説明

フラーレン構造物および炭素材料につながれたこのような構造物

フラーレン構造物は、C36を除いて、C60より小さい分子量を有するフラーレン、およびC60より大きい分子量を有するフラーレンを含む。例として、フラーレンC50、フラーレンC58、フラーレンC130およびフラーレンC176が挙げられる。炭素表面に化学的に結合されたフラーレン構造物はまた、フラーレンを炭素材料につなげるための方法とともに開示される。この方法は、官能基化フラーレンを、炭素材料を含む液体懸濁液に添加する工程、この懸濁液を乾燥させて、粉末を生成する工程、およびこの粉末を熱処理する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府は、エネルギー省助成金番号DE−FG02−85ER45179および助成金番号DE−FG−0284ER13282に従って、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
本発明は、フラーレン構造物および炭素材料につながれたこのような構造物に関する。
【背景技術】
【0003】
フラーレン構造物は、フラーレンおよびナノチューブのような閉じたかごの化合物を含む炭素化合物である。発見された最初のフラーレンの1つは、隣接する炭素の五角形環および六角形環から構成される60個の炭素原子を含むバージョン(C60)であった。C36、C70およびC90のような他のフラーレンが観察され、分析されてきた。C60より小さいフラーレン構造物およびC60より大きいフラーレン構造物の両方が、例えば、燃焼で生成したすす中に存在することが推測されている。
【0004】
フラーレン構造物が小さく(C60は、約7Åの直径を有する)、代表的に、すす中において非常に低濃度で存在するので、それらの存在は、検出が困難である。さらに、フラーレンは、しばしば、合成プロセスにおいて濃縮に用いられる材料に非常に強力に結合するかまたはそのような材料内にあり、化学分析のために容易に除去することが妨げられているので、検出し、特徴付けることが困難である。その例は、C60より小さいフラーレンである。これらは全て、それらの構造に隣接する五角形を必ず含み、非常に湾曲し、歪みがあり、従って、より相互作用しやすく、強力な結合を導く。同様に、より大きなフラーレンはまた、他の構造物に強力に結合し得る。なぜなら、より大きなフラーレンのサイズは、広範囲な接触を促進し、それによって、結合相互作用の機会を増加するからである。
【0005】
カーボンブラック顔料に結合したフラーレンが、例えば、インクジェットプリンターにおける使用のための改善されたインクを作製するのに有用であることが提案されている。特許文献1(1999年5月25日公開)を参照のこと。しかし、この参考文献は、カーボンブラックに対するフラーレンの化学結合を確立していない。
【特許文献1】特開平11−140342号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの局面において、本発明は、C36を除いて、C60より小さい分子量を有するフラーレンを含む。別の局面において、本発明は、フラーレンC50、C58、C130、およびC176を含む。別の局面において、本発明は、単離された状態の上記フラーレンである。なお別の局面において、本発明は、C60より小さい直径を有するが、3次元支持マトリクスに会合していない単層のカーボンナノチューブである。なお別の局面において、本発明は、炭素材料に化学結合したフラーレンを含むフラーレン構造物である。
【0007】
なお別の局面において、本発明は、フラーレンを炭素材料につなぐための方法であり、官能基化フラーレンを、炭素材料を含む液体懸濁液に添加する工程を包含する。この懸濁液は、粉末を生成するように乾燥され、この粉末は、熱処理されて、炭素材料に化学的に結合したフラーレンを生成する。本発明のこの局面の1つの実施形態において、この官能基化フラーレンは、ジクロロメタノ[60]フラーレンである。この方法は、この乾燥粉末を不活性ガスで満たした管中に密閉し、続いて、この管を炉内で熱処理するさらなる工程を包含し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(好ましい実施形態の説明)
上で考察されるように、フラーレンの検出は、それらの濃度が低く、しばしば、それらを合成プロセスにおいて濃縮に用いられる材料に密接に結合し、化学分析のために取り出すことを困難にするので、困難である。本明細書中に開示される本発明の組成物は、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)を使用して観察された。この技術は、フラーレンの検出および分析を、従来の化学分析によって得られ得る検出限界より下げるように拡張するための手段を提供する。例えば、およそC60およびC70のフラーレンのサイズの円形物体は、フラーレンを含むことが周知の特定の低圧ベンゼン/酸素フレームからだけではなく、フラーレンが従来技術の化学分析によって検出可能でなかった大気圧エチレン/空気フレームからのすすのHRTEM画像において観察され得る。Grieco WJ,Howard JB,Rainey LC,Vander Sande JB.Carbon 2000;38:597。この参考文献の内容および以下に引用される参考文献は全て、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0009】
(実施例1)
3つの異なるサンプルをHRTEMによる研究のために調製した。第1のサンプルは、トルエン溶液中に懸濁させた純粋なカーボンブラック(Regal 330;Cabot Corp.)であった。他の2つのサンプルを、特定の量のジクロロメタノ[60]フラーレンを添加したカーボンブラック−トルエン溶液の一部から調製した。この官能基化フラーレンにおいて、官能基の炭素原子は、フラーレン分子の2つの炭素原子に架橋している。激しい混合により、均一な分散を確実にした後に、トルエンをエバポレートして、得られた乾燥粉末混交物をアルゴン充填ガラス管内に密封した。次いで、ユニット全体を、管状炉(Lindberg Model 55036)中で4.5時間、約400℃で熱処理し、次いで冷却した。この物質を管から取り出し、2つの部分に分けた。これらの2つのサンプルのうちの一方は、さらに処理せず、従って、フラーレンにつながれたカーボンブラックおよびつながれていないままの任意のフラーレンからなっていた。このサンプルを抽出前物と呼ぶ。これらの2つのサンプルのうちの他方を、トルエン中13分間の超音波処理、続く、任意のつながれていないフラーレンを除去するための0.45μmナイロンフィルターでの真空濾過により抽出した。従って、このサンプル(抽出後物と呼ぶ)は、つながれたフラーレンのみを有するカーボンブラックからなった。
【0010】
これらのサンプルのそれぞれの希釈懸濁液を、レース状カーボングリッド上に堆積させ、トルエンをエバポレートさせた。サンプルを、200kVで作動するJEOL2010電子顕微鏡で分析した。得られた画像を、フラーレン型構造(すなわち、完全に閉じたかごであるように見える構造)の存在について分析した。各画像において、周長当たりのフラーレン型構造の数(直線濃度(linear concentration)と呼ぶ)を決定し、これらの構造のそれぞれの直径を測定した。次いで、データを特定のサンプルの画像全てにわたって集めて、フラーレン直線濃度データおよびフラーレンサイズ分布データを得た。
【0011】
図1および2は、異なるカーボンブラックサンプルから分析された画像を示す2つの画像を示す。図1は、純粋なカーボンブラックから得られた粒子の画像であり、一方、図2は、抽出後サンプルからの粒子を示す。
【0012】
図2の黒のダッシュは、フラーレンであると思われる構造の観察者の加えた印であり、濃度およびサイズデータに含まれる。図1において黒のダッシュが無いことは、カーボンブラックサンプル中にフラーレン型構造が無いことを強調する。周囲のみがこの構造の観察および正確な測定を可能にするのに十分な薄さであるので、粒子の周囲に沿った炭素構造のみが分析された。Hebgen P,Goel A,Howard JB,Rainey LC,Vander Sande JB.Proc Combust Inst 2000;28:1397。図2の挿入画の手書きの黒線は、分析された領域と粒子内部との間の境界を示し、これらの厚みは、積み重なった炭素層が多すぎて、正確な構造同定が可能でない。境界の内側の粒子内部の認知された構造が、実際に単一の構造であるか、または2つ以上の異なる構造の重ね合わせの結果であるかは不明である。境界の外側の物質のみが、解釈可能な観察を確実にするのに十分な薄さであった。定性的に、この画像は、つながれたフラーレンをドープしたカーボンブラックが、純粋なカーボンブラック粒子よりも多くのフラーレン型構造を有することを非常に明確に示す。
【0013】
同じ画像の定量的分析は、定性的観察を補強する。図3は、定量的分析を実行するために使用される方法を示す。図2の挿入画の5つの濃縮した構造に対応する、この絵から、垂直高さおよび水平高さ(直径)の両方を測定し、次いで、平均化することがわかり得る。次いで、この平均化直径を、サイズ分布の目的で使用した。表1は、フラーレン濃度データの要旨を与える。
【0014】
【表1】

表1から、つながれたフラーレンを含む両方のサンプルが、純粋なカーボンブラックサンプル中に存在するようであるフラーレンの濃度よりもほぼ一桁大きい、フラーレン濃度を有することが分かる。抽出後サンプルが、抽出前サンプルよりもわずかに低い濃度を有することに注目するべきである。これは、官能基化フラーレンの100%未満がカーボンブラックと反応し、いくらかのつながれていないフラーレンが抽出の間に分離したことが予期されるので、驚くことではない。
【0015】
抽出前サンプルおよび抽出後サンプルの両方が実験に添加した官能基化フラーレンの全量に対応する濃度よりも低い濃度を示すことが注目されるべきである。利用されたカーボンブラックおよび官能基化フラーレンの相対量を考慮し、カーボンブラックの表面上のフラーレンの均一な分布を仮定すると、フラーレン分子の計算面積濃度は、0.25分子/nmである。フラーレンの対応する直線濃度は、0.50分子/nmである。つながれたサンプルの両方が、理論値の約20%の直線濃度を生じ、これは、フラーレンの多くが観察されないことを示す。この結果は、カーボンブラック粒子状のフラーレンの発見および観察が困難であるので、驚くことではない。
【0016】
本明細書中に開示される条件と類似の実験条件において、Coxらは、穴のある炭素フィルム上に支持されたMgO結晶上にC60を堆積させた。Cox DM,Behal S,Disko M,Gorun SM,Greaney M,Hsu CS,Kollin EB,Millar J,Robbins J,Robbins W,Sherwood RD,Tindall P. J Am Chem Soc 1991;113:2940。約0.8nmの直径を有する円形コントラストパターン(C60と一致する)を、MgO結晶上に観察し、支持フィルムの穴の上に掛かる結晶の縁部上で最も明瞭に見られ得る。円形画像は、C60堆積の無いMgOでは見られなかった。Coxらの研究および上に提示したデータは、例えば、図2において観察されたコントラストが、単一のC60分子と一致することを確立する。図2のコントラストが図8のコントラスト(これは、C60分子を示すことが既知である)と正確に類似することが注目されるべきである。C60をドープしたサンプル中の観察されたフラーレン型構造の一桁の増加は、C60分子が観察されているという結論を補強する。これと定性的観察と組み合わせると、フラーレンがカーボンブラック表面につながれており、さらに、これらのフラーレンがHRTEMで観察可能であることを非常に強く示す。
【0017】
それにもかかわらず、観察において放射線損傷および/またはビーム加熱の影響を減少させることを注意しなければならない。このような影響としては、サンプルの分解、より小さな構造物のより大きな構造物内への組み込み、および分子の移動が挙げられる。これら3つのシナリオ全てが、HRTEM画像化の間に観察されており、全て、フラーレン観察の人工的な低い周波数に寄与し得る。例えば、本発明者らは、先の報告に従って、いくつかの観察条件下でカーボンブラックの「後ろ」に移動するC60および他のフラーレン分子を観察した。Fuller T,Banhart F.Chem Phys Lett 1996;254:372。
【0018】
全ての可能な焦点距離において粒子状すすの領域の画像を分析することを注意しなければならない。機器の光学軸に沿ったすす粒子の位置は、コントラストおよび画像特徴において変動を生じ、これは、いくつかの構造を解釈不可能にする。この影響は、上で考察される他の影響に起因して誤差を大きくし、再び、フラーレン構造の首尾良い観察を抑制する。完全な焦点シリーズは、この誤差の源を軽減するのに役立ち得る。
【0019】
これらの画像のアーチファクトの影響を最小にするために注意するものの、いくらかの誤差が、依然として、画像化結果内に組み込まれる。フラーレン構造観察におけるこの減少は、上記のように、観察がなぜ予期される理論値の20%のみを説明するかについての妥当な説明を与える。通常、20%の一致は懸念を引き起こすが、本発明者らがつながれたフラーレンを有するフラーレン構造の一桁の増加を観察したという事実を考えると、本発明者らの結論は、弱められない。
【0020】
本明細書中に開示される方法は、炭素表面に化学的に結合することによって、フラーレン分子をつなげる。当業者は、本明細書中に開示される方法が、フラーレンを、同じまたは他のフラーレンまたはフラーレン誘導体(内包フラーレンおよび金属化フラーレン、単層もしくは多層カーボンナノチューブを含むナノ構造、ネスト化もしくはタマネギ構造、または球形、楕円形、三角形もしくは他の形状、種々の曲率半径の単層もしくは多層の開いたかご構造、フラーレンすすおよびフラーレンブラックを含む);ならびにグラファイトカーボンの任意の形態;ダイアモンドの任意の形態;ならびにダイアモンド様カーボン;ならびにアモルファスカーボンの任意の形態につなげるために使用され得ることを理解する。
【0021】
当業者は、さらに、本明細書中に開示される方法が、つながれたフラーレンが、官能基化フラーレンを与え、そしてつながれる表面または材料に、酸性、塩基性、疎水性、親水性、酸化性、還元性、ラジカル性、金属性、電気性、磁性、または他の構造的、化学的、生物学的もしくは物理的特性のような所望の性質を与えるように選択された官能基を含むフラーレン誘導体または官能基化フラーレンである条件に適用可能であることが理解される。つなぎ部分が長さ、堅さ、電気伝導性または他の特性において異なり得ることがまた理解される。例えば、異なる長さのつなぎ部分は、異なる長さの脂肪族炭化水素鎖のような化学鎖の使用によって達成され得、そして異なる堅さのつなぎ部分は、アルカン、アルケン、アルキン、縮合または架橋芳香族構造などのような化学構造の使用によって達成され得る。
【0022】
(実施例2)
さらなるHRTEM分析を、広範囲に特徴付けられ、以前に研究されている予備混合ベンゼン/酸素/アルゴンフレームから集めたすす材料で行った。Grieco WJ,Howard JB,Rainey LC,Vander Sande JB.Carbon 2000;38:597;Grieco WJ,Lafleur AL,Swallow KC,Richter H,Taghizadeh,K,Howard JB.Proc.Comb.Inst.1998;27:1669−1675。このフレームの条件は、圧力、40トール;バーナーのガス速度、25cm/s(25℃);燃料当量比、2.4(原子C/O比、0.96);および供給ガス中の希釈剤の割合、10%アルゴンである。すすのサンプルおよびこのフレームからの全ての他の濃縮可能物が、以前に記載される様式(Grieco WJ,Howard JB,Rainey LC,Vander Sande JB.Carbon 2000;38:597)で集められ、そしてHRTEM分析を、実施例1と同じ、200kVで作動するJEOL2010を使用して行った。金アイランドを、これらのサンプルのうちのいくつかの表面上に堆積させ、HRTEM画像についての倍率の較正を提供した。金は、{111}原子平面について2.039Åの一定の面間間隔を有する安定な平坦な構造を有する。画像においてこの公知の間隔を観察および測定することによって、画像の長さスケールが較正され、他の構造の寸法が正確に測定され得る。この較正を使用して、画像において観察された閉じたかご構造のいくつかのサイズを測定し、そしてデータをサンプルの全てにわたって、サイズ分布ヒストグラムにコンパイルした。
【0023】
上記較正によって決定された電子顕微鏡の精度は、±0.01nmであった。フラーレン分子の直径の測定の精度は、分子の中空円形HRTEM画像の真の縁部を同定する観察者の能力によって制限される。観察者は、±0.01nmまたはそれより良い精度でフラーレン分子の画像の直径を特定し得た。
【0024】
図4〜6は、フレーム生成すすのサンプルの分析から得られた代表的な画像を示す。図4のストライプパターンは、顕微鏡を較正するために使用された金の堆積物の{111}平面の格子縞画像である。図5および6は、すすの他の領域を示し、いくつかの重要な構造が矢印によって示されている。強調された構造と関連する数は、図4において同定された金較正を使用して観察された直径である。図4〜6において示された構造から、C60およびそれより大きいサイズの構造物(6.85Å、8.6Åおよび10.3Åを記された構造物)だけでなく、C60より小さい構造物(5.2Åと記された構造物)も一般的であることが分かる。
【0025】
これらの構造物の測定から得られたサイズ分布ヒストグラムを図7に示す。このサイズは、これらのほぼ非円形構造の長軸および短軸の平均である。ヒストグラムにおいて、x軸に沿った数は、測定を分離するために使用されたビン(bin)を表す。ビンサイズおよびカットオフの任意の性質は、測定技術の分解限界の結果である。図7から、7Åを含むビンの有意なピーク(C60の直径である)が存在することが分かる。さらに図7は、C60より大きいおよび小さい平均寸法の構造の両方がサンプル中において一般的であることを示す。これは、本発明者らが、実際に、C60より大きいだけではなく、C60より小さい構造も観察および同定していることを示す。
【0026】
金アイランド較正法は、フレーム生成すすの画像を分析するために開発および使用された。この方法の高い精度および正確性は、Hebgenら(Hebgen,P,Goel A,Howard JB,Rainey LC,VanderSande JB.Proc Combust Inst 2000;28:1397)からの測定方法、および上記実施例1のつながれたフラーレンにおいて使用された方法の両方に対して、有意な利点を与える。金較正を使用する実験のC60より小さい構造の観察(図4〜7)は、このような小さな構造が存在し、これらがこの方法のアーチファクトではないことを決定的に証明する。測定された直径は、約0.5nm〜約1.2nm(図7を参照のこと)の範囲である。C60の直径として0.7nmを使用し、全てのフラーレン分子を球形シェルとして近似し、それらの質量が直径の平方に比例する単純な計算によって、C36の直径として0.5nmおよびC176の直径として1.2nmを得る。炭素中心から炭素中心への距離によって示されるC36の直径は、0.5nmであることが報告されている(Cote M,Grossman JC,Louie SG,Cohen ML.Bull Am Phys Soc 1997;42:270;Grossman JC,Cote M,Louie SG;Cohen ML.Bull Am Phys Soc 1997;42:1576;およびGrossman JC,Cote M,Louie SG,Cohen ML.Chem Phys Lett 1998;284:344。図4〜6に説明のために記された選択された構造の平均直径は、C36、C58、C90およびC130に対応する0.52nm、0.685nm、0.86nm、および1.03nmを含む。
【0027】
50および他のフラーレンに対応するサイズを有する多くの他の閉じたかご構造物、ならびに上記C176より大きいフラーレン様構造物もまた、観察された。この観察における目立った特徴は、従来の化学分析において観察されなかったフラーレンが優位であることであり、おそらく、これらが、高い反応性であり、従って、不安定であり、観察可能な量で合成することが困難であるか、またはこれらが形成されるすすまたは他の炭素材料に強く結合し、化学分析のために取り出すことが困難であるからである。この観察は、他の不安定な種(例えば、C20およびC60より小さい直径を有する単層カーボンナノチューブであって、三次元支持マトリクスのないもの)が、炭素支持体上で安定であり得、この研究の方法を用いて観察され得るという予想についての根拠を提供する。フラーレンC20は、分光学的にのみ観察され、ミリ秒の画分でのみ観察されている。C60より小さい直径を有する単層カーボンナノチューブは、チューブが成長する支持構造を提供する、多孔性材料(例えば、ゼオライト)内で観察されるのみである。
【0028】
60未満のフラーレンの確認された存在は、これらのフラーレンにおける隣接した炭素五角形環の存在を示し、これは、バルクのすすの特性について重要な意味を有する。隣接する五角形は、すすにおいて独特の構造的特性および電気特性を生じ、これは、商業的に有用な生成物の開発のために活用され得る。
【0029】
(実施例3)
実施例2において観察されたフラーレンを、合成プロセスにおいて濃縮に用いられる材料から分離し、そして単離する。C60より小さいフラーレンについて、Piskotiらの分別および分析方法を使用する。Piskoti C,Yarger J,Zettl A.Nature 1998;393:771。C60より大きいフラーレンを溶媒抽出により単離し、高圧液体クロマトグラフィーで分析する。Richter H,Labrocca AJ,Grieco WJ,Taghizadeh K,Lafleur AL,Howard JB.J Phys Chem B 1997;101:1556。
【0030】
(実施例4)
60分子(99.5%純粋;SES Corporation)のサンプルを、HRTEMで調べた。フラーレンをトルエン中に溶解し、溶液の液滴をTEM格子上に配置した。HRTEM分析の前に、トルエンをエバポレートさせた。
【0031】
図8は、TEM格子上に直接溶液から沈殿したC60の分析からの代表的なHRTEMを示す。C60分子は、可視の二回転対称を有する結晶形態をとっている。個々の分子の黒い中心と長さのスケールを比較すると、C60分子について予期される約0.7nmの直径が明らかになる。分子間の測定された中心間距離は、2つの結晶方向に沿って、1.01nm、第3の方向に沿って1.14nmである。
【0032】
先に述べたように、本明細書中に引用された全ての参考文献の内容が、本明細書中において参考として援用される。
【0033】
本明細書中に開示される本発明の改変および変更が、当業者に明らかであることが認識され、そしてこのような改変および変更の全てが、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、純粋なカーボンブラックサンプル由来の粒子のHRTEM画像である。
【図2】図2は、抽出後つなげられたフラーレンサンプル由来の粒子のHRTEM画像である。
【図3】図3は、構造物直径サイズ分布決定のために使用される測定方法を示す絵である。
【図4】図4は、金アイランド堆積物を有し、C60より小さい構造を示すフレームのすすのHRTEM画像である。
【図5】図5は、C60より大きい構造物およびC60より小さい構造物を示すフレームのすすのHRTEM画像である。
【図6】図6は、C60より大きい構造物、C60より小さい構造物、C60のサイズを有する構造物を示すフレームのすすのHRTEM画像である。
【図7】図7は、フレーム生成すすのHRTEM画像において測定された構造物のサイズ分布ヒストグラムである。
【図8】図8は、純粋なC60サンプルのHRTEM画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
36を除いて、C60より小さい分子量を有するフラーレンを含む、組成物。
【請求項2】
フラーレンC50を含む、組成物。
【請求項3】
フラーレンC58を含む、組成物。
【請求項4】
フラーレンC130を含む、組成物。
【請求項5】
フラーレンC176を含む、組成物。
【請求項6】
単離されたフラーレンC50
【請求項7】
単離されたフラーレンC58
【請求項8】
単離されたフラーレンC130
【請求項9】
単離されたフラーレンC176
【請求項10】
炭素表面に化学結合された、フラーレン構造物。
【請求項11】
前記フラーレン構造物がC60である、請求項10に記載のフラーレン構造物。
【請求項12】
フラーレンC60が、カーボンブラックに化学的に結合されている、請求項11に記載のフラーレン構造物。
【請求項13】
請求項12に記載のフラーレン構造物であって、前記フラーレンC60が、フラーレンの2つの炭素原子およびカーボンブラックの2つの炭素原子に架橋した炭素原子によって、カーボンブラックに化学的に結合されている、フラーレン構造物。
【請求項14】
炭素材料にフラーレンをつなげるための方法であって、以下:
官能基化フラーレンを、炭素材料を含む液体懸濁液に添加する工程;
該懸濁液を乾燥させて、粉末を生成する工程;および
該粉末を熱処理する工程、
を包含する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記官能基化フラーレンが、ジクロロメタノ[60]フラーレンである、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、前記官能基化フラーレンが、ジブロモメタノ[60]フラーレンである、方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、不活性ガスで満たされた管中に粉末を密閉する工程をさらに包含する、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記管が炉内で熱処理される、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記管が、約400℃で4.5時間熱処理される、方法。
【請求項20】
請求項14に記載の方法であって、前記炭素材料が、フラーレンである、方法。
【請求項21】
請求項14に記載の方法であって、前記炭素材料が、フラーレン誘導体である、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記フラーレン誘導体が、内包フラーレンを含む、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、前記フラーレン誘導体が、金属化フラーレンを含む、方法。
【請求項24】
請求項14に記載の方法であって、前記炭素材料が、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブを含むフラーレンナノ構造である、方法。
【請求項25】
請求項14に記載の方法であって、前記炭素材料が、ネスト化構造またはタマネギ構造である、方法。
【請求項26】
請求項14に記載の方法であって、前記炭素材料が、球形フラーレン構造、楕円形フラーレン構造、または三角形フラーレン構造である、方法。
【請求項27】
請求項14に記載の方法であって、前記炭素材料が、一定範囲の曲率半径を有する、単層の開いたかご構造および多層の開いたかご構造を含む、方法。
【請求項28】
請求項14に記載の方法であって、前記炭素材料が、フラーレンすすである、方法。
【請求項29】
請求項14に記載の方法であって、前記炭素材料が、フラーレンブラックである、方法。
【請求項30】
請求項14に記載の方法であって、前記炭素材料が、グラファイトカーボンである、方法。
【請求項31】
請求項14に記載の方法であって、前記炭素材料が、ダイアモンドである、方法。
【請求項32】
請求項14に記載の方法であって、前記炭素材料が、ダイアモンド様カーボンである、方法。
【請求項33】
請求項14に記載の方法であって、前記炭素材料が、アモルファスカーボンである、方法。
【請求項34】
請求項14に記載の方法であって、前記官能基化フラーレンが、官能基化フラーレンおよびつながれる材料の表面に所望の特性を与えるように選択された官能基を含む、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記所望の特性が、酸性、塩基性、疎水性、親水性、酸化性、還元性、ラジカル性、金属性、電気性、磁性、構造的特性、化学的特性、生物学的特性または物理的特性からなる群より選択される、方法。
【請求項36】
請求項14に記載の方法であって、所望のつなぎ長さを達成するように選択された化学鎖の使用をさらに包含する、方法。
【請求項37】
請求項14に記載の方法であって、所望のつなぎ部分の堅さを達成するように選択された化学構造の使用をさらに包含する、方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、前記化学構造が、アルカン、アルケン、アルキン、縮合芳香族または架橋芳香族を含む、方法。
【請求項39】
請求項14に記載の方法であって、所望の電気伝導性を達成するように選択された化学構造をさらに含む、方法。
【請求項40】
60未満の直径を有し、三次元支持マトリクスと会合していない、単層カーボンナノチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−508228(P2007−508228A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534089(P2006−534089)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/032119
【国際公開番号】WO2005/080268
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(504350142)マサチューセッツ インスティチュート オブ テクノロジー (8)
【出願人】(506105607)
【Fターム(参考)】