説明

フリーズドライジャムの製造方法、フリーズドライジャム用添加剤、フリーズドライジャム、及び復元ジャム

【課題】本発明は、ジャムが凍結乾燥処理されてなるフリーズドライジャムの製造方法、フリーズドライジャムを製造する際に用いられるフリーズドライジャム用添加剤、フリーズドライジャム、及び、フリーズドライジャムに水分を含浸させてなる復元ジャムを提供することを目的とする。
【解決手段】デンプンの配合量が、ジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり2.5重量部以上となるように、デンプンをジャムに配合することによってデンプン配合ジャムを作成し、このデンプン配合ジャムを凍結乾燥処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーズドライジャムの製造方法、フリーズドライジャムを製造する際に用いられるフリーズドライジャム用添加剤、フリーズドライジャム、及び、フリーズドライジャムに水分を含浸させてなる復元ジャムに関する。
【背景技術】
【0002】
凍結乾燥処理が施されてなる食品(フリーズドライ食品)には、ビタミンなどの栄養成分や風味の変化が少ない、常温で長期保存ができる、低水分であるため比較的軽量で輸送性が高いなどの利点があり、現在、多岐の食品にわたって応用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−101763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の乾燥柑橘系果実スライスの製造方法は、スライスした柑橘系果実に、凍結乾燥処理を行うものである。
【0005】
しかしながら、果物の果肉や果汁或いは果皮を糖分と共に煮詰めて製造されるジャムについては、凍結乾燥処理を行っても、表面が乾燥するだけで十分な乾燥状態にすることはできず、又、この不十分な乾燥状態のものを水や湯に晒しても、水分を吸収せずに元の状態に復元させることはできなかった。これは、ジャム中に多量に含有される糖分が、凍結乾燥処理の際に結晶化して水分の昇華を阻害すると共に、復元の際に結晶化した糖分が水の吸収を妨げることが原因と考えられている。
【0006】
本発明は、前記技術的課題を解決するために開発されたものであって、十分な乾燥状態で、しかも復元性の良好なフリーズドライジャムを製造するためのフリーズドライジャムの製造方法、フリーズドライジャムを製造する際に用いられるフリーズドライジャム用添加剤、フリーズドライジャム、及び、フリーズドライジャムに水分を含浸させてなる復元ジャムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフリーズドライジャムの製造方法は、少なくとも、果物成分と、単糖類又は二糖類のうちのいずれか一方又は両方と、が混合された混合物を加熱濃縮することによってジャムを作成する加熱濃縮工程と、加熱濃縮工程中の混合物、若しくは、加熱濃縮工程終了後のジャムに対し、混合物若しくはジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり、デンプンが2.5重量部以上となるようにデンプンを配合するデンプン配合工程と、を実行することによってジャム中にデンプンが配合されてなるデンプン配合ジャムを作成し、更に、作成されたデンプン配合ジャムを凍結乾燥処理する凍結乾燥工程を実行することによってフリーズドライジャムを製造することを特徴とする(以下、本発明製造方法と称する)。
【0008】
本発明製造方法においては、まず、少なくとも、果物成分と、単糖類又は二糖類のうちのいずれか一方又は両方と、が混合された混合物を加熱濃縮することによってジャムを作成する加熱濃縮工程を実行する。
【0009】
ここで、「果物成分」とは、ジャムの素材として用いられる果物自体、果皮、果肉、及び果汁等を意味する。「果物」としては、一般的にジャムの素材として利用されているものであれば特に限定されるものではない。果物には、アンズ、リンゴ、ミカン、ブドウ、イチジク、ブルーベリー、ラズベリー或いは桃などの樹木に結実する狭義の果物のみならず、イチゴなどの果実的野菜も含まれる。
【0010】
又、「単糖類」とは、それ以上加水分解されない糖類、即ち糖類の最小構成単位を意味する。甘味料として一般的に使用されている単糖類の具体例としては、フルクトース(果糖)、グルコース(ブドウ糖)、ガラクトース(脳糖)、及びグルコノラクトン(蜂蜜酸)等を挙げることができる。又、「二糖類」とは、前記単糖類二分子がグリコシド結合によって一分子となった糖類を意味する。甘味料として一般的に使用されている二糖類の具体例としては、スクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)、及びラクトース(乳糖)等を挙げることができる。
【0011】
更に、本発明製造方法において「ジャム」とは、果物の果実や果汁或いは果皮等の果物成分に甘味料(単糖類や二糖類)を加え、加熱濃縮して作成された食品のことを意味する。ジャムの具体例としては、一般的にジャムと称されて流通されている果実のピュレーを糖分と共に加熱濃縮してなるものの他、果実の原型が比較的保たれているプレザーブ、柑橘類等の果皮が含まれているマーマレード等を挙げることができる。
【0012】
そして、本発明製造方法においては、加熱濃縮工程中の混合物、若しくは、加熱濃縮工程終了後のジャムに対し、混合物若しくはジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり、デンプンが2.5重量部以上となるようにデンプンを配合するデンプン配合工程を実行する。
【0013】
ここで、「混合物若しくはジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量」とは、本発明製造方法を実行する際に意図的に添加された単糖類や二糖類、及び、ジャムの素材として用いられる果物自体に含有されていた単糖類や二糖類の総量を意味する。ジャムの素材として用いられた果物成分中には5〜15重量%程度の単糖類や二糖類が含まれており、この果物成分中にもともと含まれていた単糖類や二糖類と、本発明製造方法を実行する際に意図的に添加された単糖類や二糖類とが、ジャムを食した際の甘みを感じさせる成分となる。
【0014】
一方、「デンプン」は、多数のα‐グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子(分子量数万から数百万程度)であり、スターチとも称されるものである。デンプンは、現在、ジャガイモ、小麦、トウモロコシ、サツマイモ、米、キャッサバ、クズ、片栗、緑豆、サゴヤシ、ワラビ、オオウバユリなどを起源植物として工業的に生産されている。デンプンには、アミロースとアミロペクチンが含まれ、起源植物によってその割合は異なる。本発明においては、いずれの起源植物からなるデンプンを用いても良いが、アミロペクチン含量の多いデンプンは老化しにくい性質があることから、アミロペクチンの割合が比較的多いイネ科やマメ科などの穀物を起源植物とする穀物起源のデンプンを用いることが好ましい。中でも、米、小麦、トウモロコシなどのイネ科を起源植物とするデンプンが好ましく、特に、低アミロース米、もち米、もちトウモロコシなどを起源植物とするアミロースの含有量が0〜15重量%程度のデンプンを用いることが好ましい。
【0015】
加熱濃縮工程とデンプン配合工程とを実行することによって、デンプン配合ジャムが作成される。デンプン配合工程は、加熱濃縮工程と平行して行っても良く、加熱工程終了後に行っても良い。即ち、本発明製造方法において、デンプンを配合するタイミングは、後述する凍結乾燥処理より前であれば特に限定されない。従って、商品として流通している市販のジャムに対してデンプンを配合しても良い。なお、デンプンを製造後のジャム若しくは市販のジャムに配合するにあたっては、デンプンを水や温水に溶解或いは分散させた上でジャムに配合したり、又は、ジャムを攪拌しつつ加熱しながらデンプンを配合したりすることによって、デンプンがジャム中において均一に分散するように配合することが好ましい。
【0016】
加熱濃縮工程とデンプン配合工程とを実行することによって作成されたデンプン配合ジャムには、デンプン配合ジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり、2.5重量部以上のデンプンが配合されることになる。
【0017】
デンプン配合ジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり、デンプンの配合量が2.5重量部未満となると、後述する凍結乾燥処理において、十分に乾燥されたフリーズドライジャムを製造できなくなったり、復元性が悪くなったりすることが確認されている。そこで、本発明製造方法においては、加熱濃縮工程中の混合物、若しくは、加熱濃縮工程終了後のジャムに対し、混合物若しくはジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり、デンプンが2.5重量部以上(より好ましくは、3.0重量部以上)となるようにデンプンを配合することが好ましい。
【0018】
一方、デンプン配合ジャム中のデンプンの配合量の上限については、凍結乾燥処理を行い得るか否かの観点からは、特に制限されない。但し、デンプンの配合量が多くなりすぎると、本発明製造方法によって製造されたフリーズドライジャムが復元された復元ジャムを食した際の風味や食感に影響を与える。
【0019】
そこで、本発明製造方法においては、加熱濃縮工程中の混合物、若しくは、加熱濃縮工程終了後のジャムに対し、混合物若しくはジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり、デンプンが20重量部以下(好ましくは、10重量部以下。更に好ましくは、5重量部以下。)、となるようにデンプンを配合することが好ましい。
【0020】
加熱濃縮工程とデンプン配合工程とを実行することによって、デンプン配合ジャムを作成した後、本発明製造方法においては、作成されたデンプン配合ジャムを凍結乾燥処理する凍結乾燥工程を実行することによってフリーズドライジャムを製造する。
【0021】
本発明製造方法において凍結乾燥処理は、一般的なフリーズドライ食品を製造する際の製造条件と同様にして行うことができる。凍結乾燥処理は、例えば、−20〜−50℃程度でデンプン配合ジャムを冷却することによってデンプン配合ジャム中に含まれる水分を氷の結晶として凍結させ、更に1〜100Pa程度の減圧条件下にて氷の結晶を昇華させることによって行えば良い。
【0022】
デンプン配合ジャムは、凍結乾燥処理によって十分に乾燥され、従来製造することが不可能であった十分な乾燥状態且つ復元性の良好なフリーズドライジャムとなる。デンプン配合ジャムが凍結乾燥処理によってフリーズドライジャムとなるメカニズムは現在のところ不明であるが、おそらくデンプンによって、凍結乾燥処理中におけるデンプン配合ジャム中の単糖類や二糖類の結晶化が抑制されることが原因と考えられる。又、単糖類や二糖類の結晶化が抑制されているから、湯や水に晒した際の復元性も良好になっているものと考えられる。
【0023】
本発明製造方法においては、更に、加熱濃縮工程中の混合物、加熱濃縮工程終了後のジャム、若しくはデンプン配合工程終了後のデンプン配合ジャムに対し、混合物、ジャム若しくはデンプン配合ジャムに含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり、デキストリンが0.5重量部以上となるようにデキストリンを配合するデキストリン配合工程を実行することが好ましい。
【0024】
「デキストリン」は、数個から数十個のα‐グルコースがグリコシド結合によって重合された物質であり、デンプンを加水分解することによっても得られる。デキストリンは重合度の違いによって、デキストリン、アミロデキストリン、エリトロデキストリン、アクロデキストリン、又はマルトデキストリンなどと称されたり、環状構造を有するものについて、シクロデキストリン(更に、α、β、及びγの型に細分される)と称したりする場合がある。本発明製造方法においては、デキストリンの重合度や環状構造の有無にかかわらず、いずれのデキストリンも用いることができる。又、これらのデキストリンから二種以上を選択して併用することもできる。
【0025】
デンプンと共に、デキストリンを更に配合することによって製造されたフリーズドライジャムは水分の含浸性がより一層向上し、フリーズドライジャムを湯や水に晒すことによって水分を含浸させてジャムに復元させる際の復元性が非常に良好となることが確認されている。
【0026】
本発明製造方法において、デキストリンの配合量は、混合物、ジャム若しくはデンプン配合ジャムに含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり0.5重量部以上とする。一方、デキストリンの配合量の上限については、復元性を向上させる観点からは、特に制限されない。但し、デキストリンの配合量が多くなると、フリーズドライジャムが復元された復元ジャムを食した際の、風味や食感に影響を与えるため、デキストリンの配合量の上限としては、通常、混合物、ジャム若しくはデンプン配合ジャムに含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり、20重量部以下(より好ましくは、10重量部以下。更に好ましくは5重量部以下。)とすることが好ましい。
【0027】
本発明製造方法において、加熱濃縮工程では、混合物中に含有される単糖類及び二糖類の総量が、果物成分100重量部に対して60重量部以下となるように、果物成分と単糖類又は二糖類のうちのいずれか一方又は両方が混合されることが好ましい。
【0028】
一般的なジャムにおいて、ジャム中に添加される単糖類及び二糖類の総量は、ジャムの素材として用いられた果物成分100重量部に対して80〜120重量部程度であり、非常に高カロリーであるといえる。
【0029】
この点に付き、本発明製造方法において製造されるフリーズドライジャムには、デンプンや場合によってはデキストリンが含まれているので、このフリーズドライジャムを復元したジャムを食した際、口中の唾液に含まれる酵素(アミラーゼ)によってデンプンやデキストリンが加水分解されて甘みを感じさせる。これより、本発明製造方法においては、単糖類及び二糖類の総量を少なくすることができ、もって、低カロリー化を実現したフリーズドライジャムを製造することができる。
【0030】
なお、混合物中に含有される単糖類及び二糖類の総量が少なくなりすぎると、本発明製造方法によって製造されたフリーズドライジャムが復元された復元ジャムを食した際の甘みが感じられにくくなるため、混合物中に含有される単糖類及び二糖類の総量としては、果物成分100重量部に対して20重量部以上(より好ましくは30重量部以上)となるように、果物成分と単糖類又は二糖類のうちのいずれか一方又は両方とが混合されることが好ましい。
【0031】
本発明製造方法においては、更に、デンプンが糊化された米に麹を配合し、麹発酵させることによってデンプンの一部が糖化されたフリーズドライジャム用添加剤を作成する添加剤作成工程を具備し、デンプン配合工程では、加熱濃縮工程中の混合物、若しくは、加熱濃縮工程終了後のジャムに対し、作成されたフリーズドライジャム用添加剤を配合することによってデンプンを配合することが好ましい。
【0032】
ここで、「糊化」とは、デンプン分子の隙間に水分子が入り込むことによってその構造が緩み、全体として糊状に状態変化することを意味する。米のデンプンを糊化させるにあたっては、米に熱水を加えたり、水と共に炊いたり、蒸気で蒸したりする手段を講じることが好ましい。
【0033】
又、「米」は、稲の果実である籾から外皮(籾殻)を取り去った粒状の穀物を意味し、玄米及び精米品質表示基準において米は、うるち米ともち米に大きく分けられる。本発明製造方法においては、うるち米ともち米のいずれを用いても良いが、特にアミロース含有量の低い低アミロース米やもち米を用いることが好ましい。なお、米は、籾殻のみを取り去った玄米、玄米の表面を覆う糠層を取り去って胚芽が残るように精白した胚芽米、糠層及び胚芽を取り去った白米の状態など、いずれの状態のものを用いても良く、又、米をすりつぶして粉末状に加工した米粉を用いて良い。
【0034】
更に、「麹」とは、米、麦、大豆などの穀物や糠などにコウジカビを繁殖させたもの(米麹、麦麹、豆麹或いは蘇鉄麹など)を意味し、「米を麹発酵させる」とは、米に麹を加え、発酵によってデンプンの糖化を進めることを意味する。デンプンを糊化させた米に麹を加えて麹発酵させると、麹に含まれる酵素(アミラーゼ)がデンプンを徐々に加水分解し、デキストリンが生成する。更に発酵が進むと二糖類や単糖類が生成する。即ち、「糖化」とは、デンプンがより分子量の小さいデキストリンや、二糖類、或いは単糖類に加水分解されていく化学反応を意味する。
【0035】
デンプンが糊化された米に麹を配合し、麹発酵させることによってデンプンの一部が糖化されたフリーズドライジャム用添加剤には、加水分解されなかったデンプンの一部が残存し、デンプンが加水分解されて生成したデキストリン、二糖類、及び単糖類が含有されている。そして、麹発酵によって作成されたフリーズドライジャム用添加剤には、独特の甘みや旨みが包含される。
【0036】
本発明製造方法においては、工業的に生産された市販のデンプンを用いてデンプン配合ジャムを作成することもできるが、フリーズドライジャム用添加剤を作成し、このフリーズドライジャム用添加剤をジャムに配合すれば、加水分解されなかったデンプンの一部がジャムに配合されたデンプン配合ジャムを作成することができる。このデンプン配合ジャムを凍結乾燥処理に供して製造したフリーズドライジャムを復元してなる復元ジャムには、フリーズドライジャム用添加剤に起因する独特の甘みや旨みが含まれることとなり、フリーズドライジャムの商品価値をより高めることができる。
【0037】
本発明のフリーズドライジャム用添加剤は、フリーズドライジャムを製造する際に用いられるフリーズドライジャム用添加剤であって、このフリーズドライジャム用添加剤は、デンプンが糊化された米が麹発酵されることによってデンプンの一部が糖化されたものであり、少なくともデンプン1〜10重量%を含有するものであることを特徴とする(以下、本発明添加剤と称する)。
【0038】
米の種類や麹の種類、米に対する麹の配合量或いは温度などの条件によって、麹発酵による糖化の速度は変わってくるが、デンプンが糊化された米に麹を配合すれば、デンプンの糖化が進む。本発明添加剤は、デンプンが糊化された米に麹を配合し、デンプン含有量が1〜10重量%(好ましくは3〜10重量%)の範囲内になるまで麹発酵を進めたものである。
【0039】
例えば、もち米100重量部を水と共に炊くことによってデンプンを糊化させたものに麦麹50〜150重量部程度を配合し、30〜60℃程度の温度条件下、5〜10時間程度発酵させれば、1〜10重量%のデンプンを含有する本発明添加剤が得られる。なお、この際、本発明添加剤には、デキストリン0.1〜2重量%のデキストリン、10〜15重量%のグルコース、0.01〜0.1重量%のアラビノース、マンノース及びガラクトースが含有されていることが確認されている。
【0040】
本発明のフリーズドライジャムは、ジャムが凍結乾燥されてなるフリーズドライジャムであって、このフリーズドライジャムは、フリーズドライジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり、2.5重量部以上のデンプンが含有されてなることを特徴とする。
【0041】
即ち、本発明のフリーズドライジャムは、従来製造することができなかったジャムが凍結乾燥されてなるものであり、ジャムにデンプンが配合された結果、凍結乾燥処理によって十分に乾燥されて、フリーズドライジャムとなったものである。
【0042】
本発明のフリーズドライジャムにおいては、デンプンが穀物を起源植物とするデンプンであるものが好ましい態様となる。
【0043】
本発明の復元ジャムは、前記本発明のフリーズドライジャムに水分が含浸されることによって、復元されてなるものであることを特徴とする。
【0044】
即ち、本発明のジャムは、本発明のフリーズドライジャムを湯や水に晒し、水分を含浸させることによって元の滑らかな状態のジャムに復元されてなるものである。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、従来、製造することができなかったジャムを凍結乾燥させてなるフリーズドライジャムを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[実施例1]
<本発明添加剤の製造>
もち米450gを3回洗米し、450gの水と共に炊飯器にて炊き上げることによってもち米中のデンプンを糊化させた。炊き上がったもち米の荒熱を取り50℃程度になった時点で麦麹(オーサワジャパン株式会社製、商品名「乾燥麦麹 岩手産」)450gを配合し、50℃の一定の温度条件下で8時間麹発酵させることによって、本発明添加剤を得た。得られた本発明添加剤の成分を下記表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
<デンプン配合ジャムの作成>
果物としてミカン(大阪ミカン)を用意し、へたを取り除き、皮をむいて果皮部と果肉部(薄皮付)とに分けた。果皮部(50g)は、長さ2〜5cm、幅2〜5mm程度に千切りした後、沸騰した湯に入れ、再度沸騰させた後、ざるに上げて湯切りした。一方、果肉部(150g)は薄皮に包まれた状態で、水250gを張った鍋に投入し、炊きながら潰していくことによって果汁及び果肉を出した。果肉を包んでいた薄皮については、鍋から取り出して廃棄した。
【0049】
薄皮を取り出した後の鍋に、前記千切りした果皮部及び前記本発明添加剤70gを投入し、弱火で過熱しながら、更に上白糖(スクロースを主成分とし、更にグルコース、及びフルクトースをそれぞれ1重量%程度含んだ甘味料)50g及び転化糖(酸又は酵素(インベルターゼ)によってスクロースをグルコース及びブドウ糖に加水分解した甘味料)20gを3回に分けて入れ、煮詰めることによってデンプン配合ジャム(マーマレード)354gを得た。
【0050】
得られたデンプン配合ジャムは、ジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量(ミカン自体にもともと含まれていた糖分(約10重量%)、ジャム中に甘味料として意図的に添加された単糖類及び二糖類、及び本発明添加剤中に含まれる単糖類及び二糖類の総量)が、ジャムの素材として用いられる果物成分100重量部に対して約50重量部となされた低糖分ジャムである。
【0051】
又、得られたデンプン配合ジャム中に含有されるデンプンの量は、デンプン配合ジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部に対し、約3.4重量部となる。更に、このデンプン配合ジャム中に含有されるデキストリンの量は、デンプン配合ジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部に対し、約0.84重量部となる。
【0052】
<凍結乾燥処理>
得られたデンプン配合ジャムを、−40℃で3時間冷却することによって凍結させ、更に、6Paの減圧条件下にて36時間の乾燥処理を施すことにより、フリーズドライジャムを製造した。このフリーズドライジャムは、十分に水分が抜けたカラカラの乾燥状態となっていた。
【0053】
<復元>
このフリーズドライジャムを湯に晒したところ、速やかに水分が含浸してゆき、元の滑らかなジャム(復元ジャム)に復元することが確認された。復元ジャムを食したところ、十分に甘く、しかも風味豊かな味わいがあった。
【0054】
[実施例2〜4、比較例1、2]
デンプン(トウモロコシを起源植物とするデンプン)、デキストリン(シクロデキストリン)、グルコース、及び水を用いて、下記表2に示す成分の添加剤を調整した。
【0055】
【表2】

【0056】
この添加剤A〜Eをそれぞれ前記実施例1において用いられた本発明添加剤に替えて用いた以外は前記実施例1と同様にして、実施例2〜4に係るデンプン配合ジャム、及びデンプンが配合されていない比較例1及び2に係るジャムを製造した。
【0057】
実施例2〜4にて得られたデンプン配合ジャム及び比較例1、2にて得られたジャムに対して、前記実施例1と同様の凍結乾燥処理を施した結果、及び湯に晒して復元させた結果を表3に示す。
【0058】
なお、下記表3中、復元性の評価は、
◎:湯に晒されることによって1分以内に元の滑らかな状態のジャムに復元
○:湯に1〜5分晒されることによって元の滑らかな状態のジャムに復元
△:湯に晒されることによって水分を吸収するが、元のジャムの状態より硬い状態となる
×:水分を吸収しない
を意味する(下記表5において同じ)。
【0059】
【表3】

【0060】
表3の結果より、実施例2〜4に係るデンプン配合ジャムは、十分な乾燥状態のフリーズドライジャムとなり、その復元性も良好であることが確認された。一方、比較例1及び2に係るジャムは、凍結乾燥処理中、気泡が生じて膨れ上がり、表面のみが乾燥しただけで、内部に水が残存しているような感触のものとなり、十分な乾燥状態には至らなかった。又、湯に晒しても水分の吸収が悪かったり、吸収しなかったりして、元の滑らかなジャムの状態には戻らなかった。
【0061】
[実施例5〜9、比較例3〜6]
デンプン(トウモロコシを起源とするもの)、デキストリン(シクロデキストリン)、グルコース、及び水を用いて、下記表4に示す成分の添加剤を調整した。
【0062】
【表4】

【0063】
この添加剤F〜Iをそれぞれ前記実施例1において用いられたフリーズドライジャム用添加剤に替えて用い、更に、上白糖と転化糖に替えて上白糖のみを用いた以外は前記実施例1と同様にして、実施例5、6に係るデンプン配合ジャム、及び比較例3、4に係るジャムを製造した。
【0064】
又、添加剤Fを用いると共に、上白糖の配合割合を10gずつ120gまで増やすことによって、実施例7〜10に係るデンプン配合ジャム、及び比較例5に係るジャムを作成した。
【0065】
実施例5〜10にて得られたデンプン配合ジャム、及び比較例3〜5にて得られたジャムに対して、前記実施例1と同様の凍結乾燥処理を施した結果、及び湯に晒して復元させた結果を表5に示す。
【0066】
【表5】

【0067】
表5に示す結果より、ジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部に対し、デンプンが2.5重量部以上配合されたデンプン配合ジャムであれば、凍結乾燥処理によって十分な乾燥状態のフリーズドライジャムとなり、しかも、良好な復元性を示すことが認められた。
【0068】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、ジャムが凍結乾燥されたフリーズドライジャムを製造する手段として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、果物成分と、単糖類又は二糖類のうちのいずれか一方又は両方と、が混合された混合物を加熱濃縮することによってジャムを作成する加熱濃縮工程と、
加熱濃縮工程中の混合物、若しくは、加熱濃縮工程終了後のジャムに対し、混合物若しくはジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり、デンプンが2.5重量部以上となるようにデンプンを配合するデンプン配合工程と、
を実行することによってジャム中にデンプンが配合されてなるデンプン配合ジャムを作成し、
更に、作成されたデンプン配合ジャムを凍結乾燥処理する凍結乾燥工程を実行することによってフリーズドライジャムを製造することを特徴とするフリーズドライジャムの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフリーズドライジャムの製造方法において、
更に、加熱濃縮工程中の混合物、加熱濃縮工程終了後のジャム、若しくはデンプン配合工程終了後のデンプン配合ジャムに対し、混合物、ジャム若しくはデンプン配合ジャムに含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり、デキストリンが0.5重量部以上となるようにデキストリンを配合するデキストリン配合工程を実行するフリーズドライジャムの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフリーズドライジャムの製造方法において、
加熱濃縮工程では、混合物中に含有される単糖類及び二糖類の総量が、果物成分100重量部に対して60重量部以下となるように、果物成分と単糖類又は二糖類のうちのいずれか一方又は両方が混合されるフリーズドライジャムの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフリーズドライジャムの製造方法において、
更に、デンプンが糊化された米に麹を配合し、麹発酵させることによってデンプンの一部が糖化されたフリーズドライジャム用添加剤を作成する添加剤作成工程を具備し、
デンプン配合工程では、加熱濃縮工程中の混合物、若しくは、加熱濃縮工程終了後のジャムに対し、作成されたフリーズドライジャム用添加剤を配合することによってデンプンを配合するフリーズドライジャムの製造方法。
【請求項5】
フリーズドライジャムを製造する際に用いられるフリーズドライジャム用添加剤であって、
このフリーズドライジャム用添加剤は、
デンプンが糊化された米が麹発酵されることによってデンプンの一部が糖化されたものであり、
少なくともデンプン1〜10重量%を含有するものであることを特徴とするフリーズドライジャム用添加剤。
【請求項6】
ジャムが凍結乾燥されてなるフリーズドライジャムであって、
このフリーズドライジャムは、
フリーズドライジャム中に含有される単糖類及び二糖類の総量100重量部あたり、2.5重量部以上のデンプンが含有されてなることを特徴とするフリーズドライジャム。
【請求項7】
請求項6に記載のフリーズドライジャムにおいて、
デンプンが穀物を起源植物とするデンプンであるフリーズドライジャム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のフリーズドライジャムに水分が含浸されて復元されてなることを特徴とする復元ジャム。

【公開番号】特開2012−161285(P2012−161285A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24363(P2011−24363)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(511033911)株式会社サカグチコーポレーション (1)
【出願人】(511033922)
【出願人】(511033933)
【Fターム(参考)】