説明

フレネル型ミラー

【課題】1枚だけでも拡大された広い視野をカバーするフレネル型ミラーを提供する。
【解決手段】凸面鏡10を球心を通る中心軸Oを中心に半径が異なる多数の環状鏡面3に分離し、これら環状鏡面3を前記中心軸Oを共軸にして平面状に並べ変えるように構成したフレネル型ミラー1である。この構成からなるフレネル型ミラー1において、中心軸側の中央領域に位置する環状鏡面3に対して外側領域に位置する環状鏡面3の球面半径Rを小さくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレネル型ミラーに関し、さらに詳しくは、1枚だけでも拡大された広い視野をカバーすることができるフレネル型ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
旅客航空機等の客室の上部に備えられた荷棚に対して、その天井面に凸面鏡機能を有しながら平面形状をもつフレネル型ミラーを貼り付けることにより、下方から覗き見たときそのフレネル型ミラーに荷棚内の全域を映し出せるようにし、それによって荷物の置き忘れを防止するようにすることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載される従来のフレネル型ミラーは、図3(B)に示すような単一の球面半径Rを有する凸面鏡30から、球心を通る中心軸O(回転軸)からの半径が異なる多数の環状鏡面33に分離形成し、これら環状鏡面33を、図3(A)に示すように中心軸Oに沿って平行移動させ、平面34上に並べ変えることで平面状のフレネル型ミラー31にした構成からなっている。(但し、図3のフレネル型ミラーでは、環状鏡面33が大きなピッチで分離されるように図示されているが、実際には1mm前後又はそれ以下の微細なピッチで分離された構成からなる。)
【0004】
しかし、近年、旅客列車などにおいて、荷棚の横幅寸法を非常に大きくした車両が製作されるようになってきているが、このように横幅の大きい荷棚に対して上記従来の構造のままのフレネル型ミラーを設置したのであっては、横幅方向の全視野をカバーすることが出来なくなるという問題がある。すなわち、1枚のフレネル型ミラーで全視野をカバーするためには、ミラー寸法を大型化したり、或いは、2枚以上を組み合わせて使用したりしなければならなくなる問題がある。
【特許文献1】特開平9−267800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、1枚だけでも拡大された広い視野をカバーすることができるフレネル型ミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のフレネル型ミラーは、凸面鏡を球心を通る中心軸を中心に半径が異なる多数の環状鏡面に分離し、これら環状鏡面を前記中心軸を共軸にして平面状に並べ変えるように構成したフレネル型ミラーにおいて、前記中心軸側の中央領域に位置する環状鏡面に対して外側領域に位置する環状鏡面の球面半径を小さくするようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
中央領域の環状鏡面に対する外側領域の環状鏡面の球面半径の変化は、中心軸から外側へ1個ずつの環状鏡面の球面半径が順次小さくなるようにしてもよく、或いは連続する複数個が環状鏡面の単位で順次小さくするようにしてもよい。
【0008】
環状鏡面は必ずしも球面である必要はなく、前記中心軸を含む断面において直線状に形成されたものであってもよい。
【0009】
環状鏡面の球面半径の大きさとしては、荷物棚の内部確認用とか、ATMの後方確認用などのように比較的近距離から確認を行うために使用される用途では、150〜190mmの範囲が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフレネル型ミラーは、中央領域に位置する環状鏡面に対して外側領域に位置する環状鏡面の球面半径を小さくするようにしたので、1枚のミラーで視認可能な映像の視野を周辺方向に大きく拡大することができる。また、中央領域の環状鏡面の球面半径が外周領域の環状鏡面の球面半径よりも大きいので、中央領域の映像の見え方を大きく鮮明な状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の実施形態からなるフレネル型ミラーを例示したもので、(A)はフレネル型ミラーを中心軸Oを含む断面で示した概略縦断面図、(B)はこのフレネル型ミラーに対応する凸面鏡の縦断面図である。
【0012】
図1(A)に示すように、フレネル型ミラー1は透明樹脂からなる平面板2を本体として、その平面板2の裏面に中心軸Oを中心に半径の異なる多数の環状鏡面3が同心状に段差状に配列した構成からなっている。これら環状鏡面3はアルミニウム等の金属膜を反射層として被覆しており、かつその環状鏡面3の裏面側表面には塗料が保護層(図示せず)として塗布されている。フレネル型ミラー1は、このような構成によりフラットでありながら凸面鏡の機能を有するため、広範囲の視野を視点Eに入力させることができる。
【0013】
上記フレネル型ミラー1を形成する環状鏡面3は、凸面鏡10を、その中心軸Oからの半径が異なる多数の環状体(リング)に分離したものに相当している。その凸面鏡10は、図1(B)に示すように球面半径Rが180mmである中央領域側の凸面鏡部分11と、球面半径Rが凸面鏡部分11よりも小さい160mmである外側領域側の凸面鏡部分12とを境界Pで接合した構成になっている。このような構成の凸面鏡10が多数の環状鏡面3に分離されることにより、図1(A)に示すように球面半径Rが180mmの凸面鏡部分11から分離された環状鏡面3がフレネル型ミラー1の中央領域の3個として配置され、また球面半径Rが160mmの凸面鏡部分12から分離された環状鏡面3がフレネル型ミラー1の外側領域2個として配置されている。
【0014】
図では理解を容易にするため、環状鏡面3を大きなピッチで5個に分離したものとして図示しているが、実際のフレネル型ミラーでは、環状鏡面3のピッチ(環状鏡面3の幅)は0.01〜1.0mmの微細な範囲に設定される。また、図1(A)に示した環状鏡面3は、中心軸Oを含む断面において球面半径Rの円弧ではなく、直線状にしている。この環状鏡面の断面における形状は、球面半径Rの円弧であっても、その接線に相当する直線状のいずれであってもよい。直線状であっても、環状鏡面3のピッチが1mm以下と微細になっているため、映像の見え方には殆ど影響することはないからである。
【0015】
本発明のフレネル型ミラーは、上述のように外側領域に位置する環状鏡面3の球面半径Rを中央域に位置する環状鏡面3の球面半径Rよりも小さくしてあるので、外側領域の環状鏡面3で視認できる視野が周辺方向に大きく拡大することになる。そのため1枚のミラーであっても、ミラー寸法をいたずらに大型化したり、或いは複数枚を組合せたりしなくても、より広い視野を確保することができる。また、中央領域に球面半径の小さい環状鏡面が配置されていると、中央領域の映像が小さくなってしますが、本発明のフレネル型ミラーでは、中央領域の環状鏡面の球面半径が外周領域の環状鏡面の球面半径よりも大きくなっているので、中央領域における見え方を大きく鮮明にすることができる。
【0016】
図1の実施形態では、環状鏡面3を形成する球面半径Rの組合せが、中央領域の環状鏡面の球面半径と外側領域の環状鏡面の球面半径との2区分で異ならせるようにしたが、これを図2に示す実施形態のように、中心軸Oに隣接する環状鏡面3から外側の環状鏡面3に向けて、順次1個ずつ球面半径Rが小さくなるように漸減させるようにしてもよい。図2の実施形態では、中心軸Oに隣接する環状鏡面3の球面半径Rが最も大きい180mmであり、その外側に隣接する環状鏡面3の順に、球面半径Rが175mm、170mm、165mm、160mmと小さく漸減している。また、このような球面半径の漸減を、1個ずつの単位でなく、連続する複数個の単位で変化させるようにしてもよい。
【0017】
環状鏡面3に適用する球面半径Rとしては、フレネル型ミラーの用途によって異なるが、航空機、列車、バスなどの乗物に設けられる荷物棚における内部確認用や、銀行などに設置されるATMの後方確認用などの用途では、ミラーからの視点の距離を約500mmとすればよいので、150〜190mmの範囲がが好ましく、さらに好ましくは160〜180mmの範囲にするとよい。また、フレネル型ミラーに形成する球面半径の最大値と最小値との差としては15〜25mm程度にするとよい。
【0018】
本発明のフレネル型ミラーは、航空機、列車、バスなどの乗物の荷物棚の内部確認用、銀行のATMの後方確認用などの他、通路のコーナーにおける衝突防止用、店舗の防犯用など種々の用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態からなるフレネル型ミラーであり、(A)は同フレネル型ミラーの概略縦断面図、(B)は同フレネル型ミラーに対応する凸面鏡の縦断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態からなるフレネル型ミラーの概略縦断面図である。
【図3】従来のフレネル型ミラーの構成の説明図であり、(A)は同フレネル型ミラーの概略縦断面図、(B)は同フレネル型ミラーに対応する凸面鏡の縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 フレネル型ミラー
2 (透明樹脂の)平面板
3 環状鏡面 10 凸面鏡
11 中央領域側の凸面鏡部分
12 外側領域側の凸面鏡部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸面鏡を球心を通る中心軸を中心に半径が異なる多数の環状鏡面に分離し、これら環状鏡面を前記中心軸を共軸にして平面状に並べ変えるように構成したフレネル型ミラーにおいて、前記中心軸側の中央領域に位置する環状鏡面に対して外側領域に位置する環状鏡面の球面半径を小さくするようにしたフレネル型ミラー。
【請求項2】
前記環状鏡面の球面半径を、前記中心軸から外側の環状鏡面の順に1個又は複数個の単位で段階的に小さくするようにした請求項1に記載のフレネル型ミラー。
【請求項3】
前記環状鏡面を前記中心軸を含む断面において直線状にした請求項1又は2に記載のフレネル型ミラー。
【請求項4】
前記環状鏡面の球面半径の大きさを150〜190mmの範囲にした請求項1、2又は3に記載のフレネル型ミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−292665(P2008−292665A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136674(P2007−136674)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(390010526)コミー株式会社 (10)
【Fターム(参考)】