説明

フラーレン誘導体及びその製造方法

【目的】電子伝導材料、半導体、生理活性物質等として有用で、空気下での安定性に優れたフラーレン誘導体、及びその製造方法を提供する。
【構成】以下の一般式(I)の部分構造を有することを特徴とするフラーレン誘導体。
【化1】


(式中、C1 〜C8 は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表し、C6 〜C8 は、各々独立に炭素数1〜50の有機基と結合しており、C1 は、置換基として極性官能基を有する炭素数1〜20のアルキル基と結合している。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のフラーレン誘導体及びその製造方法に関するものである。詳しくは、本発明は、フラーレン骨格上に特定の部分構造を有するフラーレン誘導体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1990年にC60の大量合成法が確立されて以来、フラーレンに関する研究が精力的に展開されている。その結果、数多くのフラーレン誘導体が合成され、その多様な機能が明らかにされてきた。それに伴い、各種用途開発が進められている(非特許文献1〜3参照)。
本発明者らは、5重付加フラーレン誘導体を種々合成し、報告してきた(特許文献1〜3及び非特許文献4〜6参照)。これらのフラーレン誘導体は、例えばC60骨格のものでは50電子系のπ電子共役になっており、60電子系のπ電子共役である無置換のC60とは異なる立体配置や電子的性質を有することから、新たな電子伝導材料、半導体、生理活性物質等として期待されている。
【0003】
また、5重付加フラーレン誘導体より置換基の付加数が多い10重付加フラーレン誘導体も知られている(特許文献3参照)。しかしながら、これは例えばC60骨格では40電子系のπ電子共役であり、無置換フラーレン及び5重付加フラーレン誘導体とは電子状態などが大きく異なる。さらに、本発明者らは、5重付加フラーレン誘導体より置換基の付加数が少ない、66電子系のπ電子共役である3重付加C70誘導体の合成にも成功し、報告している(特許文献4参照)。
【0004】
上述の各種フラーレン誘導体は、フラーレンの特定部位に集中的に有機基が付加した独特の構造で、かつ、長いπ電子共役を有しているためその電気化学的物性などに興味が持たれている。
フラーレン誘導体を電子材料や金属錯体の配位子等に利用したり、他のフラーレン誘導体の中間体として使用するためには、フラーレン誘導体が有機溶媒に対して高い溶解性を示すことが好ましい。5重付加フラーレン誘導体の中には、無置換フラーレンよりも有機溶媒に対する溶解性が高いものもあるが、更に、各種有機溶媒に対する溶解性の高いフラーレン誘導体が望まれている。
【0005】
また、例えば、C60Ph5 H(式中、Phはフェニル基を表す)について、保存による酸化が報告されているように(非特許文献7参照)、これらの多重付加フラーレン誘導体は、一般的に、空気に対して不安定であるという欠点を有している。
【非特許文献1】現代化学1992年4月号12頁
【非特許文献2】現代化学2000年6月号46頁
【非特許文献3】Chemical Reviews,1998,98,2527
【特許文献1】特開平10−167994号公報
【特許文献2】特開平11−255509号公報
【特許文献3】特開2002−241323号公報
【特許文献4】特開平11−255508号公報
【非特許文献4】J.Am.Chem.Soc.1996,118,12850
【非特許文献5】Org.Lett.2000,2,1919
【非特許文献6】Chem.Lett.2000,1098
【非特許文献7】Chem.Commun.1997,1579.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規のフラーレン誘導体、及びその製造方法を提供することを課題とする。特に、異なる数、種類または立体配置で有機基が付加されたフラーレン誘導体を開発することにより、従来公知のフラーレンとは異なる、空気中での安定性、溶解性、または電子的性質などの物性を有するフラーレン誘導体を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行い、この結果、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の要旨は、以下の一般式(I)の部分構造を有することを特徴とするフラーレン誘導体に存する。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、C1 〜C8 は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表し、C6 〜C8 は、各々独立に炭素数1〜50の有機基と結合しており、C1 は、置換基として極性官能基を有する炭素数1〜20のアルキル基と結合している。)
本発明の第2の要旨は、一般式Cn (R1 5 (R2 )で表されることを特徴とするフラーレン誘導体に存する(式中、Cn は炭素数nのフラーレン骨格を表し、R1 は各々独立に炭素数1〜50の有機基を表し、R2 は、置換基として極性官能基を有する炭素数1〜20のアルキル基を表す。)。
【0010】
本発明の第3の要旨は、以下の一般式(II)の部分構造を有することを特徴とするフラーレン誘導体に存する。
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、C1 〜C10は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表し、C6 〜C10は、各々独立に炭素数1〜50の有機基と結合しており、C1 は、置換基として極性官能基を有する炭素数1〜20のアルキル基と結合している。)
本発明の第4の要旨はフラーレン骨格のシクロペンタジエン環上に水素原子を有するフラーレン誘導体をアルキル化することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法に存する。
【0013】
本発明の第5の要旨はフラーレン骨格のシクロペンタジエン環上にハロゲン原子を有するフラーレン誘導体とアリールアルカン化合物とを、原子価2以下の遷移金属錯体の存在下で反応させることを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフラーレン誘導体は、従来公知のフラーレン誘導体とは、異なる性質を有するため、新規の電子伝導材料、半導体、生理活性物質等としての応用が期待される。特に、これらのうち、空気中で酸化しにくい誘導体は、各種用途に適用する際に、安定であり好適である。また、水酸基やアルコキシカルボニル基等の極性官能基を有する誘導体は、極性官能基を更に他の官能基に変換できるため、各種フラーレン誘導体の原料としても有用である。更に、多くの有機基を有し且つフラーレン骨格のπ電子共役系を保持しているため、同程度の数の有機基が付加した従来公知のフラーレン誘導体より電子授受能力に優れ、有機基の種類及び数により電子授受の起こりやすさ(酸化還元挙動)を制御しやすいため、電子授受が関係する電子材料用途などに広範に用いられる可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明するが、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
本発明に係るフラーレン誘導体は、フラーレン骨格上に以下の一般式(I)の部分構造を有する。
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、C1 〜C8 は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表し、C6 〜C8 は、各々独立に炭素数1〜50の有機基と結合しており、C1 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基と結合している。)
フラーレンとは、閉殻構造を有する炭素クラスターである。フラーレンの炭素数は、通常60〜130の偶数であり、フラーレンとしては、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスターがなどが挙げられる。
【0018】
また、本発明に係るフラーレン誘導体とは、フラーレン骨格上に置換基を有する化合物又は組成物の総称である。即ち、本発明に係るフラーレン誘導体は、フラーレン骨格上に置換基を有したものであれば、フラーレン骨格の内部に金属や化合物等を内包するもの及び他の金属原子や化合物と錯体を形成したもの等も含まれる。このうち、フラーレン製造時における主生成物フラーレンが入手容易な点から、C60及びC70の誘導体が好ましく、C60の誘導体がより好ましい。なお、炭素数nのフラーレン骨格を以下、適宜、一般式Cnで表す。
【0019】
一般式(I)中のC6 〜C8 は、各々独立に炭素数1〜50の有機基(以下、適宜R1 と表す)と結合している。R1 は、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、どのような有機基でもよい。フラーレン誘導体に付与したい物性に応じて任意の有機基をフラーレン骨格に付加させればよい。例えば、本発明に係るフラーレン誘導体を空気中で酸化しにくいものとしたい場合は、空気中で酸化されにくい有機基が好ましい。なお、各R1 は、それぞれ独立して、同一であっても異なっていてもよいが、同一である方が合成しやすい点で好ましい。
【0020】
1 としては、通常、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基等の直鎖又は分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の環状アルキル基;ビニル基、プロペニル基及びヘキセニル基等の直鎖又は分岐の鎖状アルケニル基;シクロペンテニル基及びシクロヘキセニル基等の環状アルケニル基;エチニル基、メチルエチニル基及び1−プロピオニル基等のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基、トルイル基及びメトキシフェニル基等のアリール基;ベンジル基及びフェニルエチル基等のアラルキル基;チエニル基、ピリジル基及びフリル基等の複素環基、並びにこれらの基に更に置換基が結合したものが挙げられる。このうち、アルキル基及びアリール基が好ましく、メチル基またはフェニル基が特に好ましい。
【0021】
上述の更に置換基が結合している場合の置換基としては、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、どのような基でもよい。具体例を挙げると、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、チオール基、チオエーテル基、アルコキシフェニル基、有機珪素基などが挙げられる。
【0022】
すなわちR1 としては、アルキル基及びアリール基が好ましく、鎖状アルキル基及びアリール基が更に好ましく、メチル基及びフェニル基が最も好ましい。また、液晶性付与の点では、(長鎖アルコキシ置換ベンゾイルオキシ)置換のフェニル基が好ましく、高溶解性の点では、トリメチルシリルメチル基、トリメチルシリルエチニル基等の有機珪素基等が好ましい。
上述のR1 の炭素数は、置換基の炭素数を含めた数である。R1 の炭素数が多すぎると、一般的に、本発明のフラーレン誘導体の原料となるフラーレン誘導体を調製するのが困難になる。R1 の炭素数としては1〜50、好ましくは1〜20がよい。
【0023】
一般式(I)中のC1 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基(以下、適宜R2 と表す)と結合している。R2 は、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、どのようなアルキル基でもよい。但し、特に、本発明に係るフラーレン誘導体を空気中で酸化しにくいものとしたい場合は、空気中で酸化されやすい結合(例えば、非芳香族性の不飽和結合など)を含まないアルキル基が好ましい。
【0024】
アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の直鎖又は分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。
これらのアルキル基は、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損なければ、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アリール基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。また、これらの置換基が更に置換基で置換されていてもよい。
【0025】
上述のR2 の炭素数は、置換基の炭素数を含めた数である。炭素数が多すぎると、一般的に、フラーレン骨格に結合させるのが困難になる。R2 の好ましい炭素数は、10以下である。一方、炭素数が少な過ぎると有機溶媒に対する溶解性が不十分なことがあるため、溶解性の観点からは4以上、特に6以上が好ましい。
これらのうち好ましいR2 としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等のヒドロキシアルキル基;アリル基等のアルケニル基;ベンジル基、p−メトキシベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。例えば、本発明に係るフラーレン誘導体を空気中で酸化しにくいものとしたい場合は、空気酸化される可能性のある置換基(例えば、アルケニル基やアルキニル基など)を含まないものが好ましい。また、アルコールやエステル系溶媒などに対するフラーレン誘導体の溶解性を高めることができる点や、更に別の官能基に置換しやすい点では、水酸基またはアルコキシカルボニル基等を有する極性官能基を含むアルキル基が好ましい。
【0026】
フラーレン骨格上に一般式(I)の部分構造を有することを特徴とするフラーレン誘導体としては、例えば、一般式Cn (R1 3 (R2 )などで表される4重付加フラーレン誘導体、一般式Cn (R1 5 (R2 )などで表される6重付加フラーレン誘導体、一般式Cn (R1 6 (R2 2 などで表される8重付加フラーレン誘導体、一般式Cn (R1 8 (R2 2 などで表される10重付加フラーレン誘導体、一般式Cn (R1 10(R2 2 などで表される12重付加フラーレン誘導体などが挙げられる。このうち、一般式Cn (R1 5 (R2 )で表される6重付加フラーレン誘導体が好ましい。(式中の各R1 及びR2 は前記と同義である。)
これらのうち、一般式Cn (R1 5 (R2 )で表される6重付加フラーレン誘導体、一般式Cn (R1 8 (R2 2 で表される10重付加フラーレン誘導体及び一般式Cn (R1 10(R2 2 で表される12重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に以下の一般式(II)の部分構造を有するものが好ましく、一般式Cn (R1 3 (R2 )で表される4重付加フラーレン誘導体、一般式Cn (R1 6 (R2 2 で表される8重付加フラーレン誘導体および一般式Cn (R1 8 (R2 2 で表される10重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に以下の一般式(I)の部分構造を有するものが好ましい。
【0027】
なお、一般式Cn (R1 6 (R2 2 で表される8重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に以下の一般式(I)の部分構造を2個、一般式Cn(R1 8 (R2 2 で表される10重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に以下の一般式(I)および(II)の部分構造を1個づつ、一般式Cn (R1 10(R2 2 で表される12重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に以下の一般式(II)の部分構造を2個有するものが、各々更に好ましい。
【0028】
【化4】

【0029】
(式中、C1 〜C10は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表し、(I)ではC6 〜C8 が、(II)ではC6 〜C10が、各々独立に炭素数1〜50の有機基と結合しており、(I)、(II)ともC1 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基と結合している。)
次に、本発明に係るフラーレン誘導体の合成法について説明する。なお、本発明に係るフラーレン誘導体の合成法は、以下の方法に限定されるものではない。
【0030】
本発明に係るフラーレン誘導体は、例えば、以下(1)または(2)の方法などで製造することができる。(1)フラーレン骨格のシクロペンタジエン環上に水素原子を有するフラーレン誘導体(以下、適宜、水素原子を有するフラーレン誘導体とする。)をアルキル化する。(2)フラーレン骨格のシクロペンタジエン環上にハロゲン原子を有するフラーレン誘導体(以下、適宜、ハロゲン原子を有するフラーレン誘導体とする。)と、アリールアルカン化合物とを原子価2以下の遷移金属錯体の存在下で反応させる。
【0031】
(1)の水素原子を有するフラーレン誘導体のアルキル化反応について説明する。具体的には、本発明に係るフラーレン誘導体は、水素原子を有するフラーレン誘導体をアルキル化することにより製造することができる。
水素原子を有するフラーレン誘導体は、上記一般式(I)において、R1 が前述と同義で、R2 が水素原子であるフラーレン誘導体である。例えば、C70骨格上に以下の部分構造(A)を1つ有する3重付加C70誘導体、C60骨格上に以下の部分構造(B)を1つ有する5重付加C60誘導体、C70骨格上に以下の部分構造(A)を2つ有する6重付加C70誘導体、C60骨格上に以下の部分構造(A)と(B)を1つづつ有する8重付加C60誘導体、C60骨格上に以下の部分構造(B)を2つ有する10重付加C60誘導体などが挙げられる。
【0032】
【化5】

【0033】
(式中、C1 〜C10は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表し、部分構造(A)のC6 〜C8 及び部分構造(B)のC6 〜C10は、各々独立に炭素数1〜50の有機基と結合しており、部分構造(A)および部分構造(B)のC1 は水素原子と結合している。)
種々の水素原子を有するフラーレン誘導体の製造方法は既に確立されており、フラーレンと有機銅試薬とを反応させて製造することができる。すなわち、通常、有機銅試薬をフラーレンに反応させることによって合成される。ここで、有機銅試薬は、フラーレン骨格のシクロペンタジエン環に隣接する炭素原子に導入したい基に対応するGrignard試薬、具体的には、R1 MgCl、R1 MgBrまたはR1 MgIから選ばれる化合物(式中、R1 は前述と同義)と、CuBrSMe2 などの1価の銅試薬から調整される。また、後にR1 に変換できる基を同様の方法で導入した後、その基をR1 に変換することによって合成することもできる。
【0034】
具体的な水素原子を有するフラーレン誘導体の合成条件は、例えば、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−146915号公報、特開2003−212881号公報、Org. Lett. 2000, 2, 1919、J. Organomet. Chem. 2002, 652, 31 、J. Mater. Chem. 2002, 12, 2109 、Org. Lett. 2003, 5, 4461、J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 432に記載されている方法などを参照できる。
【0035】
特に、上記反応を特定の反応溶媒、具体的には、ピリジン類で行うと、上述の6重付加C70誘導体、8重付加C60誘導体、10重付加C60誘導体を製造することができる。
ここで、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基等の有機銅試薬の調製が困難または有機銅試薬との反応を阻害する基を有する水素原子を有するフラーレン誘導体を合成する場合は、これらの前駆体となる官能基を含むGrignard試薬から有機銅試薬を調製し、これをフラーレンと反応させてから、適当な変換反応で目的とする官能基に変換すればよい。具体的には、目的とする水素原子を有するフラーレン誘導体が有する官能基が水酸基、アミノ基、チオール基である場合は、メトキシメチル基、エトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基などのエーテル型保護基、またはトリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などの珪素保護基などの保護体で保護するのが好ましく、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基である場合は、オルソエステルなどの前駆体の形で5重付加反応を行った後、加溶媒分解により目的とする官能基に変換する。なお、これらの官能基の変換反応は、後述のアルキル化反応後に行ってもよい。
【0036】
水素原子を有するフラーレン誘導体のアルキル化反応は、通常、水素原子を有するフラーレン誘導体と一般式R2 −X(式中、R2 は前記と同義であり、Xは脱離基を表す。)で表されるアルキル化剤とを、塩基の存在下で反応させることにより行う。なお、フラーレン誘導体のアルキル化反応を含む、フラーレン誘導体アニオンの求電子試薬との反応については、特開2003−212881号公報に一例が記載されている。
【0037】
アルキル化剤の脱離基Xとしては、ハロゲン原子(Cl,Br,I);アセトキシ基、トリフロロアセトキシ基等のアシロキシ基;メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基及びトルエンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基などの求核置換反応の脱離基となりうる基が挙げられる。
アルキル化剤は、上述のR2 とXが結合した化合物である。具体例を挙げると、沃化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル、臭化ペンチル、臭化ヘキシル、臭化ヘプチル、臭化オクチル等のハロゲン化アルキル;塩化アリル、臭化アリル等のハロゲン化アルケニル;ベンジルクロリド、フェニルエチルクロリド等のハロゲン化アラルキル;2−ブロモエタノール、3−ブロモプロパノール、4−ブロモブタノール、5−ブロモペンタノール等のハロゲン化アルコール;3−ブロモプロピオン酸エチル、4−ヨ−ド酪酸エチル等のハロゲン化脂肪酸エステルなどが用いられる。
【0038】
なお、アルキル化剤R2 −XのR2 が、アルキル化反応を阻害したり、反応条件で不安定な基である場合は、これを適当な保護基で保護したアルキル化剤を用いてアルキル化反応を行い、反応終了後に脱保護して官能基を再生させればよい。
アルキル化剤は、水素原子を有するフラーレン誘導体の有する水素原子1つに対して、通常、モル比で1〜1000、好ましくは、1〜10用いる。多過ぎると、製造コストの観点から好ましくなく、少な過ぎると十分な反応速度が得られない。
【0039】
塩基は、水素原子を有するフラーレン誘導体のシクロペンタジエニル部位のプロトンを引き抜いて反応系中でシクロペンタジエニルアニオンを形成できるものであればどのようなものでもよい。例えば、ナトリウムメトキシド、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド等の金属アルコキシド;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシドなどの塩基性化合物が挙げられる。塩基は、通常、水素原子を有するフラーレン誘導体に対して、モル比で1〜5用いる。多過ぎると副反応が進行することがあり、少な過ぎると反応速度または転化率が不十分になることがある。
【0040】
水素原子を有するフラーレン誘導体のアルキル化反応は、水素原子を有するフラーレン誘導体のアルキル化が起これば、原料や塩基等の添加順序は問わないが、通常、水素原子を有するフラーレン誘導体と塩基とを適当な溶媒中で混合してから、アルキル化剤を加えることにより行う。反応溶媒は、目的とするアルキル化反応が十分な反応速度で進行するものであれば任意だが、通常、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒が好ましい。
【0041】
水素原子を有するフラーレン誘導体のアルキル化反応で用いるアルキル化剤、塩基及び溶媒は、単一物質でも2種類以上の物質の混合物でも構わない。また、本発明に係るアルキル化反応を妨げなければ、水素原子を有するフラーレン誘導体、アルキル化剤、塩基、溶媒以外の物質が存在していても構わない。
本発明に係るアルキル化反応は、水素原子を有するフラーレン誘導体のアルキル化が起これば、どのような反応条件でもよいが、通常、水素原子を有するフラーレン誘導体と塩基とを0〜50℃、好ましくは室温(15〜30℃)で数分〜1時間、好ましくは10〜30分混合してから、アルキル化剤添加して、数分〜数時間、好ましくは5分〜2時間反応させる。
【0042】
通常、反応終了後に、生成した本発明に係るフラーレン誘導体を反応液から常法により単離する。例えば、反応液に塩化アンモニウム等の水溶液を滴下して反応を停止させ、そのまま適当な溶媒でシリカゲルカラムに通して無機物を除いた後、溶媒を留去することにより、生成物を単離することができる。得られたフラーレン誘導体は、必要に応じて、適宜、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やカラムクロマトグラフィーなどの手法で精製してもよい。単離収率は、上述の好ましい反応条件で行えば、通常80%以上である。
【0043】
水素原子を有するフラーレン誘導体は、シクロペンタジエン環上の炭素原子に隣接する炭素原子に有機基が結合している。そこで、従来、立体障害により、シクロペンタジエン環上の炭素原子の反応性が低く、これをアルキル化させることはできないと考えられていた。しかしながら、本発明では、意外にもアルキル化で高収率に本発明のフラーレン誘導体を得られることを見出した。
【0044】
次に、(2)のフラーレン骨格のシクロペンタジエン環上にハロゲン原子を有するフラーレン誘導体とアリールアルカン化合物とを原子価2以下の遷移金属錯体の存在下で反応させる、本発明に係るフラーレン誘導体の製造方法について説明する。
フラーレン骨格のシクロペンタジエン環上にハロゲン原子を有するフラーレン誘導体は、水素原子を有するフラーレン誘導体と塩基とを混合した後、更にハロゲン化剤と反応させることによって製造することができる(特開2002−241389号公報参照)。このハロゲン化反応で用いる塩基は、前述の(1)のアルキル化反応で用いた塩基と同様に、水素原子を有するフラーレン誘導体のシクロペンタジエニル部位の水素原子を引き抜いて反応系中でシクロペンタジエニルアニオンを形成できるものであればどのようなものでもよい。具体例としては、ナトリウムメトキシド、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド等の金属アルコキシド;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシドなどの塩基性化合物が挙げられる。
【0045】
ハロゲン化剤としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、N−ブロモコハク酸イミド、N−クロロコハク酸イミド等のハロゲン化試薬などが挙げられる。このうち、N−ブロモコハク酸イミドが好ましい。
アリールアルカン化合物は、芳香環上にアルキル基を有し、このアリール基のα位(すなわちベンジル位)に水素原子を有する芳香族炭化水素である。この化合物は、通常、一般式Ar−CH(R4 )(R5 )(式中、Arは置換基を有していてもよいアリール基を表し、R4 及びR5 は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で表される。
【0046】
Arのアリール基は、目的とする反応が進行するものであれば特に限定されず、芳香族性があれば、芳香族炭化水素であっても複素芳香環であってもよく、これらの環が更に置換基を有していてもよい。芳香族炭化水素の具体例としては、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。また、置換基の具体例としては、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
【0047】
4 及びR5 としては、水素原子またはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基等のアルキル基が挙げられる。炭素数が多過ぎると目的とする反応の反応性が低下し好ましくない。なお、R4 及びR5 は、同一でも異なってもよいが、いずれか一方が水素原子であるものが好ましい。
アリールアルカン化合物の具体例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、イソブチルベンゼン及びメトキシトルエン等が挙げられる。このうち、エチルベンゼン、メトキシトルエンが好ましい。
【0048】
アリールアルカン化合物は、ハロゲン原子を有するフラーレン誘導体に対して、通常、十分な過剰量、具体的には、100〜10000等量程度用いる。少な過ぎると、反応性が低下するので好ましくない。
原子価2以下の遷移金属錯体の遷移金属は、通常、8〜10族である。原子価が高い遷移金属の錯体を用いると、反応が進行しにくい可能性がある。原子価2以下の遷移金属錯体の具体例としては、FeCl(CO)2 、RuCl2 (PPh3 3 、[Ru(cod)Cl2 ]−重合体、[Rh(coe)2 Cl]2 、[Ir(coe)2 Cl]2 、Ni(cod)2 、NiCl2 、PdCl2 及びPtCl2 等が挙げられる(式中、「coe」はシクロオクテンを表し、「cod」はシクロオクタジエンを表す。)。このうち、[Rh(coe)2 Cl]2 又は[Ir(coe)2 Cl]2 が安定で入手容易なので好ましい。低原子価の遷移金属錯体は、ハロゲン原子を有するフラーレン誘導体に対して、通常、0.01〜3当量の範囲で用いる。多過ぎると製造コストの観点で好ましくなく、少な過ぎると十分な反応速度が得られない場合があり好ましくない。
【0049】
ハロゲン原子を有するフラーレン誘導体とアリールアルカン化合物との反応は、通常、十分な過剰量のアリールアルカン化合物中で、ハロゲン原子を有するフラーレン誘導体と低原子価の遷移金属錯体とを攪拌などで混合することにより行う。反応温度は、0〜100℃、反応時間は、1時間〜数日が好ましい。反応温度が低すぎると反応速度が遅くなり、高すぎると原料及び生成物の分解等による副反応が進行する可能性があり好ましくない。
【0050】
目的物の単離は、通常、反応後にシリカゲルカラムなどで遷移金属化合物等の無機物を除去して行う。また、必要に応じて、さらにHPLCなどで精製を行ってもよい。
収率は、上述の好ましい条件で反応を行えば、通常、20%以上である。
この反応機構は明確ではないが、低原子価の遷移金属錯体が、ハロゲン原子を有するフラーレン誘導体の炭素−ハロゲン結合に酸化的に付加して反応が進行するものと考えられる。
【0051】
本発明に係るフラーレン誘導体は、プロトン核磁気共鳴スペクトル法(以下、 1H−NMRと表す。)、カーボン核磁気共鳴スペクトル法(以下、13C−NMRと表す。)、赤外線吸収スペクトル法(以下、IRと表す)、質量分析法(以下、MSと表す。)、及び元素分析等の一般的な有機分析により、通常、その構造が確認される。この他、フラーレン誘導体の結晶性がよい場合は、X線結晶回折法によって構造を確認できる場合もある。
【0052】
本発明に係るフラーレン誘導体は、置換基の種類や数などにも依存するが、一般に、無置換のフラーレンやシクロペンタジエン環上の炭素原子が水素原子と結合しているフラーレン誘導体に比べ、有機溶媒に対して高い溶解性を示すものが多い。例えば、シクロペンタジエン環上の炭素原子が水素原子と結合しているフラーレン誘導体に比べ、同水素原子が水酸基またはエステル基を有するアルキル基で置換されている本発明のフラーレン誘導体は、通常、テトラヒドロフランおよびジメチルホルムアミドなどの極性溶媒に対する溶解性が高く、対テトラヒドロフランで3倍以上、対ジメチルホルムアミドで5倍以上の溶解性を示す場合がある。
【0053】
また、本発明に係るフラーレン誘導体は、置換基の種類や数などにも依存するが、一般的に、水素原子を有するフラーレン誘導体などに比べ、空気に対し高い安定性を有するものが多い。これは、溶液状態での使用、および粉末あるいは溶液状態で長期保管するのに好ましく、実用上、極めて有用である。
本発明に係るフラーレン誘導体の空気中での安定性は、例えば、経時変化をHPLCで分析することにより確認できる。具体的には、本発明のフラーレン誘導体のトルエン溶液を室温空気下で放置した際に、HPLC(オクタデシル基結合シリカゲルカラム(以下、ODSカラムと表す。)、溶媒;トルエン/メタノール、UV波長:290nm)で観測される全ピークに対するフラーレン誘導体由来のピークの面積割合での減少速度から、調べることができる。具体的には、例えば、C60Ph5 H溶液に対するC60Ph5 Me溶液のように、フラーレン骨格のシクロペンタジエン環上に水素原子を有する以外は同様なフラーレン誘導体の溶液に対する、本発明にかかるフラーレン誘導体の溶液の空気中での安定性から評価できる。例えば、同一条件の場合、本発明にかかるフラーレン誘導体溶液の安定性は、通常、20分の1以下、好ましくは100分の1以下である。
【0054】
本発明に係るフラーレン誘導体で空気に対し高い安定性を有するものが、安定である理由は不明である。しかしながら、従来公知の多重付加フラーレン誘導体が一般的に酸化されやすいことと考えあわせると、フラーレン骨格のシクロペンタジエニル部位の炭素原子が水素原子と結合しているフラーレン誘導体は、このC−H結合が酸素分子と反応しやすいのに対し、本発明に係るフラーレン誘導体は、このC−H結合がないことにより、高い安定性を発現できるものと推定される。なお、フラーレン骨格のシクロペンタジエニル部位に水素原子を有するフラーレン誘導体が空気酸化されやすい理由としては、他に、シクロペンタジエン部位のオレフィンのエポキシ化などが考えられるが、本発明に係るフラーレン誘導体ではこの影響は無いまたは非常に小さいために、空気中で予想を越えた優れた安定性を発現できると考えられる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明について、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下、メチル基をMeと、フェニル基をPhと表す。
【0056】
参考例1
<1−(n−octyl)−6,9,12,15,18−pentamethyl−1,6,9,12,15,18−hexahydro−(C60−Ih )[5,6]fullerene:[C60Me5 (CH2 7 CH3 ]の製造>
60Me5 H(20mg,25μmol)のテトラヒドロフラン懸濁液(5.0mL)にカリウム−t−ブトキシド(33μmol)のテトラヒドロフラン溶液(1.0mol/L,33μL)を25℃で添加した。反応液は赤色から黒色に変化した。次いで臭化n−オクチル(7.8mg,0.040mmol)をこの溶液に加え、1時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(50μL)で反応を停止させた。反応液を、シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/クロロホルム=9/1)に通し、表題化合物を赤色固体(18mg,0.020mmol,収率80%)として得た。以下にこのものの機器分析データを示す。
【0057】
1H−NMR(500MHz,溶媒:CDCl3 ):δ 0.96(t,3H,CH2 3 ),1.40−1.55(m,10H,internalCH2 ),1.81(m,2H,C60CH2 2 ),2.20(s,6H,C60Me),2.33(s,6H,C60Me),2.39(s,3H,C60Me),2.54(m,2H,C602 ).
13C−NMR(125MHz,溶媒:CDCl3 ):δ 14.17(1C,CH2 3 ),22.80(1C,CH2 ),22.95(1C,CH2 ),24.33(2C,C60CH3 ),27.20(2C,C60CH3 ),29.34(1C,C60CH3 ),29.34(1C,CH2 ),29.65(1C,CH2 ),30.00(1C,CH2 ),31.95(1C,CH2 ),35.34(1C,CH2 ),50.64(2C,CH3 (C60)),52.93(2C,CH3 (C60)),54.22(1C,CH3 (C60)),62.81(1C,CH2 (C60)),142.72(2C,C60),143.45(2C,C60),143.87(2C,C60),143.91(2C,C60),144.28(2C,C60),144.35(2C,C60),144.52(2C,C60),144.62(2C,C60),144.69(2C,C60),144.96(2C,C60),145.57(2C,C60),146.05(2C,C60),146.68(1C,C60),146.89(2C,C60),147.93(2C,C60),147.82(2C,C60),147.88(2C,C60),147.97(1C,C60),148.07(2C,C60),148.29(2C,C60),148.36(2C,C60),148.47(2C,C60),148.64(2C,C60),149.57(2C,C60),153.79(2C,C60),155.79(2C,C60),156.23(2C,C60),158.03(2C,C60).
大気圧化学イオン化−質量分析法(以下、「APCI−MS」とする)(溶離液:トルエン/イソプロピルアルコール=7/3)m/z=909(M- ).
【0058】
実施例1
<1−(3−hydroxypropyl)−6,9,12,15,18−pentamethyl−1,6,9,12,15,18−hexahydro−(C60−Ih )[5,6]fullerene:[C60Me5 (CH2 3 OH]の製造>
60Me5 H(40.0mg,0.0502mmol)のテトラヒドロフラン懸濁液(10.0mL)に、カリウム−t−ブトキシド(0.125mmol)のテトラヒドロフラン溶液(125μL)を25℃で加えた。反応液は赤色から黒色に変化した。次いで3−ブロモ−1−プロパノール(20.9mg,0.150mmol)を反応液に添加し、1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(0.1mL)で反応を停止させた後、溶離液にトルエン/クロロホルム=1/9の混合溶媒を用いた以外は参考例1と同様に処理して、表題化合物を赤色固体(35.9mg,0.0420mmol,収率84%)として得た。以下にこのものの機器分析データを示す。
【0059】
1H−NMR(500MHz,CDCl3 ):δ 2.08(m,2H,C60CH2 2 ),2.21(s,6H,C60Me),2.34(s,6H,C60Me),2.42(s,3H,C60Me),2.67(m,2H,C602 ),3.76(brs,1H,O),3.96(brs,2H,C2 OH).
13C−NMR(125MHz,CDCl3 ):δ 24.32(2C,C60CH3 ),26.46(1C,CH2 ),27.35(2C,C60CH3 ),29.44(1C,C60CH3 ),31.95(1C,CH2 ),50.64(2C,CH3 (C60)),52.94(2C,CH3 (C60)),54.12(1C,CH3 (C60)),62.54(1C,CH2 (C60)),63.35(1C,2 OH),142.74(2C,C60),143.40(2C,C60),143.90(2C,C60),143.93(2C,C60),144.30(2C,C60),144.38(2C,C60),144.47(2C,C60),144.61(2C,C60),144.84(2C,C60),144.92(2C,C60),145.52(2C,C60),145.93(2C,C60),146.69(1C,C60),146.90(2C,C60),146.93(2C,C60),147.84(2C,C60),147.90(2C,C60),148.08(2C,C60),148.30(1C,C60),148.37(2C,C60),148.48(2C,C60),148.65(2C,C60),148.85(2C,C60),149.44(2C,C60),153.67(2C,C60),155.78(2C,C60),156.02(2C,C60),157.90(2C,C60).
APCI−MS(−)(溶離液:トルエン/イソプロピルアルコール=7/3):m/z=855(M- ).
【0060】
参考例2
<1,6,9,12,15,18−hexamethyl−1,6,9,12,15,18−hexahydro−(C60−Ih )[5,6]fullerene:(C60Me6 )の製造>
60Me5 H(20.0mg,25.1μmol)のテトラヒドロフラン懸濁液(2.4mL)に、カリウム−t−ブトキシド(28μmol)のテトラヒドロフラン溶液(1.0mol/L、28μL)を23℃で加えた。反応液の赤色から黒色に変化した。次いで沃化メチル(12μL,0.13mmol)を反応液に加えた。20分撹拌後、反応を飽和塩化アンモニウム水溶液(50μL)で停止させた。反応液をシリカゲルカラムで濾過し、表題化合物を赤色固体(18mg,収率89%)として得た。以下にこのものの機器分析データを示す。
【0061】
1H−NMR(400MHz,CDCl3 ):δ 2.25(s,3H,CH3 ),2.27(s,6H,CH3 ),2.29(s,6H,CH3 ),2.35(s,3H,CH3 ).
13C−NMR(100MHz,CDCl3 ):δ 24.94(2C),27.17(2C),29.56(1C),30.31(1C),50.66(2C),52.91(2C),53.26(1C),59.87(1C),142.56(2C),142.66(2C),143.34(2C),143.75(2C),143.77(2C),144.09(2C),144.19(2C),144.31(2C),144.46(2C),144.78(2C),145.33(2C),146.12(2C),146.61(1C),146.77(4C),147.68(2C),147.75(1C),147.84(1C),147.96(2C),148.15(2C),148.23(2C),148.31(2C),148.49(2C),149.46(2C),153.87(2C),155.59(2C),157.55(2C),161.01(2C).
APCI−MS(+)m/z=810(M- ).
【0062】
参考例3
<1−Benzyl−6,9,12,15,18−pentamethyl−1,6,9,12,15,18−hexahydro−(C60−Ih )[5,6]fullerene:(C60Me5 CH2 Ph)の製造>
60Me5 H(20.7mg,26.0μmol)のテトラヒドロフラン懸濁液(2.0mL)に、カリウム−t−ブトキシド(28.0μmol)のテトラヒドロフラン溶液(1.0mol/L、28μL)を23℃で加えた。反応液は赤色から黒色に変化した。次いで臭化ベンジル(25μL,90μmol)を反応液に加えた。40分撹拌した後、反応を飽和塩化アンモニウム水溶液(50μL)で停止させた。混合物をシリカゲルカラムで濾過して、表題化合物を赤色固体(20mg,収率86%)として得た。以下にこのものの機器分析データを示す。
【0063】
IR(ダイアモンドプローブ上粉末、単位cm-1):ν 2960(s),2917(s),2858(s).
1H−NMR(400MHz,CDCl3 ):δ 3.83(s,2H,CH2 ),2.52(s,3H,CH3 ),2.48(s,6H,CH3 ),1.81(s,6H,CH3 ),7.44(m,3H,p,m−C6 5 ),7.55(m,2H,o−C6 5 ).
プロトン−カーボン2次元核磁気共鳴スペクトル法(以下13C{ 1H}−NMRと表す)(400MHz,CDCl3 ):δ 25.72(2C,CH3 ),26.56(2C,CH3 ),29.40(1C,CH3 ),43.30(1C,CH2 ),50.49(2C,CH3 ),54.17(1C,CH3 ),63.19(1C,CH2 ),126.60(1C,p−C6 5 ),126.73(2C,m−C6 5 ),132.43(2C,o−C6 5 ),142.69(2C,C60),143.23(2C,C60),143.66(2C,C60),143.76(2C,C60),144.11(2C,C60),144.17(2C,C60),144.23(2C,C60),144.40(2C,C60),144.63(2C,C60),145.04(2C,C60),145.19(2C,C60),146.20(2C,C60),146.76(1C,C60),146.83(2C,C60),147.69(2C,C60),147.78(2C,C60),147.93(2C,C60),148.12(2C,C60),148.21(2C,C60),148.31(1C,C60),148.48(2C,C60),149.23(2C,C60),153.59(2C,C60),154.58(2C,C60),155.55(2C,C60),157.68(2C,C60).
APCI−MS(−)(トルエン/イソプロピルアルコール=7/3):m/z=886(M- ).
また、この化合物のX線構造解析結果を図1及び表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例2
<1−[(4−Methoxyphenyl)methyl]−6,9,12,15,18−pentamethyl−1,6,9,12,15,18−hexahydro−(C60−Ih )[5,6]fullerene:[C60Me5 (CH2 6 4 −OMe−p)]の製造>
[IrCl(cyclooctene)2 2 (12.2mg0.0137mmol)の4−メトキシトルエン溶液(2.0mL)に、C60Me5 Br(20.0mg,0.022mmol)の4−メトキシトルエン懸濁液(2.0mL)を加えた。室温で1時間撹拌したところ、濃赤茶色の懸濁液が得られた。この懸濁液を、シリカゲルカラムに通した。分取高速液体クロマトグラフィー[Buckyprep.(NacalaiTesque社製,20mmx250mm),(溶離液:トルエン/イソプロピルアルコール=7/3),流速=16mL/min,保持時間=7min]を繰り返すことで、表題化合物を赤茶色結晶(1.69mg,収率16%)として得た。以下にこのものの機器分析データを示す。
【0066】
1H−NMR(270MHz,CDCl3 ):δ 1.86(s,6H,CC3 ),2.46(s,6H,CC3 ),2.50(s,3H,CC3 ),3.78(s,2H,CH2 ),3.92(s,3H,OCH3 ),6.99(m,2H,o−C6 5 ),7.45(m,2H,m−C6 5
APCI−MS(−)(溶離液:トルエン/イソプロピルアルコール=7/3):m/z=916(M- ).
【0067】
参考例4
<1−(1−Methyl−1−phenylmethyl)−6,9,12,15,18−pentamethyl−1,6,9,12,15,18−hexahydro−(C60−Ih )[5,6]fullerene:[C60Me5 (CH(CH3 )C6 5 )]の製造>
[IrCl(cyclooctene)2 2 (9.6mg0.011mmol)のエチルベンゼン溶液(5.0mL)に、C60Me5 Cl(20.0mg,0.021mmol)のエチルベンゼン懸濁液(5.0mL)を加えた。室温で1日撹拌したところ、濃赤橙色の懸濁液が得られた。この懸濁液を、シリカゲルカラムに通した。分取高速液体クロマトグラフィー[Buckyprep.(NacalaiTesque社製,カラムサイズ:20mm×250mmφ),溶離液:トルエン/イソプロピルアルコール=7/3、流速=16mL/min,保持時間=7min]を繰り返すことで、表題化合物を赤茶色結晶(4.41mg,収率20%)として得た。以下にこのものの機器分析データを示す。
【0068】
1H−NMR(400MHz,CDCl3 ):δ 1.31(s,3H,C60CH3 ),2.05(d, 2H-H =6.8Hz,3H,CHC3 ),2.26(s,3H,CH3 ),2.41(s,3H,CH3 ),2.53(s,3H,CH3 ),2.73(s,3H,CH3 ),4.13(q, 2H-H =6.4Hz,1H,CH3 ),7.44−7.73(m,5H,C6 5 ).
13C{ 1H}NMR(400MHz,CDCl3 ):δ 25.70(1C,C603 ),26.57(1C,C603 ),27.57(1C,C603 ),28.04(1C,C603 ),28.49(1C,CH3 ),30.49(1C,C60CH3 ),47.98(1C,CH),49.93(1C,CH3 ),50.78(1C,CH3 ),52.42(1C,CH3 ),53.24(1C,CH3 ),54,79(1C,CH3 ),69.46(1C,CH3 H),127.23(1C,p−C6 5 ),127.28(2C,o−C6 5 ),(2C,m−C6 5 ),142.37(1C,C60),142.79(1C,C60),143.09(1C,C60),143.13(1C,C60),143.29(1C,C60),143.34(1C,C60),143.66(1C,C60),143.70(1C,C60),143.73(1C,C60),143.77(1C,C60),143.89(1C,C60),143.91(1C,C60),143.95(1C,C60),143.97(1C,i−C6 5 ),144.05(1C,C60),144.13(1C,C60),144.14(1C,C60),144.38(1C,C60),144.67(1C,C60),144.78(1C,C60),144.87(1C,C60),144.90(1C,C60),145.05(1C,C60),145.44(1C,C60),146.59(1C,C60),146.75(1C,C60),146.81(1C,C60),146.87(1C,C60),147.05(1C,C60),147.60(1C,C60),147,64(1C,C60),147.71(1C,C60),147.82(1C,C60),147.87(1C,C60),147.92(1C,C60),148.06(1C,C60),148.22(1C,C60),148.31(1C,C60),148.33(1C,C60),148.51(1C,C60),149.14(1C,C60),149.21(1C,C60),149.47(1C,C60),151.24(1C,C60),152.90(1C,C60),154.62(1C,C60),155.60(1C,C60),157.06(1C,C60),157.16(1C,C60),157.74(1C,C60),159.23(1C,C60)(m−C6 5 に基づくシグナルは、強度が弱すぎるため他のピークやノイズと分離しなかったため、観測されなかった。).
APCI−MS(−)(溶離液:トルエン/イソプロピルアルコール=7/3):m/z=900(M- ).
【0069】
実施例3
<1−(3−(ethoxycarbonyl)propyl)−6,9,12,15,18−pentamethyl−1,6,9,12,15,18−hexahydro−(C60−Ih )[5,6]fullerene:[C60Me5 (CH2 3 CO2 Et]の製造>
60Me5 H(10.0mg,0.013mmol)のテトラヒドロフラン懸濁液(2.0mL)に、カリウム−t−ブトキシド(0.025mmol)のテトラヒドロフラン溶液(1.0mol/L,0.025mL)を25℃で加えた。反応液は赤色から黒色に変化した。ICH2 CH2 CH2 CO2 Et(7.6mg,0.031mmol)を反応液に添加した。1時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(0.05mL)で反応を停止させた。溶媒を減圧で除去した後、残ったオレンジ色の固体をトルエンに溶解した。このオレンジ色の溶液にメタノールを加えて析出させることで、表題化合物を赤色固体(10.9mg,0.012mmol,収率92%)として得た。以下にこのものの機器分析データを示す。
【0070】
1H−NMR(400MHz,CDCl3 ):δ 1.38(t,3H,OCH2 3 ),2.19(m,2H,C60CH2 2 ),2.21(s,6H,C60Me),2.32(t,C2 COO),2.35(s,6H,C60Me),2.38(s,3H,C60Me),2.59(m,2H,C602 ),4.27(q,2H,OC2 CH3 ).
13C−NMR(100MHz,CDCl3 ):δ 14.45(3C,OCH2 3 ),18.75(2C,C60CH2 2 ),24.39(2C,C60CH3 ),27.24(2C,C60CH3 ),29.36(1C,C60CH3 ),34.42(2C,C602 ),34.62(2C,2 COO),50.66(2C,CH3 (C60)),52.92(2C,CH3 (C60)),54.11(1C,CH3 (C60)),60.48(O2 CH3 ),60.52(1C,CH2 (C60)),142.73(2C,C60),143.41(2C,C60),143.88(2C,C60),143.92(2C,C60),144.29(2C,C60),144.35(2C,C60),144.47(2C,C60),144.60(2C,C60),144.88(2C,C60),144.90(2C,C60),145.53(2C,C60),145.95(2C,C60),146.70(1C,C60),146.89(2C,C60),146.91(2C,C60),147.80(2C,C60),147.88(2C,C60),148.05(2C,C60),148.10(2C,C60),148.28(1C,C60),148.45(2C,C60),148.63(2C,C60),149.08(2C,C60),149.46(2C,C60),153.69(2C,C60),155.58(2C,C60),155.94(2C,C60),157.91(2C,C60).
【0071】
参考例5
<1−methyl−6,9,12,15,18−pentaphenyl−1,6,9,12,15,18−hexahydro−(C60−Ih )[5,6]fullerene:[C60Ph5 Me]の製造>
60(phenyl)5 H(300mg,271μmol)のテトラヒドロフラン懸濁液(15mL)に、カリウム−t−ブトキシド(325μmol)のテトラヒドロフラン溶液(1.0mol/L,325μL)を25℃で添加した。反応液は赤色から黒色に変化した。次いでヨウ化メチル(192mg,1.35mmol)をこの溶液に加え、1時間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(150μL)で反応を停止させた。反応液にトルエン150mLを加えて生成物を溶解させたものを、シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:トルエン/クロロホルム=9/1)に通し、濃縮後真空乾燥を行い、表題化合物を赤色固体(243mg,217μmol,収率80%)として得た。以下にこのものの機器分析データを示す。
【0072】
1H−NMR(270MHz、CDCl3 ):δ 1.48(s,Me,3H),7.37−7.07(m,Ph,17H),7.74(m,Ph,4H),7.87(m,Ph,4H).
【0073】
参考例6、比較例1
<酸化テスト> C60Ph5 Hのトルエン溶液(0.33mg/mL、90mL)の比較例1と参考例5で得たC60Ph5 Meのトルエン溶液(0.33mg/mL、90mL)をそれぞれ作製し、室温空気下で放置した。数日毎に、0.5mLずつ試料を取り出し、HPLCでその経時変化を分析した。HPLC分析条件は、ODS、カラムサイズ:150mm*4.6mmφ、溶離液:トルエン/メタノール=4/6、流速:1.0mL/min、検出器:UV290nm)。観測される全ピーク面積に占める、C60Ph5 HもしくはC60Ph5 Meのピーク面積の割合の経時的な変化を表2に、このデータをグラフとしたものを図2に(横軸に時間(日)、縦軸にHPLCのピーク面積、○印は参考例6、×印は比較例1)示す。C60Ph5 H由来のピークは、0.45%/日程度の速度で減少しており、65日後には70.1%に達している。これに対し、C60Ph5 Me由来のピークはほとんど減少せず、63日経過後でもテスト開始当初の面積比98.8%と同程度の面積比98.3%である。また、C60Ph5 H溶液の初期のHPLCチャートを図3(全ピーク面積に占める出発化合物の面積割合は98.5%である。)に、58日経過後のHPLCチャートを図4(全ピーク面積に占める出発化合物の面積割合は71.4%である。)に、C60Ph5 Meのテスト開始時のHPLCチャートを図5(全ピーク面積に占める出発化合物の面積割合は98.8%である。)に、63日経過後のHPLCチャートを図6(全ピーク面積に占める出発化合物の面積割合は98.3%である。)に示す。これらの図からも、Ph5 60Hが高極性の物質に変化してC60Ph5 Hの面積割合が大きく低下している一方、C60Ph5 Meは溶液中で長期保存しても面積割合が殆ど変化していないことがわかる。
【0074】
【表2】

【0075】
実施例4、5および比較例2、3
<溶解度テスト>
実施例1で合成したC60Me5 (CH2 3 OH、および実施例3で合成したC60Me5 (CH2 3 CO2 Etについて、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム(CHCl3 )、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)および酢酸エチル(EtOAc)に対する25℃での溶解度(単位mg/mL)を各々測定した。また、C60(比較例2)、C60Me5 H(比較例3)の溶解度も同様にそれぞれ測定した。これらの結果を合わせて表3に示す。表3によると、−(CH2 3 OH基、−(CH2 3 CO2 Et基の導入により、溶解度が大幅に向上している。
【0076】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】参考例3で製造したC60Me5 CH2 PhのX線結晶構造解析の結果を示す図である。
【図2】参考例6及び比較例1のC60Ph5 HおよびC60Ph5 Meの、それぞれトルエン溶液の空気中放置での変化をHPLCで測定したグラフ(全ピーク面積に占める出発化合物の面積割合の経時変化)である。
【図3】比較例1で、C60Ph5 Hの酸化テストの初期における溶液のHPLCチャートである。
【図4】比較例1で、C60Ph5 Hの酸化テストの58日目における溶液のHPLCチャートである。
【図5】参考例6で、C60Ph5 Meの酸化テストの初期における溶液のHPLCチャートである。
【図6】参考例6で、C60Ph5 Meの酸化テストの63日目における溶液のHPLCチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1 保持時間 6.068分
2 保持時間 4.734分
3 保持時間 5.142分
4 保持時間 5.535分
5 保持時間 6.053分
6 保持時間 5.742分
7 保持時間 5.715分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)の部分構造を有することを特徴とするフラーレン誘導体。
【化1】

(式中、C1 〜C8 は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表し、C6 〜C8 は、各々独立に炭素数1〜50の有機基と結合しており、C1 は、置換基として極性官能基を有する炭素数1〜20のアルキル基と結合している。)
【請求項2】
一般式Cn (R1 5 (R2 )で表されることを特徴とするフラーレン誘導体。
(式中、Cn は炭素数nのフラーレン骨格を表し、R1 は各々独立に炭素数1〜50の有機基を表し、R2 は、置換基として極性官能基を有する炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【請求項3】
以下の一般式(II)の部分構造を有することを特徴とするフラーレン誘導体。
【化2】

(式中、C1 〜C10は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表し、C6 〜C10は、各々独立に炭素数1〜50の有機基と結合しており、C1 は、置換基として極性官能基を有する炭素数1〜20のアルキル基と結合している。)
【請求項4】
フラーレン骨格がフラーレンC60であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のフラーレン誘導体。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のフラーレン誘導体において、フラーレン骨格のシクロペンタジエン環上の炭素原子に隣接する炭素原子がアルキル基又はアリール基と結合していることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のフラーレン誘導体。
【請求項6】
フラーレン骨格のシクロペンタジエン環上に水素原子を有するフラーレン誘導体をアルキル化することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項7】
フラーレン骨格のシクロペンタジエン環上にハロゲン原子を有するフラーレン誘導体とアリールアルカン化合物とを、原子価2以下の遷移金属錯体の存在下で反応させることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のフラーレン誘導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−231114(P2008−231114A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123165(P2008−123165)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【分割の表示】特願2004−157248(P2004−157248)の分割
【原出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年3月5日 社団法人 日本化学会発行の「Chemistry Letters Vol.33 No.3 2004」に発表
【出願人】(597017258)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】