フレキシブル光導波路の製法
【課題】光導波路を強固に固定して切断することができ、しかも、光導波路の剥離を安全に行うことができるフレキシブル光導波路の製法を提供する。
【解決手段】光導波路1が形成された基板を水に浸けることにより、光導波路1と基板との密着力を弱め、光導波路1を基板から剥離し、その後、その光導波路1を発泡剤含有感圧性接着剤層4の表面に仮着し、その仮着状態で光導波路1を所定の長さに切断する。そして、その切断後に加熱して発泡剤含有感圧性接着剤層4を発泡させることにより、発泡剤含有感圧性接着剤層4と光導波路1との密着力を弱め、所定長に切断した光導波路1を発泡剤含有感圧性接着剤層4から剥離する。
【解決手段】光導波路1が形成された基板を水に浸けることにより、光導波路1と基板との密着力を弱め、光導波路1を基板から剥離し、その後、その光導波路1を発泡剤含有感圧性接着剤層4の表面に仮着し、その仮着状態で光導波路1を所定の長さに切断する。そして、その切断後に加熱して発泡剤含有感圧性接着剤層4を発泡させることにより、発泡剤含有感圧性接着剤層4と光導波路1との密着力を弱め、所定長に切断した光導波路1を発泡剤含有感圧性接着剤層4から剥離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信,光情報処理,その他一般光学で広く用いられるフレキシブル光導波路の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路は、光導波路デバイス,光集積回路,光配線基板に組み込まれており、光通信,光情報処理,その他一般光学の分野で広く用いられている。そして、例えば、シリコンや石英等の基板上にこのような光導波路を作製した場合には、光が伝搬するコア層と、このコア層よりも屈折率の小さいクラッド層により構成される。より詳細に述べると、例えば、図11に示すように、基板2上にアンダークラッド層11が形成され、このアンダークラッド層11上にコア層12が形成され、さらにそれを包含するようにオーバークラッド層13が形成された三層構造の光導波路1があげられる。
【0003】
また、光導波路1をフレキシブルなものにして使用することがあり、その場合は、上記光導波路1を形成し、基板2上で所定の長さに切断した後、基板2から光導波路1を剥離して使用している。
【0004】
しかしながら、一般に、上記両クラッド層11,13の形成材料やコア層12の形成材料として、耐熱性とともに光透過性に優れたフッ素化ポリイミドが用いられており、このような場合、アンダークラッド層11(フッ素化ポリイミド)は、基板2(シリコンウエハー等)との密着力がかなり弱くなる。このため、切断中に基板2とアンダークラッド層11とが剥離して光導波路1が動き、切断面が歪な形状となる。光導波路1の端面が歪な形状であると、光伝達に支障をきたす。
【0005】
そこで、光導波路の切断に際して、光導波路のアンダークラッド層と基板との密着力を高める方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、基板として、銅が表面に蒸着されたガラス基板を用い、その表面に接着剤を介して光導波路を形成する方法である。そして、その光導波路を所定の長さに切断した後、希塩酸に浸け、ガラス基板表面の蒸着銅を溶解し、光導波路をガラス基板から剥離している。
【特許文献1】特開平8−313747号公報(実施例1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、剥離する際に、強酸である塩酸を用いるため、剥離作業に危険を伴い、作業性が悪い。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光導波路を強固に固定して切断することができ、しかも、光導波路の剥離を安全に行うことができるフレキシブル光導波路の製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のフレキシブル光導波路の製法は、光導波路が形成された基板を水に浸けることにより、光導波路と基板との密着力を弱め、光導波路を基板から剥離する工程と、その光導波路を発泡剤含有感圧性接着剤層の表面に仮着する工程と、その仮着状態で光導波路を所定の長さに切断する工程と、その切断後に加熱して発泡剤含有感圧性接着剤層を発泡させることにより、発泡剤含有感圧性接着剤層と光導波路との密着力を弱め、所定長に切断された光導波路を発泡剤含有感圧性接着剤層から剥離する工程とを備えるという構成をとる。
【0009】
この発明において、光導波路とは、先に述べたように、通常、光が伝搬するコア層を、このコア層よりも屈折率の小さいクラッド層で包含するように構成した薄膜状積層体のことをいう。
【0010】
すなわち、本発明のフレキシブル光導波路の製法は、まず、基板と光導波路とが水で剥離するように、その基板の上に光導波路を形成する。この形成は、従来より行われている通常の材料(基板の材料としてシリコンウエハー等、アンダークラッド層の材料としてフッ素化ポリイミド等)を用いる方法により可能であり、この方法で形成すると、上述したように、光導波路のアンダークラッド層と基板との密着力がかなり弱いものになる。そして、それを水に浸けると、アンダークラッド層と基板とが簡単に剥離する。ついで、その剥離した光導波路を発泡剤含有感圧性接着剤層の表面に貼着(仮着)することにより、それら光導波路と発泡剤含有感圧性接着剤層との密着力を強める。つぎに、その貼着状態で光導波路を所定の長さに切断する。このとき、両者の強い密着力により、切断が安定し、切断面が綺麗に仕上がる。その後、加熱して発泡剤含有感圧性接着剤層を発泡させる。これにより、発泡剤含有感圧性接着剤層と光導波路との接触面積が小さくなって密着力が弱まり、所定長に切断された光導波路を発泡剤含有感圧性接着剤層から簡単に剥離できるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフレキシブル光導波路の製法によれば、光導波路を、水により基板から剥離した後、発泡剤含有感圧性接着剤層の表面に仮着し、さらに、切断後、加熱により発泡剤含有感圧性接着剤層から剥離している。すなわち、光導波路の剥離は、水および加熱により行われるため、その剥離を安全に行うことができる。また、上記切断は、発泡剤含有感圧性接着剤層と強く密着させた状態で行われるため、光導波路を強固に固定して切断することができる。その結果、切断面が綺麗に仕上がり、光伝達が良好なフレキシブル光導波路を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0013】
図1〜図6は、本発明のフレキシブル光導波路の製法の一実施の形態を示している。このフレキシブル光導波路の製法は、まず、従来より通常に行われている製法により、図1に示すように、基板2上に光導波路1を形成する。ついで、それを水に浸すことにより、図2に示すように、基板2から光導波路1を剥離する。そして、図3に示すように、支持体3上に形成された発泡剤含有感圧性接着剤層4の表面に、上記剥離した光導波路1を貼着(仮着)する。その後、図4に示すように、その貼着状態(仮着状態)で所定の長さになるよう両端部を切断する(図において、Cは切断部である)。つぎに、図5に示すように、加熱して発泡剤含有感圧性接着剤層4を発泡させる。この発泡により、発泡剤含有感圧性接着剤層4と光導波路1との密着力が弱まる。そして、図6に示すように、所定長に切断された光導波路1を発泡剤含有感圧性接着剤層4から剥離し、フレキシブル光導波路1として得ることができる。
【0014】
このようなフレキシブル光導波路の製法では、切断の際に、光導波路1が発泡剤含有感圧性接着剤層4への貼着により強固に固定されているため、切断面を綺麗に仕上げることができる。その結果、光伝達が良好なフレキシブル光導波路1を作製することができる。さらに、基板2からの光導波路1の剥離は、水に浸すことにより行い、発泡剤含有感圧性接着剤層4からの光導波路1の剥離は、加熱により行うため、光導波路1の剥離は、危険な薬品等を用いることなく、安全に行うことができ、しかも、作業性がよい。
【0015】
より詳しく説明すると、上記のように、水に浸すことにより基板2と光導波路1とを剥離させることは、従来より用いられている通常の形成材料を用いて、基板2上に光導波路1を形成することにより行うことができる。すなわち、基板2の形成材料として、シリコンウエハー,二酸化ケイ素付シリコンウエハー,青板ガラス,合成石英およびポリイミド樹脂等のいずれかを用い、光導波路1のアンダークラッド層11の形成材料として、耐熱性とともに光透過性に優れたフッ素化ポリイミド等を用いる。このような形成材料を用いると、光導波路1のアンダークラッド層11と基板2との密着力がかなり弱くなり、両者を水で簡単に剥離することができる。
【0016】
上記発泡剤含有感圧性接着剤層4は、感圧性接着剤に発泡剤を含有させた材料からなり、例えば、支持台,支持板,支持シート等の支持体3の表面に形成される。
【0017】
上記感圧性接着剤としては、特に限定されるものではなく、ゴム系またはアクリル系等の公知のものを用いることができる。例えば、天然ゴム,各種の合成ゴム等からなるゴム系ポリマ、またはアクリル酸,メタクリル酸等のアルキルエステル系ポリマ、もしくはアクリル酸,メタクリル酸等のアルキルエステル約50〜99.5重量%とこれと共重合可能な他の不飽和単量体約50〜0.5重量%との共重合体等からなるアクリル系ポリマ等、その重量平均分子量が5000〜300万のものをベースポリマとし、これに必要に応じてポリイソシアネート化合物,アルキルエーテル化メラミン化合物等の架橋剤を配合したもの等をあげることができる。なお、架橋剤を併用する場合、その配合量は、通常、ベースポリマ100重量部あたり約0.1〜10重量部にする。
【0018】
上記発泡剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム,亜硝酸アンモニウム,水素化ホウ素ナトリウム,アジド類等で代表される無機系のもの、アゾビスイソブチロニトリル,アゾジカルボンアミド,バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物、トルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホヒドラジン、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)、アリルビス(スルホヒドラジド)等のヒドラジン系化合物、ρ−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソテレフタルアミド等のN−ニトロソ系化合物などで代表される有機系のもの等をあげることができる。なお、発泡剤はマイクロカプセルに封入されたものが感圧性接着剤中への分散性などの点で好ましく用いられる。マイクロカプセル化された発泡剤としては、マイクロスフェアー(松本油脂社製、F−30,F−50,F−70)等の市販品をあげることができる。発泡剤の配合量は、上記したベースポリマ100重量部あたり5〜300重量部が一般であるが、使用発泡剤の種類、あるいは加熱条件等により発泡特性が比較的大きく異なるため適宜に決定され、これに限定されない。一般に、発泡剤含有感圧性接着剤層4の嵩が発泡で2倍以上になる量を配合することが好適である。また、100〜150℃の30秒間〜1分間程度の加熱で発泡処理が完了するように系を決定することが好ましい。
【0019】
上記発泡剤含有感圧性接着剤層4が形成される支持シート等の支持体3も、特に限定されるものではない。支持体3のなかでも支持シートを用いる場合は、強度等の観点から、ポリエステルフィルム,ポリプロピレンフィルム等の比較的硬くて自己支持性を有するフィルムが好ましく、その厚みは、10〜500μmが好適である。
【0020】
つぎに、本発明のフレキシブル光導波路の製法について、より詳しく説明する。
【0021】
まず、従来より行われている製法により、基板2上に光導波路1を形成する。すなわち、図7に示すように、基板2上に、ポリイミド樹脂前駆体溶液(ポリアミド酸溶液)を、乾燥後の膜厚が好ましくは1〜30μm、特に好ましくは5〜15μmとなるよう塗布し、乾燥させることによりポリイミド樹脂前駆体組成物からなる樹脂層を形成する。上記塗布方法としては、上記と同様、スピンコート法やキャスティング法等の一般的な成膜方法を用いることができる。ついで、不活性雰囲気下、加熱することにより上記樹脂層中の残存溶媒の除去およびポリイミド樹脂前駆体のイミド化を完結させることにより、基板2上にポリイミド樹脂製のアンダークラッド層11を形成する。
【0022】
つぎに、図8に示すように、上記アンダークラッド層11上に、このアンダークラッド層11よりも屈折率の高い材料からなる感光性ポリイミド樹脂前駆体溶液(感光性ポリアミド酸ワニス)を、乾燥後の膜厚が好ましくは2〜30μm、特に好ましくは6〜10μmとなるよう塗布し、初期乾燥にてコア層12となる感光性ポリイミド樹脂前駆体層を形成する。ついで、所望のパターンが得られるように、図9に示すように、感光性ポリイミド樹脂前駆体層上にフォトマスクMを載置してその上方から紫外線Lを照射する。本発明においては、上記紫外線Lの照射における露光量は5〜50mJ/cm2 で充分な解像が可能である。その後、光反応を完結させるために、Post Exposure Bake(PEB)と呼ばれる露光後の熱処理を行い、現像液を用いて現像を行う(ウェットプロセス法)。そして、現像によって得られた所望のパターンをイミド化するために、通常熱処理を行う。この際の加熱温度は、一般的に300〜400℃であり、真空下または窒素雰囲気下で脱溶剤と硬化反応(キュア)を行うものである。このようにしてイミド化することにより、図10に示すように、ポリイミド樹脂製のパターンとなるコア層12を形成する。
【0023】
上記現像における現像液としては、特に限定するものではないが、例えば、アルカリ性のアルコール水溶液が用いられる。より具体的には、解像性が良好で、現像速度が制御しやすいという観点から、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよびエタノールの混合水溶液が好ましく用いられる。上記混合水溶液におけるテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの占める割合は2〜10重量%の範囲に、またエタノールの占める割合は40〜50重量%の範囲にそれぞれ設定することが好ましい。
【0024】
ついで、図11に示すように、上記コア層12上に、上記コア層12よりも屈折率の低い形成材料からなるポリイミド樹脂前駆体溶液を乾燥後の最大の膜厚が好ましくは1〜30μm、特に好ましくは5〜15μmとなるよう塗布し、乾燥させることによりポリイミド樹脂前駆体組成物からなる樹脂層を形成する。ついで、上記アンダークラッド層11と同様、不活性雰囲気下、加熱することにより上記樹脂層中の残存溶媒の除去およびポリイミド樹脂前駆体のイミド化を完結させることにより、コア層12を包含するようにポリイミド樹脂製のオーバークラッド層13を形成し、図示するように、基板2上に光導波路1を形成する。ここまでが、従来より通常に行われている光導波路の製法である。なお、図11は、図1のX−X断面図である。
【0025】
そして、これ以降が本発明の特徴である。すなわち、上記のようにして得られた光導波路1形成基板2(図1参照)を水に浸すことにより、光導波路1と基板2との密着力を弱め、水中でまたは水から出した直後に、図2に示すように、光導波路1を基板2から剥離する。剥離後は、乾燥等により、光導波路1の表面の水分を除去する。
【0026】
一方、図3に示すように、前記支持体3の表面に、発泡剤含有感圧性接着剤を塗布し、発泡剤含有感圧性接着剤層4を形成する。その厚みは、密着力の向上および切断時の安定性の観点から、好ましくは10〜300μm、特に好ましくは25〜200μmにする。
【0027】
そして、上記発泡剤含有感圧性接着剤層4の表面に、上記光導波路1を押し付けて貼着(仮着)し固定する。その後、図4に示すように、この仮着状態で光導波路1を所定の長さに切断する(図において、Cは切断部である)。この切断に使用される切断手段としては、特に限定されるものではなく、ダイシングソー等があげられる。
【0028】
つぎに、上記切断された状態のものを加熱する。この加熱により、図5に示すように、発泡剤含有感圧性接着剤層4が発泡し、その結果、光導波路1との接触面積が小さくなる。このため、発泡剤含有感圧性接着剤層4と光導波路1との密着力が弱まり、図6に示すように、光導波路1が発泡剤含有感圧性接着剤層4から簡単に剥離できるようになる。そして、その剥離した光導波路1をフレキシブル光導波路1として得ることができる。なお、上記加熱に使用される手段としては、特に限定されるものではなく、ドライオーブン,ホットプレート等があげられる。また、この加熱は、上述したように、100〜150℃の30秒間〜1分間程度の加熱とすることが好ましい。
【0029】
このようにして得られたフレキシブル光導波路1としては、例えば、直線光導波路,曲がり光導波路,交差光導波路,Y分岐光導波路,スラブ光導波路,マッハツエンダー型光導波路,AWG(Alley Wave Guide)型光導波路,グレーティング,光導波路レンズ等があげられる。そして、これら光導波路を用いた光素子としては、波長フィルタ,光スイッチ,光分岐器,光合波器,光合分波器,光アンプ,波長変換器,波長分割器,光スプリッタ,方向性結合器,さらにはレーザダイオードやフォトダイオードをハイブリッド集積した光伝送モジュール等があげられる。
【0030】
つぎに、実施例について説明する。
【実施例】
【0031】
〔ポリアミド酸溶液〕
攪拌機を備えた500mlのセパラブルフラスコ内で、酸二無水物として、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)26.66g(0.06モル)と、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(BTFB)18.54g(0.058モル)とを、有機溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)182.85g(2.10モル)に溶解させた後、室温(25℃)で10時間攪拌することによりポリアミド酸溶液(ポリイミド樹脂前駆体溶液)を作製した。
【0032】
つぎに、厚み525μmのシリコンウエハー基板上に上記ポリアミド酸溶液をスピンコート法にて熱処理後厚み15μmとなるように塗布し、90℃で乾燥を行うことにより、ポリイミド樹脂前駆体組成物からなる樹脂膜を形成した。その後、真空下、385℃で加熱することにより上記樹脂膜中の残存溶剤の除去およびポリイミド樹脂前駆体のイミド化を完結させ、シリコンウエハー基板上に厚み15μmのアンダークラッド層(屈折率1.51)を形成した。
【0033】
ついで、上記アンダークラッド層上にコア層を形成するため、つぎのようにしてコア層形成材料である感光性ポリイミド樹脂前駆体溶液を調製した。すなわち、上記ポリアミド酸溶液に、感光剤として1−エチル−3,5−ジメトキシカルボニル−4−(2−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジンを上記ポリアミド酸溶液の固形分に対して2重量%となるよう、さらに、溶解調製剤として、重量平均分子量500のポリエチレングリコールジメチルエーテルを上記ポリアミド酸溶液の固形分に対して30重量%となるよう配合することにより、感光性ポリイミド樹脂前駆体組成物を溶液(感光性ポリイミド樹脂前駆体溶液)として得た。
【0034】
そして、上記アンダークラッド層上に、アンダークラッド層の形成と同様の方法にて、上記感光性ポリイミド樹脂前駆体溶液を塗布し、90℃で乾燥することにより感光性ポリイミド樹脂前駆体組成物からなる感光性ポリイミド樹脂前駆体層を形成した。ついで、この感光性ポリイミド樹脂前駆体層上に、所定のフォトマスク(ライン幅6μm×長さ50mm×間隔0.2mm)を載置し、その上方から30mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った。さらに、170℃で10分間露光後加熱を行った。
【0035】
つぎに、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2〜10%とエタノール40〜50%を含有する水溶液を現像液とし、35℃で現像して未露光部分を溶解した後、水で洗浄することによりネガ型画像を有するパターンを形成した。その後、真空下、330℃で加熱することにより感光性ポリイミド樹脂前駆体のイミド化を完結させ、所定のパターンからなるコア層(屈折率1.52)を形成した。形成されたコア層の断面のサイズは、6μm×6μmであった。
【0036】
ついで、上記コア層上にオーバークラッド層を形成するための形成材料として、上記ポリアミド酸溶液(ポリイミド樹脂前駆体溶液)を用い上記アンダークラッド層の形成方法と同様の方法にて、すなわち、スピンコート法にて熱処理後厚み15μmとなるように上記ポリアミド酸溶液を塗布し、90℃で乾燥を行うことにより、ポリイミド樹脂前駆体組成物からなる樹脂膜を形成した。その後、真空下、330℃で加熱することにより上記樹脂膜中の残存溶剤の除去およびポリイミド樹脂前駆体のイミド化を完結させ、コア層を包含するように最大厚み20μmのオーバークラッド層(屈折率1.51)を形成した。このようにして、シリコンウエハー基板上にポリイミド樹脂製の光導波路を作製した。
【0037】
そして、その光導波路が形成されたシリコンウエハー基板を25℃の水に5分間浸し、水中で光導波路を基板から剥離した。その後、光導波路を水から取り出し、25℃雰囲気下で自然乾燥させた。
【0038】
〔発泡剤含有感圧性接着剤〕
アクリル酸ブチル100重量部、アクリル酸2重量部からなる共重合体(重量平均分子量約80万)100重量部、ポリイソシアネート系架橋剤2重量部およびマイクロスフェアー(松本油脂社製、F−30)30重量部をトルエンに溶解して混合調製することにより、発泡剤含有感圧性接着剤を作製した。
【0039】
ついで、厚み100μmのポリエステルフィルムの片面に、上記発泡剤含有感圧性接着剤を塗布し、25℃雰囲気下で自然乾燥させることにより、厚み30μmの発泡剤含有感圧性接着剤層を形成した。
【0040】
そして、上記発泡剤含有感圧性接着剤層の表面に、上記光導波路を押し付けて仮着した。ついで、この仮着状態で光導波路の両端部を、ダイシングソーを用いて、長さ40mmになるよう切断した。このとき、ダイシングソーの刃が発泡剤含有感圧性接着剤層に届くまで切断した。
【0041】
つぎに、上記切断された状態のものを、ホットプレートを用いて、120℃×30秒間加熱した。その結果、上記発泡剤含有感圧性接着剤層が発泡した。その後、上記加熱手段から取り出し、上記両端を切断した光導波路をピンセットで挟み、上記発泡剤含有感圧性接着剤層から剥離した。その剥離は、簡単にできた。
【0042】
このようにして得られたフレキシブル光導波路に対して、カットバック法を用いて波長1.55μmの時の伝播損失を測定した。その結果、光導波路の伝播損失は0.5dB/cmであり、非常に低い値であった。すなわち、この実施例では、光伝達が良好なフレキシブル光導波路を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のフレキシブル光導波路の製法の一実施の形態を示す説明図である。
【図2】上記フレキシブル光導波路の製法を示す説明図である。
【図3】上記フレキシブル光導波路の製法を示す説明図である。
【図4】上記フレキシブル光導波路の製法を示す説明図である。
【図5】上記フレキシブル光導波路の製法を示す説明図である。
【図6】上記フレキシブル光導波路の製法を示す説明図である。
【図7】従来の通常の光導波路の製法を示す説明図である。
【図8】従来の通常の光導波路の製法を示す説明図である。
【図9】従来の通常の光導波路の製法を示す説明図である。
【図10】従来の通常の光導波路の製法を示す説明図である。
【図11】図1のX−X断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 光導波路
4 発泡剤含有感圧性接着剤層
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信,光情報処理,その他一般光学で広く用いられるフレキシブル光導波路の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路は、光導波路デバイス,光集積回路,光配線基板に組み込まれており、光通信,光情報処理,その他一般光学の分野で広く用いられている。そして、例えば、シリコンや石英等の基板上にこのような光導波路を作製した場合には、光が伝搬するコア層と、このコア層よりも屈折率の小さいクラッド層により構成される。より詳細に述べると、例えば、図11に示すように、基板2上にアンダークラッド層11が形成され、このアンダークラッド層11上にコア層12が形成され、さらにそれを包含するようにオーバークラッド層13が形成された三層構造の光導波路1があげられる。
【0003】
また、光導波路1をフレキシブルなものにして使用することがあり、その場合は、上記光導波路1を形成し、基板2上で所定の長さに切断した後、基板2から光導波路1を剥離して使用している。
【0004】
しかしながら、一般に、上記両クラッド層11,13の形成材料やコア層12の形成材料として、耐熱性とともに光透過性に優れたフッ素化ポリイミドが用いられており、このような場合、アンダークラッド層11(フッ素化ポリイミド)は、基板2(シリコンウエハー等)との密着力がかなり弱くなる。このため、切断中に基板2とアンダークラッド層11とが剥離して光導波路1が動き、切断面が歪な形状となる。光導波路1の端面が歪な形状であると、光伝達に支障をきたす。
【0005】
そこで、光導波路の切断に際して、光導波路のアンダークラッド層と基板との密着力を高める方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、基板として、銅が表面に蒸着されたガラス基板を用い、その表面に接着剤を介して光導波路を形成する方法である。そして、その光導波路を所定の長さに切断した後、希塩酸に浸け、ガラス基板表面の蒸着銅を溶解し、光導波路をガラス基板から剥離している。
【特許文献1】特開平8−313747号公報(実施例1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、剥離する際に、強酸である塩酸を用いるため、剥離作業に危険を伴い、作業性が悪い。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光導波路を強固に固定して切断することができ、しかも、光導波路の剥離を安全に行うことができるフレキシブル光導波路の製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のフレキシブル光導波路の製法は、光導波路が形成された基板を水に浸けることにより、光導波路と基板との密着力を弱め、光導波路を基板から剥離する工程と、その光導波路を発泡剤含有感圧性接着剤層の表面に仮着する工程と、その仮着状態で光導波路を所定の長さに切断する工程と、その切断後に加熱して発泡剤含有感圧性接着剤層を発泡させることにより、発泡剤含有感圧性接着剤層と光導波路との密着力を弱め、所定長に切断された光導波路を発泡剤含有感圧性接着剤層から剥離する工程とを備えるという構成をとる。
【0009】
この発明において、光導波路とは、先に述べたように、通常、光が伝搬するコア層を、このコア層よりも屈折率の小さいクラッド層で包含するように構成した薄膜状積層体のことをいう。
【0010】
すなわち、本発明のフレキシブル光導波路の製法は、まず、基板と光導波路とが水で剥離するように、その基板の上に光導波路を形成する。この形成は、従来より行われている通常の材料(基板の材料としてシリコンウエハー等、アンダークラッド層の材料としてフッ素化ポリイミド等)を用いる方法により可能であり、この方法で形成すると、上述したように、光導波路のアンダークラッド層と基板との密着力がかなり弱いものになる。そして、それを水に浸けると、アンダークラッド層と基板とが簡単に剥離する。ついで、その剥離した光導波路を発泡剤含有感圧性接着剤層の表面に貼着(仮着)することにより、それら光導波路と発泡剤含有感圧性接着剤層との密着力を強める。つぎに、その貼着状態で光導波路を所定の長さに切断する。このとき、両者の強い密着力により、切断が安定し、切断面が綺麗に仕上がる。その後、加熱して発泡剤含有感圧性接着剤層を発泡させる。これにより、発泡剤含有感圧性接着剤層と光導波路との接触面積が小さくなって密着力が弱まり、所定長に切断された光導波路を発泡剤含有感圧性接着剤層から簡単に剥離できるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフレキシブル光導波路の製法によれば、光導波路を、水により基板から剥離した後、発泡剤含有感圧性接着剤層の表面に仮着し、さらに、切断後、加熱により発泡剤含有感圧性接着剤層から剥離している。すなわち、光導波路の剥離は、水および加熱により行われるため、その剥離を安全に行うことができる。また、上記切断は、発泡剤含有感圧性接着剤層と強く密着させた状態で行われるため、光導波路を強固に固定して切断することができる。その結果、切断面が綺麗に仕上がり、光伝達が良好なフレキシブル光導波路を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0013】
図1〜図6は、本発明のフレキシブル光導波路の製法の一実施の形態を示している。このフレキシブル光導波路の製法は、まず、従来より通常に行われている製法により、図1に示すように、基板2上に光導波路1を形成する。ついで、それを水に浸すことにより、図2に示すように、基板2から光導波路1を剥離する。そして、図3に示すように、支持体3上に形成された発泡剤含有感圧性接着剤層4の表面に、上記剥離した光導波路1を貼着(仮着)する。その後、図4に示すように、その貼着状態(仮着状態)で所定の長さになるよう両端部を切断する(図において、Cは切断部である)。つぎに、図5に示すように、加熱して発泡剤含有感圧性接着剤層4を発泡させる。この発泡により、発泡剤含有感圧性接着剤層4と光導波路1との密着力が弱まる。そして、図6に示すように、所定長に切断された光導波路1を発泡剤含有感圧性接着剤層4から剥離し、フレキシブル光導波路1として得ることができる。
【0014】
このようなフレキシブル光導波路の製法では、切断の際に、光導波路1が発泡剤含有感圧性接着剤層4への貼着により強固に固定されているため、切断面を綺麗に仕上げることができる。その結果、光伝達が良好なフレキシブル光導波路1を作製することができる。さらに、基板2からの光導波路1の剥離は、水に浸すことにより行い、発泡剤含有感圧性接着剤層4からの光導波路1の剥離は、加熱により行うため、光導波路1の剥離は、危険な薬品等を用いることなく、安全に行うことができ、しかも、作業性がよい。
【0015】
より詳しく説明すると、上記のように、水に浸すことにより基板2と光導波路1とを剥離させることは、従来より用いられている通常の形成材料を用いて、基板2上に光導波路1を形成することにより行うことができる。すなわち、基板2の形成材料として、シリコンウエハー,二酸化ケイ素付シリコンウエハー,青板ガラス,合成石英およびポリイミド樹脂等のいずれかを用い、光導波路1のアンダークラッド層11の形成材料として、耐熱性とともに光透過性に優れたフッ素化ポリイミド等を用いる。このような形成材料を用いると、光導波路1のアンダークラッド層11と基板2との密着力がかなり弱くなり、両者を水で簡単に剥離することができる。
【0016】
上記発泡剤含有感圧性接着剤層4は、感圧性接着剤に発泡剤を含有させた材料からなり、例えば、支持台,支持板,支持シート等の支持体3の表面に形成される。
【0017】
上記感圧性接着剤としては、特に限定されるものではなく、ゴム系またはアクリル系等の公知のものを用いることができる。例えば、天然ゴム,各種の合成ゴム等からなるゴム系ポリマ、またはアクリル酸,メタクリル酸等のアルキルエステル系ポリマ、もしくはアクリル酸,メタクリル酸等のアルキルエステル約50〜99.5重量%とこれと共重合可能な他の不飽和単量体約50〜0.5重量%との共重合体等からなるアクリル系ポリマ等、その重量平均分子量が5000〜300万のものをベースポリマとし、これに必要に応じてポリイソシアネート化合物,アルキルエーテル化メラミン化合物等の架橋剤を配合したもの等をあげることができる。なお、架橋剤を併用する場合、その配合量は、通常、ベースポリマ100重量部あたり約0.1〜10重量部にする。
【0018】
上記発泡剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム,亜硝酸アンモニウム,水素化ホウ素ナトリウム,アジド類等で代表される無機系のもの、アゾビスイソブチロニトリル,アゾジカルボンアミド,バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物、トルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホヒドラジン、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)、アリルビス(スルホヒドラジド)等のヒドラジン系化合物、ρ−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソテレフタルアミド等のN−ニトロソ系化合物などで代表される有機系のもの等をあげることができる。なお、発泡剤はマイクロカプセルに封入されたものが感圧性接着剤中への分散性などの点で好ましく用いられる。マイクロカプセル化された発泡剤としては、マイクロスフェアー(松本油脂社製、F−30,F−50,F−70)等の市販品をあげることができる。発泡剤の配合量は、上記したベースポリマ100重量部あたり5〜300重量部が一般であるが、使用発泡剤の種類、あるいは加熱条件等により発泡特性が比較的大きく異なるため適宜に決定され、これに限定されない。一般に、発泡剤含有感圧性接着剤層4の嵩が発泡で2倍以上になる量を配合することが好適である。また、100〜150℃の30秒間〜1分間程度の加熱で発泡処理が完了するように系を決定することが好ましい。
【0019】
上記発泡剤含有感圧性接着剤層4が形成される支持シート等の支持体3も、特に限定されるものではない。支持体3のなかでも支持シートを用いる場合は、強度等の観点から、ポリエステルフィルム,ポリプロピレンフィルム等の比較的硬くて自己支持性を有するフィルムが好ましく、その厚みは、10〜500μmが好適である。
【0020】
つぎに、本発明のフレキシブル光導波路の製法について、より詳しく説明する。
【0021】
まず、従来より行われている製法により、基板2上に光導波路1を形成する。すなわち、図7に示すように、基板2上に、ポリイミド樹脂前駆体溶液(ポリアミド酸溶液)を、乾燥後の膜厚が好ましくは1〜30μm、特に好ましくは5〜15μmとなるよう塗布し、乾燥させることによりポリイミド樹脂前駆体組成物からなる樹脂層を形成する。上記塗布方法としては、上記と同様、スピンコート法やキャスティング法等の一般的な成膜方法を用いることができる。ついで、不活性雰囲気下、加熱することにより上記樹脂層中の残存溶媒の除去およびポリイミド樹脂前駆体のイミド化を完結させることにより、基板2上にポリイミド樹脂製のアンダークラッド層11を形成する。
【0022】
つぎに、図8に示すように、上記アンダークラッド層11上に、このアンダークラッド層11よりも屈折率の高い材料からなる感光性ポリイミド樹脂前駆体溶液(感光性ポリアミド酸ワニス)を、乾燥後の膜厚が好ましくは2〜30μm、特に好ましくは6〜10μmとなるよう塗布し、初期乾燥にてコア層12となる感光性ポリイミド樹脂前駆体層を形成する。ついで、所望のパターンが得られるように、図9に示すように、感光性ポリイミド樹脂前駆体層上にフォトマスクMを載置してその上方から紫外線Lを照射する。本発明においては、上記紫外線Lの照射における露光量は5〜50mJ/cm2 で充分な解像が可能である。その後、光反応を完結させるために、Post Exposure Bake(PEB)と呼ばれる露光後の熱処理を行い、現像液を用いて現像を行う(ウェットプロセス法)。そして、現像によって得られた所望のパターンをイミド化するために、通常熱処理を行う。この際の加熱温度は、一般的に300〜400℃であり、真空下または窒素雰囲気下で脱溶剤と硬化反応(キュア)を行うものである。このようにしてイミド化することにより、図10に示すように、ポリイミド樹脂製のパターンとなるコア層12を形成する。
【0023】
上記現像における現像液としては、特に限定するものではないが、例えば、アルカリ性のアルコール水溶液が用いられる。より具体的には、解像性が良好で、現像速度が制御しやすいという観点から、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよびエタノールの混合水溶液が好ましく用いられる。上記混合水溶液におけるテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの占める割合は2〜10重量%の範囲に、またエタノールの占める割合は40〜50重量%の範囲にそれぞれ設定することが好ましい。
【0024】
ついで、図11に示すように、上記コア層12上に、上記コア層12よりも屈折率の低い形成材料からなるポリイミド樹脂前駆体溶液を乾燥後の最大の膜厚が好ましくは1〜30μm、特に好ましくは5〜15μmとなるよう塗布し、乾燥させることによりポリイミド樹脂前駆体組成物からなる樹脂層を形成する。ついで、上記アンダークラッド層11と同様、不活性雰囲気下、加熱することにより上記樹脂層中の残存溶媒の除去およびポリイミド樹脂前駆体のイミド化を完結させることにより、コア層12を包含するようにポリイミド樹脂製のオーバークラッド層13を形成し、図示するように、基板2上に光導波路1を形成する。ここまでが、従来より通常に行われている光導波路の製法である。なお、図11は、図1のX−X断面図である。
【0025】
そして、これ以降が本発明の特徴である。すなわち、上記のようにして得られた光導波路1形成基板2(図1参照)を水に浸すことにより、光導波路1と基板2との密着力を弱め、水中でまたは水から出した直後に、図2に示すように、光導波路1を基板2から剥離する。剥離後は、乾燥等により、光導波路1の表面の水分を除去する。
【0026】
一方、図3に示すように、前記支持体3の表面に、発泡剤含有感圧性接着剤を塗布し、発泡剤含有感圧性接着剤層4を形成する。その厚みは、密着力の向上および切断時の安定性の観点から、好ましくは10〜300μm、特に好ましくは25〜200μmにする。
【0027】
そして、上記発泡剤含有感圧性接着剤層4の表面に、上記光導波路1を押し付けて貼着(仮着)し固定する。その後、図4に示すように、この仮着状態で光導波路1を所定の長さに切断する(図において、Cは切断部である)。この切断に使用される切断手段としては、特に限定されるものではなく、ダイシングソー等があげられる。
【0028】
つぎに、上記切断された状態のものを加熱する。この加熱により、図5に示すように、発泡剤含有感圧性接着剤層4が発泡し、その結果、光導波路1との接触面積が小さくなる。このため、発泡剤含有感圧性接着剤層4と光導波路1との密着力が弱まり、図6に示すように、光導波路1が発泡剤含有感圧性接着剤層4から簡単に剥離できるようになる。そして、その剥離した光導波路1をフレキシブル光導波路1として得ることができる。なお、上記加熱に使用される手段としては、特に限定されるものではなく、ドライオーブン,ホットプレート等があげられる。また、この加熱は、上述したように、100〜150℃の30秒間〜1分間程度の加熱とすることが好ましい。
【0029】
このようにして得られたフレキシブル光導波路1としては、例えば、直線光導波路,曲がり光導波路,交差光導波路,Y分岐光導波路,スラブ光導波路,マッハツエンダー型光導波路,AWG(Alley Wave Guide)型光導波路,グレーティング,光導波路レンズ等があげられる。そして、これら光導波路を用いた光素子としては、波長フィルタ,光スイッチ,光分岐器,光合波器,光合分波器,光アンプ,波長変換器,波長分割器,光スプリッタ,方向性結合器,さらにはレーザダイオードやフォトダイオードをハイブリッド集積した光伝送モジュール等があげられる。
【0030】
つぎに、実施例について説明する。
【実施例】
【0031】
〔ポリアミド酸溶液〕
攪拌機を備えた500mlのセパラブルフラスコ内で、酸二無水物として、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)26.66g(0.06モル)と、2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(BTFB)18.54g(0.058モル)とを、有機溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)182.85g(2.10モル)に溶解させた後、室温(25℃)で10時間攪拌することによりポリアミド酸溶液(ポリイミド樹脂前駆体溶液)を作製した。
【0032】
つぎに、厚み525μmのシリコンウエハー基板上に上記ポリアミド酸溶液をスピンコート法にて熱処理後厚み15μmとなるように塗布し、90℃で乾燥を行うことにより、ポリイミド樹脂前駆体組成物からなる樹脂膜を形成した。その後、真空下、385℃で加熱することにより上記樹脂膜中の残存溶剤の除去およびポリイミド樹脂前駆体のイミド化を完結させ、シリコンウエハー基板上に厚み15μmのアンダークラッド層(屈折率1.51)を形成した。
【0033】
ついで、上記アンダークラッド層上にコア層を形成するため、つぎのようにしてコア層形成材料である感光性ポリイミド樹脂前駆体溶液を調製した。すなわち、上記ポリアミド酸溶液に、感光剤として1−エチル−3,5−ジメトキシカルボニル−4−(2−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジンを上記ポリアミド酸溶液の固形分に対して2重量%となるよう、さらに、溶解調製剤として、重量平均分子量500のポリエチレングリコールジメチルエーテルを上記ポリアミド酸溶液の固形分に対して30重量%となるよう配合することにより、感光性ポリイミド樹脂前駆体組成物を溶液(感光性ポリイミド樹脂前駆体溶液)として得た。
【0034】
そして、上記アンダークラッド層上に、アンダークラッド層の形成と同様の方法にて、上記感光性ポリイミド樹脂前駆体溶液を塗布し、90℃で乾燥することにより感光性ポリイミド樹脂前駆体組成物からなる感光性ポリイミド樹脂前駆体層を形成した。ついで、この感光性ポリイミド樹脂前駆体層上に、所定のフォトマスク(ライン幅6μm×長さ50mm×間隔0.2mm)を載置し、その上方から30mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った。さらに、170℃で10分間露光後加熱を行った。
【0035】
つぎに、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2〜10%とエタノール40〜50%を含有する水溶液を現像液とし、35℃で現像して未露光部分を溶解した後、水で洗浄することによりネガ型画像を有するパターンを形成した。その後、真空下、330℃で加熱することにより感光性ポリイミド樹脂前駆体のイミド化を完結させ、所定のパターンからなるコア層(屈折率1.52)を形成した。形成されたコア層の断面のサイズは、6μm×6μmであった。
【0036】
ついで、上記コア層上にオーバークラッド層を形成するための形成材料として、上記ポリアミド酸溶液(ポリイミド樹脂前駆体溶液)を用い上記アンダークラッド層の形成方法と同様の方法にて、すなわち、スピンコート法にて熱処理後厚み15μmとなるように上記ポリアミド酸溶液を塗布し、90℃で乾燥を行うことにより、ポリイミド樹脂前駆体組成物からなる樹脂膜を形成した。その後、真空下、330℃で加熱することにより上記樹脂膜中の残存溶剤の除去およびポリイミド樹脂前駆体のイミド化を完結させ、コア層を包含するように最大厚み20μmのオーバークラッド層(屈折率1.51)を形成した。このようにして、シリコンウエハー基板上にポリイミド樹脂製の光導波路を作製した。
【0037】
そして、その光導波路が形成されたシリコンウエハー基板を25℃の水に5分間浸し、水中で光導波路を基板から剥離した。その後、光導波路を水から取り出し、25℃雰囲気下で自然乾燥させた。
【0038】
〔発泡剤含有感圧性接着剤〕
アクリル酸ブチル100重量部、アクリル酸2重量部からなる共重合体(重量平均分子量約80万)100重量部、ポリイソシアネート系架橋剤2重量部およびマイクロスフェアー(松本油脂社製、F−30)30重量部をトルエンに溶解して混合調製することにより、発泡剤含有感圧性接着剤を作製した。
【0039】
ついで、厚み100μmのポリエステルフィルムの片面に、上記発泡剤含有感圧性接着剤を塗布し、25℃雰囲気下で自然乾燥させることにより、厚み30μmの発泡剤含有感圧性接着剤層を形成した。
【0040】
そして、上記発泡剤含有感圧性接着剤層の表面に、上記光導波路を押し付けて仮着した。ついで、この仮着状態で光導波路の両端部を、ダイシングソーを用いて、長さ40mmになるよう切断した。このとき、ダイシングソーの刃が発泡剤含有感圧性接着剤層に届くまで切断した。
【0041】
つぎに、上記切断された状態のものを、ホットプレートを用いて、120℃×30秒間加熱した。その結果、上記発泡剤含有感圧性接着剤層が発泡した。その後、上記加熱手段から取り出し、上記両端を切断した光導波路をピンセットで挟み、上記発泡剤含有感圧性接着剤層から剥離した。その剥離は、簡単にできた。
【0042】
このようにして得られたフレキシブル光導波路に対して、カットバック法を用いて波長1.55μmの時の伝播損失を測定した。その結果、光導波路の伝播損失は0.5dB/cmであり、非常に低い値であった。すなわち、この実施例では、光伝達が良好なフレキシブル光導波路を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のフレキシブル光導波路の製法の一実施の形態を示す説明図である。
【図2】上記フレキシブル光導波路の製法を示す説明図である。
【図3】上記フレキシブル光導波路の製法を示す説明図である。
【図4】上記フレキシブル光導波路の製法を示す説明図である。
【図5】上記フレキシブル光導波路の製法を示す説明図である。
【図6】上記フレキシブル光導波路の製法を示す説明図である。
【図7】従来の通常の光導波路の製法を示す説明図である。
【図8】従来の通常の光導波路の製法を示す説明図である。
【図9】従来の通常の光導波路の製法を示す説明図である。
【図10】従来の通常の光導波路の製法を示す説明図である。
【図11】図1のX−X断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 光導波路
4 発泡剤含有感圧性接着剤層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路が形成された基板を水に浸けることにより、光導波路と基板との密着力を弱め、光導波路を基板から剥離する工程と、その光導波路を発泡剤含有感圧性接着剤層の表面に仮着する工程と、その仮着状態で光導波路を所定の長さに切断する工程と、その切断後に加熱して発泡剤含有感圧性接着剤層を発泡させることにより、発泡剤含有感圧性接着剤層と光導波路との密着力を弱め、所定長に切断された光導波路を発泡剤含有感圧性接着剤層から剥離する工程とを備えることを特徴とするフレキシブル光導波路の製法。
【請求項2】
上記基板における光導波路の形成が、下記(A)からなる基板上に、フッ素化ポリイミドからなるアンダークラッド層を形成する工程と、そのアンダークラッド層上に所定のパターンにコア層を形成する工程とを備えており、上記基板と光導波路との剥離が、その基板と上記アンダークラッド層との間で行われる請求項1記載のフレキシブル光導波路の製法。
(A)シリコンウエハー,二酸化ケイ素付シリコンウエハー,青板ガラス,合成石英およびポリイミド樹脂からなる群から選ばれる一つ。
【請求項1】
光導波路が形成された基板を水に浸けることにより、光導波路と基板との密着力を弱め、光導波路を基板から剥離する工程と、その光導波路を発泡剤含有感圧性接着剤層の表面に仮着する工程と、その仮着状態で光導波路を所定の長さに切断する工程と、その切断後に加熱して発泡剤含有感圧性接着剤層を発泡させることにより、発泡剤含有感圧性接着剤層と光導波路との密着力を弱め、所定長に切断された光導波路を発泡剤含有感圧性接着剤層から剥離する工程とを備えることを特徴とするフレキシブル光導波路の製法。
【請求項2】
上記基板における光導波路の形成が、下記(A)からなる基板上に、フッ素化ポリイミドからなるアンダークラッド層を形成する工程と、そのアンダークラッド層上に所定のパターンにコア層を形成する工程とを備えており、上記基板と光導波路との剥離が、その基板と上記アンダークラッド層との間で行われる請求項1記載のフレキシブル光導波路の製法。
(A)シリコンウエハー,二酸化ケイ素付シリコンウエハー,青板ガラス,合成石英およびポリイミド樹脂からなる群から選ばれる一つ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−30294(P2006−30294A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204916(P2004−204916)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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