説明

フレキシブルコンテナ

【課題】簡便な充填装置を用いて粉粒体を充填するときに手作業で粉粒体の表面をならすことが可能なフレキシブルコンテナを提供する。
【解決手段】粉粒体2が充填される胴部12の上面を形成する上面布11の中央部に、粉粒体2を充填するためのノズル1が挿入される充填口15を有する筒部14が設けられたフレキシブルコンテナ10Aであって、上面布11における筒部14の周囲には、筒部14を通じて粉粒体2を胴部12に充填する際に手や棒5等を胴部12内に差し入れて胴部12内の粉粒体2の山を崩すための挿入口21が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体が充填される胴部の上面を形成する上面布の中央部に、粉粒体を充填するためのノズルが挿入される充填口を有する筒部が設けられたフレキシブルコンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルコンテナは、折り畳みが可能であるため、粉粒体(粉体および粒体)の充填、輸送、保管容器として広く用いられている。
特許文献1,2には、フレキシブルコンテナに充填した粉体の嵩密度を高めるため、フレキシブルコンテナを上下動させたり、傾けたりすることによって、粉体に衝撃力を加えるようにした粉体充填装置が記載されている。
特許文献3には、トナーカートリッジ等の容器において粉体供給口とは別にエア吸引管の挿入口を設け、エア吸引管で粉体(トナー等)の空気を吸引しながら容器に粉体を充填する粉体充填装置が記載されている。
【特許文献1】特開平9−254902号公報
【特許文献2】特開2000−318702号公報
【特許文献3】特開平8−198203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献2に記載されているフレキシブルコンテナのように、コンテナの上部が開放されている場合、コンテナ内に充填された粉体の表面をならして平坦にすることは容易だが、充填中に粉体が舞い上がりやすい。
これに対して、特許文献1に記載されているフレキシブルコンテナのように、コンテナの上部が縮径された筒状の口部になっていて、粉体供給ノズルが口部に密接するようになっている場合、充填中に粉体が漏れにくい。しかし、図2に示すように、ノズル1からコンテナ10内に充填された粉体2が山のように盛り上がると、コンテナ10の肩の部分において、コンテナ10の内面と粉体2の表面3との間で空気が閉じ込められた空間4ができてしまう。
【0004】
粉体の表面をならすため、特許文献1,2に記載されたようにコンテナの外部から粉体に衝撃力を加える粉体充填装置が用いられている。しかし、この種の粉体充填装置は、フレキシブルコンテナを支持する装置や、フレキシブルコンテナを動かす動力源などが必要であり、設備が大掛かりになる。フレキシブルコンテナが大型になるほど、粉体が充填されたときの重量が大きくなるため、実施コストが増大してしまう。
【0005】
また、特許文献3に記載された粉体充填装置は、小型で剛性を有するトナーカートリッジ等の容器には好適であっても、大型で柔軟なフレキシブルコンテナに適用することは難しい。フレキシブルコンテナの充填中にエアの吸引を行うと、フレキシブルコンテナがエア吸引管に吸いつけられて吸引を続けることが困難になるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡便な充填装置を用いて粉粒体を充填することが可能であり、しかも充填中にノズルを外さないまま手作業でフレキシブルコンテナ内に充填された粉粒体の表面をならすことが可能なフレキシブルコンテナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、粉粒体が充填される胴部の上面を形成する上面布の中央部に、粉粒体を充填するためのノズルが挿入される充填口を有する筒部が設けられたフレキシブルコンテナであって、前記上面布における前記筒部の周囲には、前記筒部を通じて粉粒体を前記胴部に充填する際に手や棒等を前記胴部内に差し入れて胴部内の粉粒体の山を崩すための挿入口が形成されていることを特徴とするフレキシブルコンテナを提供する。
【0008】
本発明のフレキシブルコンテナにおいては、前記挿入口を覆う蓋材が、前記上面布に取り付けられていることが好ましい。
また、前記挿入口の周囲を取り囲む筒状の覆いが、前記上面布に取り付けられていることが好ましい。
また、前記挿入口の内側には、挿入口に差し入れた手を包む袋が取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフレキシブルコンテナによれば、筒部を通じて粉粒体を胴部に充填する際に手(腕)や棒等を胴部内に差し入れるための挿入口が形成されているので、筒部からノズルを外すことなく、胴部内の粉粒体の山を崩して、粉粒体の表面をならすことができる。また、コンテナに外部から衝撃力を加える大掛かりな粉体充填装置を用いる場合に比べ、コンテナを動かすための動力や装置が少なくて済み、充填装置の作業面積やコストを抑制することができる。
【0010】
挿入口を覆う蓋材や、挿入口の周囲を取り囲む筒状の覆いが、上面布に取り付けられている場合、粉粒体が挿入口からこぼれたり、挿入口を通じて雨水や異物(塵埃や虫など)が粉粒体に混入したりするのを防ぐことができる。特に、挿入口の周囲を取り囲む筒状の覆いが設けられた場合には、棒を挿入口に差し入れるときに、筒状の覆いが挿入口への案内となり、挿入が容易である。
【0011】
挿入口の内側に、手を包む袋が取り付けられている場合には、挿入口から手(腕)を差し入れて胴部内の粉粒体の山を崩す際に、手を直接粉粒体に触れることがなく、衛生的に作業することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、従来のフレキシブルコンテナの一例を示す斜視図、図2は、図1に示すフレキシブルコンテナに粉粒体を充填したときの状態を説明する断面図である。
【0013】
図1に示すフレキシブルコンテナ10は、粉粒体2が充填される胴部12と、この胴部12の上面を形成する上面布11の中央部に設けられた粉粒体2を充填するためのノズル1が挿入される充填口15を有する上側の筒部14を有する。
また、胴部12の底部13の中央部には、粉粒体2を排出するための排出口17を有する下側の筒部16が設けられている。この排出口17は、粉粒体2を充填するときには、図2に示すように閉鎖することができる。
また、フレキシブルコンテナ10の胴部12には、吊り下げ部18を固定する固定部19が取り付けられている。フレキシブルコンテナ10に粉粒体2を充填する際には、吊り下げ部18を粉粒体充填装置のフック(図示せず)に掛けて、フレキシブルコンテナ10を吊り下げることができる。
【0014】
図1に示すフレキシブルコンテナ10に粉粒体2を充填する場合、図2に示すように、充填口15から筒部14内に粉粒体充填装置のノズル1を挿入する。ノズル1から粉粒体2を吐出すると、胴部12内に粉粒体2が充填される。粉粒体2の充填の際には、胴部12内の粉粒体2の表面3(上端面)は、ノズル1の下方である胴部12の中央部では高く、胴部12の外周側ほど低くなった形状になる。粉粒体2の表面3が上面布11と筒部14との合わせ目の位置まで到達すると、筒部14の下端が粉粒体2で塞がってしまう。
すると、フレキシブルコンテナ10の肩の部分において、胴部12の内面と粉粒体2の表面3との間で空気が閉じ込められた空間4ができ、そのままではこれ以上粉粒体を胴部12内に充填できない状態になる。
【0015】
この時点で充填を完了するのでは、胴部12内を粉粒体2で一杯に充填することができないため、フレキシブルコンテナ10を粉粒体2の輸送手段として利用するときに、コンテナ内での粉粒体の充填率が低く、輸送の能率が低下してしまう。
しかし、筒部14からノズル1を引き抜き、空いた筒部14を通じて手や棒等で粉粒体2の表面3をならすのでは、ノズル1の出し入れのため、充填の作業時間が余計に掛かってしまう。
【0016】
この問題を解決するための本発明の第1の形態に係るフレキシブルコンテナ10Aは、図3、図4に示すように、上面布11における筒部の周囲には、筒部14を通じて粉粒体2を胴部12に充填する際に手や棒5等を胴部12内に差し入れるための挿入口21が形成されている。このため、挿入口21から棒5等を差し入れることにより、筒部14からノズル1を外すことなく、胴部12内の粉粒体2の山を崩して、粉粒体2の表面3をならすことができる。
また、コンテナに外部から衝撃力を加える大掛かりな粉体充填装置を用いる場合に比べ、コンテナを動かすための動力や装置が少なくて済み、充填装置の作業面積やコストを抑制することができる。
【0017】
上面布11に挿入口21を設けた場合、粉粒体2が挿入口21からこぼれたり、挿入口21を通じて雨水や異物等が粉粒体2に混入したりするのを防ぐ必要がある。このため、第1の形態に係るフレキシブルコンテナ10Aには、挿入口21を覆う蓋材22が、上面布11に取り付けられている。
【0018】
蓋材22は、挿入口21と筒部14との間の位置において上面布11に取り付けられている。この場合、胴部12の外側にいる作業者が手や棒5等を胴部12内に差し入れるときに蓋材22を開きやすく、かつ粉粒体2の山を崩す際に蓋材22が邪魔にならず、好ましい。蓋材22と上面布11との取付け部位23は、例えば接着剤による接着や、糸を用いた縫製などにより形成することができる。コンテナを構成する布が、ポリオレフィン(例えばポリエチレンやポリプロピレン)等の熱可塑性樹脂の繊維や糸(ヤーン)からなる織布や、熱融着可能な樹脂で被覆した織布の場合は、融着によって蓋材22を上面布11に取り付けることも可能である。
【0019】
さらに、蓋材22のうち上面布11との取付け部位23を除く3辺と、これに対応する上面布11の位置には、蓋材22を上面布11に着脱可能に貼り付けるための面ファスナー24,25が設けられている。これにより、蓋材22と上面布11との隙間から雨水などが侵入するのを防止することができる。また、面ファスナー以外でもポリチャックやマグネットシートなど水密に開閉可能であれば、充填物との相性を考慮して適宜選択できる。
【0020】
挿入口21と蓋材22の組20は、図3に示すように、筒部14の周囲に複数組設けることができる。挿入口21は、例えば円形、多角形その他の形状の穴であり、手や棒5等を挿入するため、適宜の開口面積を有する。
また、挿入口は、図5に示す本発明の第2の形態に係るフレキシブルコンテナ10Bのように、スリット31によって構成することもできる。
【0021】
スリット31は、上面布11の一部を切断することで形成することができる。また、上面布11のほつれを防ぐため、スリット31を縁取り加工しても良い。本形態例のフレキシブルコンテナ10Bにおいても、それぞれのスリット31を覆う蓋材32が設けられている。これにより、粉粒体2がスリット31からこぼれたり、スリット31を通じて雨水や異物等が粉粒体2に混入したりするのを防ぐことができる。スリット31と蓋材32の組30は、図5に示すように、筒部14の周囲に複数組設けることができる。
【0022】
蓋材32は、スリット31と筒部14との間の位置において上面布11に取り付けられている。この場合、胴部12の外側にいる作業者が手や棒5等を胴部12内に差し入れるときに蓋材32を開きやすく、かつ粉粒体2の山を崩す際に蓋材32が邪魔にならず、好ましい。さらに、蓋材32において上面布11との取付け部位33を除く3辺と、これに対応する上面布11の位置には、蓋材32を上面布11に着脱可能に貼り付けるための面ファスナー34,35が設けられている。これにより、蓋材32と上面布11との隙間から雨水などが侵入するのを防止することができる。また、面ファスナー以外でもポリチャックやマグネットシートなど水密に開閉可能であれば、充填物との相性を考慮して適宜選択できる。
【0023】
本発明のフレキシブルコンテナにおいて、挿入口21,31に手を差し入れる場合に、直接粉粒体2に触れると、粉粒体2が汚染されるおそれがある。図6、図7に示す第3の形態に係るフレキシブルコンテナ10Cのように、挿入口41の内側に、手(腕)47を包む袋46が取り付けられていることが好ましい。手は、素手でも手袋を着けていてもよい。これにより、図7に示すように、挿入口41から手(腕)47を差し入れて胴部12内の粉粒体2の山を崩す際に、手を直接粉粒体2に触れることがなく、衛生的に作業することができる。また、手(腕)の代わりに棒等を差し入れる場合でも、同様に衛生的な作業を行うことができる。
【0024】
第3の形態に係るフレキシブルコンテナ10Cにおいては、袋46は、手袋のように指が分かれていても良い。袋46が設けられている場合、蓋材42がなくても粉粒体2に異物が混入するおそれはないが、袋46の中に雨水や異物等が侵入するおそれがあるため、挿入口41に蓋材42を設けることが好ましい。蓋材42の上面布11への取付け部位43および面ファスナー44,45等は、第1の形態に係るフレキシブルコンテナ10Aと同様に構成することができる。図6では、挿入口41、蓋材42および袋46からなる組40が1組のみ図示されているが、複数組設けても良い。
【0025】
本発明においては、一辺を上面布11に取り付けた蓋材22,32,42の代わりに、図8、図9に示すように、挿入口51の周囲を取り囲む筒状の覆い52を上面布11に取り付けても良い。図8、図9に示すフレキシブルコンテナ10Dにおいて、筒状の覆い52は上下両端が開口しており、その下端部53は、上面布11に取り付けられている。また、筒状の覆い52の上端側の口54を通して、手や棒5等を胴部12内に差し入れることができる。これにより、筒部14からノズル1を外すことなく、胴部12内の粉粒体2の山を崩して、粉粒体2の表面3をならすことができる。
【0026】
筒状の覆い52の外周面には、筒状の覆い52を結束する結束具55が設けられている。結束具55は、図8中の矢印のように筒状の覆い52の周囲に巻き付け、面ファスナー等で着脱可能に接着することにより、筒状の覆い52を結束した状態を維持することができる。フレキシブルコンテナ10Dを使用しない場合には、筒状の覆い52を通して雨水や異物等が胴部12内に侵入しないように、結束具55を用いて筒状の覆い52を結束することにより、筒状の覆い52を閉鎖することができる。また、筒状の覆い52に棒5を通した場合に、棒5の上から結束具55を用いて筒状の覆い52を結束することにより、粉粒体2が筒状の覆い52から漏れるのを防ぐことができる。
結束具55は、その一部が筒状の覆い52に固定されていると、結束具55を紛失するおそれがないので好ましい。
【0027】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば蓋材は、上面布に固定することなく、面ファスナーのみで着脱可能に取り付けても良い。また、挿入口をジッパー等で閉じるようにすることもできる。
本発明のフレキシブルコンテナは、胴部12に充填した粉粒体2を排出するため、胴部12の底部13に排出口17を有する筒部16を設けることが好ましい。この排出口17は、粉粒体2を充填するときには、図2に示すように閉鎖することができる。
【0028】
本発明のフレキシブルコンテナは、例えば容量100リットルないし3000リットルといった大型の充填、輸送、保管容器として、好適に利用することができる。内容品となる粉粒体としては、食品、穀物、肥料、化学薬品、或いは合成樹脂等の粉状物または粒状物が挙げられる。フレキシブルコンテナを構成する布は、織布や、柔軟な樹脂やゴム等を被覆した織布のほか、プラスチックフィルムやシート等を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来のフレキシブルコンテナの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示すフレキシブルコンテナに粉粒体を充填したときの状態を説明する断面図である。
【図3】本発明の第1の形態に係るフレキシブルコンテナの上部を示す斜視図である。
【図4】図3に示すフレキシブルコンテナに粉粒体を充填したときの状態を説明する断面図である。
【図5】本発明の第2の形態に係るフレキシブルコンテナの上部を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3の形態に係るフレキシブルコンテナの上部を示す斜視図である。
【図7】図6に示すフレキシブルコンテナに粉粒体を充填したときの状態を説明する断面図である。
【図8】本発明の第4の形態に係るフレキシブルコンテナの上部を示す斜視図である。
【図9】図8に示すフレキシブルコンテナに粉粒体を充填したときの状態を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…ノズル、2…粉粒体、5…棒、10,10A,10B,10C,10D…フレキシブルコンテナ、11…上面布、12…胴部、14…筒部(上側の筒部)、15…充填口、21…挿入口(穴)、22…蓋材、31…挿入口(スリット)、32…蓋材、41…挿入口、42…蓋材、46…袋、47…手(腕)、51…挿入口、52…筒状の覆い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体が充填される胴部の上面を形成する上面布の中央部に、粉粒体を充填するためのノズルが挿入される充填口を有する筒部が設けられたフレキシブルコンテナであって、前記上面布における前記筒部の周囲には、前記筒部を通じて粉粒体を前記胴部に充填する際に手や棒等を前記胴部内に差し入れて胴部内の粉粒体の山を崩すための挿入口が形成されていることを特徴とするフレキシブルコンテナ。
【請求項2】
前記挿入口を覆う蓋材が、前記上面布に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルコンテナ。
【請求項3】
前記挿入口の周囲を取り囲む筒状の覆いが、前記上面布に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルコンテナ。
【請求項4】
前記挿入口の内側には、挿入口に差し入れた手を包む袋が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブルコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−47286(P2010−47286A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212914(P2008−212914)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】