説明

フラビウイルスワクチン

【課題】フラビウイルスならびにこれらのワクチンを作製および使用する方法を提供する
【解決手段】フラビウイルスの向臓器性を低下させる一つまたはそれ以上のヒンジ領域変異を含むフラビウイルス。キメラフラビウイルスの一つの例において、キメラには、第一のフラビウイルスのカプシドおよび非構造タンパク質、ならびにキメラフラビウイルスの向臓器性を低下させるエンベロープタンパク質変異を含む、第二のフラビウイルスウイルスまたはデングウイルスのプレ膜およびエンベロープタンパク質が含まれる。デングウイルスの場合、変異は、例えばデングエンベロープアミノ酸202または204位でのリジンとなりうる。このアミノ酸は、例えばアルギニンに置換することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、フラビウイルス(flavivirus)ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
フラビウイルスは、小さく、エンベロープを有するプラス鎖RNAウイルスであり、そのいくつかは、世界的な公衆衛生に対して現在も脅威であり、今後も脅威となる。例えば、黄熱病はサハラ下アフリカの特定のジャングル地域と共に南アフリカのいくつかの地域での流行病の原因である。多くの黄熱病感染症は軽度であるが、疾患は重度の生命を脅かす病気を引き起こしうる。疾患の状態は、二つの期を有する。初期または急性期は通常、高熱、悪寒、頭痛、背中痛、筋肉痛、食欲喪失、悪心および嘔吐を特徴とする。3〜4日後これらの症状は消失する。患者によっては、疾患がいわゆる毒性期に入ると症状が再発する。この期のあいだに、高熱が再発して、ショック、出血(例えば、口、鼻、目、および/または胃からの出血)、腎不全、および肝不全が起こりうる。実際に、肝不全は黄疸を引き起こし、これが皮膚の黄化と眼の白化を引き起こし、これによってその名前に「黄熱」が与えられている。毒性期に入った約半数の患者が10〜14日以内に死亡する。しかし、黄熱病から回復した人は、再感染に対して生涯免疫を獲得する。過去20年のあいだに黄熱病ウイルス(yellow fever virus)に感染した人の数は増加しつつあり、現在では黄熱病症例は約200,000人であり、毎年約30,000人が死亡する。このように黄熱病ウイルスの再出現は、重篤な公衆衛生問題である。
【0003】
デング(Dengue:DEN)ウイルスは、フラビウイルスのもう一つの例である。デングウイルスは、蚊(主にネッタイ・シマカ(Aedes argypti))によってヒトに伝搬され、全世界での公衆衛生問題の原因である。毎年5000万〜1億人がデングウイルスに感染して、地域によっては6%もの高い感染率が認められている(Gubler、「Dengue and Dengue Hemorrhagic Fever.」、CABI出版、ニューヨーク、第1章、1〜22頁、1997(非特許文献1);Burkeら、Am. J. Trop. Med. Hyg. 38:172〜180、1988(非特許文献2))。デングウイルスの四つの血清型(デング1〜4型)が、カリブ、アジア、およびアメリカにおいて流行している。DEN感染症の重度でおそらく致死的な型[デング出血熱/ショック症候群(DHF/DSS)]は、異なるDEN血清型による連続的な感染が持続した個体に発生する免疫病理学的疾患である。1980年〜1995年に、DHF 360万例以上およびDHFが原因の死亡58,000例が報告された(Halstead、「Dengue and Dengue Hemorrhagic Fever.」、CABI出版、ニューヨーク、第2章、23〜44頁、1997(非特許文献3))。DHF/DSSの病原性のために、一般的に、最適なデングワクチンは、四つ全ての血清型のデングウイルスに対して同時に免疫して、永続的な免疫を誘導する必要がある可能性があると考えられている。第二次世界大戦以降、有効なデングワクチンの開発に向けて大規模な努力が行われているにもかかわらず、現在、利用できる承認されたデングワクチンはない。
【0004】
黄熱病ウイルスおよびデングウイルスを含むフラビウイルスは、ヒトおよび動物における疾患状態の誘導に関与する二つの主要な生物学的性質を有する。これらの二つの性質の第一のものは向神経性であり、これは宿主の神経組織に侵入して感染するウイルスの性向である。向神経性フラビウイルス感染症によって、脳および脊髄の炎症および損傷(すなわち、脳炎)、意識障害、麻痺、および痙攣が起こりうる。フラビウイルスの第二の生物学的性質は、向臓器性であり、これはウイルスが肝臓、腎臓、および心臓を含む極めて重要な臓器器官に侵入して感染する性向である。向臓器性フラビウイルス(viscerotropic flavivirus)感染症によって、肝臓(肝炎)、腎臓(腎炎)、および心筋(心筋炎)の炎症および損傷が起こり、これらの臓器の不全または機能障害が起こりうる。向神経性および向臓器性は、フラビウイルスの明確で異なる性質であるように思われる。
【0005】
いくつかのフラビウイルスは、主に向神経性であるが(西ナイルウイルス(West Nile virus)のように)、主に向臓器性であるウイルスもあり(例えば、黄熱病ウイルスおよびデングウイルス)、さらに双方の性質を示すものもある(キャサヌール森林病ウイルス(Kyasanur Forest Disease virus)のように)。しかし、向神経性と向臓器性はいずれも、全てのフラビウイルスにある程度存在する。宿主において、中枢神経系への侵入の前に臓器の感染症が起こることから、向臓器性と向神経性の相互作用が起こる可能性がある。このように、向神経性は、神経外臓器(臓器)におけるウイルスの複製能に依存する。この神経外複製は、ウイルス血症を引き起こし、次にこれが脳および脊髄への侵入の原因となる。
【0006】
フラビウイルスに対するワクチンを開発する一つのアプローチは、ワクチンがヒトまたは動物に関するその向神経性および向臓器性を喪失するように、そのビルレンス特性を改変させることである。黄熱病ウイルスの場合、二つのワクチン(黄熱病17Dとフレンチ向神経性ワクチン)が開発されている(Monath、「Yellow Fever」、Plotkin and Orenstein、「Vaccines」、第3版、1999、ソーンダース、フィラデルフィア、815〜879頁(非特許文献4))。黄熱病17Dワクチンは、ニワトリ胚組織における連続継代によって作製され、それによって向神経性と向臓器性が有意に低下したウイルスが得られた。フレンチ向臓器性ワクチンは、マウス脳組織における連続継代によって作製され、それによって向臓器性が失われたが、向神経性は保持した。偶発的な神経事象(ワクチン接種後脳炎)の発生率が高いことは、フレンチワクチンの使用に関連した。特に、デング、西ナイル、およびオムスク出血熱ウイルス(Omsk Hemorrhagic fever virus)のような向臓器的性質を有する多くの医学的に重要なフラビウイルスに関して、現在のところ利用できる承認されたワクチンはない。
【0007】
フラビウイルスの完全にプロセシングされた成熟ビリオンは、三つの構造タンパク質、すなわちカプシド(C)、膜(M)およびエンベロープ(E)と、七つの非構造タンパク質とを含む。感染細胞において認められる未成熟なフラビウイルスは、Mタンパク質の前駆体であるプレ膜(prM)タンパク質を含む。フラビウイルスタンパク質は、単一の長いオープンリーディングフレームの翻訳後、ポリタンパク質を産生した後、複雑な一連のポリタンパク質の翻訳後タンパク質分解切断が起こり、成熟ウイルスタンパク質を産生することによって産生される(Ambergら、J. Virol. 73:8083〜8094、1999(非特許文献5);Rice、「Flaviviridae」、Virology、Fields(編)、レイブン-リッピンコット、ニューヨーク、1995、第I巻、937頁(非特許文献6))。ウイルスの構造タンパク質は、ポリタンパク質においてC-prM-Eの順に整列する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Gubler、「Dengue and Dengue Hemorrhagic Fever.」、CABI出版、ニューヨーク、第1章、1〜22頁、1997
【非特許文献2】Burkeら、Am. J. Trop. Med. Hyg. 38:172〜180、1988
【非特許文献3】Halstead、「Dengue and Dengue Hemorrhagic Fever.」、CABI出版、ニューヨーク、第2章、23〜44頁、1997
【非特許文献4】Monath、「Yellow Fever」、Plotkin and Orenstein、「Vaccines」、第3版、1999、ソーンダース、フィラデルフィア、815〜879頁
【非特許文献5】Ambergら、J. Virol. 73:8083〜8094、1999
【非特許文献6】Rice、「Flaviviridae」、Virology、Fields(編)、レイブン-リッピンコット、ニューヨーク、1995、第I巻、937頁
【発明の概要】
【0009】
本発明は、フラビウイルスの向臓器性を低下させる一つまたはそれ以上のヒンジ領域変異を含むフラビウイルスを提供する。これらのフラビウイルスは、例えば、黄熱病ウイルス(例えば、黄熱病ウイルスワクチン株);デングウイルス、西ナイルウイルス、ヴェッセルスブロンウイルス(Wesselsbron virus)、キャサヌール森林病ウイルス、およびオムスク出血熱ウイルスからなる群より選択される向臓器性フラビウイルス;またはキメラフラビウイルス(chimeric flavivirus)となりうる。キメラフラビウイルスの一つの例において、キメラには、第一のフラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス)のカプシドおよび非構造タンパク質、ならびにキメラフラビウイルスの向臓器性を低下させるエンベロープタンパク質変異を含む、第二のフラビウイルス(例えば、日本脳炎(Japanese encephalitis virus)ウイルスまたはデングウイルス(例えば、デングウイルス1、2、3または4))のプレ膜およびエンベロープタンパク質が含まれる。デングウイルスの場合、変異は、例えばデングエンベロープアミノ酸202または204位でのリジンとなりうる。このアミノ酸は、例えばアルギニンに置換することができる。
【0010】
本発明はまた、本明細書に記述の任意のウイルスと薬学的に許容される担体または希釈剤とを含むワクチン組成物と共に、そのようなワクチン組成物を患者に投与することによって、患者におけるフラビウイルスに対する免疫応答を誘導する方法を提供する。これらの方法を用いて治療される患者は、フラビウイルス感染症有しなくてもよいが発症するリスクを有し、またはフラビウイルス感染症を有してもよい。さらに、本発明には、フラビウイルス感染症を治療するために、およびそのような目的の薬剤を調製するために、本発明のワクチンを使用することが含まれる。
【0011】
向臓器性が低下する変異をフラビウイルスに導入することを含む、フラビウイルスワクチンを作製する方法も同様に本発明に含まれる。さらに、本発明には、(i)フラビウイルスのヒンジ領域に変異を導入すること、および(ii)変異を含まないフラビウイルスと比較して、ヒンジ領域変異を含むフラビウイルスの向臓器性が低下したか否かを決定することを含む、フラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルスまたはキメラフラビウイルス)ワクチン候補物質を同定する方法が含まれる。
【0012】
本発明のフラビウイルスは、向臓器性が低下しているという点において、それらを患者に投与した場合に非変異相対物と比較してさらなる安全性レベルを提供することから都合がよい。これらのウイルスのさらなる長所は、(i)60年を超えてその安全性が確立され、そのあいだに3億5千万回もヒトに投与されてきた、(ii)1回投与後に長期間の免疫を誘導する、および(iii)迅速に、接種後数日以内に免疫を誘導する、黄熱病ウイルス株YF17Dの配列(例えば、カプシドと非構造タンパク質とをコードする配列)がそれらに含まれうるという事実によって得られる。さらに、本発明のワクチンウイルスは、治療した患者において活動型感染症を引き起こす。免疫した個体のサイトカイン環境および生得の免疫応答は天然の感染症の場合と類似であるため、抗原量は宿主において増大して、適切に構築された構造エピトープが効率よくプロセシングされ、養子免疫応答は強く、記憶が確立される。その上、本発明の特定のキメラでは、標的ウイルスに由来するprMおよびEタンパク質は、保護的な液性および細胞性免疫にとって重要な抗原を含む。
【0013】
本発明のその他の特徴および長所は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ChimeriVax(商標)-JE FRhL3(大きいプラーク、パネルA)およびFRhL5(小さいプラーク、パネルB)によって産生されたプラークの大きさの変種を示す。プラークは、ウサギ抗-JE抗血清の後に抗ウサギIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼを用いて染色した。
【図2A】E279での変異(M→K)を有する、および有しないYF-VAX(登録商標)およびChimeriVax(商標)-JE構築物の生存分布を示す一連のグラフである。4日齢の哺乳期のマウスに、脳内経路によって約0.7 log10 PFUを接種した。
【図2B】E279での変異(M→K)を有する、および有しないYF-VAX(登録商標)およびChimeriVax(商標)-JE構築物の生存分布を示す一連のグラフである。4日齢の哺乳期のマウスに、脳内経路によって約1.7 log10 PFUを接種した。
【図2C】E279での変異(M→K)を有する、および有しないYF-VAX(登録商標)およびChimeriVax(商標)-JE構築物の生存分布を示す一連のグラフである。4日齢の哺乳期のマウスに、脳内経路によって〜2.7 log10 PFUを接種した。
【図3】死亡率対ウイルス量の回帰分析のグラフであり、メチオニンからリジンへの変異を有する(FRhL5)および有しない(FRhL3)ウイルスに関して類似の勾配および平行な線を示し、統計学的な比較を行うことができる。FRhL5ウイルスは、FRhL3より18.52倍強力(ビルレント)であった(p<0.0001)。
【図4】FRhLおよびVero細胞におけるChimeriVax(商標)-JEウイルスの独立したRNAトランスフェクションおよび一連の継代の結果を示す。継代レベルによってprME遺伝子に変異が出現することを示す。
【図5】FRhLまたはVero細胞における適合によって起こるヒンジ領域における変異の位置を示す、フラビウイルスエンベロープ糖タンパク質エクトドメインの三次元モデルである。JEエンベロープ糖タンパク質(株JaOArS982;Sumiyoshiら、Virology 161:497〜510、1987)の配列を、LOOKソフトウェア(モレキュラーアプリケーショングループ(Molecular Application Group)、パロアルト、カリフォルニア州)を用いて、SegMod(セグメントマッチモデリング)法による自動相同性モデリング構築のための入力としてTBE構造鋳型の配列(Reyら、Nature 375:291〜298、1995)と整列させた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本発明は、向臓器性が低下した一つまたはそれ以上の変異を有するフラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルスおよびキメラフラビウイルス)、そのようなフラビウイルスを作製する方法、およびフラビウイルス感染症を予防または治療するためにこれらのフラビウイルスを用いる方法を提供する。本発明のフラビウイルスにおける1つ(または複数の)変異は、エンベロープタンパク質のヒンジ領域に存在し、このことは向臓器性を決定するために何らかの役割を有することを本発明者らは示した。本発明のウイルスおよび方法は、以下のようにさらに説明される。
【0016】
本発明において用いることができるフラビウイルスの一例は黄熱病ウイルスである。野生型の感染性クローン(例えばAsibi感染性クローン)または別の野生型のビルレント黄熱病ウイルスの感染性クローンのエンベロープのヒンジ領域に変異を作製することができ、次に変異体を動物モデル系(例えば、ハムスターおよび/またはサルモデル系)において試験して、向臓器性を有する部位を同定することができる。向臓器性の低下は、例えば、モデル系におけるウイルス血症および/または肝損傷の減少を検出することによって判断される(さらなる詳細に関しては下記を参照されたい)。次に、野生型ウイルスの向臓器性を低下させることが判明した一つまたはそれ以上の変異を、ワクチン株(例えば、YF17D)に導入して、これらの変異体を動物モデル系(例えば、ハムスターおよび/またはサルモデル系)において調べ、得られた変異体の向臓器性が低下したか否かを決定する。次に、向臓器性が低下したことが判明した変異体は、向臓器性のレベルの低下により安全性が増加した新しいワクチン株として用いることができる。
【0017】
本発明において用いることができるさらなるフラビウイルスには、日本脳炎、デング(血清型1〜4)、マリーバレー脳炎、セントルイス脳炎、西ナイル、クンジン、ロシオ(Rocio)脳炎、およびイルヘウスウイルスのような他の蚊媒介フラビウイルス;中欧脳炎、シベリア脳炎、ロシア春夏脳炎、キャサヌール森林病、オムスク出血熱、跳躍病、ポワッサン脳炎、ネギシ脳炎、アブセッタロフ、ハンサロバ、アポイ、およびHyprウイルスのようなダニ媒介フラビウイルス;ならびにヘパシウイルス属に含まれるウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス)が含まれる。これらのウイルスは全て、臓器器官に対する何らかの感染性向を有する。これらのウイルスの向臓器性は生命にとって重要な臓器の機能障害を引き起こすのではなく、これらの臓器におけるウイルスの複製がウイルス血症を引き起こして、中枢神経系への侵入に関与する可能性がある。このように、変異誘発によってこれらのウイルスの向臓器性を低下させると、それらが脳に侵入して脳炎を引き起こす能力を低下させることができる。
【0018】
他のフラビウイルスと共に上記のウイルスの他に、向臓器性を低下させる一つまたはそれ以上の変異を含むキメラフラビウイルスが本発明に含まれる。これらのキメラは、1つ(または複数の)構造タンパク質が第二のウイルス(すなわち試験ウイルス、またはフラビウイルスのような既定のウイルス)の対応する1つ(または複数の)構造タンパク質に置換されているフラビウイルス(すなわち、骨格フラビウイルス)からなることができる。例えば、キメラは、フラビウイルスのprMおよびEタンパク質が第二の試験ウイルス(例えば、デングウイルス(1〜4)、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、または本明細書において言及したウイルスのような他のウイルス)(そのEタンパク質が、本明細書に記述のヒンジ領域変異を有する)のprMおよびEタンパク質に置換されている骨格フラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス)からなることができる。キメラウイルスは、如何なるウイルスの組み合わせによっても構成することができる。好ましくは、それに対する免疫が求められるウイルスは、挿入された1つまたは複数の構造タンパク質の起源である。
【0019】
本発明のワクチンに含まれうるキメラウイルスの特定の例は、prMタンパク質およびEタンパク質が、デングウイルス(血清型1、2、3、または4)、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マリーバレー脳炎ウイルスまたは先に記載したウイルスのような他の任意のフラビウイルスのような、別のフラビウイルスのprMタンパク質およびEタンパク質(本明細書に記述のヒンジ変異を含む)に置換されている黄熱病ヒトワクチン株YF17Dである。例えば、本発明のウイルスを作製するために、ブダペスト条約の条項の下でアメリカバージニア州マナッサスのアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託され、1998年1月6日という寄託日を与えられた以下のキメラフラビウイルスを用いることができる:キメラ黄熱病17D/デング2型ウイルス(YF/DEN-2;ATCCアクセッション番号ATCC VR-2593)、およびキメラ黄熱病17D/日本脳炎SA14-14-2ウイルス(YF/JE A 1.3;ATCCアクセッション番号ATCC VR-2594)。本発明において用いることができるキメラウイルスを作製する詳細は、例えば、そのそれぞれの全文が参照として本明細書に組み入れられる、国際出願PCT/US98/03894号およびPCT/US00/32821号;ならびにChambersら、J. Virol. 73:3095〜3101、1999に提供される。
【0020】
上記のように、本発明のウイルスに含まれる変異は、向臓器性を低下させる。一つの例において、これらの変異は、フラビウイルスエンベロープタンパク質のヒンジ領域に存在する。エンベロープタンパク質のポリペプチド鎖は、三つの異なるドメインに折りたたまれる:中心ドメイン(ドメインI)、二量体形成ドメイン(ドメインII)、および免疫グロブリン様モジュールドメイン(ドメインIII)。ヒンジ領域はドメインIとドメインIIの間に存在し、受容体媒介エンドサイトーシスによってウイルスが取り込まれた後、酸性pHに曝露されると、ウイルスおよびエンドソーム膜の融合に関与する構造の変化を受ける(したがって、「ヒンジ」と呼ばれる)。多数のエンベロープアミノ酸が、例えば、黄熱病ウイルスのアミノ酸48〜61位、127〜131位、および196〜283位を含むヒンジ領域に存在する(Reyら、Nature 375:291〜298、1995)。これらのアミノ酸または密接に周囲を取り囲むアミノ酸(および他のフラビウイルスエンベロープタンパク質における対応するアミノ酸)を本発明に従って変異させて、得られた向臓器性の低下に関して試験することができる。部位特異的変異誘発のような標準的な方法を用いてヒンジ領域に変異を作製することができる。本発明のウイルスに存在する変異のタイプの一例は、置換であるが、欠失および挿入のような他のタイプの変異も同様に用いることができる。さらに、上記のように、変異は、単独でまたは一つもしくはそれ以上のさらなる変異の状況で存在しうる。
【0021】
本発明のウイルス(キメラを含む)は、当技術分野で標準的な方法を用いて作製することができる。例えば、ウイルスのゲノムに対応するRNA分子を、初代培養細胞、ニワトリ胚、または二倍体細胞株に導入して、そこから(またはその上清から)子孫ウイルスを精製することができる。ウイルスを作製するために用いることができるもう一つの方法は、Vero細胞のような異数体細胞を用いる(Yasumuraら、Nihon Rionsho 21:1201〜1215、1963)。この方法において、ウイルスのゲノムに対応する核酸分子(例えば、RNA分子)を異数体細胞に導入して、細胞が培養された培地からウイルスを回収して、回収したウイルスをヌクレアーゼ(例えば、Benzonase(商標)のようなDNAとRNAの双方を分解するエンドヌクレアーゼ;米国特許第5,173,418号)によって処置して、ヌクレアーゼ処置したウイルスを濃縮し(例えば、分子量カットオフが例えば500 kDaであるフィルターを用いた限外濾過を用いて)、濃縮したウイルスをワクチン接種の目的で製剤化する。この方法の詳細は、参照として本明細書に組み入れられる、2002年1月15日に提出された米国特許出願第60/348,565号に提供される。
【0022】
本発明のウイルスは、感染のリスクがある成人もしくは子供における一次予防物質として投与することができ、または感染患者を治療するための二次物質として用いることができる。例えば、黄熱病/デングキメラの場合、ワクチンは、デング感染症のリスクがある成人もしくは子供に用いることができ、またはデング感染患者を治療するための二次物質として用いることができる。デング関連ワクチンおよび本発明の方法を用いて治療することができる患者の例には、(i)アジア、ラテンアメリカ、およびカリブのようなデングが流行している地域の子供、(ii)外国旅行者、(iii)軍人、および(iv)デング流行地域の患者が含まれる。その上、疾患が拡大していることが認められる地域(例えば、アルゼンチン、チリ、オーストラリア、アフリカの一部、南ヨーロッパ、中東、および米国南部)、または将来拡大すると予想される地域(例えば、ネッタイシマカが発生している地域)の住民は、本発明に従って治療することができる。
【0023】
本発明のウイルスの製剤は、当技術分野で標準的な方法を用いて行うことができる。ワクチン調製物において用いられる多数の薬学的に許容される溶液は周知であり、本発明において用いるために当業者によって容易に適合させることができる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第18版、A. Gennaro編、1990、マック出版社、イーストン、ペンシルバニア州を参照されたい)。二つの特定の例において、ウイルスは、7.5%乳糖および2.5%ヒト血清アルブミンを含む最小基本培地アール塩(MEME)において、または10%ソルビトールを含むMEMEにおいて調製される。しかし、ウイルスは、滅菌生理食塩液または滅菌緩衝生理食塩液のような生理的に許容される溶液において単に希釈することができる。もう一つの例において、ウイルスは、例えば感染したニワトリ胚組織の透明な浮遊液として、またはキメラ黄熱病ウイルスに感染した細胞培養から採取した液体として、黄熱病17Dワクチンの場合と同様に投与および調製することができる。
【0024】
本発明のワクチンは、当技術分野で周知である方法を用いて投与することができ、投与されるワクチンの適当な量は、当業者によって容易に決定することができる。例えば、本発明のウイルスは、例えば筋肉内、皮下、または皮内経路によって投与される容量0.1〜1.0 ml中に102〜107感染単位(例えば、プラーク形成単位または組織培養感染用量)を含む滅菌水溶液として調製することができる。さらに、フラビウイルスは、粘膜経路を通してヒト宿主に感染することができる可能性があることから(Gresikovaら、「Tick-borne Encephalitis」、The Arboviruses、Ecology and Epidermiology、Monath編、CRC出版、ボカレイトン、フロリダ州、1988、第IV巻、177〜203頁)、ウイルスはまた粘膜経路によっても投与することができる。さらに、本発明のワクチンは1回投与することができ、または任意で、プライミング用量を用いた後に、当業者によって適当であると決定されるように、例えば2〜6ヶ月後に追加免疫を用いることを含むことができる。
【0025】
選択的には、当業者に既知であるアジュバントを本発明のウイルスの投与において用いることができる。ウイルスの免疫原性を増強するために用いることができるアジュバントには、例えば、リポソーム製剤、(例えばQS21)、ムラミルジペプチド、モノホスホリルリピッドAまたはポリホスファジンのような合成アジュバントが含まれる。これらのアジュバントは典型的に、不活化ワクチンの免疫応答を増強するために用いられるが、それらは生ワクチンについても用いることができる。粘膜経路、例えば経口投与によって輸送されるウイルスの場合、大腸菌熱不安定毒素(LT)またはLTの変異体誘導体のような粘膜アジュバントをアジュバントとして用いることができる。さらに、アジュバント活性を有するサイトカインをコードする遺伝子をウイルスに挿入することができる。このように、GM-CSF、IL-2、IL-12、IL-13、またはIL-5のようなサイトカインをコードする遺伝子を外来抗原遺伝子と共に挿入して、免疫応答が増強したワクチンを産生することができるか、または細胞性、液性、もしくは粘膜応答に対してより特異的に向けられるように免疫を調節することができる。
【0026】
最適なワクチン接種がデング血清型四つ全てに対する免疫の誘導を含みうるデングウイルスの場合、本発明のキメラウイルスは、四価ワクチン製剤において用いることができる。そのような四価製剤において用いられる如何なるまたは全てのキメラに、本明細書において記述するような、向臓器性を低下させる変異が含まれうる。キメラは、製剤の際の如何なる時点でも四価調製物を形成するように混合することができ、または連続して投与することができる。四価ワクチンの場合、ウイルス干渉の可能性を減少して、このように、平衡のとれた免疫応答を得るために、投与されるワクチンに存在する異なるキメラのそれぞれの量は異なりうる。簡単に説明すると、そのような製剤の一つの例において、他のキメラに対して、デング-2キメラは少なくとも5倍少ない(例えば、10、50、100、200、または500倍少ない)量を用いる。本実施例において、デング-1、デング-3、およびデング-4キメラの量は同等となりうる、または変化しうる。もう一つの例において、デング-4および/またはデング-1ウイルスの量も同様に減少させることができる。例えば、より少ないデング-2キメラを用いることの他に、デング-4キメラは、デング-1およびデング-3キメラに対して少なくとも5倍少ない(例えば、10、50、100、200、または500倍少ない)量を用いることができる;デング-1キメラは、デング-3およびデング-4キメラに対して少なくとも5倍少ない(例えば、10、50、100、200、または500倍少ない)量を用いることができる;またはデング-1およびデング-4キメラは、デング-3キメラに対して少なくとも5倍少ない量を用いることができる。例えば、本明細書に記載のE204/E202変異がキメラに含まれない場合には、デング-3および/またはデング-4キメラの量に対してデング-1キメラの量を減少させることが特に望ましい可能性がある。
【0027】
黄熱病/日本脳炎キメラのエンベロープタンパク質の279位で起こる、本発明に含まれる変異の一例の特徴付けの詳細を下記に示す。同様に、向臓器性を低下させる一つまたはそれ以上の変異がデングウイルスエンベロープタンパク質に含まれる黄熱病/デングウイルスキメラに関する詳細を下記に示す。そのような変異の一例において、デング-1、デング-2、もしくデング-4のエンベロープタンパク質の204 位のリジン、または他のデング血清型のエンベロープタンパク質よりアミノ酸2個短いデング-3のエンベロープタンパク質の202位のリジンが置換または欠失される。このリジンは、例えばアルギニンに置換することができる。エンベロープアミノ酸204位(デング-3では202位)付近の他の残基も同様に、向臓器性の低下を得るために変異させることができる。例えば、アミノ酸200〜208位のいずれかまたはこれらのアミノ酸の組み合わせを変異させることができる。特定の例には、以下が含まれる:デング-1の202位(K);デング-2の202位(E);デング-3の200位(K);ならびにデング-4の200位(K)、202位(K)および203位(K)が含まれる。これらの残基は、例えばアルギニンに置換することができる。
【実施例】
【0028】
実験結果
I.ヒンジ領域変異を含む黄熱病/日本脳炎キメラ
概要
キメラ黄熱病(YF)-日本脳炎(JE)ワクチン(ChimeriVax(商標)-JE)は、弱毒化JE SA14-14-2ワクチン株のprM-E遺伝子を、YF 17Dウイルスの完全長のcDNAクローンに挿入することによって構築した。アカゲザル胎児肺(FRhL)細胞での継代により、E279位で単一のMet→Lysアミノ酸変異を含む小さいプラークのウイルスが出現し、SA14-14-2からのこの残基を野生型アミノ酸に復帰変異させた。部位特異的変異誘発によって類似のウイルスを構築した。E279変異は、Eタンパク質のヒンジ領域におけるβ-シートに存在し、これは、感染細胞の細胞質へのエンドソームからのウイルス侵入の際のpH依存的構造変化に関与する。FRhLまたはVero細胞における独立したトランスフェクション継代試験において、変異はヒンジ4(アミノ酸E266〜E284によって結合される)において最も頻繁に出現し、この機能的に重要な領域におけるゲノムの不安定性を反映している。E279復帰変異は、哺乳期マウスのLD50および生存分布によって、ならびにアカゲザルにおける組織病理学によって測定すると、神経ビルレンスの有意な増加を引き起こした。サルでの結果の感度および同等性に基づくと、哺乳期のマウスは、向神経性のフラビウイルスワクチン候補物質の安全性試験の適当な宿主である。E279 Lysウイルスは、ウイルス血症と抗体レベル(向臓器性のマーカー)がE279 Metウイルスと比較して有意に減少したことから、サルにおいて神経外複製に関して限定された。
【0029】
背景
キメラウイルスの研究は、ビルレンスの分子的基礎に新しい洞察を与え、ワクチン開発の新しい展望を与えた。例えば、プラス鎖アルファウイルス(Morris-Downesら、Vaccine 19:3877〜3884、2001;Xiongら、Science 243:1188〜1191、1991)およびフラビウイルス(Brayら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10342〜10346、1991;Chambersら、J. Virol. 73:3095〜3101、1999;Guirakhooら、J. Virol. 75:7290〜7304、2001;Huangら、J. Virol. 74:3020〜2038、2000)の分子クローンは、ウイルスエンベロープならびに中和、細胞接着、融合およびインターナリゼーションに関与する決定因子をコードする構造遺伝子の挿入によって改変されている。これらのキメラウイルスの複製は、親株によって発現される非構造タンパク質および非コード末端によって制御されるが、ドナー遺伝子からの構造タンパク質は特異的免疫を与える。キメラウイルスの生物学的特徴は、ドナーおよびレシピエントウイルス遺伝子の双方によって決定される。ドナー遺伝子の全域でヌクレオチド配列の差を有する構築物を比較することによって、ビルレンスおよび弱毒化における個々のアミノ酸残基の機能的役割を詳細に調べることが可能となる。
【0030】
日本脳炎(JE)の弱毒化株(SA14-14-2)からのprM-E遺伝子を組み入れたキメラ黄熱病(YF)ウイルスを用いて、弱毒化JEウイルスとビルレント野生型JE Nakayamaウイルスとを区別するアミノ酸10個の変異の役割について詳細に調べた(Arroyoら、J. Virol. 75:934〜942、2001)。それぞれの変異を単一または集団で野生型配列に復帰させること、および脳内経路(IC)によって104プラーク形成単位(PFU)を接種した若い成体マウスに関する神経ビルレンスに及ぼす作用を決定することによって、ビルレンス因子を定義した。一部位復帰変異体ウイルスは全て、非常に弱毒化されたままであり、神経ビルレント表現型を回復するためには、3または4残基での復帰変異が必要であった。一部位復帰変異体(E279 Met→Lys)1個のみがビルレンスの変化の証拠を示し、動物8例中1例がIC接種後死亡した。
【0031】
E279決定因子の機能的役割をさらに調べるために、本発明者らは、哺乳期マウスおよびサルにおける脳炎誘発能に関してこのアミノ酸残基で異なるキメラYF/JEウイルスを比較した。サルのIC接種は、フラビウイルスおよび他の生ワクチンの安全性の試験として日常的に用いられており、脳および脊髄組織の定量的病理的検査は、神経ビルレンスに微妙な差を有する同じウイルスの株を区別するための感度のよい方法を提供する(Levenbookら、J. Biol. Stand. 15:305〜313、1987)。向神経性フラビウイルスに対する感受性は年齢依存的であるため、哺乳期マウスは、より大きい動物より感度のよいモデルとなる(Monathら、J. Virol. 74:1742〜1751、2000)。結果は、E279での単一のMet→Lysアミノ酸変異が神経ビルレンスの増加を付与したことを確認した。この変異は、Eタンパク質の「ヒンジ」領域に存在し、この領域は、エンドソームから感染細胞の細胞質にウイルスが侵入する際のpH依存的構造変化に関与する(Reedら、Am. J. Hyg. 27:493〜497、1938)。重要なことに、哺乳期マウスは、アカゲザルにおけるビルレンスプロフィールを予測することが示された。点突然変異によって付与された神経ビルレンスの変化の検出に基づいて、本発明者らは、哺乳期マウスが向神経性のフラビウイルスワクチン候補物質の安全性試験のための適当な宿主であると提唱する。
【0032】
神経ビルレンスを増強しながら、E279変異は、このウイルス形質の容認されたマーカーであるサルにおけるウイルス血症および抗体反応の減少によって測定すると、向臓器性に対して反対の作用を有するように思われた(Wangら、J. Gen. Virol. 76:2749〜2755、1995)。
【0033】
材料および方法
ウイルス
ChimeriVax(商標)-JEワクチンの開発は、YF 17Dウイルスの全11-キロベースゲノムのcDNAコピーをクローニングすることによって始まった(Chambersら、J. Virol. 73:3095〜3101、1999)。これを行うため、ヌクレオチド1〜2276位および8279〜10,861位(プラスミドYF5'3'IV)、ならびにヌクレオチド1373〜8704位(プラスミドYFM5.2)からのYF配列をそれぞれコードするYF 17Dゲノム配列を、二つのプラスミドにおいて増殖させた。これらのプラスミドに由来する適当な制限断片のライゲーションによって、完全長のcDNA鋳型を作製した。YF5'3'IVおよびYFM5.2プラスミド内のYF配列は、対応するJE(SA14-14-2)pr-ME配列によって置換され、TF5'3'IV/JE(prM-E')およびYFM5.2/JE(E'-E)プラスミドが作製された。これらのプラスミドを、制限エンドヌクレアーゼNheIおよびBspEIによって連続的に消化した。適当な断片をT4 DNAリガーゼによってライゲーションして、cDNAをXhoI酵素によって消化して転写させ、Sp6プロモーターからRNAを産生した。完全長のRNAによる二倍体アカゲザル胎児肺(FRhL)細胞のトランスフェクションは、電気穿孔によって行った。細胞変性作用が認められた際に(通常、3日)、ウイルスを含む上清を採取して、低速遠心によって透明にし、0.22 μmで濾過滅菌した。最終濃度50%v/vのウシ胎児血清(FBS)を安定化剤として加えた。ウイルスは、既に記述されているように(Monathら、Vaccine 17:1869〜1882、1999)Vero細胞におけるプラークアッセイによって力価を測定した。キメラウイルスは感染多重度約0.001でFRhLまたはVero細胞(Vero-PM、アベンティス・パスツール(Aventis Pasteur)、Marcy 1' Etoile、フランス)において連続的に継代した。市販の黄熱病17Dワクチン(YF-VAX(登録商標))は、ペンシルバニア州スウィフトウォーターのアベンティス・パスツール(前Pasteur-Merieux-Connaught)から入手した。
【0034】
部位特異的変異誘発
残基E279での一部位Met→Lys復帰変異を含むウイルスは、記述のようにオリゴ特異的変異誘発によって作製した(Arroyoら、J. Virol. 75:934〜942、2001)。簡単に説明すると、ヌクレオチド1108〜2472位のJE SA14-14-2 E遺伝子領域を含むプラスミド(pBS/JE SA14-14-2)(Ceciliaら、Virology 181:70〜77、1991)を部位特異的変異誘発の鋳型として用いた。変異誘発は、Transformer部位特異的変異誘発キット(クロンテック(Clontech)、パロアルト、カリフォルニア州)およびライフテクノロジーズ(Life Technologies、グランドアイランド、ニューヨーク州)で合成したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて行った。プラスミドは、唯一の変化が遺伝子操作された変異であることを確認するためにE領域全域についてシークエンシングした。E279変異を含む領域を、NheIおよびEheI(KasI)制限部位を用いてpBS/JEプラスミドからpYFM5.2/JE SA14-14-2(Ceciliaら、Virology 181:70〜77、1991)にサブクローニングした。完全長のDNAおよびSP6転写の構築は上記の通りに行った;しかし、Vero細胞のRNAトランスフェクションは、リポフェクチン(ギブコ/BRL)を用いて行った。
【0035】
シークエンシング
感染した単層からTrizol(登録商標)(ライフテクノロジーズ)を用いてRNAを単離した。Superscript II逆転写酵素(RT)およびロングRTプロトコール(ライフテクノロジーズ)によって逆転写を行った後、RNアーゼH処理(プロメガ)およびロングPCR(XL-PCR、パーキン・エルマー/ABI(Perkin-Elmer/ABI))を行った。RT、PCR、およびシークエンシングプライマーは、参照としてYF 17D株の配列(ゲンバンクアクセッション番号K02749)およびJE-SA14-14-2株の配列(ゲンバンクアクセッション番号D90195)を用いてデザインした。PCR産物をゲル精製して(キアゲン(Qiagen)のQiaquickゲル抽出キット)、色素-ターミネーター・dローダミンシークエンシング反応ミクス(パーキン-エルマー/ABI)を用いてシークエンシングした。シークエンシング反応は、モデル310ジェネティックアナライザ(パーキン・エルマー/ABI)において分析して、DNA配列をSequencher 3.0(ジーンコーズ(GeneCodes))ソフトウェアを用いて評価した。
【0036】
プラークアッセイおよび中和試験
プラークアッセイは、Vero細胞の単層培養の6ウェルプレートにおいて行った。37℃で1時間インキュベートしてウイルスを吸着させた後、細胞を栄養培地においてアガロースと共に重層した。4日目に、3%ニュートラルレッドを含む第二の層を加えた。血清希釈、プラーク減少中和試験は、既に記述されたとおりに実施した(Monathら、Vaccine 17:1869〜1882、1999)。
【0037】
離乳マウスモデル
1群8〜10匹の雌性4週齢ICRマウス(タコニックファームズインク(Taconic Farms, Inc.)、ジャーマンタウン、ニューヨーク州)に、E279変異を有する(用量4.0 log10 PFU)、または有しない(3.1 log10 PFU)キメラYF/JE SA14-14-2(ChimeriVax(商標)-JE)構築物30 μlをIC接種した。同数のマウスにYF-VAX(登録商標)または希釈剤を接種した。マウスを病気および死亡に関して21日間追跡した。
【0038】
哺乳期マウスモデル
妊娠中の雌性ICRマウス(タコニックファームズ)を、正確な年齢の哺乳マウスの同腹子を得るために分娩の間観察した。48時間以内に生まれた多数の同腹子からの哺乳期マウスをプールして、マウス121匹までの群の母親に無作為に再分配した。同腹子にウイルスの連続10倍希釈液20 μlをIC接種して、病気および死亡の兆候に関して21日間追跡した。ウイルス接種物を逆滴定した。ReedおよびMuench(Morris-Downesら、Vaccine 19:3877〜3884、2001)の方法によって50%致死量(LD50)値を計算した。単分散生存分布をプロットして、対数階級検定(log rank test)によって比較した。
【0039】
サルモデル
サル神経ビルレンス試験は、Levenbookら(Levenbookら、J. Biol. Stand. 15:305〜313、1987)によって記述され、YF 17Dシードウイルスの安全性試験に関するWHO規則によって規制されている(Wangら、J. Gen. Virol. 76:2749〜2755、1995)とおりに実施した。この試験はこれまで、ChimeriVax(商標)-JEワクチンの評価に適用されており、FRhL3ウイルスに対する試験結果が記述された(Monathら、Curr. Drugs-Infect. Dis. 1:37〜50、2001;Monathら、Vaccine 17:1869〜1882、1999)。試験は、シエラ・バイオメディカルインク(Sierra Biomedical Inc.、スパークス、ネバダ州)で、米国食品医薬品局の医薬品の安全性試験の実施に関する基準(GLP)規則(21 C.F.R.、58編)に従って実施した。1日目に、体重3.0〜6.5 kgのアカゲザル10匹(雄性5匹、雌性5匹)に、E279 Met→Lys変異を有するもしくは有しない非希釈ChimeriVax(商標)-JEウイルス、またはYF-VAX(登録商標)0.25 mlを脳の前頭葉に1回接種した。サルを臨床兆候に関して毎日調べて、0(兆候なし)、1(ざらざらした被毛、食欲なし)、2(高声、非活動的、遅い動作)、3(震える動作、振せん、協調障害、脚の虚弱)、および4(立つことができない、脚の麻痺、死亡)として採点した。それぞれのサルの臨床スコアは、動物の毎日のスコアの平均値であり、治療群の臨床スコアは個々の臨床スコアの数学的平均値である。ウイルス血症レベルは、2〜10日目に採取した血清を用いたVero細胞におけるプラークアッセイによって測定した。31日目に、動物を安楽死させて、等張生理食塩液-5%酢酸を還流してから中性緩衝10%ホルマリンを還流して、剖検を行った。脳および脊髄を固定して、切片にしてガロシアニンによって染色した。神経ビルレンスは、中枢神経系の様々な解剖学的形成における病変の存在および重症度によって評価した。重症度はWHOによって明記された尺度を用いてそれぞれの組織片内で採点した(Wangら、J. Gen. Virol. 76:2749〜2755、1995):
段階1:最小:小さい巣状炎症浸潤物1〜3個。少数のニューロンが変化または失われることがある。
段階2:中等度:より広範囲の巣状炎症浸潤物。ニューロンの変化または喪失は、ニューロンの3分の1を超えて罹患していることはない。
段階3:重度:ニューロンの33〜90%に罹患するニューロンの変化または喪失;中等度の巣状または散在性の炎症変化。
段階4:圧倒的:90%を超えるニューロンが変化または失われ、多様なしかし頻繁に重度の炎症性浸潤物を認める。
【0040】
病理的プロセスに最もしばしば、そして最大の重症度で関係する構造は、「標的領域(target area)」と命名されるが、野生型JEウイルスとChimeriVax(商標)-JEとを区別するそれらの構造は、「識別子領域(discriminator area)」と命名された。YF 17Dに関して既に示されているように(Levenbookら、J. Biol. Stand. 15:305〜313、1987)、黒質は「標的領域」を構成し、尾状核、淡蒼球、被殻、視床前核/視床外側核、視床内側核、および脊髄(頚膨大および腰膨大)は、「識別子領域」を構成した(Monathら、Curr. Drugs-Infect. Dis 1:37〜50、2001)。神経病理学的評価は全て、治療コードを知らない経験のある試験者1人が行った。標的領域、識別子領域、および標的+識別子領域に関する個々のスコアを、それぞれのサルについて決定し、スコアの平均値に関して試験群を比較した。他の脳幹領域(黒質の他の中脳の核;橋;髄質;および小脳)および軟髄膜も同様に調べた。神経病理スコア(標的領域、識別子領域、および標的+識別子領域)の統計学的比較は、両側のスチューデントt検定によって実施した。神経病理学的検査の他に、肝臓、脾臓、副腎、心臓、および腎臓を光学顕微鏡による病理学的変化に関して調べた。
【0041】
ゲノムの安定性
YF/JEキメラウイルスの遺伝的安定性を確認するため、およびワクチンゲノムにおいて変異に対して感受性がある「ホットスポット」を検索するため、RNAを用いて細胞をトランスフェクトして、子孫ウイルスをインビトロで連続継代し、部分的または完全なゲノムシークエンシングを低いおよび高い継代レベルで行う、多数の実験を行った。継代シリーズは、FRhLまたはVero-PM細胞におけるトランスフェクション段階と共に開始して行った。ウイルスの連続継代はT25またはT75フラスコにおいて増殖させた細胞培養において低いMOIで行った。選択された継代レベルで、ウイルスゲノムRNAの試料2個ずつを抽出して、逆転写し、PCRによって増幅して、prM-E領域または完全なゲノム配列を決定した。
【0042】
結果
経験的継代による一部位変異体ウイルスの作製
トランスフェクトしたFRhL細胞(FRhL1)から回収したキメラYF/JE SA14-14-2(ChimeriVax(商標)-JE)ウイルスを、MOI約0.001でこれらの細胞の液体培養において連続的に継代した。下記のように、4代目において、本発明者らはプラーク形態の変化を認め、これはその後ヌクレオチド1818位でのT→G転換に関連することが示され、Eタンパク質の279位でのアミノ酸変化(Met→Lys)が起こった。
【0043】
プラークを、それぞれの継代レベルで特徴を調べ、6日目に測定したその大きさに基づいて三つに分類した(大型、L〜>1.0 mm、中等度、M〜0.5-1 mm、および小型、S〜<0.5 mm)。プラークの大きさの分布は、プラーク100個を計数することによって決定した。FRhL3(継代3代目)は、Lプラーク80〜94%およびSプラーク6〜20%を含んだ。FRhL5(継代5代目)では、プラークの大きさの変化を認め、全体のプラーク集団の>85%を含むSプラークの出現を認めた(図1)。FRhL4ウイルスは中間型であり、大型のプラークは40%および小型のプラークは60%であった。FRhL5ウイルスの完全なゲノムシークエンシングにより、E279での一変異が証明された。FRhL5キメラの完全なゲノムコンセンサス配列は、コドンの不均一性を注意深く調べると、これがウイルスに存在する唯一の検出可能な変異であったことが確認された。FRhL3ウイルスの完全なゲノムコンセンサス配列は、親YF/JESA14-14-2キメラウイルスと比較して検出可能な変異を明らかにしなかった(Arroyoら、J. Virol. 75:934〜942、2001)(表1)。
【0044】
大型、中間型、および小型のプラーク10個をFRhL3、FRhL4、およびFRhL5から採取して、FRhL細胞の液体培養での継代によって増幅した。増幅後、上清の液体をVero細胞上でプラークを形成させた。FRhL3からSプラーク表現型を単離しようとする試みは失敗し、単離された全てのLまたはSサイズのプラークはFRhL細胞における増幅1ラウンド後に多数のLプラークを産生した。プラークの60%が小さいサイズである次の継代時(FRhL4)、FRhL細胞の増幅によってこれらのプラークを単離することができた。FRhL5では、プラークの大多数(85〜99%)はサイズが小さく、LおよびSの個々のプラークの増幅によって多数のSサイズが得られた。FRhL3からのSおよびLプラーク表現型のprM-E遺伝子のシークエンシングから、ChimeriVax(商標)-JEの構築のために用いられる親SA14-14-2遺伝子と同一の配列が明らかになったが、FRhL4またはFRhL5ウイルスから単離したSプラークはE279での変異(Met→Lys)を示した。
【0045】
動物のプロトコール
マウスおよびヒト以外の霊長類を含む試験は全て、実験動物の飼育および使用に関する基準に記述されるUSDA動物福祉条例(9 C.F.R.、1〜3編)に従って実施した。
【0046】
離乳マウスに対するビルレンス
4週齢の雌性ICRマウス10匹に、異なる実験においてFRhL3、FRhL4、およびFRhL5ウイルスの3.0 log10 PFUをIC接種した;それぞれの試験において、マウス10匹に、市販の黄熱病ワクチン(YF-VAX(登録商標)、アベンティス・パスツール、スイフトウォーター、ペンシルバニア州)の同等量(約3.3 log10 PFU)を与えた。キメラウイルスを接種したマウスはいずれも病気の兆候または死亡を示さなかったのに対し、YF-VAX(登録商標)を接種した対照マウスの70〜100%が麻痺または死亡を示した。もう一つの実験において、マウス8匹にFRhL5(3.1 log10 PFU)またはYF/JE一部位E279復帰変異体(4.0 log10PFU)をIC接種して、マウス9匹にYF-VAX(登録商標)(2.3 log10 PFU)を接種した。キメラ構築物を接種したマウスはいずれも病気にならなかったが、YF-VAX(登録商標)を接種したマウス9匹中6匹(67%)が死亡した。
【0047】
哺乳期マウスに対するビルレンス
E279変異を有するおよび有しないYF/JESA14-14-2キメラウイルスを哺乳期マウスに段階的な用量でIC接種する、という異なる二つの実験を行った(表2)。これらの実験においてYF-VAX(登録商標)を参照対照として用いた。LD50および平均生存時間(average survival time:AST)を、それぞれのウイルスに関して決定した。
【0048】
8.6日齢のマウスを用いる第一の実験において、E279での一部位復帰変異(Met→Lys)を含むFRhL5ウイルスは、神経ビルレントであり、log10 LD50は、1.64であったが、この変異を欠損するFRhL3ウイルスは、ほぼ無毒であり、最高用量群でもマウス10匹中1匹が死にかかっているに過ぎなかった(表2)。最高用量(約3 log10 PFU)では、FRhL5ウイルスのAST(10.3日)は、FRhL3ウイルス(15日)より短かった。
【0049】
次に、E遺伝子における一部位変異が哺乳期マウスにおける神経ビルレンス試験によって検出可能であることを統計学的に確認するために、第二の実験を行った。この実験において、4日齢の非近交系マウスに、ChimeriVax(商標)-JE FRhL3(変異なし)、ChimeriVax(商標)-JE FRhL5(E279 Met→Lys)、または一変異E279(Met→Lys)を部位特異的変異誘発(Arroyoら、J. Virol. 75:934〜942、2001)によって導入したYF/JEキメラの段階的用量をIC接種した。E279変異を含む二つのウイルスのLD50は、変異を有しないFRhL3構築物より>10倍小さく(表2)、このことは、E279 Met→Lys変異が、キメラウイルスの神経ビルレンスを増加させたことを示している。ウイルス間の生存分布には統計学的に有意差を認めた(図2)。最低用量(〜0.7 log10 PFU)では、YF/JEキメラウイルスは、YF-VAX(登録商標)より有意にビルレンスが低かった(対数階数検定p<0.0001)。E279 Met→Lys変異を有するウイルスは、変異を有しないFRhL3とは異なる類似の生存曲線を示したが、差は、統計学的有意水準に達しなかった(対数階級検定、p=0.1216)。しかし、より高用量(〜1.7および〜2.7 log10 PFU)では、E279変異体ウイルスの生存分布は、FRhL3ウイルスとは有意に異なった。
【0050】
ウイルス量による死亡率の分析は、類似の勾配の平行な回帰曲線を示した(図3)。FRhL5ウイルスは、FRhL3より18.52倍強力(ビルレント)であった(95%信頼限界3.65および124.44、p<0.0001)。
【0051】
サルの神経ビルレンス試験
ChimeriVax(商標)-JE FRhL3またはFRhL5ウイルスを接種したサル20匹はいずれも脳炎の兆候を発症しなかったが、YF-VAX(登録商標)を接種したサル10匹中4匹は、15〜29日のあいだに段階3の兆候(振せん)を示し、これは発症から6日以内に消失した。臨床スコアの平均値および最高平均値は、YF-VAX(登録商標)群では二つのChimeriVax(商標)-JE群より有意に高かった。E279変異を有するおよび有しないChimeriVax(商標)-JEウイルスを接種した群の臨床スコアには差を認めなかった(表3)。
【0052】
実験期間中、治療群の体重変化に差を認めなかった。病理検査では、肝臓、脾臓、腎臓、心臓、または副腎にウイルスに帰因できる変化を示さず、治療群に差を認めなかった。
【0053】
脳および脊髄の組織病理試験は、YF-VAX(登録商標)を接種したサルでは、ChimeriVax(商標)-JEウイルスFRhL3およびFRhL5を接種したサルより有意に高い病変スコアを示した(表3)。YF-VAX(登録商標)に関して複合標的+識別子スコア(±SD)は、1.17(±0.47)であった。ChimeriVax(商標)-JE FRhL3(E279 Met)およびFRhL5(E279 Lys)のスコアはそれぞれ、0.29(±0.20)(YF-VAX(登録商標)に対してp=0.00014)および0.54(±0.28)(YF-VAX(登録商標)に対してp=0.00248)であった。
【0054】
E279でMet→Lys復帰変異を含むChimeriVax(商標)-JE FRhL5に関する識別子領域スコアおよび複合標的+識別子領域スコアは、ChimeriVax(商標)-JE FRhL3の対応するスコアより有意に高かった(表3)。
【0055】
YF-VAX(登録商標)を接種したサルの主症状は振せんであり、これは小脳、視床核、または淡蒼球の病変を反映する可能性がある。小脳皮質、小脳歯状核、または他の小脳核では明白な組織学的病変を認めなかったが、炎症病変は、陽性の全てのサルの視床核および淡蒼球に存在した。
【0056】
興味深いことに、ウイルス血症によって反映されるように、E279復帰変異体の神経ビルレンスと向臓器性とのあいだには逆相関が存在した。WHOのサルの神経ビルレンス試験には、向臓器性の測定手段としてウイルス血症の定量が含まれる(世界保健機構、「Requirement for yellow fever Vaccine.」、Requirements for Biological Substances. 3号、1995年改訂、WHO Tech. Rep. Ser. 872、別冊2、ジュネーブ:WHO、31〜68頁、1998)。これは、脳内接種によって、神経外組織の即時播種が起こるという知見に基づくと合理的である(Theiler、「The Virus」、Strode(編)、Yellow Fever、マグローヒル、ニューヨーク、ニューヨーク州、46〜136頁、1951)。YF-VAX(登録商標)を接種したサル10匹中9匹(90%)およびChimeriVax(商標)-JE FRhL3を接種したサル10匹中8匹(80%)がIC接種後ウイルス血症となった。ウイルス血症レベルは、YF-VAX(登録商標)群ではChimeriVax(商標)-JE FRhL3群より高い傾向があり、4日目に有意に達した。対照的に、FRhL5ウイルス(E279 Met→Lys)を接種した動物の2匹(20%)のみが、検出可能な低レベルウイルス血症を示し(表4)、平均ウイルス血症は、3日および4日では(そして5日目でもほぼ有意であった)FRhL3ウイルスより有意に低かった。このように、FRhL5復帰変異体ウイルスは、神経ビルレンスの増加を示したが、FRhL3ウイルスと比較すると向臓器性の低下を示した。ChimeriVax(商標)-JE FRhL3およびFRhL5を接種したサルからの血清を、プラークの大きさの変種の有無に関して調べた。FRhL3を接種したサルの血清ではLプラークのみを認めたが、FRhL5を接種したサルの血中のウイルスは、適当なSプラーク形態を示した。
【0057】
免疫原性
三つ全ての群における全てのサルは、試料を採取できなかったために試験できなかった動物1匹(FRhL5、RAK22F)を除き、黄熱病(YF-VAX(登録商標)群)またはChimeriVax(商標)-JE(ChimeriVax(商標)群)の接種後31日目に同種中和抗体を産生した。しかし、幾何学的平均抗体力価(geometric mean antibody titer:GMT)は、FRhL3を接種したサル(GMT 501)ではFRhL5を接種したサル(GMT 169、p=0.0386、t検定)より有意に高かった。
【0058】
ゲノムの安定性
ChimeriVax(商標)-JE RNAの異なる二つのトランスフェクションを、二つの細胞株、FRhLおよびVeroのそれぞれにおいて実施し、子孫ウイルスを図4に示すように継代した。FRhL継代シリーズBでは、上記のようにFRhL4でE279復帰変異体が出現した。興味深いことに、FRhL細胞における異なる継代シリーズ(A)によっても、隣接する残基であるE281で変異(Thr→Lys)が出現し、Vero細胞における継代シリーズの1つでは、E271でVal→Lysが生じた。Vero細胞において選択された他の変異は、ドメインIIIまたは膜貫通ドメイン内に存在した。図2に示した変異を含むウイルスを全て、成体マウスの神経ビルレンス試験において評価して、非ビルレントであることが判明した。
【0059】
II.ヒンジ領域変異を含む黄熱病/デングキメラ
概要
黄熱病ウイルス(株17D)骨格(Guirakhooら、J. Virol. 75:7290〜7304、2001)に挿入したデング1型ウイルスの野生型株[1980年にタイで単離された(Puo359)]のprME遺伝子を用いて、ChimeriVax(商標)-DEN1ウイルスを作製した。Vero細胞においてChimeriVax(商標)-DEN1のプレマスターシードウイルスを産生する間、1590位でAからGへの一ヌクレオチド変化を含み、それによってエンベロープタンパク質Eの204位でKからRへのアミノ酸置換が起こるクローン(クローンE)を単離してプラークを精製した。ウイルスは、皮下経路によってサルに接種した場合、4日齢の哺乳期マウスに関して弱毒化を示し、その親(非変異体)ウイルスより低いウイルス血症を示した。変異を有しないもう一つのクローン(クローンJ-2)を選択して、プラークを精製し、これを用いて継代7回目(P7)にPMSウイルス保存液を作製した。このウイルスは、Vero細胞においてP10まで実験条件で継代したところ、如何なる変異も受けなかった。しかし、PMS保存液からマスターシードウイルス(P8)を産生するcGMP条件で1回継代すると、1590位で同じ変異(A→G)が出現した。クローンEと同様に、P8ウイルスは、P7ウイルスより大きいプラークを産生し、哺乳期マウスに関して弱毒化された。このように、全てのデングウイルスにおいて保存されているE204位は、ChimeriVax(商標)-DEN1(血清型1〜4)ウイルスにおいて、ヒトに関するワクチン候補物質の弱毒化と免疫原性とのバランスを得るために操作することができる。
【0060】
結果および考察
ChimeriVax-DEN1ウイルスのプレマスターシードの産生
DEN1に関するプラーク精製プレマスターシード(Pre-Master Seed:PMS)ウイルスの産生は、以下のように実施した。プラークの精製は、RNAトランスフェクション後継代2(P2)のウイルスで開始した。二つのPMSウイルス(P2でクローン化されていないおよびP7でクローン化された)は、継代140でアベンティスから得られた認定された細胞バンクを用いて、継代142でアベンティスVero LS10細胞において産生された。プラーク精製の3ラウンド後にクローン化されたウイルスを得て、変異がないことを確認するために完全なゲノムの全域についてシークエンシングした。一般的に、クローンがアミノ酸置換を含む場合、これは、PMSウイルス候補物質として用いなかった。他のクローンを調製して、変異を有しないクローンが同定されるまでシークエンシングした後、これにプラーク精製およびシークエンシングを行った。
【0061】
シークエンシング
シークエンシングに関して、ウイルスRNAをTRI-試薬LS(モレキュラーリサーチセンター(Molecular Research Center))またはTrizol LS(ギブコ(Gibco)からの類似の試薬)を用いて、それぞれの個々のウイルス試料(一般的に0.25 ml)から抽出して、RNアーゼ不含水0.20 mlに溶解した。抽出されたRNAをRT-PCRの鋳型として使用した。ゲノム全体を、Titan One-Tube RT-PCRキット(ロシュ(Roche))によって、長さが2〜3 kbのオーバーラップしたアンプリコン5個(断片I〜V)において増幅した。RT-PCR断片は、QIA quick PCR精製キット(キアゲン)を用いて精製するか、またはQIA quickゲル抽出キット(キアゲン)を用いてアガロースゲル精製した。シークエンシング反応は、CEQ Dyeターミネータサイクルシークエンシングキット(ベックマン(Beckman))、ならびにアンプリコンの双方の鎖を読み取るためにプラス方向およびマイナス方向の双方のYF特異的オリゴヌクレオチドプライマーのコレクションを用いて行った。シークエンシング反応産物は、DyeEx Spinキット(キアゲン)を用いて精製し、CEQ2000自動シークエンサー(ベックマン・コールター(Beckman Coulter))によって分離した。生成したシークエンシングデータを、Sequencher 3.0(ジーンコーズ(GeneCodes))ソフトウェアによって整列させて分析した。ヌクレオチドの不均一性は、不均一なシグナルが、プラス鎖およびマイナス鎖のシークエンシング反応の双方を表すクロマトグラム全てに認められた場合に限って登録した。
【0062】
表5に示すように、非クローン化P2ウイルスは、如何なる変異も有しなかったが、P5までにエンベロープタンパク質E内にアミノ酸5個の変異を獲得した。興味深いことに、P15で安定な(さらに選択した)唯一の変異は204位の変異であった。非クローン化P2ウイルス(P15まで)から開始する繰り返し継代実験によって、E204位での同じ変異(KからRへ)がVero細胞において選択されたことが判明した。
【0063】
ChimeriVax(商標)-DEN1(A-J)の異なるクローンを直接のプラークによる精製によって選択して、様々な段階でシークエンシングして、変異を同定した。最も頻繁な変異は、E251(V>F)置換であり、これはクローンA、B、DおよびGにおいて起こり、これに次いでE204(K>R)であり、これはクローンEおよびFにおいて認められると共に非クローン化ウイルスにおいても認められた。E311(E>D)での変異は、クローンCおよびDに限って認められた。興味深いことに、クローンJは、P10まで変異を有しなかった。しかし、このウイルスのマスターシード(Master Seed:MS)をcGMP製造下でP7(PMS)から産生すると、E204での同じ置換が再度出現した(わずか継代1回後に)。P20ウイルスをシークエンシングしたところ、この変異は安定であった(表5)。E204変異を含むクローンは、非変異体ウイルス(直径〜1 mm)より大きいプラーク(直径〜2 mm)を産生した(表9)。Vero P4でのこのウイルスの当初の構築物(既にサルにおいて低レベルのウイルス血症を引き起こすことが示されている)も同様に同じE204変異を含んだ(Guirakhooら、J. Virol. 75:7290〜7304、2001)。ウイルスの生物学におけるこの変異の役割は、a)当初の構築物が、E204変異の他にM39でさらなる変異(アミノ酸のHからRへの変化を引き起こすヌクレオチドAからGへの変化)を含むため;b)当初の構築物の神経ビルレンスが、ChimeriVax(商標)-DEN1ウイルスまたは他の任意のChimeriVax(商標)-DENウイルスの弱毒化を明らかにできるほど感度がよくない3〜4週齢のマウスに限って評価されていたため(Guirakhooら、J. Virol. 75:7290〜7304、2001);ならびにc)ウイルスの神経ビルレンスまたは向臓器性の表現型における変化を決定するための比較に利用できるChimeriVax(商標)-DEN1ウイルス(変異を有しない)がないため、これまで理解できなかった。
【0064】
キメラウイルスは、3〜4週齢のマウスにおいて弱毒化されるため、本発明者らは、異なるクローンの神経ビルレンスにおける微妙な差を調べるために、より感度の高い試験(4〜8日齢の哺乳期マウスを用いて)を開発した。
【0065】
マウスの神経ビルレンス
3〜4週齢のマウスを用いたマウス神経ビルレンス試験は、キメラの神経ビルレンスがChimeriVax(商標)ウイルスを構築するために用いたウイルスベクター(YF-VAX(登録商標))の神経ビルレンスを確実に超えないようにリリーステストとして行った。これまで構築された全てのキメラ(変異を有するまたは有しない)は、成体マウス(3〜4週齢)に関してビルレントではないため、これらの動物は、一アミノ酸置換に関連したキメラの神経ビルレンスにおける微妙な差を同定するために用いることができない。対照的に、4〜10日齢の哺乳期のマウスは、ビルレンスに関与するキメラのゲノムにおける軽微な変化に対してより感受性が高い。ChimeriVax(商標)-DENウイルスの発達の過程において。四つ全てのキメラのゲノムの全域についていくつかの変異を認めた(Guirakhooら、J. Virol. 75:7290〜7304、2001)。これらの変異は、全てのキメラにおいて修正され、再構築されたウイルス(DEN1キメラを除く)は、サルにおいて安全性および免疫原性に関して首尾よく評価された。DEN1プラスミドの不安定性のために、このキメラ(変異を有しない)の再構築は、時間通りに行うことができず、したがって、サルにおいて試験することができなかった。DEN1キメラに関するPMSを産生するためのプラーク精製のあいだ、異なるクローン10個(A-J)をシークエンシングして、変異を有しないクローンを同定した(表5)。一つ(J)を除く全てのクローンが、エンベロープタンパク質E内に1または2個の変異を含んだ。4日齢の哺乳期マウスを用いて、DEN1キメラの代表的なクローンの神経ビルレンスを評価した(表6)。動物に、各キメラDEN1ウイルスの非希釈、1:10、1:100の希釈液0.02 mlをi.c.経路によって2回接種して、21日間観察した。実際の用量は、プラークアッセイにおける接種量の逆滴定によって決定した。表6に示すように、クローンEの属全てのクローンが、4日齢のマウスに関して類似の神経ビルレンスを示し、平均生存時間(AST)は、YF-VAX(登録商標)より有意に短かった(JMPソフトウェア、バージョン4.0.2を用いてp<0.001)。クローンE(E204K>R)は、他の全てのDEN1クローンより有意にビルレンスが低かった(p<0.0001)。興味深いことに、当初のDEN1キメラにおいて同定された変異2個のうち1個は、E204K>R置換であった。このウイルスをサルに接種したところ、1.3日間低レベルのウイルス血症を誘導した(平均最大力価0.7 log10 PFU/ml)。如何なる変異も含まず、4日齢マウスにおいてYF-VAX(登録商標)より有意にビルレンスが低いことが示された(p=0.001)クローンJを、cGMP MSウイルスを産生するために選択した。
【0066】
サルにおけるキメラDEN1ウイルスの安全性および免疫原性(ウイルス血症および中和抗体反応)
ウイルスの向臓器性(ウイルス血症)に及ぼすE204変異の影響を、E204変異を有する(クローンE、P6)または有しない(クローンJ、P7)ChimeriVax-DEN1ウイルスをサルに接種することによって評価した。当初のDEN1キメラ(ChimeriVax-DEN1、非クローン化P4、1999、1群)は、そのウイルス血症および免疫原性プロフィールが既にサルにおいて一価または四価(他のキメラ3個と組み合わせて)ワクチン(Guirakhooら、J. Virol. 75:7290〜7304、2001)として評価されていることから、これを対照として選択した。
【0067】
アカゲザル4匹の群にDEN1キメラ5 log10 PFU/0.5 mlを接種した。ウイルス血症は、感染後2〜11日に得た血清について測定した(Vero細胞上でのプラークアッセイによって)。DEN1 PMSウイルス(3群)を接種したサルは全てウイルス血症を発症したが、クローンEまたは非クローン化ウイルスを接種したサルはそれぞれ3/4および2/4匹がウイルス血症となった(表8)。3群のサルにおけるウイルス血症の平均最高ウイルス力価(2.5 log10 PFU/ml)および持続期間(8.5日)は、1群および2群より有意に高かった(最高ウイルス力価および持続期間に関してそれぞれ、p=0.024および0.0002)。サルによってはウイルス血症を認めなかったにもかかわらず、動物は全て同種のウイルスに対して中和抗体力価を産生した。中和アッセイに関して、サルの各群からの血清を熱不活化して、同種のウイルスと混合した(各群における動物の接種に用いられている同じウイルス)。ウイルス血症のレベルと一致して、PMSウイルス(変異を有しない)を免疫したサルにおける中和抗体は、他の2群より高かった(p=0.0002)。1群のサル(エンベロープタンパク質prMおよびE上に変異2個を有するDEN1キメラによって免疫した)の血清は、最低の中和抗体力価を示し(表9)、M39変異がウイルスをさらに弱毒化する可能性があることを示している(p=0.0045)。これらの実験は、1)サルにおけるウイルス血症の程度と中和抗体レベル、および2)マウスに関するキメラの神経ビルレンスとサルにおけるウイルス血症/免疫原性(クローンEは、4日齢のマウスに関して弱毒化され、類似の日齢のマウスに関して神経ビルレンスであるPMSウイルスより低いレベルのウイルス血症および中和抗体を誘導した)とのあいだにChimeriVax(商標)-DENウイルスに関して直接相関がある可能性があることを示した。
【0068】
要約すると、ChimeriVax(商標)-DEN1のE204残基の変異は、ウイルス血症および中和反応によって示されるように、脊椎動物宿主においてDEN1キメラの複製を制御する。全てのデング血清型において保存されている(表10)この残基の変異は、ヒトデングワクチンにとって適当な所望の表現型を有するキメラの構築において用いることができる。
【0069】
(表1)ChimeriVax(商標)-JE FRhL3およびChimeriVax(商標)-JE FRhL5ウイルスのEタンパク質におけるアミノ酸の差の、JE SA 14-14-2ワクチン、野生型JE株、親SA14、およびNakayamaウイルスとの比較。ChimeriVax(商標)-JE FRhL3およびFRhL5ウイルスをゲノム全体についてシークエンシングしたところ、認められた差はE279位での変異のみであった。

1 Nitayaphan, S.ら、1990、Virology 177:541〜552
2 Ni H.ら、1994、J. Gen. Virol. 75:1505〜1510;PDK=初代培養イヌ腎臓
3 Aihara S.ら、1991、Virus Genes 5:95〜109;PHK=初代培養ハムスター腎臓
4 McAda P.ら、1987、Virology 158:348〜360
【0070】
(表2)E279で変異を有するおよび有しないChimeriVax(商標)-JEウイルスならびにYF 17Dワクチンの哺乳期マウスに関する神経ビルレンス

【0071】
(表3)ChimeriVax(商標)-JE FRhL3、FRhL5、または黄熱病17D(YF-VAX(商標))をIC接種して接種後30日で剖検したサルの神経病理学的評価

1 逆滴定
2 臨床スコア:0=兆候なし;1=ざらざらした外皮、食欲なし;2=高声、非活動的、遅い動作;3=振せん、協調障害、震える動作、脚の虚弱、4=立つことができない、麻痺、瀕死または死亡。任意の日での最高スコアと30日の観察期間の平均スコアを示す。
3 黒質
4 線条体および視床、右および左側(尾状核、淡蒼球、被殻、視床前核/視床内側核、視床内側核;脊髄の頚膨大および腰膨大(6レベル))
5 YF-VAX(登録商標)およびChimeriVax(商標)-JEウイルスを比較する両側の異分数スチューデントt検定
6 行っていない
【0072】
(表4)YF-VAX(登録商標)またはChimeriVax(商標)-JE FRhL3およびFRhL5ウイルスをIC接種したアカゲザルのウイルス血症(接種用量に関しては表3を参照されたい)
YF-VAX(登録商標)対照

ChimeriVax(商標)-JE FRhL3 E279 Met

ChimeriVax(商標)-JE FRhL5 E279 Lys

1 -=ウイルス血症を検出できない;ほとんどの試験において、未希釈(neat)の血清を試験して、カットオフは1.0 log10PFU/mlであった:場合によっては、未希釈の血清は細胞に対して毒性を示し、2倍または5倍希釈した血清を用いた(カットオフ1.3または1.7 log10PFU/ml)。
2 平均力価および標準偏差を計算する目的の場合、<1.0の代わりに0.7を用い、<1.3の代わりに1.0を用い、そして<1.7の代わりに1.4を用いた。
3 両側のt検定によってYF-VAX(登録商標)と比較。
4 両側のt検定によってChimeriVax(商標)-JE FRhL3と比較。
【0073】
(表5)クローン化していないChimeriVax-DEN1ウイルスおよびその様々なクローンのヌクレオチドおよびアミノ酸配列ならびにそのインビトロ(Vero継代)遺伝子安定性

a;ゲノムの開始から。b;表記のタンパク質のN-末端から;Riceら、Science 229:726〜733、1985に従う番号づけ。204変異を有するクローンを太字で示す。
【0074】
(表6)4日齢の哺乳期マウスにおけるキメラDEN1ウイルスの異なるクローンの神経ビルレンス

【0075】
(表7)アカゲザル、ChimeriVax(商標)-DEN1ウイルス、Sierra Biomedical NON-GLP試験における免疫原性試験

*:1群サル4匹(雄性2匹/雌性2匹)
**:Guirakhooら、2001
【0076】
(表8)ChimeriVax-DEN1ウイルスの異なるクローン5 log10PFU(s.c.)によって免疫したサルにおけるウイルス血症

*:1日目にサルを免疫した。
**:<1.0 log10PFU/ml
【0077】
(表9)ChimeriVax-DEN1ウイルスの異なるクローン5 log10PFU(s.c.)によって免疫したサルにおけるウイルス血症および中和抗体力価(50%)

【0078】
(表10)ChimeriVax(商標)-DEN1-4 Eタンパク質における204残基の位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラビウイルスの向臓器性を低下させるヒンジ領域変異を含むフラビウイルス。
【請求項2】
フラビウイルスが、黄熱病ウイルスワクチン株;デングウイルス、西ナイルウイルス、ヴェッセルスブロンウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、およびオムスク出血熱ウイルスからなる群より選択される向臓器性フラビウイルス;またはキメラフラビウイルスを含む、請求項1記載のフラビウイルス。
【請求項3】
キメラフラビウイルスが、第一のフラビウイルスのカプシドおよび非構造タンパク質、ならびにキメラフラビウイルスの向臓器性を低下させるエンベロープタンパク質の変異を含む第二のフラビウイルスのプレ膜およびエンベロープタンパク質を含む、請求項2記載のフラビウイルス。
【請求項4】
第二のフラビウイルスが日本脳炎ウイルスまたはデングウイルスである、請求項3記載のフラビウイルス。
【請求項5】
デングウイルスが、デング-1、デング-2、デング-3、またはデング-4ウイルスである、請求項4記載のフラビウイルス。
【請求項6】
変異がデングエンベロープのアミノ酸202位または204位に存在する、請求項4記載のフラビウイルス。
【請求項7】
変異がリジンの置換である、請求項6記載のフラビウイルス。
【請求項8】
リジンがアルギニンに置換されている、請求項7記載のフラビウイルス。
【請求項9】
請求項1記載のフラビウイルスと薬学的に許容される担体または希釈剤とを含むワクチン組成物。
【請求項10】
患者においてフラビウイルスに対する免疫応答を誘導するための請求項9記載のワクチン組成物の使用。
【請求項11】
患者がフラビウイルス感染症を有しないが発症のリスクを有する、請求項10記載の使用。
【請求項12】
患者がフラビウイルス感染症を有する、請求項10記載の使用。
【請求項13】
向臓器性の低下が起こる変異をフラビウイルスに導入することを含む、フラビウイルスワクチンを作製する方法。
【請求項14】
以下の段階を含む、フラビウイルスワクチン候補物質を同定する方法:
フラビウイルスのヒンジ領域に変異を導入する段階;および
ヒンジ領域変異を含むフラビウイルスが、変異を有しないフラビウイルスと比較して、向臓器性が低下したか否かを決定する段階。
【請求項15】
フラビウイルスが黄熱病ウイルスまたはキメラフラビウイルスである、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−268804(P2010−268804A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152899(P2010−152899)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【分割の表示】特願2004−510692(P2004−510692)の分割
【原出願日】平成15年1月15日(2003.1.15)
【出願人】(503389389)サノフィ パスツール バイオロジクス カンパニー (17)
【Fターム(参考)】