説明

フラーレン誘導体を含む組成物およびそれを用いた有機光電変換素子

【課題】有機光電変換素子に用いた場合に、優れた光電変換効率を付与しうる組成物を提供する。
【解決手段】フラーレン誘導体と溶媒とを含む組成物に吸着剤を接触させることにより得られることを特徴とする組成物。フラーレン誘導体としては、C60、C70、C84、カーボンナノチューブ、及びそれらの誘導体が挙げられる。また、吸着剤としては、金属酸化物、ケイ素の酸化物、活性炭等が挙げられる。当該組成物を用いることにより、優れた光電変換効率を示す有機光電変換素子を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体を含む組成物およびそれを用いた有機光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
フラーレン誘導体は、電荷(電子、ホール)輸送性を有する有機半導体材料であるので、有機光電変換素子(有機太陽電池、光センサー等)等への適用が期待されている。例えば、C70フラーレンの[6,6]フェニル−酪酸メチルエステル誘導体(以下、[70]PCBMということがある。)とクロロベンゼンとの組成物を有機太陽電池に用いること(非特許文献1)が知られている。
【0003】
【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed.2003,42,3371−3375頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フラーレン誘導体と溶媒との組成物を有機太陽電池等の光電変換素子に用いた場合、光電変換効率が充分ではないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、有機光電変換素子に用いた場合に、優れた光電変換効率を付与しうる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は第一に、フラーレン誘導体と溶媒とを含む組成物に吸着剤を接触させることにより得られることを特徴とする組成物を提供する。
【0007】
本発明は第二に、フラーレン誘導体と溶媒とを含む組成物に吸着剤を添加し、前記組成物を精製後、前記吸着剤を除去することにより得られる組成物を提供する。
【0008】
本発明は第三に、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に前記組成物から形成される層を有する有機光電変換素子を提供する。
【0009】
本発明は第四に、フラーレン誘導体と溶媒とを含む組成物に吸着剤を添加し、前記組成物を精製後、前記吸着剤を除去する組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物を用いれば、優れた光電変換効率を示す有機光電変換素子を製造することができるので、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の組成物は、フラーレン誘導体と溶媒とを含む組成物に吸着剤を接触させることにより得られること特徴とする。具体的には、フラーレン誘導体と溶媒とを含む組成物に吸着剤を添加し、前記組成物を精製後、前記吸着剤を除去することにより得られる組成物、フラーレン誘導体と溶媒とを含む組成物を吸着剤を充填したカラムを通すことにより得られる組成物等が挙げられる。
【0013】
フラーレン誘導体としては、C60、C70、C84、カーボンナノチューブ、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0014】
60の誘導体としては、以下のようなものが挙げられる。

【0015】
70の誘導体としては、以下のようなものが挙げられる。

【0016】
本発明に用いられる溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の炭化水素溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル溶媒等が挙げられる。
【0017】
本発明に用いられる組成物において、前記溶媒1000重量部に対して、前記フラーレン誘導体は、1重量部〜100重量部含まれることが好ましい。
【0018】
本発明に用いられる吸着剤としては、クロマトグラフィーの充填剤や、濾過助剤として用いられるものを用いることができる。クロマトグラフィーの充填剤として具体的には、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、活性炭、ポーラスポリマー、デキストランゲル(セファデックス)、ポリアクリルアミドゲル(バイオゲルP)、イオン交換樹脂、セルロースイオン交換体、セファデックスイオン交換体、セルロース粉末、セライト、などがあげられる。濾過助剤として具体的には、珪藻土、パーライト、炭素系濾過助剤、などがあげられる。不純物を選択的に吸着する観点からは、金属酸化物もしくはケイ素の酸化物が好ましく、典型金属の酸化物もしくはケイ素の酸化物がより好ましく、シリカゲル、アルミナ、ゼオライトがさらに好ましい。また、吸着剤の表面が、親水性であることが、不純物を吸着する上で好ましい。
【0019】
本発明に用いられる組成物において、前記溶媒100000重量部に対して、吸着剤を1〜100000重量部含むことが好ましく、10〜100000重量部含むことがより好ましく、100〜100000重量部含むことがさらに好ましい。
【0020】
本発明における精製としては、吸着剤を添加後、組成物を放置する方法、吸着剤を添加後に組成物を攪拌する方法等があげられ、攪拌する方法が好ましい。放置する時間としては、1時間〜100時間が好ましい。攪拌時間としては、1分〜100時間が好ましい。攪拌は、室温で行っても、加熱しながら行ってもよい。
【0021】
本発明における添加剤の除去は、フィルターを用いた濾過等により行うことができる。
【0022】
吸着剤によって取り除かれる不純物は、フラーレン誘導体が酸化した化合物、フラーレン誘導体が側鎖にエステル基を有する場合には、エステル基が加水分解した化合物等が挙げられる。
【0023】
本発明において、組成物がさらに電子供与性化合物を含んでいてもよい。前記電子供与性化合物は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ポルフィリン、金属ポルフィリン、オリゴチオフェン、テトラセン、ペンタセン、ルブレン等が挙げられる。高分子化合物としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。精製により得られる組成物の塗布性の観点からは、高分子化合物が好ましい。
【0024】
組成物が電子供与性化合物を含む場合、フラーレン誘導体の量が、電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、50〜500重量部であることがより好ましい。
【0025】
<有機光電変換素子>
本発明の有機光電変換素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に本発明の組成物から形成される層を有する。
【0026】
次に、有機光電変換素子の動作機構を説明する。透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーが電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物で吸収され、電子とホールの結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子とホールが分離し、独立に動くことができる電荷(電子とホール)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0027】
本発明の有機光電変換素子の具体的な例としては、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、該電極間に設けられる有機層として、本発明の組成物から形成される層を少なくとも一層有する有機光電変換素子が挙げられる。
【0028】
また、本発明の有機光電変換素子には、少なくとも一方の電極と該素子中の有機層との間に付加的な層を設けてもよい。付加的な層としては、例えば、ホール又は電子を輸送する電荷輸送層が挙げられる。
【0029】
本発明の組成物が電子供与性化合物を含まない場合、有機光電変換素子は、該組成物を用いて形成した層と電子供与性化合物を含む層を有していてもよい。また、該組成物に電子供与性化合物を添加した後に、有機光電変換素子に含まれる層を形成してもよい。電子供与性化合物としては、前述の化合物が挙げられる。
【0030】
該組成物に電子供与性化合物を添加する場合、フラーレン誘導体の割合が、電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、50〜500重量部であることがより好ましい。
【0031】
本発明の組成物から形成される有機層の厚さは、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0032】
本発明の有機光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0033】
前記の透明又は半透明の電極材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。さらに電極材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができ、好ましくは一対の電極のうち一方の電極は仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0034】
付加的な層としてのバッファ層として用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物等を用いることができる。また、酸化チタン等無機半導体の微粒子を用いることもできる。
【0035】
<有機層の製造方法>
前記有機層の製造方法は、例えば、本発明の組成物からの成膜による方法が挙げられる。
【0036】
成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0037】
本発明の有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0038】
また、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
以下の実施例において、重合体の分子量は、GPCラボラトリー製GPC(PL−GPC2000)により、ポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。重合体を約1重量%の濃度となるようにo−ジクロロベンゼンに溶解させた。GPCの移動相はo−ジクロロベンゼンを用い、測定温度140℃で、1mL/分の流速で流した。カラムは、PLGEL 10μm MIXED−B(PLラボラトリー製)を3本直列で繋げた。
【0041】
合成例1
(重合体1の合成)

アルゴン置換した2L四つ口フラスコに化合物A(7.928g、16.72mmol)、化合物B(13.00g、17.60mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:aliquat336、Aldrich製、CH3N[(CH2)7CH3]3Cl、density 0.884g/ml,25℃、trademark of Henkel Corporation)(4.979g)、およびトルエン405mlを入れ、撹拌しながら系内を30分間アルゴンバブリングした。ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.02g)を加え、105℃に昇温、撹拌しながら2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液42.2mlを滴下した。滴下終了後5時間反応させ、フェニルボロン酸(2.6g)とトルエン1.8mlを加えて105℃で16時間撹拌した。トルエン700mlおよび7.5%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物水溶液200mlを加えて85℃で3時間撹拌した。水層を除去後、60℃のイオン交換水300mlで2回、60℃の3%酢酸300mlで1回、さらに60℃のイオン交換水300mlで3回洗浄した。有機層をセライト、アルミナ、シリカを充填したカラムに通し、熱トルエン800mlでカラムを洗浄した。溶液を700mlまで濃縮した後、2Lのメタノールに注加、再沈殿させた。重合体をろ過して回収し、500mlのメタノール、アセトン、メタノールで洗浄した。50℃で一晩真空乾燥することにより、下記式:

で表されるペンタチエニル−フルオレンコポリマー(以下、「重合体1」という) 12.21gを得た。重合体1のポリスチレン換算の数平均分子量は5.4×104、重量平均分子量は1.1×105であった。
【0042】
合成例2
(フラーレン誘導体の加水分解物とフラーレン誘導体との混合物(化合物C)の合成)
[70]PCBM(アメリカンダイソース社製ADS71BFA LOT番号:07G058E)50mg(0.05mmol)にトルエン5mLおよびテトラヒドロフラン5mLを加え、3時間室温で撹拌して溶解させた。その後系内に2M 水酸化ナトリウム水溶液5mLを加え、室温で10時間撹拌した。
撹拌終了後、水酸化ナトリウム水溶液を除去して、1.7M 塩酸水溶液5mLを加えて12時間撹拌した。その後塩酸水溶液を除去後、再度同じ操作を繰り返した後、イオン交換水5mLを加え洗浄、除去し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後ろ別し、濃縮することで、フラーレン誘導体の加水分解物とフラーレン誘導体との混合物を50mg得た。これを化合物Cと呼ぶ。
【0043】
実施例1
(組成物1の製造)
フラーレン誘導体として25重量部の[70]PCBM(アメリカンダイソース社製ADS71BFA LOT番号:07G058E)と電子供与体化合物として5重量部の重合体1と溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合した。その後、吸着剤として10重量部のシリカゲル(和光純薬製 Wakogel C−300 粒径45〜75μm)を添加し、12時間攪拌した。ついで、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで吸着剤を濾過して除去し、組成物1を製造した。
【0044】
実施例2
(組成物2の製造)
フラーレン誘導体として22.5重量部の[70]PCBM(アメリカンダイソース社製ADS71BFA LOT番号:07G058E)と電子供与体化合物として5重量部の重合体1と溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンと2.5重量部の化合物Cとを混合した。その後、吸着剤として10重量部のシリカゲル(和光純薬製 Wakogel C−300 粒径45〜75μm)を添加し、12時間攪拌した。ついで、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで吸着剤を濾過して除去し、組成物2を製造した。
【0045】
実施例3
(組成物3の製造)
フラーレン誘導体として15重量部の[70]PCBM(フロンティアカーボン社製E110 LOT番号:7A0170-D)と電子供与体化合物として5重量部の重合体1と溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合した。その後、吸着剤として10重量部のシリカゲル(和光純薬製 Wakogel C−300 粒径45〜75μm)を添加し、12時間攪拌した。ついで、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで吸着剤を濾過して除去し、組成物3を製造した。
【0046】
実施例4
(組成物4の製造)
フラーレン誘導体として15重量部の[70]PCBM(フロンティアカーボン社製E110 LOT番号:7A0170-D)と電子供与体化合物として5重量部の重合体1と溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合した。その後、吸着剤として10重量部のアルミナ(和光純薬製 活性アルミナ 粒径〜75μm pH=9〜11)を添加し、12時間攪拌した。ついで、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで吸着剤を濾過して除去し、組成物4を製造した。
【0047】
実施例5
(組成物5の製造)
フラーレン誘導体として15重量部の[60]PCBM(フロンティアカーボン社製E100 LOT番号:7B084-A)と電子供与体化合物として5重量部の重合体1と溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合した。その後、吸着剤として10重量部のシリカゲル(和光純薬製 Wakogel C−300 粒径45〜75μm)を添加し、12時間攪拌した。ついで、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで吸着剤を濾過して除去し、組成物5を製造した。
【0048】
比較例1
(組成物6の製造)
フラーレン誘導体として25重量部の[70]PCBM(アメリカンダイソース社製ADS71BFA LOT番号:07G058E)と電子供与体化合物として5重量部の重合体1と溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合し、組成物6を製造した。
【0049】
比較例2
(組成物7の製造)
フラーレン誘導体として22.5重量部の[70]PCBM(アメリカンダイソース社製ADS71BFA LOT番号:07G058E)と電子供与体化合物として5重量部の重合体1と溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンと2.5重量部の化合物Cとを混合し、組成物7を製造した。
【0050】
比較例3
(組成物8の製造)
フラーレン誘導体として15重量部の[70]PCBM(フロンティアカーボン社製E110 LOT番号:7A0170-D)と電子供与体化合物として5重量部の重合体1と溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合し、組成物8を製造した。
【0051】
比較例4
(組成物9の製造)
フラーレン誘導体として15重量部の[60]PCBM(フロンティアカーボン社製E100 LOT番号:7B084-A)と電子供与体化合物として5重量部の重合体1と溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合し、組成物9を製造した。
【0052】
実施例6
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。次に、前記組成物1を用い、スピンコートにより塗布し、有機薄膜太陽電池の活性層(膜厚約180nm(活性層膜厚は表1に示す))を得た。その後、真空中室温で60分間乾燥を行った。その後、真空蒸着機によりフッ化リチウムを膜厚4nmで蒸着し、次いでAlを膜厚100nmで蒸着した。蒸着のときの真空度は、すべて1〜9×10-3Paであった。また、得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して光電変換効率を求めた。測定結果を表1に示す。
【0053】
実施例7
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
組成物1にかえて、組成物2を用いた以外は実施例6と同様の方法で有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0054】
実施例8
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。次に、前記組成物3を用い、スピンコートにより塗布し、有機薄膜太陽電池の活性層(膜厚約100nm(活性層膜厚は表1に示す))を得た。その後、真空中室温で60分間乾燥を行った。その後、真空蒸着機によりフッ化リチウムを4nm次いでAlを100nm蒸着した。蒸着のときの真空度は、すべて1〜9×10-3Paであった。また、得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して光電変換効率を求めた。測定結果を表1に示す。
【0055】
実施例9
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
組成物3にかえて、組成物4を用いた以外は実施例8と同様の方法で有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0056】
実施例10
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
組成物3にかえて、組成物5を用いた以外は実施例8と同様の方法で有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0057】
比較例5
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
組成物1にかえて、組成物6を用いた以外は実施例6と同様の方法で有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0058】
比較例6
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
組成物1にかえて、組成物7を用いた以外は実施例6と同様の方法で有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0059】
比較例7
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
組成物3にかえて、組成物8を用いた以外は実施例8と同様の方法で有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0060】
比較例8
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
組成物3にかえて、組成物9を用いた以外は実施例8と同様の方法で有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0061】
実施例11
(組成物10の製造)
フラーレン誘導体として15重量部の[70]PCBM(アメリカンダイソース社製ADS71BFA LOT番号:8C059E)と電子供与体化合物として5重量部の重合体1と溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合した。その後、金属イオン吸着剤として100重量部のイオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーリスト15JS−HG・DRY)を添加し、12時間攪拌した。ついで、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで吸着剤を濾過して除去し、組成物10を製造した。
【0062】
実施例12
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
組成物3にかえて、組成物10を用いた以外は実施例8と同様の方法で有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0063】
比較例9
(組成物11の製造)
フラーレン誘導体として15重量部の[70]PCBM(アメリカンダイソース社製ADS71BFA LOT番号:8C059E)と電子供与体化合物として5重量部の重合体1と溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合し、組成物11を製造した。
【0064】
比較例10
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
組成物3にかえて、組成物11を用いた以外は実施例8と同様の方法で有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
−評価−
表1からわかるように、シリカゲル、アルミナまたはイオン交換樹脂で吸着処理した組成物を用いて作製した有機光電変換素子は、吸着処理をしなかった組成物を用いて作製した有機光電変換素子よりも高い光電変換効率を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラーレン誘導体と溶媒とを含む組成物に吸着剤を接触させることにより得られることを特徴とする組成物。
【請求項2】
フラーレン誘導体と溶媒とを含む組成物に吸着剤を添加し、前記組成物を精製後、前記吸着剤を除去することにより得られる請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物がさらに電子供与性化合物を含む請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
吸着剤が金属酸化物もしくはケイ素の酸化物である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
吸着剤が典型金属の酸化物である請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
吸着剤がシリカゲルである請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
吸着剤がアルミナである請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
吸着剤がイオン交換樹脂である請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物から形成される層を有する有機光電変換素子。
【請求項10】
フラーレン誘導体と溶媒とを含む組成物に吸着剤を添加し、前記組成物を精製後、前記吸着剤を除去する組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−188373(P2009−188373A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201646(P2008−201646)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】