説明

フリル付き織布

【課題】きれいなフリル付きスカートやフリル付きブラウス等を低コストで製造することが可能なフリル付き織布を提供する。
【解決手段】上下に二重に織り重ねた接結部1の終端側の部分に、フリル布部2とベース布部3を前記フリル布部2を上にして上下に分離するように設けた構造とした。このようにしたフリル付き織布は、接結部1とフリル布部2及びベース布部3を連続して織り上げることができるので、フリル布部2及びベース布部3の終端のほつれを防止するためのメローロック等の加工を施すだけで簡単にきれいなフリルを作ることができるものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリル付きスカートやフリルつきブラウス等の製造に用いるフリル付き織布に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料品分野において、フリル付きスカートやフリルつきブラウス等を製造する場合、フリルの端部処理や縫い付けは、殆どミシンを使用した縫製により行われている。
例えば、1段のフリル付きスカートを製造する場合、従来は、所望の布地を所望の幅に裁断して1枚のフリル布を作り、そのフリル布の端部のほつれを防ぐための処理を行う。フリルにギャザーを付ける場合は、フリル布の上端側部分を縫い縮めることで、均等にギャザーを施しておく。そして、フリルとは別に作成したスカート布にフリル布の上辺部を縫い付けてフリル付きスカートとして完成させる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】渡部サト著/「直線縫いなのにきれいなシルエットのスカート」/河出書房新社出版/2006年5月30日発行/第41頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術においては、以下の問題がある。
【0005】
すなわち、従来の技術では、上述したフリル布を作るための布地の裁断作業としては2工程必要であり、またフリル布の端部のほつれを防ぐための処理方法としては、メローロック、三巻、千鳥三巻等の方法があるが、その作業として2工程が必要である。フリルにギャザーを付ける場合は、上記のように各フリル布の上端側部分を縫い縮めるが、その作業として1工程が必要である。スカート布にフリル布を縫い付ける場合、仕上げをきれいにみせるには、フリルの縫い付け位置に線で印をつけ、その目印の線の位置にフリル布を本縫ミシンで縫い付けるという手順がとられるが、この作業に2工程を必要とし、更にフリル布の縫い付け位置を隠すために表縫ミシンで中縫いし、本縫ミシンで押えステッチを施すための作業として2工程が必要である。
【0006】
このように従来の技術では1枚のフリルを作ってスカート布に縫い付ける場合でも、最低9工程分の作業を必要とするため、製造に多くの手間と時間がかかり、製造コストが高くなるという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明のフリル付き織布は、重ね織りした接結部の終端側の部分に、フリル布部とベース布部を前記フリル布部を上にして上下に分離するように設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このようにした本発明は、接結部とフリル布部及びベース布部を連続して織り上げることができるので、フリル布部及びベース布部の終端のほつれを防止するためのメローロック等の加工を施すだけで簡単にきれいなフリルを作ることができ、従来に比べて1/4の工程でフリルを完成させることができると共に、熟練を要する難しい縫製の技術が不要となるので、簡単にきれいなフリル付きスカートやフリル付きブラウス等を低コストで製造することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施例を示す一重フリル付き織布の側面図
【図2】第1の実施例を示す要部斜視図
【図3】第2の実施例を示す二重フリル付き織布の側面図
【図4】第2の実施例を示す要部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明によるフリル付き織布の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は第1の実施例を示す一重フリル付き織布の側面図、図2は第1の実施例を示す要部斜視図で、図において1は接結部、2はフリル布部、3はベース布部であり、これら接結部1、フリル布部2、ベース布部3は、ジャカード織機により連続的かつ一体的に織り上げられている。
【0012】
ここで、接結部1はスカートやブラウス等の主要部となる布地部分で、上下に二重に重ね織りした織物組織が互いに分離しないように、上下の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を結合させた構造を有しており、この接結部1の裾側(終端側)の部分に、飾りのフリルとなるフリル布部2と、その下地となるベース布部3が、フリル布部2を上にして上下に分離するように設けられていて、フリル布部2とベース布部3の終端は連続する次の接結部1の始端に連結するように織られている。
【0013】
接結部1とフリル布部2及びベース布部3との境目部分は、横方向の直線状だけでなくデザイン性を向上させるために波状、ジグザグ状、斜線状等の任意の形状にすることができ、また境目部分に図2に示したように花柄等の模様4を織り込むことも可能である。
【0014】
フリル布部2にギャザーを付ける場合は、接結部1のフリル布部2及びベース布部3との接する部分に緯糸として収縮性を有するウレタン糸を用い、このウレタン糸を伸ばして糊で固めておき、緯糸として織り込んだ後、糊を洗い落とすことで前記のウレタン糸を収縮させ、それによりフリル布部2に均等な間隔でギャザーを作り出すことができる。
【0015】
次に上述した構成の作用について説明すると、まず図1に示した(イ)の部分、つまりフリル布部2及びベース布部3の終端と次の接結部1の始端の連結部分を鋏等の切断具で切断する。これによりフリル布部2とベース布部3は、図2に示したように終端で切り離されるので、フリル布部2とベース布部3の終端のほつれを防止するため、メローロック等の加工を施すことで、フリルが完成する。
【0016】
尚、フリル布部2及びベース布部3の終端と次の接結部1の始端の連結部分を切断した後、あるいは切断時にフリル布部2の裾の終端部を波状、ジグザグ状、斜線状等の任意の形状に切断することでデザイン性を向上させることができる。
【0017】
このようにしてフリルを完成させたフリル付き織布は、縫製によりフリル付きスカートを容易に製造することができる他、このフリル付き織布を利用することで胴部や袖にフリルのついたブラウス等の衣装を製造することも可能であり、更にフリルつきの装飾品、小物等の製造に用いることができる。
【0018】
以上説明したように第1の実施例によるフリル付き織布は、上下に二重に織り重ねた接結部1と、この接結部1の裾側部分に、飾りのフリルとなるフリル布部2と、その下地となるベース布部3が、フリル布部2を上にして上下に分離するように設けられるように連続的かつ一体的に織り上げたものとしているため、フリル布部2とベース布部3の終端のほつれを防止するためのメローロック等の加工を施すだけで簡単にきれいなフリルを作ることができ、しかも接結部1とフリル布部2とベース布部3は、例えばスカートを製造する場合、スカートのウエストから裾まで一体に織り上げることができるので、製造が極めて容易である。
【0019】
また、接結部1のフリル布部2及びベース布部3と接する部分に、伸ばして糊で固めたウレタン糸を緯糸として織り込み、その糊を洗い落としてウレタン糸を収縮させることによりフリル布部2に均等な間隔でギャザーを作り出すことができる。
【0020】
このように第1の実施例によるフリル付き織布は、1枚のフリル布部と1枚のベース布部の終端のほつれを防止するためのメローロック等の加工を施すだけの2工程でフリルを作ることができるので、フリルの完成までの工程が従来行われていた縫製による通常のフリル加工に比べて短縮され、従来に比べてほぼ1/4の工程で完成させることができ、しかも熟練を要する難しい縫製の技術が不要となるので、簡単にきれいなフリル付きスカートやフリル付きブラウス等を低コストで製造することができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0021】
図3は第2の実施例を示す二重フリル付き織布の側面図、図4は第2の実施例を示す要部斜視図で、この第2の実施例では、スカートやブラウス等の主要部となる布地部分として第1の接結部1a及び第2の接結部1bと、飾りのフリルとなる上フリル布部2a、下フリル布部2bと、その下地となるベース布部3がジャカード織機により連続的かつ一体的に織り上げられている。
【0022】
第1の接結部1aは、上下に三重に重ね織りし、その三重になっている織物組織が互いに分離しないように、上下の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を結合させた構造を有しており、第1の接結部1aに続く第2の接結部1bは上下に二重に重ね織りして、その二重になっている織物組織が互いに分離しないように、上下の経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を結合させた構造を有している。つまり、二重の第2の接結部1bは三重の第1の接結部1aの下2層を延長させたかたちで織られている。
【0023】
上フリル布部2aは第1の接結部1aの裾側(終端側)の部分に設けられ、下フリル布部2bとベース布部3は、上フリル布部2aの下側に位置するように第2の接結部1bの裾側(終端側)の部分に下フリル布部2bを上にして上下に分離するように設けられており、そして、これら上フリル布部2a及び下フリル布部2bとベース布部3の終端は連続する次の接結部1aの始端に連結するように織られている。
【0024】
この第2の実施例においても、第1の接結部1aと上フリル布部2aとの境目部分は、横方向の直線状だけでなくデザイン性を向上させるために波状、ジグザグ状、斜線状等、任意の形状にすることができ、また境目部分に第1の実施例と同様に花柄等の模様4(図2参照)を織り込むことも可能である。無論、第2の接結部1bと下フリル布部2bおよびベース布部3との境目部分も、同様にすることが可能である。
【0025】
また、上フリル布部2a及び下フリル布部2bにギャザーを付ける場合は、第1の接結部1aの上フリル布部2aと接する部分、及び第2の接結部1bと下フリル布部2b及びベース布部3と接する部分に、緯糸として収縮性を有する糸としてウレタン糸を用い、このウレタン糸を伸ばして糊で固めておき、緯糸として織り込んだ後、糊を洗い落とすことで、前記のウレタン糸を収縮させ、それにより上フリル布部2a及び下フリル布部2bに均等な間隔でギャザーを作り出すことができる。
【0026】
次に上述した構成の作用について説明すると、まず図3に示した(イ)の部分、つまり上フリル布部2a及び下フリル布部2bとベース布部3の終端と次の第1の接結部1aの始端の連結部分を鋏等の切断具で切断する。これにより上フリル布部2a及び下フリル布部2bとベース布部3は、図4に示したように終端で切り離されるので、上フリル布部2a及び下フリル布部2bとベース布部3の終端のほつれを防止するため、それぞれメローロック等の加工を施すことで、フリルが完成する。
【0027】
尚、上フリル布部2a及び下フリル布部2bとベース布部3の終端と次の第1の接結部1aの始端の連結部分を切断した後、あるいは切断時に上フリル布部2a及び下フリル布部2bの終端部を波状、ジグザグ状、斜線状等の任意の形状に切断することでデザイン性を向上させることができる。
【0028】
このようにしてフリルを完成させた二重フリル付き織布は、縫製により二重フリル付きスカートを容易に製造することができる他、このフリル付き織布を利用することで胴部や袖にフリルのついたブラウス等の衣装を製造することも可能であり、更にフリルつきの装飾品、小物等の製造に用いることができる。
【0029】
以上説明したように第2の実施例による二重フリル付き織布は、上下に三重に重ね織りした第1の接結部1aと、上下に二重に重ね織りした第2の接結部1bと、第1の接結部1aの裾側部分に設けられた飾りのフリルとなる上フリル布部2aと、第2の接結部1bの裾側部分に設けられた飾りのフリルとなる下フリル布部2b及びその下地となるベース布部3を連続的かつ一体的に織り上げたものとしているため、上フリル布部2a及び下フリル布部2bとベース布部3の終端のほつれを防止するためのメローロック等の加工を施すだけで簡単にきれいな二重のフリルを作ることができ、しかも第1の接結部1a及び第2の接結部1bと、上フリル布部2a及び下フリル布部2bとベース布部3は、例えばスカートを製造する場合、スカートのウエストから裾まで一体に織り上げることができるので、製造が極めて容易である。
【0030】
また、第1の接結部1aの上フリル布部2aと接する部分、及び第2の接結部1bと下フリル布部2b及びベース布部3と接する部分に、伸ばして糊で固めたウレタン糸を緯糸として織り込むことで、その糊を洗い落としてウレタン糸を収縮させることにより上フリル布部2a及び下フリル布部2bに均等な間隔でギャザーを作り出すことができる。
【0031】
このように第2の実施例による二重フリル付き織布は、2枚のフリル布部と1枚のベース布部の終端のほつれを防止するためのメローロック等の加工を施すだけの3工程でフリルを作ることができるので、フリルの完成までに要する工程が、従来行われていた縫製による通常のフリル加工に比べて短縮され、従来に比べてほぼ1/3の工程で完成させることができ、しかも熟練を要する難しい縫製の技術が不要となるので、簡単にきれいな二重フリル付きスカートや二重フリル付きブラウス等を低コストで製造することができるという効果が得られる。
【0032】
このようにして二重フリルを完成させたフリル付き織布は、縫製によりフリル付きスカートを容易に製造することができる他、このフリル付き織布を利用することで胴部や袖に二重フリルのついたブラウス等の衣装を製造することも可能であり、更に二重フリルつきの装飾品、小物等の製造に用いることができる。
【0033】
このように第2の実施例による二重フリル付き織布は、2枚のフリル布部と1枚のベース布部の終端のほつれを防止するためのメローロック等の加工を施すだけの3工程で二重フリルを作ることができるので、二重フリルの完成までの工程が縫製による通常のフリル加工に比べて短縮され、従来に比べて1/3の工程で完成させることができ、しかも熟練を要する難しい縫製の技術が不要となるので、簡単にきれいな二重フリル付きスカートやフリル付きブラウス等を低コストで製造することができるという効果が得られる。
【0034】
尚、上述した第1、第2実施例では、全体をジャカード織により織り上げるものとしたが、ドビー織等により織り上げるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 接結部
1a 第1の接結部
1b 第2の接結部
2 フリル布部
2a 上フリル布部
2b 下フリル布部
3 ベース布部
4 模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね織りした接結部の終端側の部分に、フリル布部とベース布部を前記フリル布部を上にして上下に分離するように設けたことを特徴とするフリル付き織布。
【請求項2】
上下に二重に重ね織りした接結部の終端側の部分に、1枚のフリル布部とベース布部を前記フリル布部を上にして上下に分離するように設けたことを特徴とするフリル付き織布。
【請求項3】
請求項1または2記載のフリル付き織布において、
前記接結部のフリル布部に接する部分に、伸ばして糊で固めた収縮性を有する糸を緯糸として織り込み、その糊を洗い落して前記接結部のフリル布部に接する部分を収縮させることによりフリル布部に形成されるギャザーを有することを特徴とするフリル付き織布。
【請求項4】
上下に三重に重ね織りした第1の接結部の終端から延長するように上下に二重に織り重ねた第2の接結部を設け、前記第1の接結部の終端側の部分に上フリル布部を設けると共に、前記第2の接結部の終端側の部分に、下フリル布部とベース布部を前記下フリル布部を上にして上下に分離するように設けたことを特徴とするフリル付き織布。
【請求項5】
請求項4記載のフリル付き織布において、
前記第1の接結部の上フリル布部に接する部分と、前記第2の接結部の下フリル布部及びベース布部に接する部分に、それぞれ伸ばして糊で固めた収縮性を有する糸を緯糸として織り込み、その糊を洗い落して前記第1の接結部の上フリル布部に接する部分及び前記第2の接結部の下フリル布部及びベース布部に接する部分を収縮させることにより前記上フリル布部及び下フリル布部に形成されるギャザーを有することを特徴とするフリル付き織布。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフリル付き織布において、
全体がジャカード織りまたはドビー織りにより作成されていることを特徴とするフリル付き織布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−87437(P2012−87437A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236912(P2010−236912)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(510189961)イヅハラ産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】