説明

フリーストップ装置

【課題】 フリーストップ装置を、製造コストの増大を抑えつつ板ばねの抜け出しを確実に防止すると共に均一な制動特性を得ることが可能なものとする。
【解決手段】 断面が略U字形状をなすように曲成された板ばね3を有し、この板ばねが、互いに対向する一対の脚板部21間にシャフト1を挟み込むと共に、このシャフトに枢着するブラケット2に脚板部を係止させることによってシャフトに制動力を付与するようにしたフリーストップ装置において、脚板部におけるシャフトとの接触部分21aを平板状に形成すると共に、この接触部分21aより先端部分21b寄りの部分に、シャフト並びにブラケットのいずれかに係合してブラケットからの抜け出しを規制する抜け止め部26を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、相対移動可能な2部材を任意の位置に停止保持するためのフリーストップ装置に関し、特に断面が略U字形状をなすように曲成され、互いに対向する一対の脚板部間にシャフトを挟み込む板ばねにより所要の制動力を得るようにしたフリーストップ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】コピー機等の印刷機構を備えたOA機器の多段式給紙トレイにおいては、上側の給紙トレイを上向きに傾動させて下側の給紙トレイに用紙を収容するようにしたものがある。このような給紙トレイでは、傾動させた際に任意の角度で停止した状態に保持されるようにヒンジ部にフリーストップ装置が設けられており、この種のフリーストップ装置として、断面が略U字形状をなすように曲成され、互いに対向する一対の脚板部間にシャフトを挟み込む板ばねにより所要の制動力を得るようにしたものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このようなフリーストップ装置では、シャフト並びにこれに枢着されるブラケットがそれぞれ本体側の支持部材並びに給紙トレイに相対回転不能に結合され、このとき、板ばねをブラケットに係止させて板ばねのブラケットに対する相対回動を規制しておくことで、板ばねのシャフトに対する制動力が給紙トレイと支持部材との間に回転抵抗力として働くようになる。そして、シャフトの相対回動によってブラケットから離脱する向きの力が板ばねに作用することから、この離脱力に抗して板ばねをブラケットに拘束する必要があり、この場合、製造コストをさほど増大させなくても板ばねの離脱を確実に防止することが可能な構造とすることが望まれる。
【0004】この要望に対しては、シャフトとの接触部分の両側をシャフトの径より幅狭に絞り込んだ形状に形成することで、シャフトに対する板ばねのずれが抑制され、ブラケットからの離脱を防止することができる。ところが、この構成では、動作の円滑化のために高い精度が要求されるシャフトとの接触部分が屈曲した断面形状となるため、所要の制動力を高い精度で確保しようとすると製造コストが嵩む不都合が生じる。特に、制動力を角度に応じて変化させるためにシャフトを円形断面の一部切り欠いた略D字形状断面とした場合、僅かな寸法差で制動力の変化量や変化位置が大きく変動するため、特性の均一化がより一層難しくなる。
【0005】本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、製造コストの増大を抑えつつ板ばねの抜け出しを確実に防止すると共に均一な制動特性を得ることが可能なフリーストップ装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような目的を果たすために、本発明においては、断面が略U字形状をなすように曲成された板ばね3を有し、この板ばねが、互いに対向する一対の脚板部21間にシャフト1を挟み込むと共に、このシャフトに枢着するブラケット2に脚板部を係止させることによってシャフトに制動力を付与するようにしたフリーストップ装置において、脚板部におけるシャフトとの接触部分21aを真直な断面形状の平板状に形成すると共に、この接触部分21aより先端部分21b寄りの部分に、シャフト並びにブラケットのいずれかに係合してブラケットからの抜け出しを規制する抜け止め部26を設けたものとした。
【0007】これによると、板ばねのブラケットからの抜け出しを確実に防止することができる上に、脚板部のシャフトとの接触部分が平板状となるため、容易に高い精度を得ることができ、均一な制動特性が得られる。特にシャフトを円形断面の一部を切り欠いた略D字形状断面としても、制動力の変化量や変化位置等の制動特性のばらつきを抑えることが可能となる。そして、抜け止め部が設けられる先端側の部分は、シャフトとの接触部分とは異なり、高い精度が要求されないため、製造工程をさほど煩雑化しなくて済む。特に、板ばねを金属製板材から形成する際に所定形状に切断した上で折り曲げる等の塑性加工により前記の抜け止め部を得るものとして製造工程を簡略化することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に添付の図面を参照して本発明の構成を詳細に説明する。
【0009】図1及び図2は、本発明に基づき構成されたフリーストップ装置の第1の実施形態を示している。このフリーストップ装置は、シャフト1と、これを回転自在に保持するブラケット2と、シャフト1を挟み込んでこれに制動力を与える板ばね3とからなっており、図3R>3に示すように、コピー機の多段式給紙トレイを構成する給紙トレイ4のヒンジ部分に介装されて給紙トレイ4を任意の傾斜角度に停止保持させるものである。
【0010】シャフト1は、その末端の連結部6が、本体側の支持部材7に対して所定の遊びをもって相対回転不能となるように連結されており、他方、ブラケット2は、ビス8にて給紙トレイ4の基部に対して固定されている。図1及び図2は、図3に示す取付状態に対して、シャフト1を中心にして180°回転させた状態を示しており、図3において給紙トレイ4を矢印で示すように上向きに回動させた場合、図1においてはシャフト1に対してブラケット2が時計回りに回動することになる。なお、図3では、シャフト1の一端側のみを示しているが、これと同様にしてシャフト1の他端が本体側の支持部材に連結支持されている。
【0011】ブラケット2は、金属製板材の折り曲げ成形により得られるものであり、ビス8が螺合するねじ孔10が設けられた底壁部12と、この底壁部12の互いに対向する側縁に立設された側壁部13と、これとは直交する底壁部12の側縁に立設された軸受け部14とからなっている。底壁部12には、板ばね3が係合する係止孔16が開設されている。軸受け部14には、シャフト1が挿通される軸受け孔17が開設されている。ブラケット2は、シャフト1の周面に形成された環状溝18に止め輪19を装着することにより、軸方向の変位が規制される。
【0012】板ばね3は、所要のばね特性を有する金属製板材の折り曲げ成形により得られるものであり、断面が略U字形状をなすように曲成されている。この板ばね3は、ブラケット2の両軸受け部14間に挿設され、互いに対向する一対の脚板部21間にシャフト1を挟み込むようになっている。なお、ここでは、ブラケット2に対して一対の板ばね3が装着可能となっている。
【0013】板ばね3の脚板部21におけるシャフト1との接触部分21aは、真直な断面形状をなす平板状に形成されている。このため、シャフト1に対する制動力を左右する両脚板部21間の離間寸法等を高い精度で容易に得ることができる。そして、円形断面の一部を切り欠いた略D字形状断面をなすシャフト1に対して精度良く接触し、制動力の変化量や変化位置等の制動特性のばらつきを抑えることができる。
【0014】一対の脚板部21の先端部分21bは、ブラケット2の係止孔16に嵌入し、その開口縁部に係止されることにより、板ばね3のブラケット2に対する相対回転が規制される。
【0015】したがって、図1に示すように、板ばね3の脚板部21がシャフト1の切り欠き面23に接触した状態から、シャフト1を中心にしてブラケット2を時計回り回動すると、脚板部21との接触面が切り欠き面23から円弧状断面をなす円周面部分24に移行して板ばね3の両脚板部21間が押し広げられ、シャフト1とブラケット2との間に所要の制動力が作用する。これにより、板ばね3とシャフト1とは、それらの間に生じる摩擦力を越える外力が加わった時にのみ相対回転が可能となる。なお、シャフト1の切り欠き面23と円周面部分24との境界を曲面状に形成することで、回動動作を円滑化することができる。
【0016】脚板部21におけるシャフト1との接触部分21aより先端部分21b寄りの部分には、シャフト1に係合して板ばね3のずれを阻止する突片26が、内向きに突出した態様で形成されている。この突片26は、所定形状に打ち抜かれた凸部を内側に折り曲げることで得られる。ここでは、両脚板部21におけるシャフト1の軸線方向の両端縁からそれぞれ延出した態様で一対の突片26が設けられている。これにより、突片26がシャフト1に係合することで板ばね3の図中上方への移動が規制され、板ばね3の抜け出しを確実に防止することができる。
【0017】図4及び図5は、本発明に基づき構成されたフリーストップ装置の第2の実施形態を示している。ここでは、板ばね31のずれを阻止する突片32が、脚板部33の平板状をなすシャフト1との接触部分33aより先端部分33b寄りの部分から外向きに突出した態様で設けられている。この突片32は、脚板部33の軸線方向の中間部分を切り起こす、より具体的にはシャフト1の軸線に直交する方向に2条の切れ目を入れてその中間部分を外側に折り返すことで得られる。
【0018】他方、ブラケット35の底壁部36と側壁部37とには、板ばね31の突片32が嵌入する係止孔39が開設されている。ここでは、板ばね31の相対回転を規制するために先端部分33bが係止される係止孔34と連通した態様で係止孔39が設けられている。突片32は係止孔39の上縁部に係合して、板ばね31の図中上方への移動が規制され、これにより板ばね31の抜け出しが確実に防止される。なお、この実施形態では、ブラケット35のその他の部分並びにシャフト1については、前記第1の実施形態と同様であり、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0019】図6及び図7は、本発明に基づき構成されたフリーストップ装置の第3の実施形態を示している。ここでは、板ばね41のずれを阻止するためにシャフト1を外囲するリング状片42が、脚板部43から内向きに延出した態様で設けられている。このリング状片42は、所定形状に打ち抜いた上でL字形状断面に折り曲げることにより得られ、脚板部43が精度良く所要のばね特性を発現可能なように、脚板部43における平板状をなすシャフト1との接触部分43aより先端部分43b寄りの部分にて連結されており、接触部分43aとは切り欠き溝46を挟んで隔てられている。また、リング状片42の基部44には、シャフト1の周面と接触しないように外向きに湾曲された湾曲部45が形成されている。
【0020】この場合、リング状片42の中心孔の内周縁がシャフト1に係合することで、板ばね41の図中上方への移動が規制され、板ばね41の抜け出しを確実に防止することができ、さらに板ばね41の図中下方へのずれも規制される。なお、前記の実施形態と同様に、脚板部43の先端部分43bがブラケット2の係止孔16に係止されて板ばね41のブラケット2に対する相対回転が規制されている。この他、ブラケット2並びにシャフト1は、前記第1の実施形態と同様であり、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0021】図8及び図9は、本発明に基づき構成されたフリーストップ装置の第4の実施形態を示している。ここでは、板ばね51のずれを阻止するために、板ばね51の脚板部53の先端部分53bに、突条52が外向きに突出した態様で設けられている。この突条52は、脚板部53における軸線方向の中間部分を半抜き加工により押し出すことで得られる。脚板部53におけるシャフト1との接触部分53aは、前記実施形態と同様に平板状に形成されている。
【0022】他方、ブラケット55の底壁部56には、板ばね21の相対回転を規制するために、脚板部53の先端部分53bが係止される係止孔57が開設されており、その開口縁部に突条52が嵌合する凹部58が形成されている。これにより、板ばね51の図中上方への移動が規制され、板ばね21の抜け出しを確実に防止することができる。なお、この実施形態では、ブラケット55のその他の部分並びにシャフト1については、前記第1の実施形態と同様であり、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0023】なお、本発明によるフリーストップ装置は、前記のようにコピー機、並びにファックス機やプリンタ等のOA機器の給紙トレイの他に、原稿押さえパネルやメンテナンス用の開閉パネルのヒンジ部分に適用することができる。さらに、自動車の車室内の小物入れの開閉蓋や、車載用ディスプレイの姿勢調整機構等、回動体の落下防止並びに角度調整手段として広く利用することができる。
【0024】
【発明の効果】このように本発明によれば、板ばねの抜け出しを確実に防止することができる上に、板ばねの脚板部におけるシャフトとの接触部分を平板状としたため、容易に高い精度を得ることができる。このため、ばらつきがなく均一な制動特性を得ることができ、特にシャフトを略D字形状断面とした場合でも、制動力の変化量や変化位置等の制動特性のばらつきを抑えることができる。そして、抜け止め部が設けられる先端側の部分は、シャフトとの接触部分とは異なり、高い精度が要求されないため、製造工程をさほど煩雑化しなくて済み、製造コストの増大を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づき構成されたフリーストップ装置の第1の実施形態を示す断面図。
【図2】図1に示したフリーストップ装置の分解斜視図。
【図3】図1に示したフリーストップ装置が適用された給紙トレイの要部斜視図。
【図4】本発明に基づき構成されたフリーストップ装置の第2の実施形態を示す断面図。
【図5】図4に示したフリーストップ装置の分解斜視図。
【図6】本発明に基づき構成されたフリーストップ装置の第3の実施形態を示す断面図。
【図7】図6に示したフリーストップ装置の分解斜視図。
【図8】本発明に基づき構成されたフリーストップ装置の第4の実施形態を示す断面図。
【図9】図8に示したフリーストップ装置の分解斜視図。
【符号の説明】
1 シャフト
2・35・55 ブラケット
3・31・41・51 板ばね
21・33・43・53 脚板部
21a・33a・43a・53a 接触部分
21b・33b・43b・53b 先端部分
26・32 突片(抜け止め部)
42 リング状片(抜け止め部)
52 突条(抜け止め部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 断面が略U字形状をなすように曲成された板ばねを有し、該板ばねは、互いに対向する一対の脚板部間にシャフトを挟み込むと共に、該シャフトに枢着するブラケットに前記脚板部を係止させることによって前記シャフトに制動力を付与するようにしたフリーストップ装置であって、前記脚板部における前記シャフトとの接触部分を平板状に形成すると共に、この接触部分より先端側の部分に、前記シャフト並びに前記ブラケットのいずれかに係合して前記ブラケットからの抜け出しを規制する抜け止め部を設けたことを特徴とするフリーストップ装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate