説明

フルクトシルバリンの影響が低減する糖化タンパク質測定用試薬組成物

【課題】フルクトシルバリンの影響を低減させる糖化タンパク質測定用試薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る試薬組成物は、フルクトシルバリルヒスチジンに対する活性値を10とした場合、フルクトシルバリンに対する活性値が35以下であるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖化タンパク質、特にHbA1cの測定に有用な試薬組成物に関する。より具体的には、フルクトシルバリンの影響が低減した糖化タンパク質測定試薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者の血糖の測定には、血液タンパク質に含まれる糖化タンパク質であるヘモグロビンA1c(HbA1c)またはグリコアルブミンを血糖マーカーとして測定する方法が重用されている。
血液中に存在するD−グルコースと、血液タンパク質を構成するアミノ酸残基とが反応して、糖化タンパク質が形成される。血液タンパク質における主な糖化部位は、リジン残基のε−アミノ基、または、血液タンパク質のアミノ末端に存在するアミノ酸のα−アミノ基である。HbA1cを測定する場合には、D−グルコースがヘモグロビンβ鎖のアミノ末端に存在するアミノ酸であるバリンのα−アミノ基に結合して生じた糖化タンパク質の量を測定する。
【0003】
近年、血液中の糖化タンパク質を簡便かつ短時間で測定できる酵素的測定法が開発され、既に商品化されている。酵素的測定法を利用することによって、糖化タンパク質をハイスループットに測定することが可能となり、当該酵素的測定法が臨床検査分野で役立てられている。
酵素的測定法では、まず、プロテアーゼによって糖化タンパク質が加水分解される。次いで、加水分解によって生じたフルクトシルバリン、フルクトシルリジンおよびフルクトシルバリルヒスチジンなどの糖化アミノ酸を、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(以下、「FAOD」という)によって酸化的加水分解する。最後に、オキシダーゼ反応により生じた過酸化水素が、ペルオキシダーゼ−色原体反応システムによって比色定量される(例えば、特許文献1〜11参照)。
【0004】
酵素的測定法による糖化タンパク質の測定では、主反応酵素であるFAODの基質特異性が重要である。例えば、HbA1cの測定では、糖化ヘモグロビンのβ鎖に特異的な測定を行うためには、フルクトシルバリルヒスチジンに作用する酵素(フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ)が望まれている。その理由は、ヘモグロビンα鎖およびβ鎖のアミノ末端に存在するアミノ酸が共にバリンであることから、β鎖に特異的な測定を行うためには、アミノ末端のアミノ酸2残基(すなわち、フルクトシルバリルヒスチジン)を認識する必要があるためである(例えば、特許文献12、特許文献13参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−129531号公報(公開日:平成16年4月30日)
【特許文献2】特開2004−113014号公報(公開日:平成16年4月15日)
【特許文献3】国際公開第2003/064683号パンフレット(国際公開日:平成15年8月7日)
【特許文献4】特開2007−181466号公報(公開日:平成19年7月19日)
【特許文献5】特開2007−289202号公報(公開日:平成19年11月8日)
【特許文献6】特開2005−110657号公報(公開日:平成17年4月28日)
【特許文献7】特許第4045322号公報(発行日:平成20年2月13日)
【特許文献8】特許第4014088号公報(発行日:平成19年9月21日)
【特許文献9】特許第4039664号公報(発行日:平成20年1月30日)
【特許文献10】特許第4010474号公報(発行日:平成19年11月21日)
【特許文献11】特許第3971702号公報(発行日:平成19年9月5日)
【特許文献12】国際公開第2005/049857号パンフレット(国際公開日:平成17年6月2日)
【特許文献13】国際公開第2005/049858号パンフレット(国際公開日:平成17年6月2日)
【特許文献14】特開2003/235585号公報(公開日:平成15年8月26日)
【特許文献15】国際公開第2003/064683号パンフレット(国際公開日:平成17年5月26日)
【特許文献16】特許4014088号公報(発行日:平成19年11月28日)
【特許文献17】特開2007−289202号公報(公開日:平成19年11月8日)
【特許文献18】国際公開第2007/010950号パンフレット(国際公開日:平成19年1月25日)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hirokawa K., Gomi K., Bakke M., and Kajiyama N., Distribution and properties of novel deglycating enzymes for fructosyl peptide in fungi., Arch. Microbiol., 2003, 180(3), 227−231.
【非特許文献2】Hirokawa K., Gomi K., and Kajiyama N., Molecular cloning and expression of novel fructosyl peptide oxidases and their application for the measurement of glycated protein., Biochem. Biophys. Res. Commun., 2003, 311(1), 104−111.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼは、基質特異性が低いという問題点を有している。
これまでに、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼは、数種の糸状菌、またはその遺伝子組換え体から取得されている。また、これらのフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼをコードする遺伝子も単離されている(例えば、特許文献14、非特許文献1、非特許文献2参照)。しかしながら、これらはすべてフルクトシルバリンにも反応するという問題点を有している。
そして、何らかの原因で試料中に遊離の糖化アミンが混入すると、従来のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼを用いた測定では、測定値が異常に高値を示すことになる。当該問題は、特に高カロリー輸液用製剤が投与された患者で多く発生し、その理由は、輸液によって高濃度の糖およびアミノ酸が体内に補充された場合に、血中もしくは輸液バック中で遊離の糖化アミノ酸または糖化ペプチドが生成するためであると考えられている。特に、HbA1c測定の場合には、FAODがフルクトシルバリンにも反応してしまうと、フルクトシルバリンの混入によって異常に高い糖化タンパク質量を示すことになる。
【0008】
そこで、測定対象物がFAODとの酸化還元反応を行う前に、予め測定対象物とは別に遊離している糖化アミンをFAODにより消去する系が開発されてきた(例えば、特許文献15〜18参照)。
しかしながら、これらの方法は消去反応においてFAODを使用するため、当該消去反応時に過酸化水素が発生するという問題点がある。当該過酸化水素が測定対象物の酸化還元反応に持ち込まれると、測定値が上昇してしまう。それ故、当該方法では、測定対象物がFAODとの酸化還元反応を行う前に、過酸化水素を除去する必要がある。
【0009】
したがって、遊離糖化アミンをFAODによって予め消去する工程を含む糖化アミン測定方法は、以下の(1)〜(4)の反応を含む。つまり、
(1)遊離アミンをFAODで消去する反応(以下「消去反応」と呼ぶ)
(2)消去反応で発生した過酸化水素を除去する反応(以下「除去反応」と呼ぶ)
(3)プロテアーゼにより、糖化タンパク質を糖化アミノ酸または糖化ペプチドに断片化する反応(以下「断片化反応」と呼ぶ)
(4)断片化された糖化アミノ酸または糖化ペプチドとFAODとが酸化還元反応を行い、これによって発色する反応(以下「発色反応」と呼ぶ)。
【0010】
上記除去反応では、例えば、水素供与体とPOD(peroxidase)との自己縮合、および/またはカタラーゼを共存させるが、過酸化水素を完全に除去できずに当該過酸化水素が発色反応に持ち込まれれば、測定値の上昇につながる可能性がある。
これらの反応において少なくとも消去反応と除去反応とは、発色反応よりも前に行う必要がある。また、断片化反応に用いるプロテアーゼによって酵素(FAOD)が分解されるため、プロテアーゼ耐性の高い酵素を選定するか、または消去反応および発色反応を断片化反応とは別に行う必要がある。よって、上記糖化アミン測定方法では、糖化アミン測定試薬の組成、当該糖化アミン測定試薬の添加時点、および反応順序が限定されるという問題点を有している。
また、血液サンプル中には糖化アルブミンが含まれているので、HbA1cを測定する場合には、この影響を回避する必要がある。糖化アルブミンは、アルブミンのリジン残基のε−アミノ基が糖化されているため、プロテアーゼによる切断によって発生するフルクトシルリジンにFAODが反応すると、測定値が高値化する。当該問題点を解決するためにも、フルクトシルバリルヒスチジンには反応するが、フルクトシルバリンおよびフルクトシルリジンへの反応性が低いFAODが望まれているが、このようなFAODは報告されていない。
【0011】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、糖化タンパク質、特にHbA1cの測定に有用な、フルクトシルバリンに対する反応性を低減させたフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼを新たに創出し、その酵素を利用した糖化タンパク質(HbA1c)測定用試薬組成物、糖化タンパク質(HbA1c)センサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、フルクトシルバリルヒスチジンの測定に有用なフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質であって、野生型タンパク質よりも基質特異性が向上した変異タンパク質を取得することに成功した。
さらに本発明者らは、該フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼを用いることにより、フルクトシルバリンの影響が低減した糖化タンパク質測定試薬組成物を造成することに成功した。
【0013】
すなわち本発明は、以下発明を包含する。
[項1]
プロテアーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを含む糖化タンパク質測定用試薬組成物において、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼが以下の(1)の性質を有する糖化タンパク質測定用組成物。
(1)フルクトシルバリンに対する反応性が、フルクトシルバリルヒスチジンに対する活性値を10とした場合、35以下である。
[項2]
プロテアーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを含む糖化タンパク質測定用試薬において、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼが以下の(2)の性質を有する糖化タンパク質測定用試薬。
(2)フルクトシルバリンに対する反応性が、フルクトシルバリルヒスチジンに対する活性値を2とした場合、1以下である。
[項3]
フルクトシルアミノ酸オキシダーゼが、以下の(a)〜(c)のうち何れかの性質を有する項1に記載の試薬組成物。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列においてアミノ末端から58番目のイソロイシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有する;
(b)アミノ酸配列(a)においてアミノ末端から58番目のアミノ酸以外の部位において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有する;
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、配列番号1に示されるアミノ酸配列におけるアミノ末端から58番目のイソロイシンに対応するアミノ酸が当該アミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されており、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
[項4]
アミノ酸置換が、配列番号1に示されるアミノ酸配列においてアミノ末端から58番目のグリシンがメチオニン、トレオニン、アラニン、アスパラギン、セリン、バリン、ロイシンからなる群より選ばれるいずれかに置換されたものである項1に記載の試薬組成物。
[項5]
糖化タンパク質がHbA1cである項1〜4のいずれかに記載の試薬組成物。
[項6]
項1〜4のいずれかに記載の試薬組成物を用いる糖化タンパク質測定方法。
[項7]
項1〜4のいずれかに記載の試薬組成物を含む糖化タンパク質測定キット。
[項8]
項1〜4のいずれかに記載の試薬組成物を含む糖化タンパク質測定センサー。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る糖化タンパク質測定用試薬組成物は、以上のように、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質を用いている。そのため、フルクトシルバリンの影響を低減させる糖化アミン測定試薬組成物を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ改変体(IE353−I58T)を用いてフルクトシルバリルヒスチジンを定量した結果を示す。
【図2】IE353野生型、および、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ改変体(IE353−I58T)を用いて、フルクトシルバリンの影響度を調べた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について詳細に説明すれば以下のとおりであるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された非特許文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。また本明細書中の「〜」は「以上、以下」を意味し、例えば明細書中で「A〜B(ただし、AおよびBが数値または単位付き数値の場合)」と記載されていれば「A以上、B以下」を示す。また本明細書中の「および/または」は、いずれか一方または両方を意味する。
【0017】
<1.試薬組成物>
本願発明の試薬組成物は、プロテアーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを含む糖化タンパク質測定用試薬組成物において、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼが以下の(1)の性質を有する糖化タンパク質測定用組成物である。
(1)フルクトシルバリンに対する反応性が、フルクトシルバリルヒスチジンに対する活性値を10とした場合、35以下である。
【0018】
上記組成物におけるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、好ましくは、フルクトシルバリンに対する反応性が、フルクトシルバリルヒスチジンに対する活性値を2とした場合、1以下である。
【0019】
上記組成物におけるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼは、さらに好ましくは、以下の(a)〜(c)の何れかに記載のタンパク質である。つまり、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、アミノ末端から58番目のイソロイシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質;
(b)上記(a)に記載のタンパク質において、アミノ末端から58番目のアミノ酸以外の部位にて1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、配列番号1に示されるアミノ酸配列におけるアミノ末端から58番目のイソロイシンに対応するアミノ酸が当該アミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されており、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
なお、本明細書における「相同性」の範囲には、配列を構成する個々のアミノ酸残基が同一であるものに加え、アミノ酸の有する性質が同じであるもの、その範囲に含まれるものとする(例えば、イソロイシンとロイシンとは同じと捉える)
上記配列番号1に示されるアミノ酸配列は、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼのアミノ酸配列である(詳細に関しては、実施例参照)。
上記(a)に記載のタンパク質では、上記アミノ末端から58番目のイソロイシンが、他のアミノ酸に置換されている。上記他のアミノ酸としては特に限定されず、適宜公知のアミノ酸に置換され得る。置換されるアミノ酸としては、例えば、天然のタンパク質の構成成分である基本アミノ酸、何らかの化学修飾を受けた修飾アミノ酸、基本アミノ酸から誘導された特殊アミノ酸などを挙げることできるが、これらに限定されない。
上記アミノ末端から58番目のイソロイシンは、例えばメチオニン、トレオニン、アラニン、アスパラギン、セリン、バリン、または、ロイシンに置換されていることが好ましい。上記構成であれば、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの基質特異性(フルクトシルバリルヒスチジンに対する反応性)を更に上昇させることができる。
フルクトシルバリルヒスチジンに対する基質特異性を更に上昇させる(換言すれば、フルクトシルバリンおよびフルクトシルリジンの両基質への反応性を大幅に低下させる)という観点からは、上記アミノ末端から58番目のイソロイシンは、トレオニン、セリン、バリンまたはアラニンに置換されることが更に好ましい。
一方、基質特異性のみならず熱安定性をも上昇させるという観点からは、上記アミノ末端から58番目のイソロイシンは、メチオニン、セリンまたはアラニンに置換されることが更に好ましい。
したがって、基質特異性を更に上昇させるとともに熱安定性をも上昇させるという観点からは、上記アミノ末端から58番目のイソロイシンは、セリンまたはアラニンに置換されることが最も好ましいといえる。
上記(b)に記載のタンパク質は、上記(a)に記載のタンパク質において、アミノ末端から58番目のアミノ酸以外の部位にて1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質である。
上記(b)に記載のタンパク質において置換、欠失、挿入、および/または付加が生じる箇所としては特に限定されず、アミノ末端から58番目以外の箇所であればよい。
また、本明細書において「1または数個のアミノ酸」とは、具体的には10個以内の範囲のアミノ酸数が意図される。
上記(c)に記載のタンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、配列番号1に示されるアミノ酸配列におけるアミノ末端から58番目のイソロイシンに対応するアミノ酸が当該アミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されており、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質である。なお、上記アミノ末端から58番目のイソロイシンに対応するアミノ酸は、イソロイシンであってもよく、イソロイシンとは別のアミノ酸であってもよい。
当該タンパク質の具体的な構成としては特に限定されないが、例えば、Phaeosphaeria nodorum以外の生物由来のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼなどを挙げることができる。
上記(c)に記載のタンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するものであればよいが、80%以上の相同性を有するものであることが更に好ましく、90%以上の相同性を有するものであることが更に好ましく、95%以上の相同性を有するものであることが最も好ましい。また、上記(c)に示すタンパク質は、これらの相同性の高い領域を自身の一部分として含むタンパク質であってもよい。
上記(c)に記載のタンパク質では、配列番号1に示されるアミノ酸配列におけるアミノ末端から58番目のイソロイシンに対応するアミノ酸が、当該アミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されている。上記アミノ末端から58番目のイソロイシンに対応するアミノ酸が置換されるアミノ酸は当該アミノ酸とは異なるアミノ酸であればよく、その具体的なアミノ酸としては特に限定されない。置換されるアミノ酸としては、例えば、天然のタンパク質の構成成分である基本アミノ酸、何らかの化学修飾を受けた修飾アミノ酸、基本アミノ酸から誘導された特殊アミノ酸などを挙げることできるが、これらに限定されない。更に具体的には、例えば、メチオニン、トレオニン、アラニン、アスパラギン、セリン、バリン、または、ロイシンに置換されることが好ましいが、これらに限定されない。
アミノ末端から58番目のイソロイシンに対応するアミノ酸は、当該アミノ酸を含有するタンパク質のアミノ酸配列と、配列番号1に示されるアミノ酸配列とを比較することによって決定することができる。例えば、プログラム(例えば、GENETYX−WIN(ゼネティックス社))などによって配列番号1に示されるアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するタンパク質を検索する。そして、上記プログラム(例えば、GENETYX−WIN(ゼネティックス社))によれば70%以上の相同性を有すると判断した場合のアミノ酸の対応関係に関する情報(換言すれば、配列番号1に記載されているアミノ酸配列中の個々のアミノ酸が、検索によって得られたタンパク質中のどのアミノ酸に対応するのかに関する判定結果)を得ることができる。そして、当該情報に基づいて、アミノ末端から58番目のイソロイシンに対応するアミノ酸を、決定することができる。
このとき検索するデータベースとしては特に限定されず、公知の全てのデータベース(例えば、細菌、酵母、昆虫、線虫、ゼブラフィッシュ、哺乳類などのデータベース)を検索することができる。
なお、アミノ末端から58番目のイソロイシンに対応するアミノ酸の同定の精度は、検索されたタンパク質のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を後述するフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性の測定方法に基づいて検出することによって更に高めることが可能となる。例えば、アミノ末端から58番目のイソロイシンに対応すると考えられるアミノ酸を置換した場合に酵素活性が如何に変化するかを確認することによって、アミノ酸の同定の精度を高めることが可能である。
上記(a)〜(c)に記載のタンパク質は、何れもフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有している。フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性の測定方法は特に限定されないが、例えば、後述する実施例の「活性測定方法」の項において説明する方法によって測定され得る。なお、本発明の説明において「フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ活性を有する」とは、好ましくは0.1U/mg−タンパク質以上の活性を意味し、更に好ましくは1.0U/mg−タンパク質以上の活性を意味する。
また、本実施の形態のタンパク質は、上記タンパク質に対して、更なる置換が生じているものであってもよい。当該置換が生じる具体的な箇所および置換後のアミノ酸の種類としては、特に限定されない。
本実施の形態のタンパク質は、適宜公知の手法を用いて作製することが可能である。例えば、後述するポリヌクレオチドおよび組換えベクターを利用した遺伝子組み換え技術を用いて生産することも可能であるし、アミノ酸合成機などを用いて化学合成することも可能である。
遺伝子組み換え技術において好適に用いられる組換えタンパク質発現系としては特に限定されないが、例えば、大腸菌発現系、昆虫細胞発現系、哺乳類細胞発現系、または無細胞発現系を用いることが好ましい。
また、本実施の形態のタンパク質には、例えば、分子間架橋および/または分子内架橋(例えば、ジスルフィド結合など)が施されたもの、化学修飾(例えば、糖鎖付加、リン酸化、またはその他の官能基付加など)されたもの、標識(例えば、Hisタグ、Mycタグ、またはFlagタグなど)が付与されたもの、または融合タンパク質(例えば、ストレプトアビジン、シトクロム、GST、またはGFPなど)が付与されたものなどが含まれ得る。
さらに、本実施の形態のタンパク質には、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性が実質的に維持される限り、数種のタンパク質の断片を組み合わせて構成したキメラタンパク質も含まれ得る。
【0020】
<2.ポリヌクレオチド>
本実施の形態のポリヌクレオチドは、以下の(d)または(e)に記載のポリヌクレオチドである。つまり、
(d)本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(e)本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの相補ポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本実施の形態のポリヌクレオチドは、DNAの形態(例えば、cDNAもしくはゲノムDNA)、またはRNA(例えば、mRNA)の形態であり得る。上記DNAおよびRNAは、二本鎖であってもよく、一本鎖であってもよい。
上記(d)に記載のポリヌクレオチドは、上述した本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
上記(d)に記載のポリヌクレオチドは本発明のタンパク質をコードするものであればよく、同じアミノ酸をコードするコドン同士であれば置換することも可能である。更に具体的には、本実施の形態のポリヌクレオチドを何らかの宿主内に導入して本発明のタンパク質を宿主内にて発現させることを考慮する場合には、当該宿主のコドン使用頻度(codon usage)に基づいて本実施のポリヌクレオチドの具体的な塩基配列を決定することも可能である。つまり、コドン使用頻度の高いコドンによって本実施の形態のポリヌクレオチドが形成されるように、本実施のポリヌクレオチドの具体的な塩基配列を決定することも可能である。
本実施の形態のポリヌクレオチドの作製方法としては特に限定されず、適宜公知の方法によって作製することが可能である。例えば、野生型のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼをコードするポリヌクレオチド(配列番号2)に対して適宜変異を導入することによって、本実施の形態のポリヌクレオチドを作製することが可能である。また、化学合成法によって、本実施の形態のポリヌクレオチドを作製することも可能である。
上記変異の導入方法としては特に限定されず、適宜市販のキットを用いて、例えば配列番号2に示すポリヌクレオチドに対して変異を導入すればよい。上記市販のキットとしては、例えば、KOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kit(東洋紡績製)、Transformer Site−Directed Mutagenesis Kit(Clonetech製)、または、QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit(Stratagene製)などを挙げることができるが、これらに限定されない。なお、更に具体的な変異導入方法は、これらのキットに添付のプロトコールに従えばよい。
本実施の形態のポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、アミノ末端から58番目のイソロイシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであることが好ましい。更に具体的には、配列番号2に示されるポリヌクレオチドにおいて、「att(172番目〜174番目)」がイソロイシン以外をコードするコドンに置換されたポリヌクレオチドであることが好ましい。
上記「att」を置換する具体的なコドンとしては特に限定されないが、例えば、メチオニン、トレオニン、アラニン、アスパラギン、セリン、バリン、または、ロイシンをコードするコドンであることが好ましい。更に具体的には、上記「att」は、「atg(メチオニンをコードするコドン)」、「acc(トレオニンをコードするコドン)」、「gct(アラニンをコードするコドン)」、「aac(アスパラギンをコードするコドン)」、「tcg(セリンをコードするコドン)」、「gtc(バリンをコードするコドン)」、または、「ctc(ロイシンをコードするコドン)」に置換されることが好ましいが、これらに限定されない。上記アミノ酸をコードする別のコドンに置換することも勿論可能である。
更に、本実施の形態のポリヌクレオチドは、上記置換に加えて、配列番号1に示されるアミノ酸配列におけるアミノ末端から282番目のフェニルアラニンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであることが好ましい。更に具体的には、配列番号2に示されるポリヌクレオチドにおいて、「ttc(844番目〜846番目)」がフェニルアラニン以外をコードするコドンに置換されたポリヌクレオチドであることが好ましい。
上記「ttc」を置換する具体的なコドンとしては特に限定されないが、例えば、チロシンをコードするコドンであることが好ましい。更に具体的には、上記「ttc」は、「tat(チロシンをコードするコドン)」に置換されることが好ましいが、これに限定されない。上記「ttc」を、チロシンをコードする別のコドンに置換することも勿論可能である。
更に、本実施の形態のポリヌクレオチドは、上記置換に加えて、配列番号1に示されるアミノ酸配列におけるアミノ末端から110番目のグリシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであることが好ましい。更に具体的には、配列番号2に示されるポリヌクレオチドにおいて、「gga(328番目〜330番目)」がグリシン以外をコードするコドンに置換されたポリヌクレオチドであることが好ましい。
上記「gga」を置換する具体的なコドンとしては特に限定されないが、例えば、グルタミンをコードするコドンであることが好ましい。更に具体的には、上記「gga」は、「cag(グルタミンをコードするコドン)」に置換されることが好ましいが、これに限定されない。上記「gga」を、グルタミンをコードする別のコドンに置換することも勿論可能である。
上記(e)に記載のポリヌクレオチドは、上述する本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの相補ポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドである。
なお、上記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも90%以上の同一性、好ましくは少なくとも95%以上の同一性、最も好ましくは97%の同一性が配列間に存在する時にのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。
上記ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法のような周知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(ハイブリダイズし難くなる)、より相同なポリヌクレオチドを取得することができる。
上述した(d)または(e)に記載のポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドのみからなるものであってもよいが、その他の塩基配列が付加されていてもよい。
付加される塩基配列としては限定されないが、例えば、標識(例えば、Hisタグ、Mycタグまたは、FLAGタグなど)、融合タンパク質(例えば、ストレプトアビジン、シトクロム、GST、またはGFPなど)、シグナル配列(例えば、小胞体移行シグナル配列および分泌配列など)、および、プロモーター配列(例えば、酵母由来プロモーター配列、ファージ由来プロモーター配列および大腸菌由来プロモーター配列など)などを挙げることが可能である。これらの塩基配列が付加される部位は、翻訳されるタンパク質の所望の機能が維持される限り特に限定されるものではないが、翻訳されるタンパク質のN末端またはC末端であることが好ましい。
【0021】
<3.組換えベクター>
本実施の形態の組換えベクターは、本発明のポリヌクレオチドを含有するものである。
本実施の形態の組換えベクターは本発明のポリヌクレオチドを含有するものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。本実施の形態の組換えベクターを構成するベースとなるベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、アデノウイルス、またはレトロウイルスなどを使用することが可能であるが、これらに限定されない。
本実施の形態の組換えベクターは、導入されるべき宿主に依存して、発現制御領域(例えば、プロモーター、ターミネーター、および/または複製起点等)を含有することが可能である。プロモーターとしては、ウイルス性プロモーター(例えば、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター等)などが挙げられるが、これに限定されない。
本実施の形態の組換えベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ネオマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。上記選択マーカーを用いれば、本発明のポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認することができる。
本実施の形態の組換えベクターの作製は、制限酵素および/またはリガーゼ等を用いる慣用的な手法に従って行うことができる。
上記ベクターとしてプラスミを用いる場合には、例えば、pBluescript(登録商標)またはpUC18などが使用できる。この場合、ベクターが導入される宿主微生物または宿主細胞としては、例えば、酵母、大腸菌(エシェリヒア・コリーW3110(Escherichia coli)、エシェリヒア・コリーC600、エシェリヒア・コリーJM109、エシェリヒア・コリーDH5α)、昆虫細胞および哺乳類細胞などが利用可能である。
上述の宿主微生物または宿主細胞に本実施の形態の組換えベクターを導入する方法としては特に限定されるものではないが、例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる
例えば、宿主微生物としてエシェリヒア属に属する微生物に組換えベクターを導入する場合には、電気穿孔法などを用いることが好ましいが、これに限定されない。その他、市販のコンピテントセル(例えば、コンピテントハイJM109、コンピテントハイDH5α;東洋紡績製)を用いて、組換えベクターを宿主に導入することも可能である。
【0022】
<4.形質転換体>
本実施の形態の形質転換体は、本発明の組換えベクターが導入されたものである。
形質転換される宿主としては特に限定されず、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。
具体的には、例えば、大腸菌(例えば、Escherichia coliなど)等の細菌、酵母(例えば、出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeなど)、昆虫細胞、線虫(例えば、Caenorhabditis elegansなど)、アフリカツメガエル(例えば、Xenopus laevisなど)の卵母細胞、動物細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、およびBowes黒色腫細胞)や各種ヒト培養細胞などを挙げることが可能であるが、これらに限定されない。また、本明細書中で使用される場合、用語「形質転換体」には、細胞、組織または器官だけでなく、生物個体をも含まれる。
上述した組換えベクターを宿主に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。
【0023】
<5.フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの製造方法>
本実施の形態のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの製造方法は、上述した本発明の形質転換体を培養する工程(「培養工程」という)を包含するものである。
本実施の形態のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの製造方法には、上記培養工程の他、形質転換体を用いたタンパク質生産において含まれ得るその他の工程が含まれていてもよい。その他の工程としては、例えば、培養工程後に形質転換体が生産したタンパク質を回収する回収工程および/または当該タンパク質を精製する精製工程を挙げることができるが、これらに限定されない。以下に、各工程について説明する。
【0024】
(5−1)培養工程
培養工程では、本発明の形質転換体が栄養培地などで培養されることにより、本発明のタンパク質が、多量に安定して生産される。
形質転換体の培養形態(例えば、培養方法、培養条件など)などは、宿主に応じて選択することが可能である。例えば、液体培養法にて形質転換体を培養することが好ましい。また、工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。
培養工程で用いられる栄養培地の栄養源としては、培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、ラクトース、糖蜜、またはピルビン酸などが使用され得る。また、窒素源としては資化可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、または大豆粕アルカリ抽出物などが使用され得る。これらに加えて、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄およびマンガン亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、ならびに特定のビタミンなどが必要に応じて培地に添加され得る。
形質転換体の培養温度は、形質転換体が本発明のタンパク質を生産可能な範囲内であれば適宜変更し得るが、例えば、大腸菌(エシェリヒア・コリー)を宿主として利用する場合には、好ましくは20〜42℃程度である。なお、当該温度範囲では、20℃〜30℃が更に好ましいといえる。当該温度範囲であれば、活性を有するタンパク質を多く生産することができる。
また、培養時間は特に限定されないが、本発明のタンパク質が最高収量に達する適切な時に培養を完了すればよく、通常は6〜48時間程度である。
また、培地のpHも特に限定されず、形質転換体が好適に発育し、且つ本発明のタンパク質を生産可能な範囲内で適宜変更し得る。好ましくはpH6.0〜9.0程度である。
【0025】
(5−2)回収工程
回収工程では、上記培養工程中に形質転換体によって生産された本発明のタンパク質が回収される。
形質転換体がタンパク質を細胞外に分泌する場合には、その培養液には本発明のタンパク質が含まれている。したがって、この場合、回収工程では、培養液を回収すればよい。培養液は、本発明のタンパク質としてそのまま利用することが可能である。このとき、例えば、ろ過または遠心分離などによって、培養液と形質転換体とを更に分離してもよい。
また、本発明のタンパク質が細胞外に分泌されずに形質転換体内に存在する場合には、形質転換体を培養して得られた培養液から、ろ過または遠心分離などの手段を用いて形質転換体が分離される。分離された形質転換体が機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法によって破砕された後、当該破砕液から目的のタンパク質を回収すればよい。また、必要に応じて、キレート剤(例えば、EDTAなど)および界面活性剤(例えば、トリトン−X100など)を破砕液に添加して本発明のタンパク質を可溶化し、水溶液として目的のタンパク質を回収することも可能である。
【0026】
(5−3)精製工程
精製工程は、回収工程によって得られたタンパク質を精製する工程である。
上記精製工程の具体的な方法は特に限定されるものではないが、例えば、本発明のタンパク質を含む溶液を、減圧濃縮、膜濃縮、塩析処理(例えば、硫酸アンモニウムおよび硫酸ナトリウムなどを用いる)、または親水性有機溶媒(例えばメタノール、エタノールおよびアセトンなど)による分別沈殿法に供すればよい。これらの操作によって、本発明のタンパク質を沈殿させ、精製することができる。
また、上記精製工程では、加熱処理、等電点処理、ゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、またはこれらの組み合わせを用いて精製を行ってもよい。
これらの手法を用いて得られた本発明のタンパク質を含む精製物(精製酵素)は、電気泳動(SDS−PAGE)において単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
上記の精製物は、例えば凍結乾燥、真空乾燥、またはスプレードライなどによって粉末化させることが可能である。上記構成であれば、精製物を流通させることが容易になる。
また、精製物を使用する際には、その用途によって適宜緩衝液に溶解した状態で使用することができる。緩衝液は、タンパク質の性質、および/または実験条件もしくは環境に応じて好適に選択され得る。上記緩衝液としては、例えば、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、または、GOOD緩衝液などを用いることが好ましい。更に、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、グルタミンおよびリジンなど)、および血清アルブミンなどを精製物に添加することにより、精製物中に含まれるタンパク質を安定化させることができる。
【0027】
<6.糖化タンパク質の測定方法>
本発明に係る糖化タンパク質測定用試薬組成物は、フルクトシルアミノ酸の測定方法に用いることが可能である。また本発明に係る試薬組成物を利用したフルクトシルアミノ酸の測定方法は、HbA1cなどの糖化タンパク質の測定に適用され得る。なお、本発明に係る試薬組成物は、フルクトシルバリルヒスチジンの測定方法に好適に利用し得、糖化ヘモグロビンのβ鎖に特異的な測定に好適に適用され得る。以下に本発明に係るタンパク質を用いた糖化タンパク質の測定方法(以下「本発明の測定方法」という)を説明する。
本発明の測定方法は、少なくとも糖化タンパク質に本発明に係る試薬組成物を作用させることを特徴としている。以下に本発明の測定方法の一実施形態を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に係る測定方法の一実施形態は、
(1)試料とプロテアーゼとを反応させて、試料中の糖化タンパク質を分解し、試料中の糖化タンパク質由来の糖化アミンを調製する工程(便宜上「第1工程」という)、
(2)上記(1)の工程によって得られた試料中の糖化タンパク質由来の糖化アミンに本発明に係るタンパク質を作用させる工程(便宜上「第2工程」という)、および、
(3)上記(2)の工程において発生した過酸化水素の量または消費された酸素の量を測定する工程(便宜上「第3工程」という)、を含む糖化タンパク質を測定するための方法である。
この実施形態における一具体例としては、酵素法が挙げられる。酵素法においては、試料中の糖化タンパク質をアミノ酸、またはペプチドのレベルまで酵素(例えば、プロテアーゼ)を用いて断片化する(第1工程)。次に、生じた糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドに、FAODを加え、酸化還元反応により過酸化水素を発生させる(第2工程)。この試料にペルオキシダーゼ(POD)、および酸化により発色する還元剤を添加し、PODを触媒として過酸化水素と還元剤との間で酸化還元反応を生じさせる(第3工程)。酸化還元反応により還元剤を発色させ、この発色強度を測定することにより過酸化水素量を測定できる(第3工程)。
【0028】
(6−1)第1工程
第1工程は、試料中の糖化タンパク質を分解し、試料中の糖化タンパク質由来の糖化アミンを調製する工程である。
本明細書において「糖化タンパク質」とは、タンパク質を構成するアミノ酸残基の一部または全部に糖が結合した(糖化した)タンパク質を意味する。糖化タンパク質としては、特に限定されるものではないが、例えば、タンパク質のアミノ末端のα−アミノ基が糖化されたもの(例えばHbA1c)等が挙げられる。なお上記例示したHbA1cは、糖尿病の診断など臨床診断の指標として利用されている。
第1工程において使用するプロテアーゼとしては、試料中に含まれる糖化タンパク質を糖化アミノ酸または糖化ペプチドに分解し得るものであれば特に限定されるものではない。例えば臨床検査において使用されているプロテアーゼが好ましく利用され得る。
また本測定方法に使用される「試料」は、糖化タンパク質の有無や濃度を検出すべき対象物であれば特に限定されるものではなく、例えば、全血、血漿、血清および血球等の他に、尿および髄液等の生体試料(すなわち生体から採取された試料)、ならびにジュース等の飲料水、醤油およびソース等の食品類等の試料が挙げられる。本発明の方法は、糖尿病の診断に応用することができるため、上記の中でも特に全血試料および血球試料について測定を行う場合に有用である。特に限定されるものではないが、赤血球内の糖化ヘモグロビンを測定する場合には、全血をそのまま溶血したり、全血から分離した赤血球を溶血したりして、この溶血試料を測定用の試料とすればよい。
試料とプロテアーゼとを反応させる際の具体的な条件は、所望の糖化アミンが調製され得る条件であれば特に限定されるものではなく、試料の濃度および種類、ならびにプロテアーゼの濃度および種類に応じて適宜好適な条件を検討の上、採用されればよい。
本発明の測定方法に好適に使用できるプロテアーゼの濃度は、例えば0.1U〜1MU/mlであり、より好ましくは1U〜500KU/mlであり、最も好ましくは5U〜100KU/mlである。プロテアーゼの濃度は、限定されるものではなく、反応条件、試料の種類および状態、実験者の手技ならびに使用する試薬の種類などに応じて、実験者または使用者に好適に決定され得る。
また本発明に係る試薬組成物が作用する「糖化アミン」は、試料中に含まれる糖化タンパク質に由来の糖化アミノ酸および糖化ペプチドなどが挙げられる。糖化ペプチドの長さは特に限定されるものではないが、本発明のタンパク質が作用し得る長さ、例えばアミノ酸残基数が2〜6の範囲のものが挙げられる。
【0029】
(6−2)第2工程
第2工程は、第1工程によって得られた試料中の糖化タンパク質由来の糖化アミンに本発明に係るタンパク質を作用させる工程である。
本発明に係るタンパク質が有し得るFAOD活性は特に限定されるものではないが、FAOD活性が高いほど高感度で糖化アミンを検出することができ、FAODタンパク質の使用量を少なくすることができるために好ましい。なお本発明の測定方法に好適に使用できるFAODタンパク質の濃度は、例えば0.1〜500U/mlであり、好ましくは0.5〜200U/mlであり、最も好ましくは1.0〜100U/mlである。ただし上記のFAODの濃度は、特に限定されるものではなく、反応条件、試料の種類および状態、実験者の手技ならびに使用する試薬の種類などに応じて、適宜、決定され得る。
なお、本発明に係る試薬組成物が糖化アミンに作用すると、酸化的加水分解反応により酸素が消費され、過酸化水素が発生する。
【0030】
(6−3)第3工程
第3工程は、第2工程において発生した過酸化水素の量または消費された酸素の量を測定する工程である。第3工程は過酸化水素の量または酸素の量を測定し得る方法であれば、その具体的方法は特に限定されるものではない。したがって、公知の方法が適宜適用され得る。
酵素法を利用している場合には、第2工程によって得られた試料にPOD、および酸化により発色する還元剤を添加し、還元剤の発色強度を測定することにより過酸化水素量を測定する。
この場合に好適なPODは、西洋ワサビ、微生物などに由来するものである。また、PODの好適な使用濃度は、0.01〜100単位/mLである。
第3工程において好適な過酸化水素の測定方法としては、PODの存在下でのカップラー(4−アミノアンチピリン(4−AA)および3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)など)に対してフェノール系、アニリン系またはトルイジン系の色原体を酸化縮合反応させることにより色素を生成するトリンダー試薬類、およびPODの存在下で直接酸化呈色するロイコ色素が使用され得る。これらの方法は、当業者に公知であり、一般に容易に使用され得る。
トリンダー試薬としては、限定されないが、例えば、フェノールおよびその誘導体を用いることができる。
第3工程において好適に使用可能なカップラーとしては、4−アミノアンチピリン、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)およびスルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)などが挙げられる。
第3工程において好適に使用できるロイコ色素としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルメタン誘導体、フェノチアジン誘導体およびジフェニルアミン誘導体などが使用できる。
第3工程における過酸化水素量の測定において、POD等を用いた発色方法以外に、各種センサー系を用いた測定法が当業者に一般的に知られている(限定されないが、例えば、特開2001−204494号公報を参照のこと)。具体的には、各種センサー系に用いる電極としては、酸素電極、カーボン電極、金電極および白金電極などが挙げられる。本発明において、作用電極として酵素を固定化したこれらの電極を用い、対極(例えば、白金電極など)および参照電極(例えば、Ag/Cl電極など)と共に、本発明に好適な条件下の緩衝液中に挿入して一定温度に保持しながら、作用電極に一定の電圧を加え、さらに試料を添加して、酵素反応の結果生じる過酸化水素に起因する電流の増加値を測定することができる。
また、カーボン電極、金電極および白金電極などを用いてアンペロメトリック系で測定する方法として、固定化電子メディエーターを用いる系がある。例えば、作用電極として酵素およびフェリシアン化カリウム、フェロセン、オスミウム誘導体、およびフェナジンメトサルフェートなどの電子メディエーターを吸着、または共有結合法により高分子マトリクスに固定化したこれらの電極を用い、対極(例えば、白金電極など)および参照電極(例えば、Ag/AgCl電極など)と共に、本発明に好適な条件下の緩衝液中に挿入して一定温度に保持する。続いて、作用電極に一定の電圧を加え、試料を添加して酵素反応の結果生じる過酸化水素に起因する電流の増加値を測定することができる。
第3工程で消費された酸素量を測定することで糖化アミン量を測定することもできる(限定されないが、例えば、特開2001−204494号公報を参照のこと)。具体的には、酸素電極を用い、電極表面に酸素を固定化して、本発明に好適な条件下の緩衝液中に挿入して一定温度に保持する。ここに試料を加えて、電流の減少値を測定する。
カーボン電極、金電極、白金電極などを用いてアンペロメトリック系で測定する場合には、作用電極として酵素を固定化したこれらの電極を用い、対極(例えば、白金電極など)および参照電極(例えば、Ag/AgCl電極など)と共に、メディエーターを含む電流の増加量を測定する。メディエーターとしては、フェリシアン化カリウム、フェロセン、オスミウム誘導体およびフェナジンメトサルフェートなどを用いることができる。
本発明の測定法において、各工程を実施する系に本発明のタンパク質の安定性を増すために不活性タンパク質を添加してもよい。不活性タンパク質は、血清アルブミン類、グロブリン類および繊維性タンパク質類を含む。好ましいタンパク質は、ウシ血清アルブミンであり、wt/volにおける好ましい濃度は、0.05〜1%である。好ましい不活性タンパク質は、酵素分解を起こすプロテアーゼ不純物を含まないものである。
フルクトシルアミノ酸濃度の測定は、試料の特定体積および試薬の特定体積を用いて行われる。吸光度測定は、試料ブランクを測定するために、混合後、かつフルクトシルアミノ酸による有意な吸光度変化が起こる前にできるだけ速やかに行われる。0.5〜5秒後の第1の吸光度測定が適当である。第2の吸光度測定は、吸光度が定常的になった後、典型的には1mg/dLのフルクトシルアミノ酸濃度において37℃にて3〜5分間である。典型的には、該試薬は既知のフルクトシルアミノ酸濃度を有する水性または血清溶液にて標準化される。
【0031】
<7.糖化タンパク質測定キットおよび糖化タンパク質測定センサー>
(7−1)糖化タンパク質測定キット
本発明に係る糖化タンパク質測定キット(以下「本発明のキット」という)は、少なくとも本発明に係る試薬組成物を備えていることを特徴としている。本発明のキットに備えられている本発明に係る試薬組成物の形態は特に限定されるものではないが、例えば、水溶液、懸濁液または凍結乾燥粉末などの形態が採用され得る。凍結乾燥粉末は常法に従って作製され得る。
上述の添加物の配合法は特に制限されるものではない。例えば、本発明に係るタンパク質を含む緩衝液に添加剤を配合する方法、添加剤を含む緩衝液に本発明に係るタンパク質を配合する方法、または本発明に係るタンパク質および安定化剤を緩衝液に同時に配合する方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のキットは、少なくとも本発明に係るタンパク質、ペルオキシダーゼ、および色原体を備える試薬組成物により構成されていてもよい。
本発明の測定方法においてフルクトシルアミノ酸の酸化に由来する過酸化水素の検出には、ペルオキシダーゼ反応を利用する。よって試薬組成物には、ペルオキシダーゼおよび色原体(過酸化水素発色試薬)が好ましく用いられる。ペルオキシダーゼおよび色原体(過酸化水素発色試薬)は何ら制限されるものではない。
本発明に用いられる色原体(過酸化水素発色試薬)は、溶液において安定であり、且つビリルビン干渉が低いものであることが好ましい。本発明に好適に用いることができる色原体(過酸化水素発色試薬)としては、例えば4−アミノアンチピリンもしくは3−メチル−2−ベンゾチアゾリンヒドラゾン(MBTH)およびフェノールもしくはその誘導体またはアニリンもしくはその誘導体の組み合わせからなる試薬が挙げられる。また、本発明において用いられる色原体(過酸化水素発色試薬)は、ベンジジン類、ロイコ色素類、4−アミノアンチピリン、フェノール類、ナフトール類およびアニリン誘導体類であってもよい。
また本発明において好適に用いられるペルオキシダーゼは、西洋ワサビ由来のペルオキシダーゼが好ましい。このペルオキシダーゼは、高純度かつ低価格のものが商業的に入手可能である。酵素濃度は、迅速かつ完全な反応のために充分高くなければならず、好ましくは、1,000〜50,000U/Lである。
また他の試薬組成物には、上記構成の他、緩衝剤(例えば、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液およびGOOD緩衝液など)が含まれていてもよい。さらに試薬組成物には、酵素反応を妨害するイオンを捕捉するキレート試薬(例えば、EDTAおよびO−ジアニシジンなど)、過酸化水素の定量の妨害物質であるアスコルビン酸を消去するアスコルビン酸オキシダーゼ、各種界面活性剤(例えば、トリトンX−100およびNP−40など)、ならびに各種抗菌剤および防腐剤(例えば、ストレプトマイシンおよびアジ化ナトリウムなど)などが含まれていてもよい。これらの試薬は、単一試薬でも2種類以上の試薬を組み合わせてなるものであってもよい。
緩衝剤としては特に限定されないが、6〜8.5のpH範囲において充分な緩衝能力を有する任意の緩衝剤を使用することができる。このpH範囲の緩衝剤としては、リン酸塩、トリス、ビス−トリスプロパン、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、2−モルフォリノエタンスルホン酸1水和物(MES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(piperazine−1,4−bis(2−ethanesulfonic acid))(PIPES)、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(2−[4−(2−Hydroxyethyl)−1−piperazinyl]ethanesulfonic acid)(HEPES)、および3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)などが挙げられる。特に、好ましい緩衝剤はMESおよびPIPESである。また特に、好ましい濃度範囲は20〜200mMであり、好ましいpH範囲はpH6〜7である。
本発明のキットには、例えば、FAOD、緩衝液、プロテアーゼ、POD、発色試薬、酵素反応を妨害するイオンを捕捉するキレート試薬、過酸化水素の定量の妨害物質であるアスコルビン酸を消去するアスコルビン酸オキシダーゼ、界面活性剤、安定化剤、賦形剤、抗菌剤、防腐剤、ウェルプレート、蛍光スキャナー、自動分析機、および本発明に係る測定方法を紙媒体に記載した取り扱い説明書などが含まれていてもよい。
本発明のキットは、本発明に係るフルクトシルアミノ酸の測定方法、および糖化タンパク質の測定に利用し得るものであり、とりわけ、糖化ヘモグロビンの測定に好適に利用し得る。
【0032】
(7−2)糖化タンパク質測定センサー
本発明に係る糖化タンパク質測定センサー(以下「本発明のセンサー」)は、糖化タンパク質を検出するために用いられるセンサーであり、少なくとも本発明に係るタンパク質を備えている。本発明のセンサーは、本発明の測定方法の実施に用いられる。とりわけ、糖化ヘモグロビンの測定に好適に利用し得る。よって、本発明のセンサーは、本発明の測定方法の実施に用いられる物品により構成されていてもよい。上記物品の説明については、本発明の測定方法および本発明のキットの項における緩衝剤等の説明を援用することができる。
本発明のセンサーの一実施形態は、本発明に係るタンパク質を支持体に固定して用いることができる。支持体としては、本発明に係るタンパク質を固定化できるものであれば、特に限定されるものではなく、形状や材質はタンパク質の性質に応じて好適なものを使用してよい。支持体の形状は、タンパク質が固定化できる十分な面積を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、基板、ビーズおよび膜などが挙げられる。支持体の材料としては、例えば、無機系材料、天然高分子および合成高分子などが挙げられる。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0033】
<1.活性測定試薬>
表1に、以下の実施例にて使用した活性測定試薬の組成を示す。なお、実施例において使用した試薬は、特記しない限り、ナカライテスク社より購入したものを用いた。
【0034】
【表1】

【0035】
<2.活性測定方法>
FAODの活性測定方法を、以下に示す。
各基質に対するFAODの酵素活性は、酵素反応によって生成される過酸化水素を用いたペルオキシダーゼ反応により生じた色素の吸光度の増加を測定した。
まず、活性測定試薬3mlを37℃にて5分間加温した後、当該活性測定試薬に、予め酵素希釈液(0.1%トリトンX100を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5))にて希釈した酵素溶液0.1mlを加え、反応を開始した。
37℃にて5分間反応させた後、単位時間あたりの500nmの吸光度変化を測定した(ΔODtest/min)。盲検としては、酵素溶液の代わりに酵素希釈液0.1mlを用い、同様の操作を行って吸光度変化を測定した(ΔODblank/min)。
下記計算式に基づいて、得られた吸光度変化から酵素活性を算出した。なお、上記条件下で1分間に1マイクロモルの基質を酸化する酵素量を1単位(U)と規定した。
(計算式)
活性値(U/ml)={((ΔODtest/min)−(ΔODblank/min))×3.1ml×希釈倍率}/(13×1.0cm×0.1ml)
なお、上記計算式において、「3.1ml」は全液量を示し、「13」はミリモル吸光係数を示し、「1.0cm」はセルの光路長を示し、「0.1ml」は酵素サンプル液量を示す。
【0036】
<3.基質特異性評価方法>
FAODの基質特異性評価方法を、以下に説明する。
各基質(F−K:フルクトシルリジン、F−V:フルクトシルバリン、F−VH:フルクトシルバリルヒスチジン)の濃度が2mMになるように活性測定試薬を調製し、上述した活性測定法に従って、下記計算式により活性値比(基質特異性)を算出した。
(F−V/F−VH)=(F−Vを基質としたときの活性値)÷(F−VHを基質としたときの活性値)
(F−K/F−VH)=(F−Kを基質としたときの活性値)÷(F−VHを基質としたときの活性値)
なお、当該式で定義される活性値比が小さいほど、F−VHに対する特異性に優れ、好ましいと判定される。
【0037】
<5.フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ遺伝子のクローニング>
Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼのcDNAクローニングを行うために、Phaeosphaeria nodorumのゲノムデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sutils/genom_table.cgi?organism=fungi&database=321614)を検索した。
ゲノムデータベースから、FAD依存オキシドレダクターゼ(FAD−dependent oxidoreductase)をコードすることが予測される遺伝子を抽出した。検索結果から得られた種々の遺伝子のうち、フルクトシルバリルヒスチジンに実質的に作用する酵素をコードする可能性を有するという観点からさらに絞り込みを行った結果、GenBank no. AAGI01000177239512 bp Phaeosphaeria nodorum SN15 cont1.177, whole genome shotgun Sequence(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?tool=portal&db=nuccore&term=&query%5Fkey=11&dopt=gb&dispmax=20&page=1&qty=1&WebEnv=0x3fThZQ1ubv2E4QUtcTFzS2yHOV3ljOuR6kUwGyNOVEiqCGdFac8yYAlfzZG%2DvpBxXqNrPNESW3skk%402644558678701720%5F0135SID&WebEnvRq=1)の75,143 bpから76,625 bpの配列に相当する遺伝子をクローニング候補遺伝子とした。
次に、上記クローニング候補遺伝子のcDNAについて、スプライシング部位(エキソン−イントロン)の予測ツール(http://www.fruitfly.org/seq_tools/splice.html)の使用や、既知の他の生物種のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子との比較により、タンパク質をコードする部分に対応するcDNA全配列を推定した。この情報をもとに、定法である遺伝子断片のPCRによる全合成、すなわち全RNAの調製からmRNAの抽出を経て逆転写を行うことでcDNA全配列を合成した。前記のcDNAを、Blunting high(東洋紡績社製)を用いて末端の平滑化を行い、pUC118のSmaI部位へサブクローニングした。cDNA部分についてシーケンス解析を行った結果、配列番号2に示した塩基配列が得られた。配列番号2に示した塩基配列におけるcDNAのコーディング領域は1番目の塩基から1314番目の塩基であり、開始コドンは1番目の塩基から3番目の塩基、終止コドンTAGは1312番目の塩基から1314番目の塩基に相当する。配列番号2に示した塩基配列から明らかとなったアミノ酸配列は、配列番号1に示した。
【0038】
<6.フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ遺伝子の大腸菌での大量発現と精製、酵素アッセイ>
上記配列番号1に示した塩基配列を有するフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ遺伝子を含むプラスミドの大腸菌における大量発現を試みた。フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ遺伝子の終止コドンを除いた全長cDNA領域(配列番号2に示した塩基配列の1番目から1311番目の塩基まで)をPCRで増幅した。その際、アミノ酸配列のN末端側に配列番号3に示すプライマーP1(5’−GGAATTCCATATGGCGCCCTCCAGAGCAAACACCAGTGTCATT−3’)(上記塩基配列における「CATATG」はNdeI部位)を用いてNdeI切断部位を挿入し、C末端側に配列番号4に示すプライマーP2(5’−CCGCTCGAGCAAGTTCGCCCTCGGCTTATCATGATTCCAACC−3’)(上記塩基配列における「CTCGAG」はXhoI部位)を用いてXhoI切断部位を導入した。本DNA断片をpET−23bベクター(ノバジェン社)のNdeI−XhoI部位へT7プロモーターと正方向になるようにサブクローニングした。作製したプラスミドは、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ発現用プラスミドとしてpIE353と命名した。
前記のプラスミドpIE353を用いて大腸菌BL21 CodonPlus(DE3)−RIL(ストラタジーン社)を形質転換した。その後、アンピシリン耐性を示す形質転換体BL21 CodonPlus(DE3)−RIL(pIE353)を選択した。
前記形質転換体の培養用の培地として、200mlのTB培地を容積2Lの坂口フラスコに分注し、121℃、20分間オートクレーブを行ったものを用いた。前記培地を放冷後、別途無菌濾過したアンピシリンを終濃度が100μg/mlになるように培地に添加した。この培地に100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で予め30℃、16時間培養したBL21 CodonPlus(DE3)−RIL(pIE353)の培養液を2ml接種した。
続いて、30℃で24時間通気攪拌培養を行った。培養終了後、菌体を遠心分離により集菌し、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁した後、細胞を超音波破砕した。
次に、前記懸濁液を遠心分離して、上清液を粗酵素液として得た。フルクトシルバリルヒスチジンを基質として含む酵素活性測定試薬を用いて測定し、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有することを確認した。得られた粗酵素液についてMagExtractor−His−tag−(東洋紡績製)を用いて、規定のプロトコールに従って精製し、精製酵素標品(IE353)を得た。本方法により得られたIE353標品は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、単一であることが確認された。
前記IE353標品の酵素活性を、フルクトシルバリルヒスチジンを基質として含む酵素活性測定試薬を用いて測定し、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有することを確認した。
【0039】
<7.フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ遺伝子の機能改変によるフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質の造成、精製、および酵素アッセイ>
発現プラスミドpIE353および配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目のイソロイシンがランダムに他のアミノ酸に置換するように設計された合成オリゴヌクレオチド(配列番号5および6)を用いて、KOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kit(東洋紡績製)を使用して、規定のプロトコールに従って変異処理操作を行い、塩基配列を確認した。100個の組換えプラスミドの塩基配列を確認したが、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目のイソロイシンがランダムに置換されているので、コードしているアミノ酸の種類としては野生型と同じイソロイシン(I)を除く19種類のアミノ酸に置換されたプラスミドを取得した。同時に、これら100個のプラスミドを用いてBL21 CodonPlus(DE3)−RILを形質転換した後、アンピシリン耐性を示す形質転換体をそれぞれ選抜し、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するもののみを選抜した。
例えば、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がトレオニン(T)をコードする塩基配列(acc)に置換された(pIE353−I58T)を取得した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Tと呼ぶ。(以下に示す別の事例においても同様に呼称する。)
同様にアラニン(A)をコードする塩基配列(gct)に置換されたプラスミド(pIE353−I58A)、バリン(V)をコードする塩基配列(gtc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58V)、ロイシン(L)をコードする塩基配列(ctc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58L)、メチオニン(M)をコードする塩基配列(atg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58M)、フェニルアラニン(F)をコードする塩基配列(ttc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58F)、セリン(S)をコードする塩基配列(tcg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58S)、グルタミン(Q)をコードする塩基配列(caa)に置換されたプラスミド(pIE353−I58Q)、システイン(C)をコードする塩基配列(tgc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58C)、チロシン(Y)をコードする塩基配列(tac)に置換されたプラスミド(pIE353−I58Y)、アスパラギン(N)をコードする塩基配列(aac)に置換されたプラスミド(pIE353−I58N)、リジン(K)をコードする塩基配列(aag)に置換されたプラスミド(pIE353−I58K)、ヒスチジン(H)をコードする塩基配列(cac)に置換されたプラスミド(pIE353−I58H)、アルギニン(R)をコードする塩基配列(cgc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58R)、アスパラギン酸(D)をコードする塩基配列(gac)に置換されたプラスミド(pIE353−I58D)、グルタミン酸(E)をコードする塩基配列(gaa)に置換されたプラスミド(pIE353−I58E)、トリプトファン(W)をコードする塩基配列(tgg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58W)、プロリン(P)をコードする塩基配列(ccc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58P)を取得した。
取得した各プラスミドを用いてBL21 CodonPlus(DE3)−RILを形質転換した後、アンピシリン耐性を示す形質転換体をそれぞれ選抜した。
参考例2と同様に、各形質転換体を培養し、得られた粗酵素液の精製を行うことにより、それぞれの精製酵素標品(IE353−I58T、IE353−I58A、IE353−I58V、IE353−I58L、IE353−I58I、IE353−I58M、IE353−I58F、IE353−I58S、IE353−I58Q、IE353−I58C、IE353−I58Y、IE353−I58N、IE353−I58K、IE353−I58H、IE353−I58R、IE353−I58D、IE353−I58E、IE353−I58W、IE353−I58P)を得た。本方法により得られた各標品は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、単一であることが確認された。
【0040】
<8.各フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼタンパク質の特性評価>
野生型フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ(IE353)、およびフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ変異体(IE353−I58T、IE353−I58A、IE353−I58V、IE353−I58L、IE353−I58I、IE353−I58M、IE353−I58F、IE353−I58S、IE353−I58Q、IE353−I58C、IE353−I58Y、IE353−I58N、IE353−I58K、IE353−I58H、IE353−I58R、IE353−I58D、IE353−I58E、IE353−I58W、IE353−I58P)の精製酵素標品の酵素活性を、活性測定試薬を用いて測定した結果、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するものはIE353、IE353−I58T、IE353−I58M、IE353−I58S、IE353−I58V、IE353−I58A、IE353−I58N、IE353−I58Lであり、基質特異性評価を実施した。その結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2の結果から明らかなように、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目のイソロイシンを他のアミノ酸に置換した変異体は野生型フルクトシルバリスヒスチジンオキシダーゼタンパク質と比較してF−V/F−VHおよびF−K/F−VHが低減している。
【0043】
<9.フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ改変体によるフルクトシルバリルヒスチジン測定>
次に、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ改変体(IE353−I58T)でフルクトシルバリルヒスチジンが測定できるかを確認した。
<反応液組成>
50mM MES(同人化学製)pH6.5
0.1% TritonX100(ナカライテスク製)
・ 02% 4−アミノアンチピリン(ナカライテスク製)
・ 01% TOOS(ナカライテスク製)
20U/mL 西洋ワサビペルオキシダーゼ(東洋紡績製、商品名PEO−301)
1U/mL IE353−I58T
MES:2−モルフォリノエタンスルホン酸1水和物
TOOS:N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン
<反応手順>
予め37℃にしておいた反応液300μLに試料(各濃度フルクトシルバリルヒスチジン水溶液)10μLを添加後、正確に1分後反応させる。試料添加前および試料添加1分後の546nmの吸光度を測定し1分間の吸光度変化(ΔAbs/min)を算出した。
結果を図1に示す。
図1から明らかなように、測定するフルクトシルバリルヒスチジンと吸光度変化には相関があり、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ改変体(IE353−I58T)を用いてフルクトシルバリルヒスチジンを定量することができる。
【0044】
<10(比較例).野生型フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼを用いたフルクトシルバリルヒスチジン測定におけるフルクトシルバリンの影響度評価>
野生型フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ(IE353)を用いて9.と同様の組成でフルクトシルバリルヒスチジン測定試薬を調製した。この試薬を用いて試料:0.8mMフルクトシルバリルヒスチジンにさらに各濃度フルクトシルバリンを追添したものを測定し、各フルクトシルバリンの影響度を比較した。その結果を11.の結果と合わせて図2に示す。
<影響度の評価方法>
影響度(%)=((F−Vを添加した測定値)−(F−Vを添加していない測定値))/(F−Vを添加していない測定値)×100
【0045】
<11.フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ改変体を用いたフルクトシルバリルヒスチジン測定におけるフルクトシルバリンの影響度評価>
フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ改変体(IE353−I58T)を用いて9.と同様の組成でフルクトシルバリルヒスチジン測定試薬を調製した。この試薬を用いて試料:0.8mMフルクトシルバリルヒスチジンにさらに各濃度フルクトシルバリンを追添したものを測定し、各フルクトシルバリンの影響度を比較した。その結果を10.の結果と合わせて図2に示す。
<影響度の評価方法>
影響度(%)=((F−Vを添加した測定値)−(F−Vを添加していない測定値))/(F−Vを添加していない測定値)×100
【0046】
図2から明らかなように、IE353−I58Tは野生型と比較して、フルクトシルバリンの影響度が低減している。よって、FAODのF−V/F−VHが低いものを使用すれば、フルクトシルバリンの影響を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、フルクトシルバリンに対する作用性が低いフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼを用いてフルクトシルバリンの影響が低減した糖化アミン測定試薬組成物を提供できるので、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼを利用したフルクトシルバリルヒスチジンの測定方法を提供できる。したがって、本発明は、予防医学に基づく臨床検査分野、診断医療分野、製薬分野および保健医学分野をはじめ、生命科学分野の産業に広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを含む糖化タンパク質測定用試薬組成物において、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼが以下の(1)の性質を有する糖化タンパク質測定用組成物。
(1)フルクトシルバリンに対する反応性が、フルクトシルバリルヒスチジンに対する活性値を10とした場合、35以下である。
【請求項2】
プロテアーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを含む糖化タンパク質測定用試薬において、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼが以下の(2)の性質を有する糖化タンパク質測定用試薬。
(2)フルクトシルバリンに対する反応性が、フルクトシルバリルヒスチジンに対する活性値を2とした場合、1以下である。
【請求項3】
フルクトシルアミノ酸オキシダーゼが、以下の(a)〜(c)のうち何れかの性質を有する請求項1に記載の試薬組成物。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列においてアミノ末端から58番目のイソロイシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有する;
(b)アミノ酸配列(a)においてアミノ末端から58番目のアミノ酸以外の部位において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有する;
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、配列番号1に示されるアミノ酸配列におけるアミノ末端から58番目のイソロイシンに対応するアミノ酸が当該アミノ酸とは異なるアミノ酸に置換されており、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項4】
アミノ酸置換が、配列番号1に示されるアミノ酸配列においてアミノ末端から58番目のグリシンがメチオニン、トレオニン、アラニン、アスパラギン、セリン、バリン、ロイシンからなる群より選ばれるいずれかに置換されたものである請求項1に記載の試薬組成物。
【請求項5】
糖化タンパク質がHbA1cである請求項1〜4のいずれかに記載の試薬組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の試薬組成物を用いる糖化タンパク質測定方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の試薬組成物を含む糖化タンパク質測定キット。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の試薬組成物を含む糖化タンパク質測定センサー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−233501(P2010−233501A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85313(P2009−85313)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】