説明

フレーク状着色金属顔料と、これを用いた塗料、及びフレーク状着色金属顔料の製造方法

【課題】 多彩な色彩を取ることが可能であり、意匠性に様々なバリエーションを得ることが可能となる着色金属顔料とその製造方法、及びこの着色金属顔料を用いた塗料の提供を目的とする。
【解決手段】 基材表面にアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂等からなる離型剤を塗布し、その離型剤の上に所望の金属を無電解めっき法により析出させて無電解めっき被膜を形成し、該無電解めっき被膜表面に無電解めっき法及び/または電気めっき法により該無電解めっき被膜と異なる金属、又は合金を析出させてめっき被膜を形成し、次いで離型剤を溶媒中で溶解除去し、超音波振動やホモジナイザーを用いて粉砕して厚さが0.02〜0.4μmで径が2〜500μmのフレーク状着色金属含量を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色金属顔料に関し、より詳しくは、表面と裏面との色彩が異なる金属又は合金で構成されたフレーク状着色金属顔料と、これを用いた塗料、及びフレーク状着色金属顔料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材を光沢化する手段としては、基材に直接、湿式めっきや乾式めっきを施す方法やメタリック塗装によって光沢化する方法がある。特にメタリック塗装は手法が簡単で広く用いられている方法である。
メタリック塗装は、メタリック顔料を混入させた塗料を基材表面に塗布し、メタリック顔料を保護するために、その上にクリアコートを塗布するものであり、メタリック顔料としては主としてアルミニウムフレークを基体粒子とするものが用いられている。
【0003】
近年、消費者の嗜好の多様化に伴って、多用な色彩をもつ高光輝性メタリック顔料が望まれている。しかし、アルミニウムフレークは、元来無彩色であり、銀白色光沢を呈する顔料であるため、そのままでは、上記の消費者の要望を満足させることができない。
この問題を解決するものとして、隠蔽力の高い金属粒子の表面を酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタニウムなどの干渉膜で被覆することにより着色して得られた着色金属顔料に関する技術が幾つか開示されている。
【0004】
たとえば、特許文献1、特許文献2には、金属粒子の表面に酸化チタニウムをゾル−ゲル法により析出させる方法が開示されている。しかし、この方法では、彩度の高い着色金属顔料は得られず、かつ、酸化チタニウム層が活性の高いアナターゼ相になるため、得られた金属粒子を顔料として塗料に配合した場合に樹脂の劣化が促進され、耐候性が低下する。
【0005】
また、特許文献3、特許文献4、特許文献5には、気相法により金属粒子表面に酸化鉄、酸化チタニウム、金属酸化物などと炭素、金属、金属酸化物などとの複合相を得る方法が開示されている。しかし、気相法を用いて金属粒子表面に複合層を設ける場合は金属粒子を流動化させつつ、金属酸化物の前駆体を供給し、加熱析出させる必要がある。このため、特殊な装置を必要とする上、金属粒子の粉塵爆発の危険性が大きくなる。さらに金属酸化物の前駆体は毒性の強いものが多いため取扱いが困難である。
【0006】
さらに、特許文献6には、屈折率1.8以下の無色の被覆層と屈折率2.0以上の選択的吸収層との2層構造を基本とする多層被覆金属顔料に関する技術が開示されている。しかし、この技術は気相法により、または溶液中で金属化合物を加水分解して分解生成物である金属酸化物を金属粒子表面に堆積させ、金属酸化物層を形成するものである。
気相法には前記のような欠点があり、溶液中で金属化合物を加水分解して金属酸化物層を形成する方法では、加水分解反応が多量の水を含む塩基性もしくは酸性雰囲気で行われるため、処理工程中に金属粒子と水とが反応し、金属粒子が凝集するおそれや、金属粒子と水との反応が暴走し制御できなくなるおそれがある。
【0007】
そして、特許文献7、特許文献8には、アルミニウム粉末と金属塩とキレート化合物を混合し、金属酸化物層をアルミニウム粉末表面に沈着させる方法が開示されている。しかし、特許文献7に開示された方法は、水溶液中で行われるためにアルミニウム粉末が処理溶液と激しく反応する危険性が大きく、多量の水素ガスの発生、アルミニウム粉末と水とが反応することにより発生する著しい発熱、アルミニウム粉末の凝集などの問題が生じるおそれがあるため実用的ではない。
【0008】
また、特許文献8に開示された方法でも、アルミニウム粉末と処理溶液との激しい反応による上記のような問題の発生を避ける事は困難である上に、反応が酸性から中性の領域で行われるため、金属化合物の析出が効率的に起こらず、未反応金属塩が反応終液中に多量に残るという問題も生じる。
また、これらの方法で得られる金属酸化物層は、水を含む水和膜であるため、金属酸化物層を有する顔料を用いて塗料を得、この塗料を塗布して塗膜を得た場合、得られた塗膜が不完全となる傾向があり、良好な発色が得られない場合が多いという問題がある。加えて、塗料に含有される樹脂などのバインダとの密着性が悪く、得られた塗膜の耐久性に問題を生じる傾向がある。
【特許文献1】特開平1−110568号公報
【特許文献2】特開平2−669号公報
【特許文献3】特開昭56−120771号公報
【特許文献4】特開平1−311176号公報
【特許文献5】特開平6−32994号公報
【特許文献6】特開平8−209024号公報
【特許文献7】特開昭51−150532号公報
【特許文献8】特開昭63−15861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、前記した欠点を有さないフレーク状着色金属顔料と、これを用いた塗料、及びフレーク状着色金属顔料の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは種々の検討を試みた結果、フレーク状着色金属材料をアルミニウム粒子とその表面に設けられた酸化物被膜で形成するのではなく、全てを金属若しくは合金製とすれば、アルミニウムフレークの表面に酸化膜を形成するため、あるいはしたことにより発生する上記問題点が発生しないことを見出し、本発明に至った。
即ち、請求項1記載の本発明は、フレーク状金属粉又はフレーク状合金粉(以下、「フレーク状金属粉等」と記載する。)と、該フレーク状金属粉等の表面に該フレーク状金属粉等と異なる金属又は合金で設けられた金属被膜とから構成される着色金属顔料である。
そして、請求項2記載の発明は、前記発明に加えて、金属被膜が複数層から構成される着色金属顔料である。
そして、請求項3記載の発明は、請求項1又は2の発明においてフレーク状金属粉等を構成する材料が、金、銀、パラジウム、ニッケル、銅、コバルト等の金属又はこれらを主成分とする合金の中から選ばれるいずれか一つで構成され、該フレーク状金属粉等の表面に設けられる金属被膜を構成する材料が、金、銀、パラジウム、ニッケル、銅、コバルト等の金属又はこれらを主成分とする合金の中から選ばれる少なくとも一種で、かつフレーク状金属粉等を構成する材料でないものであることを特徴とするフレーク状着色金属顔料である。
そして、請求項4記載の発明は、請求項1〜3記載のいずれかの発明において、フレーク状金属粉等が無電解めっき法で形成されたものであり、該フレーク状金属粉等の表面に設けられた金属被膜が無電解めっき法及び/又は電解めっき法で形成されたフレーク状着色金属顔料である。
そして、請求項5記載の発明は、請求項1〜4記載のいずれかの発明において、その厚さが0.02〜0.4μmで径が2〜500μmのフレーク状着色金属顔料である。
【0011】
そして、請求項6記載の発明は、前記請求項1〜5記載のいずれかのフレーク状着色金属顔料を用いた塗料である。
【0012】
そして、請求項7記載の発明は、上記フレーク状着色金属顔料の製造方法であって、以下の工程を主要工程とするものである。
1) 基材表面に離型剤を塗布する工程
2) 離型剤の上に所望の金属又は合金を無電解めっき法により析出させて無電解めっき被膜を形成する工程
3) 該無電解めっき被膜表面に無電解めっき法及び/または電気めっき法により、該無電解めっき被膜と異なる金属又は合金を析出させて、異なる金属又は合金で構成される複数層のめっき被膜を形成する工程。
4) 前記めっき被膜を粉砕する工程
そして、請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、1)の工程で用いる基板が金属製、樹脂フィルム製、ガラス製の内のいずれかを用いるものである。
そして、請求項9記載の発明は、請求項7又は8記載の発明において、1)の工程で離型剤を塗布するに際して、離型剤を溶剤に0.5〜10質量%の範囲で溶解し、得た溶液をスプレー法又は浸漬法によって塗布することを特徴とするものである。
そして、請求項10記載の発明は、請求項7〜9記載のいずれかの発明において、用いる離型剤がアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂等の少なくとも一つであるものである。
そして、請求項11記載の発明は、請求項7〜10記載のいずれかの発明において、4)の工程に先立ち、前記めっき被膜が設けられた基材を溶媒中に浸漬し、該めっき被膜と基材とを分離することを特徴とするものである。
そして、請求項12記載の発明は、請求項7〜11記載のいずれかの発明において、めっき被膜を粉砕する手段として超音波振動又はホモジナイザーを用いるものである。
そして、請求項13記載の発明は、請求項7〜10記載のいずれかの発明において、4)の工程において、前記複数層のめっき被膜が設けられた基板を溶媒中に浸漬し、超音波振動を付与して離型剤の溶解とめっき被膜の粉砕とを同時に行うものである。
そして、請求項14記載の発明は、請求項7〜13記載のいずれかの発明において、離型剤を溶解する溶媒として酢酸ブチル、キシレン、シクロヘキサン、メチルエチルケトンから選ばれる少なくとも一種を用いるものである。
そして、請求項15記載の発明は、請求項7〜14記載のいずれかの発明において、得られるフレーク状着色金属顔料の厚さを0.02〜0.4μmとし、径を2〜500μmとするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフレーク着色金属材料は、従来品のようにアルミニウム粒子表面に酸化物皮膜を設けたものでなく、フレーク状金属等の表面に金属又は合金被膜を設けたものである。従って、酸化物被膜由来の上記従来技術が有する問題点はない。
また、本発明のフレーク状着色金属顔料の表面はめっき表面の光沢が損なわれることなく存在するため、また、フレーク状金属粉等とその表面に設けられる金属又は合金被膜とが、それぞれ異なる材質を用いるため、本発明のフレーク状着色金属顔料を用いた塗料では多彩な色彩を取ることが可能であり、意匠性に様々なバリエーションを得ることが可能となる。
また、本発明の方法は無電解めっき法及び/又は電解めっき法を用いて基材表面に異なる金属又は合金からなる複数層のめっき被膜を作製し、これを基材表面から剥がし、粉砕することによりフレーク状着色金属顔料を得る。このため、高価で大きな装置を必要とする乾式法より製造コストを大幅に低下できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本請求項1記載の発明において、着色金属顔料の形状をフレーク状とするのは、塗料としたときの下地の隠蔽性と意匠性からである。また、フレーク状の着色金属顔料が塗膜中で積層されることにより、塗膜中への水分等の浸透が妨げられるからである。
また、フレーク状金属粉等の表面に該フレーク状金属粉等と異なる金属又は合金で金属被膜を設けるのは、こうすることにより、表裏が異なる金属又は合金で構成されたフレーク状着色金属顔料となり、これを用いた塗料では単純な金属粉を顔料とした場合とは異なる意匠性を得ることが可能となるからである。
また、この金属又は合金被膜は複数層で構成しても良い。例えば、該フレーク状金属粉等と密着性の悪い金属又は合金を被膜として積層する場合は、両者の間に無電解銅めっき等を介在させることが有効だからである。
【0015】
本発明のフレーク状金属粉等の材料としては、無電解めっき法によって作製することができる金属や合金であれば特に限定されないが、金、銀、パラジウム、ニッケル、銅、コバルト等の金属、又はこれらを主成分とする合金の中から選ばれるいずれか一種とすれば、既に確立された無電解めっき技術を適用できることから好ましい。
このフレーク状金属粉等の表面に設ける金属又は合金被膜の材質も、前記と同様の理由により金、銀、パラジウム、ニッケル、銅、コバルト等の金属、又はこれらを主成分とする合金の中から選ばれる少なくとも一種とすることが好ましい。なお、本発明の目的よりこの金属被膜の材質はフレーク状金属粉等の材質と異なるものとすることは言及するに及ばない。ただし、被膜が複数の金属や合金で構成される場合には、被膜の最外層(表面となる層)がフレーク状金属粉等の材質と異なる材質となればよい。
【0016】
本発明のフレーク状着色金属顔料の厚みを0.02μm以上とし、一般的なめっき被膜の厚さより薄い0.4μm以下としたのは、厚みが0.02μm未満では製造工程で良好な金属粉とならず、0.4μmを越えると自動車部品や家電部品などの基材に金属光沢調の装飾を行う顔料としては厚く使用しづらいからである。加えて、安価なものとならないからである。
【0017】
また、本発明のフレーク状着色金属顔料の径を2〜500μmとしたのは、径が2μm未満の場合には、塗料として用いた場合に光沢等の意匠性を発揮することが出来ず、500μmを越えると顔料が一定方向に配向し難くなり、顔料同士の重なりが発生し、小さすぎる場合と同様に光輝感が出なくなり意匠性を損なうことになるからである。
【0018】
本発明のフレーク状着色金属顔料を用いた塗料では、多種多様な意匠性の実現が可能である。また、複数種の本発明のフレーク状着色金属顔料を混合して塗料とすれば、意匠性の多様性は更に増す。
【0019】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の方法では、まず、金属板、樹脂フィルム、ガラス板等の平滑な基材表面に、離型剤を均一に塗布する。塗布する方法としては、離型剤を溶剤に0.5〜10質量%の範囲で溶解し、得た液をスプレー法式又は浸漬法によって塗布し乾燥する。離型剤の種類は、めっき液に基材を浸漬したときにめっき液中に溶解したり、めっき液中で剥離を起こさないものであれば限定しない。取り扱い性、価格等の観点よりアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂等を用いることができる。こうした離型剤を溶解するために用いる溶媒としては、酢酸ブチル、キシレン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン等を単独、あるいは混合して用いることが可能である。
【0020】
離型剤の上に無電解めっき法により所望の金属又は合金を所望の厚さに析出させるが、この所望の金属又は合金が前記するフレーク状金属粉等を構成する材料となる。この無電解めっきは、所望の金属又は合金に対して一般的に推奨される条件で行えば良く、特に限定するものではない。なお、所望の金属又は合金は無電解めっき法が適用できる金属であれば良く、特に限定しないが、前記した理由で金、銀、パラジウム、ニッケル、銅、コバルト等の金属又はこれらを主成分とする合金の中から選ばれるいずれか一つとすることが好ましい。
【0021】
次に、前記方法で得られた無電解めっき被膜の上に、無電解めっき膜と異なる材質の金属又は合金を無電解めっき又は電解めっきにより析出させて被膜を形成する。この金属又は合金の膜が前記したフレーク状金属粉等の表面に設けられた金属又は合金被膜となる。この金属又は合金被膜を複数種の金属又は合金で積層する場合には無電解めっき又は電解めっきを繰り返す。この際の金属又は合金の材質も無電解めっき法や電解めっき法が適用できる金属であれば良く、特に限定しないが、前記した理由で金、銀、パラジウム、ニッケル、銅、コバルト等の金属又はこれらを主成分とする合金の中から選ばれるいずれか一つとすることが好ましい。なお、無電解めっきまたは電解めっきの条件は対象とする金属に対して一般的に推奨されるもので良い。
【0022】
本発明において、離型剤上に設けられる異なる金属又は合金で構成される複数層のめっき被膜の厚さを、めっき被膜全体で0.02〜0.4μmとする。理由は前記したとおりである。
【0023】
次に、めっき被膜を粉砕するために離型剤を溶解し、基材とめっき被膜を分離する。この際に用いる溶剤としては、離型剤を溶解する際に用いたものでよい。例えば、酢酸ブチル、キシレン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン等を単独、若しくは混合して用いることが可能である。
離型剤の溶解は、前記めっき被膜が設けられた基材を丸ごと溶剤に浸漬し、離型剤を溶解するのが便利である。離型剤の溶解時に、超音波をあわせて用いると、離型剤の溶解と同時にめっき被膜の粉砕が可能となるので好都合である。この際の超音波振動の出力は用いる容器により最適値が異なることになるので、適宜、あらかじめ求めておくことが好ましい。また、超音波をかける時間については、短ければ、粉砕・剥離が不十分となり、長くしすぎると過粉砕になり、2〜500μmの粒径のフレーク粉を得るという目的が達成できない。目的の粒径のフレーク状着色金属顔料を収率よく得るための条件は溶解に用いる装置の容量、用いる溶剤、めっき被膜の厚さ等に依存するため、あらかじめ求めておくことが好ましい。
【0024】
また、離型剤の溶解とめっき被膜の粉砕とを別個にすることも可能である。例えば、離型剤の溶解に、後工程である塗料化に支障のある溶剤を用いる場合には、離型剤を溶解してめっき被膜を分離した後、適当な溶媒中にめっき被膜を浸漬し、超音波を用いて粉砕するか、ホモジナイザーを用いて粉砕して2〜500μmのフレーク状着色金属顔料を得る。この際の粉砕条件もめっき被膜の厚さ、溶媒量等に左右されるため、予め条件を求めておくことが好ましい。
なお、粉砕条件を特定せずに粉砕しておき、遠心分離器や重力沈降などを利用して粒径2〜500μmのものを選別して得るという方法も、効率は悪いもののある。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
本発明は無電解めっき法が適用できる金属であればどの金属または合金でも可能であるが、本例ではNiを用いた。無電解Ni法に従うと、得られる被膜はNi−P合金被膜となる。本例では、このNi−P合金被膜の上に無電解金めっきを設けた。こうして、光沢グレー色調と光沢金色色調で構成されたフレーク状金属粉を作製した。
まず、基材には10cm角、厚さ0.050mmのPETフィルムを使用した。
そして、用いた離型剤溶液は、ウレタン樹脂を酢酸ブチル40体積%、キシレン40体積%、シクロヘキサノン20体積%の混合溶媒に溶解して得た、濃度2質量%のものである。
本例では、この離型剤溶液の中に下地基材を0.5分間浸漬し、自然乾燥させて基材表面に均一な離型剤膜を構成した。
これをコンディショニングし、キャタリストとアクセレレーターを用いて離型剤表面にめっき核を付与した。次いで、表1に示す無電解Niめっき条件に従って無電解Niめっきを行い、厚さ0.05μmのNi-P合金皮膜を作製した。その後、表1に示す無電解Auめっき条件に従って、Ni-P合金被膜層の上に0.05μm無電解Auめっき被膜を設けた。
その後、めっき被膜付き基材をメチルエチルケトン中に浸漬し、離型剤を溶解してNi-P合金皮膜とAu皮膜とからなる二層金属箔を回収した。
次に、回収した二層金属箔層を溶媒中に入れたまま、出力100W、時間1分の超音波を付与して粉砕し、約50μmの大きさのフレーク状着色金属顔料を得た。
得られたフレーク状着色金属粉を用いて塗料を構成し、金属光沢調の装飾を行うプラスチックス性基材に塗布して乾燥させたところ、Auの光反射性や色調とNi-Pの光沢性のあるグレーとの中間の色調を示す塗膜を得ることができた。
【0026】
【表1】

【0027】
(実施例2)
基材として実施例1と同様に10cm角、厚さ0.050mmのPETフィルムを使用した。
用いた離型剤は、ポリエステル樹脂を酢酸ブチル40体積%、キシレン40体積%、シクロヘキサノン20体積%の混合溶媒に溶解して得た、濃度5質量%のものである。この離型剤溶液の中に下地基材を0.5分間浸漬し、自然乾燥させて基材表面に均一な離型剤膜を構成した。
これをコンディショニングし、キャタリストとアクセレレーターを用いてめっき核を付与した。次に表2に示す無電解Cuめっき条件に従って無電解Cuめっきを行い、厚さ0.05μmのCu皮膜を作製した。その後、表2に示す無電解Auめっき条件に従って、無電解Cuめっき被膜の上に厚さ0.05μmの無電解Auめっき被膜を設けた。
その後、めっき被膜付き基材をメチルエチルケトン中に浸漬し、離型剤を溶解してCuとAuとからなる二層金属箔を回収した。
次に、回収した二層金属箔をメチルエチル件中に浸漬したまま、100W、時間5分の超音波を付与して粉砕し、約15μmの大きさのフレーク状着色金属顔料を得た。
得られたフレーク状着色金属粉を用いて塗料を構成し、金属光沢調の装飾を行うプラスチックス性基材に塗布して乾燥させたところ、Auの光反射性や色調とCuの光沢性のある銅色との中間の色調となるダークオレンジ色を示す塗膜を得ることができた。
【0028】
【表2】

【0029】
(実施例3)
実施例1と実施例2とで得られた二種類のフレーク状着色金属材料を1:1の割合で混合し、得られたフレーク状着色金属粉を用いて塗料を構成し、金属光沢調の装飾を行うプラスチックス性基材に塗布して乾燥させたところ、Auの光反射性や色調とNi-Pの光沢性のあるグレーと銅色とが混合された中間の色調である黄土色を示す塗膜を得ることができた。
【0030】
(実施例4、5)
用いた離型剤の濃度を0.5質量%(実施例4)、10質量%(実施例5)とした以外は実施例1と同様にしてフレーク状着色金属顔料を得た。得られたフレーク状着色金属顔料は実施例1のものと同様であった。
【0031】
(比較例1、2)
用いた離型剤の濃度を0.1質量%(比較例1)、12質量%(比較例2)とした以外は実施例1と同様にしてフレーク状着色金属顔料を得る試みをおこなった。比較例1では得られた無電解めっき皮膜がうまく剥離せず、比較例2では無電解めっき中に皮膜が剥離し、良好な無電解めっき皮膜が得られなかった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーク状金属粉又はフレーク状合金粉と、該フレーク状金属粉又はフレーク状合金粉の表面に該フレーク状金属粉又はフレーク状合金粉と異なる金属又は合金で設けられた金属被膜とから構成されることを特徴とするフレーク状着色金属顔料。
【請求項2】
金属被膜が複数層から構成される請求項1記載のフレーク状着色金属顔料。
【請求項3】
フレーク状金属粉又はフレーク状合金粉を構成する材料が、金、銀、パラジウム、ニッケル、銅、コバルト等の金属又はこれらを主成分とする合金の中から選ばれるいずれか一つで構成され、該フレーク状金属粉又はフレーク状合金粉の表面に設けられる金属被膜を構成する材料が、金、銀、パラジウム、ニッケル、銅、コバルト等の金属又はこれらを主成分とする合金の中から選ばれる少なくとも一種で、かつフレーク状金属粉又はフレーク状合金粉を構成する材料でないものであることを特徴とする請求項1又は2記載のフレーク状着色金属顔料。
【請求項4】
フレーク状金属粉又はフレーク状合金粉が無電解めっき法で形成されたものであり、該フレーク状金属粉又はフレーク状合金粉の表面に設けられた金属被膜が無電解めっき法及び/又は電解めっき法で形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3記載のいずれかのフレーク状着色金属顔料。
【請求項5】
その厚さが0.02〜0.4μmで径が2〜500μmであることを特徴とする請求項1〜4記載のフレーク状着色金属顔料。
【請求項6】
請求項1〜5記載のいずれかのフレーク状着色金属顔料を用いたことを特徴とする塗料。
【請求項7】
請求項1〜5記載のいずれかのフレーク状着色金属顔料の製造方法であって、以下の工程を主要工程とするものである。
1) 基材表面に離型剤を塗布する工程
2) 離型剤の上に所望の金属又は合金を無電解めっき法により析出させて無電解めっき被膜を形成する工程
3) 該無電解めっき被膜表面に無電解めっき法及び/または電気めっき法により、該無電解めっき被膜と異なる金属又は合金を析出させて、異なる金属又は合金で構成される複数層のめっき被膜を形成する工程。
4) 前記めっき被膜を粉砕する工程
【請求項8】
請求項7記載の発明において、1)の工程で用いる基板が金属製、樹脂フィルム製、ガラス製の内のいずれかを用いるものであることを特徴とするフレーク状着色金属顔料の製造方法。
【請求項9】
前記1)の工程で離型剤を塗布するに際して、離型剤を溶剤に0.5〜10質量%の範囲で溶解し、得た溶液をスプレー法又は浸漬法によって塗布することを特徴とする請求項7又は8記載のフレーク状着色金属顔料の製造方法。
【請求項10】
前記1)の工程で用いる離型剤がアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂等の少なくとも一つであることを特徴とする請求項7〜9記載のいずれかのフレーク状着色金属顔料の製造方法。
【請求項11】
前記4)の工程に先立ち、前記めっき被膜が設けられた基材を溶媒中に浸漬し、該めっき被膜と基材とを分離することを特徴とする請求項7〜10記載のいずれかのフレーク状着色金属顔料の製造方法。
【請求項12】
前記4)の工程において、めっき被膜を粉砕する手段として超音波振動又はホモジナイザーを用いることを特徴とする請求項7〜11記載のいずれかのフレーク状着色金属顔料の製造方法。
【請求項13】
前記4)の工程において、前記めっき被膜が設けられた基板を洗浄後、そのまま溶媒中に浸漬し、超音波振動を付与して離型剤の溶解とめっき被膜の粉砕とを同時に行うことを特徴とする請求項7〜10記載のいずれかのフレーク状着色金属顔料の製造方法。
【請求項14】
離型剤を溶解する溶媒として酢酸ブチル、キシレン、シクロヘキサン、メチルエチルケトンから選ばれる少なくとも一種を用いることを特徴とする請求項7〜13記載のいずれかのフレーク状着色金属顔料の製造方法。
【請求項15】
そして、請求項15記載の発明は、請求項7〜14記載のいずれかの発明において、得られるフレーク状着色金属顔料の厚さを0.02〜0.4μmとし、径を2〜500μmとする請求項7〜14記載のいずれかのフレーク状着色金属顔料の製造方法。







【公開番号】特開2007−169455(P2007−169455A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368945(P2005−368945)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】