62の間に挿入するスペーサ63の枚数を調整する。また、固定ボルト74を緩めて下摺動ピン7の摺動ピン72を外し、取付部71と下摺動ピン72の間に挿入するスペーサ73の枚数を調整する。さらに、固定ねじ84を緩めて上摺動部材8の摺動部82を外し、取付部81と摺動部82の間に挿入するスペーサの枚数を調整して実施する。同様に、固定ボルト94を緩めて上摺動ピン9の摺動ピン92を外し、取付部91と摺動ピン92の間に挿入するスペーサ93の枚数を調整して、摺動ピン92の高さを調整する。これにより、引戸2,3のガタツキをなくすと共に、スムーズに摺動するように調整することができる。
【0082】
また、保守点検を行う際には、レール前面の化粧カバー18、28を外すと共に、前側壁部13a、14a、23a,24aを外し、これにより、前方から2枚の引戸2,3を容易に外すことができる。そして、引戸2,3を上下レール10,20から外した状態で、下レール10の上段レール溝11や下段レール溝12などに溜まった異物や塵を、下摺動部材収納凹部13又は下摺動ピン収納凹部14を通して外部に排出し、下レール10の清掃を極めて簡単に行うことができる。また、下段レール溝12には補助レール19a、19bが嵌着され、その深さを浅くしているため、下レールの外観を悪化させることがない。
【0083】
図26は、他の実施形態の下摺動部材66、上摺動ピン96、及び下摺動ピン76を示している。この下摺動部材66、上摺動ピン96、及び下摺動ピン76は各々合成樹脂により所定の形状に一体成形される。つまり、取付部と摺動部または取付部と摺動ピンが型成形により一体に成形される。
【0084】
そこで、摺動部又は摺動ピンの高さ位置を現場で調整可能とするために、下摺動部材66の取付部には縦方向に長い長孔67が固定孔として形成され、上摺動ピン96の取付部には縦方向に長い長孔97が固定孔として形成され、下摺動ピン76の取付部には縦方向に長い長孔77が固定孔として形成される。
【0085】
そして、各下摺動部材66、上摺動ピン96、又は下摺動ピン76を引戸の下端部又は上端部に取り付ける際には、図26のように、それらの取付水平面に薄い板状のスペーサ68,98,又は78を介挿して、下摺動部材66、上摺動ピン96、又は下摺動ピン76を引戸に取り付けることになる。このように、下摺動部材66、上摺動ピン96、及び下摺動ピン76を、各々合成樹脂により所定の形状に一体成形し、固定孔を長孔として取付位置の調整を可能とすることにより、製造コストを削減することができる。
【0086】
図27は、他の実施形態のフラット引戸を示し、このフラット引戸に使用される引戸2,3には、上記の前方に突出する把手2a,3aに代えて、前方の突出しない、引戸の端部に埋設されるタイプの把手2b、3bが引戸2,3の両側の端部近傍に取り付けられている。すなわち、この把手2b、3bは、図28に示すように、略コ字状の横断面を有した長尺のチャンネル材状に形成され、その内側凹部の両側に手掛け部が形成されている。このような形状の把手2b、3bの本体は、例えばアルミニウムの引き抜き加工により形成され、図29に示すように、その上端と下端にキャップ3cが嵌着されている。
【0087】
このような引戸の端部に埋設されるタイプの把手2b、3bを取り付けた引戸2,3は、図27に示すように、キャビネット1に装着した場合、キャビネットの前端面から把手2b、3bが前方に突き出すことはなく、例えば、スペースの少ないトイレなどの収納キャビネット1の引戸として便利に使用することができる。
【0088】
また、図27に示すように、収納キャビネット1の両側の側板1aの端面が正面に現われる場合、側板1aの端面と上レール20と下レール10の正面の化粧カバー18,28が面一となるようにレールを取り付ける。そして、面一となった側板1aの端面と化粧カバー18,28は、略ロの字状に引戸2,3を囲う形状として表われ、例えば引戸2,3と同じ模様と色の装飾シートを貼着すれば、キャビネット1の正面のデザイン性を向上させることができる。
【0089】
なお、上記実施形態では、補助レール19a,19bを下段レール溝12、下摺動ピン収納凹部14に嵌着して使用したが、補助レールを使用せずに、下レールの各部分を一体成形することもできる。この場合、上レールと下レールの本体を共通使用することはできないが、成形上問題なく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態を示すフラット引戸の斜視図である。
【図2】左側引戸4の下から見た斜視図である。
【図3】左側引戸4の上から見た斜視図である。
【図4】(a)は下摺動部材6の正面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図5】(a)は下摺動ピン7の正面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図6】(a)は上摺動部材8の正面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図7】(a)は上摺動ピン9の正面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図8】最も短い構成の下レール10における部分組付け状態の斜視図である。
【図9】下レール10Aにおける部分組付け時の斜視図である。
【図10】(a)は端部レール部材16の平面図、(b)はその右側面図である。
【図11】(a)は図10におけるa−a断面図、(b)は同b−b断面図、(c)は同c−c断面図である。
【図12】(a)は補助レール19aの平面図、(b)は同部分断面図、(c)は同拡大右側面図である。
【図13】(a)は前側壁部14aの平面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図14】(a)は中間連結レール部材17の平面図、(b)は同右側面図、(c)は同部分断面図、(d)はそのd−d断面図である。
【図15】(a)は補助レール19bの平面図、(b)は同右側面図、(c)は同半断面図、(d)はその拡大d−d断面図である。
【図16】(a)中央レール部材15の平面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図17】(a)下摺動部材13の前側壁部13aの平面図、(b)は同右側面図、(c)はそのc−c断面図である。
【図18】最も短い上レール20の半分組立て時の斜視図である。
【図19】上レール20Aの半分組立て時の斜視図である。
【図20】下摺動ピン収納凹部14における前側壁部14aと化粧カバー18の分解断面図である。
【図21】下摺動部材収納凹部13における前側壁部13aと化粧カバー18の分解断面図である。
【図22】図1における拡大a−a断面図である。
【図23】図1における拡大b−b断面図である。
【図24】引戸2を開く際の平面説明図である。
【図25】引戸2を開く際の平面説明図である。
【図26】他の実施形態の下摺動部材、上摺動ピン、下摺動ピンを示し、(a)は下摺動部材の正面図及び右側面図、(b)上摺動ピンの正面図及び右側面図、(c)下摺動ピンの正面図及び右側面図である。
【図27】他の実施形態のフラット引戸の斜視図である。
【図28】図27のA−A拡大断面図である。
【図29】引戸の斜視図である。
【符号の説明】
【0091】
1-キャビネット
2、3-引戸
6-下摺動部材
7-下摺動ピン
8-上摺動部材
9-上摺動ピン
10-下レール
11-上段レール溝
12-下段レール溝
13-下摺動部材収納凹部
13a-前側壁部
14-下摺動ピン収納凹部
14a-前側壁部
18−化粧カバー
20-上レール
21-上段レール溝
22-下段レール溝
23-上摺動部材収納凹部
23a-前側壁部
24-上摺動ピン収納凹部
24a-前側壁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の前縁下部に下レールが水平に取り付けられると共に、該下レールに対向した前縁上部に上レールが水平に取り付けられ、該下レールと上レールには各々上段レール溝と下段レール溝が上下2段に重ねて形成され、さらに該下レールには上段レール溝に連続して下摺動部材収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、該上レールには下段レール溝に連続して上摺動部材収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、該下レールの下段レール溝に連続して下摺動ピン収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、該上レールの上段レール溝に連続して上摺動ピン収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、2枚の引戸の下部には、下摺動部材が該下レールの上段レール溝に係合して設けられると共に、下摺動ピンが該下レールの下段レール溝に係合して設けられ、該2枚の引戸の上部には、上摺動部材が該上レールの下段レール溝に係合して設けられると共に、上摺動ピンが該上レールの上段レール溝に係合して設けられ、
該2枚の引戸を閉じたとき、該各引戸の下摺動部材が該下レールの上段レール溝から該下摺動部材収納凹部に進入し、該下摺動ピンが下レールの下段レール溝から該下摺動ピン収納凹部に進入すると共に、該上摺動部材が上レールの下段レール溝から該上摺動部材収納凹部に進入し、該上摺動ピンが上レールの上段レール溝から上摺動ピン収納凹部に進入して2枚の引戸がフラット状態となるフラット引戸であって、
該下レールの該下段レール溝の深さが該上レールの上段レール溝より浅く形成されると共に、該下レールの該下摺動部材収納凹部の前側壁部が着脱可能に形成され、該下レールの該下摺動ピン収納凹部の前側壁部が着脱可能に形成されていることを特徴とするフラット引戸。
【請求項2】
前記下レールの下段レール溝内に補助レールが嵌入され、該下レールの下段レール溝の深さが前記上レールの上段レール溝より浅く形成されていることを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項3】
前記下レールの下段レール溝の深さと前記上レールの上段レール溝の深さに対応して、前記下摺動ピンの長さが前記上摺動ピンの長さより短く形成されていることを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項4】
前記下レールの前面側に化粧カバーが着脱可能に取り付けられ、該化粧カバーを外した状態で、前記下摺動ピン収納凹部の前側壁部が外されて開口すると共に、前記下摺動部材収納凹部の前側壁部が外されて開口することを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項5】
前記下摺動部材は取付部に対し摺動部がスペーサを介して高さ調整可能に取り付けられ、前記下摺動ピンは取付部に対し摺動ピンがスペーサを介して高さ調整可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項6】
前記下摺動部材と下摺動ピンには取付用の長孔が縦方向に長く形成され、該下摺動部材又は下摺動ピンが引戸の下部の被取付部に取り付けられる際、該被取付部との間にスペーサを介在させ、該下摺動部材又は下摺動ピンの高さを調整可能に取り付けられることを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項7】
前記下レールの下摺動ピン収納凹部の底部に、ピン移動方向に向けて滑らかに傾斜する傾斜面を有する山形部が形成され、引戸を閉じる際、下摺動ピンが該山形部に乗り上げて制動がかかることを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項8】
前記下レールと上レールの前面縁部に前記化粧カバーを係止させるための係止凸部が設けられ、該係止凸部は該下レールまたは上レールの取付面から段状に突出する形状に形成されたことを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項9】
前記下レールの前記上段レール溝の端部に、塵だし用の傾斜部が設けられたことを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項10】
前記下レールの前記下摺動ピン収納凹部の端部に、塵を溜めて取り出すための塵収納孔が該下摺動ピンの外径より小さい内径で形成されたことを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項1】
開口部の前縁下部に下レールが水平に取り付けられると共に、該下レールに対向した前縁上部に上レールが水平に取り付けられ、該下レールと上レールには各々上段レール溝と下段レール溝が上下2段に重ねて形成され、さらに該下レールには上段レール溝に連続して下摺動部材収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、該上レールには下段レール溝に連続して上摺動部材収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、該下レールの下段レール溝に連続して下摺動ピン収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、該上レールの上段レール溝に連続して上摺動ピン収納凹部がレール前部にシフトして設けられ、2枚の引戸の下部には、下摺動部材が該下レールの上段レール溝に係合して設けられると共に、下摺動ピンが該下レールの下段レール溝に係合して設けられ、該2枚の引戸の上部には、上摺動部材が該上レールの下段レール溝に係合して設けられると共に、上摺動ピンが該上レールの上段レール溝に係合して設けられ、
該2枚の引戸を閉じたとき、該各引戸の下摺動部材が該下レールの上段レール溝から該下摺動部材収納凹部に進入し、該下摺動ピンが下レールの下段レール溝から該下摺動ピン収納凹部に進入すると共に、該上摺動部材が上レールの下段レール溝から該上摺動部材収納凹部に進入し、該上摺動ピンが上レールの上段レール溝から上摺動ピン収納凹部に進入して2枚の引戸がフラット状態となるフラット引戸であって、
該下レールの該下段レール溝の深さが該上レールの上段レール溝より浅く形成されると共に、該下レールの該下摺動部材収納凹部の前側壁部が着脱可能に形成され、該下レールの該下摺動ピン収納凹部の前側壁部が着脱可能に形成されていることを特徴とするフラット引戸。
【請求項2】
前記下レールの下段レール溝内に補助レールが嵌入され、該下レールの下段レール溝の深さが前記上レールの上段レール溝より浅く形成されていることを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項3】
前記下レールの下段レール溝の深さと前記上レールの上段レール溝の深さに対応して、前記下摺動ピンの長さが前記上摺動ピンの長さより短く形成されていることを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項4】
前記下レールの前面側に化粧カバーが着脱可能に取り付けられ、該化粧カバーを外した状態で、前記下摺動ピン収納凹部の前側壁部が外されて開口すると共に、前記下摺動部材収納凹部の前側壁部が外されて開口することを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項5】
前記下摺動部材は取付部に対し摺動部がスペーサを介して高さ調整可能に取り付けられ、前記下摺動ピンは取付部に対し摺動ピンがスペーサを介して高さ調整可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項6】
前記下摺動部材と下摺動ピンには取付用の長孔が縦方向に長く形成され、該下摺動部材又は下摺動ピンが引戸の下部の被取付部に取り付けられる際、該被取付部との間にスペーサを介在させ、該下摺動部材又は下摺動ピンの高さを調整可能に取り付けられることを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項7】
前記下レールの下摺動ピン収納凹部の底部に、ピン移動方向に向けて滑らかに傾斜する傾斜面を有する山形部が形成され、引戸を閉じる際、下摺動ピンが該山形部に乗り上げて制動がかかることを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項8】
前記下レールと上レールの前面縁部に前記化粧カバーを係止させるための係止凸部が設けられ、該係止凸部は該下レールまたは上レールの取付面から段状に突出する形状に形成されたことを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項9】
前記下レールの前記上段レール溝の端部に、塵だし用の傾斜部が設けられたことを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【請求項10】
前記下レールの前記下摺動ピン収納凹部の端部に、塵を溜めて取り出すための塵収納孔が該下摺動ピンの外径より小さい内径で形成されたことを特徴とする請求項1記載のフラット引戸。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2007−2657(P2007−2657A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83632(P2006−83632)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(592245890)井上金物株式会社 (7)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(592245890)井上金物株式会社 (7)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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