説明

フルオレン骨格含有フタルイミド類及びそれから誘導されるジアミン類

【課題】 本発明は、自由体積空間を大きくするカルド骨格を有するポリアミドやポリイミドの原料として有用なジアミン及びその製法、さらにはその原料及びその製法を提供する。
【解決手段】 9,9−ビス(メシルオキシメチル)フルオレン類とフタロイミド塩を反応させて9,9−ビス(フタルイミドメチル)フルオレン類を製造する。次いでこれとヒドラジンを反応させることにより、9,9−ビス(アミノメチル)フルオレン類を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドやポリイミドの原料として有用なフルオレン骨格含有ジアミン類の原料となるフルオレン骨格含有フタルイミド類及びそれから誘導されるジアミン類に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン骨格を有する単量体から導かれる高分子化合物は、自由体積を大きくするカルド骨格を有しており、ガス透過性、ガス選択分離性などの特異な性能を示すところから、近年、その開発が精力的に進められている。例えばポリアミドやポリイミドにおいても、フルオレン骨格を有するジアミンから誘導されたものが提案されているが、製造上の制約があるためか、そのような目的に使用されているジアミンの種類はそれ程多くない。このようなジアミンとして、例えばアミノフェニル基を2個有する9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類が知られている(特許文献1)。また9,9−位に脂肪族アミノ基を有するジアミンとしては、下記式(5)で示される9,9−ビス(アミノプロピル)フルオレンが知られている(特許文献2、非特許文献1)。
【0003】
【化1】

9,9−位に脂肪族アミノ基を有するジアミンとしては他に、ポリイミドの製造において、下記一般式(6)
【0004】
【化2】

で示されるジメチル化された9,9−ビス(アミノメチル)フルオレンを使用したという例が示されているが(特許文献3)、このジアミンの製法や物性については全く明らかにされていない。
【0005】
【特許文献1】特開平5−31341号公報
【特許文献2】アメリカ特許第2320029号明細書
【特許文献3】アメリカ特許第6531569号明細書
【非特許文献1】ジャーナル オブ アプライド ポリマー サイエンス(Journal of Applied Polymer Science) 9巻 3949ページ(1965年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、9,9−位に脂肪族アミノ基を有するフルオレンにおいて、脂肪族アミノ基の炭素数が最も少なく、したがって一層剛直で耐熱性に優れたポリアミドやポリイミドを製造することが可能なジアミン及びその製法、さらにはその原料及びその製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明によれば、下記一般式(1)
【化3】

で表されるフルオレン骨格含有フタルイミド類(式中、Aは、水素、ハロゲン又は炭素数1〜3のアルコキシ基であり、Bは、水素、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基である)が提供される。
【0008】
本発明によればまた、下記一般式(2)
【化4】

で表されるフルオレン骨格含有ジアミン類(式中、Aは、水素、ハロゲン又は炭素数1〜3のアルコキシ基である)が提供される。
【0009】
さらに本発明によれば、下記一般式(3)
【化5】

で表されるフルオレン骨格含有ビスメチル化合物類(式中、Aは、水素、ハロゲン又は炭素数1〜3のアルコキシ基であり、Xは脱離基である)と下記一般式(4)
【0010】
【化6】

で表されるフタルイミド塩(式中、Bは水素、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基であり、Yはアルカリ金属又は1,8−ジアゾビシクロ[5,4,0]ウンデ−セン−7である)を反応させることを特徴とする上記一般式(1)で表されるフルオレン骨格含有フタルイミド類の製造方法が提供される。
【0011】
本発明によればまた、上記一般式(1)で表されるフルオレン骨格含有フタルイミド類とヒドラジン類を反応させることを特徴とする、上記一般式(2)で表されるフルオレン骨格含有ジアミン類の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリアミド、ポリイミドの原料として有用なフルオレン骨格含有ジアミン類及びその経済的な製造方法を提供することができる。本発明によればまた、このフルオレン骨格含有ジアミン類の製造に有用な原料及びその経済的な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記一般式(1)で表されるフルオレン骨格含有フタルイミド類は、ポリアミド、ポリイミドの原料として有用な、上記一般式(2)で表されるフルオレン骨格含有ジアミン類の製造原料として有用である。一般式(1)において、Aは、水素;ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素、沃素など;あるいは炭素数1〜3のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などを表し、二つのAは同一でも、異なるものであってもよい。またBは、水素;アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基など;アリール基、例えばフェニル基、トリル基など;あるいはアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などを表し、二つのBは同一でも、異なるものであってもよい。原料の入手が容易で安価に製造できるところから、Bがともに水素であるものが好ましい。
【0014】
上記一般式(1)で表されるフルオレン骨格含有フタルイミド類は、上記一般式(3)で表されるフルオレン骨格含有ビスメチル化合物類と一般式(4)で表されるフタルイミド塩を反応させることによって得ることができる。一般式(3)において、Aは、一般式(1)におけるAと同じである。また一般式(3)における脱離基Xは、メシルオキシ(CHSOO−)、トシルオキシ(p−(CH)CSOO−)、トリフラートオキシ(CFSOO−)、クロロメタンスルホナートオキシ(ClCHSOO−)、塩素、臭素などである。これらの中では、メシルオキシ、トシルオキシ、トリフラートオキシ又はクロロメタンスルホナートオキシであることが好ましく、とりわけ安価に合成可能であるところから、メシルオキシであることが好ましい。このフルオレン骨格含有ビスメチル化合物類は、例えば、ジクロロメタン溶媒中、トリエチルアミンやピリジンなどの塩基の存在下、9,9−位にヒドロキシメチル基を有するフルオレン化合物に、塩化メシルや塩化トシル、塩素ガス、オキシ塩化リンなどを反応させることによって製造することができる。また上記一般式(4)で表されるフタルイミド塩としては、ナトリウム、カリウム、1,8−ジアゾビシクロ[5,4,0]ウンデ−セン−7などとフタルイミドの塩を例示することができる。好適なフタルイミド塩は、フタルイミドカリウム及びフタルイミドナトリウムであり、とくに好ましいのはフタルイミドカリウムである。
【0015】
上記フルオレン骨格含有ビスメチル化合物類とフタルイミド塩の反応においては、前者1モルに対して、後者を2〜10モル程度使用するのがよい。反応は、溶媒及び触媒の存在下に行うのが好ましい。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドのような非プロトン性極性溶媒、又はトルエン、キシレンなどの芳香族系の溶媒が例示される。とくに非プロトン性極性溶媒を使用するのが好ましい。溶媒は、例えば、フルオレン骨格含有ビスメチル化合物類の1〜30質量倍程度使用される。また触媒としては、相間移動触媒を使用することができる。相間移動触媒として具体的には、ホスホニウム化合物、第四級アンモニウム化合物、ピリジニウム化合物、クラウンエーテルなどを例示することができるが、好ましくは、高温での使用が可能なホスホニウム化合物である。触媒の使用量は、フルオレン骨格含有ビスメチル化合物類1モルに対して、例えば0.001〜0.5モルの割合である。
【0016】
上記反応は、一般的に50〜200℃の範囲で行われる。また反応時間は原料の種類や反応温度などによっても異なるが、0.1〜100時間の範囲である。反応終了後は、脱離反応によって生じた副生物、例えばメタンスルホン酸カリウムを除き、必要により洗浄することによって一般式(1)で表されるフルオレン骨格含有フタルイミド類を単離することができる。さらに必要であれば、粗製のフルオレン骨格含有フタルイミド類を再結晶やクロマトグラフィなどによって精製することができる。
【0017】
一般式(2)表されるフルオレン骨格含有ジアミン類において、二つのAが共に水素のものは、耐熱性、ガス透過性、ガス選択分離性、機械的強度に優れたポリアミドやポリイミドの製造原料として有用である。また一般式(2)において、Aの少なくとも一つがハロゲンやアルコキシ基であるジアミンは、それ自体、耐熱性、ガス透過性、ガス選択分離性、機械的強度、溶解性等に優れたポリアミドやポリイミドの製造原料として期待できるほか、Aの反応性を利用して他の置換基に変えることにより、新たなジアミン類を製造することができる原料となるものである。
【0018】
上記フルオレン骨格含有ジアミン類は、上記一般式(1)で表されるフルオレン骨格含有フタルイミド類を、酸と加熱する方法、アルカリ加水分解した後、酸で処理する方法、ヒドラジン類と反応させる方法、水素化ホウ素ナトリウムで処理した後、酢酸と加熱する方法などによって製造することができる。これらの中では、ヒドラジン類と反応させる方法がもっとも好ましい。フルオレン骨格含有フタルイミド類との反応に利用することができるヒドラジン類としては、ヒドラジン、水加ヒドラジン、メチルヒドラジンなどを挙げることができる。ヒドラジン類の使用量は、フルオレン骨格含有フタルイミド類1モル当たり、2〜20モル、好ましくは2.5〜15モルである。この反応においては溶媒を使用するのが好ましい。好適な溶媒としては、例えば、エタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、あるいはこれら有機溶媒と水の混合溶媒などを挙げることができる。溶媒は、通常、フルオレン骨格含有フタルイミド類に対して1〜50質量倍、好ましくは2〜30質量倍の割合で使用される。
【0019】
上記フルオレン骨格含有フタルイミド類とヒドラジン類との反応は、通常40〜150℃、好ましくは60〜120℃の温度で行われる。また反応時間は0.1〜30時間程度である。反応終了後は、反応混合物から副生するフタル酸ヒドラジド類を除いた後、必要により洗浄等を行うことにより、粗製のフルオレン骨格含有ジアミン類を得ることができる。粗製のフルオレン骨格含有ジアミン類は、必要により、再結晶、蒸留、クロマトグラフィあるいは酸との塩を形成させて再結晶した後、塩基で処理して遊離させる方法などによって精製することができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、参考例と実施例1における分析は、下記条件の高速液体クロマトグラフィにより実施した。
測定条件
カラム:Inertsil ODS−2 長さ150mm、内径4.6mm
カラム温度:40℃
溶離液:アセトニトリル/水=65/35
検出器:UV(254nm)
【0021】
[参考例] 9,9−ビス(メシルオキシメチル)フルオレンの合成
塩化カルシウム管を備えた50ml三口フラスコに、9,9−ビス(ヒドロキシメチル)フルオレン(Aldrich社製)0.98g(4.33ミリモル)、ジクロロメタン20ml及びトリエチルアミン1.35g(13.34ミリモル)のジクロロメタン2ml溶液を入れた。この溶液に、冷却下、メタンスルホニルクロリド1.3g(11.35ミリモル)のジクロロメタン2ml溶液を20分で滴下した。この間の温度変化は、−2.8℃〜−0.8℃であった。滴下後、8.75時間攪拌した。得られた反応液を濾過し、溶媒を留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ジクロロメタン)で精製した。得られた黄色粉体をメタノールで洗浄することにより、白色の9,9−ビス(メシルオキシメチル)フルオレン粉体を得た(収率82%)。高速液体クロマトグラフィによる純度(面積百分率)は99.84%であった。このもののH−NMRスペクトルを図1に示す。
H−NMR(CDCl):δ(ppm) 3.00(s,6H,CH)、4.45(s,4H,CH)、7.34−7.80(m、8H,ArH)
メチル基(3.00ppm)、メチレン基(4.45ppm)、芳香環(7.34−7.80ppm)が存在することが確認された。
【0022】
[実施例1] 9,9−ビス(フタルイミドメチル)フルオレンの合成
窒素雰囲気下、100ml三口フラスコに、9,9−ビス(メシルオキシメチル)フルオレン1.38g(3.61ミリモル)及びN,N−ジメチルホルムアミド13mlを入れた。この溶液にフタルイミドカリウム塩1.70g(9.18ミリモル)を仕込み、得られた懸濁液を21時間、加熱攪拌した。加熱攪拌中に、温度を139.4℃まで上昇させた。さらに加熱攪拌中に、N,N−ジメチルホルムアミド6ml、フタルイミドカリウム塩1.21g(6.53ミリモル)及びトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド0.37g(0.73ミリモル)を添加した。反応後、反応液を室温まで冷却し、トルエン40mlを添加して攪拌した。次いでこれを濾過することによって得られた粉体を、トルエン10mlで3回洗浄した。残留した白色粉体にジクロロメタンを加えて攪拌し、濾過した。濾液の溶媒を留去することにより、融点296℃の白色粉末状9,9−ビス(フタルイミドメチル)フルオレン1.03g(収率57.1%)を得た。高速液体クロマトグラフィによる純度(面積百分率)は99.76%であった。このもののH−NMRスペクトルを図2に、13C−NMRスペクトルを図3に示す。
【0023】
H−NMRスペクトル(CDCl):δ(ppm) 4.36(s,4H,CH)、7.26−7.70(m、16H,ArH)
メチレン基(4.36ppm)、芳香環(7.26−7.70ppm)が存在することが確認された。
13C−NMRスペクトル(CDCl):δ(ppm) 43.5、56.3、119.3、123.0、125.8、126.3、128.0、131.3、133.5、140.4、143.8、167.4
イミド基の窒素原子に結合した炭素(43.5ppm)、9位の四級炭素(56.3ppm)、フルオレン環の水素原子が結合した炭素(119.3ppm、125.8−128.0ppm)、フタルイミドのベンゼン環の水素原子が結合した炭素(123.0ppm、133.5ppm)、フタルイミドのベンゼン環のカルボニル基が結合した炭素(131.3ppm)、フルオレン環の五員環を形成する炭素(140.4ppm、143.8ppm)、イミドの炭素(167.4ppm)の存在が確認された。
【0024】
またLC/MSによる同定は、下記条件で行った。
装置:島津製作所製 LCMS−2010
カラム:Inertsil ODS−80A(長さ150mm、内径2.1mm)
アセトニトリル:水=75:25、流量:0.2ml/分
カラム温度:40℃、イオン化法 ESI
MS:485(M+H)、507(M+Na)、548(M+CHCN+Na)
【0025】
[実施例2] 9,9−ビス(アミノメチル)フルオレンの合成
100ml三口フラスコに、9,9−ビス(フタルイミドメチル)フルオレン3.02g(6.23ミリモル)及びエタノール10mlを入れ、窒素雰囲気下で還流した。この懸濁物に、ヒドラジン一水和物0.90g(18.0ミリモル)のエタノール5ml溶液を7分で滴下した後、還流を3時間続行した。還流中に、エタノール25ml、ヒドラジン一水和物2.91g(58.1ミリモル)を添加した。冷却下、4.5%塩酸を40ml加えて、pH1.35とした。4.5%塩酸添加時の温度変化は、−1.5〜+1.5℃であった。この懸濁物を30分加熱還流した。反応液を濾過して白色粉体を除去し、濾液を、減圧下、40℃で濃縮、乾固し、白黄色粉体を得た。これにエタノール10mlを加えて加熱し、エタノール層をデカンテーションにより分取した。さらにエタノール(5ml×5)を加え、同様にデカンテーションを繰り返した。得られたエタノール層から析出する結晶を濾過により除去した。濾液を減圧濃縮してエタノールを留去し、白黄色粉体を得た。これに水25mlを加えて溶解させ、不溶成分を濾過により除去した。濾液に、冷却下、23%水酸化カリウム水溶液を加えて、pH10.3とし、トルエン15mlを加えた。これをクロロホルム20mlで1回、10mlで5回抽出した。抽出液の不溶成分を濾過により除去した。濾液を無水硫酸ナトリウムで脱水したのち、溶媒を、減圧下に留去した。残渣の一部にクロロホルム15mlを加えて、不溶成分を濾別後、カラムクロマトグラフィ(クロロホルム/メタノール/25%アンモニア水=90/9/2)で、精製し、薄褐色粘性物の9,9−ビス(アミノメチル)フルオレン0.276gを得た。高速液体クロマトグラフィによる純度(面積百分率)は99.34%であった。
【0026】
尚、実施例2における分析は、下記条件の高速液体クロマトグラフィにより実施した。
測定条件
カラム:Inertsil ODS−2 長さ150mm、内径4.6mm
溶離液:0.1〜15分間 0.1%リン酸水/メタノール=50/50
15〜30分間 0.1%リン酸水/メタノール=10/90
検出器:UV(254nm)
またGC/MSによる同定は、下記条件で行った。
GC装置:島津製作所製 GC−17A+QP−5000
カラム:CBP−1 内径0.2mm、長さ50m
カラム温度:200℃〜300℃ 昇温速度:10℃/分
MS 224(M+)、208、195、178、165、151
【0027】
このもののH−NMRスペクトルを図4に、13C−NMRスペクトルを図5に、IRスペクトルを図6に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl):δ(ppm) 0.69(s,4H,NH)、3.19(s,4H,CH)、7.27−7.75(m,8H,ArH)
アミノ基(0.69ppm)、メチレン基(3.19ppm)、芳香環(7.27−7.75ppm)が存在することが確認された。
【0028】
13C−NMRスペクトル(CDCl):δ(ppm) 48.3、61.0、120.0、122.9、127.4、127.7、142.1、146.5
アミノ基が結合した炭素(48.3ppm)、9位の四級炭素(61.0ppm)、芳香環の炭素(120.0−146.5ppm)の存在が確認された。
【0029】
IRスペクトル(反射ATR):3385〜3196cm−1(NH伸縮)、3062cm−1(=CH伸縮)、2915,2860cm−1(CH伸縮)、1960〜1811cm−1(芳香環)、1606cm−1(NH面外変角)、1221,1113cm−1(ArH面外変角)、877cm−1(NH面外変角)、766,737cm−1(ArH面外変角)
アミノ基、メチレン基、芳香環の存在が確認された。
【0030】
[実施例3] 9,9−ビス(アミノメチル)フルオレンの合成
100ml三口フラスコに、9,9−ビス(フタルイミドメチル)フルオレン3.04g(6.27ミリモル)及びエタノール50mlを入れ、窒素雰囲気下で還流した。この懸濁物に、80%ヒドラジン一水和物4.64g(74.2ミリモル)のエタノール10ml溶液を15分で滴下した後、4.4時間還流した。反応液を室温まで冷却後、濾過し、濾過物(白色粉体、フタル酸ヒドラジドが主成分)をエタノール25mlで1回、50mlで2回リンス洗浄し、濾液とリンス液を合わせた。この液に若干の濁りが認められたので濾過して清浄液を得た。この濾液を、減圧下、濃縮乾固し、1.68gの白黄色粘稠物を得た。これを高速液体クロマトグラフィ絶対検量線法により、9,9−ビス(アミノメチル)フルオレンの含有量を求めると、82.4質量%であり、仕込み9,9−ビス(フタルイミドメチル)フルオレンに対する収率は98.4%であった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】参考例で得られた9,9−ビス(メシルオキシメチル)フルオレンのH−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られた9,9−ビス(フタルイミドメチル)フルオレンのH−NMRスペクトルである。
【図3】実施例1で得られた9,9−ビス(フタルイミドメチル)フルオレンの13C−NMRスペクトルである。
【図4】実施例2で得られた9,9−ビス(アミノメチル)フルオレンのH−NMRスペクトルである。
【図5】実施例2で得られた9,9−ビス(アミノメチル)フルオレンの13C−NMRスペクトルである。
【図6】実施例2で得られた9,9−ビス(アミノメチル)フルオレンのIRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

で表されるフルオレン骨格含有フタルイミド類(式中、Aは、水素、ハロゲン又は炭素数1〜3のアルコキシ基であり、Bは水素、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基である)。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】

で表されるフルオレン骨格含有ジアミン類(式中、Aは、水素、ハロゲン又は炭素数1〜3のアルコキシ基である)。
【請求項3】
下記一般式(3)
【化3】

で表されるフルオレン骨格含有ビスメチル化合物類(式中、Aは、水素、ハロゲン又は炭素数1〜3のアルコキシ基であり、Xは脱離基である)と下記一般式(4)
【化4】

で表されるフタルイミド塩(式中、Bは水素、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基であり、Yはアルカリ金属又は1,8−ジアゾビシクロ[5,4,0]ウンデ−セン−7である)を反応させることを特徴とする請求項1に記載のフルオレン骨格含有フタルイミド類の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のフルオレン骨格含有フタルイミド類とヒドラジン類を反応させることを特徴とする請求項2に記載のフルオレン骨格含有ジアミン類の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−246400(P2007−246400A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67812(P2006−67812)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】