説明

フレーバー組成物の製造方法

【課題】本発明は、多数のアミノ酸のうち複数のアミノ酸の組み合わせと糖類とを用いて加熱反応を行うことにより、ロースト臭などの香気成分を生成させ、前記香気成分を含むフレーバー組成物を得ること、該フレーバー組成物を真空包装された肉類の調味料に用いて、焼成せずに調理して簡易にグリル感を付与し得ること、加熱温度が70〜80℃のハム商品に添加し、香ばしさやコク味を付与し得ること、通常の調味料にもロースト臭を付与し得るフレーバー組成物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸又はそのナトリウム塩のモル比が1.0:0.0〜0.25:0.75であるアミノ酸類と、砂糖との配合物を加熱し、ピラジン類を含有する香気成分を生成させるフレーバー組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレーバー組成物の製造方法に関し、より詳細には、特定のアミノ酸と砂糖とを加熱反応させることにより、ピラジン類等の香気成分を含むフレーバー組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造の分野では、香り、味などは重要な要素であり、香味の改善に、例えば、メイラード反応(アミノカルボニル反応ともいう)を利用する場合がある。メイラード反応は、アミノ基とカルボニル基との反応が出発点となり、炭素−窒素二重結合を有するいわゆるシッフ塩基と称される化合物を生成し、さらに近接して糖類のヒドロキシル基があるとアマドリ転位反応を経て脱水反応など各種の反応を行い、多彩な生成物が生成される反応である。食品を加熱すると生の状態とはまったく異なる香気が生成する。これは加熱によって食品中の成分が低分子化合物に分解されて反応が連鎖して香気が生成するが、これはアミノ酸と還元糖との加熱によるアミノカルボニル反応であり、食品における香りの生成に重要な役割を果たしている。該アミノカルボニル反応は、用いる還元糖(炭水化物)、アミノ酸(たんぱく質)の種類により、また反応温度・時間・水分含量、pHなどにより大きく異なり、その結果として香気も大きく異なる。一方、還元糖とアミノ酸による加熱反応生成物の中から多くの香気成分が単離され、その化学構造が明らかにされてきた。例えば、フラン・フラノン・ピラノン類、アルデヒド類、ピロール類、ピラジン類、チアゾール類、チオフェン類、チオール類、スルフィド類など多数が知られている。
【0003】
香気と風味を向上する技術として、アミノ酸と単糖又はアミノ酸とオリゴサッカライド又はオリゴペプタイドと単糖を植物又は動物油脂と加熱し、若しくはこれらに植物乾燥粉末を加えて加熱することからなる香気と風味を豊富に含有するロースト油(例えば、特許文献1参照)や、糖及びアミノ酸を含有し、かつ醤油及び/又はだしを含有する調味液に、グルタチオン及び/又はシステインを該調味液中で溶解が可能な範囲で添加し、60〜120℃、5〜300分加熱する調味液の製造法(例えば、特許文献2参照)、Tyr−Val、Val−Tyr、Leu−Leu、Pro−Val、Val−Phe及びLys−Gluから成る群から選択されたペプチドを還元糖とメイラード反応させることによって得ることができるフレーバー活性化合物(例えば、特許文献3参照)や、分子量1000〜5000のペプチドとカルボニル化合物とのアミノカルボニル反応物を飲食品に添加する、飲食品の風味改良方法(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0004】
ところで、味に関しては、5基本味(甘味、塩味、酸味、苦味及びうま味)があり、さらに5基本味では表せないコク味があり、コク味は、厚み・ひろがり・持続性・まとまりなど、基本味ではなく、基本味の周辺をも増強する味であるといわれている。調味料において、主にコク味を付与又は増強するための技術や改良方法として、グルタミン酸ナトリウムにグルタチオンを配合するコク味の増強された食品の製造方法(例えば、特許文献5参照)や、ゼラチン、トロポミオシ及び糖及び/又はアミノ酸を含有するコク味調味料素材(例えば、特許文献6参照)や、イミダゾールジペプチド、スルホン基含有化合物、有機酸等を用いるコク味付与剤(例えば、特許文献7参照)、ピラジン化合物類を含有してなる、特にコク味を付与できる調味料(例えば、特許文献8参照)、特定のアミノ酸配列からなる、呈味特にコク味向上作用を有するペプチド(例えば、特許文献9参照)や、特定の構造式を持つ糖ペプチドを食品に特定量添加する食品又は調味料のコク味付与方法(例えば、特許文献10参照)、特定のモル比を有するグルタミン酸及び/若しくはその塩、アスパラギン酸及び/若しくはその塩を飲食品に特定量添加する飲食品へのコク味付与方法(例えば、特許文献11参照)が知られている。
【0005】
さらに、肉類を加熱した際に生ずるようなローストフレーバー、チキンフレーバー等の製造方法や促進方法、これらフレーバーの改善技術としては、β−アラニン誘導体とアミノ酸とを溶剤中で加熱反応させるチキンフレーバーの製造方法(例えば、特許文献12参照)や、肉等食品のロースト又はグリル時に、チオールの形成により芳香性ノートを発生するフレーバー付与剤の前駆物質の混合物(例えば、特許文献13参照)や、(1)獣鳥類及び/又は魚介類の肉を物理的粉砕手段及び/又は蛋白質分解酵素による粉砕手段により、平均粒径10μm〜2000μmに粉砕する工程、(2)該粉砕肉を100℃〜180℃で加熱する工程、(3)該加熱処理物を冷却した後、アミノ酸類、糖類、動植物エキス類、酵母エキス類及び動植物蛋白加水分解物から選ばれた1種又は2種以上の混合物を加えて100℃〜180℃で加熱する工程、からなる加熱調理フレーバーの製造方法(例えば、特許文献14参照)や、(a) 少なくとも1種の還元性炭水化物と少なくとも1種のアミノ酸を含む混合物を調製し;(b) 前記混合物を、前記還元性炭水化物とアミノ酸が互いに反応するのに十分な温度に保持し;(c) 前記混合物に、アラキドン酸を含み、それによって該アラキドン酸が、少なくとも50%(質量/質量)、好ましくは少なくとも65%(質量/質量)、より好ましくは少なくとも80%(質量/質量)、最も好ましくは少なくとも90%(質量/質量)、トリグリセリドのグリセリン成分に対してエステル化されている組成物を添加し;そして、(d) 前記混合物を、チキン風味が発生するのに十分な温度に保持する;チキン風味を有する組成物の製造方法(例えば、特許文献15参照)が知られている。
【0006】
しかし、L−アスパラギン酸ナトリウムを含む特定のアミノ酸類と砂糖とを加熱して、ピラジン類等の香気成分を含むフレーバー組成物の製造方法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−30663号公報
【特許文献2】特許第3458514号公報
【特許文献3】特許第4288164号公報
【特許文献4】特許第3623753号公報
【特許文献5】特公昭63−13661号公報
【特許文献6】特開平10−276709号公報
【特許文献7】特開平8−289760号公報
【特許文献8】特開平11−313635号公報
【特許文献9】特開2002−255994号公報
【特許文献10】再公表特許2004−96836号公報
【特許文献11】再公表特許2006−62181号公報
【特許文献12】特開平11−215967号公報
【特許文献13】特開平11−346706号公報
【特許文献14】特開2001−103920号公報
【特許文献15】特表2005−530481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ロースト臭などの香気成分を生成させ、前記香気成分を含むフレーバー組成物を真空包装された肉類や、加熱温度が70〜80℃のハム商品に添加し、ロースト臭、コク味を簡単な方法で付与し得るフレーバー組成物、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
アミノ酸と還元糖などの糖類とを加熱する、いわゆるメイラード反応においては、特有の香気成分を生じるが、その香気は反応に用いる原材料であるアミノ酸の種類及び糖の種類、反応条件等により変化する。食品、特にロースト風味、コク味を有する調理された肉類を得ようとする場合、加熱温度、加熱時間、香辛料等を考慮するなど、時間がかかり、調味料(香辛料)の選択など手間を要する。本発明者らは、特に豚肉、牛肉、鶏肉などの食品原料を用いて、短時間に簡単に、ロースト風味を有する食品を製造する方法に適用することができ、食肉にコク味やロースト風味を付与し得る調味料を開発するべく、20種類のアミノ酸と、糖類として砂糖、還元澱粉糖化物及びグルコースを選び、各アミノ酸と各糖との組み合わせについて加熱反応させ、生成される香気成分を解析し鋭意研究した。その結果、生成する香気成分に、ピラジン類量が多いフレーバー組成物を得ることができ、具体的にアスパラギン酸ナトリウム、又はアスパラギン酸ナトリウムとグルタミン酸と、砂糖とを混合して180℃前後、所定の時間加熱を行うことにより得られるフレーバー組成物を肉類の調理に用いると、ロースト風味、コク味等有する好ましい食品となることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、(1)L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸又はそのナトリウム塩のモル比が1.0:0.0〜0.25:0.75であるアミノ酸類と、砂糖との配合物を加熱し、ピラジン類を含有する香気成分を生成させることを特徴とするフレーバー組成物の製造方法や、(2)アミノ酸類と、砂糖との配合割合(モル比)が、1.0:1.5〜1.0:0.19であることを特徴とする上記(1)記載のフレーバー組成物の製造方法や、(3)L−グルタミン酸又はそのナトリウム塩が、L−グルタミン酸であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のフレーバー組成物の製造方法や、(4)食用油脂中で配合物を加熱することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載のフレーバー組成物の製造方法に関する。
【0011】
また本発明は、(5)上記(1)〜(4)いずれか記載の製造方法により得られたフレーバー組成物や、(6)上記(5)記載のフレーバー組成物を調味料に添加することを特徴とする香ばしくコク味を有する粉末調味料、液状調味料又はペースト状調味料や、(7)L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸又はそのナトリウム塩のモル比が1.0:0.0〜0.25:0.75であるアミノ酸類と、砂糖との配合物を食品の存在下で加熱し、該食品にピラジン類を含有する香気成分を付与することを特徴とするフレーバーが付与された食品の製造方法や、(8)アミノ酸類と、砂糖とのモル比が、1.0:1.5〜1.0:0.19であることを特徴とする上記(6)記載の食品の製造方法や、(9)食品が、牛肉、豚肉又は鶏肉の生肉であることを特徴とする上記(7)又は(8)記載の食品の製造方法に関する。
【0012】
さらに本発明は、(10)L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸又はそのナトリウム塩のモル比が1.0:0.0〜0.25:0.75であるアミノ酸類と、砂糖とを含むフレーバー組成物製造セットや、(11)アミノ酸類と、砂糖とのモル比が、1.0:1.5〜1.0:0.19であることを特徴とする上記(10)記載のフレーバー組成物製造セットや、(12)アミノ酸類と砂糖とが配合された状態で含まれていることを特徴とする上記(10)又は(11)記載のフレーバー組成物製造セットに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ピラジン類を含むフレーバー組成物を得ることができ、前記フレーバー組成物を肉類の調理時に用いたり、真空包装される調理された食品に添加し、或いはソース類などに適用して、食品材料を短時間の焼成で香ばしさ、コク味を付与し、加熱温度が70〜80℃によりハム商品に香りを付与するなど、簡易にロースト臭、コク味、グリル感等付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】7種のアミノ酸それぞれと砂糖とをラード中で反応させたことによる香気成分分析結果を示す。
【図2】L−アスパラギン酸ナトリウムと6種のアミノ酸をそれぞれ併用したアミノ酸類と砂糖とをラード中で反応させたことによる香気成分(ピラジン類)の分析結果を示す。
【図3】L−アスパラギン酸ナトリウムと6種のアミノ酸をそれぞれ併用したアミノ酸類と砂糖とをラード中で反応させたことによる香気成分(フラン類)の分析結果を示す。
【図4】L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸のモル比が0:1〜1:0であるアミノ酸類の総量が0.02molである場合のピラジン類の生成量の比較を示す。
【図5】L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸のモル比が0:1〜1:0であるアミノ酸類の総量が0.04molである場合のピラジン類の生成量の比較を示す。
【図6】L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸のモル比が3:1である本発明のアミノ酸類の総添加量を変えて添加した試験区のピラジン類の生成量の比較を示す。
【図7】L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸のモル比が0:1〜1:0であるアミノ酸類の総量が0.02mol又は0.04molである場合のピラジン類とフラン類の生成関係を示す。
【図8】砂糖の添加量の違いによるピラジン類の生成量の比較を示す。
【図9】アミノ酸総量0.02molに対して砂糖の配合割合を変えて生成するフラン類の分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のフレーバー組成物の製造方法としては、L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸又はそのナトリウム塩のモル比が1.0:0.0〜0.25:0.75であるアミノ酸類と、砂糖との配合物を加熱し、ピラジン類を含有する香気成分を生成させる香気成分を含有する方法であれば特に制限されず、また、上記砂糖としては、通常用いられる上白糖、中白糖、三温糖、グラニュー糖、粉砂糖、中ザラ糖等を用いることができる。
本発明においてピラジン類が生成する機構は、砂糖(スクロース)が還元糖でないことから、前述したメイラード反応によるものかどうか明らかでないが、グルコースとフルクトースがグリコシド結合した二糖類の砂糖は、170℃以上に加熱されカラメル化するときに、その一部がグルコースとフルクトースに分解し、還元糖であるこのグルコースとフルクトースがアミノ酸と反応してピラジンを生じるものと推測できなくもない。
本発明において特定のアミノ酸類と特定の糖を選択した理由を以下に詳述する。
試験方法:豚肉にそれぞれのアミノ酸、糖を添加し、よく混ぜてから180℃で10分間加熱する。表1には、試験区1〜4として、アミノ酸(塩)単品に対する、糖無添加や3種類の糖類(砂糖、アマミール、グルコース)配合を示す。なお、「アマミール」は、林原株式会社製の商標名であり、低甘味の還元澱粉糖化物である。表2には、豚肉200gと糖類(砂糖)10gと20種類のアミノ酸(塩)の分子量、添加量(豚肉100g当たり0.01mol相当)を示す。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
表1に示す糖類と、表2に示す20種類のアミノ酸(塩)のそれぞれをその所定量用いて加熱し、得られた反応物について、3名のパネラーにより、官能評価を行った。3名全員がロースト臭(香ばしい匂い)と答えた場合○、生臭い、豚臭い、大豆臭、毛が焦げた匂い、青臭い匂い、薬品臭、硫黄臭など好ましくない匂いと答えた場合×、それ以外は△で表した。その官能評価の結果を表3に示す。
【0019】
【表3】

【0020】
表3の示す官能評価の結果から明らかなように、砂糖とアミノ酸との加熱反応において、ロースト臭が発現したアミノ酸(塩)は、L−リジン塩酸塩、L−トレオニン、L−プロリン、DL−アラニン、グリシン、グルタミン酸及びL−アスパラギン酸ナトリウムの7つの場合であった。
【0021】
[7つのアミノ酸と砂糖との反応試験]
官能評価結果から選択された前記7つのアミノ酸(塩)単品と砂糖をラード中で反応させ、香気成分解析を行った。香気成分の解析方法として、香気成分の捕集は、ダイナミックヘッドスペース法を採用した。また、捕集した香気成分の分析は、GC/MC法を採用した。
ダイナミックヘッドスペース法:
・試料20gを香気捕集用三角フラスコにセットする。
・恒温槽・試料温度30℃に安定させた後、高純度窒素ガスで香気を捕集管に導入する。
・高純度窒素ガス流量:20ml/min for 60min=total 1200ml at 30℃
・香気捕集管はTENAX TNを使用した。
GC/MC 分析条件
・香気を捕集した捕集管に内部標準物質として0.1%benzyl alcohol 1μLを添加した。
・GERSTEL社TDS(熱脱着装置)にてAgilent社GC/MCに導入
・GERSTEL社TDS(熱脱着装置)条件
キャリアーガス:高純度ヘリウムガス 21psi
熱脱着温度:210℃
CIS4:−150℃→210℃
CTS2:−150℃→210℃
・Agilent GC/MC 測定条件
カラム:J&W DB-WAX 60m×0.32mm I.d.×0.25μm
キャリアーガス:高純度ヘリウムガス 21psi at 40℃ 定流量
昇温条件:40℃(hold 2.5min)→5℃/min→210℃(hold)
分析時間:75min
EI 測定:マスレンジ20〜350
【0022】
7つのアミノ酸(塩)単品と砂糖をラード中で反応させたことにより生じた香気成分を、前記香気成分解析法により解析した結果を図1に示す。図1におけるAREA数値は0.1%benzyl alcohol 1μL(内部標準物質)を1E+09にしたものである。図1から、最も多くピラジン類を生成したのは、アスパラギン酸ナトリウムと砂糖との反応によるものであることが分かった。次に多くピラジン類を生成したのは、DL−アラニン、L−トレオニンそれぞれの砂糖との反応による順であった。
【0023】
砂糖との反応物では、L−アスパラギン酸ナトリウムがピラジン類を一番多く生成したが、香ばしさの風味が単調であるため、風味の改善を目的として、他の6種類のアミノ酸(塩)、すなわちL−リジン塩酸塩、L−トレオニン、L−プロリン、DL−アラニン、グリシン、L−グルタミン酸をL−アスパラギン酸ナトリウムとそれぞれモル比1:1で組み合わせてラードを溶媒として180℃、10分間反応を行った。それぞれについて香気成分解析を行った。
ここでの香気成分解析方法としては、前記詳述したダイナミック2ヘッドスペース法による香気成分捕集及びGC/MC分析条件を採用した。その結果を図2に示す。図2に示すAREA数値は0.1%benzyl alcohol 1μL(内部標準物質)を1E+09にした場合の数値である。
【0024】
図2に示すピラジン類の香気成分解析結果から、L−アスパラギン酸ナトリウム、リジン塩酸塩、グリシン又はL−グルタミン酸との組み合わせがピラジン類を多く生成していることが分かった。一方、香気の官能評価では、L−アスパラギン酸ナトリウムとグルタミン酸の組み合わせが最も良い香ばしい香りであった。
フラン類の香気成分解析結果では、L−アスパラギン酸ナトリウムとグルタミン酸の組み合わせが最も多いものであった(図3参照)。
L−アスパラギン酸ナトリウムにグルタミン酸を組み合わせることで、ピラジン類の生成と共にフラン類も多く生成され、そのため、甘いロースト臭を発現し、官能的に風味が好ましく感じられるのである。ピラジン類にフラン類が適量混じり合うことで醤油を焦がしたような香りとなる。
【0025】
次に、本発明に係るL−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸の配合比率について検討した。
L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸の配合量(mol)と総アミノ酸量、及び濃度を表4に示す。表4に記載のA〜Eの欄は、L−アスパラギン酸ナトリウムとグルタミン酸の比率が異なる試験区を示し、そのアミノ酸総量が0.02molであり、また、2A〜2Eの欄は、アミノ酸量がA〜E欄の試験区の2倍を意味し、1/2D、1/4D欄はアミノ酸量がD試験区の1/2、1/4であることを示す。D試験区の比率でピラジン類の生成量が多かったため、D試験区を選択し、濃度の検討を行った。表4のアミノ酸のモル濃度で表したものを(g)単位で、砂糖(g)、牛脂(g)とともに配合量を表5に示す。今回実施した試験区における前記の量をアミノ酸のモル分率及び今回実施した試験区を○で示したものを表6に示す。
【0026】
【表4】

【0027】
【表5】

【0028】
【表6】

【0029】
反応は、180℃、10分間で行った。香気成分解析方法は、次の測定器を用い、その条件は以下のとおりで行った。
・リンクス・ニッカーソンの連続水蒸気蒸留装置による捕集
反応物100gにclorocyclohexaneを2μl添加し、1500mlの蒸留水中に入れた。リンクス・ニッカーソンの連続水蒸気蒸留装置を用いて1時間水蒸気蒸留を行った。蒸留によって香気成分はリンクス・ニッカーソン蒸留装置にセットしたジエチルエーテルで回収した。香気成分を含むジエチルエーテルを無水硫酸ナトリウムで脱水した。脱水したジエチルエーテルを0.5gまで濃縮し、GC/MSを用いて分析した。
・GC/MS分析条件
Agilent GC/MS(アジレント社製ガスクロマトグラフ/質量分析)測定条件
カラム:J&W DB-WAX 60m×0.32mm I.d.×0.25μm
キャリアーガス:He 21psi at 40℃ 定流量
昇温条件:40℃→3℃/min→210℃(hold)
EI測定:マスレンジ4〜350
【0030】
[香気成分解析結果]
(1)アミノ酸の総量が0.02molである場合のピラジン類の生成量の比較を図4に示す。A,B,C,D,Eは、表4に示すL−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸の配合比率を有し、さらに、表5に示す前記アミノ酸類に加えて砂糖(スクロース)、牛脂の各配合量を有する試験区を表す。これらを180℃、10分間反応を行った。前記反応により生成した香気成分のピラジン類の生成量を図4に示す。図4から分かるように、反応に用いたアミノ酸の総量が0.02molの場合、L−アスパラギン酸ナトリウムの添加量の増加により、ピラジン類の生成量が増加することが分かった。
【0031】
(2)アミノ酸の総量が0.04molである場合のピラジン類の生成量を図5に示す。2A,2B,2C,2D,2Eは、表4に示すL−アスパラギン酸ナトリウムとグルタミン酸の配合比率を有し、表5に示す前記アミノ酸に加えて、砂糖(スクロース)、牛脂の各配合量を有する試験区を表す。アミノ酸の総量が前記A,B,C,D,Eの2倍である2A,2B,2C,2D,2E試験区において、180℃、10分間反応を行った。前記反応により生成した香気成分のピラジン類の生成量を図5に示す。
【0032】
図4、図5から分かるように、加熱反応に用いたアミノ酸の総量が0.02molや、0.04molの場合、L−アスパラギン酸ナトリウム:グルタミン酸=1.0:0.0〜0.25:0.75、好ましくは1.0:0.0〜1.0:1.0、特に1.0:0.0〜0.75:0.25であるアミノ酸類と、砂糖との配合比で加熱した場合、ピラジン類を含有する香気成分を生成することが分かる。
【0033】
(3)アミノ酸の比率は同じで、試験区Dを基準として、その1/4D,1/2D、D、2Dと、添加量を2倍ずつ増やしていき、同様に180℃、10分間反応を行った。生成したピラジン類量を図6に示す。
【0034】
図6から分かるように、反応に添加するアミノ酸量の増加により生成するピラジン類の量も増加する傾向を示したが、添加するアミノ酸の総量が0.02mol(D)と0.01mol(1/2D)の試験区では大きな差はなく、0.005molの試験区(1/4D)ではピラジン類量が少なかった。この結果油脂部200gに対するアミノ酸の添加量は0.005mol以上、0.01mol以上、0.02mol以上、0.04mol以上の順で好ましいことがわかった。
【0035】
(4)A〜E試験区と2倍の添加量とする2A〜2E試験区において、同様に反応を行い、ピラジン類とフラン類の生成関係を調べた。その結果を図7に示す。アミノ酸の中でL−アスパラギン酸ナトリウムが多いとピラジン類が多く、グルタミン酸が多いとフラン類の生成が多いことが分かった。ピラジン類が多いとロースト臭、フラン類が多いと醤油を焦がした時の匂いに近いものであることが分かった。
【0036】
[砂糖の添加量の検討]
本発明のアミノ酸の組み合わせでピラジン類の生成量が最も多い比率のD試験区において砂糖の添加量を検討した。L−アスパラギン酸ナトリウムとグルタミン酸及び砂糖の配合モル比を表7に示した。これらのアミノ酸、砂糖に加えて牛脂を用いた各配合比(g)を表8に示す。表8に示す配合比(g)で、180℃、10分間反応を行った。最低限必要な砂糖の量を決定するために、砂糖の配合量を1/2ずつ減少させて検討した。
【0037】
【表7】

【0038】
【表8】

【0039】
香気成分の解析方法は、リンクス・ニッカーソンの連続水蒸気蒸留装置による捕集方法で行い、分析は、GC/MS分析方法で前述の同一条件で行った。砂糖の配合量を表7,8に示すT1,T2,T3,T4,T5の試験区での香気成分分析結果を図8に示す。
【0040】
図8から有効にピラジン類が生成される場合は、T1〜T4で示されるアミノ酸と砂糖のそれぞれの配合割合であることが分かり、表7より、本発明の適切なアミノ酸総量と砂糖の配合割合(モル比)は、1.0:1.5〜1.0:0.19、好ましくは1.0:1.5〜1.0:0.38、より好ましくは1.0:1.5〜1.0:0.75、特に1.0:1.5の範囲であるといえる。特にアミノ酸総量と砂糖の配合割合において砂糖の比率が最小の比は1:0.19であり、0.19より小さい砂糖の使用量では、ピラジン類の生成はわずかである。実質的に香ばしい香りが生ずる比率はアミノ酸が1に対し、砂糖量は0.19以上、好ましくは0.38以上、より好ましくは0.75以上、特に1.5以上である。
【0041】
次に、アミノ酸総量0.02molに対して砂糖の配合割合を変えて生成するフラン類を測定した。結果を図9に示す。砂糖の配合が0.03molの比率(T1試験区)のときにフラン量が多く生成し、官能的に最も好ましい香ばしさとなった。
【0042】
本発明においては、反応時に粉末調味料、液状調味料又はペースト状調味料を加え、ロースト臭やコク味が付与された調味料(フレーバー組成物)を得ることができ、また、食用油脂中で反応を行って、ロースト臭やコク味を有する油脂状の調味料が得られる。また、本発明のアミノ酸類や砂糖を水溶液中で混合し、食品素材とともに加熱して反応させ、食品にフレーバーを付与することができる。さらに、本発明の反応物を粉末調味料、液状調味料又はペースト状調味料に添加してロースト臭、コク味を有するこれら調味料を得ることができる。また、油脂に添加して調理に用いる油脂に香ばしい香りを付与することができる。前記調味料としては、天然物から得られる調味料や、発酵等により得られるグルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムを含有する調味料が挙げられ、その形態は、粉末状、液状又はペースト状いずれのものでもよい。
【0043】
本発明のフレーバー組成物を用いることができる食品としては、牛肉、豚肉又は鶏肉の生肉等があり、これら生肉に本発明のフレーバー組成物を用いて、ビーフステーキ、ポークカツレツ、チキンソテーにロースト臭、コク味等を簡易に付与することができる。また、これらの肉を軽く焼いて本発明のフレーバー組成物を添加し真空パックして保存し、食する場合、単に暖めるだけでロースト臭やコク味を有する焼肉を簡単に短時間に調理することができる。他の種々の応用された肉原料を用いる食品として、ハンバーグ、各種肉の照り焼きを挙げることができる。さらに、ハム製造時に本発明のフレーバー組成物を添加し、加熱温度が70〜80℃の低温でもロースト臭、コク味等を付与することができる。
さらに本発明のフレーバー組成物製造セットとしては、L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸又はそのナトリウム塩のモル比が1.0:0.0〜0.25:0.75、好ましくは1.0:0.0〜1.0:1.0、特に1.0:0.0〜0.75:0.25であるアミノ酸類と、砂糖とを共に含むものであれば特に制限されず、アミノ酸類と砂糖は配合された状態で含まれていてもよく、また別個に含まれていてもよい。アミノ酸類と砂糖とのモル比は、1.0:1.5〜1.0:0.19、好ましくは1.0:1.5〜1.0:0.38、より好ましくは1.0:1.5〜1.0:0.75、特に1.0:1.5の範囲である。
【0044】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
グルタミン酸3.0g、L−アスパラギン酸ナトリウム3.0g、砂糖20gを200gの牛脂の中に入れ、よく混ぜながら加熱し、180℃になったら弱火にし、10分間その温度を維持させて、加熱した。加熱終了後ある程度冷却しながら、ガーゼで濾過する。濾過した油脂部は、香ばしく、コク味を有する香気成分を含んでいることが明らかであった。該油脂部を包袋に入れシールし、保存した。
【実施例2】
【0046】
[牛肉に牛脂反応物の添加]
スライスした牛肉に、表10(配合表 g)(なお、表9は、表10のアミノ酸配合をmolで表したものである。)に示す配合量のL−アスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸及び砂糖を用いて180℃、10分間加熱して得られた反応物2A〜2Eを2重量%になるようにそれぞれ添加し、真空包装した。その後、真空包装した牛肉を90℃で30分加熱処理を行い、官能評価を実施した。その結果を表11に示す。味覚パネルは6名で、反応物を添加していないものと比較して効果があると感じられた人の数を示した。なお、括弧内は効果が、強いと判断した人の数を示した。
【0047】
【表9】

【0048】
【表10】

【0049】
【表11】

【0050】
表11に示すように、本発明のアミノ酸類と砂糖の反応物を添加したものは添加していないものと比較して、ロースト臭があり、獣臭が低減され、うま味及びコク味が強い評価であった。特に2C、2D添加でロースト臭が強く感じられた。
【実施例3】
【0051】
[豚肉にラード反応物の添加]
うす切り豚肉に、表13(配合表 g)(なお、表12は、表13のアミノ酸配合をmolで表したものである)に示す配合量のL−アスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸及び砂糖を用いて180℃、10分間加熱して得られた反応物2A〜2Eを2重量%になるように添加し、真空包装した。その後、真空包装した豚肉を90℃で30分加熱処理を行い、官能評価を実施した。その結果を表14に示す。味覚パネルは5名で、反応物を添加していないものと比較して効果があると感じられた人の数を示した。なお、括弧内は効果が、強いと判断した人の数を示した。
【0052】
【表12】

【0053】
【表13】

【0054】
【表14】

【0055】
表14に示すように、本発明のアミノ酸類と砂糖の反応物を添加したものは添加していないものと比較して、ロースト臭があり、うま味及びコク味が感じられる評価であった。特に2C添加でロースト臭が強く感じられた。
【実施例4】
【0056】
[鶏肉にパーム油反応物の添加]
鶏もも肉に、表16(配合表 g)(なお、表15は、表16のアミノ酸配合をmolで表したものである)に示す配合量のL−アスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸及び砂糖を用いて180℃、10分間加熱して得られた反応物2A〜2Eを2重量%になるように添加し、真空包装した。その後、真空包装した鶏肉を90℃で30分加熱処理を行い、官能評価を実施した。その結果を表17に示す。味覚パネルは6名で、反応物を添加していないものと比較して効果があると感じられた人の数を示した。なお、括弧内は効果が、強いと判断した人の数を示した。
【0057】
【表15】

【0058】
【表16】

【0059】
【表17】

【0060】
表17に示すように、鶏肉に本発明のアミノ酸類と砂糖の反応物を添加したものは添加していないものと比較して、ロースト臭があり、獣臭が低減され、うま味及びコク味が感じられる評価であった。特に2B、2C添加でロースト臭が強く感じられた。
【実施例5】
【0061】
[カルビ丼のタレに牛脂反応物の添加]
カルビ用の牛肉50g、カルビ用タレ35gを用意した。一方、L−アスパラギン酸ナトリウム3.1g、グルタミン酸2.94g、市販調味料(蛋白加水分解物)3g、砂糖20g及び牛脂200gの混合物を180℃、10分間加熱し、反応を行って、反応物を得た。該反応物の5gを前記カルビ用タレに添加し、このタレをカルビ用牛肉全体に軽く混ぜて真空包装した。その後、真空包装のまま90℃、30分加熱した。コントロールとして、牛脂反応物5gの代わりに牛脂5gを用いた以外は、同様に処理した。味覚パネル10名で、実施例4で得られたカルビ牛肉と反応物を添加していないコントロールとの比較を行った。その官能評価結果を表18に示す。
【0062】
【表18】

【0063】
表18に示すように、本発明のアミノ酸類と砂糖の反応物を添加した試験区(実施例4で得られたもの)は、普通の牛脂を添加したコントロールに比べ、ロースト臭が付与され、コク味も強くなった評価結果であった。
【実施例6】
【0064】
[鶏肉をアミノ酸と砂糖の水溶液に浸漬]
鶏もも肉を下記表20(なお、下記表19は、表20のアミノ酸配合をmolで表したものである)に示す配合量のL−アスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸、砂糖及び水を混合した水溶液に1時間浸漬し、オーブンで180℃、25分加熱処理した。加熱処理した鶏もも肉を味覚パネラー6名により官能評価を実施し、コントロールと比較して評価した。前記コントロールは、砂糖のみを10g入れた水溶液を用いて、鶏もも肉を同様に浸漬、加熱処理したものである。評価の内容及び評価点数については、変化なし:0、やや感じる:1、明らかに感じる:2、強く感じる:3とした。
官能評価の結果を下記表21に示す。
【0065】
【表19】

【0066】
【表20】

【0067】
【表21】

【0068】
表21に示すように、鶏もも肉を本発明のアミノ酸類と砂糖の混合水溶液に浸漬した試験区では、コントロールに比べ、ロースト臭、うま味、コク味、調理感がアップし、特に試験区B、C、Dで効果がより優れていた。このように、本発明のフレーバー組成物は、水溶液状態でも用いることができることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸又はそのナトリウム塩のモル比が1.0:0.0〜0.25:0.75であるアミノ酸類と、砂糖との配合物を加熱し、ピラジン類を含有する香気成分を生成させることを特徴とするフレーバー組成物の製造方法。
【請求項2】
アミノ酸類と、砂糖との配合割合(モル比)が、1.0:1.5〜1.0:0.19であることを特徴とする請求項1記載のフレーバー組成物の製造方法。
【請求項3】
L−グルタミン酸又はそのナトリウム塩が、L−グルタミン酸であることを特徴とする請求項1又は2記載のフレーバー組成物の製造方法。
【請求項4】
食用油脂中で配合物を加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のフレーバー組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の製造方法により得られたフレーバー組成物。
【請求項6】
請求項5記載のフレーバー組成物を調味料に添加することを特徴とする香ばしくコク味を有する粉末調味料、液状調味料又はペースト状調味料。
【請求項7】
L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸又はそのナトリウム塩のモル比が1.0:0.0〜0.25:0.75であるアミノ酸類と、砂糖との配合物を食品の存在下で加熱し、該食品にピラジン類を含有する香気成分を付与することを特徴とするフレーバーが付与された食品の製造方法。
【請求項8】
アミノ酸類と、砂糖とのモル比が、1.0:1.5〜1.0:0.19であることを特徴とする請求項6記載の食品の製造方法。
【請求項9】
食品が、牛肉、豚肉又は鶏肉の生肉であることを特徴とする請求項7又は8記載の食品の製造方法。
【請求項10】
L−アスパラギン酸ナトリウムとL−グルタミン酸又はそのナトリウム塩のモル比が1.0:0.0〜0.25:0.75であるアミノ酸類と、砂糖とを含むフレーバー組成物製造セット。
【請求項11】
アミノ酸類と、砂糖とのモル比が、1.0:1.5〜1.0:0.19であることを特徴とする請求項10記載のフレーバー組成物製造セット。
【請求項12】
アミノ酸類と砂糖とが配合された状態で含まれていることを特徴とする請求項10又は11記載のフレーバー組成物製造セット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate