説明

フレーク状化合物の製造装置および製造方法

【課題】フレーク状化合物の製造におけるフレーカー内の化合物由来の綿状物および/または粉塵を容易に除去することができ、かつ除去された綿状物および/または粉塵を化合物が溶解した溶液として製造プロセスに回収することができるフレーク状化合物の製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】冷却ドラム、掻き取り刃、溶融液供給口およびフレーク状物回収口を備えたフレーカーと、吸引装置を備えた溶解ドラムとを備え、前記フレーカーと前記溶解ドラムとは、ノズルが取り付けられた配管によって連通されているフレーク状化合物の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーク状化合物の製造におけるフレーカー内の化合物由来の綿状物および/または粉塵を容易に除去することができ、かつ除去された綿状物および/または粉塵を化合物が溶解した溶液として製造プロセスに回収することができるフレーク状化合物の製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイドロキノン等のフェノール類は、産業上有用な化合物であり、例えば、薄片状(以下、「フレーク状」と記載することがある。)のものが製品化されている。そして、このようなフレーク状の製品を得る方法として、特許文献1および特許文献2には、原料液に一部が浸漬された回転ドラムを冷却しながら回転することにより、ドラム表面に固体を形成せしめ、次いで該固体を掻き取り刃によって剥離してフレーク状製品を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−220134号公報
【特許文献2】特開平1−317537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1および特許文献2に開示されているような、フレーク化装置内でフレーク状化合物を取り扱う場合、フレーク化装置内に化合物由来の綿状物および/または粉塵が蓄積する。このため、フレーク化装置内を開放して粉塵を取り除くための作業が発生し、また、除去された綿状物および/または粉塵の廃棄によって化合物を損失するといった問題があった。
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、フレーク状化合物の製造におけるフレーカー内の化合物由来の綿状物および/または粉塵を容易に除去することができ、かつ除去された綿状物および/または粉塵を化合物が溶解した溶液として製造プロセスに回収することができるフレーク状化合物の製造装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の第1の発明は、冷却ドラム、掻き取り刃、溶融液供給口およびフレーク状物回収口を備えたフレーカーと、吸引装置を備えた溶解ドラムとを備え、前記フレーカーと前記溶解ドラムとは、ノズルが取り付けられた配管によって連通されているフレーク状化合物の製造装置に係るものである。
【0006】
また、本発明の第2の発明は、冷却ドラム、掻き取り刃、溶融液供給口およびフレーク状物回収口を備えたフレーカーと、吸引装置を備えた溶解ドラムと、溶液貯蔵槽と、ポンプとを備え、前記フレーカーと前記溶解ドラムとは、ノズルが取り付けられた配管によって連通され、前記溶解ドラムと、前記溶液貯蔵槽とは、第1のラインによって連通され、前記溶液貯蔵槽と、前記ポンプとは、第2のラインによって連通され、前記ポンプと、前記溶解ドラムとは、第3のラインによって連通されているフレーク状化合物の製造装置に係るものである。
【0007】
また、本発明の第3の発明は、化合物の溶融液を凝固して、得られた化合物の凝固物を掻き取り刃にて剥離してフレーク状とするフレーク状化合物の製造方法であって、前記第1の発明に記載の製造装置を用い、下記吸引工程(1)、下記溶解工程(1)および下記回収工程(1)を含むフレーク状化合物の製造方法に係るものである。
吸引工程(1):前記フレーカー内に蓄積する化合物由来の綿状物および/または粉塵を前記ノズルから吸引することにより、前記溶解ドラムへ移送する工程
溶解工程(1):前記溶解ドラムに溶媒を添加して、化合物由来の綿状物および/または粉塵を溶解して化合物が溶解した溶液を得る工程
回収工程(1):前記溶解ドラムから化合物が溶解した溶液を抜き出して、化合物を回収する工程
【0008】
また、本発明の第4の発明は、化合物の溶融液を凝固して、得られた化合物の凝固物を掻き取り刃にて剥離してフレーク状とするフレーク状化合物の製造方法であって、前記第2の発明に記載の製造装置を用い、下記吸引工程(2)、下記溶解工程(2)、下記貯蔵工程、下記循環工程および下記回収工程(2)を含むフレーク状化合物の製造方法に係るものである。
吸引工程(2):前記フレーカー内に蓄積する化合物由来の綿状物および/または粉塵を前記ノズルから吸引することにより、前記溶解ドラムへ移送する工程
溶解工程(2):前記溶解ドラムに溶媒を添加して、化合物由来の綿状物および/または粉塵を溶解して化合物が溶解した溶液を得る工程
貯蔵工程:前記溶解ドラムから前記溶液貯蔵槽へ化合物が溶解した溶液を移送して、貯蔵する工程
循環工程:前記溶液貯蔵槽から前記溶解ドラムへ化合物が溶解した溶液を循環する工程
回収工程(2):前記循環工程における、前記第2のラインまたは前記第3のラインから化合物が溶解した溶液を抜き出して、化合物を回収する工程
【発明の効果】
【0009】
本発明により、フレーク状化合物の製造におけるフレーカー内の化合物由来の綿状物および/または粉塵を容易に除去することができ、かつ除去された綿状物および/または粉塵を化合物が溶解した溶液として製造プロセスに回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のフレーク状化合物の製造装置の概略を示す図である。
【図2】本発明のフレーク状化合物の製造装置の他の態様の概略を示す図である。
【図3】本発明における第一のノズル設置方法のノズル配置を示す図である。
【図4】本発明における第三のノズル設置方法のノズル配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明における、化合物とは、フレーク状物を形成するものであればよく、例えば、ジヒドロキシベンゼン、アミノフェノール、フェニルフェノール、ステアリン酸等が挙げられ、好ましくは、ジヒドロキシベンゼンであり、より好ましくは、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコールのうちの1種または混合物であり、更に好ましくは、精製されたハイドロキノン、または精製されたレゾルシンである。フレーク状化合物とは、前述の化合物の固体であって、薄片状のものであり、さらに具体的には、化合物の溶融液に一部が浸漬された回転ドラムを冷却しながら回転することにより、ドラム表面に化合物の固体を形成せしめ、次いで該固体を掻き取り刃によって剥離して薄片状態としたものである。
【0012】
本発明における、化合物由来の綿状物とは、フレーカー内で化合物の昇華物が凝固して綿状の固形物となったものを意味し、化合物由来の粉塵とは、化合物が前述の掻き取り等で細かく粉砕されて生じた粉塵を意味する。このような綿状物および粉塵の組成は、化合物とほぼ同等であるが、製品外観や、製品ハンドリング(粉塵が舞い作業環境が悪化する)の観点から製品中への混入を防止することが好ましい。
【0013】
本発明における、化合物の溶融液とは、公知の製造方法によって得られた化合物であって、該化合物が融点以上の温度にて液体状であるものを意味する。
例えば、化合物がジヒドロキシベンゼンの場合、溶融液を得る方法としては、下記の工程を含むジヒドロキシベンゼンの製造方法において、精製工程で得られる液体状のジヒドロキシベンゼンを挙げることができる。
酸化工程:ジイソプロピルベンゼンを酸化して、ジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシドを含む酸化油を得る工程
分解工程:酸化工程で得た酸化油を酸性触媒の存在下に分解し、ジヒドロキシベンゼンを含む分解反応液を得る工程
精製工程:分解工程で得た分解反応液を精製して、精製されたジヒドロキシベンゼンを得る工程
【0014】
1)フレーク状化合物の製造装置(1)
本発明のフレーク状化合物の製造装置(1)は、冷却ドラム、掻き取り刃、溶融液供給口およびフレーク状物回収口を備えたフレーカーと、吸引装置を備えた溶解ドラムとを備え、前記フレーカーと前記溶解ドラムとは、ノズルが取り付けられた配管によって連通されている。
【0015】
前記製造装置(1)における、フレーカーは、冷却ドラム、掻き取り刃、溶融液供給口およびフレーク状物回収口を備える。
【0016】
前記冷却ドラムは、内部に冷媒を通じてドラム表面が冷却される構造であり、例えば、金属製の円筒ドラムが挙げられ、好ましくは、ステンレスを用いた円筒ドラムである。冷却ドラムの表面には、化合物の固体が形成される。本発明において、好ましくは、冷却ドラムの一部が化合物の溶融液に浸漬した状態で、冷却ドラムを回転させることによって、冷却ドラムの表面に化合物の固体を形成させることである。
【0017】
前記掻き取り刃は、前記冷却ドラムの表面に形成された化合物の固体を掻き取ることのできる構造であればよく、一般的には、冷却ドラムの回転軸の鉛直から回転方向に270°よりも大きな角の位置に、冷却ドラムの表面の長手方向に沿って上向きの掻き取り刃が設置される。該掻き取り刃は、冷却ドラムの表面に形成される化合物の固体との接触角度および接触強さ等を調整できる構造であることが好ましい。接触角度や接触強さを調整することにより、フレークの大きさや形状等の外観を調整することができる。
【0018】
前記溶融液供給口は、前記冷却ドラムの一部が化合物の溶融液に浸漬するように化合物が溶解した液を供給できればよく、例えば、冷却ドラムの下側に液を溜める堰(以下、「シールパン」と記載することがある。)を設置し、該シールパンの通常液面より下部に溶融液供給口を有することが好ましい。通常液面よりも上部の気相部分から化合物の溶融液を液面に落下させた場合、液面が乱れて冷却ドラムの表面に安定的な厚みで固体を形成することを妨げる場合がある。
【0019】
前記フレーク状物回収口は、冷却ドラムの表面に形成した固体を掻き取り刃で掻き取って得られるフレーク状物をフレーカーから排出するための回収口であって、一般に掻き取り刃の直下に開口部を設けて重力により落下させる構造である。フレーク状物回収口の先は、直接ホッパーと呼ばれるフレークを一時的に貯蔵する貯槽に接続されていてもよいし、ベルトコンベアーやスクリューフィーダー、サークルフィーダーのような粉体移送に適した移送装置に接続されていてもよい。特に粉体移送装置を設置した場合、該装置を用いてフレーク状物回収口から離れた位置のホッパーや出荷用容器にもフレークを移送できる。
【0020】
前記製造装置(1)における、吸引装置を備えた溶解ドラムは、前記フレーカー内部に蓄積する化合物由来の綿状物および/または粉塵(以下、「蓄積物」と記載することがある。)をノズルが取り付けられた配管を通じて吸引し、溶解ドラムに回収するための設備である。
【0021】
前記吸引装置は、一般的な減圧機器でよく、例えば、ブロアー、真空ポンプ、ガスエジェクター、スチームエジェクター等を挙げることができる。溶解ドラムは、回収した蓄積物を溶媒で溶解し、化合物が溶解した溶液を得ることができればよく、例えば、縦型あるいは横型の金属製耐圧容器はもちろん、汎用の金属製ドラム缶や樹脂製ドラムであってもよい。
【0022】
溶解ドラムに回収された蓄積物は、溶媒を添加して、溶解することにより、化合物が溶解した溶液とされ、溶解ドラムから抜き出すことで、化合物が回収される。回収された化合物は、前述の化合物を製造するプロセスに回収して再利用される。ここで、溶媒としては、蓄積物を溶解する溶媒が選択され、例えば、蓄積物がジヒドロキシベンゼン由来の綿状物および/または粉塵である場合は、溶媒として、水を用いることができる。
【0023】
前記フレーカーと前記溶解ドラムとは、ノズルが取り付けられた配管によって連通されている。
【0024】
前記ノズルは、前記フレーカー内部に蓄積する蓄積物にノズル先端を近接させて、蓄積物を吸引できる構造物である。ノズルはフレーカー内部の所定の位置に固定されていても良いし、可動式でもよいが、フレーカーに掃除口を複数設置して、1つのノズルで広範囲の蓄積物を吸引できる観点から可動式のノズルが好ましい。
【0025】
前記配管は、前記ノズルで吸引した蓄積物を溶解ドラムへ移送するための通路である、配管であればよく、例えば、樹脂製ホース、ゴム製ホース、金属製配管等を挙げることができる。
【0026】
2)フレーク状化合物の製造装置(2)
本発明のフレーク状化合物の製造装置(2)は、冷却ドラム、掻き取り刃、溶融液供給口およびフレーク状物回収口を備えたフレーカーと、吸引装置を備えた溶解ドラムと、溶液貯蔵槽と、ポンプとを備え、前記フレーカーと前記溶解ドラムとは、ノズルが取り付けられた配管によって連通され、前記溶解ドラムと、前記溶液貯蔵槽とは、第1のラインによって連通され、前記溶液貯蔵槽と、前記ポンプとは、第2のラインによって連通され、前記ポンプと、前記溶解ドラムとは、第3のラインによって連通されている。
【0027】
前記製造装置(2)における、フレーカーおよび溶解ドラムとしては、前記製造装置(1)における、フレーカーおよび溶解ドラムのところで例示したものと同じものを例示することができる。
【0028】
前記製造装置(2)における、溶液貯蔵槽は、前記溶解ドラムで得た化合物が溶解した溶液を貯蔵するための設備であり、化合物が溶解した溶液を一時的に貯蔵できればよい。溶液貯蔵槽の材質や容量に制限はなく、化合物が溶解した溶液を一時的に貯蔵できる材質であればよく、また一時的に貯蔵する容量は実施者が運転上必要な容量を決定してよい。
【0029】
前記製造装置(2)における、ポンプは、前記溶液貯蔵槽の化合物が溶解した溶液を前記溶解ドラムへ循環するためのポンプである。ポンプには特に制限はなく、例えば遠心ポンプや往復ポンプを利用すればよい。ポンプの払い出し能力は、前記の水溶液の循環に加えて、プロセスへの回収にも用いられる場合があるため、これらを考慮して実施者が払い出し容量、揚程等を決定してよい。
【0030】
本発明において、前記フレーカーと前記溶解ドラムとは、前記ノズルが取り付けられた配管によって連通される。化合物のフレークおよび溶融液は酸素雰囲気または湿度により着色等の劣化を生じる場合があるので、通常フレーカー本体はカバーで覆われた構造であり、フレーカー内部は窒素等の不活性ガスにてシールされていることが好ましい。前記ノズルの設置方法としては、例えば、ノズルとして複数の位置に固定式のノズルを複数設置する方法(第一のノズル設置方法)、可動式のノズルを1ないし2と、フレーカー本体のカバーに開閉可能な窓を複数設け、吸引時のみ必要な窓を開放して前記可動式のノズルを差込む方法(第二のノズル設置方法)、フレーカー本体カバーに配管を固定し、配管に接続された先端のノズル部のみ外部から方向や差込深さを調整できる構造とする方法(第三のノズル設置方法)等が挙げられる。第一の方法の場合、1つのノズルでの吸引範囲は制限されるが、フレーカー本体のカバーを開放することなく吸引除去が行える。第二の方法の場合、吸引時に窓の開放が必要であるが、吸引範囲の自由度が得られる。第三の方法の場合、構造が複雑となり製作コストが上昇するが、窓を開放することなく、比較的広範囲に掃除をすることができる。実施者は例示したノズルの設置方法から、設置コストや操作性を考慮して適切な方法を選べば良く、さらに、これらの例によらずとも、前記フレーカーと前記溶解ドラムとを配管により連通し、フレーカー内部に蓄積した化合物由来の綿状物および/または粉塵を吸引除去できるように設置すればよい。
【0031】
本発明において、前記溶解ドラムと、前記溶液貯蔵槽とは、第1のラインによって連通され、前記溶液貯蔵槽と、前記ポンプとは、第2のラインによって連通され、前記ポンプと、前記溶解ドラムとは、第3のラインによって連通される。このようにすることで、フレーカーから吸引された化合物由来の綿状物および/または粉塵を、確実に化合物が溶解した溶液とすることができ、得られた化合物が溶解した溶液を循環することができる。また、第2のラインまたは第3のラインのいずれかの位置でラインを分岐することによって、化合物が溶解した溶液の一部または全部を回収することができ、回収した化合物が溶解した溶液は、前述の化合物を製造するプロセスに回収して再利用される。
【0032】
本発明において、蓄積物の吸引は、まず、操作弁(16)、(17)、(19)を閉止し、吸引装置(13)を作動させる。すると溶解ドラム(15)が負圧となるので、操作弁(12)を調整してノズル(10)の吸引力を調整し、フレーカーカバーの掃除口(2)を開放してノズルを差込むことで、堆積物を溶解ドラムに移送できる。
本発明において、吸引された堆積物の溶解は、操作弁(12)、(17)を閉止し、操作弁(16)、(19)を開き、ポンプ(18)を作動させる。すると、溶液貯蔵槽(20)の液は溶解ドラム(15)に供給され、吸引された堆積物を溶解したのち溶液貯蔵槽(20)へ戻る。なお、堆積物が充分溶解されたら、操作弁(17)を開き、該溶液をプロセスへ回収する。
【0033】
3)フレーク状化合物の製造方法(1)
本発明のフレーク状化合物の製造方法(1)とは、化合物の溶融液を凝固して、得られた化合物の凝固物を掻き取り刃にて剥離してフレーク状とするフレーク状化合物の製造方法であって、前記製造装置(1)を用い、下記吸引工程(1)、下記溶解工程(1)および下記回収工程(1)を含む。
【0034】
本発明の製造方法(1)における、吸引工程(1)とは、前記フレーカー内に蓄積する化合物由来の綿状物および/または粉塵を前記ノズルから吸引することにより、前記溶解ドラムへ移送する工程である。
【0035】
吸引操作は、前記溶解ドラムに備えられた吸引装置を稼動することにより、前記フレーカー内部に蓄積する綿状物および/または粉塵を吸引し、前記ノズルが取り付けられた配管内を通じて、前記溶解ドラムに移送される。吸引操作は連続的に実施しても良いし、断続的に実施しても良いが、吸引設備の稼働時間やコストの面から断続的に実施することが好ましい。
断続的に実施する場合は、化合物由来の綿状物および/または粉塵の蓄積量が過大となり、製品品質に影響しないように適切な間隔で実施する必要があるため、所定の間隔で定期的に実施することが好ましい。
溶解温度は特に制限は無いが、加熱や冷却にエネルギーを使用することは経済的でないため、常温付近での操作が好ましい。
【0036】
本発明の製造方法(1)における、溶解工程(1)とは、前記溶解ドラムに溶媒を添加して、化合物由来の綿状物および/または粉塵を溶解して化合物が溶解した溶液を得る工程である。
【0037】
溶解操作は連続的に実施してもよく、所定量の綿状物および/または粉塵が溶解ドラムに回収された時点で断続的に水を添加して水溶液としてもよいが、ポンプの稼働時間やコストの面から断続的に実施することが好ましい。
断続的に実施する場合は、溶解ドラムに回収される前記の綿状物および/または粉塵が多くなりすぎないように適切な間隔で実施する必要があるため、吸引工程の運転状況に合わせて実施することが好ましい。
この場合、まず、吸引工程を実施して溶解ドラムに綿状物および/または粉塵を回収し、次いで吸引工程を停止し、その後、溶媒を添加して該綿状物および/または粉塵を溶解する。
【0038】
本発明の製造方法(1)における、回収工程(1)とは、前記溶解ドラムから化合物が溶解した溶液を抜き出して、化合物を回収する工程である。
【0039】
回収工程(1)によって回収された化合物は、前述の化合物を製造するプロセスに回収して再利用される。
【0040】
4)フレーク状化合物の製造方法(2)
本発明のフレーク状化合物の製造方法(2)とは、化合物の溶融液を凝固して、得られた化合物の凝固物を掻き取り刃にて剥離してフレーク状とするフレーク状化合物の製造方法であって、前記製造装置(2)を用い、下記吸引工程(2)、下記溶解工程(2)、下記貯蔵工程、下記循環工程および下記回収工程(2)を含む。
【0041】
前記製造方法(2)における、吸引工程(2)および溶解工程(2)としては、前記製造方法(2)における吸引工程(1)および溶解工程(1)のところで例示したものと同じものを例示することができる。
この場合、まず、吸引工程を実施して溶解ドラムに化合物由来の綿状物および/または粉塵を回収し、次いで吸引工程を停止し、その後、溶媒を添加して該綿状物および/または粉塵を溶解し、前記溶液貯蔵槽に排出する。
溶解ドラムに添加される溶媒の一部は新しい溶媒でも良いが、大部分は、前記溶液貯蔵槽からポンプにより循環供給される。こうすることで、回収された化合物由来の綿状物および/または粉塵を確実に化合物の溶解した溶液とすることができる。
溶解温度は特に制限は無いが、加熱や冷却にエネルギーを使用することは経済的でないため、常温付近での操作が好ましい。
【0042】
本発明において、化合物として、ジヒドロキシベンゼンを用いる場合は、溶媒として水を用いるのが好ましい。
【0043】
本発明の製造方法(2)における、貯蔵工程とは、前記溶解ドラムから前記溶液貯蔵槽へ化合物が溶解した溶液を移送して、貯蔵する工程であり、化合物が溶解した溶液を一時的に貯蔵できればよい。
【0044】
一時的に貯蔵する化合物が溶解した溶液の濃度は溶液温度により決定される飽和溶解度よりも低い濃度であり、結晶が析出しない範囲であれば良いが、該濃度が低すぎるとプロセスに回収する水溶液量が多くなり経済的な観点から好ましくなく、該濃度が高すぎると、外気温の低下等で予期せぬ結晶の析出を引き起こし、ひいては配管の閉塞等のトラブルに繋がる場合があるので、通常5〜50重量%である。溶液濃度の調整は、外部から加える溶媒の量で調整すればよく、濃度の確認はガスクロマトグラフによる分析のほか、溶液密度等で実施できる。
【0045】
本発明の製造方法(2)における、循環工程とは、前記溶液貯蔵槽から前記溶解ドラムへ化合物が溶解した溶液を循環する工程である。
【0046】
既に述べたとおり、前記溶液貯蔵槽に一時的に貯蔵される化合物が溶解した溶液の一部は、ポンプにより溶解ドラムへ循環される。循環量について特に規定はなく、フレーカーから吸引された化合物由来の綿状物および/または粉塵を溶解させることができればよい。
【0047】
本発明の製造方法(2)における、回収工程とは、前記循環工程における、前記第2のラインまたは前記第3のラインから化合物が溶解した溶液を抜き出して、化合物を回収する工程である。
【0048】
化合物が溶解した溶液を第2のラインまたは第3のラインから抜き出して、化合物を回収する方法としては、該第2のラインまたは該第3のラインの何れかの位置でラインを分岐し、化合物の精製工程内の化合物が溶解した溶液を取り扱う機器または配管の何れかに接続することで実施できる。
こうすることにより、フレーカーから除去された化合物由来の綿状物および/または粉塵は廃棄されることなく、化合物として製造プロセスに回収することができるのである。
【符号の説明】
【0049】
(1) フレーカーカバー
(2) 掃除口
(3) 冷却ドラム
(4) 掻き取り刃
(5) シールパン
(6) 溶融液供給口
(7) フレーク状物回収口
(8) 溶融液
(9) フレーク状物
(10) ノズル(第二のノズルの設置方法の例)
(11) 配管(ホース)
(12) 操作弁
(13) 吸引装置
(14) 溶液供給口
(15) 溶解ドラム
(16) 操作弁
(17) 操作弁
(18) ポンプ
(19) 操作弁
(20) 溶液貯蔵槽
(21) 第1の溶液循環ライン
(22) 第2の溶液循環ライン
(23) 第3の溶液循環ライン
(30) 溶解ドラムの液をポンプへ送るためのライン
(40) 第一のノズル設置方法のノズル配置の例
(50) 第三のノズル設置方法のノズルの可動範囲の例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ドラム、掻き取り刃、溶融液供給口およびフレーク状物回収口を備えたフレーカーと、吸引装置を備えた溶解ドラムとを備え、前記フレーカーと前記溶解ドラムとは、ノズルが取り付けられた配管によって連通されているフレーク状化合物の製造装置。
【請求項2】
冷却ドラム、掻き取り刃、溶融液供給口およびフレーク状物回収口を備えたフレーカーと、吸引装置を備えた溶解ドラムと、溶液貯蔵槽と、ポンプとを備え、前記フレーカーと前記溶解ドラムとは、ノズルが取り付けられた配管によって連通され、前記溶解ドラムと、前記溶液貯蔵槽とは、第1のラインによって連通され、前記溶液貯蔵槽と、前記ポンプとは、第2のラインによって連通され、前記ポンプと、前記溶解ドラムとは、第3のラインによって連通されているフレーク状化合物の製造装置。
【請求項3】
化合物がジヒドロキシベンゼンである請求項1または2に記載の製造装置。
【請求項4】
化合物の溶融液を凝固して、得られた化合物の凝固物を掻き取り刃にて剥離してフレーク状とするフレーク状化合物の製造方法であって、請求項1に記載の製造装置を用い、下記吸引工程(1)、下記溶解工程(1)および下記回収工程(1)を含むフレーク状化合物の製造方法。
吸引工程(1):前記フレーカー内に蓄積する化合物由来の綿状物および/または粉塵を前記ノズルから吸引することにより、前記溶解ドラムへ移送する工程
溶解工程(1):前記溶解ドラムに溶媒を添加して、化合物由来の綿状物および/または粉塵を溶解して化合物が溶解した溶液を得る工程
回収工程(1):前記溶解ドラムから化合物が溶解した溶液を抜き出して、化合物を回収する工程
【請求項5】
化合物の溶融液を凝固して、得られた化合物の凝固物を掻き取り刃にて剥離してフレーク状とするフレーク状化合物の製造方法であって、請求項2に記載の製造装置を用い、下記吸引工程(2)、下記溶解工程(2)、下記貯蔵工程、下記循環工程および下記回収工程(2)を含むフレーク状化合物の製造方法。
吸引工程(2):前記フレーカー内に蓄積する化合物由来の綿状物および/または粉塵を前記ノズルから吸引することにより、前記溶解ドラムへ移送する工程
溶解工程(2):前記溶解ドラムに溶媒を添加して、化合物由来の綿状物および/または粉塵を溶解して化合物が溶解した溶液を得る工程
貯蔵工程:前記溶解ドラムから前記溶液貯蔵槽へ化合物が溶解した溶液を移送して、貯蔵する工程
循環工程:前記溶液貯蔵槽から前記溶解ドラムへ化合物が溶解した溶液を循環する工程
回収工程(2):前記循環工程における、前記第2のラインまたは前記第3のラインから化合物が溶解した溶液を抜き出して、化合物を回収する工程
【請求項6】
化合物がジヒドロキシベンゼンである請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
ジヒドロキシベンゼンがハイドロキノンである請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
ジヒドロキシベンゼンがレゾルシンである請求項6に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−217869(P2012−217869A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82539(P2011−82539)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】